説明

カールを防止した折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙

【課題】 従来、空気中の水分の吸湿の影響によるカールを防止するために、用紙の抄造工程でカール対策がされたり、複数本の線の印刷することによりカールを低減させる方法が提案されているが、自由な印刷を行った後にカール対策ができなかったり、折りたたみ状の用紙には印刷加工を適用することが出来ない等の問題があった。
【解決手段】 本発明は、基紙の上面に設けた感熱発色層と、該感熱発色層の上面に設けたオ紫外線硬化型樹脂層と、基紙の裏面(発色層と逆の面)に設けた紫外線硬化型樹脂の無色透明層とからる折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙を実現することによって、空気中の水分吸収による縦目方向のカールを低減させることにより従来の問題を解決したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カールを防止した折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙に関するものである。
本発明のカールを防止した折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙は、水道,ガス,電気等の検針に用いられるハンディーターミナルのプリンタ等に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水道,ガス,電気等の検針に用いられるハンディーターミナルのサーマルプリンタには、ロール状のサーマルプリンタ用紙と折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙が使用されているが、いずれのタイプの用紙もプリンタに収容できるサーマルプリンタ用紙が印字するシート数を増量するために、紙厚が薄くなってきており、現在ではその厚さは55μm以下になっている。サーマルプリンタ用紙は、その表面に感熱層や保護層が設けられており、その表面と裏面の構成が異なるために、その厚さがこのように薄くなると、空気中の水分の吸湿の影響を受けやすくなり、図3に示すように用紙の縦目方向にカールが発生する。
ロール状のサーマルプリンタ用紙は、用紙をロールに巻いた時の巻癖により横目方向にカールがついているために、水分の吸湿の影響による縦目方向のカールに対しては抵抗力があるため、紙厚が極薄になっても縦目方向のカールの発生は大きくない。
これに対し、折りたたみ状のサーマルプリンタ用紙は、巻き癖がないために、図3に示すように、用紙の縦目方向に大きなカールが発生していた。
【0003】
【特許文献1】特開2003−276338号公報
【特許文献2】特願平8−290660号公報
【特許文献3】特開平8−187941号公報,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、空気中の水分の吸湿の影響によるカールを防止するために、用紙の抄造工程でカール対策がされたり、複数本の線の印刷することによりカールを低減させる方法が提案されているが、自由な印刷を行った後にカール対策ができなかったり、折りたたみ状の用紙には印刷加工を適用することが出来ない等の問題があった。
又、印刷によるカール対策では、塗工材料と塗工量が適切に設定されていないと、紙滑りや印字不安定を引き起こしたり、用紙裏面の印刷の見栄えが悪くなったり、密着性が悪くなったりするだけでなく、塗工材料が水性エマルジョンなどでは塗工装置が大型となり利便性が悪いという問題点もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基紙の上面に設けた感熱発色層と、該感熱発色層の上面に設けた紫外線硬化型樹脂層と、基紙の裏面(発色層と逆の面)に設けた紫外線硬化型樹脂の無色透明層とからる折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙を実現することによって、空気中の水分吸収による縦目方向のカールを低減させることにより従来の問題を解決したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、自由な印刷加工の上に全面又は一部に適当な量の紫外線硬化型樹脂の塗工を行うことにより、カール対策を防止することが出来るので、印刷内容に支障をきたすことなく安定した塗工量が管理でき、ハンディーターミナルで印字した際の滑りや品質に問題が発生しない。
また、感熱裏面の印刷の上から、透明の紫外線硬化型樹脂のコート層を設けるので、光沢度が上がり、見栄えも優れているため裏面広告などのイメージアップにつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のサーマルプリンタ用紙の実施形態について説明する。
図1は本発明のサーマルプリンタ用紙の実施例を説明するためのサーマルプリンタ用紙の断面図を示したものである。
図1において、11は感熱紙の基紙、12は感熱紙の感熱層である。13は必要に応じて感熱層の上に紫外線硬化型インキで印刷したアミ印刷やパターン印刷などである。14は最上部の紫外線硬化型樹脂層である。
紫外線硬化型樹脂層14は、記録の保存性、耐コスレ汚れ性、耐水性等の向上策のために設けられているものである。
15は、感熱紙の基紙の裏側に設けられた紫外線硬化型樹脂層である。
【0008】
図1における 紫外線硬化型樹脂層11,15は、紫外線の照射により硬化反応し得る二重結合を1個以上有するモノマーまたはプレポリマーの紫外線硬化性化合物を主成分とする塗液を塗布又は印刷の後、紫外線を照射することにより紫外線硬化性化合物が重合し、硬化されて形成されるものである。
図1に示すようなサーマルプリンタ用紙は、その表面に上記のような各種の加工が施されているために、空気中の水分の吸湿は、裏面に比べて小さな値になっておりこれがカールの原因となっていた。
紫外線硬化型樹脂層15の空気中の水分の吸湿特性は、紫外線硬化性化合物の種類、塗布量、紫外線照射量、重合開始剤量および添加剤などを適宜選択することにより調整される。
又、紫外線硬化型樹脂層15は、アミやパターンなどの部分的な樹脂層、ベタなどのような全面(全体)的な樹脂層いずれを選んでも良い。
紫外線硬化型樹脂層15は、溶剤系などモノマー反応の少ない材料にて感熱層反応が少ない材質が選ばれている。
尚、本発明が適用される折りたたみ式サーマルプリンタ用紙は、必要に応じてオーバーコート層やアンダーコート層が追加されても良い。
【0009】
上記の本発明のサーマルプリンタ用紙の構成を決定するために、下記に示すような、紫外線硬化型樹脂層15を設けていない通常のサーマルプリンタ用紙によるテスト試料1と、図1に示した紫外線硬化型樹脂層15を設けたサーマルプリンタ用紙によるテスト試料2と、テスト試料3と、テスト試料4の4種類のサーマルプリンタ用紙のテスト試料を作成した。

テスト試料1:紫外線硬化型樹脂層15の塗工量 0g/m
基紙の下面に樹脂層が塗工されていないサーマルプリンタ用紙

テスト試料2:紫外線硬化型樹脂層15の塗工量 0.16g/m
基紙の下面に熱可塑性樹脂からなる樹脂層15を0.16g/m塗工したサーマルプリンタ用紙

テスト試料3:紫外線硬化型樹脂層15の塗工量 0.90g/m
基紙の下面に熱可塑性樹脂からなる樹脂層15を0.90g/m塗工したサーマルプリンタ用紙

テスト試料4:紫外線硬化型樹脂層15の塗工量 1.50g/m
基紙の下面に熱可塑性樹脂からなる樹脂層15を1.50g/m塗工したサーマルプリンタ用紙
【0010】
これらの4種類のテスト試料に対して、以下の、a.カール度合い評価、b.印刷加工時の滑り評価、c.印字安定性、d.インキ減感性の各種品質評価テストを行ってその特性を測定することにより、カールだけでなく印刷加工時の滑り、印字安定性、インキ減感性により優れた効果が得られるサーマルプリンタ用紙の構成を確定した。
a.カール度合い評価
環境条件23℃、80%RHの条件下に、図3に示すように、用紙の表面を上側にしてカットサンプルを24時間放置して、カールの付き度合いを示す用紙の端部のカールの位置Aを測定した。
b.印刷加工時の滑り評価
国際チャート印刷機を使用して、印刷加工(折処理及び断裁加工)を行い、滑り度合いを目視で確認した。
c.印字安定性評価
キャノン(株)製造 ハンディーターミナルプリンター(HT280,プレアCT−1)で環境条件23℃50%RH,40℃90%RH,−5℃Dry(低湿度)にてテストパターンを印字しそのプリント印字の寸法測定を行った。
d.インキ減感性評価
60℃Dry(低湿度)及び40℃90%RHの環境条件に72時間放置後の試料において、感熱裏面のニス塗工部分が感熱表面に接触する部分において、最発色するかを確認した。
【0011】
上記のaからdの品質評価テストの結果を下記の如く判定した。
○:全て良好
×:全て悪い
図2の表は、上記の試料1から試料4のサーマルプリンタ用紙の上記の各テスト試料の結果を示したものである。
図2の表に示された結果から明らかなように、テスト試料1、テスト試料2のサーマルプリンタ用紙ではカールが発生するが、テスト試料3、テスト試料4のサーマルプリンタ用紙は、共にカールの発生を実用上問題の無い程度に低減することが出来ることが判明したが、テスト試料4では、印刷加工時の滑りが発生することが判明した。
このため、紫外線硬化型樹脂層15の塗工量を調整してテストを行った結果、紫外線硬化型樹脂層15の塗工量は0.47〜1.32g/m 程度が滑りは抑えられ、印刷加工や印字の品質を安定させることができるようになり適当であることが判明した。
感熱紙裏面に紫外線硬化型樹脂を全面又は一部に適当な量塗工することによって、紙厚が極薄(55μm以下)のハンディーターミナルプリンター用シートのカールが低減することができることが証明された。
また、裏面に自由な印刷の後に上から塗工することができるようになり、光沢度が上がり見栄えも優れるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、サーマルプリンタが使用される各種の産業で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のサーマルプリンタ用紙の構成を説明するためのサーマルプリンタ用紙の断面図を示したものである。
【図2】テスト試料1からテスト試料4のサーマルプリンタ用紙の各種のテスト結果を示した表である。
【図3】カールの発生の状態と、評価テスト試料に対するカール度合い評価の方法を説明した図である。
【符号の説明】
【0014】
11・・・感熱紙の基紙
12・・・感熱紙の感熱層
13・・・感熱層の上に紫外線硬化型インキで印刷したアミ印刷やパターン印刷
14・・・最上部の紫外線硬化型樹脂層
15・・・感熱紙の基紙の裏側に設けられた紫外線硬化型樹脂層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の上面に感熱発色層を有するサーマルプリンタ用紙において、基紙の裏面(発色層と逆の面)に紫外線硬化型樹脂の無色透明層を設けることによりカールを防止しすることを特徴とする折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙。
【請求項2】
基紙の上面に設けた感熱発色層と、該感熱発色層の上面に設けた紫外線硬化型樹脂層と、基紙の裏面(発色層と逆の面)に設けた紫外線硬化型樹脂の無色透明層とからなり、カールを防止することを特徴とする折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙。
【請求項3】
請求項1乃至 請求項2において、基紙の裏面に塗工する紫外線硬化型樹脂層の塗工量は0.47〜1.32g/m であることを特徴とする折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙。
【請求項4】
請求項1乃至 請求項2において、基紙の裏面に塗工する紫外線硬化型樹脂は、用紙の全面に塗工することを特徴とする折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙。
【請求項5】
請求項1乃至 請求項2において、基紙の裏面に塗工する紫外線硬化型樹脂は、用紙の一部に塗工することを特徴とする折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙。
【請求項6】
請求項1乃至 請求項2において、基紙の裏面に塗工する紫外線硬化型樹脂は、溶剤系などモノマー反応の少ない材料にて感熱層反応が少ないものを使用することを特徴とする折りたたみ式のサーマルプリンタ用紙。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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