説明

カール矯正装置及びカール矯正装置を備えた画像形成装置

【課題】 振動や騒音等の発生がなく、安定して用紙が搬送できるカール矯正装置及びカール矯正装置を備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 第1のローラ部材と、第2のローラ部材とを互いに圧接して、それぞれ回転可能に設けると共に、駆動源の駆動力を前記第2のローラ部材に伝達するための歯車列からなる歯車伝達機構を有し、前記駆動源により前記第2のローラ部材を回転駆動させることにより、前記第1のローラ部材と前記第2のローラ部材との圧接部を通過する用紙のカールを矯正するカール矯正装置において、前記歯車列に、同一形状同一モジュールの歯形を有する2枚の歯車を軸方向に重ね合わせて設け、それぞれ前記2枚の歯車に係合し、それぞれ前記2枚の歯車が互いに逆方向に回転するように付勢する付勢部材とからなる歯車装置を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙のカールを矯正するカール矯正装置及びカール矯正装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の複写機やプリンタ、あるいは、ファクシミリ等の画像形成装置は、一般に、小型にできており、狭い空間に巧みに設けられた複雑な搬送経路を通過することにより、用紙に高品位で高精細な画像が形成されて出力されるようになっている。
【0003】
そこで、例えば、用紙が保管されているときに生じた用紙の曲がり癖や、複雑な搬送経路を通過しながら画像形成等が行われる時に生じた曲がり癖は、高品位で高精細な画像の形成を阻害し、また、円滑な搬送作動を阻害することが多いため、画像形成装置には、用紙の曲がり癖(カール)を矯正するカール矯正装置(デカーラともいう。)が組み込まれていることが多い。
【0004】
従来のカール矯正装置としては、例えば、小径のローラを大径のローラに圧接して、用紙が圧接部を通過する際に、用紙のカールを矯正するようにしたカール矯正装置や大径ローラにV字状の弾性部材を圧接して、同様に、用紙のカールを矯正するカール矯正装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−171171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の小径ローラを大径ローラに圧接してカールを矯正する型式のカール矯正装置は、一般に、小径ローラは硬度の高い金属等の材質で構成され、大径ローラは硬度の低い材質、例えば、樹脂やゴム等からなる弾性体で構成されており、互いに強く圧接するように設けられている。
【0006】
このようなカール矯正装置は、例えば、大径ローラが回転すると小径ローラが強い圧接力により従動回転し、互いのローラの圧接部に用紙が搬入され、搬出されるとき、つまり、圧接部を用紙が通過する時にカールが矯正されるようになっており、構造が簡単であるため、良く使用されている。
【0007】
しかしながら、カール矯正装置が作動を停止している時間が長ければ長い程、互いに圧接された位置が変化せず、圧接状態を継続することになるので、弾性体である樹脂やゴム等からなる大径ローラが金属からなる小径ローラにより凹状に変形することがある。
【0008】
このように変形した状態になった大径ローラは、回転を始めても、すぐには変形が復元しない。従って、変形した状態で回転を継続すると、大径ローラの凹状の変形部が小径ローラと圧接する位置に回転してきたとき、大径ローラの凹状の変形により、瞬間的には小径ローラとの圧接が解除された状態となり、圧接による負荷がなくなった大径ローラが急激に回転速度を速めて回転する。また、大径ローラが回転を続けて、この変形部が圧接部を通過し終わる状態になると、今度は変形のない部分が再び強く圧接されて、通常の回転速度に戻るというように、スポンジローラの変形部では、回転速度が速くなったり遅くなったりする現象を繰り返すことになる。
【0009】
このような現象が生じると、駆動源の駆動力を大径ローラに伝達する歯車列では、大径ローラの軸に固着された大径ローラ駆動歯車の回転速度が同様に変化する。
【0010】
そこで、互いに噛み合う歯車においては、一般に、歯と歯を噛み合わせた時に隙間ができるようになっており、このバックラッシュと呼ばれる隙間が有るため、大径ローラ駆動歯車の回転速度の急激な変化により、互いに噛み合う歯面同志が追突や離間を繰り返えすことになり、結果として振動や騒音等が発生することになる。
【0011】
従って、このように振動や騒音等が発生するカール矯正装置を使用すると、画像形成装置においては、振動や騒音等が問題になるだけでなく、振動や騒音等により画像形成装置の耐久性等を阻害すると共に、安定した用紙の搬送ができなくなるという問題が生じる。
【0012】
特に、複写機やプリンタ、あるいは、ファクシミリ等の画像形成装置に、このようなカール矯正装置を用いた場合には、安定した用紙の搬送ができないことから、高品位で高精細な画像形成ができなくなるという大きな問題があった。
【0013】
しかしながら、特許文献1においては、小型省スペース、かつ低コストで効率よくカット後のロール状記録紙のカールを矯正するカール矯正装置に関する技術は公開されているが、このような振動や騒音等に関する問題には着目されておらず、この問題は未だに解決されていない。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑み、振動や騒音等の発生がなく、安定して用紙が搬送できるカール矯正装置及びカール矯正装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記構成を採ることで上記目的を達成できる。
(請求項1)
第1のローラ部材と、第2のローラ部材とを互いに圧接して、それぞれ回転可能に設けると共に、駆動源の駆動力を前記第2のローラ部材に伝達するための歯車列からなる歯車伝達機構を有し、前記駆動源により前記第2のローラ部材を回転駆動させることにより、前記第1のローラ部材と前記第2のローラ部材との圧接部を通過する用紙のカールを矯正するカール矯正装置において、
前記歯車列の少なくとも1つの歯車に代えて、
同一形状同一モジュールの歯形を有する2枚の歯車を軸方向に重ね合わせて設け、
それぞれ前記2枚の歯車に係合し、
それぞれ前記2枚の歯車が互いに逆方向に回転するように付勢する付勢部材とからなる歯車装置を設けたことを特徴とするカール矯正装置。
(請求項2)
前記歯車装置の一方の歯車を前記第2のローラ部材の回転軸に固着したこと
を特徴とする請求項1に記載のカール矯正装置。
(請求項3)
前記付勢部材は、
前記2枚の歯車を軸方向に重ね合わせた時、
互いの歯車で形成される軸方向の空間に配置されること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカール矯正装置。
(請求項4)
前記第2のローラ部材の前記第1のローラ部材と圧接する部分が、スポンジ部材で構成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のカール矯正装置。
(請求項5)
前記第1のローラ部材の前記第2のローラ部材と圧接する部分が、前記第2のローラ部材の前記第1のローラ部材と圧接する部分より硬度の高い部材で形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のカール矯正装置。
(請求項6)
前記第1のローラ部材より前記第2のローラ部材が大径であること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のカール矯正装置。
(請求項7)
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のカール矯正装置を備えたこと
を特徴とするカール矯正装置を備えた画像形成装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、カール矯正装置に設けられた歯車伝達機構の歯車列に、同一形状同一モジュールの歯形を有する2枚の歯車と、それぞれ前記2枚の歯車が互いに逆方向に回転するように付勢する付勢部材とからなる歯車装置を設けることにより、簡単な構成で、安価に、しかも、振動や騒音がなく、安定して用紙が搬送できるカール矯正装置およびカール矯正装置を備えた画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各図面において、同一符号のものは同一の物を示すものとし、適宜、関連する他の図面を参照して、詳細に説明するものとする。
【0018】
図1は本発明に係るカール矯正装置を備えた画像形成装置の概略図、図2は本発明に係るカール矯正装置の概略図、図3は本発明に係るカール矯正装置の画車装置の構成図、図4は本発明に係るカール矯正装置の歯車装置の分解図である。
【0019】
図1により本発明に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0020】
本発明の実施の形態における画像形成装置20は、電子写真方式の複写機とする。電子写真方式の複写機はよく知られているので、本発明と直接関わりのない部分に関しては簡単に説明する。
【0021】
20は画像形成装置、30は画像形成装置20に装着された自動原稿送り装置(ADF)である。
【0022】
画像形成装置20は、筐体1の右側面部に、比較的少量の転写材Pを供給するための手差し皿2が設けられ、左側面部には排紙皿3が設けられている。
【0023】
排紙皿3には、後述する給紙カセット12や手差し皿2から供給され、画像が形成された転写材Pが排紙され積載するようになっている。
【0024】
筐体1の底面部には画像形成装置20を移動できるようにするための複数のローラ(キャスターともいう。)4が設けられている。
【0025】
筐体1の前面の上部には、画像形成装置20を作動させるための表示手段及び操作入力手段としてのコントロールパネルCPが設けられている。
【0026】
コントロールパネルCPには、表示手段DPとしての液晶表示装置、あるいは、液用表示装置にタッチパネル等が組み込まれたタッチパネル式の液晶表示装置がある。
【0027】
また、コピー(印刷、プリント又は印字ともいう。)をカラー又は白黒の何れにするか等の種々の画像形成条件やコピー枚数や部数等の制御関連情報の入力のために、数値等を入力するキーボードKB、及び、コピー等の一連の画像形成動作を実行させるスタート釦(コピー釦ともいう。)SK等からなる操作入力手段が入力装置として設けられている。
【0028】
特に、タッチパネル式の表示手段DPは、表示部に示される数字や文字や記号等が描かれたボタン等の図柄に使用者が触れると、表示部に示される情報の選択や設定等の入力ができるようになっており、例えば、転写紙Pの片面のみに転写して画像を形成する片面モードや転写紙の両面に画像を形成する両面モード等の作動モード等の選択設定を必要とする項目に対する入力手段を兼ねている。
【0029】
筐体1の内部には、制御手段EC、転写分離手段8,定着装置10、画像形成手段11、画像読取手段13、給排紙手段14、中間転写体16及び本実施の形態においてはカール矯正装置15等が設けられている。
【0030】
制御手段ECは、制御回路とも呼ばれ、画像形成装置20の全ての作動を制御するための手段であり、CPU(中央演算装置:Cental Processing Unit)等からなる電気回路で構成されている。そして、CPUに予め記憶された制御プログラムや制御データ等に基づき、画像形成装置20を構成する全ての手段を駆動制御するようになっている。
【0031】
また、画像形成装置20にADF30等の付属装置が接続されている場合は、同様に、制御手段ECは、これらの付属装置と協働して、画像形成装置20のシステムとして全体が円滑に作動するように駆動制御する。
【0032】
更に、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)等で、パーソナルコンピュータあるいは、他の情報機器等と接続されている場合も、制御手段ECは、これらの機器と協働して、作動に必要な情報の記憶や授受を含め支障なく円滑に駆動制御できるものとする。
【0033】
画像形成手段11は、原稿の画像情報に基づく画像を形成するための手段である。本実施の形態はタンデム方式と呼ばれており、イエロー(Y)画像を形成する画像形成ユニット11Y、マゼンタ(M)画像を形成する画像形成ユニット11M、シアン(C)画像を形成する画像形成ユニット11C、黒(K)画像を形成する画像形成ユニット11Kを、後述する中間転写体に沿って、上部から下部へと縦方向に順に画像形成装置20の内部に配置している。
【0034】
画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、何れも同様の作動を行うので、画像形成ユニット11Yに関してのみ説明する。
【0035】
例えば、モータ等の駆動源により予め設定された作像方向(例えば、紙面に向かって反時計方向)に回転する感光体ドラム5Y(感光体とも言う。)、感光体ドラム5Yを一様に帯電する帯電手段6Y、原稿の画像情報(画像データともいう)に基づき信号化され、感光体ドラムに静電潜像を形成する露光光EY、感光体ドラム5Yに形成された静電潜像をトナー像として顕像化する現像手段7Y、感光体ドラムに形成されたトナー像を中間転写体16に転写する転写分離手段8Y(1次転写手段ともいう。)、トナー像が中間転写体16に転写された後、感光体ドラムに残留するトナーや紙粉等を掻き落とすためのクリーニング手段9Y等により構成されている。
【0036】
そして、それぞれの画像形成ユニットで形成されたトナー像は、例えば、時計方向に回転するベルト状の中間転写体16に順に転写され重ね合わされるようになっている。
【0037】
中間転写体16に転写されたそれぞれの色のトナー像は、接触転写手段8(転写分離手段ともいう。)としての転写ローラ8により静電気力により中間転写体16から転写紙Pに転写される。
【0038】
トナー像が転写された転写紙Pは、定着装置10を通過する工程で、トナー像が溶融固着(定着)され、Y、M、C、Kのトナーによるカラー画像が形成された転写紙Pは、その後、排紙皿3に排出されるようになっている。
【0039】
本実施の形態における転写分離手段8は、例えば、接触転写方式による転写ローラ8として構成され、中間転写体16と対向する転写位置に配置されており、中間転写体16上に形成されたトナー像を転写紙Pにトナ像の極性とは逆極性の電荷を付与して静電気力で転写するための手段である。なお、転写分離手段はこれに限らず、非接触転写方式により構成しても良いことは言うまでもない。
【0040】
クリーニング手段9は、中間転写体16に残存するトナーや紙粉等を除去するもので、ブレードやブラシローラ等により構成されている。
【0041】
画像読取手段13は、光源LT、ミラー群MR、結像レンズLZ等からなる読取光学系と、CCD(固体撮像素子)等を含む電気回路からなる読取装置ESとで、構成されている。
【0042】
読取装置ESは、画像形成装置20が複写機の場合は、自動原稿送り装置30の底部側に位置し、筐体1の上部に設けられたプラテンガラス(図示せず)上に載置した原稿や、自動原稿送り装置30により、読取位置に搬送された原稿の画像情報を読取り、デジタルの画像データに変換して、制御手段ECに設けられた記憶手段に画像データを記憶するようになっている。
【0043】
また、ADF30により搬送された原稿を画像読取手段13で読み取る場合は、読取位置に搬送された原稿を光源LTが照射し、ミラー群MRを介して、原稿からの反射光を結像レンズLZにより読取装置ESのCCD面に結像させ、CCDの出力する画像情報を画像データとして記憶するようになっている。
【0044】
給排紙手段14は、例えば、特殊な転写紙を収納するカセット12aと、普通紙を収納するカセット12b等とで構成されている給紙カセット12と、駆動源としてのモータや複数のローラ等からなる給排紙搬送装置(転写紙搬送手段)として構成されている。
【0045】
また、給排紙手段14は、給紙カセット12からレジストローラR2に向かう自動給紙搬送経路X1,手差し皿2からレジストローラR2に向かう手差し給紙搬送経路X2、および、レジストローラR2から接触転写手段8、定着装置10を通り、例えば、排紙ローラHRの回転方向の変更による反転作動で転写紙Pを反転し、レジストローラR2に向かう反転搬送経路X3,そして、レジストローラR2から接触転写手段8、定着装置10を通り、排紙ローラHRにより排紙皿3に転写氏Pを排出する排紙搬送経路X4等を備えている。
【0046】
特に、本実施の形態においては、カール矯正装置15は、前述の自動給紙搬送経路X1と手差し給紙搬送経路X2の搬送経路中と、排紙搬送経路X4の排紙ローラHRと排紙皿3の間とに、2箇所設けられている。
【0047】
自動給紙搬送経路X1と手差し給紙搬送経路X2の搬送経路中に設けられたカール矯正装置15は、給紙カセット12や手差し皿2から給紙される転写紙Pのカールを矯正し円滑に搬送することで、接触転写手段8による転写ベルト16からのトナー像の転写をカールのない転写紙Pに確実に行い、排紙搬送経路X4に設けられたカール矯正装置15は、定着装置10から円滑に転写紙Pを搬送することで定着ムラ等のない確実な定着を実行すると共に、画像が形成された転写紙Pをカールのない状態で排出することで、高品位で高精細な画像形成が成された転写紙P提供できるようになっている。
【0048】
そして、給排紙手段14としての給排紙搬送装置は、制御手段ECの指示により、駆動源であるモータ等を回転させることにより、複数のローラ群等を回転駆動させて、手差し皿2や給紙カセット12から供給された転写紙PをレジストローラR2により適切なタイミングで中間転写体16に向けて給紙搬送し、片面モード又は両面モードで形成されたトナー像を定着するために定着装置10を通過させ、トナー像が溶融固着(定着)され画像が形成された転写紙Pをカール矯正装置を通過させて排紙皿3へ排紙搬送するようになっている。
【0049】
ADF30は、搬送装置全体がADF筐体31で覆われ、ADF筐体31の外部に原稿載置台32と排紙部33が設けられている。
【0050】
原稿載置台32には、第1頁の原稿面(表面)を最上部にした状態の複数の原稿WPが載置される。載置された原稿WPは、複数のローラ等により構成される原稿搬送装置により読取位置に搬送され、読取装置ESで読み取られ、排紙部33に排紙される。
【0051】
原稿搬送装置は、図示せぬ駆動制御回路により、画像形成装置20の制御手段ECと連動して作動するようになっている。
【0052】
次に、カール矯正装置について説明する。
【0053】
図2は、図1の画像形成装置に対して紙面の裏側から見た状態での排紙搬送経路X4に設けられたカール矯正装置を示している。なお、本実施の形態におけるカール矯正装置は、設置される搬送経路が異なっても構成や作用等が同様であるため、個々のカール矯正装置に関する説明は割愛する。
【0054】
HRは一対のローラからなる排紙ローラである。本実施の形態においては、排紙皿3へ転写紙を排紙する場合は、紙面に向かって時計方向に回転し、両面モード等で、転写紙Pの表裏を反転させて反転搬送経路X3に搬送する場合は、転写紙Pの後端が排紙皿3方向に通過する寸前に回転を停止し、排紙する場合とは逆に反時計方向に回転するようになっている。
【0055】
G2、G3、G5、G6は、転写紙Pを円滑に搬送させるためのガイド部材である。特に、G2とG3は、それぞれG21とG31を回転中心として回転できるようになっているので、搬送経路内の清掃や点検等が容易に行うことができる。
【0056】
カール矯正装置15は、小径ローラ15aと大径ローラ15bが図示せぬ付勢装置で強く圧接され、大径ローラ15bが回転駆動されると小径ローラ15aは、圧接力により従動回転されるように構成されている。そして、詳細は後述するが、一般には、小径ローラ15aは大径ローラ15bより硬度の高い材質で形成されている。
【0057】
GAは大径ローラ15bの回転軸15dにネジ等の締結部材により着脱可能に固着された大径歯車、GCはモータ等の駆動源(図示せず。)に設けられた駆動歯車、GBは大径歯車GAと駆動歯車GCに噛み合う中間歯車である。GA、GB、GCは大径ローラ15bを回転させるための歯車列として駆動源と共に歯車伝達機構を構成している。
【0058】
従って、制御回路ECの指示により駆動源を作動させると、駆動歯車GC、中間歯車GB、大径歯車GAの順で駆動力が伝達され、大径ローラ15bを回転させることにより、カール矯正装置15は、2点鎖線で示す排紙搬送経路X4に沿って転写紙Pが搬送され、圧接部を通過させることによりカールを矯正することができるようになっている。
【0059】
なお、カールを矯正するためには、小径ローラ15aは大径ローラ15bより硬度の高い材質が好ましく、大径ローラ15bは弾性体が好ましい。
【0060】
従って、小径ローラを硬度の高い金属や樹脂を用いて、例えば、圧接部(外周部)を小径ローラ軸と一体に、又は小径ローラ軸の周囲に形成したり、大径ローラを弾性体であるウレタン樹脂やスポンジ等で作製しても良いが、本実施の形態においては、カールが矯正し易い組合せとして、小径ローラ15aを、例えば、金属のステンレスで一体に作製した金属ローラとし、大径ローラ15bを回転軸15dの周囲に弾性体であるスポンジを用いたスポンジローラとして構成した。
【0061】
次に、図3により、本発明に係るカール矯正装置に設けられた歯車装置について説明する。
【0062】
歯車装置GADは、後述する2枚の歯車GA1とGA2および付勢部材SPにより構成される。なお、本実施の形態においては、一例として、例えば、圧力角が20°のインボリュート(involute)歯形からなる平歯車を同一形状同一モジュール(module)の歯形を有する2枚の歯車として使用する場合について説明する。なお、モジュールmは、歯車の歯の大きさを表す値で、ピッチ円直径をd、歯数をZとしたとき、m=d/Zで示されるものである。
【0063】
2枚の歯車GA1とGA2は、前述の1枚の大径歯車GA(大径ローラ駆動歯車ともいう。)に相当し、同一形状同一モジュールの歯形を有する2枚の歯車GA1とGA2を、大径ローラ15bの回転軸15dの軸方向に重ね合わせることにより構成され、歯車GA1とGA2を重ね合わせた状態で中間歯車GBと噛み合うことができるようになっている。
【0064】
また、歯車GA1とGA2の形状は、歯車GA1とGA2とを軸方向に重ね合わせたとき、重ね合わされた部分の内側に空間が生じるような形状にして、この空間に、2枚の歯車GA1とGA2とが互いに逆方向に回転するように付勢する付勢部材SPを収納するように配置している。
【0065】
付勢部材SPは、例えば、ステンレスのバネ線材により両端部に係合部を有するネジリコイルバネとして成形されたものを用いるようにすると、成形も簡単で、適切な付勢力を得ることも容易であり、しかも、前述の空間にも容易に収納できるという利点がある。
【0066】
なお、本実施の形態においては、歯車装置CADを大径歯車GA部分に用いたので、駆動源の駆動力が大径ローラ15bに伝達されるように、2枚の歯車GA1とGA2のうち、どちらか1枚の歯車を回転軸15dと一体に回転できるようにする必要があり、例えば、回転軸15dの先端部15cの断面を一部分だけ半月状に加工し、半月状に加工された回転軸15dの先端部側に嵌合する歯車GA1の軸穴GA1Hを同様に半月状の穴にして、一体回転できるようにしている。
【0067】
そして、カール矯正装置15の歯車列に、大径歯車GAに代えて、前述の歯車装置GADを設けることで、中間歯車GBに対して、歯車GA1とGA2が互いに逆方向に回転するようにαだけ位相がずれて噛み合うので、バックラッシュが除去されることになる。
【0068】
つまり、歯車装置GADによるこのバックラッシュの除去作動は、付勢部材SPの付勢力により、歯車の回転速度の変動で、互いに噛み合う歯面に対して追突や離間を生じる恐れのある動きが、このαの位相で弾性的に吸収されバックラッシュが除去されるようになっている。
【0069】
従って、大径ローラ15bの回転速度が不安定になり、大径ローラ15bと一体回転する歯車GA1の回転速度が不安定になった場合も、カール矯正装置15に歯車装置GADを設けることにより、前述のようにバックラッシュが弾性的に吸収され除去されて振動や騒音等が発生しないようになるので、安定した円滑な転写紙Pの搬送を行うことができるようになる。
【0070】
図4は、歯車装置を組み立てる手順を示したものである。
【0071】
歯車装置GADを組み立てる場合は、大径ローラ15bが図示せぬ支持部材に回転可能に取り付けられているので、まず、予め大径ローラ15bが固着された回転軸15dに対して、歯車GA2の軸穴GA2dを嵌合させ、次に、付勢部材SPを挿入し、続いて、歯車GA1を挿入する。
【0072】
歯車GA1を回転軸15dに挿入するときは、歯車GA1の半月状の軸穴GAHと回転軸15dの断面が半月状の先端部15cとを方向を定めて嵌合させる。
【0073】
このとき、例えば、歯車GA2を回転させて組み込むようにすると、付勢部材SPの一方の係合部SPaが歯車GA2の係合穴GA2に挿入され係止され、引き続いて回転させると、付勢部材SPが歯車GA2と一体に回転し、付勢部材SPの他方の係合部SPbが歯車GA1の係合穴GA1bに挿入され係止される。
【0074】
その後、例えば、Eリング、あるいはCリングと呼ばれる止め輪として作製された抜け止め部材(図示せず。)を回転軸15dに取り付けることで、歯車装置GADが回転軸15dから外れることがないように組み立てられる。
【0075】
そして、付勢部材SPによる所定の付勢力が得られるように、再び歯車GA2を所定方向に所定回転させて付勢力を調整した後に、歯車GA1とGA2に噛み合う中間歯車GBを取り付ければ、設定した付勢力による噛み合い状態が維持できるようになる。なお、前述した組立順序は一例を示したもので、この順序に限るものではない。
【0076】
また、カール矯正装置に設けられた伝達歯車装置の歯車列に歯車装置GADを設ける場合は、大径ローラ15bの回転速度の変動による振動や騒音等を防止するために、本実施の形態のように、大径ローラ15bと一体に回転する大径歯車GAに代えて歯車装置GADを設けることが望ましいが、何らかの理由で、大径歯車GAに代えて歯車装置GADを設けることができない場合は、例えば、本実施の形態における中間歯車GBのように、歯車列の中で、回転速度変動を生じる大径歯車GAにできる限り近い歯車に代えて歯車装置GADを設けることが好ましい。
【0077】
そして、例えば、本実施の形態における中間歯車GBに代えて歯車装置GADを設けた場合は、噛み合う歯車に駆動力を伝達すればよく、歯車装置GADの歯車GA1とGA2の何れも軸に固定する必要はないので、前述の歯車GA1の軸穴GA1Hのように半月状の穴にする必要はない。
【0078】
以上のように、本発明の実施の形態においては、同一形状同一モジュールの歯形を有する2枚の歯車GA1とGA2と、2枚の歯車GA1とGA2を互いに逆方向に回転するように付勢する付勢部材SPとからなる歯車装置GADを設けたので、簡単な構成で、安価に、しかも、振動や騒音がなく、安定して用紙が搬送できるカール矯正装置およびカール矯正装置を備えた画像形成装置を提供できるようになった。
【0079】
特に、歯車装置GADの一方の歯車GA1を大径ローラ15の回転軸15dに固定すれば、大径ローラ15を直接回転させることができ、しかも、大径ローラ15が回転した時に回転速度の変動が生じたとしても振動や騒音の発生を防止することができるカール矯正装置およびカール矯正装置を備えた画像形成装置を提供できるようになった。
【0080】
また、2枚の歯車を軸方向に重ね合わせた時、互いの歯車で形成される軸方向の空間に付勢部材が配置されるようにしたので、少ない部品で簡単で小型なカール矯正装置およびカール矯正装置を備えた画像形成装置を提供できるようになった。
【0081】
また、第1のローラ部材を第2のローラ部材より硬度の高い部材で形成し、第2のローラ部材を第1のローラ部材より大径の大径ローラとし、しかも大径ローラをスポンジ部材で構成したので、用紙のカールを容易に矯正することができるカール矯正装置およびカール矯正装置を備えた画像形成装置を提供できるようになった。
【0082】
なお、本実施の形態においては、画像形成装置として複写機に付いて説明したが、画像形成装置がプリンタやファクシミリ装置であっても良いことは言うまでもない。
【0083】
また、本実施の形態においては、一例として、例えば、圧力角が20°のインボリュート歯形からなる平歯車を同一形状同一モジュール(module)の歯形を有する2枚の歯車として使用することにしたが、同様の作用効果が得られるのであれば歯車の種類は平歯車に限らず、また、歯形もこれに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係るカール矯正装置を備えた画像形成装置の概略図。
【図2】本発明に係るカール矯正装置の概略図。
【図3】本発明に係るカール矯正装置の画車装置の構成図。
【図4】本発明に係るカール矯正装置の歯車装置の分解図。
【符号の説明】
【0085】
1 筐体
2 手差し皿
3 排紙皿
4 ローラ
5 感光体ドラム
6 帯電手段
7 現像手段
8 転写分離手段
9 クリーニング手段
10 定着装置
11 画像形成手段
12 給紙カセット
13 画像読取手段
14 給排紙手段
15 カール矯正装置
16 中間転写体
20 画像形成装置
30 自動原稿送り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のローラ部材と、第2のローラ部材とを互いに圧接して、それぞれ回転可能に設けると共に、駆動源の駆動力を前記第2のローラ部材に伝達するための歯車列からなる歯車伝達機構を有し、前記駆動源により前記第2のローラ部材を回転駆動させることにより、前記第1のローラ部材と前記第2のローラ部材との圧接部を通過する用紙のカールを矯正するカール矯正装置において、
前記歯車列の少なくとも1つの歯車に代えて、
同一形状同一モジュールの歯形を有する2枚の歯車を軸方向に重ね合わせて設け、
それぞれ前記2枚の歯車に係合し、
それぞれ前記2枚の歯車が互いに逆方向に回転するように付勢する付勢部材とからなる歯車装置を設けたことを特徴とするカール矯正装置。
【請求項2】
前記歯車装置の一方の歯車を前記第2のローラ部材の回転軸に固着したこと
を特徴とする請求項1に記載のカール矯正装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、
前記2枚の歯車を軸方向に重ね合わせた時、
互いの歯車で形成される軸方向の空間に配置されること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカール矯正装置。
【請求項4】
前記第2のローラ部材の前記第1のローラ部材と圧接する部分が、スポンジ部材で構成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のカール矯正装置。
【請求項5】
前記第1のローラ部材の前記第2のローラ部材と圧接する部分が、前記第2のローラ部材の前記第1のローラ部材と圧接する部分より硬度の高い部材で形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のカール矯正装置。
【請求項6】
前記第1のローラ部材より前記第2のローラ部材が大径であること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のカール矯正装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のカール矯正装置を備えたこと
を特徴とするカール矯正装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−151607(P2006−151607A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345714(P2004−345714)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】