説明

カーボンブラック、トナー、及び複合材料、並びにこれらの製造方法

【課題】化学トナー並びに化学トナーの製造方法が記載されている。トナー組成物全体をとおして均一な顔料分散体を形成し、トナー組成物中に顔料の凝集体が全く又は殆んど存在しないトナー組成物を提供すること。
【解決手段】樹脂と着色剤とを含むトナー組成物であって、該着色剤が、
a)
式:−Ar、−Ar−Alkx


のうちの1つを有する少なくとも1つの有機基が結合された顔料を含む改質顔料である(該有機基は、該顔料に直接に結合されており、そしてArはアリール又はアリーレン基であり、Alkはアルキル又はアルキレン基であり、xは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、lは1〜5の整数であり、kは1〜10の整数であり、mは10−kであり、そしてxが2以上である場合には、置換基のそれぞれは同じであるか又は異なっている)か、或いはb)該着色剤の表面上に少なくとも1種のフェニル含有ポリマーが吸着された顔料を含む改質顔料である、トナー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2007年6月8日付けで出願された米国仮特許出願第60/942,948号の優先権を主張し、その全体を参考のため本明細書中に引用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、改質顔料を含むトナー組成物に関する。本発明はさらに、トナーを製造する方法、及びこれらの方法から生じるトナーに関する。また、本発明は、少なくとも1種の充填剤又は補強剤を、例えば粒子形態で含有する複合材料に関する。本発明はさらに、種々の複合材料、例えば少なくとも1種の充填剤又は補強剤を含有するポリマーマトリックスを製造する方法に関する。また、本発明は、マトリックスとの適合性に基づいて1種又は2種以上の充填剤又は補強剤を選択する方法に関する。
【0003】
電子写真法及び画像形成装置は、現在広く行き渡っている。電子写真術において、通常は不均一な強度を有する静電界パターン(静電潜像とも呼ばれる)を含む画像が、電子写真要素の絶縁面上に形成される。絶縁面は典型的には光伝導性層と、導電性基板とを含む。静電画像は次いで、潜像をトナー組成物と接触させることにより、現像又は視覚化されることにより画像になる。一般に、トナー組成物は、樹脂と着色剤、例えば顔料とを含有する。トナー画像は次いで転写媒体、例えば紙上に転写され、そして加熱及び/又は加圧することにより、紙上に定着される。最後の工程は、電子写真要素から残留トナーをクリーニングすることを伴う。
【0004】
一般に、高分子樹脂と着色剤とを合体させ、続いて機械的な粉砕(磨砕)を施すことにより、コンベンショナルな乾燥トナー組成物が調製される。粉砕法は典型的には、粒子の制御できない破壊を招き、粒度分布が比較的広い、不規則な形状を有するトナー組成物を産出する。
【0005】
1頁当たりの量がより少ない乾燥トナーを使用して、改善されたプリント品質を有する画像を生成することができるトナー組成物が、業界においてますます必要になっている。これらの必要を満たすために、樹脂中の着色剤の分散性を改善し、トナー組成物の粒度全体を低減しようという努力が為されている。しかしながら、現行の機械的な粉砕法は、小さな粒度のトナーを効率的に生成することはできない。それというのも、粉砕に消費されるエネルギーが典型的には、粒度とともに指数関数的に増大するからである。また、不規則に成形されたコンベンショナルなトナー粒子は、規則的に成形された粒子ほどには良好に充填できず、結果として1頁当たりのトナーの無駄が多くなる。
【0006】
このような理由から、小さな且つ/又は規則的な形状を有するトナー粒子を生成する種々様々な方法が開発されている。これらの方法は、着色剤の存在において樹脂粒子を形成することに関与する。このような「現場」法を用いて生成されたトナーはしばしば「化学的に調製されたトナー」又はCPTと呼ばれる。例えば、ポリマーラテックスを水性顔料分散体と合体させ、そして凝固剤を使用して凝集させることにより、ポリマー粒子を形成する方法が開発されている。別の方法は、少なくとも1種のモノマー中の顔料の分散体を水性懸濁重合することに関与する。また、顔料/ポリエステル樹脂分散体を調製し、これを水と合体させ、続いて溶媒を蒸発させている。これらの方法のそれぞれは、規則的な形状を有する小粒度トナー組成物を生じさせる。しかし、これらの方法のそれぞれの場合、粒子が小さくなる結果、トナーの特性を維持又は改善するために、ポリマー中の着色剤の分散性が極めて重要になってくる。良好な分散性を提供するために、化学トナー法では高レベルの分散剤を含まなければならない。このことは、トナー組成物の性能全体、具体的には、トナーを調製するために使用される混合物の粘度、並びに、結果として生じる化学トナーの感湿性に対して不都合な影響を及ぼす。その他の問題も見いだされている。
【0007】
有機基が結合された改質顔料が、トナー組成物中に使用するために開示されている。例えば、米国特許第6,218,067号明細書(特許文献1)には、樹脂粒子と、荷電可能な改質顔料粒子との混合物の生成物を含むトナー組成物が一部開示されている。改質顔料粒子は、顔料粒子に結合された少なくとも1つの有機イオン基と、少なくとも1つの両親媒性対イオンとを含む。また、米国特許第5,955,232号明細書(特許文献2)及び同第6,054,238号明細書(特許文献3)には、樹脂粒子と、少なくとも1つの正荷電可能な有機基が結合された改質顔料粒子とを含むトナー組成物が一部開示されている。加えて、米国特許出願公開第2002−0011185号明細書(特許文献4)には、式−−X−Sp−Alk(顔料に直接に結合されたXはアリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキレン基を表し、Spはスペーサ基であり、そしてAlkは、炭素原子数50〜200のアルケニル又はアルキル基を表す)によって表される少なくとも1つの有機基が結合された顔料を含む改質顔料生成物が一部開示されている。トナー組成物も開示されている。さらに、米国特許第6,337,358号明細書(特許文献5)及び同第6,372,820号明細書(特許文献6)及び米国出願公開第2002−0055554号明細書(特許文献7)には、ポリマー基が結合された改質粒子を含むトナー組成物が一部開示されている。これらの以前の発明には、特定のタイプの有機基が結合された顔料を含有するトナーの使用が記載されてはいるものの、これらの特許明細書/出願公開明細書のうち、有機基が結合された顔料とトナーのポリマー成分との優れた適合性を有する必要を考慮に入れているものはない。例えば、顔料上に結合された有機基を単純に使用して、許容し得るトナー組成物を達成することはできない。結合有機基は、トナー組成物のポリマー成分と適合しないかもしれない。有機基が分離されるところでは有機基の相分離が発生することがあり、或いは、顔料上の有機基は、ポリマー成分に添加されると、顔料の凝集を招き、これにより、化学トナー粒子の形成を妨げる。従って、トナー組成物の残りの部分と対を成す特定タイプの有機基が開発される必要がある。このことは、これらの付加的な問題及び欠点を回避することになる。また、ますます要求が高くなるプリント性能、効率、及びコストに対する業界の要件を満たすことができる特性を有する、トナー、具体的には化学トナーが依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,218,067号明細書
【特許文献2】米国特許第5,955,232号明細書
【特許文献3】米国特許第6,054,238号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002−0011185号明細書
【特許文献5】米国特許第6,337,358号明細書
【特許文献6】米国特許第6,372,820号明細書
【特許文献7】米国出願公開第2002−0055554号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、化学トナー組成物を提供することができる。
【0010】
本発明の別の特徴は、トナー組成物全体を通して均一な顔料分散体を形成し、そして好ましくは、トナー組成物中に顔料の凝集体が全く又はほとんど存在しないトナー組成物を提供することである。
【0011】
本発明の更なる特徴は、化学トナー組成物を形成するために、1種又は2種以上のポリマー中に1種又は2種以上の顔料を分散する手段を提供することである。
【0012】
本発明の更なる特徴は、充填剤が化学トナーの形成に際して乳化ポリマー又は懸濁ポリマーと適合するように、適切な充填剤を選択する手段を提供することである。
【0013】
別の特徴は、改善された定着特性、例えばより低いトナー定着温度を有する、電子写真術のための化学トナーであるポリマー複合材料を提供することである。
【0014】
本発明の更なる特徴及び利点を一部は、下記記述内容に示し、また一部は、記述内容から明らかになるか、又は本発明の実施によって習得することができる。本発明の目的及び他の利点は、記載内容及び添付の特許請求の範囲において具体的に指摘された要素及び組み合わせによって実現され達成されることになる。
【0015】
これらの利点及びその他の利点を達成するために、そして本発明の目的に従うと、本明細書中で具体化され幅広く説明されているように、本発明は、樹脂と着色剤とを含むトナー組成物、具体的には、化学的に調製されたトナー組成物に関する。1実施態様の場合、着色剤は、
式:−Ar、−Ar−Alkx
【化1】

のうちの1つを有する少なくとも1つの有機基が結合された着色剤を含む改質顔料(例えば改質顔料)であり、
Arはアリール又はアリーレン基であり、Alkはアルキル又はアルキレン基、例えば無置換型又は置換型アルキル又はアルキレン基であり、xは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、lは1〜5の整数であり、kは1〜10の整数であり、mは10−kであり、そしてxは2以上である場合には、置換基のそれぞれは同じであるか又は異なっていてよい。改質着色剤は、着色剤の表面上に少なくとも1種の吸着ポリマー、例えばフェニル含有ポリマー、例えばポリスチレン、ポリ(スチレン−アクリレート)、ポリエステル、又はポリ(フェニルメチルシロキサン)であるポリマーを有する着色剤であってよい。トナー組成物は、実質的に平滑な表面、及び/又は約3〜約10ミクロンの平均粒度を有することができる。
【0016】
本発明はさらに、トナー組成物、具体的には化学トナー組成物を製造する方法であって、i) 着色剤を含む水性分散体と、少なくとも1種のポリマーを含む水性エマルジョンと、任意のワックスとを合体させることにより、混合物を形成し;ii) 混合物から凝固トナーを形成し、そしてiii) ポリマーのTgを上回るように凝固トナーを加熱することによりトナーを形成する、工程を含む、トナー組成物を製造する方法に関する。着色剤は、上述の、そして本明細書中に記載した改質着色剤であることが可能である。本発明はさらに、トナーをカプセル化する工程を含んでもよい。本発明はさらに、この方法によって生成されたトナー組成物に関する。
【0017】
本発明はさらに、トナー組成物、具体的には化学トナー組成物を製造する方法であって、i) 少なくとも1種のモノマー中で着色剤の分散体を形成し;ii) 水性媒質中で分散体の懸濁液を形成し;そしてiii) 懸濁液を重合することにより、トナーを形成する、工程を含む、トナー組成物を製造する方法に関する。着色剤は、上述の、そして本明細書中に記載した改質着色剤であることが可能である。本発明はさらに、トナーをカプセル化する工程を含んでもよい。本発明はさらに、この方法によって生成されたトナー組成物に関する。
【0018】
本発明はさらに、トナー組成物、具体的には化学トナー組成物を製造する方法であって、i) 少なくとも1種の非水性溶媒と少なくとも1種のポリエステルとを含むポリマー溶液中で、着色剤の分散体を形成し;ii) 水性媒質中で分散体のエマルジョンを形成し;そしてiii) 溶媒を蒸発させることによりトナーを形成する、工程を含む、トナー組成物を製造する方法に関する。着色剤は、上述の、そして本明細書中に記載した改質着色剤であることが可能である。本発明はさらに、トナーをカプセル化する工程を含んでもよい。本発明はさらに、この方法によって生成されたトナー組成物に関する。
【0019】
本発明はまた、改善された定着特性を有する電気写真術のための化学トナーであるポリマー複合材料に関する。化学トナーは、少なくとも1種のポリマー、例えば乳化ポリマー又は懸濁ポリマー中に分散された処理済着色剤を用いて調製される。1実施態様の場合、表面改質着色剤は、処理済カーボンブラックであることが可能である。処理済着色剤、例えば処理済カーボンブラックを用いて調製された化学トナーは、コンベンショナルなカーボンブラック、例えば、化学基が結合されていないカーボンブラックを用いて調製された化学トナーよりも低い定着温度を有することができる。
【0020】
なお、上記全般的な記述及び下記詳細な記述の双方は、一例を説明するものに過ぎず、特許請求の範囲で主張される本発明の更なる説明を提供するものとする。
【0021】
本出願に組み込まれ、そして本出願の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施態様のうちのいくつかを示し、また記述内容とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明のトナーポリマーを有する改質着色剤、又はトナーポリマーを有する未改質着色剤を含有する分散体を示す光学画像である。
【図2】図2は、本発明のトナーポリマーを有する改質着色剤、又はトナーポリマーを有する未改質着色剤を含有する分散体を示す光学画像である。
【図3】図3は、本発明のトナーポリマーを有する改質着色剤、又はトナーポリマーを有する未改質着色剤を含有する分散体を示す光学画像である。
【図4】図4は、本発明のトナーポリマーを有する改質着色剤、又はトナーポリマーを有する未改質着色剤を含有する分散体を示す光学画像である。
【図5】図5は、本発明のトナーポリマーを有する改質着色剤、又はトナーポリマーを有する未改質着色剤を含有する分散体を示す光学画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、トナー組成物、具体的に化学トナー組成物、並びにこれらを製造する方法に一部関する。
【0024】
本発明のトナー組成物は、樹脂と着色剤とを含み、好ましくは「化学トナー」又は「化学的に調製されたトナー」(CPT)であり、このトナーは本明細書中で定義するように、小さな且つ/又は規則的な形状を有するトナーである。樹脂と着色剤とを合体させ、続いて粉状化することにより生成されるコンベンショナルなトナー組成物とは異なり、化学トナーは典型的には、着色剤及び溶媒、好ましくは水性溶媒の存在においてトナー粒子を形成することを伴う過程によって調製され、粉状化工程の利用を必要としない。コンベンショナルなトナー組成物を調製するために用いられる現行の機械的な粉砕法は、小さな粒度のトナーを効率的に生成することはできない。それというのも、粉砕に消費されるエネルギーが典型的には、粒度とともに指数関数的に増大するからである。また、コンベンショナルな粉砕法からは、不規則に成形された粒子が生じる。不規則に成形された粒子は、規則的に成形された粒子ほどには良好に充填できず、結果として1頁当たりのトナーの無駄が多くなる。本発明のトナー組成物は、小さな且つ/又は規則的な形状を有する化学トナーであることが好ましい。それというのも、このような粒子は、コンベンショナルなトナー組成物におけるように、粉状化工程を用いては生成されないからである。
【0025】
樹脂は、当業者に知られているいかなる樹脂であってもよく、好ましくはトナー樹脂又はポリマーである。好適な樹脂材料、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、スチレンアクリレート、スチレンメタクリレート、スチレンブタジエン、架橋スチレンポリマー、エポキシ、ポリウレタン、ホモポリマー又は2種又は3種以上のモノマーから成るコポリマーを含むビニル樹脂、ポリエステル、及びこれらの混合物を含む。具体的には、樹脂は、スチレンのホモポリマー及びその誘導体及びこれらのコポリマー、例えばポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、スチレン−p−クロロスチレンコポリマー、スチレン−ビニルトルエンコポリマー、スチレンとアクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートとのコポリマー、スチレンとメタクリル酸エステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、及び2−エチルヘキシルメタクリレートとのコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとのコポリマー、又はスチレンと他のビニルモノマー、例えばアクリロニトリル(スチレン−アクリロニトリル−インデンコポリマー)、ビニルメチルエーテル、ブタジエン、ビニルメチルケトン、及びマレイン酸エステルとのコポリマーを含んでよい。樹脂は、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂、石油樹脂、又は塩素パラフィンであってもよい。樹脂は、ポリエステル樹脂、例えばテレフタル酸(置換型テレフタル酸を含む)と、アルコキシ基内炭素原子数1〜4及びアルカン部分(ハロゲン置換型アルカンであってもよい)内炭素原子数1〜10のビス[(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]アルカンと、アルキレン部分内原子数1〜4のアルキレングリコールとから調製されたコポリエステルであってもよい。これらの樹脂タイプのいずれかを、個々に、又はこれらの樹脂又はその他の樹脂との混合物として使用することができる。
【0026】
樹脂は一般に、総トナー組成物の約60重量%〜約95重量%の量で存在する。一般に、乾式電子写真トナー製造に使用されるのに特に適した樹脂は、約100℃〜約135℃の融点を有し、且つ/又は、約60℃を上回るガラス転移温度(Tg)を有している。
【0027】
本発明のトナー組成物はまた着色剤を含む。1実施態様の場合、着色剤は、少なくとも1つの有機基が結合された顔料を含む改質顔料である。この改質顔料の顔料は、当業者によって従来より使用される任意のタイプの顔料、例えば炭素系ブラック顔料、又はその他のブラック顔料、及びブルー、ブラック、ブラウン、シアン、グリーン、ホワイト、バイオレット、マゼンタ、レッド、オレンジ、又はイエロー顔料を含む他の有色顔料であってよい。異なる顔料の混合物を用いることもできる。ブラック顔料の代表例は、種々のカーボンブラック(Pigment Black 7)、例えばチャネル・ブラック、ファーネス・ブラック、及びランプ・ブラックを含み、そして例えば、Cabot Corporationから入手可能な商品名Regal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Elftex(登録商標)、Monarch(登録商標)、Mogul(登録商標)、及びVulcan(登録商標)のようなカーボンブラックを含む(例えばBlack Pearls(登録商標) 2000、Black Pearls(登録商標) 1400、Black Pearls(登録商標) 1300、Black Pearls(登録商標) 1100、Black Pearls(登録商標) 1100、Black Pearls(登録商標) 1000、Black Pearls(登録商標) 900、Black Pearls(登録商標) 880、Black Pearls(登録商標) 800、Black Pearls(登録商標) 700、Black Pearls(登録商標) L、Elftex(登録商標) 8、Monarch(登録商標) 1400、Monarch(登録商標) 1300、Monarch(登録商標) 1100、Monarch(登録商標) 1000、Monarch(登録商標) 900、Monarch(登録商標) 880、Monarch(登録商標) 800、Monarch(登録商標) 700、Mogul(登録商標) L、Regal(登録商標) 330、Regal(登録商標) 400、Vulcan(登録商標) P)。有色顔料の好適なクラスは、例えばアントラキノン、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環イエロー、キナクリドン、キノロノキノロン、及び(チオ)インジゴイドを含む。このような顔料は、BASF Corporation, Engelhard Corporation 及びSun Chemical Corporationを含む数多くの供給元から、粉末又はプレスケースの形態で商業的に入手可能である。他の好適な有色顔料の例が、Colour Index, 3rd edition (The Society of Dyers and Colourists, 1982)に記載されている。好ましくは顔料は、シアン、マゼンタ、又はイエロー有機顔料、又は炭素系ブラック顔料、例えばカーボンブラックである。これらの顔料は、安定な分散系を形成するために、種々異なるタイプの分散剤と組み合わせて使用することができる。
【0028】
着色剤(例えば顔料又は充填剤)は、コンベンショナルな表面積、ヨウ素価、粒度、油吸収率、DPBA、及びクラッシュDPBAなどを有することができる。顔料は所望の顔料特性に応じて、窒素吸着によって測定して、広範囲のBET表面積を有することができる。例えば、顔料は、表面積が約10〜600m2/g、例えば約20〜250m2/g、及び約20〜100m2/gの表面積を有するカーボンブラックであってよい。表面積はこれが大きければ大きいほど、より小さな一次粒子サイズに相当することになる。顔料は、約10nm〜約80nm、及び約15nm〜約50nmを含む、約5nm〜約100nmの種々多様な一次粒子サイズを有することもできる。例えば、有色顔料の高い表面積を所望の用途のために容易に入手できないならば、所望の場合には、顔料にコンベンショナルな微粉化又は粉砕技術、例えばボール又はジェット・ミリングを施すことにより、顔料を粉砕してより小さな粒度にすることができる。
【0029】
顔料は広範囲のジブチルフタレート吸収(DBP)価を有することもできる。DBP価は、顔料の構造又は分岐の尺度である。例えば、顔料は、約40〜90mL/100g及び約40〜80mL/100gを含む、約30〜100mL/100gのDBP価を有するカーボンブラックであってよい。加えて、顔料は広範囲の一次粒子サイズ、例えば約15nm〜約60nmを含む、約10nm〜約100nmの一次粒子サイズを有していてもよい。他の形状を有する充填剤を使用してもよい。1つ又は2つ以上の実施態様の場合、充填剤、例えばカーボンブラックのPAHは、10ppm未満であり、5ppm未満又は1ppmであってよい。
【0030】
また、本発明の目的において、改質されるべき炭素生成物は、炭素相とケイ素含有種相とを含む凝集体であってよい。この凝集体、並びにこの凝集体の形成手段に関する説明は、国際公開第96/37547号パンフレット、並びに米国特許第6,364,944号;同第6,323,273号;同第6,211,279号;同第6,191,194号;同第6,172,154号;同第6,057,387号;同第6,028,137号;同第6,008,272号;同第5,977,213号;同第5,948,835号;同第5,919,841号の各明細書に記載されている。全ての特許明細書、刊行物、及び特許出願明細書はその全体を参考のため本明細書中に引用する。
【0031】
改質されるべき炭素生成物は、本発明の目的において、炭素相と金属含有種相とを含む凝集体であってよい。金属含有種相は、種々異なる金属、例えばマグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、錫、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、アルミニウム、及び亜鉛、及びこれらの混合物であってよい。炭素相と金属含有種相とを含む凝集体は、米国特許第6,017,980号明細書(これも全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されている。
【0032】
また、本発明の目的において、改質されるべき炭素生成物は、シリカで被覆されたカーボンブラック、例えば1996年11月28日付けで発行された国際公開第96/37547号パンフレット(これも全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されているものであってよい。
【0033】
改質されるべき顔料は、酸化剤を使用して酸化された顔料であってもよい。酸化剤の一例として、酸素ガス、オゾン、過酸化物、例えば過酸化水素、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムを含む過硫酸塩、次亜ハロゲン酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム、酸化性酸、例えば硝酸、及びオキシダントを含有する遷移金属、例えば過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、又は硝酸セリウムアンモニウムが挙げられる。オキシダントの混合物、具体的には気体状オキシダント、例えば酸素及びオゾンの混合物が使用されてもよい。本明細書中に記載されているように結合有機基で着色剤を改質する前に、他の表面改質方法、例えば塩素化及びスルホニル化を用いることもできる。
【0034】
改質着色剤(例えば改質顔料)に関して、改質着色剤(例えば顔料又は充填剤)は、式:−Ar、−Ar−Alkx
【化2】

のうちの1つを有する少なくとも1つの有機基が結合された着色剤を含み、
Arはアリール又はアリーレン基であり、Alkはアルキル又はアルキレン基、例えば無置換型又は置換型アルキレン基であり、xは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、lは1〜5の整数であり、kは1〜10の整数であり、mは10−kであり、そしてxは2以上である場合には、アリール環上の置換基のそれぞれは同じであるか又は異なっていてよい。有機基は、着色剤に好ましくは直接に結合されており、そして本明細書中における構造/式中の開いた結合は、好ましくは着色剤(例えば顔料)に付着(例えば結合)する利用可能な結合を表す。これらの基は着色剤(例えば顔料)に好ましくは直接に結合されている。「結合」は、着色剤粒子との好ましくは化学的な付着又は結合、例えば共有結合である。結合された基は好ましくは非ポリマーである。
【0035】
基Arは、アリール又はアリーレン又はヘテロアリール又はヘテロアリーレン基を表す。Arは顔料に好ましくは直接に結合されている。好ましくは、アリールはフェニル、ナフチル、又はビフェニルであり、且つ/又はアリーレン又はヘテロアリーレン基はフェニレン、ナフチレン、又はビフェニレンである。
【0036】
基Arはさらに、他の基、例えば1つ又は2つ以上のアルキル基又はアリール基で置換することができる。また、基Arは、1つ又は2つ以上の官能基、例えば非イオン基で置換することができる。官能基の一例としては、必ずしもこれらに限定されないが、R、OR、COR、COOR、OCORが挙げられる。同じもの又は異なっていてよいRは独立して、水素、分枝状又は非分枝状C1−C20置換型又は無置換型の飽和又は不飽和炭化水素、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、置換型又は無置換型アリール、置換型又は無置換型ヘテロアリール、置換型又は無置換型アルカリル、又は置換型又は無置換型アラルキルである。
【0037】
基Alkは、アルキル又はアルキレン基又はヘテロアルキル又はヘテロアルキレン基を表し、C1−C12アルキル又はアルキレン基、例えば、必ずしも限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンなどであってよい。アルキル又はアルキレン基は任意には、Ar基に関して上記したような1つ又は2つ以上の官能基で置換することができる。
【0038】
改質着色剤は、着色剤の表面上に少なくとも1種の吸着ポリマー、例えばフェニル含有ポリマー、例えばポリスチレン、ポリ(スチレン−アクリレート)、ポリエステル、ポリ(フェニルメチルシロキサン)であるポリマーを有する着色剤であってよい。改質された着色剤は、本明細書中に記載されたもののうちのいずれかであってよい。ポリマーは、着色剤の表面全体又はその一部に吸着され得る。2つ以上のタイプのポリマーが着色剤上に吸着されることも可能である(例えば混合物)。
【0039】
本発明の目的において、改質着色剤は、処理済充填剤又は改質顔料と本明細書中で呼ぶこともある。本発明の改質顔料は、有機基の一部としてイオン基又はイオン性基を含有することはない。好ましくは本明細書中で特定された有機基は、他の有機基又はイオン性基でさらに改質されることはない。トナー組成物は好ましくは、界面活性剤及び/又は分散剤を含有しないか、或いは、少量又は無視できる量、例えばトナー組成物の重量を基準として、0.001重量%〜1重量%、又は0.001重量%未満、又は0.0001重量%〜0.05重量%を含有している。
【0040】
下記アルコキシシラン材料は、充填剤、例えばカーボンブラックに結合されるシラン化学基の前駆体として使用することができる。この結合は一般に、メトキシ又はアルコキシ基のうちの1つを除去し、次いで充填剤表面に結合することにより生じる。このメカニズムは、一般にアルコキシ基に関しても同じであり得る。アルコキシシランは、少なくとも1つの、3つ以下のアルコキシ官能基がケイ素原子に直接に結合されたシラン分子を意味する。
アルコキシシラン
(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン
10−ウンデセニルトリメトキシシラン
1−ナフチルトリメトキシシラン
2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン
3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン
3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン
n−オクタデシルジメチルメトキシシラン
p−トリルトリメトキシシラン
スチリルエチルトリメトキシシラン
トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン
トリエトキシフルオロシラン
トリメトキシ(メチルフェノキシ)シラン
ウレイドプロピルトリメトキシシラン
ビニルトリメトキシシラン
n−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
ヘキサデシルトリメトキシシラン
3−アミノプロピルトリメトキシシラン
n−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
オクチルトリメトキシシラン
プロピルトリメトキシシラン
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
ビニルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン
メルカプトプロピルトリメトキシシラン
クロロプロピルトリメトキシシラン
ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン
ベンジルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン
n−ヘキシルトリメトキシシラン
【0041】
処理済充填剤及び処理済充填剤の例(例えば着色剤)を形成することに関しては、充填剤の表面を化学的に改質するために、種々様々な技術を用いることができる。例えば、充填剤の表面上に1種又は2種以上の化学基を化学的に結合するために、ジアゾニウム処理又はラジカル付加を用いることができる。化学吸着のためには物理的ブレンドを用いることもできる。また、ポリマーが充填剤表面に物理吸着するように、リンカー基をポリマー上に配置することもできる。
【0042】
物理的ブレンドに関しては、これは、溶媒中にポリマーを溶解し、そして充填剤、例えばカーボンブラックを溶媒中に分散させ、そして例えばロトステータ又は同様の設備を使用することにより凝集体を分解することを伴う。選択された溶媒は好ましくは、θ>0.5である、ポリマーのための良溶媒である。良溶媒によって、ポリマーは増量し、排除体積が大きくなる。従って、ポリマー溶液の粘度は増大することになる。良溶媒として知られている溶媒を適切に選択することにより、ポリマーは充填剤、例えばカーボンブラック上に化学物質を被覆又は物理吸着することができる。ポリマーの代わりに、このようにカーボンブラックを被覆するためにいかなる化学物質をも選ぶことができる。この処理済充填剤をポリマー系に添加することにより複合材料を形成することができる。ポリマーのための良溶媒は、実寸法が、Mark-Houwink-Sakurada等式においてθ>0.5と一般に記されるポリマーの非摂動寸法を超える溶剤である(Polymer Chemistry, M. P. Stevens, Oxford Press 1990参照)。
【0043】
充填剤の表面上にポリマーを物理吸着するために採用される別の方法は、ペレタイザー内でポリマーエマルジョンと充填剤とを混合し、次いで、例えば炉を使用することにより、水を除去することである。
【0044】
ジアゾニウム処理に関しては、充填剤に化学基を結合するために用いることができる方法が、例えば下記特許明細書:米国特許第6,852,158号;同第6,664,312号;同第6,551,393号;同第6,534,569号;同第6,372,820号;同第6,368,239号;同第6,350,519号;同第6,337,358号;同第6,103,380号;同第7,173,078号;同第7,056,962号;同第6,953,825号;同第6,942,724号;同第6,936,097号;同第6,929,889号;同第6,911,073号;同第6,494,943号;同第6,478,863号;同第6,472,471号の各明細書に詳説されているジアゾニウム処理であり得る。これらの特許明細書には、充填剤、例えば顔料に有機基を、ジアゾニウム反応を介した結合によって結合する方法が記載されている。有機基は、ジアゾニウム塩の一部であり得る。本発明の少なくとも1実施態様の目的において、充填剤(例えばカーボンブラック)に結合される有機基の量は、マトリックス中に使用するための処理済充填剤の溶解パラメータを調節するのに役立ち、また、例えばトナー、タイヤ調製物、接着剤、ケーブル組成物、インクジェット・インク組成物、強化・膨張性ポリウレタン、被膜調製物、及びインク・システムのような用途において有用であり得る。具体的には、レベルは任意の処理レベルであることが可能であり、低レベルであることが可能である。化学基の処理レベルは、充填剤の表面積を基準として、使用される充填剤(例えばカーボンブラック)1m2当たり約0.10〜約4.0マイクロモルであってよい。さらに、例えば米国特許第6,068,688号;同第6,337,358号;同第6,368,239号;同第6,551,393号;同第6,852,158号の各明細書に記載されている、ジアゾニウム及び安定な遊離基の方法を用いることにより、処理済充填剤を形成することができる。この方法では、少なくとも1つのラジカルと少なくとも1つの粒子とを反応させることを利用する。この場合、ラジカル捕捉可能な1つ又は2つ以上の粒子の存在において、少なくとも1種の遷移金属化合物と、少なくとも1種の有機ハロゲン化物化合物とを相互作用することから、ラジカルを発生させること、などが行われる。
【0045】
さらに、種々の化学基を結合するために、シロキサン処理を用いることができる。結合は典型的には、シロキシ基、例えばSi−O−を介して発生する。この技術は、例えば米国特許第6,964,992号;同第6,174,926号;同第6,159,540号;同第6,090,439号の各明細書に記載されている。
【0046】
さらに、充填剤の表面上に化学基を結合するために、ラジカル付加を用いることができる。この技術は、例えば米国特許第4,014,844号明細書に記載されている。
【0047】
さらに、化学基を結合するために、エポキシ反応を用いることができる。例えば、この方法は、欧州特許第0749991号明細書に記載されており、同第0272127号明細書を利用することもできる。
【0048】
化学基を結合するか、或いは1種又は2種以上の化学物質で充填剤の表面をその他の形で改質する、いかなる他の形式も本発明において用いることができる。
【0049】
結合有機基及び/又は吸着ポリマーの量は、所望の性能属性を達成するように変化させることができる。このことは、性能特性を最適化する上で、より高いフレキシビリティを可能にする。好ましくは、結合有機基及び/又は吸着ポリマーの総量は、窒素吸収(BET法)によって測定して、顔料表面積1m2当たり約0.001〜約10.0マイクロモルの有機基である。より好ましくは、結合有機基及び/又は吸着ポリマーの量は、約0.01〜約5.0マイクロモル/m2であり、そして最も好ましくは、約0.05〜約3.0マイクロモル/m2である。加えて、改質顔料はさらに、付加的な結合有機基を含んでいてもよい。この結果、特性をさらに改善することができる。
【0050】
加えて、改質着色剤(改質顔料)の混合物を使用することもできる。このように、本発明のトナー組成物は、2種又は3種以上の改質着色剤、例えば改質顔料を含んでいてよく、改質着色剤のそれぞれは、結合有機基及び/又は吸着ポリマーを有している。2種の改質着色剤、例えば改質顔料は、結合有機基及び/又は吸着ポリマーのタイプ、結合有機基及び/又は吸着ポリマーの量、顔料及び/又は吸着ポリマーのタイプ、又はこれらの組み合わせが異なることがある。このように、例えばそれぞれが、異なる基を含む結合有機基を有する2種の改質顔料が、一緒に使用されてよい。また、それぞれが異なる顔料(それぞれが異なる表面積及び/又は構造を有する2種のカーボンブラック)を含み、そして同じ結合有機基及び/又は吸着ポリマーを有する2種の改質顔料が一緒に使用されてもよい。改質顔料の他の組み合わせを使用することもできる。
【0051】
開示された着色剤が、コンベンショナルな両着色剤を凌ぐ、予期せぬ利点を有することが判った。例えば、本明細書中に記載された改質顔料を使用すると、着色剤が樹脂中によく分散することを保証するために必要となる分散体のレベルを低減するのが可能になることが判った。比較すると、コンベンショナルな着色剤は、より高い分散剤レベルを必要とする。分散剤の量が少なければ少ないほど、低い粘度を有する着色剤分散体が生じる。このことは結果として、処理上(使用しやすさ)及び経済上(例えば着色剤レベルの増大)の利点、並びに、環境安定性(例えば感湿性)の改善を含む最終トナー組成物のための製品性能の向上をもたらす。本明細書に記載した改質顔料はプロセス及び経済性の両面で有益である。
【0052】
本発明において、樹脂と着色剤とを含むトナー組成物は好ましくは、化学トナーとも呼ばれる、化学的に調製されたトナーである。トナー組成物は、平滑な表面、約3〜約10ミクロンの平均粒度、又はその両方を有することができる。平滑な表面とは、トナーが、大型粒子をより小さな粒子に粉末化することによって生じるような、鋭利な又はギザ歯状のエッジをほとんど有していないことを意味する。トナー組成物の形状は、平滑な表面を有する任意の形状であってよいが、しかし好ましくは、角部又はエッジを有さない形状、例えば、卵形又はジャガイモ形を含む球状又は楕円形状である。これらの3次元の丸みを帯びた形状のアスペクト比は、約1.0〜約3.0、より好ましくは約1.0〜約2.0、そして最も好ましくは約1.2〜約1.3である。
【0053】
本発明のトナー組成物はさらに、任意の添加剤を含むこともできる。これらの添加剤は、下でより詳細に説明する、これらの組成物を調製するために使用される成分のうちの1つ又は2つ以上の中に混合又はブレンドすることもできる。その例としては、キャリヤ添加剤、正電荷又は負電荷制御剤、例えば第四アンモニウム塩、ピリジニウム塩、スルフェート、ホスフェート、及びカルボキシレート、流動補助添加剤、シリコーン油、及び/又はワックス、例えば商業的に入手可能なポリプロピレン及びポリエチレンが挙げられる。トナー組成物はさらに、酸化鉄又はその他の金属を含むこともでき、酸化鉄はマグネタイトであってよく、こうしてトナー組成物をマグネタイト・トナー組成物にすることができる。一般に、これらの添加剤は約0.05重量%〜約30重量%の量で存在するが、しかしそれよりも少量又は多量の添加剤が、特定の系及び所望の特性に応じて選択されてもよい。
【0054】
本発明はさらに、トナー組成物を製造する方法、並びにこの方法によって製造されたトナー組成物に関する。1実施態様の場合、本発明の方法は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の改質着色剤とを含む凝固トナーを形成し、そして続いて、ポリマーのTgを上回る温度までこれを加熱することにより、トナーを形成する工程を含む。改質着色剤は、本明細書中に記載された改質着色剤のいずれかであってよい。
【0055】
凝固トナーは、着色剤の水性分散体とポリマーの水性エマルジョンとを、少なくとも1種の凝固剤とともに合体させることにより調製される。任意のワックスを添加してもよい。好適な凝固剤は、例えば塩(例えばポリアルミニウムクロリド、ポリアルミニウムスルホシリケート、アルミニウムスルフェート、マグネシウムスルフェート、又は亜鉛スルフェート)、又はカチオン性界面活性剤を含む界面活性剤、例えばジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンズアルコニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、C12、C15、又はC17トリメチルアンモニウムブロミド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、又はドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリドを含む。これらの混合物を使用してもよい。例えば、トナーの約0.01〜約10重量%の量で使用することができる凝固剤は、ポリマー及び着色剤の凝集粒子を形成させる。pHの変化によって凝固を引き起こすこともできる。従って、凝固剤は、水性着色剤分散体及び/又は水性ポリマーエマルジョンのpHに応じて、酸又は塩基であってよい。加えて、凝固トナーは、例えば水性着色剤分散体と水性ポリマーエマルジョンとを含む混合物を噴霧乾燥させることを含む機械的又は物理的手段を使用して、形成されてもよい。
【0056】
結果としての凝固トナーを続いて、トナー組成物を形成するのに十分な時間及び温度で、ポリマーのTgを上回るように加熱する。好ましくは、加熱工程は、トナーの平均粒度が約3〜約10ミクロンである条件、及び/又はトナーが実質的に平滑な表面を有する条件下で行われる。この過程の具体的な特徴に関する更なる詳細は、例えば米国特許第6,562,541号;同第6,503,680号;及び同第5,977,210号の各明細書に見いだすことができる。これらの明細書の全てを全体的に参考のため本明細書中に引用する。
【0057】
第2実施態様の場合、トナー組成物を製造する方法は、少なくとも1種のモノマー中で改質着色剤の分散体を形成し、そしてこの分散体を水性媒質、特に水中で懸濁する工程を含む。また開始剤が、着色剤分散体中に、又は水性懸濁液を形成した後に添加されるが、好ましくは着色剤分散体中に添加される。他の任意の成分、例えば安定剤を添加してもよい。結果として生じた懸濁液を次いで重合することにより、トナーを形成する。本発明の場合、改質着色剤は、上により詳しく説明した改質着色剤のいずれかであってよい。モノマーは、本発明のトナー組成物に関して上述した樹脂材料を調製するために使用されたモノマーのうちのいずれかであってよい。好ましくは重合は、トナーの平均粒度が約3〜約10ミクロンである条件、及び/又はトナーが実質的に平滑な表面を有する条件下で行われる。この過程の具体的な特徴に関する更なる詳細は、例えば米国特許第6,440,628号;同第6,264,357号;及び同第6,140,394号;同第5,741,618号;同第5,043,404号;同第4,845,007号;及び同第4,601,968号の各明細書に見いだすことができる。これらの明細書の全てを全体的に参考のため本明細書中に引用する。
【0058】
第3実施態様の場合、トナー組成物を製造する方法は、少なくとも1種の非水性溶媒と少なくとも1種のポリエステルとを含むポリマー溶液中で、改質着色剤の分散体を形成し、水性媒質、例えば水中でこの分散体の水性エマルジョンを形成し、そして溶媒を蒸発させることによりトナーを形成するステップを含む。他の任意の成分、例えば分散助剤及びエマルジョン安定剤を、着色剤分散体中に、又は水性分散体を形成した後に添加してもよい。本発明の場合、改質着色剤は、本発明のトナー組成物に関連する、上により詳しく説明した着色剤のいずれかであってよい。ポリエステルは、トナー組成物、具体的には上でより詳しく説明した本発明のトナー組成物を調製するために使用されるもののいずれかであってよい。好ましくは、溶媒蒸発と組み合わされたエマルジョン形成過程は、トナーの平均粒度が約3〜約10ミクロンである条件、及び/又はトナーが実質的に平滑な表面を有する条件下で行われる。この過程の具体的な特徴に関する更なる詳細は、例えば米国特許第6,787,280号明細書及び同第5,968,702号明細書に見いだすことができる。これらの明細書の全てを全体的に参考のため本明細書中に引用する。
【0059】
本発明の方法のそれぞれの実施態様の場合、トナーをカプセル化する付加的な工程が用いられてよい。カプセル化の結果、トナーの周りにポリマーシェルが形成され、コア/シェル構造を有するトナーが生成される。当業者に知られているいずれかのカプセル化法を用いることができる。シェルとして使用されるポリマーは、トナーに性能特性及び取り扱い特性を提供するように選択される。例えば、結果として生じるカプセル化トナーは、特により低い温度で、より容易に融合することができ、そしてより高いそしてより均一な荷電特性を有することもできる。他の特性がもたらされてもよい。
【0060】
本発明の方法のそれぞれの実施態様の場合、付加的な精製工程が含まれてよい。例えば、上記方法によって生成されるトナー組成物を洗浄することにより、望ましくない副生成物又は不純物を除去し、そして乾燥させることができる。トナーは、カプセル化の有無にかかわらず、噴霧乾燥によって単離することもできる。
【0061】
本発明はまた、少なくとも1種の充填剤とマトリックスとを含有する複合材料に関する。本発明はまた、少なくとも1種の充填剤と少なくとも1種のマトリックスとを含有する複合材料を製造する方法であって、充填剤がマトリックスと著しく適合し、これにより、好ましくはマトリックス全体にわたって均一に分散された充填剤をもたらし、また好ましくは、複合材料中の充填剤の凝集を低くするか又は全くなくするようにする、方法に関する。複合材料(又は短く複合材)は、単一の成分を形成しつつ、典型的には、巨視的レベルでは別個で区別可能のままである2つ又は3つ以上の構成材料から形成された材料、例えばエンジニアリング材料である。構成材料には2つのカテゴリー、すなわちマトリックスと強化材とがある。それぞれのタイプの少なくとも一部が必要となる。マトリックス材料は強化材料を、これらの相対位置を維持することにより取り囲み支持する。強化材又は強化材料は、少なくとも1種の充填剤、例えばカーボンブラックであり得る。マトリックスは少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種のプレポリマー、少なくとも1種のオリゴマー、又はこれらの任意の組み合わせであることが可能であり、且つ/又は、他の材料であることが可能である。
【0062】
より詳細には、1つ又は2つ以上の実施態様の場合、本発明は、少なくとも1種の充填剤とマトリックスとを含有する複合材料を製造する方法に関する。充填剤は、1つ又は2つ以上のタイプの複数の充填剤、例えば粒子、粉末、及びペレットなどを含むことができる。この方法では、マトリックスを形成する材料の溶解パラメータが割り出され、そして充填剤又は充填剤の改質表面に対して計算された溶解パラメータが、マトリックスを形成する材料の溶解パラメータから10%以内にあるように、充填剤が選択される。マトリックスを形成する材料の溶解パラメータと同様の、充填剤の溶解パラメータを有することにより、充填剤はマトリックスによって湿潤することができ、そして充填剤はこのように、マトリックスを形成する材料全体にわたって、例えば低い剪断条件下でも、より容易に分散することができる。このことは、好ましくは、マトリックス全体にわたって充填剤の均一又は実質的に均一な分散をもたらし、また好ましくは低い凝集速度をもたらし、そしてより好ましくは、凝集体をほとんど形成せず、またさらにより好ましくは、複合材料中に凝集を生じさせない。
【0063】
溶解パラメータに関しては、ほとんどのポリマーが、実験により割り出すことができる溶解パラメータを有しており、又は、これらの溶解パラメータは文献中、例えばTHE POLYMER HANDBOOK, fourth edition, Editors: J. Brandrup, E. H. Immergut、及びE. A. Grulke; Wiley 1999(全体を参考のため本明細書中に引用する)において容易に利用可能である(例えば得られる)。例えば下に挙げるのは、ポリマー複合材料を形成する上で本発明において有用であり得る種々のポリマーの溶解パラメータである。充填剤の溶解パラメータは、Hildebrandt、Hansen、又は群論、例えばFedors、Small、又はVan Krevelenを用いて計算することができ、溶解パラメータは、2種の材料の混合能力の偽経験的推定である。
ポリマー 溶解パラメータ
(MPa)1/2
ポリ(ブタジエン) 17.1
ポリ(ブタジエン−コ−スチレン)(85/15) 17.3
ポリプロピレン 18.8
ポリ(メタクリル酸)、メチルエステル 18.9
ポリ(アクリル酸)、ブチルエステル 18.0
ポリ(スチレン) 18.7
ポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)10%架橋 15.7
ナイロン6,6 22.9
ポリ(2−シアノエチルアクリレート) 31.8
ポリ(プロピレンオキシド) 16.3
【0064】
これらの溶解パラメータは典型的には、(MPa)1/2又は√cal/cmの単位で測定される。典型的には、ポリマーの溶解パラメータは、約5〜約14√cal/cmとなる。充填剤の溶解パラメータに関しては、この溶解パラメータは計算しなければならない。それというのも、一般に、粒子材料又は固形材料は、それ自体では、またそれ自体の溶解パラメータを有していないからである。溶解パラメータは、充填剤の表面、及び充填剤がその表面上で任意に処理される様式に基づいて、充填剤に対して計算することができる。より詳細に述べると、好ましくは、本発明の目的において、使用される充填剤は、化学的、熱的、又は機械的(例えば物理吸着)に処理された処理済充填剤である。好ましくは、充填剤は、化学的又は機械的に処理される。化学処理に応じて、計算溶解パラメータは変化し、従って溶解パラメータを変化させる能力を有することにより、ポリマー複合材料中に使用されたポリマーの溶解パラメータと同様である(例えば10%以内、5%以内、1%以内)計算溶解パラメータを提供するであろう化学処理を選択することができる。充填剤の溶解パラメータは、群論として知られているものを使用して計算することができる。この群論は、溶解パラメータ・モデルを使用して計算することができる。例えば、このモデリングは、THE POLYMER HANDBOOK, fourth edition, Editors: J. Brandrup, E. H. Immergut、及びE. A. Grulke; Wiley 1999に記載された手順を用いて行うことができる。一般的な方法は、表面構造を化学基、例えばフェニル、メチル、メチレン、メチンなどに細分することを伴う。次いで、分子容を考慮して、各サブグループ毎に寄与を加える。
【0065】
1つ又は2つ以上の他の実施態様の場合、ポリマー複合材料は、電子写真術のための化学トナーである。化学トナーは、少なくとも1種のポリマー、例えばトナーを調製するのに適した乳化ポリマー又は懸濁ポリマー中に分散された処理済充填剤を含有するか、又はこのような処理済充填剤を用いて調製される。1実施態様の場合、化学トナーは、例えば本明細書中に記載したような処理済カーボンブラックであり得る処理済充填剤を含有するか、又はこのような処理済充填剤を用いて調製される。処理済カーボンブラックを用いて調製された化学トナーは、コンベンショナルなカーボンブラックを用いて調製された化学トナーよりも低い定着温度を有することができる。
【0066】
1つ又は2つ以上の実施態様の場合、本発明は、少なくとも1種のポリマーと、粒子状充填剤であり得る少なくとも1種の充填剤とを含むポリマー複合材料を製造する方法に関する。この方法は、ポリマーの溶解パラメータを割り出すか又は獲得し、そして、充填剤の溶解パラメータがポリマーの溶解パラメータから10%以内にあるように、少なくとも1種の充填剤を選択することを含む。好ましくは、充填剤の溶解パラメータは、ポリマーの溶解パラメータから5%以内又は1%以内又は0.5%以内にある。ポリマー複合材料が2種以上のポリマーを含む場合、好ましくは、少なくとも1種の充填剤の溶解パラメータは、合体(混合)されたポリマーの溶解パラメータから10%以内にある。しかし所望の場合、充填剤の溶解パラメータは、ポリマー複合材料を形成するポリマーのうちの1種の溶解パラメータから10%以内にあることが可能であり、そしてこれは、存在する2種又は3種以上のポリマーのうちの唯1種中に充填剤を主として選択的に存在させたい場合、特に望ましい。従って本発明は、複合材料中の選択的分散のための手段を提供し、これは、2種又は3種以上のポリマーが異なる溶解パラメータを有しているときに特に有用である。
【0067】
要約すると、処理済充填剤の溶解パラメータ又は計算溶解パラメータを割り出すために用いられるモデリングは、化学的又は機械的処理に用いられる化学物質の溶解パラメータを考慮に入れ、そしてさらに、処理済充填剤を形成するために充填剤の表面上に結合又は吸着される分子(これは一般に、結合又は吸着の方法に用いられる正確な化学物質ではない)を考慮に入れ、またさらに、表面全体ではないにせよ、充填剤の表面のかなりの部分に、化学的又は機械的改質の範囲が及ぶことになるという理解に基づいている。こうすることにより、溶解パラメータを形成することができる。
【0068】
本発明において使用することができる充填剤の例は、任意の複合材料中に使用される任意のコンベンショナルな充填剤である。例えば、充填剤は有機又は無機であってよく、或いは自然界に見いだすことができる。より具体的には、充填剤の一例としては、必ずしも限定されないが、カーボンブラック、シリカ、顔料、及び金属酸化物などが挙げられる。充填材料は、炭素系材料、例えば、必ずしも限定されないが、黒鉛粉末、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素布、ガラス状炭素生成物、活性炭、ナノチューブ、フラーレンなどであってよい。
【0069】
充填剤(例えば顔料)は、当業者によって従来より使用される任意のタイプの充填材、例えば、炭素系ブラック顔料、及びブルー、ブラック、ブラウン、シアン、グリーン、ホワイト、バイオレット、マゼンタ、レッド、オレンジ、又はイエローの顔料を含む他の有機有色顔料であってよい。
【0070】
複合材料中にあってマトリックスを形成するポリマーに関しては、これらのポリマーはいかなるポリマーであってもよい。本発明の目的において、本発明の高分子生成物中に1種又は2種以上のポリマーが存在していてよい。ポリマーはゴム、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーであってよい。さらに、ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及び/又は任意の数の種々異なる反復単位を含有するポリマーであってよい。さらに、本発明の高分子生成物中に存在するポリマーは、任意のタイプのポリマー、例えばランダム・ポリマー、交互ポリマー、グラフト・ポリマー、ブロック・ポリマー、星形ポリマー、及び/又は櫛形ポリマーであってよい。本発明の高分子生成物中に使用されるポリマーは、1種又は2種以上のポリブレンドであってもよい。ポリマーは、相互貫入ポリマー網状構造(IPN);同時貫入ポリマー網状構造(SIN);又は相互貫入エラストマー網状構造(IEN)であってよい。
【0071】
一般に、ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY第18巻, KIRK-OTHMER, (1982),第328-887頁、及びMODERN PLASTICS ENCYCLOPEDIA '98, 第B-3〜B-210(両者の全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されているポリマーを、本発明の高分子生成物中のポリマーとして使用することができる。
【0072】
本発明の高分子生成物中に使用されるポリマーは、数多くの方法で調製することができ、このような方法は当業者に知られている。上で引用したKIRK-OTHMERの項、及びMODERN PLASTICS ENCYCLOPEDIAは、これらのポリマーを調製することができる方法を提供している。乳化重合、懸濁重合、塊状重合、これに続く逆転又は機械的乳化、相間移動重合から生じるポリマーを使用することができる。
【0073】
充填剤の表面を変化させるのに用いられる化学物質、並びに用いられる化学結合技術を知っていると、溶解パラメータの計算値を割り出すことが可能になる。
【0074】
処理された充填剤は、少なくとも1つのポリマー基が結合されている充填剤を含むことができる。ポリマー基は、充填剤に結合(例えば化学結合)され得るポリマー基の任意のタイプ、例えば、熱可塑性ポリマー基、又は熱硬化性ポリマー基であってよい。ポリマー基は、例えばランダム・ポリマー、交互ポリマー、グラフト・ポリマー、ブロック・ポリマー、星形ポリマー、及び/又は櫛形ポリマーであってよい。加えて、ポリマー基は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及び/又は任意の数の種々異なる反復単位を含有するポリマーであってよい。ポリマー基の一例としては、必ずしもこれらに限定されないが、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミン、及びポリオレフィンが挙げられる。好ましくは、ポリマー基は、フェニルエーテル又はビスフェニルエーテル、及び置換型プロパンジイル基を含む。例えば、ポリマー基は、エポキシビスフェノールA、エポキシビスフェノールAのオリゴマー、又はエポキシ・ノボラクから調製されたポリマーであってよい。別の好ましいポリマー基は、スチレンと、無水マレイン酸、マレイン酸、又はこれらの塩又は誘導体とを含む。例えば、ポリマー基は、スチレンと、無水マレイン酸半エステルとのポリマーであってよい。またポリマー基は、反復モノマー単位上の置換基を適切に選ぶことにより、ポリマー鎖に沿った複数の点で、充填剤に結合することができる。
【0075】
ポリマーマトリックスがアクリレート及びスチレンを含有するコポリマーを基剤とする用途の具体的な例として、カーボンブラック粒子(又はその他の充填剤)の表面が以下の基:アルキルベンジル、プロピレングリコール、又はこれらのポリマー、ブチルベンゾエート、又はキノドン−スチレン無水マレイン酸コポリマーのうちのいずれか1種を含有するようにこの表面を設計することにより、湿潤状態を改善できることが判っている。
【0076】
これらの基は表面上で、化学結合を介して又は物理吸着を介して設計することができる。後者の場合、分子は、その一部が充填剤(カーボンブラック)の表面上に吸収されるように、そして分子の別の部分をポリマーマトリックスが利用可能になるように設計される。
【0077】
本発明の少なくとも1つの実施態様の場合、本発明は、処理済充填剤の計算溶解パラメータのライブラリを形成し、これにより、連続したマトリックスを形成する材料の溶解パラメータに応じて、どの処理済充填剤を選ぶべきかを知ることを伴う。
【0078】
さらに、任意の手段として、処理済充填剤は、静置塗布技術、例えば、必ずしも限定されないが、プラズマ、スプレー塗布、又はスラリー塗布を用いて、充填剤を塗布することより形成することができる。
【0079】
例えば、界面活性剤で処理された充填剤、例えば米国特許第5,589,531号;同第5,725,650号;同第5,747,559号;及び同第5,747,563号の各明細書に記載されているようなポリエチレングリコールで処理されたカーボンブラックのような、ポリエチレングリコールで処理された充填剤を使用することができる。
【0080】
上述のように、好ましくは処理済充填剤に対して計算された溶解パラメータは、マトリックス中に使用される材料、例えば1種又は2種のポリマーの溶解パラメータから10%以内にある。一例として、好ましくは、処理済充填剤の計算溶解パラメータは、+/−0.5√cal/cm以内、又は+/−0.2√cal/cm以内にある。
【0081】
本発明は、低剪断及び/又は低粘度用途において有用である。ポリマーの感受性、又は複合材料が中に存在する媒質の低粘度に起因して、或いはマトリックスの低粘度に起因して、低粘度条件又は低剪断条件下で行わなければならないポリマー複合材料又は配合物の形成時には、本発明は極めて有用である。それというのも、本発明を用いることによって、マトリックスは充填剤を湿潤することができ、低粘度条件又は低剪断条件下でマトリックス中の充填剤の均一又はほぼ均一な分散を達成することができるので、マトリックスの溶解パラメータを充填剤と適合させるか、又はほぼ適合させることにより、高剪断条件の必要性又は高粘度条件の必要性を回避することができるからである。本発明は、ポリマーが乳化ポリマー又は懸濁ポリマー(このポリマーは、乳化重合又は懸濁重合によって形成されることを意味する)であるとまた有用である。典型的に、乳化ポリマー及び懸濁ポリマーは高剪断条件に曝されるべきではない。それというのも、このような条件はポリマー、及びポリマーマトリックス中のその有用性を破壊又は損傷するからである。
【0082】
本発明のより具体的な実施態様は、充填剤、例えばカーボンブラックと、トナー粒子中に使用されるポリマー、例えばエマルジョンとを使用することを伴う。トナー粒子がエマルジョン凝集を用いて形成されるときには、例えばラテックスとカーボンブラックとを低剪断環境内で導入する。カーボンブラックとポリマーとは、ポリマーがカーボンブラックの表面を湿潤し、これにより、好適なトナー粒子である、十分に分散された粒子を有する複合材料を形成するために、互いに親和性を有していなければならない。
【0083】
本発明を用いると、カーボンブラック又はその他の顔料は、処理済粒子、例えば処理済カーボンブラックを、処理済粒子がラテックスの溶解パラメータと同様のものと(例えばラテックスの溶解パラメータから10%以内)となるように形成するために処理することができ、これにより、カーボンブラックとラテックスとが互いに親和性を有することによって、トナー中に使用されたポリマー全体にわたってカーボンブラックの均一又は実質的に均一な分散体を形成し、これにより、カーボンブラックが分散された、好ましくはカーボンブラックの凝集がほとんど又は全くないトナー粒子を最終的に形成するのを可能にする。
【0084】
本発明の実施態様の場合、本発明は、少なくとも1種のポリマーと、複合材料中に分散された少なくとも1種の処理済充填剤とを含むポリマー複合材料に関し、ポリマーの溶解パラメータと、充填剤の計算溶解パラメータとが互いに類似していることにより、ポリマー中の充填剤の望ましい分散を達成する。ポリマーの溶解パラメータと充填剤の溶解パラメータとが、互いから+/−10%以内、より好ましくは互いから+/−5%以内、より好ましくは互いから+/−1%以内にあるように、ポリマーは溶解パラメータを有し、また処理済充填剤は計算溶解パラメータを有する。例えば、ポリマーの溶解パラメータと、充填剤の計算溶解パラメータとは、好ましくは、互いから+/−0.5√cal/cm以内、又は+/−0.2√cal/cm以内にある。
【0085】
ポリマー、充填剤、処理済充填剤、並びにポリマーの溶解パラメータ、及び充填剤の計算溶解パラメータは、上記の通りである。
【0086】
処理済充填剤及びポリマーの好ましい組み合わせは下記の通りである。充填剤のそれぞれはカーボンブラックである。いずれのカーボンブラック又は他の充填剤を使用することもできる。いずれのポリマーを使用することもできる。
【0087】
【表1】

【0088】
本発明の1つ又は2つ以上の実施態様の場合、本発明は好ましくは、100平方ミクロン当たり存在する充填剤の凝集体が全くないか又は1つ以下である複合材料を提供する。充填剤の凝集とは、2つ又は3つ以上の充填剤がポリマーマトリックス中で互いに触れ合っていることを意味するものとする。このことは、TEM写真又はその他の技術、例えばSEM又はブラックライト光学顕微鏡によって測定することができる。
【0089】
本発明はまた、本発明の少なくとも1種の充填剤又は顔料を使用するトナーに関し、ここではポリマーと充填剤とは、上記の溶解パラメータ基準を満たすように選択することができる。本発明のトナーと現像剤との組成物中で使用するのに適したトナー樹脂に関しては、スチレンポリマー、例えばスチレン化アクリル樹脂を使用することができる。好ましいスチレンポリマー系樹脂の一例としては、(必ずしもこれらに限定されないが、)スチレン及びその誘導体のホモポリマー及びコポリマー、例えばポリスチレン;ポリ−p−クロロスチレン;ポリビニルトルエン;スチレン−p−クロロスチレン・コポリマー;及びスチレン−ビニルトルエン・コポリマー;スチレンとアクリル酸エステルとのコポリマー、例えばスチレン−メチルアクリレート・コポリマー;スチレン−エチルアクリレート・コポリマー;及びスチレン−n−ブチルアクリレート・コポリマー;スチレンとメタクリル酸エステルとのコポリマー、例えばスチレン−メチルメタクリレート・コポリマー;スチレン−エチルメタクリレート・コポリマー;スチレン−n−ブチルメタクリレート・コポリマー;及びスチレンとアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの多成分コポリマー;スチレンと他のビニルモノマーのコポリマー、例えばスチレン−アクリロニトリル・コポリマー、スチレン−メチルエーテル・コポリマー;スチレン−ブタジエン・コポリマー;スチレン−ビニルメチルケトンコポリマー;スチレン−アクリロニトリルインデン・コポリマー;及びスチレンマレイン酸エステル・コポリマーなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は組み合わせで使用することができる。通常、ゼログラフィ・トナーの製造に使用するのに特に適した樹脂は、融点(環球法)が100℃〜135℃であり、ガラス転移温度(Tg)が約60℃を上回る。スチレンポリマー系樹脂粒子及び好適な量の例は、米国特許第5,278,018号;同第5,510,221号;同第5,275,900号;同第5,571,654号;及び同第5,484,575号;及び欧州特許出願公開第0 720 066号の各明細書に見いだすことができる。これら全ての全体を参考のため本明細書中に引用する。
【0090】
本発明の別の又は追加の実施態様の場合、定着特性を改善するために少なくとも1種のポリマー中に分散された処理済充填剤で調製された、電子写真術のための化学トナーである複合材料が提供される。電子写真印刷の接触溶融過程では、トナー粒子の現像画像を有する紙が、高温フューザーと加圧ロールとの間のニップを通される。熱及び圧力の組み合わせにより、トナーは広がって紙に付着し、そしてこの過程はトナー定着と呼ばれる。電子写真術の定着過程は典型的には、いくつかの段階、すなわち:a)Tgを上回る温度まで加熱する段階、b)粒子を焼結する段階、c)溶融したトナーを紙上に広げる段階、d)紙内への溶融浸透の段階、及びe)Tgを下回る温度まで冷却する段階、を含む。トナー溶融レオロジーは、定着過程の段階c及びdにおいて重要な役割を演じる。カーボンブラックはポリマーの溶融粘度を高くする。5〜7重量%のカーボンブラック濃度では、トナーが広がっている間に流動溶融粘度を実質的に変化させるとは期待されないが、紙内への溶融浸透の過程は、カーボンブラックによって相当の影響を与えられる。ADHESION SCIENCE AND TECHNOLOGY, L.H. LEE編, Plenum Press, 1976, 第831-852頁においてL-H Leeによれば、含有率5重量%のカーボンブラックを有するトナーの浸透時間は、純粋ポリマーの数分の1に短くなる。Leeの発表によれば、この効果は、トナーのカーボンブラック−ポリマー組成物中の降伏値の存在に帰するものである。典型的な事務用紙の孔径は数ミクロンのオーダーにあるので、カーボンブラック凝集体はたとえ小さなものでも、紙内へのトナー流を阻止する。
【0091】
電子写真印刷に伴うこれらの問題点は、例えば、定着特性を改善するために少なくとも1種のポリマー中に分散された処理済充填剤、例えば処理済カーボンブラックで調製された化学トナーを提供することによって、本発明により少なくとも或る程度は解決される。ポリマーは、例えば、トナーを調製するのに適した乳化又は懸濁ポリマー、例えばラテックス・エマルジョン又はその他のトナー樹脂エマルジョンであってよい。1つの態様の場合、化学トナーは、本明細書中に記載されているように、例えば処理済カーボンブラック又はその他の処理済顔料であってよい処理済充填剤で調製される。例えば、処理済充填剤又は処理済カーボンブラックは、充填剤上に結合(例えば化学結合、及び共有結合など)された1つ又は2つ以上の化学基を有することができる。処理済カーボンブラックのような処理済充填剤を使用することにより、カーボンブラック粒子間の凝集相互作用を排除又は最小化し、カーボンブラック−ポリマー適合性を改善し、その結果、コンベンショナルな充填剤(無処理充填剤)を使用した場合に可能となるであろう温度よりも低い温度で、溶融トナーのより良好なレオロジー特性をもたらす。例えば、処理済カーボンブラック又はその他の処理済顔料で調製された化学トナーは、コンベンショナルなカーボンブラック又は顔料で調製された化学トナーよりも低い定着温度を有することができる。定着特性を改善するために化学トナー中に処理済充填剤、例えば処理済カーボンブラックを使用することは、任意には、上記溶解パラメータを満たすためにポリマー及び充填剤を選択する上での特徴と組み合わせて行うこともできる。
【0092】
一般に、本発明の改質充填剤又は改質顔料は、単独で又は他の顔料と一緒に、トナー組成物又は現像剤組成物の約1重量%〜約30重量%の総量で存在する。トナー組成物中に存在する顔料の量は、樹脂100重量部当たり約0.1〜約12重量部であってよい。しかしながら、より少量又はより多量の改質顔料が使用されてもよい。また一般に、トナー樹脂は、トナー組成物又は現像剤組成物の約60重量%〜約99重量%の量で存在することが可能である。
【0093】
キャリヤ添加剤;付加的な正電荷又は負電荷制御剤、例えば第四アンモニウム塩、ピリジニウム塩、スルフェート、ホスフェート、及びカルボキシレート;流動補助添加剤、シリコーン油;ワックス、例えば商業的に入手可能なポリプロピレン及びポリエチレン;マグネタイト;及びその他の周知の添加剤を含む任意の外部添加剤を、本発明のトナー組成物と混合又はブレンドすることもできる。一般に、これらの添加剤は約0.05重量%〜約30重量%の量で存在するが、しかしそれよりも少量又は多量の添加剤が、特定の系及び所望の特性に応じて選択されてもよい。添加剤及び量の具体例はまた、上記特許明細書及び欧州特許出願公開明細書に記載されており、これらを参考のため本明細書中に引用する。
【0094】
トナー組成物は、数多くの周知の方法によって、例えばコンベンショナルな溶融押し出し装置及び関連装置内で、樹脂、改質顔料粒子、任意の電荷増大添加剤、及びその他の添加剤を混合して加熱することにより、調製することができる。他の方法は噴霧乾燥などを含む。改質顔料及びその他の成分と樹脂とを配合するのに続いて、機械的磨砕及び分級を行うことにより、所望の粒度及び粒度分布を有するトナー粒子を提供する。改質顔料粒子と樹脂とを混合又はブレンドするために、粉末の乾式ブレンドのためのコンベンショナルな設備が使用されてよい。やはりこの場合も、トナー組成物及び現像剤組成物を調製するコンベンショナルな方法を用いることができ、これらの方法は、上記特許明細書及び欧州特許出願公開明細書に記載されており、これらを参考のため本明細書中に引用する。
【0095】
より詳細には、トナー材料は、バインダー樹脂と、顔料を含む全ての他の成分とを乾式ブレンドし、次いで、均質に混合された塊を形成するために高剪断ミキサー内で溶融押し出しすることにより調製することができる。この過程中、成分はバインダー樹脂の融点を上回る温度に保持し、そして樹脂中に不溶性の成分を、平均粒度が低減されるように粉砕する。均質に混合されたこの塊を冷まして凝固させておき、その後、これを平均粒度約100ミクロンまで前粉砕する。次いで、この材料にさらに、その平均粒度が分級に必要となる粒度範囲指定を満たすまで、微粉化を施す。種々の分級技術が用いられてよい。好ましいタイプは、空気分級タイプである。この方法によって、過度に大きい又は過度に小さい粉砕済材料中の粒子を、所期粒度範囲を有する材料分から分離する。
【0096】
本発明のトナー組成物は、一成分現像剤中に単独で使用されてよく、又は好適なキャリヤ粒子と混合することにより、二成分現像剤を形成することもできる。二成分現像剤組成物を形成するために使用することができるキャリヤ・ビヒクルは、種々の材料から選択することができる。このような材料は典型的には、キャリヤ・コア粒子と、膜形成樹脂の薄層で上塗りされたコア粒子とを含むことにより、採用されたトナーとの正しい摩擦電気的関係及び電荷レベルを確立するのを助ける。二成分トナー組成物に適したキャリヤは、鉄粉、ガラス・ビーズ、無機塩の結晶、フェライト粉、ニッケル粉を含む。これらの全ては典型的には、樹脂塗膜、例えばエポキシ、又はフルオロカーボン樹脂で塗布される。使用できるキャリヤ粒子及び塗膜の例は、上記特許明細書及び欧州特許出願公開明細書に記載されており、これらを参考のため本明細書中に引用する。
【0097】
本発明はさらに、画像形成方法であって、負荷電された光伝導性画像形成部材上に静電潜像を形成し、樹脂粒子及び改質顔料粒子を含むトナー組成物で潜像を現像し、そしてその後、現像された画像を好適な支持体上に転写することを含む画像形成方法に関する。上記特許明細書及び欧州特許出願公開明細書に示されたようなコンベンショナルな画像形成方法を用いることができる。
【0098】
下記特許明細書に記載されているようなトナー、樹脂、他の成分、並びにトナーの製造方法及び画像形成方法を、本出願の1種又は2種以上の充填剤(又は複合材料)と一緒に、ここで使用することができる:米国特許第7,228,092号;同第7,228,080号;同第7,226,984号;同第7,226,714号;同第7,224,917号;同第7,224,916号;同第7,224,914号;同第7,223,510号;同第7,223,509号;同第7,223,508号;同第7,221,887号;同第7,221,886号;同第7,221,881号;同第7,221,880号;同第7,220,525号;同第7,220,524号;同第D542,837号;同第7,218,880号;同第7,218,879号;同第7,217,488号;同第7,217,487号;同第7,217,486号;同第7,217,485号;同第7,215,910号;同第7,214,463号;同第7,214,461号;同第7,214,460号;同第7,214,459号;同第7,214,458号;同第7,214,412号;同第D541,847号;同第7,212,764号;同第7,212,752号;同第7,211,617号;同第7,211,362号;同第7,209,698号;同第7,209,689号;同第7,209,688号;同第7,209,687号;同第7,208,256号;同第7,208,255号;同第7,208,254号;同第7,208,253号;同第7,208,252号;同第7,206,533号;同第7,206,530号;同第7,206,526号;同第7,206,525号;同第7,205,406号;同第7,205,357号。
【0099】
本発明の一例となるように意図された下記例によって、本発明をさらに明らかにする。
【実施例】
【0100】
例1
改質カーボンブラック1の調製、混合スチレン−アクリレートによる湿潤性試験:
カーボンブラックをアニリンでジアゾニウム処理することにより、結合フェニル基を有するRegal(登録商標)660カーボンブラック(Cabot Corporationから商業的に入手可能)を調製した。1000gのRegal 660カーボンブラック試料を、447.7gの16%メタンスルホン酸と一緒にProcessAll 4Lミキサー内に装入した。5分間の混合後、反応器に63.0gのアニリンを添加した。温度が65℃に達したら、234gの水中の46.8gの亜硝酸ナトリウムの溶液を反応器にゆっくりと添加した。亜硝酸ナトリウム添加の終了後30分間にわたって、反応を実施した。
【0101】
1.1gの改質Regal 660試料(改質カーボンブラック1)を、44.3gのポリ(スチレン−コ−ブチルアクリレート)トナーポリマーB1548(Image Polymers製)と混合した。混合物を、160℃まで予熱されたBrabender Sigmaブレード・ミキサーに添加した。複合材料を60RPMで30分間にわたって混合した。ポリマー分散体から生じたフィルムを、175℃まで予熱されたCarverプレス内で、Mylarシート間で5分間にわたって2500psiでプレスした。小さなフィルム片(ほぼ1mg)を、バインダークリップで1つにまとめた顕微鏡スライド間に並べ、200℃の炉内で一晩にわたって置いた。フェニル改質Regal 660を含有する分散体の光学顕微鏡写真を図1に示し、そして非改質R66を図2に示す。フェニル改質Regal 660が、トナーポリマーを有する良好な分散体を提供したことが判る。
【0102】
例2
改質カーボンブラック2の調製、EtOAc中のその分散、ポリエステル・ポリマーとの静置、膜塗布:
カーボンブラック試料を4−フルオロアニリンでジアゾニウム処理することにより、結合4−フルオロフェニル基を有するRegal(登録商標)330カーボンブラック(Cabot Corporationから商業的に入手可能)を調製した。1200gのRegal 330カーボンブラック試料を、480.8gの8.9%硝酸と一緒にProcessAll 4Lミキサー内に装入した。5分間の混合後、反応器に75.2gの4−フルオロアニリンを添加した。温度が65℃に達したら、186.8gの水中の46.7gの亜硝酸ナトリウムの溶液を反応器にゆっくりと添加した。亜硝酸ナトリウム添加の終了後30分間にわたって、反応を実施した。反応器の処理済カーボンブラックを5体積の水で洗浄し、そして12時間にわたって85℃で乾燥させた。
【0103】
上記反応から生じた20gの乾燥試料を80gのエチルアセテートを混合し、そしてガラス・ビーズ(2mm直径、100g)の添加後、金属缶の中で、Scandexペイント震盪器内で4時間にわたって震盪させた。光散乱(UPA)によって測定した分散体の平均粒度は370nmであった。エチルアセテート中の改質R330の分散体を、ポリエステル・トナーポリマーFINE-TONE T6694(Reichholdから商業的に入手可能)のエチルアセテート溶液と一緒に静置した。静置された調製物をガラス・スライド上に塗布し、60℃で乾燥させた。結果として生じたポリエステル膜は、0.5%の改質Regal 330カーボンブラックを含有した。このフィルムの光学画像(図2)は、カーボンブラック凝集体を示さず、またブラック顔料とポリエステル樹脂との優れた適合性を示す。
【0104】
例3
改質カーボンブラック3の調製(スチレンアクリルでペレット化されたR660):スチレンアクリル水性エマルジョンLucidene 361(Rohm & Haasから商業的に入手可能)を噴霧することにより、スチレンアクリルポリマーが吸着されたRegal 660カーボンブラックを調製した。50gのLucidene 361試料を204gのDI水で希釈し、バッチ・ペレタイザー内で、500gのRegal 660カーボンブラック試料上にゆっくりと噴霧した。エマルジョン添加終了後30分間にわたって、ペレタイザー内の混合を続けた。カーボンブラックを12時間にわたって85℃で乾燥させた。
【0105】
1.1gの改質Regal 660試料を、44.3gのポリ(スチレン−コ−ブチルアクリレート)トナーポリマーB1548(Image Polymers製)と混合した。混合物を、160℃まで予熱されたBrabender Sigmaブレード・ミキサーに添加した。複合材料を60RPMで30分間にわたって混合した。ポリマー分散体から生じたフィルムを、175℃まで予熱されたCarverプレス内で、Mylarシート間で5分間にわたって2500psiでプレスした。小さなフィルム片(ほぼ1mg)を、バインダークリップで1つにまとめた顕微鏡スライド間に並べ、200℃の炉内で一晩にわたって置いた。ポリマー改質Regal 660を含有する分散体の光学顕微鏡写真を図4に示す。分散体の品質が、図2に示された非改質R660よりも著しく良いことが判る。
【0106】
例4
改質カーボンブラック3(Joncryl 611を有するR330)の調製、EtOAc中のその分散、トナーポリマー膜との静置:
Joncryl 611樹脂(Johnsonポリマーから商業的に入手可能)を有するエチルアセテート中にカーボンブラックを分散させることにより、スチレンアクリル樹脂が吸着されたRegal 330カーボンブラックを調製した。20gのRegal 330試料を、10gのJoncryl 611樹脂及び70gのエチルアセテートと、金属缶の中で混合した。ガラス・ビーズ(2mm直径、100g)を加え、Skandexペイント震盪器内に4時間にわたって置いた。光散乱(UPA)によって測定された結果としての分散体の平均粒度は223nmであった。R330(練り顔料)の分散体を、ポリエステル・トナーポリマーFINE-TONE T6694(Reichholdから商業的に入手可能)のエチルアセテート溶液と一緒に静置した。静置された調製物をガラス・スライド上に塗布し、60℃で乾燥させた。結果として生じたポリエステル膜は、1%のRegal 330カーボンブラックを含有した。このフィルムの光学画像(図4)は、カーボンブラック凝集体を示さず、またブラック顔料とポリエステル樹脂との優れた適合性を示す。
【0107】
例5
3.0gのRegal 660を、60gのポリ(スチレン−コ−ブチルアクリレート)と手動で混合した。混合物を、160℃まで予熱されたBrabender Sigmaブレード・ミキサーに添加した。複合材料を3分間にわたって混合した。混合を停止し、Brabenderを室温まで冷ましておいた。複合材料を取り出した。このバルク材料から3つの試料を選んだ。これらの3つの試料をダイヤモンド・ミクロトームを使用して断面し、グリッド上に載せ、そしてTEMによって分析した。複合材料はポリマーマトリックスと充填剤とから成る。充填剤はカーボンブラック、すなわち、ブチルベンゾエールで改質されたRegal 660である。ポリマーマトリックスは、ポリ(スチレン−コ−ブチルアクリレート)である。画像枠にはいくつかの凝集体が観察されることが明らかである。
【0108】
例6
3.0gのMogul Lを、60gのポリ(スチレン−コ−ブチルアクリレート)と手動で混合した。混合物を、160℃まで予熱されたBrabender Sigmaブレード・ミキサーに添加した。複合材料を3分間にわたって混合した。混合を停止し、Brabenderを室温まで冷ましておいた。複合材料を取り出した。このバルク材料から3つの試料を選んだ。これらの3つの試料をダイヤモンド・ミクロトームを使用して断面し、グリッド上に載せ、そしてTEMによって分析した。2ミクロンを上回る凝集体が13個見られる。
【0109】
出願人は、この開示内容に全ての引用文献の内容全体を取り込む。さらに、量、濃度、又は他の値又はパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値として表されているときには、これは、範囲が別個に開示されているか否かにかかわらず、任意の上限範囲又は好ましい値と任意の下限範囲又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示しているものとして理解されるべきである。数値範囲が挙げられている場合には、特に断りのない限り、範囲は、その終点、及びその範囲以内の全ての整数及び端数を含むものとする。本発明の範囲は、数値範囲を定義したときに挙げられた具体的な値に限定されるものではない。
【0110】
本発明のその他の実施態様は、本明細書を考察し、本明細書中に開示された本発明を実施することから、当業者に明らかになる。本明細書及び例は、添付の特許請求の範囲及びこれと同等のものによって示される本発明の真の範囲及び思想を有する単なる一例と考えられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と着色剤とを含むトナー組成物であって、該着色剤が、
a)
式:−Ar、−Ar−Alkx
【化1】

のうちの1つを有する少なくとも1つの有機基が結合された顔料を含む改質顔料である(該有機基は、該顔料に直接に結合されており、そしてArはアリール又はアリーレン基であり、Alkはアルキル又はアルキレン基であり、xは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、lは1〜5の整数であり、kは1〜10の整数であり、mは10−kであり、そしてxが2以上である場合には、置換基のそれぞれは同じであるか又は異なっている)か、或いはb)該着色剤の表面上に少なくとも1種のフェニル含有ポリマーが吸着された顔料を含む改質顔料である、トナー組成物。
【請求項2】
該着色剤が、
式:−Ar、−Ar−Alkx
【化2】

のうちの1つを有する少なくとも1つの有機基が結合された顔料を含む改質顔料であり、該有機基は、該顔料に直接に結合されており、そしてArはアリール又はアリーレン基であり、Alkはアルキル又はアルキレン基であり、xは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、lは1〜5の整数であり、kは1〜10の整数であり、mは10−kであり、そしてxが2以上である場合には、置換基のそれぞれは同じであるか又は異なっている、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項3】
該トナー組成物のアスペクト比が、約1.0〜約3.0である、請求項2に記載のトナー組成物。
【請求項4】
該トナー組成物の平均粒度が約3〜約10ミクロンである、請求項2に記載のトナー組成物。
【請求項5】
該着色剤が、該着色剤の表面上に少なくとも1種のフェニル含有ポリマーが吸着された顔料を含む改質顔料である、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項6】
前記吸着されたフェニル含有ポリマーが、ポリスチレン、ポリ(スチレン−アクリレート)、ポリエステル、又はポリ(フェニルメチルシロキサン)である、請求項5に記載のトナー組成物。
【請求項7】
該トナー組成物の平均粒度が約3〜約10ミクロンである、請求項5に記載のトナー組成物。
【請求項8】
該着色剤が、炭素相と金属含有種相とを含む炭素生成物である、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項9】
前記トナー組成物が化学トナーである、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項10】
該着色剤が、ブルー顔料、ブラック顔料、ブラウン顔料、シアン顔料、グリーン顔料、ホワイト顔料、バイオレット顔料、マゼンタ顔料、レッド顔料、イエロー顔料、オレンジ顔料、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項11】
該着色剤が炭素生成物である、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項12】
該着色剤がカーボンブラックである、請求項1に記載のトナー組成物。
【請求項13】
i) 前記改質着色剤を含む水性分散体と、少なくとも1種のポリマーを含む水性エマルジョンと、任意のワックスとを合体させることにより、混合物を形成し;ii) 該混合物から凝固トナーを形成し、そしてiii) 該ポリマーのTgを上回るように該凝固トナーを加熱することによりトナーを形成する、ことを含む、請求項1に記載のトナー組成物を製造する方法。
【請求項14】
工程ii)が、該混合物と、少なくとも1種の凝固剤とを合体させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、工程iii)後に、該トナーをカプセル化する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
i) 少なくとも1種のモノマー中で前記改質着色剤の分散体を形成し;ii) 水性媒質中で該分散体の懸濁液を形成し;そしてiii) 該懸濁液を重合することにより、トナーを形成する、ことを含む、請求項1に記載のトナー組成物を製造する方法。
【請求項17】
さらに、工程iii)後に、該トナーをカプセル化する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
i) 少なくとも1種の非水性溶媒と少なくとも1種のポリエステルとを含むポリマー溶液中で、前記改質着色剤の分散体を形成し;ii) 水性媒質中で該分散体のエマルジョンを形成し;そしてiii) 該溶媒を蒸発させることによりトナーを形成する、ことを含む、請求項1に記載のトナー組成物を製造する方法。
【請求項19】
さらに、工程iii)後に、該トナーをカプセル化する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種のポリマー中で分散された処理済充填剤を含む電子写真術のための化学トナーであって、該化学トナーが、無処理充填剤で製造される場合よりも低い定着温度を有することができ、前記少なくとも1種のポリマーが任意に溶解パラメータを有し、そして前記処理済充填剤が計算溶解パラメータを有し、前記溶解パラメータと前記計算溶解パラメータとが互いから10%以内にある、電子写真術のための化学トナー。
【請求項21】
該処理済充填剤が、処理済カーボンブラックを含む、請求項20に記載の化学トナー。
【請求項22】
該処理済充填剤が、少なくとも1つの化学基が結合されたカーボンブラックを含む、請求項20に記載の化学トナー。
【請求項23】
少なくとも1種のポリマーが乳化ポリマーを含む、請求項20に記載の化学トナー。
【請求項24】
前記溶解パラメータと前記計算溶解パラメータとが互いから5%以内にある、請求項20に記載の化学トナー。

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−529502(P2010−529502A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511211(P2010−511211)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/007163
【国際公開番号】WO2008/153972
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】