説明

ガスカプセル及びその充填方法

ガスカプセルが、中空本体部分(1)と、充填オリフィス(3A)を備えたステム(2)付きのキャップ(2)とを有する。本体部分(1)とキャップ(2)の組立てに先立って、ストッパ部材(4)が、カプセル内にルーズに挿入する。カプセルにガスを充填する際、カプセルのオリフィス(3A)のところでのガス圧力の放出に先立って、ストッパ部材をカプセルの本体内に配置し、そして例えば、カプセルを逆さまにしてストッパ部材が重力の作用でカプセル(1)の本体と充填オリフィス(3A)との間の位置に落下するようにすることによってカプセルからのガスの経路を遮断するようストッパ部材を移動させる。次に、ガス圧力を放出してストッパ部材(4)がガスの圧力を受けてステム(3)内へ押し込められてオリフィス(3A)を閉鎖するガス密シールを形成する。次に、オリフィス(3A)を溶接すると永続的なクロージャを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスカプセル及びその改良に関する。特に、本発明は、比較的高圧で充填され、次にカプセルの充填オリフィスの溶接により密閉されるようになった種類の比較的小形のガスカプセルの充填に関するが、これには限定されない。
【背景技術】
【0002】
ガス、例えばヘリウムを比較的高圧で収容した比較的小形のガスカプセルであって、カプセルのシールを壊すことにより少量のガスをワンショット分量として送り出すようになったガスカプセルが、例えば欧州特許出願公開第0757202号明細書及び欧州特許公開第0821195号明細書に記載されている。かかるカプセルを充填して密閉する方法が、例えば欧州特許出願公開第0947760号明細書に記載されている。
【0003】
比較的サイズの小さなガスカプセルに、充填の温度における蒸気圧がカプセルを充填する圧力よりも高いガス、例えばヘリウムを充填してかかるガスカプセルを密閉する際、密閉されたカプセル内のガスの圧力が所望の圧力許容範囲内にあるようにする場合に特に問題がある。これは、カプセル内に入っているガスが例えば液体二酸化炭素を収容した他の小形ガスカプセルとは異なり、液体の形態ではなく、従って、充填圧力がカプセル内のガスの量に直接関連しているからである。
【0004】
特にヘリウムは、どんなに小さな漏洩経路であってもこれを通ることができるので密閉された容器内に閉じ込めるのが非常に困難なガスであり、このことにより、容量の小さなガスカプセルの場合、容器を溶接により密閉するだけでなく溶接部内でのカプセルの材料の融着が溶接部の健全性又は一体性を保証すると共に溶接部の欠陥、例えば多孔性に起因する潜在的な漏洩経路をなくすようにするのに十分であることが効果的に必要である。
【0005】
上述した欧州特許出願公開第0947760号明細書では、かかるカプセルを溶接する一方法が記載されており、かかる方法では、カプセルに圧力下で流体を充填しながらカプセルのネック部分を圧着し、次にカプセルの自由端部を解放してその溶接がカプセルを充填するガスが無い環境で起こることができるようにする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カプセルの溶接中、カプセルのネックのところにガス密クリンプを維持する必要があることは、製造の際に都合が悪いだけでなく、多数のカプセルの迅速な充填を必要とする生産ラインにおいて達成することが困難である。
したがって、本発明の目的は、全体として上述した種類のカプセルを充填して密閉する改良型方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一特徴によれば、中空本体部分と、これに組み付けられていて、充填オリフィスが設けられたステムを備えるキャップとを有するガスカプセルの充填方法であって、本体部分及びキャップ部分の組立てに先立って、カプセル内でルーズなストッパ部材をカプセル内に設ける工程と、カプセルに圧力下でガスを充填する工程と、ストッパ部材がカプセルの本体と充填オリフィスとの間の位置を占めてガスの経路をカプセルから遮断する工程と、カプセルのオリフィスのところでガス圧力を放出してストッパ部材をカプセル内のガスの圧力下で、カプセルのオリフィスに至る通路を構成するキャップ部材の一部とガス密係合状態にする工程とを有する、方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法は、ストッパ部材の形態及び材料の適当な選択並びにストッパ部材を受け入れるガス通路の適切な構成により、少なくともカプセルの有効シールを保証するのに必要な次の溶接工程の際にカプセル内に必要なガス圧力を保持するのに十分なガス密シールが得られるという利点を有している。
【0009】
欧州特許出願公開第0947760号明細書の方法は例えば、容器のネックに形成される第1のクリンプを容器の本体に対しストッパ部材の下流側に位置する容器のステムの一部に達成できるという点を除き、容器の溶接シールの形成に適用できる。その目的は、圧着を圧着時点においては実質的に充填ガスが存在していない状態で実施できるようにすることにある。かくして、溶接作業中における溶接部の周囲環境への充填ガスの透過漏洩の可能性は実質的に減少し、それにより溶接部の品質が向上する。
【0010】
本発明の方法の別の特徴及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲の記載から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、添付の図面に例示として記載されている。
図1を参照すると、本発明の一実施形態に従って充填されて密封されたガスカプセルが示されている。公知のように、カプセルは、キャップ2によって密閉された本体部分1を有し、これら両方は、全体として円筒形の形態のものである。カプセルの本体は、一端部1aのところが閉じられると共に1bのところがテーパしてキャップ2のリム2aが嵌るネックを形成しており、リム2aの自由縁部は、すみ肉溶接(図示せず)によって本体1aのネックに溶接されている。キャップ2は、一体形ステム3を有し、その前方端部3aは、減少した直径のものであって、溶接により密封されるようになっている。
【0012】
図1に示すように、ステム3は、エラストマーボール4の形態をしたストッパ部材を収容しており、このエラストマーボール4は、ステムの先端部3aの上流側でステム3の絞り部分3bに圧着することによりガス密シールを形成することができる材料、例えばシリコーンゴムで作られている。図1に示す位置では、ボール4は、以下に詳細に説明するような仕方でカプセルの本体1内に入っているガスの圧力を受けてステム3に係合させられている。しかしながら、この段階では、ボール4は図1においては便宜上球形の形をしているものとして示されているが、実際には、ボールは、ステム3の内面と同じ形になるよう弾性変形されるということは注目されるべきである。キャップ2の幅の広い又は拡径部分とステム3のボアとの接合部のところには、ボール4をステム3内へ導くのを助ける円錐形表面5が形成されている。
【0013】
次に、図1に示すカプセルの充填方法を図2〜図6の略図の助けを借りて詳細に説明する。
本体1とキャップ2の組立てに先立って、まず最初にボール4をカプセルの本体1内に導入し、ボール4が本体1内にルーズに受け入れられてキャップ2によってこの中に閉じ込められるようにする。図2に示すように、本体1とキャップ2をレーザ溶接により一体化する。本体とキャップをしっかりと係合状態に保持する上側部分6と下側部分7から成る取付け具内に保持されている間、取付け具を矢印8で指示するようにカプセルの長手方向軸線回りに回転させ、その間、レーザビーム9を本体1とキャップ2の接合部のところに差し向けて上述のすみ肉溶接を形成する。溶接中、ボール4をキャップ2の上端部内に配置する。
【0014】
取付け具(6,7)からの取出し後、カプセルを逆さまにして図3に示す位置にし、ガス圧力を先端部3aを介してキャップ2のオリフィスに及ぼす。その目的は、ボール4をキャップ2から遠ざけてこれが本体1内でルーズに位置するようにすることにある。図4に示す第2の工程では、ステム3を介してカプセルを排気し、次にカプセルに図5に指示するように高い圧力でヘリウムを充填する。
カプセルの充填圧力は、カプセルの意図した使用に従って選択可能であり、代表的には10〜80バールである。
【0015】
ガス圧力を所望のレベルに維持した状態で、カプセルを図6に示すように逆さまにしてボール4がキャップ2内へ落下し、ボールの直径に応じて、これがステム3内に落下するか又は表面5の周囲によって支持された状態で静止状態になるようにする。次に、先端部3aのオリフィスのところに及ぼされたガス圧力を放出し、ボール4がカプセル内のガス圧力によって駆動されるようにしてこれがステムの絞り部分3bのところにシールを形成するために拘留されるようにする。すると、カプセルは、図1に示すような状態にある。 図1に示す状態では、カプセルは、高圧下でガスを収容した効果的に密閉された容器である。ガス充填の性状に応じて、ボールにより形成されるシールが、カプセルの所望の用途にとって有効である場合がある。カプセルをヘリウムで充填する場合、シリコーンゴムボール4により形成されるシールは、ヘリウムガスの侵入性により永続的なシールを形成するには不十分であり、従ってステム3の先端部3aを溶接により封止する必要がある。
【0016】
図7に概略的に示されているように、カプセルを図1に示す直立位置に配置し、ステム3の先端部3aを絞り部分3bのすぐ上で先端部3aに係合する下側の対をなす圧着ジョー10によって形成される第1のクリンプによって閉鎖し、次に先端部3の自由端部を上側の対をなす圧着ジョー11によって圧着する。ジョー11の解除後、先端部3aの端部を既に上述したやり方でレーザ溶接により封止する。加うるに、本発明の方法の好ましい特徴に従って、第3の対をなすジョー12がボール4の下の箇所でステム3を絞るようにし、それにより封止後におけるステム3からのボールの離脱を阻止する。先端部3aの端部を溶接によりいったん永続的に封止すると、例えばヘリウムのようなガスの透過により、ガス圧力はボール4の上下の箇所で平衡状態になり、かくして、ボール4を定位置に捕捉するためにステム3の変形を生じさせないでボール4を放出してカプセルの本体1内に戻す可能性があることは理解されよう。
【0017】
特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく本発明の上述の方法の種々の変形例を想到できることは理解されよう。かくして、上述の方法ではボール4が重力の影響を受けて図6に示す位置に動くようになるが、かかる運動は他の手段によっても達成され、かくしてカプセルを逆さまにする必要はないことが考えられる。図8に示すように、かかる方法をステム3の絞り部分3bが段付き肩ではなく漸変円錐形テーパの形態をしている改造型のカプセルに適応できる。円錐形にテーパした絞り部3bは、ガス圧力の作用下でボール4を絞る際にステムの部分3bの機械的利点がそれに応じて増すのでカプセルを低いガス圧力で充填するのに一層適している。図8に示すカプセルは、図7を参照して上述したのとほぼ同じやり方で溶接シールを備えるのがよい。
【0018】
実際には、本発明の方法は、カプセルの充填と永続的なシールを形成するための先端部3aの次に行なう溶接との間の比較的短期間の間、充填ガス例えばヘリウムをカプセル内に保持するのに十分な一時的シールの形成に成功することが判明した。
【0019】
本発明の上述の実施形態において達成されるガスシールの有効性は、カプセル及びストッパ材料についての適当な材料の適切な選択並びにそれぞれの部品の相対的寸法、その表面仕上げ及びステム3の絞り部分3bのテーパの角度で決まることは理解されよう。かかるパラメータは、試行及び実験により容易に決定できるが、実際には、カプセルの本体部分及びキャップがアルミニウムから深絞り成形により形成され、絞り部3bの上流側端部のところにおけるステム3の内径が2.15〜2.25mmである場合に満足のゆく結果が達成された。ステム3の長手方向軸線に対する絞り部分3bのテーパの角度は、図8に示すテーパ付きステムの場合7°、図1に示すステムの実施形態については60°の範囲であるのがよい。かかる寸法のステムの場合、ボール4は、直径が2.0mm〜2.3mm、ショア硬度が45〜65IRHDのシリコーンエラストマー製の球として形成されたものであるのがよい。かかる寸法のエラストマーボールが静電気により充填作業中にアルミニウム製カプセルの内壁にくっつかないようにするために、シリコーンエラストマーは好ましくは、適当な比率の導電性物質、例えばカーボンブラックを混入することにより又はその表面を導電性物質、例えば黒鉛粉末で処理することにより導電性にされる。
【0020】
上述のパラメータの選択は実際には、内容積が3〜5ミリリットルであり10〜80バールの圧力でヘリウムが充填されるアルミニウム製のカプセルの満足のゆく密封を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の方法による充填及び密封後のガスカプセルの断面立面図である。
【図2】図1に示す種類のカプセルを充填して密封する本発明の方法における一工程を概略的に示す図である。
【図3】図1に示す種類のカプセルを充填して密封する本発明の方法における一工程を概略的に示す図である。
【図4】図1に示す種類のカプセルを充填して密封する本発明の方法における一工程を概略的に示す図である。
【図5】図1に示す種類のカプセルを充填して密封する本発明の方法における一工程を概略的に示す図である。
【図6】図1に示す種類のカプセルを充填して密封する本発明の方法における一工程を概略的に示す図である。
【図7】図1に示すカプセルのオリフィスのところに溶接シールを形成する方法を示す略図である。
【図8】図1と類似した断面立面図であり、改造型カプセルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空本体部分と、該中空本体部分に組み付けられ、充填オリフィスが設けられたステムを備えるキャップとを有するガスカプセルの充填方法であって、
前記本体部分と前記キャップ部分との組立てに先立って、前記カプセル内に、該カプセル内でルーズであるストッパ部材を設け、
前記カプセルにガスを圧力下で充填し、
前記カプセルの本体と前記充填オリフィスとの間の位置を前記ストッパ部材に占めさせて、前記カプセルからのガスの経路を遮断し、
前記カプセルのオリフィスのガス圧力を解放し、前記カプセル内のガスの圧力で前記ストッパ部材を押し、前記カプセルの前記オリフィスに至る通路を構成するキャップ部材の一部とガス密係合させる
ことを含む方法。
【請求項2】
前記通路は、該通路が前記ステム内に、直径が減縮する絞り部分を備えるボアを有するように形成され、前記ストッパ部材は、前記ガスの圧力で前記ボア内に押し込められ、前記絞り部分と流体密係合状態で閉じ込められるように寸法決めされた弾性材料のボールとして形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ボアは、前記カプセルの前記本体部分に隣接する拡径の第1の部分と、前記充填オリフィスに隣接する縮径の第2の部分とを備え、前記絞り部分は、前記拡径部分と縮径部分とを接合し、前記ガス圧力下で前記ボールと係合する受け座を形成する肩を有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ボアは、前記カプセルの前記本体部分に隣接する拡径の第1の部分及び前記充填オリフィスに隣接する縮径の第2の部分を備え、前記絞り部分は、前記拡径部分と前記縮径部分との間に延びる前記ボアのテーパ付き部分を有し、前記弾性ボールは、前記ガスの圧力下で、テーパ付き部分に沿って押され、該ボールがボア内に捕捉される位置まで圧縮される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記本体部分及び前記キャップは、アルミニウム又はアルミニウム合金で作られている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記ボールは、シリコーンゴムで作られている、請求項2又は請求項2に従属する請求項3〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記ボア内への前記ボールの導入後、前記ステムは、前記ボールを前記キャップのステム内に捕捉するためにカプセルの本体とボールとの間でボアを絞るよう内方に永続的に変形される、請求項2又は請求項2に従属した請求項3〜6のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記ステムの充填オリフィスでのガス圧力の前記解放後、前記ステムの先端部は、オリフィスを閉鎖するよう溶接される、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記溶接する工程は、
前記ステムをオリフィスのすぐ隣に位置する第1の対をなす圧着ジョー相互間で圧着してオリフィスを平らにし、これを閉じ、
ステムを第2の対をなす圧着ジョー相互間で前記オリフィスから間隔を置いた箇所において圧着し、
ステムを前記第2の対をなすジョー相互間に配置した状態で第1の対をなす圧着ジョーを解除し、
レーザビームを平らにされたオリフィスにより形成される線に沿って差し向けることにより前記オリフィスを溶接する
ことを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
カプセルに圧力下でガスを充填する前記工程に先立って、まず最初にカプセルをガスで洗浄し、次に排気し、前記カプセルを洗浄及び排気中、前記充填オリフィスが上向き位置にある状態で配向させ、それにより前記ストッパ部材が排気工程中、カプセルの底部内にルーズに位置するようにする、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
ストッパ部材は、前記カプセルを充填オリフィスが下向きの位置にある状態で配向させることにより重力の影響を受けてガスの経路を遮断する前記位置を取るようになる、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のうちいずれか一に記載の方法により製造される充填ガス入りカプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−515408(P2006−515408A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500182(P2006−500182)
【出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000039
【国際公開番号】WO2004/063622
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(591004445)ザ ビーオーシー グループ ピーエルシー (59)
【Fターム(参考)】