説明

ガイドワイヤ包装体

【課題】ガイドワイヤの先端部の変形を防止することのできるガイドワイヤ包装体を提供すること。
【解決手段】ガイドワイヤ包装体1は、ループ状に巻回した状態に維持された突出口212を有する管体21および管体21に突出口212から先端部23aを突出させた状態で収納されたガイドワイヤ23を有するガイドワイヤ収納物2と、シート材41、42を重ね合わせてシールすることにより形成されたガイドワイヤ収納物2を収納する収納空間Sおよびシールにより形成されたシール部43が外側に向けて突出した凸部を有する包装体4と、ガイドワイヤ収納物2に固定され、ガイドワイヤ収納物2が収納空間Sに収納された状態において前記凸部に係合することにより収納空間S内でのガイドワイヤ収納物2の回転を抑制する回転規制部材3とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤ包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
外科的手術が困難な部位、または人体への低侵襲を目的とした治療・検査、例えばPTCA術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈血管形成術)等におけるカテーテルの誘導にガイドワイヤが用いられる。ガイドワイヤは長尺な線材であり、その使用目的上、変形による癖が付き易くなっている。
【0003】
そのため、ガイドワイヤの搬送は、搬送時に加わる衝撃による不本意な変形を防止するために、留め具によってループ状に固定され、先端部にインサータが接続された管体にガイドワイヤをその先端部がインサータから突出するように収納し(以下、「ガイドワイヤ収納物」と言う)、さらにガイドワイヤ収納物の無菌状態(滅菌状態)を維持するために、ガイドワイヤ収納物を包装体で包装した状態で行われる。なお、ガイドワイヤの先端部をインサータから突出させているのは、硬質なインサータの内壁とガイドワイヤの先端部との接触を防止して、ガイドワイヤの先端部の不本意な変形を防止するためである。
【0004】
しかしながら、ガイドワイヤ収納物は、包装体に固定されていないため、搬送時の振動等によって包装体内で回転してしまうことがある。包装体内でガイドワイヤ収納物が回転すると、管体から突出したガイドワイヤの先端部が包装体の縁部等に接触し変形(湾曲、屈曲等)する。
【0005】
ここで、特許文献1には、搬送時に加わる衝撃によって管体からガイドワイヤの先端が飛び出さないように、管体を、その基端側の曲率半径が他の部分よりも小さくなるようにループ状に固定した構成が開示されている。また、特許文献1では、硬質なシート部材に設けられた複数のツメに管体を係合させることにより、管体を前記形状に維持し、管体がシート部材とともに包装体に包装される。このような構成によれば、結果として、搬送時の振動等によって包装体内で管体が回転するのを防止できる場合もある。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ループ状に固定した状態の管体よりも大きいシート部材を用意しなければならないため包装体の大型化を招く。また、シート部材が硬質であるため、シート部材にある程度の厚みを設ける必要があり、この点からも包装体の大型化を招く。また、シート部材を用意しなければならないことから部品点数の増加を招く。さらには、ガイドワイヤの使用時には、シート部材から管体を取り外さなければならないため、ガイドワイヤの使い勝手が悪化し、さらには、取り外したシート部材の処理等、施術中の不要な作業が増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−6782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成でガイドワイヤの先端部の変形を防止することができ、さらには、少ない部品定数で大型化を招くことがなく、ガイドワイヤの使い勝手を損ねることのないガイドワイヤ包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。また、(11)〜(18)であるのが好ましい。
【0010】
(1) ループ状に巻回した状態に維持された突出口を有する管体、および前記管体に前記突出口から先端部を突出させた状態で収納されたガイドワイヤを有するガイドワイヤ収納物と、
シート部材を重ね合わせてシールすることにより形成された前記ガイドワイヤ収納物を収納する収納空間および前記シールにより形成されたシール部が外側に向けて突出した凸部を有する包装体と、
前記ガイドワイヤ収納物に固定され、前記ガイドワイヤ収納物が前記収納空間に収納された状態において前記凸部に係合することにより前記収納空間内での前記ガイドワイヤ収納物の回転を抑制する回転規制部材とを有することを特徴とするガイドワイヤ包装体。
【0011】
(2) 前記収納空間は、前記凸部によって形成される第1の角部と、前記第1の角部と異なる位置に設けられた第2の角部とを有し、前記第1の角部に前記回転規制部材が係合している状態にて、前記ガイドワイヤの先端部が前記第2の角部によって形成された領域に位置している上記(1)に記載のガイドワイヤ包装体。
【0012】
(3) 前記第1の角部および前記第2の角部の少なくとも一方は、90°より大きい上記(2)に記載のガイドワイヤ包装体。
【0013】
(4) 前記収納空間は、前記包装体の平面視での形状が五角形をなし、該五角形が有する5つの角部のうちの隣り合う2つの角部が共に90°で、他の3つの角部がそれぞれ90°以上であり、90°以上の前記3つの角部に、前記第1の角部および前記第2の角部の少なくとも一方が含まれている上記(2)または(3)に記載のガイドワイヤ包装体。
【0014】
(5) 前記包装体は、矩形状をなす2枚のシート材を重ね合わせ、前記2枚のシート材の3辺をシールすることにより形成された第1のシール部と、前記第1のシール部の対向する一対の辺同士を連結するように前記2枚のシート材をシールすることにより形成された第2のシール部とを有し、
前記第1の角部は、前記第2のシール部によって形成されており、
前記第2の角部は、前記第2のシール部と前記第1のシール部との連結部によって形成されている上記(2)ないし(4)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0015】
(6) 前記第1の角部は、前記包装体の外周に臨んでいない上記(2)ないし(5)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0016】
(7) 前記シール部は、前記ガイドワイヤ収納物の前記凸部と離間する方向への移動を規制する移動規制シール部を有している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0017】
(8)前記移動規制シール部は、前記ガイドワイヤ収納物を介して前記凸部と対向するように形成されている上記(7)に記載のガイドワイヤ包装体。
【0018】
(9) 前記回転規制部材は、前記管体の一部が嵌合する少なくとも1つ以上の溝を有している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0019】
(10) 前記回転規制部材は、留め具を兼ねている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0020】
(11) 前記包装体は、偏平状に構成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0021】
(12) 前記シール部は、前記収納空間内に形成された前記凸部を有している上記(1)に記載のガイドワイヤ包装体。
【0022】
(13) 前記包装体は、前記収納空間内にガスを透過することのできるガス透過性を有する部位を有している上記(1)ないし(12)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0023】
(14) 前記包装体は、前記収納空間内を視認することのできる光透過性を有する部位を有している上記(1)ないし(13)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0024】
(15) 前記回転規制部材は、前記管体に嵌合することにより前記ガイドワイヤ収納物に固定される上記(1)ないし(14)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0025】
(16) 前記回転規制部材は、前記管体のループの外側に突出するように設けられている上記(1)ないし(15)のいずれか記載のガイドワイヤ包装体。
【0026】
(17) 前記回転規制部材は、長手形状をなしている上記(1)ないし(16)のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【0027】
(18) 前記回転規制部材の先端部は、丸み付けされている上記(17)に記載のガイドワイヤ包装体。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、回転規制部材が凸部と係合しているため、収納空間内でのガイドワイヤ収納物の回転が防止される。そのため、搬送中に、ガイドワイヤ先端部のシール部との接触による変形を防止することができる。また、ガイドワイヤ先端部とシール部材との接触を防止することができるため、包装体の破損を防止することができ、ガイドワイヤ収納物の無菌状態(滅菌状態)を維持することもできる。
【0029】
また、収納空間が第1の角部と第2の角部を有し、第1の角部に回転規制部材を係合させた状態にて、ガイドワイヤ先端部を第2の角部によって形成された領域に位置させることにより、ガイドワイヤ先端部の周囲に比較的広い空間を確保することができる。そのため、より確実に、ガイドワイヤ先端部のシール部との接触による変形を防止することができる。この効果は、第2の角部を90°以上とすることでより顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のガイドワイヤ包装体の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のガイドワイヤ包装体が有する留め具を示す斜視図である。
【図3】図1のガイドワイヤ包装体が有する回転規制部材を示す斜視図である。
【図4】図1中のA−A線断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかるガイドワイヤ包装体が有する回転規制部材を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるガイドワイヤ包装体が有する回転規制部材を示す斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかるガイドワイヤ包装体を示す平面図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかるガイドワイヤ包装体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明のガイドワイヤ包装体の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、本発明のガイドワイヤ包装体の第1実施形態を示す平面図、図2は、図1のガイドワイヤ包装体が有する留め具を示す斜視図、図3は、図1のガイドワイヤ包装体が有する回転規制部材を示す斜視図、図4は、図1中のA−A線断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の右側を「右」、左側を「左」という。
【0033】
図1に示すガイドワイヤ包装体1は、ガイドワイヤ収納物2と、ガイドワイヤ収納物2に固定された回転規制部材3と、ガイドワイヤ収納物2を包装する包装体4とで構成されている。このようなガイドワイヤ包装体1では、包装体4内でのガイドワイヤ収納物2の回転が回転規制部材3によって防止または抑制(以下、単に「防止」と言う)されており、これにより、ガイドワイヤ収納物2が有するガイドワイヤ23の先端部23aの不本意な変形やこの変形により癖が付くことを防止している。
【0034】
以下、ガイドワイヤ収納物2、回転規制部材3および包装体4について順次詳細に説明する。
【0035】
(ガイドワイヤ収納物)
図1に示すように、ガイドワイヤ収納物2は、管体21と、インサータ24と、複数の留め具22と、ガイドワイヤ23とで構成されている。
【0036】
管体21は、ガイドワイヤ23を収納しガイドワイヤ23を保護する。管体21は、可撓性を有するチューブで構成されている。管体21の両端は開口しており、一方の開口がガイドワイヤ23を挿入する挿入口211であり、他方の開口が挿入口211から挿入されたガイドワイヤ23をインサータ24を介して突出させる突出口212である。
【0037】
管体21の全長としては、収納するガイドワイヤ23の全長によって異なるが、例えば、ガイドワイヤ23の全長と等しいか若干短く設定される。これにより、後述するように、管体21の突出口212からガイドワイヤ23の先端部23aを簡単に突出させることができる。ただし、管体21の全長としてはこれに限定されず、例えば、ガイドワイヤ23の全長よりも長くてもよい。
【0038】
また、管体21は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明とすることが好ましい。ここで、「実質的に透明」とは、可視光の透過度が60%以上程度の透明性を有するものをいう。また、「実質的に透明」には、無色透明の他、有色(着色)透明も含まれる。
【0039】
管体21の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
【0040】
図1に示すように、管体21は、複数の留め具22によって、ループ状(渦巻状)に巻回した状態に維持される。この状態では、管体21のループの外側に突出口212が位置し、内側に挿入口211が位置している。また、挿入口211は、管体21の巻回軸213を介して突出口212とほぼ反対側に位置している。これにより、例えば、管体21に収納されたガイドワイヤ23の末端部側が挿入口211から突出していても、当該突出した部位が使用者の手元から離間した位置にあるため、前記突出した部位がガイドワイヤ23の操作を妨げるのを防止することができる。
【0041】
複数の留め具22は、管体21をループ状(渦巻状)に巻回させた状態を維持する機能を有している。このような複数の留め具22は、ループ状に巻回させた管体21の周方向に離間してほぼ等間隔で設けられている。また、複数の留め具22のうちの留め具22aが管体21の突出口212近傍に設置されており、留め具22bが管体21の挿入口211近傍に設置されている。これにより、管体21の両端部のぶらつきが抑制され、管体21の全域をループ状に維持することができる。また、ガイドワイヤ23の使用時にガイドワイヤ23を管体21から引き出し易くなる。
【0042】
各留め具22の構成としては、管体21をループ状に巻回させた状態を維持することができれば、特に限定されず、例えば、図2(a)に示すように、板状の基板221に並行する複数の溝222を形成した構成とすることができる。このような構成の留め具22では、図2(b)に示すように、各溝222に管体21を嵌合(嵌入)することによって管体21をループ状に巻回させた状態を維持する。
【0043】
なお、留め具22の構成としては管体21をループ状に巻回させた状態を維持することができれば特に限定されない。また、本実施形態では留め具22を4つ設けているが、留め具22の数としては特に限定されず、1つであってもよいし、4つ以外の複数であってもよく、必要に応じて留め具22の数を決定することができる。
【0044】
管体21の突出口212には、インサータ24が着脱自在に接続されている。インサータ24は、例えば、管体21内に収納されたガイドワイヤ23をカテーテル内部に挿入する際に使用される。インサータ24は、その先端部と基端部とを連通する連通孔241を有し、基端側の開口が、管体21の突出口212に接続されている。
【0045】
図1に示すように、管体21およびインサータ24内には、ガイドワイヤ23が収納されている。本実施形態のガイドワイヤ23は、その先端部23aがJ字状に形状付けされている。また、ガイドワイヤ23が管体21に収納された状態において、ガイドワイヤ23の先端部23aは、インサータ24を通過してインサータ24の先端側開口242からインサータ24の外部へ突出している。このように、ガイドワイヤ23の先端部23aをインサータ24から突出させておくことにより、例えば、インサータ24の内壁との接触による先端部23aの不本意な変形(例えば、J字状の形状付けが直線状に矯正されるような変形)を防止することができる。
【0046】
ガイドワイヤ23の構造や構成材料等は、特に限定されず種々の構成のものを用いることができる。例えば、ガイドワイヤ23は、Ni−Ti合金線(超弾性合金)とステンレス線とを接続した芯材の表面にシリコーン樹脂やフッ素系樹脂をコーティングした構成であってもよい。また、ガイドワイヤ23は、全長がNi−Ti合金線で構成された芯材の表面に前述の被覆層をコーティングした構成であってもよい。また、ガイドワイヤ23の先端部にコイルを設けてもよい。また、前述の被覆層を省略した構成であってもよい。このようなガイドワイヤ23の外径は、特に限定されないが、1.0mm以下であるのが好ましく、0.3〜0.9mm程度であるのがより好ましい。
【0047】
(回転規制部材)
回転規制部材3は、包装体4内でのガイドワイヤ収納物2の回転を防止する機能を有している。このような回転規制部材3は、図3に示すように、長手形状をなす板状の基板31と、基板31に形成された溝32とで構成されている。なお、基板31は、板状に限られず例えば棒状であってもよい。
【0048】
溝32は、基板31の一方の面に開放するように、かつ基板31の長手方向の一端側に位置するように形成されている。なお、以下では、説明の便宜上、回転規制部材3の溝32が形成されている側の端を「基端」と言い、溝32が形成されていない側の端を「先端」と言う。
【0049】
溝32は、回転規制部材3をガイドワイヤ収納物2に固定するための固定手段を構成しており、図3(b)に示すように、溝32を管体21(ループ状に維持された管体21の最も外周側の部位)に嵌合することにより、回転規制部材3がガイドワイヤ収納物2に固定される。この際、回転規制部材3は、図1に示すように、先端部3aがループ状の管体21の半径方向の外側に向けて突出するように、回転規制部材3をガイドワイヤ収納物2に固定する。
【0050】
このように、回転規制部材3の基端側に溝32を形成することにより、回転規制部材3の全長を抑えつつ、ガイドワイヤ収納物2から突出する突出部3cの長さを長くすることができる。そのため、回転規制部材3の小型化を図るとともに、後述するように、回転規制部材3を包装体4により確実に係合させることができ、包装体4内でのガイドワイヤ収納物2の回転をより確実に防止することができる。
【0051】
突出部3cの長さとしては、包装体4(後述する収納空間S)の形状によっても異なるが、例えば、2cm〜5cm程度であるのが好ましい。これにより、回転規制部材3の過度な大型化が防止されるとともに、より確実に、回転規制部材3を包装体4に係合させることができる。
【0052】
図3に示すように、回転規制部材3の先端部3aは、丸み付けされているのが好ましい。これにより、回転規制部材3を包装体4に係合させた際に、回転規制部材3と包装体4との接触による包装体4の破損を防止することができる。なお、先端部3aは、丸み付けされていなくてもよく、角張っていてもよい。
【0053】
回転規制部材3を上記のような形状とすることにより、回転規制部材3の小型化を図ることができ、その結果、ガイドワイヤ包装体1(包装体4)の大型化を防止することができる。また、このような構成の回転規制部材3によれば、留め具22と同様に、管体21から取り外さなくてもガイドワイヤ23を使用する(管体21内から引き抜く)ことができる。そのため、ガイドワイヤ23の使い勝手を損ねることがない。さらに、回転規制部材3を管体21から取り外す必要がなければ、余計なゴミの発生および当該ゴミを処分することによる手間の発生を防止することもできる。
【0054】
このような回転規制部材3(基板31)の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂材料や、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム等の各種金属材料(合金、酸化物、窒化物等を含む)等が挙げられる。
【0055】
(包装体)
包装体4は、回転規制部材3が固定されたガイドワイヤ収納物2を収容するための袋である。図4に示すように、このような包装体4は、2枚のシート材41、42を重ね合わせて、これらをヒートシール等によりシールすることにより偏平状の袋状に構成されている。
【0056】
シート材41、42は、それぞれ、矩形状の軟質シート(可撓性を有するシート)であり、同一サイズに形成されている。
【0057】
そして、シート材41、42を重ね合わせた状態で、図1に示すように、左辺4a、右辺4bおよび底辺4cをそれぞれヒートシールすることにより、第1のシール部431が形成されている。
【0058】
さらに、左右両辺4a、4b(すなわち、第1のシール部431が有する一対の対向する辺同士)を連結するようにシート材41、42をヒートシールすることにより、第2のシール部432が形成されている。第2のシール部432は、包装体4の上側に凸となるように屈曲した広角の略V字状をなしている。
【0059】
なお、以下では、説明の便宜上、第1のシール部431および第2のシール部432を総称して「シール部43」とも言う。
【0060】
このようなシール部43によって包装体4には空間Sが画成され、この空間S内にガイドワイヤ収納物2が回転規制部材3を固定した状態で収容されている。なお、包装体4は、ガイドワイヤ収納物2が収納されていない状態では底辺4cが開口しており、包装体4内にガイドワイヤ収納物2を収納した後に底辺4cをシールする。
【0061】
空間Sは、シール部43で囲まれることにより画成されているため平面視形状が五角形である。すなわち空間Sは、5つの角部E1〜E5を有している。
【0062】
角部E1〜E5のうち、角部E1は、第2のシール部432が前述のように屈曲することにより形成された角部であり、角部E2は、第2のシール部432と第1のシール部431の右辺とが連結することにより形成された角部であり、角部E3は、第2のシール部432と第1のシール部431の左辺とが連結することにより形成された角部であり、角部E4は、第1のシール部431の底辺と左辺とが連結することにより形成された角部であり、角部E5は、第1のシール部431の底辺と右辺とが連結することにより形成された角部である。
【0063】
また、角部E1〜E3は、それぞれ広角(すなわち90°以上)であり、角部E4、E5は、それぞれ直角(すなわち90°)である。
【0064】
図1に示すように、角部E1〜E5のうち、角部E1(第2のシール部432が有する空間Sの外側に向けて突出した凸部)には、ガイドワイヤ収納物2に固定された回転規制部材3が係合している。このように、角部E1に回転規制部材3が係合することにより回転規制部材3がシール部43に引っ掛って、空間S内でのガイドワイヤ収納物2の回転(周方向の回転)が防止される。
【0065】
このように、角部E1に回転規制部材3を係合させることにより、次のような効果が得られる。
【0066】
すなわち、空間S内において、ガイドワイヤ収納物2を直角の角部E4(E5)よりも広角の角部E1の方へより接近させることができる。具体的には、ガイドワイヤ収納物2を角部E1を形成する2つの辺に当接させた状態でのガイドワイヤ収納物2および角部E1の離間距離をD1とし、ガイドワイヤ収納物2を角部E4を形成する2つの辺に当接させた状態でのガイドワイヤ収納物2および角部E4の離間距離をD4としたとき、D1の方がD4よりも短くなる。そのため、回転規制部材3を角部E1に係合させることとすることにより、回転規制部材3の長さを抑えることができる。
【0067】
さらに、次のような効果も得られる。すなわち、角部E1は、角部E1〜E5のうちで唯一包装体4の外周(縁)に臨んでいない角部である。そのため、角部E1は、角部E1〜E5のうちで最も衝撃が伝わり難い。このような角部E1に回転規制部材3を係合させることにより、ガイドワイヤ包装体1に衝撃等が加わっても、角部と回転規制部材3の係合状態をより解除され難くすることができる。
【0068】
図1に示すように、角部E1に回転規制部材3が係合した状態では、ガイドワイヤ23の先端部23aがシール部43に接触しない状態に維持される。具体的には、角部E1に回転規制部材3が係合した状態では、ガイドワイヤ23の先端部23aは、角部E2によって形成された、言い換えれば角部E2の存在によって広げられた空間(領域)S’内にシール部43と接触せずに位置している。これにより、ガイドワイヤ23の先端部23aのシール部43との接触による変形を防止することができる。
【0069】
このように、角部E2を空間S’を形成するための角部とすることにより次のような効果が得られる。
【0070】
すなわち、空間S内において、直角の角部E4(E5)よりも、広角の角部E2の方が角部付近により大きな空間S’を形成することができる。具体的には、角部E2を中心とした半径Rの扇型の面積をM2とし、角部E4を中心とした半径Rの扇型の面積をM4としたとき、M2の方がM4よりも大きくなる。そのため、角部E2を空間S’を形成するための角部とすることにより、空間S’を大きく確保することができる。その結果、ガイドワイヤ23の先端部23aがシール部43に接触しない状態をより確実に維持することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、ガイドワイヤ23の先端部23aが時計回り方向に突出しているため、角部E2を空間S’を形成する角部として用いているが、逆に、ガイドワイヤ23の先端部23aが反時計回り方向に突出している場合には、角部E3を空間S’を形成する角部として用いればよい。
【0072】
角部E1、E2の角度としては、それぞれ、110°〜130°程度であるのが好ましく、ほぼ120°であるのがより好ましい。
【0073】
このような包装体4を構成する2枚のシート材41、42のうちのシート材41は、ガス透過性を有しているのが好ましい。具体的には、シート材41は、エチレンオキシドや過酸化水素等の滅菌ガスを透過するが、水分やバクテリア等の細菌は透過しないバリア性フィルムであるのが好ましい。これにより、包装体4によってガイドワイヤ収納物2を包装した後に、シート材41を介して空間S内に滅菌ガスを透過させることにより、ガイドワイヤ収納物2の滅菌を行うことができる。
【0074】
このようなシート材41の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン/ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン/アイオノマー(例えば、エチレン系、スチレン系、フッ素系)/ポリエチレン等が挙げられる。
【0075】
また、シート材42は、第2のシート材42が光透過性を有していることが好ましい。これにより、包装体4内にガイドワイヤ収納物2を収容する際に回転規制部材3の位置を第2のシート材42を介して目視により確認することができるため、包装体4によるガイドワイヤ収納物2の包装を容易に行うことができる。また、それ以降も、包装体4内でのガイドワイヤ収納物2の状態を簡単に確認することができる。
【0076】
シート材42は、さらに、水分やバクテリア等の細菌を透過せず、実質的に無色透明であるバリア性フィルムであるのが好ましい。これにより、ガイドワイヤ収納物2の滅菌状態を維持することができる。
【0077】
このようなシート材42の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリプロピレンとエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリプロピレンとポリエチレン、ナイロンとポリプロピレン等を用いることができる。
【0078】
なお、シート材41、42の少なくとも一方のシート材の内面の少なくともシールされる部分に接着層を形成してもよい。接着層は、シート材41、42を剥離可能にヒートシールするための層である。
【0079】
このような接着層の構成材料としては、シート材41、42の構成材料等によっても異なるが、例えば、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸系樹脂等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、2液硬化型ウレタン系ドライラミネート接着剤等を用いることができる。
【0080】
<第2実施形態>
次に、本発明のガイドワイヤ包装体の第2実施形態について説明する。
【0081】
図5は、本発明の第2実施形態にかかるガイドワイヤ包装体が有する回転規制部材を示す斜視図である。
【0082】
以下、本実施形態のガイドワイヤ包装体について説明するが、前記第1実施形態のガイドワイヤ包装体との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0083】
本実施形態のガイドワイヤ包装体では、回転規制部材3Aが留め具を兼ねていること以外は、前記第1実施形態のガイドワイヤ包装体と同様である。
【0084】
図5に示す回転規制部材3Aは、管体21をループ状に維持する留め具を兼ねている。回転規制部材3Aは、板状の基板31Aと、基板31Aの基端部側に形成された複数の溝32Aとを有している。
【0085】
このような構成の回転規制部材3Aは、各溝32Aに管体21を嵌合することにより、他の留め具22とともに管体21をループ状に維持している。このように、回転規制部材3Aが留め具を兼ねていることにより、例えば留め具22の数を減らすことができ、ガイドワイヤ収納物2の部品点数を減らすことができる。
【0086】
<第3実施形態>
次に、本発明のガイドワイヤ包装体の第3実施形態について説明する。
【0087】
図6は、本発明の第3実施形態にかかるガイドワイヤ包装体が有する回転規制部材を示す斜視図である。
【0088】
以下、本実施形態のガイドワイヤ包装体について説明するが、前記第1実施形態のガイドワイヤ包装体との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0089】
本実施形態のガイドワイヤ包装体では、回転規制部材の構成が異なる以外は、前記第1実施形態のガイドワイヤ包装体と同様である。
【0090】
図6に示すように、回転規制部材3Bは、板状の基板31Bと、基板31Bの一方の面から突出するように設けられた溝32Bとを有している。このような回転規制部材3Bは、溝32Bに管体21を嵌合することによりガイドワイヤ収納物2に固定することができる。
【0091】
このような構成の回転規制部材3Bでは、溝32Bが基板31Bから突出して形成されているため、溝32Bに管体21を係合させたときに、管体21が基板31Bによって押圧されるのを効果的に防止することができる。そのため、管体21の変形や破損を防ぐことができる。
【0092】
<第4実施形態>
次に、本発明のガイドワイヤ包装体の第4実施形態について説明する。
【0093】
図7は、本発明の第4実施形態にかかるガイドワイヤ包装体を示す平面図である。
以下、本実施形態のガイドワイヤ包装体について説明するが、前記第1実施形態のガイドワイヤ包装体との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0094】
本実施形態のガイドワイヤ包装体では、包装体の構成が異なる以外は、前記第1実施形態のガイドワイヤ包装体と同様である。
【0095】
図7に示すように、包装体4Cには、包装体4Cの外周を覆い空間Sを画成する外周シール部433Cと、空間S内に形成され空間Sの外側に向けて突出したV字状をなす引っ掛けシール部(凸部)434Cとが形成されている。そして、回転規制部材3が引っ掛けシール部434Cに係合している。このような構成によっても空間S内でのガイドワイヤ収納物2の回転を防止することができる。
【0096】
なお、引っ掛けシール部434Cの形状としては、V字状に限定されず、例えば、コ字状や半円状であってもよい。
【0097】
<第5実施形態>
次に、本発明のガイドワイヤ包装体の第5実施形態について説明する。
【0098】
図8は、本発明の第5実施形態にかかるガイドワイヤ包装体を示す平面図である。
以下、本実施形態のガイドワイヤ包装体について説明するが、前記第1実施形態のガイドワイヤ包装体との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0099】
本実施形態のガイドワイヤ包装体では、包装体のシール部の構成が異なる以外は、前記第1実施形態のガイドワイヤ包装体と同様である。
【0100】
図8に示すように、包装体4Dに形成されたシール部43Dは、第1のシール部431と、第2のシール部432と、移動規制シール部435Dとを有している。移動規制シール部435Dは、ガイドワイヤ収納物2を介して第2のシール部432と対向するように形成されている。このような移動規制シール部435Dは、例えば、包装体4の角部E1と底辺4cの離間距離がガイドワイヤ収納物2の直径よりも大きく、ガイドワイヤ収納物2が空間S内で底辺4c側に移動することにより回転規制部材3と角部E1との係合状態が解除されるおそれがある場合に形成するのが有効である。すなわち、このような場合に、移動規制シール部435Dを形成することにより、前述したようなガイドワイヤ収納物2の底辺4c側への移動が規制されるため、回転規制部材3と角部E1との係合状態をより確実に維持することができる。
【0101】
なお、移動規制シール部435Dは、空間S内にガイドワイヤ収納物2を収納した後に形成される。
【0102】
以上、本発明のガイドワイヤ包装体を図示の各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、ガイドワイヤ包装体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせることもできる。
【0103】
また、前述した実施形態では、回動規制部材は、溝に管体を嵌合することによりガイドワイヤ収納物に固定していたが、例えば、回転規制部材をクリップのような構成とし、管体を摘むことによりガイドワイヤ収納物に固定してもよい。
【0104】
また、前述した実施形態では、ガイドワイヤ収納物が管体21の先端部に接続されたインサータを有する形態について説明したが、これに限定されず、インサータを省略してもよい。
【0105】
また、前述した実施形態では、ガイドワイヤの先端部がJ字状に形状付けされている形態について説明したが、ガイドワイヤの先端部の形状としては、これに限定されず、例えば、直線状であってもよいし、湾曲部を2つ以上有するような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 ガイドワイヤ包装体
2 ガイドワイヤ収納物
21 管体
211 挿入口
212 突出口
213 巻回軸
22、22a、22b 留め具
221 基板
222 溝
23 ガイドワイヤ
23a 先端部
24 インサータ
241 連通孔
242 先端側開口
3、3A、3B 回転規制部材
31、31A、31B 基板
32、32A、32B 溝
3a 先端部
3c 突出部
4、4C、4D 包装体
41、42 シート材
43、43D シール部
431 第1のシール部
432 第2のシール部
433C 外周シール部
434C 引っ掛けシール部
435D 移動規制シール部
4a 左辺
4b 右辺
4c 底辺
E1〜E5 角部
S、S’ 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状に巻回した状態に維持された突出口を有する管体、および前記管体に前記突出口から先端部を突出させた状態で収納されたガイドワイヤを有するガイドワイヤ収納物と、
シート部材を重ね合わせてシールすることにより形成された前記ガイドワイヤ収納物を収納する収納空間および前記シールにより形成されたシール部が外側に向けて突出した凸部を有する包装体と、
前記ガイドワイヤ収納物に固定され、前記ガイドワイヤ収納物が前記収納空間に収納された状態において前記凸部に係合することにより前記収納空間内での前記ガイドワイヤ収納物の回転を抑制する回転規制部材とを有することを特徴とするガイドワイヤ包装体。
【請求項2】
前記収納空間は、前記凸部によって形成される第1の角部と、前記第1の角部と異なる位置に設けられた第2の角部とを有し、前記第1の角部に前記回転規制部材が係合している状態にて、前記ガイドワイヤの先端部が前記第2の角部によって形成された領域に位置している請求項1に記載のガイドワイヤ包装体。
【請求項3】
前記第1の角部および前記第2の角部の少なくとも一方は、90°より大きい請求項2に記載のガイドワイヤ包装体。
【請求項4】
前記収納空間は、前記包装体の平面視での形状が五角形をなし、該五角形が有する5つの角部のうちの隣り合う2つの角部が共に90°で、他の3つの角部がそれぞれ90°以上であり、90°以上の前記3つの角部に、前記第1の角部および前記第2の角部の少なくとも一方が含まれている請求項2または3に記載のガイドワイヤ包装体。
【請求項5】
前記包装体は、矩形状をなす2枚のシート材を重ね合わせ、前記2枚のシート材の3辺をシールすることにより形成された第1のシール部と、前記第1のシール部の対向する一対の辺同士を連結するように前記2枚のシート材をシールすることにより形成された第2のシール部とを有し、
前記第1の角部は、前記第2のシール部によって形成されており、
前記第2の角部は、前記第2のシール部と前記第1のシール部との連結部によって形成されている請求項2ないし4のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【請求項6】
前記第1の角部は、前記包装体の外周に臨んでいない請求項2ないし5のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【請求項7】
前記シール部は、前記ガイドワイヤ収納物の前記凸部と離間する方向への移動を規制する移動規制シール部を有している請求項1ないし6のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【請求項8】
前記移動規制シール部は、前記ガイドワイヤ収納物を介して前記凸部と対向するように形成されている請求項7に記載のガイドワイヤ包装体。
【請求項9】
前記回転規制部材は、前記管体の一部が嵌合する少なくとも1つ以上の溝を有している請求項1ないし8のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。
【請求項10】
前記回転規制部材は、留め具を兼ねている請求項1ないし9のいずれかに記載のガイドワイヤ包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−194128(P2011−194128A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66275(P2010−66275)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】