ガスエンジン
【課題】電源を用いることなくガス燃料を迅速に供給可能で、かつ、コストや重量の増加を抑えることができ、さらに、チョーク弁を不要にして操作の容易化を図ることができるガスエンジンを提供する。
【解決手段】ガスエンジン発電機10は、ガスエンジン11の吸気口18に連通された吸気流路32と、燃料混合器33にガス燃料を供給する燃料供給流路34を遮断可能な燃料遮断弁部35と、燃料遮断弁部35の負圧作動部56にガスエンジン11のクランク室28を連通する負圧流路36と、負圧流路36をガスエンジン11の始動時に開放状態に保つことで、クランク室28に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部35を開状態に切替可能な燃料遮断弁部開閉手段37とを備えている。
【解決手段】ガスエンジン発電機10は、ガスエンジン11の吸気口18に連通された吸気流路32と、燃料混合器33にガス燃料を供給する燃料供給流路34を遮断可能な燃料遮断弁部35と、燃料遮断弁部35の負圧作動部56にガスエンジン11のクランク室28を連通する負圧流路36と、負圧流路36をガスエンジン11の始動時に開放状態に保つことで、クランク室28に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部35を開状態に切替可能な燃料遮断弁部開閉手段37とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料の吸気口に吸気流路が連通され、吸気流路に燃料混合器が設けられ、燃料混合器でガス燃料を空気と混合可能なガスエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンとして、セルモータ(スタータモータ)でエンジンを始動させるものや、リコイルスタータでエンジンを始動させるものが知られている。
セルモータを備えたガスエンジンのなかには、セルモータの電源用に備えたバッテリで電磁弁を作動させてガス燃料の供給を迅速におこなうことによりエンジンの始動性を高めるようにしたものがある。
ガス燃料の供給を電磁弁で迅速におこなうことにより、ガス燃料で好適にエンジンを始動、駆動させることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−103006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガスエンジンは、ガス燃料を迅速に供給するために、バッテリ、セルモータ(スタータモータ)や電磁弁を備える必要があり、さらには、電磁弁を制御する電磁弁コントロールユニットを搭載する必要がある。
このため、ガスエンジンの構成が複雑になり、コストを抑えることや、重量の増加を抑えることが難しい。
【0005】
一方、リコイルスタータを備えたガスエンジンは、リコイルスタータを手動で操作してエンジンを始動させることができるので、セルモータ(スタータモータ)やバッテリを備える必要がない。
このため、特許文献1のように電磁弁を用いてガス燃料の供給を迅速におこなう構成を適用することはできない。
【0006】
そこで、ガスエンジンの燃焼室にガス燃料を導く吸気流路にチョーク弁を設け、チョーク弁を閉じて吸気通路の負圧を高め、高めの負圧を利用して燃料遮断弁部を開放し、ガス燃料の供給を迅速におこなうように構成したものが知られている。
ところで、特に、天然ガス仕様のガスエンジンは、エンジン始動時の天然ガスの可燃範囲が、LPガスやガソリンと比べて狭い。
よって、天然ガスの可燃範囲を確保するために、燃料遮断弁部を精度よく制御する必要がある。このため、チョーク弁の操作に手間がかかることが考えられる。
【0007】
本発明は、電源を用いることなくガス燃料の供給を迅速におこなうことが可能で、かつ、構成を簡素化することでコストや重量の増加を抑えることができ、さらに、チョーク弁を不要にすることで操作の容易化を図ることができるガスエンジンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、ガス燃料の吸気口に連通され、前記ガス燃料を空気と混合可能な燃料混合器が設けられた吸気流路と、前記燃料混合器に前記ガス燃料を供給する燃料供給流路に設けられ、該燃料供給流路を遮断可能な燃料遮断弁部と、該燃料遮断弁部に設けられて該燃料遮断弁部の開閉を切替可能な負圧作動部にクランク室を連通する負圧流路と、前記負圧流路をエンジン始動時に開放状態に保つことで、前記クランク室に発生した負圧を利用して前記燃料遮断弁部を開状態に切替可能な燃料遮断弁部開閉手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、ガスエンジンのピストンが昇降することにより、燃焼室の吸気口に連通された吸気流路(燃料混合器)や、クランク室に負圧が発生する。
具体的には、燃料混合器は、吸気流路を流れるガス燃料の流速によって負圧が発生する。このため、エンジン回転数が低いとガス燃料の流速が低いため燃料混合器の負圧は小さい。
【0010】
一方、クランク室は、ピストンの往復による体積変化によって負圧が発生する。よって、エンジン回転数が低い場合でもピストンが昇降することでクランク室に大きな負圧が発生する。
すなわち、燃料混合器に発生する負圧は、通常、クランク室に発生する負圧より小さい。
【0011】
そこで、請求項1において、燃料遮断弁部の負圧作動部にクランク室を負圧流路で連通した。さらに、ガスエンジンの始動時に負圧流路を燃料遮断弁部開閉手段で開放状態に保ち、クランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に切替可能とした。
【0012】
請求項2は、前記燃料遮断弁部開閉手段は、前記燃料混合器に前記負圧流路を連通するサブ負圧流路と、前記負圧流路のうち前記サブ負圧流路の連結部より前記クランク室側に設けられた開閉切替弁と、を備え、前記開閉切替弁は、前記燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達するまで、前記負圧流路を開放する開状態に保持可能で、前記燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達したとき、前記燃料混合器で発生する負圧で前記負圧流路を閉塞する閉状態に切替可能に構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項3は、前記燃料遮断弁部開閉手段は、前記負圧流路の途中に設けられた大気開放部と、前記大気開放部より前記クランク室側に設けられ、前記ガスエンジンの始動/停止スイッチと連動可能に連結された開閉切替弁と、を備え、前記開閉切替弁は、前記ガスエンジンを始動可能な始動位置に前記始動/停止スイッチを配置した状態で、前記負圧流路を開放し、かつ、前記大気開放部を閉塞可能とし、前記ガスエンジンを停止可能な停止位置に前記始動/停止スイッチを配置した状態で、前記負圧流路を閉塞し、かつ、前記大気開放部を開放可能に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、ガスエンジンの始動時に負圧流路を燃料遮断弁部開閉手段で開放状態に保つことで、クランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に切替可能とした。
クランク室に発生する負圧は比較的大きいので、ガスエンジンの始動時にクランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えることができる。
【0015】
よって、電源を必要とする電磁弁を用いることなく、ガスエンジンにガス燃料を迅速に供給できる。
これにより、電磁弁を作動させるための電源(バッテリ)や、電磁弁を制御するためのコントロールユニットを不要にできるので、構成の簡素化が図れ、コストや重量の増加を抑えることができる。
【0016】
さらに、ガスエンジンの始動時にクランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジンの場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる
【0017】
請求項2に係る発明では、燃料遮断弁部開閉手段としてサブ負圧流路と開閉切替弁とを備えた。このサブ負圧流路で燃料混合器に負圧流路を連通し、サブ負圧流路の連結部よりクランク室側のサブ負圧流路に開閉切替弁を設けた。
そして、燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達するまで開閉切替弁を開状態に保持可能とした。
よって、ガスエンジンの始動時に、クランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えて、ガスエンジンにガス燃料を迅速に供給できる。
【0018】
このように、ガスエンジンの始動時にクランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジンの場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる
【0019】
ガスエンジンが始動した後、安定した駆動状態になり、燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に到達する。
この規定負圧は、クランク室に発生した負圧値より大きい。よって、燃料混合器で発生する負圧を利用して開閉切替弁を閉状態に切り替えることができる。
これにより、燃料混合器をサブ負圧流路および負圧流路を経て燃料遮断弁部に連通させることができる。
したがって、ガスエンジンの駆動中には、燃料混合器で発生する負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に保持できる。
【0020】
さらに、ガスエンジンを停止した時点では、燃料混合器に発生する負圧で開閉切替弁が閉状態に保たれている。
この状態で、燃料遮断弁部の負圧作動部を燃料混合器を介して大気中に連通させることができる。
よって、燃料遮断弁部の負圧作動部を大気圧に保つことにより燃料遮断弁部を閉塞することができる。
【0021】
ここで、通常のガスエンジンは、スロットル弁から吸気弁間の容積がクランク室の容積より小さい。
よって、スロットル弁から吸気弁間の容積を瞬時に大気圧に戻すことができる。
これにより、ガスエンジンの停止時に、燃料遮断弁部の負圧作動部を瞬時に大気圧に戻して燃料遮断弁部を迅速に閉塞することができる。
【0022】
このように、クランク室に発生した負圧や燃料混合器に発生した負圧を利用して開閉切替弁を開閉可能に構成した。よって、開閉切替弁の作動用電源(バッテリ)や、開閉切替弁の制御用コントロールユニットを不要にできる。
これにより、開閉切替弁(すなわち、燃料遮断弁部開閉手段)の構成を簡素化してコストや重量の増加を抑えることができる。
【0023】
請求項3に係る発明では、燃料遮断弁部開閉手段として大気開放部と開閉切替弁とを備え、大気開放部を負圧流路の途中に設けた。また、大気開放部よりクランク室側の負圧流路に開閉切替弁を備え、開閉切替弁をガスエンジンの始動/停止スイッチと連動可能に連結した。
始動/停止スイッチは、通常のガスエンジンに設けられている手動用のスイッチである。
【0024】
よって、始動/停止スイッチを手動で始動位置に配置した状態(エンジン駆動状態)で、負圧流路を開放し、かつ、大気開放部を閉塞する状態に開閉切替弁を切り替えることができる。
これにより、ガスエンジンの始動時に、クランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えて、ガスエンジンにガス燃料を迅速に供給できる。
【0025】
このように、ガスエンジンの始動時にクランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジンの場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる。
【0026】
一方、始動/停止スイッチを手動で停止位置に配置した状態(エンジン停止状態)で、負圧流路を閉塞し、かつ、大気開放部を開放する状態に開閉切替弁を切り替えることができる。
よって、ガスエンジンの停止時に、燃料遮断弁部の負圧作動部を大気圧に保つことで燃料遮断弁部を閉塞することができる。
【0027】
このように、手動用の始動/停止スイッチに開閉切替弁を連動させることで、開閉切替弁の作動用電源(バッテリ)や、開閉切替弁の制御用コントロールユニットなどを不要にできる。
これにより、開閉切替弁(すなわち、燃料遮断弁部開閉手段)の構成を簡素化してコストや重量の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施例1のガスエンジン発電機を示す斜視図である。
【図2】図1のガスエンジンを示す断面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係るガスエンジンのエンジン回転数と負圧の関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係るガスエンジンを始動したときの開閉切替弁および燃料遮断弁部の動作を説明する図である。
【図7】本発明に係るガスエンジンの駆動状態における開閉切替弁および燃料遮断弁部の動作を説明する図である。
【図8】本発明に係るガスエンジンを停止したときの開閉切替弁および燃料遮断弁部の動作を説明する図である。
【図9】本発明に係る実施例2のガスエンジンを示す断面図である。
【図10】図9の10部拡大図である。
【図11】実施例2のガスエンジンに備えた燃料遮断弁部開閉手段を示す斜視図である。
【図12】本発明に係るガスエンジンのエンジン停止中における開閉切替弁および燃料遮断弁部の状態を説明する図である。
【図13】本発明に係るガスエンジンをエンジン始動し、エンジン駆動状態になったときの開閉切替弁および燃料遮断弁部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0030】
実施例1に係るガスエンジン11について説明する。
なお、実施例では、ガスエンジン11を発電機に適用した例について説明したが、これに限らないで、耕耘機、除雪機や芝刈機などの他の装置にガスエンジン11を適用することも可能である。
【0031】
図1に示すように、ガスエンジン発電機10は、ガスエンジン11と、ガスエンジン11に設けられた発電機12とを備えている。
発電機12は、ガスエンジン11のクランク軸25(図2参照)にロータが連結されている。
【0032】
ガスエンジン11は、発電機12が設けられたクランクケース15と、クランクケース15に設けられたシリンダブロック16と、シリンダブロック16の端部16aに設けられたシリンダヘッド17と、シリンダヘッド17の燃焼室19(図2参照)にガス燃料を供給可能な燃料供給装置30とを備えている。
【0033】
図2に示すように、ガスエンジン11は、始動/停止スイッチを始動位置に配置した後、リコイルスタータ21を手動で引張ることにより、吸気弁22が開いて吸気口18から燃焼室19にガス燃料が導かれる。
始動/停止スイッチは、通常のガスエンジンに用いられる既存のスイッチである。
この始動/停止スイッチを操作することで、ガスエンジン11の電気回路を、エンジン始動時にオン(接続)、エンジン停止時にオフ(切断)に切り替えることができる。
【0034】
リコイルスタータ21を引張ることにより、燃焼室19に導かれたガス燃料が燃焼室19で燃焼することで、ピストン23がシリンダ24に沿って昇降する。
ピストン23が昇降することにより、クランク軸25がコンロッド26を介して回転する。クランク軸25が回転することにより、発電機12(図1参照)のロータが回転して発電機12が発電する。
【0035】
ピストン23がシリンダブロック16に沿って昇降することにより、吸気口18に連通された吸気流路32(燃料混合器33)や、クランク室28に負圧が発生する。
ここで、燃料混合器33は、吸気流路32を流れるガス燃料の流速によって負圧が発生する。このため、エンジン回転数が低いとガス燃料の流速が低いため燃料混合器33の負圧は小さい。
【0036】
一方、クランク室28は、ピストン23の往復による体積変化によって負圧が発生する。よって、エンジン回転数が低い場合でもピストン23が昇降することでクランク室28に大きな負圧が発生する。
すなわち、燃料混合器33に発生する負圧は、通常、クランク室28に発生する負圧より小さい。
【0037】
燃料供給装置30は、ガスエンジン11の吸気口18に連通された吸気流路32と、吸気流路32の途中に設けられた燃料混合器33と、燃料混合器33に連通された燃料供給流路34と、燃料供給流路34の途中に設けられた燃料遮断弁部35とを備えている。
さらに、燃料供給装置30は、燃料遮断弁部35をクランクケース15のクランク室28に連通する負圧流路36と、負圧流路36の途中に設けられた燃料遮断弁部開閉手段37とを備えている。
【0038】
吸気流路32は、ガスエンジン11の吸気口18にエアクリーナを連通する流路である。
吸気流路32の途中に燃料混合器33のボディ41が設けられている。
【0039】
燃料混合器33は、ボディ41内のエアクリーナ側(上流側)に設けられたベンチュリ部42と、ベンチュリ部42にガス燃料を供給するノズル43と、ベンチュリ部42の下流側(吸気口18側)に設けられたスロットル弁44とを備えている。
【0040】
燃料混合器33によれば、ガスエンジン11のピストン23が下降することによりベンチュリ部42に負圧が発生する。この状態で、スロットル弁44でボディ41内の空気の流量が調整される。
ベンチュリ部42に負圧が発生することで、発生した負圧でガス燃料がノズル43からベンチュリ部42に導かれる。ガス燃料がベンチュリ部42に導かれることで、導かれたガス燃料がエアクリーナから導かれた空気に混合され、混合されたガス燃料が吸気口18に導かれる。
【0041】
この燃料混合器33のノズル43に燃料供給流路34が連通されている。
燃料供給流路34は、燃料混合器33にガス燃料を蓄える燃料タンク46を連通する流路である。
燃料供給流路34の途中に燃料遮断弁部35のボディ51が設けられている。
【0042】
燃料遮断弁部35は、燃料供給流路34を連通状態と、遮断状態に切替可能なバルブである。
この燃料遮断弁部35は、ボディ51内に設けられたダイヤフラム52と、ダイヤフラム52に設けられた弁体53と、弁体53に対峙する位置に設けられた弁シート54と、ダイヤフラム52を押圧する圧縮ばね55とを備えている。
【0043】
この燃料遮断弁部35は、ダイヤフラム52およびボディ51で負圧作動部56が形成され、負圧作動部56に負圧流路36が連通されている。
負圧作動部56は、燃料遮断弁部35の開閉状態を切替可能な部位である。
【0044】
燃料遮断弁部35によれば、負圧作動部56内の空間57に負圧が発生することにより、圧縮ばね55のばね力でダイヤフラム52が矢印A方向に変形する。
よって、弁体53が弁シート54から離れ、燃料遮断弁部35が開状態に切り替わることにより、燃料供給流路34を連通状態とすることができる。
これにより、燃料タンク46のガス燃料を燃料供給流路34および燃料遮断弁部35を経て燃料混合器33に導くことができる。
【0045】
一方、負圧作動部56内の空間57が大気圧に保たれることにより、圧縮ばね55のばね力に抗してダイヤフラム52が矢印B方向に変形する。
よって、弁体53が弁シート54に当接され、燃料遮断弁部35が閉状態に切り替わることにより、燃料供給流路34を遮断状態とすることができる。
これにより、燃料タンク46のガス燃料が燃料混合器33に導かれることを燃料遮断弁部35で阻止することができる。
【0046】
燃料遮断弁部35の負圧作動部56に負圧流路36が連通されている。
負圧流路36は、燃料遮断弁部35の負圧作動部56にクランク室28を連通する流路である。
この負圧流路36は、負圧作動部56に連通された第1負圧流路47と、クランク室28に連通された第2負圧流路48と、第1負圧流路47および第2負圧流路48を連通する連結継手49とを備えている。
負圧流路36の途中、すなわち連結継手49に燃料遮断弁部開閉手段37が設けられている。
連結継手49は、3方向に流体の出入口を有する継手であり、通常用いられている継手である。
【0047】
燃料遮断弁部開閉手段37は、ガスエンジン11の停止中や、ガスエンジン11の始動時に負圧流路36を開放状態に保つように構成されている。
よって、ガスエンジン11の始動時にクランク室28に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部35を開状態に切り替えることができる。
【0048】
図3に示すように、燃料遮断弁部開閉手段37は、燃料混合器33に負圧流路36を連通するサブ負圧流路61と、負圧流路36に設けられた開閉切替弁63とを備えている。
【0049】
サブ負圧流路61は、燃料混合器33のボディ41内に一端が連通され、連結継手49の分岐路(サブ負圧流路の連結部)49aに他端が連通されている。
詳しくは、サブ負圧流路61の一端は、ボディ41内においてスロットル弁44近傍で、かつ、燃焼室19側の連通部位41aに連通されている。
すなわち、サブ負圧流路61は、スロットル弁44および吸気弁22間の吸気空間62に連通されている。
【0050】
開閉切替弁63は、連結継手49のうち分岐路49aよりクランク室28側に設けられ、負圧流路36を開放状態と閉塞状態とに切替可能なバルブである。
連結継手49に開閉切替弁63を設けることにより、連結継手49および開閉切替弁63で、いわゆる三方弁73が形成されている。
【0051】
図3、図4に示すように、開閉切替弁63は、負圧流路36(連結継手49)内に設けられた仕切壁64と、仕切壁64に設けられた複数の導入孔65と、仕切壁64より分岐路49a側に設けられた弁シート66と、弁シート66より分岐路49a側に設けられた弁体67と、弁体67および仕切壁64間に設けられた圧縮ばね68とを備えている。
【0052】
弁体67は、正面視で略矩形状に形成され、四隅に面取部69が形成されている。弁体67の四隅に面取部69を形成することで、負圧流路36および弁体67間に導入通路71が形成されている。
よって、弁体67が圧縮ばね68のばね力で弁シート66から離れた状態に保持されることで、クランク室28(図2参照)が導入孔65および導入通路71を経て燃料遮断弁部35の負圧作動部56(図2参照)に連通されている。
【0053】
つぎに、開閉切替弁63の動作を図2、図3、図5に基づいて説明する。
図5はガスエンジン11のエンジン回転数と負圧の関係を示すグラフであり、縦軸に圧力(負圧)、横軸にガスエンジン11のエンジン回転数を示す。
グラフG1はクランク室28の圧力を示すグラフで、グラフG2は燃焼室19(すなわち、燃料混合器33)の圧力を示すグラフである。また、グラフG3は燃料遮断弁部35(具体的には、負圧作動部56)の圧力を示すグラフである。
以下、クランク室28の圧力G1を「クランク室内圧」、および燃料混合器33の圧力G2を「燃料混合器内圧」と称す。
また、燃料遮断弁部35(すなわち、負圧作動部56)の圧力G3を「負圧作動部内圧」と称す。
【0054】
ガスエンジン11の停止中は、エンジン回転数が零であり、クランク室内圧G1および燃料混合器内圧G2が大気圧に保たれる。よって、開閉切替弁63の弁体67が圧縮ばね68のばね力で弁シート66から離れた状態に保持される。
これにより、クランク室28および燃料混合器33が燃料遮断弁部35の負圧作動部56に連通され、負圧作動部内圧G3が大気圧に保たれる。
【0055】
この状態からガスエンジン11を始動することにより、エンジン回転数が上昇するとともにクランク室内圧G1および燃料混合器内圧G2が負圧になる。
ここで、ピストン23が昇降する際に、燃料混合器33に発生する負圧は、通常、クランク室28に発生する負圧より小さい。
すなわち、燃料混合器内圧G2<クランク室内圧G1の関係が成立する。
【0056】
ところで、エンジン回転数がNrに到達する前は、燃料混合器内圧G2とクランク室内圧G1との差が小さい。
よって、開閉切替弁63の弁体67が圧縮ばね68のばね力で弁シート66から離れた状態に保持され、クランク室28および負圧作動部56が連通状態に保たれる。
【0057】
これにより、負圧作動部内圧G3がクランク室内圧G1と同じ負圧になる。したがって、ガスエンジン11の始動時には、クランク室28に発生した大きなクランク室内圧G1を利用することにより燃料遮断弁部35を瞬時に開状態に切り替えることができる。
このように、燃料遮断弁部35を開状態に瞬時に切り替えることで、燃焼室19にガス燃料を迅速に供給できる。
【0058】
ガスエンジン11が始動した後にエンジン駆動状態になり、エンジン回転数がNrに到達する。このとき、燃料混合器内圧G2の規定負圧P1とクランク室内圧G1の負圧P2との差が大きくなる。
よって、開閉切替弁63に備えた圧縮ばね68のばね力に抗して弁体67が矢印C方向に移動する。
【0059】
弁体67が矢印C方向に移動することで弁シート66に当接し、開閉切替弁63が閉状態に切り替えられる。開閉切替弁63が閉状態に切り替えられることで、クランク室28および負圧作動部56の連通状態が開閉切替弁63で遮られる。
この状態で、燃料混合器33および負圧作動部56が連通状態に保たれている。よって、負圧作動部内圧G3が燃料混合器内圧G2と同じ負圧になる。
ここで、負圧作動部内圧G3の規定負圧P1は大きな負圧なので、燃料混合器内圧G2を利用して燃料遮断弁部35が開状態に保持される。
【0060】
つぎに、開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図5〜図8に基づいて説明する。
まず、ガスエンジン11を始動したときの開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図5および図6に基づいて説明する。
図5および図6(a)に示すように、始動/停止スイッチを始動位置に配置した後、リコイルスタータ21を手動で引張ることによりガスエンジン11が始動する。
ガスエンジン11の始動時は、燃料混合器33の燃料混合器内圧G2とクランク室28のクランク室内圧G1との差が小さい。
【0061】
よって、図6(b)に示すように、開閉切替弁63は、弁体67が圧縮ばね68のばね力で弁シート66から離れた状態(すなわち、開状態)に保持されている。
開閉切替弁63が開状態に保持されることにより、クランク室28(図6(a)参照)が負圧流路36を経て燃料遮断弁部35の負圧作動部56に連通されている。
【0062】
これにより、図6(a)に示すように、ガスエンジン11の始動時に、クランク室28に発生した大きな負圧(すなわち、クランク室内圧G1(図5参照))が燃料遮断弁部35の負圧作動部56に作用する。
よって、燃料遮断弁部35の弁体53が圧縮ばね55のばね力に抗して矢印A方向に移動する。
このように、クランク室28に発生した大きな負圧(クランク室内圧G1)を利用して燃料遮断弁部35を開状態に瞬時に切り替えることができる。
【0063】
したがって、燃料タンク46内のガス燃料を燃料遮断弁部35や燃料混合器33などを経て燃焼室19に迅速に供給できる。
燃焼室19に迅速に供給することで、燃焼室19内の点火に必要なガス燃料が好適に供給され、ガスエンジン11を円滑に始動させることができる。
【0064】
さらに、ガスエンジン11の始動時にクランク室28に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部35を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジン11の場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる。
【0065】
つぎに、ガスエンジン11の駆動状態における開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図5および図7に基づいて説明する。
図5、図7(a)に示すように、ガスエンジン11が始動後に安定した駆動状態になることで、燃料混合器33の燃料混合器内圧G2が規定負圧P1に到達する。
この状態で、燃料混合器内圧G2の規定負圧P1と、クランク室内圧G1の負圧P2との差が大きくなる。
【0066】
規定負圧P1と負圧P2との差が大きくなることで、図7(b)に示すように、開閉切替弁63に備えた圧縮ばね68のばね力に抗して弁体67が矢印C方向に移動する。
弁体67を矢印C方向に移動することで、弁体67が弁シート66に当接して開閉切替弁63が閉状態に切り替えられる。
【0067】
よって、図7(a)に示すように、クランク室28および燃料遮断弁部35の連通が開閉切替弁63で遮断される。
これにより、ガスエンジン11の駆動中には、燃料混合器33で発生する負圧(すなわち、燃料混合器内圧G2)が燃料遮断弁部35の負圧作動部56に作用する。
【0068】
ここで、ガスエンジン11の駆動中には、燃料混合器内圧G2が比較的大きな規定負圧P1に到達している。よって、図7(a)に示すように、燃料遮断弁部35が規定負圧P1を利用して開状態に保持される。
したがって、燃焼室19にガス燃料が継続して供給され、ガスエンジン11を円滑に駆動することができる。
【0069】
ついで、ガスエンジン11を停止したときの開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図5および図8に基づいて説明する。
図5、図8(a)に示すように、始動/停止スイッチを手動で停止位置に操作してガスエンジン11を停止する。
よって、始動/停止スイッチを手動で停止位置に操作することで、ガスエンジン11の電気回路がオフ(切断)に切り替えてガスエンジン11が停止する。
【0070】
ガスエンジン11を停止した時点では、燃料混合器33の燃料混合器内圧G2が、まだ規定負圧P1に保たれている。
燃料混合器内圧G2が規定負圧P1に保たれることで、図5、図8(b)に示すように、燃料混合器内圧G2の規定負圧P1で開閉切替弁63がまだ閉状態に保たれている。
【0071】
開閉切替弁63が閉状態に保たれていることで、図8(a)に示すように、燃料遮断弁部35の負圧作動部56が燃料混合器33やエアクリーナなどを経て大気中に連通(開放)される。
負圧作動部56が大気中に開放されることで、燃料遮断弁部35の負圧作動部56が大気圧に保たれ、圧縮ばね55のばね力に抗してダイヤフラム52が矢印B方向に変形する。
これにより、弁体53が弁シート54に当接されて燃料遮断弁部35が閉塞される。
【0072】
ここで、ガスエンジン11は、通常、スロットル弁44および吸気弁22間に形成される吸気空間62の容積S1がクランク室28の容積S2より小さい。すなわち、S1<S2の関係が成立している。
このように、吸気空間62の容積S1が小さいので、容積S1を瞬時に大気圧に戻すことができる。
【0073】
この吸気空間62はサブ負圧流路61を介して燃料遮断弁部35の負圧作動部56に連通されている。
よって、ガスエンジン11の停止時に、燃料遮断弁部35の負圧作動部56を瞬時に大気圧に戻して燃料遮断弁部35を迅速に閉塞することができる。
これにより、ガスエンジン11を停止した直後に、燃料遮断弁部35を経て燃料混合器33にガス燃料が導かれることを確実に阻止することができる。
【0074】
図6〜図8で説明したように、燃料供給装置30は、クランク室28に発生した負圧や燃料混合器33に発生した負圧を利用して開閉切替弁63を開閉可能に構成されている。
よって、開閉切替弁63の作動用電源(バッテリ)や、開閉切替弁63の制御用コントロールユニットを不要にできる。
これにより、開閉切替弁63(すなわち、燃料遮断弁部開閉手段37)の構成を簡素化してコストや重量の増加を抑えることができる。
【0075】
つぎに、実施例2の燃料供給装置80を図9〜図11に基づいて説明する。
なお、実施例2の燃料供給装置80において実施例1の燃料供給装置30と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0076】
実施例2に係る燃料供給装置80について説明する。
図9に示すように、燃料供給装置80は、実施例1の燃料遮断弁部開閉手段37に代えて燃料遮断弁部開閉手段82を備えたもので、その他の構成は実施例1の燃料供給装置30と同じである。
【0077】
燃料遮断弁部開閉手段82は、負圧流路36の途中に設けられた大気開放部83と、大気開放部83よりクランク室28側に設けられた開閉切替弁87と、開閉切替弁87の開閉を操作する操作部93とを備えている。
【0078】
図10に示すように、大気開放部83は、負圧流路36の途中に設けられ、大気に連通された分岐路(以下、「開放路」という)49aと、開放路49aに設けられたフィルタ84とを備えている。
大気開放部83を負圧流路36の途中に設けることで、負圧流路36を大気に開放することができる。
なお、フィルタ84は、外気(空気)を浄化するために開放路49aに設けられている。
【0079】
図9に示すように、開閉切替弁87は、ガスエンジン11の始動/停止スイッチ94に操作ケーブル96を介して連結されることにより始動/停止スイッチ94と連動可能に構成されている。
図10に示すように、開閉切替弁87は、負圧流路36(連結継手49)に支持軸89を介して揺動自在に支持された弁板88と、支持軸89に設けられた操作レバー91とを備えている。
【0080】
開閉切替弁87によれば、弁板88が負圧開放位置Po1に配置されることで、負圧流路36が開放され、かつ、開放路49aが閉塞される。
一方、弁板88が大気開放位置Po2に配置されることで、負圧流路36が閉塞され、かつ、開放路49aが開放される。
このように、連結継手49に開閉切替弁87を設けることにより、連結継手49および開閉切替弁87で、いわゆる三方弁92が形成されている。
【0081】
図9、図11に示すように、操作部93は、始動/停止スイッチ94に取付ブラケット95を介して操作ケーブル96の一端部96aが連結され、他端部96bが操作レバー91に連結されている。
始動/停止スイッチ94を停止位置Po4に配置した状態で弁板88が大気開放位置Po2(図10参照)に配置される。
よって、負圧流路36が閉塞され、かつ、開放路49aが開放される。
一方、始動/停止スイッチ94を始動位置Po3に操作して操作ケーブル96を押し出すことにより、操作レバー91が操作されて弁板88が負圧開放位置Po1(図10参照)に配置される。
よって、負圧流路36が開放され、かつ、開放路49aが閉塞される。
【0082】
なお、始動/停止スイッチ94を始動位置Po3から停止位置Po4に操作した場合には、操作ケーブル96を引張ることにより、操作レバー91が操作されて弁板88が大気開放位置Po2(図10参照)に配置される。
【0083】
ここで、始動/停止スイッチ94は、通常のガスエンジンに用いられる既存のスイッチである。
始動/停止スイッチ94は、ガスエンジン11の電気回路をオン(接続)状態、オフ(切断)状態に切り替えるように構成されている。
【0084】
よって、ガスエンジン11のエンジン始動時には、始動/停止スイッチ94を操作して電気回路をオン状態に切り替えることにより、負圧流路36が開放され、かつ、開放路49aが閉塞される。
一方、ガスエンジン11のエンジン停止時には、始動/停止スイッチ94を操作して電気回路をオフ状態に切り替えることにより、負圧流路36が閉塞され、かつ、開放路49aが開放される。
【0085】
つぎに、開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図12および図13に基づいて説明する。
まず、ガスエンジン11のエンジン停止中における開閉切替弁87および燃料遮断弁部35の状態を図12(a),(b)に基づいて説明する。
図12(a),(b)に示すように、ガスエンジン11のエンジン停止中には、始動/停止スイッチ94が停止位置に保持されている。
よって、電気回路がオフ状態に保たれるとともに、負圧流路36が閉塞状態、かつ、開放路49aが開放状態に保たれている。
【0086】
開放路49aが開放状態に保たれることで、燃料遮断弁部35の負圧作動部56が負圧流路36および開放路49aを経て大気圧に保たれ、燃料遮断弁部35が閉塞状態に保たれている。
これにより、ガスエンジン11のエンジン停止中に、燃料タンク46のガス燃料が燃料遮断弁部35を経て燃料混合器33に導かれることを確実に阻止できる。
【0087】
つぎに、ガスエンジン11をエンジン始動し、エンジン駆動状態になったときの開閉切替弁87および燃料遮断弁部35の動作を図13(a),(b)に基づいて説明する。
図13(a),(b)に示すように、ガスエンジン11を始動する際には、始動/停止スイッチ94を操作して電気回路をオンに切り替える。
始動/停止スイッチ94をオンに切り替えることで、電気回路がオンに切り替わるとともに、負圧流路36が開放され、かつ、開放路49aが閉塞される。
【0088】
この状態で、リコイルスタータ21を手動で操作する。リコイルスタータ21を操作することで、クランク室28に発生した負圧(大きな負圧)G1(図5参照)を利用して燃料遮断弁部35が開状態に瞬時に切り替えられる。
燃料遮断弁部35が開状態に瞬時に切り替えられることで、ガスエンジン11の燃焼室19にガス燃料が迅速に供給される。
これにより、ガスエンジン11の燃焼室19にガス燃料を好適に供給することができるので、ガスエンジン11を円滑にエンジン始動させることができる。
【0089】
エンジン始動後のエンジン駆動中にも、負圧流路36が開放した状態に保たれ、かつ、開放路49aが閉塞した状態に保たれている。
これにより、ガスエンジン11の燃焼室19にガス燃料を好適に供給することができるので、ガスエンジン11を円滑に駆動させることができる。
【0090】
このように、ガスエンジン11の始動時にクランク室28に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部35を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジン11の場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる
【0091】
ついで、ガスエンジン11を停止したときの開閉切替弁87および燃料遮断弁部35の動作を図12(a),(b)に基づいて説明する。
図12(a),(b)に示すように、ガスエンジン11の駆動中に、始動/停止スイッチ94を操作して電気回路をオフに切り替える。
始動/停止スイッチ94をオフに切り替えることで、電気回路がオフに切り替わるとともに、負圧流路36が閉塞され、かつ、開放路49aが開放される。
よって、電気回路がオフに切り替わることでガスエンジン11が停止するとともに、負圧流路36が開放路49aを経て大気に開放される。
【0092】
これにより、ガスエンジン11の停止時に、燃料遮断弁部35の負圧作動部56が負圧流路36および開放路49aを経て大気圧に保たれ、燃料遮断弁部35が閉塞される。
このように、開閉切替弁87を始動/停止スイッチ94に連動させることで、ガスエンジン11の停止時に、燃料遮断弁部35の負圧作動部56を瞬時に大気圧に戻して燃料遮断弁部35を瞬時に閉塞することができる。
したがって、ガスエンジン11を停止した直後に、燃料遮断弁部35を経て燃料混合器33にガス燃料が導かれることを確実に阻止することができる。
【0093】
図12〜図13で説明したように、手動用の始動/停止スイッチ94に開閉切替弁87を連動させることで、開閉切替弁87の作動用電源(バッテリ)や、開閉切替弁87の制御用コントロールユニットなどを不要にできる。
これにより、開閉切替弁87(すなわち、燃料遮断弁部開閉手段37)の構成を簡素化してコストや重量の増加を抑えることができる。
【0094】
なお、本発明に係るガスエンジンは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1および実施例2で示したガスエンジン発電機10、ガスエンジン11、クランク室28、吸気流路32、燃料混合器33、燃料供給流路34、燃料遮断弁部35、負圧流路36、燃料遮断弁部開閉手段37,82、分岐路49a、負圧作動部56、サブ負圧流路61、開閉切替弁63,87、大気開放部83および始動/停止スイッチ94などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、ガスエンジンの吸気口に吸気流路を連通し、吸気流路に燃料混合器を設け、燃料混合器でガス燃料を空気と混合可能なガスエンジンへの適用に好適である。
【符号の説明】
【0096】
10…ガスエンジン発電機、11…ガスエンジン、18…吸気口、28…クランク室、32…吸気流路、33…燃料混合器、34…燃料供給流路、35…燃料遮断弁部、36…負圧流路、37,82…燃料遮断弁部開閉手段、49a…分岐路(サブ負圧流路の連結部)、56…負圧作動部、61…サブ負圧流路、63,87…開閉切替弁、83…大気開放部、94…始動/停止スイッチ、P1…規定負圧、Po4…停止位置、Po3…始動位置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料の吸気口に吸気流路が連通され、吸気流路に燃料混合器が設けられ、燃料混合器でガス燃料を空気と混合可能なガスエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンとして、セルモータ(スタータモータ)でエンジンを始動させるものや、リコイルスタータでエンジンを始動させるものが知られている。
セルモータを備えたガスエンジンのなかには、セルモータの電源用に備えたバッテリで電磁弁を作動させてガス燃料の供給を迅速におこなうことによりエンジンの始動性を高めるようにしたものがある。
ガス燃料の供給を電磁弁で迅速におこなうことにより、ガス燃料で好適にエンジンを始動、駆動させることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−103006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガスエンジンは、ガス燃料を迅速に供給するために、バッテリ、セルモータ(スタータモータ)や電磁弁を備える必要があり、さらには、電磁弁を制御する電磁弁コントロールユニットを搭載する必要がある。
このため、ガスエンジンの構成が複雑になり、コストを抑えることや、重量の増加を抑えることが難しい。
【0005】
一方、リコイルスタータを備えたガスエンジンは、リコイルスタータを手動で操作してエンジンを始動させることができるので、セルモータ(スタータモータ)やバッテリを備える必要がない。
このため、特許文献1のように電磁弁を用いてガス燃料の供給を迅速におこなう構成を適用することはできない。
【0006】
そこで、ガスエンジンの燃焼室にガス燃料を導く吸気流路にチョーク弁を設け、チョーク弁を閉じて吸気通路の負圧を高め、高めの負圧を利用して燃料遮断弁部を開放し、ガス燃料の供給を迅速におこなうように構成したものが知られている。
ところで、特に、天然ガス仕様のガスエンジンは、エンジン始動時の天然ガスの可燃範囲が、LPガスやガソリンと比べて狭い。
よって、天然ガスの可燃範囲を確保するために、燃料遮断弁部を精度よく制御する必要がある。このため、チョーク弁の操作に手間がかかることが考えられる。
【0007】
本発明は、電源を用いることなくガス燃料の供給を迅速におこなうことが可能で、かつ、構成を簡素化することでコストや重量の増加を抑えることができ、さらに、チョーク弁を不要にすることで操作の容易化を図ることができるガスエンジンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、ガス燃料の吸気口に連通され、前記ガス燃料を空気と混合可能な燃料混合器が設けられた吸気流路と、前記燃料混合器に前記ガス燃料を供給する燃料供給流路に設けられ、該燃料供給流路を遮断可能な燃料遮断弁部と、該燃料遮断弁部に設けられて該燃料遮断弁部の開閉を切替可能な負圧作動部にクランク室を連通する負圧流路と、前記負圧流路をエンジン始動時に開放状態に保つことで、前記クランク室に発生した負圧を利用して前記燃料遮断弁部を開状態に切替可能な燃料遮断弁部開閉手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、ガスエンジンのピストンが昇降することにより、燃焼室の吸気口に連通された吸気流路(燃料混合器)や、クランク室に負圧が発生する。
具体的には、燃料混合器は、吸気流路を流れるガス燃料の流速によって負圧が発生する。このため、エンジン回転数が低いとガス燃料の流速が低いため燃料混合器の負圧は小さい。
【0010】
一方、クランク室は、ピストンの往復による体積変化によって負圧が発生する。よって、エンジン回転数が低い場合でもピストンが昇降することでクランク室に大きな負圧が発生する。
すなわち、燃料混合器に発生する負圧は、通常、クランク室に発生する負圧より小さい。
【0011】
そこで、請求項1において、燃料遮断弁部の負圧作動部にクランク室を負圧流路で連通した。さらに、ガスエンジンの始動時に負圧流路を燃料遮断弁部開閉手段で開放状態に保ち、クランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に切替可能とした。
【0012】
請求項2は、前記燃料遮断弁部開閉手段は、前記燃料混合器に前記負圧流路を連通するサブ負圧流路と、前記負圧流路のうち前記サブ負圧流路の連結部より前記クランク室側に設けられた開閉切替弁と、を備え、前記開閉切替弁は、前記燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達するまで、前記負圧流路を開放する開状態に保持可能で、前記燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達したとき、前記燃料混合器で発生する負圧で前記負圧流路を閉塞する閉状態に切替可能に構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項3は、前記燃料遮断弁部開閉手段は、前記負圧流路の途中に設けられた大気開放部と、前記大気開放部より前記クランク室側に設けられ、前記ガスエンジンの始動/停止スイッチと連動可能に連結された開閉切替弁と、を備え、前記開閉切替弁は、前記ガスエンジンを始動可能な始動位置に前記始動/停止スイッチを配置した状態で、前記負圧流路を開放し、かつ、前記大気開放部を閉塞可能とし、前記ガスエンジンを停止可能な停止位置に前記始動/停止スイッチを配置した状態で、前記負圧流路を閉塞し、かつ、前記大気開放部を開放可能に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、ガスエンジンの始動時に負圧流路を燃料遮断弁部開閉手段で開放状態に保つことで、クランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に切替可能とした。
クランク室に発生する負圧は比較的大きいので、ガスエンジンの始動時にクランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えることができる。
【0015】
よって、電源を必要とする電磁弁を用いることなく、ガスエンジンにガス燃料を迅速に供給できる。
これにより、電磁弁を作動させるための電源(バッテリ)や、電磁弁を制御するためのコントロールユニットを不要にできるので、構成の簡素化が図れ、コストや重量の増加を抑えることができる。
【0016】
さらに、ガスエンジンの始動時にクランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジンの場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる
【0017】
請求項2に係る発明では、燃料遮断弁部開閉手段としてサブ負圧流路と開閉切替弁とを備えた。このサブ負圧流路で燃料混合器に負圧流路を連通し、サブ負圧流路の連結部よりクランク室側のサブ負圧流路に開閉切替弁を設けた。
そして、燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達するまで開閉切替弁を開状態に保持可能とした。
よって、ガスエンジンの始動時に、クランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えて、ガスエンジンにガス燃料を迅速に供給できる。
【0018】
このように、ガスエンジンの始動時にクランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジンの場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる
【0019】
ガスエンジンが始動した後、安定した駆動状態になり、燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に到達する。
この規定負圧は、クランク室に発生した負圧値より大きい。よって、燃料混合器で発生する負圧を利用して開閉切替弁を閉状態に切り替えることができる。
これにより、燃料混合器をサブ負圧流路および負圧流路を経て燃料遮断弁部に連通させることができる。
したがって、ガスエンジンの駆動中には、燃料混合器で発生する負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に保持できる。
【0020】
さらに、ガスエンジンを停止した時点では、燃料混合器に発生する負圧で開閉切替弁が閉状態に保たれている。
この状態で、燃料遮断弁部の負圧作動部を燃料混合器を介して大気中に連通させることができる。
よって、燃料遮断弁部の負圧作動部を大気圧に保つことにより燃料遮断弁部を閉塞することができる。
【0021】
ここで、通常のガスエンジンは、スロットル弁から吸気弁間の容積がクランク室の容積より小さい。
よって、スロットル弁から吸気弁間の容積を瞬時に大気圧に戻すことができる。
これにより、ガスエンジンの停止時に、燃料遮断弁部の負圧作動部を瞬時に大気圧に戻して燃料遮断弁部を迅速に閉塞することができる。
【0022】
このように、クランク室に発生した負圧や燃料混合器に発生した負圧を利用して開閉切替弁を開閉可能に構成した。よって、開閉切替弁の作動用電源(バッテリ)や、開閉切替弁の制御用コントロールユニットを不要にできる。
これにより、開閉切替弁(すなわち、燃料遮断弁部開閉手段)の構成を簡素化してコストや重量の増加を抑えることができる。
【0023】
請求項3に係る発明では、燃料遮断弁部開閉手段として大気開放部と開閉切替弁とを備え、大気開放部を負圧流路の途中に設けた。また、大気開放部よりクランク室側の負圧流路に開閉切替弁を備え、開閉切替弁をガスエンジンの始動/停止スイッチと連動可能に連結した。
始動/停止スイッチは、通常のガスエンジンに設けられている手動用のスイッチである。
【0024】
よって、始動/停止スイッチを手動で始動位置に配置した状態(エンジン駆動状態)で、負圧流路を開放し、かつ、大気開放部を閉塞する状態に開閉切替弁を切り替えることができる。
これにより、ガスエンジンの始動時に、クランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えて、ガスエンジンにガス燃料を迅速に供給できる。
【0025】
このように、ガスエンジンの始動時にクランク室に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジンの場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる。
【0026】
一方、始動/停止スイッチを手動で停止位置に配置した状態(エンジン停止状態)で、負圧流路を閉塞し、かつ、大気開放部を開放する状態に開閉切替弁を切り替えることができる。
よって、ガスエンジンの停止時に、燃料遮断弁部の負圧作動部を大気圧に保つことで燃料遮断弁部を閉塞することができる。
【0027】
このように、手動用の始動/停止スイッチに開閉切替弁を連動させることで、開閉切替弁の作動用電源(バッテリ)や、開閉切替弁の制御用コントロールユニットなどを不要にできる。
これにより、開閉切替弁(すなわち、燃料遮断弁部開閉手段)の構成を簡素化してコストや重量の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施例1のガスエンジン発電機を示す斜視図である。
【図2】図1のガスエンジンを示す断面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係るガスエンジンのエンジン回転数と負圧の関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係るガスエンジンを始動したときの開閉切替弁および燃料遮断弁部の動作を説明する図である。
【図7】本発明に係るガスエンジンの駆動状態における開閉切替弁および燃料遮断弁部の動作を説明する図である。
【図8】本発明に係るガスエンジンを停止したときの開閉切替弁および燃料遮断弁部の動作を説明する図である。
【図9】本発明に係る実施例2のガスエンジンを示す断面図である。
【図10】図9の10部拡大図である。
【図11】実施例2のガスエンジンに備えた燃料遮断弁部開閉手段を示す斜視図である。
【図12】本発明に係るガスエンジンのエンジン停止中における開閉切替弁および燃料遮断弁部の状態を説明する図である。
【図13】本発明に係るガスエンジンをエンジン始動し、エンジン駆動状態になったときの開閉切替弁および燃料遮断弁部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0030】
実施例1に係るガスエンジン11について説明する。
なお、実施例では、ガスエンジン11を発電機に適用した例について説明したが、これに限らないで、耕耘機、除雪機や芝刈機などの他の装置にガスエンジン11を適用することも可能である。
【0031】
図1に示すように、ガスエンジン発電機10は、ガスエンジン11と、ガスエンジン11に設けられた発電機12とを備えている。
発電機12は、ガスエンジン11のクランク軸25(図2参照)にロータが連結されている。
【0032】
ガスエンジン11は、発電機12が設けられたクランクケース15と、クランクケース15に設けられたシリンダブロック16と、シリンダブロック16の端部16aに設けられたシリンダヘッド17と、シリンダヘッド17の燃焼室19(図2参照)にガス燃料を供給可能な燃料供給装置30とを備えている。
【0033】
図2に示すように、ガスエンジン11は、始動/停止スイッチを始動位置に配置した後、リコイルスタータ21を手動で引張ることにより、吸気弁22が開いて吸気口18から燃焼室19にガス燃料が導かれる。
始動/停止スイッチは、通常のガスエンジンに用いられる既存のスイッチである。
この始動/停止スイッチを操作することで、ガスエンジン11の電気回路を、エンジン始動時にオン(接続)、エンジン停止時にオフ(切断)に切り替えることができる。
【0034】
リコイルスタータ21を引張ることにより、燃焼室19に導かれたガス燃料が燃焼室19で燃焼することで、ピストン23がシリンダ24に沿って昇降する。
ピストン23が昇降することにより、クランク軸25がコンロッド26を介して回転する。クランク軸25が回転することにより、発電機12(図1参照)のロータが回転して発電機12が発電する。
【0035】
ピストン23がシリンダブロック16に沿って昇降することにより、吸気口18に連通された吸気流路32(燃料混合器33)や、クランク室28に負圧が発生する。
ここで、燃料混合器33は、吸気流路32を流れるガス燃料の流速によって負圧が発生する。このため、エンジン回転数が低いとガス燃料の流速が低いため燃料混合器33の負圧は小さい。
【0036】
一方、クランク室28は、ピストン23の往復による体積変化によって負圧が発生する。よって、エンジン回転数が低い場合でもピストン23が昇降することでクランク室28に大きな負圧が発生する。
すなわち、燃料混合器33に発生する負圧は、通常、クランク室28に発生する負圧より小さい。
【0037】
燃料供給装置30は、ガスエンジン11の吸気口18に連通された吸気流路32と、吸気流路32の途中に設けられた燃料混合器33と、燃料混合器33に連通された燃料供給流路34と、燃料供給流路34の途中に設けられた燃料遮断弁部35とを備えている。
さらに、燃料供給装置30は、燃料遮断弁部35をクランクケース15のクランク室28に連通する負圧流路36と、負圧流路36の途中に設けられた燃料遮断弁部開閉手段37とを備えている。
【0038】
吸気流路32は、ガスエンジン11の吸気口18にエアクリーナを連通する流路である。
吸気流路32の途中に燃料混合器33のボディ41が設けられている。
【0039】
燃料混合器33は、ボディ41内のエアクリーナ側(上流側)に設けられたベンチュリ部42と、ベンチュリ部42にガス燃料を供給するノズル43と、ベンチュリ部42の下流側(吸気口18側)に設けられたスロットル弁44とを備えている。
【0040】
燃料混合器33によれば、ガスエンジン11のピストン23が下降することによりベンチュリ部42に負圧が発生する。この状態で、スロットル弁44でボディ41内の空気の流量が調整される。
ベンチュリ部42に負圧が発生することで、発生した負圧でガス燃料がノズル43からベンチュリ部42に導かれる。ガス燃料がベンチュリ部42に導かれることで、導かれたガス燃料がエアクリーナから導かれた空気に混合され、混合されたガス燃料が吸気口18に導かれる。
【0041】
この燃料混合器33のノズル43に燃料供給流路34が連通されている。
燃料供給流路34は、燃料混合器33にガス燃料を蓄える燃料タンク46を連通する流路である。
燃料供給流路34の途中に燃料遮断弁部35のボディ51が設けられている。
【0042】
燃料遮断弁部35は、燃料供給流路34を連通状態と、遮断状態に切替可能なバルブである。
この燃料遮断弁部35は、ボディ51内に設けられたダイヤフラム52と、ダイヤフラム52に設けられた弁体53と、弁体53に対峙する位置に設けられた弁シート54と、ダイヤフラム52を押圧する圧縮ばね55とを備えている。
【0043】
この燃料遮断弁部35は、ダイヤフラム52およびボディ51で負圧作動部56が形成され、負圧作動部56に負圧流路36が連通されている。
負圧作動部56は、燃料遮断弁部35の開閉状態を切替可能な部位である。
【0044】
燃料遮断弁部35によれば、負圧作動部56内の空間57に負圧が発生することにより、圧縮ばね55のばね力でダイヤフラム52が矢印A方向に変形する。
よって、弁体53が弁シート54から離れ、燃料遮断弁部35が開状態に切り替わることにより、燃料供給流路34を連通状態とすることができる。
これにより、燃料タンク46のガス燃料を燃料供給流路34および燃料遮断弁部35を経て燃料混合器33に導くことができる。
【0045】
一方、負圧作動部56内の空間57が大気圧に保たれることにより、圧縮ばね55のばね力に抗してダイヤフラム52が矢印B方向に変形する。
よって、弁体53が弁シート54に当接され、燃料遮断弁部35が閉状態に切り替わることにより、燃料供給流路34を遮断状態とすることができる。
これにより、燃料タンク46のガス燃料が燃料混合器33に導かれることを燃料遮断弁部35で阻止することができる。
【0046】
燃料遮断弁部35の負圧作動部56に負圧流路36が連通されている。
負圧流路36は、燃料遮断弁部35の負圧作動部56にクランク室28を連通する流路である。
この負圧流路36は、負圧作動部56に連通された第1負圧流路47と、クランク室28に連通された第2負圧流路48と、第1負圧流路47および第2負圧流路48を連通する連結継手49とを備えている。
負圧流路36の途中、すなわち連結継手49に燃料遮断弁部開閉手段37が設けられている。
連結継手49は、3方向に流体の出入口を有する継手であり、通常用いられている継手である。
【0047】
燃料遮断弁部開閉手段37は、ガスエンジン11の停止中や、ガスエンジン11の始動時に負圧流路36を開放状態に保つように構成されている。
よって、ガスエンジン11の始動時にクランク室28に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部35を開状態に切り替えることができる。
【0048】
図3に示すように、燃料遮断弁部開閉手段37は、燃料混合器33に負圧流路36を連通するサブ負圧流路61と、負圧流路36に設けられた開閉切替弁63とを備えている。
【0049】
サブ負圧流路61は、燃料混合器33のボディ41内に一端が連通され、連結継手49の分岐路(サブ負圧流路の連結部)49aに他端が連通されている。
詳しくは、サブ負圧流路61の一端は、ボディ41内においてスロットル弁44近傍で、かつ、燃焼室19側の連通部位41aに連通されている。
すなわち、サブ負圧流路61は、スロットル弁44および吸気弁22間の吸気空間62に連通されている。
【0050】
開閉切替弁63は、連結継手49のうち分岐路49aよりクランク室28側に設けられ、負圧流路36を開放状態と閉塞状態とに切替可能なバルブである。
連結継手49に開閉切替弁63を設けることにより、連結継手49および開閉切替弁63で、いわゆる三方弁73が形成されている。
【0051】
図3、図4に示すように、開閉切替弁63は、負圧流路36(連結継手49)内に設けられた仕切壁64と、仕切壁64に設けられた複数の導入孔65と、仕切壁64より分岐路49a側に設けられた弁シート66と、弁シート66より分岐路49a側に設けられた弁体67と、弁体67および仕切壁64間に設けられた圧縮ばね68とを備えている。
【0052】
弁体67は、正面視で略矩形状に形成され、四隅に面取部69が形成されている。弁体67の四隅に面取部69を形成することで、負圧流路36および弁体67間に導入通路71が形成されている。
よって、弁体67が圧縮ばね68のばね力で弁シート66から離れた状態に保持されることで、クランク室28(図2参照)が導入孔65および導入通路71を経て燃料遮断弁部35の負圧作動部56(図2参照)に連通されている。
【0053】
つぎに、開閉切替弁63の動作を図2、図3、図5に基づいて説明する。
図5はガスエンジン11のエンジン回転数と負圧の関係を示すグラフであり、縦軸に圧力(負圧)、横軸にガスエンジン11のエンジン回転数を示す。
グラフG1はクランク室28の圧力を示すグラフで、グラフG2は燃焼室19(すなわち、燃料混合器33)の圧力を示すグラフである。また、グラフG3は燃料遮断弁部35(具体的には、負圧作動部56)の圧力を示すグラフである。
以下、クランク室28の圧力G1を「クランク室内圧」、および燃料混合器33の圧力G2を「燃料混合器内圧」と称す。
また、燃料遮断弁部35(すなわち、負圧作動部56)の圧力G3を「負圧作動部内圧」と称す。
【0054】
ガスエンジン11の停止中は、エンジン回転数が零であり、クランク室内圧G1および燃料混合器内圧G2が大気圧に保たれる。よって、開閉切替弁63の弁体67が圧縮ばね68のばね力で弁シート66から離れた状態に保持される。
これにより、クランク室28および燃料混合器33が燃料遮断弁部35の負圧作動部56に連通され、負圧作動部内圧G3が大気圧に保たれる。
【0055】
この状態からガスエンジン11を始動することにより、エンジン回転数が上昇するとともにクランク室内圧G1および燃料混合器内圧G2が負圧になる。
ここで、ピストン23が昇降する際に、燃料混合器33に発生する負圧は、通常、クランク室28に発生する負圧より小さい。
すなわち、燃料混合器内圧G2<クランク室内圧G1の関係が成立する。
【0056】
ところで、エンジン回転数がNrに到達する前は、燃料混合器内圧G2とクランク室内圧G1との差が小さい。
よって、開閉切替弁63の弁体67が圧縮ばね68のばね力で弁シート66から離れた状態に保持され、クランク室28および負圧作動部56が連通状態に保たれる。
【0057】
これにより、負圧作動部内圧G3がクランク室内圧G1と同じ負圧になる。したがって、ガスエンジン11の始動時には、クランク室28に発生した大きなクランク室内圧G1を利用することにより燃料遮断弁部35を瞬時に開状態に切り替えることができる。
このように、燃料遮断弁部35を開状態に瞬時に切り替えることで、燃焼室19にガス燃料を迅速に供給できる。
【0058】
ガスエンジン11が始動した後にエンジン駆動状態になり、エンジン回転数がNrに到達する。このとき、燃料混合器内圧G2の規定負圧P1とクランク室内圧G1の負圧P2との差が大きくなる。
よって、開閉切替弁63に備えた圧縮ばね68のばね力に抗して弁体67が矢印C方向に移動する。
【0059】
弁体67が矢印C方向に移動することで弁シート66に当接し、開閉切替弁63が閉状態に切り替えられる。開閉切替弁63が閉状態に切り替えられることで、クランク室28および負圧作動部56の連通状態が開閉切替弁63で遮られる。
この状態で、燃料混合器33および負圧作動部56が連通状態に保たれている。よって、負圧作動部内圧G3が燃料混合器内圧G2と同じ負圧になる。
ここで、負圧作動部内圧G3の規定負圧P1は大きな負圧なので、燃料混合器内圧G2を利用して燃料遮断弁部35が開状態に保持される。
【0060】
つぎに、開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図5〜図8に基づいて説明する。
まず、ガスエンジン11を始動したときの開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図5および図6に基づいて説明する。
図5および図6(a)に示すように、始動/停止スイッチを始動位置に配置した後、リコイルスタータ21を手動で引張ることによりガスエンジン11が始動する。
ガスエンジン11の始動時は、燃料混合器33の燃料混合器内圧G2とクランク室28のクランク室内圧G1との差が小さい。
【0061】
よって、図6(b)に示すように、開閉切替弁63は、弁体67が圧縮ばね68のばね力で弁シート66から離れた状態(すなわち、開状態)に保持されている。
開閉切替弁63が開状態に保持されることにより、クランク室28(図6(a)参照)が負圧流路36を経て燃料遮断弁部35の負圧作動部56に連通されている。
【0062】
これにより、図6(a)に示すように、ガスエンジン11の始動時に、クランク室28に発生した大きな負圧(すなわち、クランク室内圧G1(図5参照))が燃料遮断弁部35の負圧作動部56に作用する。
よって、燃料遮断弁部35の弁体53が圧縮ばね55のばね力に抗して矢印A方向に移動する。
このように、クランク室28に発生した大きな負圧(クランク室内圧G1)を利用して燃料遮断弁部35を開状態に瞬時に切り替えることができる。
【0063】
したがって、燃料タンク46内のガス燃料を燃料遮断弁部35や燃料混合器33などを経て燃焼室19に迅速に供給できる。
燃焼室19に迅速に供給することで、燃焼室19内の点火に必要なガス燃料が好適に供給され、ガスエンジン11を円滑に始動させることができる。
【0064】
さらに、ガスエンジン11の始動時にクランク室28に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部35を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジン11の場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる。
【0065】
つぎに、ガスエンジン11の駆動状態における開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図5および図7に基づいて説明する。
図5、図7(a)に示すように、ガスエンジン11が始動後に安定した駆動状態になることで、燃料混合器33の燃料混合器内圧G2が規定負圧P1に到達する。
この状態で、燃料混合器内圧G2の規定負圧P1と、クランク室内圧G1の負圧P2との差が大きくなる。
【0066】
規定負圧P1と負圧P2との差が大きくなることで、図7(b)に示すように、開閉切替弁63に備えた圧縮ばね68のばね力に抗して弁体67が矢印C方向に移動する。
弁体67を矢印C方向に移動することで、弁体67が弁シート66に当接して開閉切替弁63が閉状態に切り替えられる。
【0067】
よって、図7(a)に示すように、クランク室28および燃料遮断弁部35の連通が開閉切替弁63で遮断される。
これにより、ガスエンジン11の駆動中には、燃料混合器33で発生する負圧(すなわち、燃料混合器内圧G2)が燃料遮断弁部35の負圧作動部56に作用する。
【0068】
ここで、ガスエンジン11の駆動中には、燃料混合器内圧G2が比較的大きな規定負圧P1に到達している。よって、図7(a)に示すように、燃料遮断弁部35が規定負圧P1を利用して開状態に保持される。
したがって、燃焼室19にガス燃料が継続して供給され、ガスエンジン11を円滑に駆動することができる。
【0069】
ついで、ガスエンジン11を停止したときの開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図5および図8に基づいて説明する。
図5、図8(a)に示すように、始動/停止スイッチを手動で停止位置に操作してガスエンジン11を停止する。
よって、始動/停止スイッチを手動で停止位置に操作することで、ガスエンジン11の電気回路がオフ(切断)に切り替えてガスエンジン11が停止する。
【0070】
ガスエンジン11を停止した時点では、燃料混合器33の燃料混合器内圧G2が、まだ規定負圧P1に保たれている。
燃料混合器内圧G2が規定負圧P1に保たれることで、図5、図8(b)に示すように、燃料混合器内圧G2の規定負圧P1で開閉切替弁63がまだ閉状態に保たれている。
【0071】
開閉切替弁63が閉状態に保たれていることで、図8(a)に示すように、燃料遮断弁部35の負圧作動部56が燃料混合器33やエアクリーナなどを経て大気中に連通(開放)される。
負圧作動部56が大気中に開放されることで、燃料遮断弁部35の負圧作動部56が大気圧に保たれ、圧縮ばね55のばね力に抗してダイヤフラム52が矢印B方向に変形する。
これにより、弁体53が弁シート54に当接されて燃料遮断弁部35が閉塞される。
【0072】
ここで、ガスエンジン11は、通常、スロットル弁44および吸気弁22間に形成される吸気空間62の容積S1がクランク室28の容積S2より小さい。すなわち、S1<S2の関係が成立している。
このように、吸気空間62の容積S1が小さいので、容積S1を瞬時に大気圧に戻すことができる。
【0073】
この吸気空間62はサブ負圧流路61を介して燃料遮断弁部35の負圧作動部56に連通されている。
よって、ガスエンジン11の停止時に、燃料遮断弁部35の負圧作動部56を瞬時に大気圧に戻して燃料遮断弁部35を迅速に閉塞することができる。
これにより、ガスエンジン11を停止した直後に、燃料遮断弁部35を経て燃料混合器33にガス燃料が導かれることを確実に阻止することができる。
【0074】
図6〜図8で説明したように、燃料供給装置30は、クランク室28に発生した負圧や燃料混合器33に発生した負圧を利用して開閉切替弁63を開閉可能に構成されている。
よって、開閉切替弁63の作動用電源(バッテリ)や、開閉切替弁63の制御用コントロールユニットを不要にできる。
これにより、開閉切替弁63(すなわち、燃料遮断弁部開閉手段37)の構成を簡素化してコストや重量の増加を抑えることができる。
【0075】
つぎに、実施例2の燃料供給装置80を図9〜図11に基づいて説明する。
なお、実施例2の燃料供給装置80において実施例1の燃料供給装置30と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0076】
実施例2に係る燃料供給装置80について説明する。
図9に示すように、燃料供給装置80は、実施例1の燃料遮断弁部開閉手段37に代えて燃料遮断弁部開閉手段82を備えたもので、その他の構成は実施例1の燃料供給装置30と同じである。
【0077】
燃料遮断弁部開閉手段82は、負圧流路36の途中に設けられた大気開放部83と、大気開放部83よりクランク室28側に設けられた開閉切替弁87と、開閉切替弁87の開閉を操作する操作部93とを備えている。
【0078】
図10に示すように、大気開放部83は、負圧流路36の途中に設けられ、大気に連通された分岐路(以下、「開放路」という)49aと、開放路49aに設けられたフィルタ84とを備えている。
大気開放部83を負圧流路36の途中に設けることで、負圧流路36を大気に開放することができる。
なお、フィルタ84は、外気(空気)を浄化するために開放路49aに設けられている。
【0079】
図9に示すように、開閉切替弁87は、ガスエンジン11の始動/停止スイッチ94に操作ケーブル96を介して連結されることにより始動/停止スイッチ94と連動可能に構成されている。
図10に示すように、開閉切替弁87は、負圧流路36(連結継手49)に支持軸89を介して揺動自在に支持された弁板88と、支持軸89に設けられた操作レバー91とを備えている。
【0080】
開閉切替弁87によれば、弁板88が負圧開放位置Po1に配置されることで、負圧流路36が開放され、かつ、開放路49aが閉塞される。
一方、弁板88が大気開放位置Po2に配置されることで、負圧流路36が閉塞され、かつ、開放路49aが開放される。
このように、連結継手49に開閉切替弁87を設けることにより、連結継手49および開閉切替弁87で、いわゆる三方弁92が形成されている。
【0081】
図9、図11に示すように、操作部93は、始動/停止スイッチ94に取付ブラケット95を介して操作ケーブル96の一端部96aが連結され、他端部96bが操作レバー91に連結されている。
始動/停止スイッチ94を停止位置Po4に配置した状態で弁板88が大気開放位置Po2(図10参照)に配置される。
よって、負圧流路36が閉塞され、かつ、開放路49aが開放される。
一方、始動/停止スイッチ94を始動位置Po3に操作して操作ケーブル96を押し出すことにより、操作レバー91が操作されて弁板88が負圧開放位置Po1(図10参照)に配置される。
よって、負圧流路36が開放され、かつ、開放路49aが閉塞される。
【0082】
なお、始動/停止スイッチ94を始動位置Po3から停止位置Po4に操作した場合には、操作ケーブル96を引張ることにより、操作レバー91が操作されて弁板88が大気開放位置Po2(図10参照)に配置される。
【0083】
ここで、始動/停止スイッチ94は、通常のガスエンジンに用いられる既存のスイッチである。
始動/停止スイッチ94は、ガスエンジン11の電気回路をオン(接続)状態、オフ(切断)状態に切り替えるように構成されている。
【0084】
よって、ガスエンジン11のエンジン始動時には、始動/停止スイッチ94を操作して電気回路をオン状態に切り替えることにより、負圧流路36が開放され、かつ、開放路49aが閉塞される。
一方、ガスエンジン11のエンジン停止時には、始動/停止スイッチ94を操作して電気回路をオフ状態に切り替えることにより、負圧流路36が閉塞され、かつ、開放路49aが開放される。
【0085】
つぎに、開閉切替弁63および燃料遮断弁部35の動作を図12および図13に基づいて説明する。
まず、ガスエンジン11のエンジン停止中における開閉切替弁87および燃料遮断弁部35の状態を図12(a),(b)に基づいて説明する。
図12(a),(b)に示すように、ガスエンジン11のエンジン停止中には、始動/停止スイッチ94が停止位置に保持されている。
よって、電気回路がオフ状態に保たれるとともに、負圧流路36が閉塞状態、かつ、開放路49aが開放状態に保たれている。
【0086】
開放路49aが開放状態に保たれることで、燃料遮断弁部35の負圧作動部56が負圧流路36および開放路49aを経て大気圧に保たれ、燃料遮断弁部35が閉塞状態に保たれている。
これにより、ガスエンジン11のエンジン停止中に、燃料タンク46のガス燃料が燃料遮断弁部35を経て燃料混合器33に導かれることを確実に阻止できる。
【0087】
つぎに、ガスエンジン11をエンジン始動し、エンジン駆動状態になったときの開閉切替弁87および燃料遮断弁部35の動作を図13(a),(b)に基づいて説明する。
図13(a),(b)に示すように、ガスエンジン11を始動する際には、始動/停止スイッチ94を操作して電気回路をオンに切り替える。
始動/停止スイッチ94をオンに切り替えることで、電気回路がオンに切り替わるとともに、負圧流路36が開放され、かつ、開放路49aが閉塞される。
【0088】
この状態で、リコイルスタータ21を手動で操作する。リコイルスタータ21を操作することで、クランク室28に発生した負圧(大きな負圧)G1(図5参照)を利用して燃料遮断弁部35が開状態に瞬時に切り替えられる。
燃料遮断弁部35が開状態に瞬時に切り替えられることで、ガスエンジン11の燃焼室19にガス燃料が迅速に供給される。
これにより、ガスエンジン11の燃焼室19にガス燃料を好適に供給することができるので、ガスエンジン11を円滑にエンジン始動させることができる。
【0089】
エンジン始動後のエンジン駆動中にも、負圧流路36が開放した状態に保たれ、かつ、開放路49aが閉塞した状態に保たれている。
これにより、ガスエンジン11の燃焼室19にガス燃料を好適に供給することができるので、ガスエンジン11を円滑に駆動させることができる。
【0090】
このように、ガスエンジン11の始動時にクランク室28に発生した負圧を利用して燃料遮断弁部35を開状態に瞬時に切り替えることができるので、従来技術で説明したチョーク弁を不要にできる。
これにより、特に、可燃範囲の狭い天然ガス仕様のガスエンジン11の場合でも、天然ガスの可燃範囲に対応させるためにチョーク弁の操作に手間をかける必要がない。
このように、チョーク弁の操作を不要にできるので操作の容易化を図ることができる
【0091】
ついで、ガスエンジン11を停止したときの開閉切替弁87および燃料遮断弁部35の動作を図12(a),(b)に基づいて説明する。
図12(a),(b)に示すように、ガスエンジン11の駆動中に、始動/停止スイッチ94を操作して電気回路をオフに切り替える。
始動/停止スイッチ94をオフに切り替えることで、電気回路がオフに切り替わるとともに、負圧流路36が閉塞され、かつ、開放路49aが開放される。
よって、電気回路がオフに切り替わることでガスエンジン11が停止するとともに、負圧流路36が開放路49aを経て大気に開放される。
【0092】
これにより、ガスエンジン11の停止時に、燃料遮断弁部35の負圧作動部56が負圧流路36および開放路49aを経て大気圧に保たれ、燃料遮断弁部35が閉塞される。
このように、開閉切替弁87を始動/停止スイッチ94に連動させることで、ガスエンジン11の停止時に、燃料遮断弁部35の負圧作動部56を瞬時に大気圧に戻して燃料遮断弁部35を瞬時に閉塞することができる。
したがって、ガスエンジン11を停止した直後に、燃料遮断弁部35を経て燃料混合器33にガス燃料が導かれることを確実に阻止することができる。
【0093】
図12〜図13で説明したように、手動用の始動/停止スイッチ94に開閉切替弁87を連動させることで、開閉切替弁87の作動用電源(バッテリ)や、開閉切替弁87の制御用コントロールユニットなどを不要にできる。
これにより、開閉切替弁87(すなわち、燃料遮断弁部開閉手段37)の構成を簡素化してコストや重量の増加を抑えることができる。
【0094】
なお、本発明に係るガスエンジンは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1および実施例2で示したガスエンジン発電機10、ガスエンジン11、クランク室28、吸気流路32、燃料混合器33、燃料供給流路34、燃料遮断弁部35、負圧流路36、燃料遮断弁部開閉手段37,82、分岐路49a、負圧作動部56、サブ負圧流路61、開閉切替弁63,87、大気開放部83および始動/停止スイッチ94などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、ガスエンジンの吸気口に吸気流路を連通し、吸気流路に燃料混合器を設け、燃料混合器でガス燃料を空気と混合可能なガスエンジンへの適用に好適である。
【符号の説明】
【0096】
10…ガスエンジン発電機、11…ガスエンジン、18…吸気口、28…クランク室、32…吸気流路、33…燃料混合器、34…燃料供給流路、35…燃料遮断弁部、36…負圧流路、37,82…燃料遮断弁部開閉手段、49a…分岐路(サブ負圧流路の連結部)、56…負圧作動部、61…サブ負圧流路、63,87…開閉切替弁、83…大気開放部、94…始動/停止スイッチ、P1…規定負圧、Po4…停止位置、Po3…始動位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃料の吸気口に連通され、前記ガス燃料を空気と混合可能な燃料混合器が設けられた吸気流路と、
前記燃料混合器に前記ガス燃料を供給する燃料供給流路に設けられ、該燃料供給流路を遮断可能な燃料遮断弁部と、
該燃料遮断弁部に設けられて該燃料遮断弁部の開閉を切替可能な負圧作動部にクランク室を連通する負圧流路と、
前記負圧流路をエンジン始動時に開放状態に保つことで、前記クランク室に発生した負圧を利用して前記燃料遮断弁部を開状態に切替可能な燃料遮断弁部開閉手段と、
を備えたことを特徴とするガスエンジン。
【請求項2】
前記燃料遮断弁部開閉手段は、
前記燃料混合器に前記負圧流路を連通するサブ負圧流路と、
前記負圧流路のうち前記サブ負圧流路の連結部より前記クランク室側に設けられた開閉切替弁と、を備え、
前記開閉切替弁は、
前記燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達するまで、前記負圧流路を開放する開状態に保持可能で、
前記燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達したとき、前記燃料混合器で発生する負圧で前記負圧流路を閉塞する閉状態に切替可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載のガスエンジン。
【請求項3】
前記燃料遮断弁部開閉手段は、
前記負圧流路の途中に設けられた大気開放部と、
前記大気開放部より前記クランク室側に設けられ、前記ガスエンジンの始動/停止スイッチと連動可能に連結された開閉切替弁と、を備え、
前記開閉切替弁は、
前記ガスエンジンを始動可能な始動位置に前記始動/停止スイッチを配置した状態で、前記負圧流路を開放し、かつ、前記大気開放部を閉塞可能とし、
前記ガスエンジンを停止可能な停止位置に前記始動/停止スイッチを配置した状態で、前記負圧流路を閉塞し、かつ、前記大気開放部を開放可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載のガスエンジン。
【請求項1】
ガス燃料の吸気口に連通され、前記ガス燃料を空気と混合可能な燃料混合器が設けられた吸気流路と、
前記燃料混合器に前記ガス燃料を供給する燃料供給流路に設けられ、該燃料供給流路を遮断可能な燃料遮断弁部と、
該燃料遮断弁部に設けられて該燃料遮断弁部の開閉を切替可能な負圧作動部にクランク室を連通する負圧流路と、
前記負圧流路をエンジン始動時に開放状態に保つことで、前記クランク室に発生した負圧を利用して前記燃料遮断弁部を開状態に切替可能な燃料遮断弁部開閉手段と、
を備えたことを特徴とするガスエンジン。
【請求項2】
前記燃料遮断弁部開閉手段は、
前記燃料混合器に前記負圧流路を連通するサブ負圧流路と、
前記負圧流路のうち前記サブ負圧流路の連結部より前記クランク室側に設けられた開閉切替弁と、を備え、
前記開閉切替弁は、
前記燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達するまで、前記負圧流路を開放する開状態に保持可能で、
前記燃料混合器で発生する負圧が規定負圧に達したとき、前記燃料混合器で発生する負圧で前記負圧流路を閉塞する閉状態に切替可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載のガスエンジン。
【請求項3】
前記燃料遮断弁部開閉手段は、
前記負圧流路の途中に設けられた大気開放部と、
前記大気開放部より前記クランク室側に設けられ、前記ガスエンジンの始動/停止スイッチと連動可能に連結された開閉切替弁と、を備え、
前記開閉切替弁は、
前記ガスエンジンを始動可能な始動位置に前記始動/停止スイッチを配置した状態で、前記負圧流路を開放し、かつ、前記大気開放部を閉塞可能とし、
前記ガスエンジンを停止可能な停止位置に前記始動/停止スイッチを配置した状態で、前記負圧流路を閉塞し、かつ、前記大気開放部を開放可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載のガスエンジン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−113221(P2013−113221A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260397(P2011−260397)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
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