説明

カールコード及びカールコードの製造方法

【課題】通電が行われて加熱されることによるバネ性の低下が少なく、大電流通電が可能なカールコードを提供する。
【解決手段】電気自動車用充電ケーブルに適用されるカールコード1は、複数の線心6a,6b,6c,6dと該複数の線心6a,6b,6c,6dを覆った絶縁性のシース7とでなるコード本体4と、シース7に一体化された鋼線5と、を有し、螺旋状に加工されることにより伸縮自在とされている。鋼線5は、予め螺旋状に塑性変形されたものがシース7に一体化されている。また、カールコード1は、引張されていない状態で、シース7の外表面同士が密着しないように間隔をあけて螺旋状に巻かれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のバッテリに充電を行うための電気自動車用充電ケーブル等を構成するカールコード、及び、カールコードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の電気自動車用充電ケーブルを示す概略図である(特許文献1を参照。)。図5において、符号10は電気自動車を示しており、符号12は充電スタンドを示しており、符号103は電気自動車用充電ケーブルを示している。この電気自動車用充電ケーブル103は、電気自動車10のバッテリに充電を行うためのものであり、充電スタンド12に接続されたストレートケーブル(SAE J1772適合品等)101と、このストレートケーブル101の先端に取り付けられ、電気自動車10のジャック11に差し込まれるコネクタ2と、を備えている。
【0003】
上記ストレートケーブル101は、図6及び図7に示すように、複数の線心106a,106b,106c,106dと、これら複数の線心106a,106b,106c,106dを覆ったシース107と、介在105と、で構成されている。また、前記線心106a,106b,106c,106dは、それぞれ、芯線108と、この芯線108を被覆した絶縁被覆109と、で構成されている。
【0004】
上記ストレートケーブル101は、長さが3〜7メートル程度であり、未使用時には充電スタンド12の筐体に巻き付けられているか、束ねられて充電スタンド12の筐体内に収容されている。また、使用時には、巻きほぐす、或いは、束をといて引き伸ばして使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−226112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の電気自動車用充電ケーブル103においては、以下に示す問題があった。すなわち、電気自動車用充電ケーブル103は、ストレートケーブル101の充電スタンド12への収納作業が面倒なため、電気自動車10への充電後に正しく収納されることなく路上に放置されるおそれがあり、車輌に踏み潰されて破損するおそれがあるという問題があった。
【0007】
なお、ストレートケーブル101の充電スタンド12への収納作業及び引き出し作業を容易にするために、ストレートケーブル101を、図8に示すカールコード201に変更することが考えられる。このカールコード201は、引張されていない状態で、軸方向に隣り合う部分同士が密着するように間隔をあけずに螺旋状に巻かれたコードである。しかしながら、従来のカールコード201は、ストレートケーブル101と比較して許容電流値が低く、しかも、引張された状態で通電が行われて加熱されることによりバネ性が失われ、外力を外した際に復元しなくなるという問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、通電が行われて加熱されることによるバネ性の低下が少なく、大電流通電が可能なカールコード、及び、カールコードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、複数の線心と該複数の線心を覆ったシースとでなるコード本体を有し、螺旋状に加工されることにより伸縮自在とされたカールコードにおいて、螺旋状に塑性変形された鋼線が前記シースに一体化されていることを特徴とするカールコードである。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、引張されていない状態で、前記シースの外表面同士が密着しないように間隔をあけて螺旋状に巻かれていることを特徴とするものである。
【0011】
上記目的を達成するために請求項3に記載された発明は、複数の線心と該複数の線心を覆ったシースとでなるコード本体と、該コード本体の前記シースに一体化された鋼線と、を有し、螺旋状に加工されることにより伸縮自在とされたカールコードの製造方法であって、予め螺旋状に塑性変形された前記鋼線を棒の外周に固定し、該鋼線に沿うように前記コード本体を前記棒に巻き付け、そして、当該コード本体を加熱した後、急冷却することによって前記鋼線を前記シースに一体化させることを特徴とするカールコードの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、螺旋状に塑性変形された鋼線が前記シースに一体化されているので、通電が行われて加熱されることによるバネ性の低下が少なく、大電流通電が可能なカールコードを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、引張されていない状態で、前記シースの外表面同士が密着しないように間隔をあけて螺旋状に巻かれており、外気に触れる表面積が大きくなるように形成されているので、放熱性を高めることができ、線心の絶縁被覆の溶解による破壊を防止することができる。よって、大電流通電が可能なカールコードを提供することができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、予め螺旋状に塑性変形された前記鋼線を棒の外周に固定し、該鋼線に沿うように前記コード本体を前記棒に巻き付け、そして、当該コード本体を加熱した後、急冷却することによって前記鋼線を前記シースに一体化させるので、接着剤を使用することなく、容易にコード本体と鋼線とを一体化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるカールコードが適用された電気自動車用充電ケーブルを示す概略図である。
【図2】図1に示されたカールコードの拡大図である。
【図3】図2に示されたカールコードを他方向から見た平面図である。
【図4】図3中のA−A線に沿った断面図である。
【図5】従来の電気自動車用充電ケーブルを示す概略図である。
【図6】図5に示されたストレートケーブルの構成を説明する説明図である。
【図7】図6に示されたストレートケーブルの断面図である。
【図8】従来のカールコードを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態にかかる「カールコード」及び「カールコードの製造方法」を、図1〜4を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明のカールコード1は、電気自動車用充電ケーブル3に適用される。図1において、符号10は電気自動車を示しており、符号12は充電スタンドを示しており、符号3は電気自動車用充電ケーブルを示している。この電気自動車用充電ケーブル3は、電気自動車10のバッテリに充電を行うためのものであり、充電スタンド12に接続されたカールコード1と、このカールコード1の先端に取り付けられ、電気自動車10のジャック11に差し込まれるコネクタ2と、を備えている。
【0018】
上記カールコード1は、図2〜4に示すように、複数の線心6a,6b,6c,6dと該複数の線心6a,6b,6c,6dを覆った絶縁性のシース7とでなるコード本体4と、シース7に一体化された鋼線5と、を有し、螺旋状に加工されることにより伸縮自在とされている。
【0019】
上記複数の線心6a,6b,6c,6dは、それぞれ、芯線8と、この芯線8を被覆した絶縁被覆9と、で構成されている。前記芯線8は、素線径0.08mm以下の高強度電気用軟銅線が複数撚り合わされて構成されている。また、前記絶縁被覆9は、ショアA硬度60〜70、耐熱温度85〜105℃の塩化ビニル混合物で構成されている。このように、複数の線心6a,6b,6c,6dは、カールコード1のバネ性に影響を与えない柔軟でかつ耐熱性の高い材料で構成されている。これら線心6a,6b,6c,6dは、カールコード1の外径の9倍以下のピッチで撚り合わされた状態でシース7に被覆されている。また、複数の線心6a,6b,6c,6dのうち、6a,6b,6cは、バッテリを充電するための電流が流される電源線であり、6dは信号線である。
【0020】
上記シース7は、ショアA硬度85〜95、反発弾性50〜70%、耐熱温度85〜105℃の塩化ビニル重合体を主成分とした熱可塑性エラストマーで構成されている。このように、シース7は、カールコード1のバネ性を高めるために弾性を有する材料で構成されている。このシース7は、複数の線心6a,6b,6c,6d間の隙間を埋めるように充填被覆されている。
【0021】
上記鋼線5は、図2に示すように、カールコード1の外径Dの2倍のピッチで予め螺旋状に塑性変形されたものがシース7に一体化されている。また、鋼線5は、図3などに示すように、螺旋状のコード本体4の内周に一体化されている。また、鋼線5は、線径が1.0mm以上であり、亜鉛メッキ又はハードクロムメッキが施されて防錆対策がなされている。
【0022】
また、上記カールコード1は、図2に示すように、引張されていない状態で、シース7の外表面同士が密着しないように間隔をあけて螺旋状に巻かれている。この間隔は、本実施形態では、カールコード1の外径Dと等しくされている。すなわち、カールコード1は、当該カールコード1の外径Dの2倍のピッチ(P=2D)で螺旋状に巻かれている。また、本発明においては、カールコード1の巻きピッチが、当該カールコード1の外径Dの2倍以上(P≧2D)であることが望ましい。このようにP≧2Dとすることで、カールコード1は、通電時の導体抵抗によって生じた熱を放熱し、ストレートケーブルと同等の許容電流値を満足する。
【0023】
続いて、上述したカールコード1の製造方法について説明する。まず、予め螺旋状に塑性変形された鋼線5を棒の外周に固定し、この鋼線5に沿うようにコード本体4を引っ張りながら棒に巻き付ける。そして、このコード本体4を、棒ごと140〜180℃の高温環境下で所定時間加熱した後に急冷却する。これにより、鋼線5は、シース7に食い込み強密着する。
【0024】
このように、本発明のカールコード1は、螺旋状に塑性変形された鋼線5がシース7に一体化されているので、通電が行われて加熱されることによるバネ性の低下を抑制することができる。そのために、大電流通電が可能となる。
【0025】
さらに、本発明のカールコード1は、引張されていない状態で、シース7の外表面同士が密着しないように間隔をあけて螺旋状に巻かれており、外気に触れる表面積が大きくなるように形成されているので、放熱性を高めることができ、線心6a,6b,6c,6dの絶縁被覆9の溶解を防止し、破壊を防止することができる。そのために、大電流通電が可能となる。また、本発明のカールコード1は、許容電流値が、一般コードすなわちストレートコードとほぼ同等(95〜90%)となる。
【0026】
また、上述したカールコード1の製造方法によれば、シース7を一旦溶かすことによって鋼線5をシース7に一体化させるので、接着剤を使用することなく、容易にコード本体4と鋼線5とを一体化させることができる。
【0027】
また、本発明のカールコード1を用いた電気自動車用充電ケーブル3は、カールコード1の充電スタンド12への収納作業及び引き出し作業を容易にすることができる。すなわち、充電後にカールコード1を巻き付けたり、束ねたりする作業や、充電前にカールコード1を巻きほぐしたり、束をといて引き伸ばしたりする作業が無くなる。これにより、電気自動車10への充電後に電気自動車用充電ケーブル3が路上に放置されることを防止でき、該電気自動車用充電ケーブル3が車輌に踏み潰されて破損することを防止できる。さらに、この電気自動車用充電ケーブル3は、使用時及び未使用時に地面に接触することがないので、シース7の地面との接触による磨耗を防止できる。
【0028】
また、上述した実施形態では、カールコード1が電気自動車用充電ケーブル3に用いられる例を説明したが、本発明のカールコード1は、電気自動車用充電ケーブル3以外に用いられても良い。
【0029】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 カールコード
4 コード本体
5 鋼線
6a,6b,6c,6d 線心
7 シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線心と該複数の線心を覆ったシースとでなるコード本体を有し、螺旋状に加工されることにより伸縮自在とされたカールコードにおいて、
螺旋状に塑性変形された鋼線が前記シースに一体化されていることを特徴とするカールコード。
【請求項2】
引張されていない状態で、前記シースの外表面同士が密着しないように間隔をあけて螺旋状に巻かれていることを特徴とする請求項1に記載のカールコード。
【請求項3】
複数の線心と該複数の線心を覆ったシースとでなるコード本体と、該コード本体の前記シースに一体化された鋼線と、を有し、螺旋状に加工されることにより伸縮自在とされたカールコードの製造方法であって、
予め螺旋状に塑性変形された前記鋼線を棒の外周に固定し、該鋼線に沿うように前記コード本体を前記棒に巻き付け、そして、当該コード本体を加熱した後、急冷却することによって前記鋼線を前記シースに一体化させることを特徴とするカールコードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243399(P2012−243399A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109098(P2011−109098)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】