説明

ガスクロマトグラフ装置およびガス成分検出方法

【課題】試料ガスおよびキャリアガスを流動させる手段の共通化が可能なガスクロマトグラフ装置およびガス成分検出手段を提供する。
【解決手段】試料ガスの通過に応じて試料ガス成分を捕集し且つキャリアガスの通過に応じて前記捕集した試料ガス成分を脱離させる捕集手段11、および、前記捕集手段11から前記キャリアガスによって搬送された前記試料ガス成分を検出する検出手段12、が直列に接続されてなる成分検出経路10を有するガスクロマトグラフ装置1において、前記成分検出経路10内への前記試料ガスの導入に応じて、前記試料ガスを前記検出手段12から前記捕集手段11に向かう方向に流動させ、且つ、前記成分検出経路10内への前記キャリアガスの導入に応じて、前記キャリアガスを前記捕集手段11から前記検出手段12に向かう方向に流動させるガス流動手段20を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料ガス中に含まれる物質(成分)を検出するガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)は、例えば、家屋内雰囲気等の試料ガスに含まれる揮発性有機化合物等の検出対象成分の検出に用いられる装置であり、該試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため、分離カラムおよび検出センサなどの検出装置のほかに、検出対象成分を捕集して濃縮するための捕集装置を備えた構成のものが一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1で提案されているGC装置100は、図9に示されるように、試料ガス成分を搬送するキャリアガスを発生するガスボンベなどのキャリアガス源108、キャリアガスによって搬送された試料ガスの成分を検出(分析)する分析装置110、試料ガスを導入する試料導入口101、試料導入口101から導入された試料ガスを吸引して排出口115から排出する吸引ポンプ104、試料ガスから検出対象成分を捕集して濃縮する捕集管102、および、捕集管102を試料導入口101と吸引ポンプ104との間またはキャリアガス源108と分析装置110との間に選択的に接続するバルブ105、などから構成されている。
【0004】
このGC装置100において、検出対象成分を捕集(濃縮)するときは、捕集管102が試料導入口101と吸引ポンプ104との間に直列に接続されるようバルブ105を切り替え、吸引ポンプ104が試料ガスを吸引することにより、試料導入口101に導入された試料ガスが捕集管102内を流動されて検出対象成分が捕集される。そして、検出対象成分を検出するときは、捕集管102がキャリアガス源108と分析装置110との間に直列に接続されるようバルブ105を切り替えて、キャリアガス源108がキャリアガスを発生して捕集管102内を流動させることにより、検出対象成分をキャリアガスによって捕集管102から分析装置110まで搬送して、分析装置110内に導入していた。
【特許文献1】特開2006−337158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のGC装置100においては、検出対象成分を捕集するときは吸引ポンプ104によって試料ガスを流動させ、検出対象成分を検出するときはキャリアガス源108によってキャリアガスを流動させており、即ち、試料ガスおよびキャリアガスを流動させる装置等がそれぞれ別個に必要となるため、装置の大型化および製造コストの上昇という問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、試料ガスおよびキャリアガスを流動させる手段を共通化できるガスクロマトグラフ装置およびそのガス成分検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置は、図1の基本構成図に示すように、試料ガスの通過に応じて試料ガス成分を捕集し且つキャリアガスの通過に応じて前記捕集した試料ガス成分を脱離させる捕集手段11、および、前記捕集手段11から前記キャリアガスによって搬送された前記試料ガス成分を検出する検出手段12、が直列に接続されてなる成分検出経路10を有するガスクロマトグラフ装置1において、前記成分検出経路10内への前記試料ガスの導入に応じて、前記試料ガスを前記検出手段12から前記捕集手段11に向かう方向に流動させ、且つ、前記成分検出経路10内への前記キャリアガスの導入に応じて、前記キャリアガスを前記捕集手段11から前記検出手段12に向かう方向に流動させるガス流動手段20、を有することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載のガスクロマトグラフ装置は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記成分検出経路10が、前記キャリアガスが前記捕集手段11を迂回して前記検出手段12に流動されるように前記捕集手段11に対して並列に配設されたバイパス経路31と、前記キャリアガスが流動される経路として前記捕集手段11および前記バイパス経路31を選択的に切り替えるバイパス選択手段32と、を有し、前記バイパス選択手段32が、前記検出手段12の清浄に応じて、前記キャリアガスが流動される経路を前記バイパス経路31に切り替える手段であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載のガスクロマトグラフ装置は、図1の基本構成図に示すように、請求項1または2に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記キャリアガスを提供するキャリアガス提供手段22と、前記成分検出経路10内を流動された前記試料ガスを排出する排出口41と、を有し、前記成分検出経路10が、前記試料ガスの導入に応じて、前記検出手段12が接続された側とは反対側に位置する前記捕集手段11の端部と前記排出口41とを接続し、且つ、前記キャリアガスの導入に応じて、前記端部と前記キャリアガス提供手段22とを接続する排出口選択手段42と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載のガス成分検出方法は、請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置において用いられるガス成分検出方法であって、前記試料ガスの導入に応じて、前記試料ガスを前記検出手段から前記捕集手段に向かう方向に流動させることにより、前記捕集手段による試料ガス成分の捕集を行う捕集工程と、前記キャリアガスの導入に応じて、前記キャリアガスを前記捕集手段から前記検出手段に向かう方向に流動させることにより、前記脱離された試料ガス成分を前記捕集手段から前記検出手段に搬送して、試料ガス成分の検出を行う検出工程と、を有することを特徴とする方法である。
【0011】
請求項5に記載のガス成分検出方法は、請求項2に記載のガスクロマトグラフ装置において用いられるガス成分検出方法であって、前記試料ガスの導入に応じて、前記試料ガスを前記検出手段から前記捕集手段に向かう方向に流動させることにより、前記捕集手段による試料ガス成分の捕集を行う捕集工程と、前記検出手段の清浄に応じて、前記キャリアガスが流動される経路を前記バイパス経路に切り替えることにより、前記キャリアガスを前記捕集手段を迂回させて前記検出手段に導入して清浄する清浄工程と、前記キャリアガスの導入に応じて、前記キャリアガスを前記捕集手段から前記検出手段に向かう方向に流動させることにより、前記脱離された試料ガス成分を前記捕集手段から前記検出手段に搬送して、試料ガス成分の検出を行う検出工程と、を有することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、成分検出経路内への試料ガスの導入に応じて、試料ガスを検出手段から捕集手段に向かう方向に流動させ、且つ、成分検出経路内へのキャリアガスの導入に応じて、キャリアガスを捕集手段から検出手段に向かう方向に流動させるガス流動手段を有していることから、ガス流動手段により、試料ガス成分を捕集するときは、捕集手段を通過するように試料ガスを流動させることができ、また、試料ガス成分を検出するときは、試料ガス成分が検出手段に搬送されるようにキャリアガスを流動させることができるので、試料ガスおよびキャリアガスを流動させるための複数の流動手段を要することなく、それぞれのガスを共通のガス流動手段によって選択的に流動させることができる。よって、ガスクロマトグラフ装置の小型化が可能となり、また、製造コストを下げることができる。
【0013】
請求項2に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、成分検出経路が、捕集手段に対して並列に配設されたバイパス経路と、キャリアガスが流動される経路として捕集手段およびバイパス経路を選択的に切り替えるバイパス選択手段と、を有しており、バイパス選択手段が、検出手段の清浄に応じてバイパス経路に切り替えることから、検出手段による試料ガス成分の検出前に、キャリアガスを、バイパス経路を経由して検出手段に導入させることできるので、検出手段内に残存している試料ガスをキャリアガスによって排出して、検出手段を清浄することが可能となる。そのため、検出手段内に残存する試料ガス成分による検出誤差の発生を回避することができ、精度の高い検出を行うことができる。
【0014】
請求項3に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、試料ガスの導入に応じて、試料ガスがガスクロマトグラフ装置外に排出されるように捕集手段と排出口とを接続し、そして、キャリアガスの導入に応じて、キャリアガスが成分検出経路に導入されるように捕集手段とキャリアガス提供手段とを接続する排出口選択手段を有していることから、試料ガス導入時に、排出口から試料ガスを排出することで、試料ガスがキャリアガス提供手段に流れ込むことを防ぎ、試料ガスによるキャリアガスの汚染を防止することができる。そのため、汚染のないキャリアガスを得ることができるので、精度の高い検出を行うことができる。
【0015】
請求項4に記載した本発明のガス成分検出方法によれば、試料ガスの導入に応じて試料ガス成分の捕集を行う捕集工程と、キャリアガスの導入に応じて試料ガス成分の検出を行う検出工程と、を有していることから、捕集工程においては捕集手段を通過するように試料ガスを流動させ、また、検出工程においては試料ガス成分が検出手段に搬送されるようにキャリアガスを流動させることにより、試料ガスおよびキャリアガスのための複数の流動手段を要することなく、それぞれのガスを共通のガス流動手段によって選択的に流動させることができる。よって、ガスクロマトグラフ装置の小型化が可能となり、また、製造コストを下げることができる。
【0016】
請求項5に記載した本発明のガス成分検出方法によれば、検出手段の清浄に応じてキャリアガスを捕集手段を迂回させて検出手段に導入して清浄する清浄工程を有していることから、検出工程の前に、キャリアガスを、捕集手段を迂回させて検出手段に導入させることにより、検出手段内に残存している試料ガスをキャリアガスによって排出して、検出手段を清浄することが可能となる。そのため、検出手段内に残存する試料ガス成分による検出誤差の発生を回避することができ、精度の高い検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一実施形態について、図2〜図8の図面を参照して説明する。
【0018】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)1は、図2に示すように、捕集装置11および検出装置12が直列に接続されてなる成分検出経路10と、成分検出経路10の検出装置12側に順次直列に接続されたバッファ26と流動方向切替バルブ25とポンプ24と試料導入部23と、成分検出経路10の捕集装置11側に順次直列に接続された活性炭フィルタ22と大気吸入口21と、捕集装置11に対して並列に配設されたバイパス経路31と、捕集装置11と検出装置12との間に位置するバイパス経路31の端部に配設されたバイパスバルブ32と、捕集装置11と活性炭フィルタ22との間に配設された排出バルブ42と、排出バルブ42に接続された排出口41と、GC装置1の動作を制御する制御装置51と、で構成されている。
【0019】
捕集装置11は、請求項の捕集手段に相当し、試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため試料ガス成分を捕集して濃縮するための装置であり、捕集管11aと捕集管加熱冷却装置11bとを備えている。
【0020】
捕集管11aは、例えば、内径5mm程度、長さ20〜30cm程度のガラス管の内部に、耐熱性樹脂またはカーボンブラックなどの検出対象成分に対応した捕集剤を充填したものである。そして、低温にされた捕集管11a内部に試料ガスを通すことによって、試料ガス成分を捕集剤に吸着(捕集)したのち、高温に加熱されることで、捕集した試料ガス成分が捕集剤から脱離されて、高濃度の試料ガスを生成することができる。
【0021】
捕集管加熱冷却装置11bは、試料ガス成分の捕集に応じて捕集管11aを冷却し、試料ガス成分の脱離に応じて捕集管11aを加熱するものであり、加熱手段として電熱線などのヒータを備え、冷却手段としてペルチェ素子などを備えた、既存の装置である。また、捕集管加熱冷却装置11bは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0022】
検出装置12は、請求項の検出手段に相当し、捕集装置11によって生成された高濃度の試料ガスが導入されてその成分検出(分析)を行う装置であり、分離カラム12aとカラム加熱冷却装置12bと検出センサ12cとを備えている。
【0023】
分離カラム12aは、試料ガスに含まれる成分の分離を行うためのものであり、内径2〜6mm、長さ数mの管に粒状の固定相を充填したパックドカラム、内径約0.5mm以下、長さ数十mの細い管の壁面に直接液状の固定相を保持させたキャピラリーカラム、または、エッチング処理によりガラス板に微細なカラム溝が形成されてなるマイクロカラムなどの、既存のカラムが用いられる。
【0024】
カラム加熱冷却装置12bは、分離カラム12aへの試料ガスの導入及び試料ガス成分の分離に応じて分離カラム12aの温度を調節するものであり、加熱手段として電熱線などのヒータを備え、冷却手段としてペルチェ素子などを備えた、既存の装置である。また、カラム加熱冷却装置12bは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0025】
検出センサ12cは、分離カラム12aにおいて分離されたのちにキャリアガスによって搬送されてきた試料ガスの成分を検出するためのものであり、例えば、水素炎イオン化型検出器、熱伝導度型検出器などの既存の検出器が用いられており、検出センサ12cは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。なお、検出センサ12cの構成および動作については、本発明の本質とは関係しないため詳細は省略する。
【0026】
ポンプ24は、ポンプ吸入口24aから吸入したガスをポンプ排出口24bから排出して流動させるものであり、成分検出経路10内を通過するように、試料ガスおよびキャリアガスを流動させ、また、それぞれのガスが適切に流動されるように、状況に応じて、その流動の速さや流動量を細かく制御できる、既存のものである。ポンプ24の流動方向は一定方向に固定されており、後述する流動方向切替バルブ25によって、成分検出経路10に接続される向きが切り替えられ、即ち、成分検出経路10内を流れるガスの流動方向が切り替えられる。なお、ポンプ24は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0027】
流動方向切替バルブ25は、例えば、四方電磁弁などが用いられ、その4つの接続口に、バッファ26と試料導入部23とポンプ吸入口24aとポンプ排出口24bとが接続されている。そして、試料ガスを導入するとき、バッファ26とポンプ排出口24b、並びに、試料導入部23とポンプ吸入口24aがそれぞれ接続されて、試料導入部23から導入された試料ガスが、成分検出経路10内を検出装置12から捕集装置11に向かって流動されるように接続を切り替え、キャリアガスを導入するとき、バッファ26とポンプ吸入口24a、並びに、試料導入部23とポンプ排出口24bが接続されて、後述の活性炭フィルタ22から提供されたキャリアガスが、成分検出経路10内を捕集装置11から検出装置12に向かって流動されるように接続を切り替える。また、流動方向切替バルブ25は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。なお、ポンプ24および流動方向切替バルブ25は、ガス流動部(請求項のガス流動手段に相当)20を構成している。
【0028】
バッファ26は、ポンプ24による流動の乱れを抑制し、流動量を一定に保つための既存のものであり、バッファ26を経路上に配設することで流動量が安定するため検出精度を高めることができる。また、ポンプ24の流動の乱れによる誤差が許容範囲内であれば、バッファ26を省略してもよい。
【0029】
試料導入部23は、GC装置1の構成の端部に配設されており、試料ガス成分を捕集するときに、GC装置1に対して試料ガスを導入するための導入部であるとともに、試料ガス成分を検出するときに、試料ガス成分を搬送したキャリアガスをGC装置1外に排出する排出部としても機能するものである。
【0030】
活性炭フィルタ22は、請求項のキャリアガス提供手段に相当し、試料導入部23とは反対側に位置するGC装置1の端部に配設されており、ポンプ24および流動方向切替バルブ25によって、成分検出経路10内を捕集装置11から検出装置12に向かう方向に吸引することにより、活性炭フィルタ22に接続された大気吸入口21から大気を吸入して、フィルタ内の活性炭により大気に含まれる不純物を取り除いてキャリアガスを生成するものである。
【0031】
バイパス経路31は、捕集装置11を迂回してキャリアガスを検出装置12に導入するための管路であり、その一端が捕集装置11と検出装置12との間にバイパスバルブ32を介して接続され、その他端が捕集装置11と活性炭フィルタ22との間に接続されている。
【0032】
バイパスバルブ32は、請求項のバイパス選択手段に相当し、例えば、既存の三方電磁弁などが用いられ、捕集装置11と検出装置12との間に位置するバイパス経路31の端部に設けられている。また、3つのポートa、b、cを備え、ポートaには検出装置12側に位置する捕集装置11の端部、ポートbにはバイパス経路31、ポートcには検出装置12、がそれぞれ接続されている。バイパスバルブ32は、キャリアガスを流動させる経路として、捕集装置11またはバイパス経路31のどちらか一方を選択して切り替えるものであり、即ち、捕集装置11と検出装置12(a−c接続)、または、バイパス経路31と検出装置12(b−c接続)、を選択的に接続するものである。
【0033】
また、バイパスバルブ32によって、検出装置12による検出前に、バイパス経路31と検出装置12とを接続(b−c接続)することで、キャリアガスが捕集装置11を迂回して流動されるので、キャリアガスによって分離カラム12aおよび検出センサ12cが清浄(即ち、検出手段の清浄)されて、正確なベースライン(基準値)を得ることが可能となり、検出精度を向上させることができる。また、バイパスバルブ32は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。なお、バイパスバルブ32は、バイパス経路31の一方の端部に設けているが、これに限らず、捕集装置11およびバイパス経路31のどちらか一方と検出装置12とを選択的に接続するものであれば、バイパス経路31の他方の端部または両端部に設けてもよい。
【0034】
排出バルブ42は、請求項の排出口選択手段に相当し、例えば、既存の三方電磁弁などが用いられており、また、3つのポートd、e、fを備え、ポートdには活性炭フィルタ22、ポートeには排出口41、ポートfには検出装置12側とは反対側に位置する捕集装置11の端部、がそれぞれ接続されている。そして、排出バルブ42は、試料ガスの導入に応じて、捕集装置11と排出口41とを接続し(e−f接続)、キャリアガスの導入に応じて、前記端部と活性炭フィルタ22とを接続する(d−f接続)。また、排出バルブ42は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0035】
排出口41は、排出バルブ42に接続されており、試料ガスの導入に応じて捕集装置11と接続され、成分検出経路10内を通過した試料ガスをGC装置1外に排出し、また、捕集管11a加熱時、捕集管11a内に滞留するガスの体積変化による圧力を逃がすものである。
【0036】
制御装置51は、制御対象部位である捕集管加熱冷却装置11b(ア)、カラム加熱冷却装置12b(イ)、検出センサ12c(ウ)、ポンプ24(エ)、流動方向切替バルブ25(オ)、バイパスバルブ32(カ)、および、排出バルブ42(キ)に接続されており、それぞれを連動して制御する図示しないマイクロコンピュータ(MPU)を備えている。MPUは、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)、CPUのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM、各種のデータを格納するとともにCPUの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM、および、上述した制御対象部位との間で制御情報を送受信するためのシリアルインタフェースなどを含むI/O部等で構成されている。
【0037】
制御装置51のCPUは、ROMに格納されたプログラムに基づいて、捕集管11aの温度が適温となるように捕集管11aの加熱・冷却を行う捕集管加熱冷却手段、分離カラム12aの温度が適温となるように分離カラム12aの加熱・冷却を行うカラム加熱冷却手段、試料ガスに含まれる試料ガス成分を検出する成分検出手段、成分検出経路10内を流動される試料ガスおよびキャリアガスの流量および流速を制御する流量制御手段、試料ガスの導入に応じて、試料ガスが検出装置12から捕集装置11に向かって流動されるようにポンプ24による流動方向を切り替え、キャリアガスの導入に応じて、キャリアガスが捕集装置11から検出装置12に向かって流動されるようにポンプ24による流動方向を切り替える流動方向切替手段、キャリアガスが流動される経路として捕集装置11およびバイパス経路31のどちらか一方を選択して切り替えるバイパス選択手段、および、試料ガスの導入に応じて、捕集装置11と排出口41とを接続し、キャリアガスの導入に応じて、捕集装置11側と活性炭フィルタ22とを接続する排出口選択手段、として動作するものである。
【0038】
次に、ガスクロマトグラフ装置1の制御装置51(即ち、CPU)が実行する本発明に係る処理の一例を、図3に示すフローチャート、および、図4〜図8に示す各ステップに対応する概略動作図を参照して説明する。
【0039】
制御装置51のCPUは、GC装置1の電源投入により起動されると、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を捕集装置11から検出装置12に向かう方向(以下、検出方向)に切り替え、バイパスバルブ32によって、検出装置12と捕集装置11とを接続(a−c接続)し、排出バルブ42によって、活性炭フィルタ22と捕集装置11とを接続(d−f接続)する、などの所定の初期化動作を実行したあと、ステップS110に進む。
【0040】
ステップS110では、捕集管加熱冷却装置11bおよびカラム加熱冷却装置12bによって、捕集管11aおよび分離カラム12aを高温に加熱して不純成分を取り出したのち、ポンプ24による流動を開始する。これにより、キャリアガスが捕集管11aおよび分離カラム12aを通過するように流動され、不純成分がキャリアガスによってGC装置1外に排出される(以上、図4 クリーニング1動作)。不純成分の排出が完了したのち、ステップS120に進む。
【0041】
ステップS120では、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を検出装置12から捕集装置11に向かう方向(以下、捕集方向)に切り替え、排出バルブ42によって、捕集装置11と排出口41とを接続(e−f接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって、捕集管11aを冷却し、そして、試料導入部23から試料ガスを導入する。これにより、試料ガスが、検出装置12を通過して捕集装置11に導入され、捕集装置11により試料ガス成分の捕集が行われたのち、捕集装置11を通過した試料ガスが排出口41から排出される(以上、図5 サンプリング動作)。サンプリング動作において、分離カラム12aの加熱を継続して行うことにより、分離カラム12a内に試料ガス成分が留まることを防ぎ、捕集管11aを冷却することにより、捕集管11aに試料ガス成分が吸着(捕集)されやすくしている。そして、試料ガス成分の捕集が完了したのち、ステップS130に進む。
【0042】
ステップS130では、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を検出方向に切り替えてキャリアガスを流動させ、バイパスバルブ32によって、検出装置12とバイパス経路31とを接続(b−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって捕集管11aを高温に加熱する。これにより、検出装置12内に残留している試料ガスがキャリアガスによって押し出され、GC装置1外に排出されるのと並行して、捕集装置11において試料ガス成分の脱離が行われる(以上、図6 クリーニング2動作)。また、捕集管11aの加熱によって生じる捕集管11a内のガスの膨張による圧力を排出口41から逃がし、捕集管11a内の圧力上昇による脱離効率の低下を防いでいる。そして、検出装置12内に残留していた試料ガスの排出が完了したのち、カラム加熱冷却装置12bにより分離カラム12aを冷却する。そして、分離カラム12aがガス成分分離に適した温度まで冷却され、且つ、捕集装置11での試料ガス成分の脱離が十分に行われたのち、ステップS140に進む。なお、この分離カラム12aの温度は、検出動作まで維持される。
【0043】
ステップS140では、バイパスバルブ32によって、検出装置12と捕集装置11とを接続(a−c接続)し、排出バルブ42によって、活性炭フィルタ22と捕集装置11とを接続(d−f接続)する。これにより、捕集装置11内に脱離されて滞留している高濃度の試料ガスが、キャリアガスによって押し出され(即ち、パージされ)、検出装置12(即ち、分離カラム12a)に導入される(以上、図7 打ち込み動作)。このときのキャリアガスの量、つまり、ポンプ24によって流動される量は、試料ガスを捕集装置11から検出装置12まで搬送する程度の少量である。そして、高濃度の試料ガスが分離カラム12a内に導入されたのち、ステップS150に進む。
【0044】
ステップS150では、バイパスバルブ32によって、検出装置12とバイパス経路31とを接続(b−c接続)し、キャリアガスによって、分離カラム12a内に導入された試料ガスに含まれる試料ガス成分が、分離カラム12a内で分離され、それぞれの試料ガス成分が時間差をもって検出センサ12cに搬送されて、各成分の検出が行われる(以上、図8 検出動作)。そして、全ての検出対象成分が搬送されたのち、本フローチャートの処理を終了する。なお、上述したサンプリング動作は請求項の捕集工程に相当し、クリーニング2動作は請求項の清浄工程に相当し、検出動作は請求項の検出工程に相当する。
【0045】
次に、上述したガスクロマトグラフ装置1における、試料ガスの成分検出を行うときの動作の一例について、図4〜図8を参照して説明する。
【0046】
ガスクロマトグラフ装置1での成分検出は、最初に、捕集管11aおよび分離カラム12aを高温に加熱して、不純成分を取り出したのち、キャリアガスを流動させて、成分検出経路10のクリーニングを行う(図4 クリーニング1動作)。そして、クリーニングが完了すると、捕集管11aを冷却し、試料導入部23から導入した試料ガスを、検出装置12および捕集装置11を通過するように流動させて、捕集装置11による試料ガス成分の捕集(濃縮)を行う(図5 サンプリング動作)。
【0047】
試料ガス成分の捕集が完了したのち、捕集管11aを加熱して、捕集された試料ガス成分を脱離させ、それと同時に、キャリアガスを、バイパス経路31を経由して検出装置12を通過するように流動させて検出装置12のクリーニングを行う(図6 クリーニング2動作)。そして、検出装置12のクリーニングが完了すると、分離カラム12aを冷却し、少量の大気によって、脱離された試料ガス成分を検出装置12(即ち、分離カラム12a)に導入する(図7 打ち込み動作)。
【0048】
そして、分離カラム12aを予め定められた昇温速度で加熱して、試料ガス成分を分離するとともに、バイパス経路31を経由してキャリアガスを流すことによって、分離した試料ガス成分を検出センサ12cまで搬送し、試料ガス成分の検出を行う(図8 検出動作)。
【0049】
上記より、本実施形態によれば、成分検出経路10内への試料ガスの導入に応じて、試料ガスを検出装置12から捕集装置11に向かう方向に流動させ、且つ、成分検出経路10内へのキャリアガスの導入に応じて、キャリアガスを捕集装置11から検出装置12に向かう方向に流動させるポンプ24および流動方向切替バルブ25を有していることから、これらにより、試料ガス成分を捕集するときは捕集装置11を通過するように試料ガスを流動させることができ、また、試料ガス成分を検出するときは試料ガス成分が検出装置12に搬送されるようにキャリアガスを流動させることができるので、試料ガスおよびキャリアガスのそれぞれを流動させるポンプ、バルブ、および、ガスシリンダなどを要することなく、それぞれのガスを共通の1組のポンプ24および流動方向切替バルブ25によって選択的に流動させることができる。よって、ガスクロマトグラフ装置1の小型化が可能となり、また、製造コストを下げることができる。
【0050】
また、成分検出経路10が、捕集装置11に対して並列に配設されたバイパス経路31と、キャリアガスが流動される経路として捕集装置11およびバイパス経路31を選択的に切り替えるバイパスバルブ32と、を有しており、バイパスバルブ32が、検出装置12の清浄に応じてバイパス経路31に切り替えることから、検出装置12による試料ガス成分の検出前に、キャリアガスを、バイパス経路31を経由して検出装置12に導入させることができるので、分離カラム12aや検出センサ12cに残存している試料ガスをキャリアガスによって排出して、検出装置12を清浄することが可能となる。そのため、検出装置12内に残存する試料ガス成分による検出誤差の発生を回避することができ、精度の高い検出を行うことができる。
【0051】
また、試料ガスの導入に応じて、試料ガスがガスクロマトグラフ装置1外に排出されるように捕集装置11と排出口41とを接続し、そして、キャリアガスの導入に応じて、キャリアガスが成分検出経路10に導入されるように捕集装置11と活性炭フィルタ22とを接続する排出バルブ42を有していることから、試料ガス導入時に、排出口41から試料ガスを排出することで、試料ガスが活性炭フィルタ22に流れ込むことを防ぎ、試料ガスによるキャリアガスの汚染を防止することができる。そのため、汚染のないキャリアガスを得ることができるので、精度の高い検出を行うことができる。
【0052】
なお、本実施形態では、検出装置12への打ち込み動作におけるパージガスとしてキャリアガスを用いているが、例えば、打ち込み動作時に排出口41と捕集装置11とを接続(排出バルブ42 e−f接続)し、排出口41から大気を吸入してパージガスとするなど、捕集装置11から検出装置12への試料ガス導入が可能であれば、打ち込み動作はどのように行っても良い。
【0053】
また、本実施形態では、検出動作時に分離カラム12aの温度を一定の温度に保ちつつ試料ガス成分の分離を行う方法(定温法)を用いているが、これに限らず、例えば、検出動作時に分離カラム12aの温度を昇温させつつ試料ガス成分の分離を行う方法(昇温法)など、検出対象となる試料ガスに応じてその方法を変更しても良い。
【0054】
なお、上述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のガスクロマトグラフ装置の基本構成図である。
【図2】本発明のガスクロマトグラフ装置の一実施形態を示す構成図である。
【図3】図2中のガスクロマトグラフ装置のCPUが実行する本発明に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図2中のガスクロマトグラフ装置のクリーニング1動作の状態を示す図である。
【図5】図2中のガスクロマトグラフ装置のサンプリング動作の状態を示す図である。
【図6】図2中のガスクロマトグラフ装置のクリーニング2動作の状態を示す図である。
【図7】図2中のガスクロマトグラフ装置の打ち込み動作の状態を示す図である。
【図8】図2中のガスクロマトグラフ装置の検出動作の状態を示す図である。
【図9】従来のガスクロマトグラフ装置の構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ガスクロマトグラフ装置
10 成分検出経路
11 捕集手段(捕集装置)
12 検出手段(検出装置)
20 ガス流動手段(ガス流動部)
22 キャリアガス提供手段(活性炭フィルタ)
31 バイパス経路
32 パイパス選択手段(バイパスバルブ)
41 排出口
42 排出口選択手段(排出バルブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスの通過に応じて試料ガス成分を捕集し且つキャリアガスの通過に応じて前記捕集した試料ガス成分を脱離させる捕集手段、および、前記捕集手段から前記キャリアガスによって搬送された前記試料ガス成分を検出する検出手段、が直列に接続されてなる成分検出経路を有するガスクロマトグラフ装置において、
前記成分検出経路内への前記試料ガスの導入に応じて、前記試料ガスを前記検出手段から前記捕集手段に向かう方向に流動させ、且つ、前記成分検出経路内への前記キャリアガスの導入に応じて、前記キャリアガスを前記捕集手段から前記検出手段に向かう方向に流動させるガス流動手段
を有することを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記成分検出経路が、前記キャリアガスが前記捕集手段を迂回して前記検出手段に流動されるように前記捕集手段に対して並列に配設されたバイパス経路と、前記キャリアガスが流動される経路として前記捕集手段および前記バイパス経路を選択的に切り替えるバイパス選択手段と、を有し、
前記バイパス選択手段が、前記検出手段の清浄に応じて、前記キャリアガスが流動される経路を前記バイパス経路に切り替える手段であることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記キャリアガスを提供するキャリアガス提供手段と、
前記成分検出経路内を流動された前記試料ガスを排出する排出口と、を有し、
前記成分検出経路が、前記試料ガスの導入に応じて、前記検出手段が接続された側とは反対側に位置する前記捕集手段の端部と前記排出口とを接続し、且つ、前記キャリアガスの導入に応じて、前記端部と前記キャリアガス提供手段とを接続する排出口選択手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置において用いられるガス成分検出方法であって、
前記試料ガスの導入に応じて、前記試料ガスを前記検出手段から前記捕集手段に向かう方向に流動させることにより、前記捕集手段による試料ガス成分の捕集を行う捕集工程と、
前記キャリアガスの導入に応じて、前記キャリアガスを前記捕集手段から前記検出手段に向かう方向に流動させることにより、前記脱離された試料ガス成分を前記捕集手段から前記検出手段に搬送して、試料ガス成分の検出を行う検出工程と、
を有することを特徴とするガス成分検出方法。
【請求項5】
請求項2に記載のガスクロマトグラフ装置において用いられるガス成分検出方法であって、
前記試料ガスの導入に応じて、前記試料ガスを前記検出手段から前記捕集手段に向かう方向に流動させることにより、前記捕集手段による試料ガス成分の捕集を行う捕集工程と、
前記検出手段の清浄に応じて、前記キャリアガスが流動される経路を前記バイパス経路に切り替えることにより、前記キャリアガスを前記捕集手段を迂回させて前記検出手段に導入して清浄する清浄工程と、
前記キャリアガスの導入に応じて、前記キャリアガスを前記捕集手段から前記検出手段に向かう方向に流動させることにより、前記脱離された試料ガス成分を前記捕集手段から前記検出手段に搬送して、試料ガス成分の検出を行う検出工程と、
を有することを特徴とするガス成分検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−236585(P2009−236585A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81071(P2008−81071)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)