説明

ガスクロマトグラフ装置

【課題】試料ガスおよびキャリアガスを流動させる手段を共通化が可能であるとともに、高精度の成分検出が可能なガスクロマトグラフ装置を提供する。
【解決手段】ガスクロマトグラフ装置1は、試料ガスを捕集して濃縮する捕集手段11と、キャリアガスによって搬送された試料ガス成分を検出する検出手段12と、捕集手段11と検出手段12とを直列に接続する流路20と、試料ガスおよびキャリアガスを捕集手段11から検出手段12に向かう方向に流動させるガス流動手段13と、を有し、そして、流路20が、試料ガスを洗浄するガス洗浄手段21と、ガス洗浄手段21を捕集手段11と検出手段12との間に介在させた洗浄流路20A及び捕集手段11と検出手段12とを直接に接続した直接流路20Bのどちらか一方に選択的に切り替える流路切替手段22と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料ガス中に含まれる物質(成分)を検出するガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)は、例えば、家屋内雰囲気等の試料ガスに含まれる揮発性有機化合物等の検出対象成分の検出に用いられる装置であり、該試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため、分離カラムおよび検出センサなどの検出装置のほかに、検出対象成分を捕集して濃縮するための捕集装置を備えた構成のものが一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1で提案されているGC装置100は、図7に示されるように、試料ガス成分を搬送するキャリアガスを発生するガスボンベなどのキャリアガス源108、キャリアガスによって搬送された試料ガスの成分を検出(分析)する分析装置110、試料ガスを導入する試料導入口101、試料導入口101から導入された試料ガスを吸引して排出口115から排出する吸引ポンプ104、試料ガスから検出対象成分を捕集して濃縮する捕集管102、および、捕集管102を試料導入口101と吸引ポンプ104との間またはキャリアガス源108と分析装置110との間に選択的に接続するバルブ105、などから構成されている。
【0004】
このGC装置100において、検出対象成分を捕集(濃縮)するときは、捕集管102が試料導入口101と吸引ポンプ104との間に直列に接続されるようバルブ105を切り替え、吸引ポンプ104が試料ガスを吸引することにより、試料導入口101に導入された試料ガスが捕集管102内を流動されて検出対象成分が捕集される。そして、検出対象成分を検出するときは、捕集管102がキャリアガス源108と分析装置110との間に直列に接続されるようバルブ105を切り替えて、キャリアガス源108がキャリアガスを発生して捕集管102内を流動させることにより、検出対象成分をキャリアガスによって捕集管102から分析装置110まで搬送して、分析装置110内に導入していた。
【0005】
しかしながら、上述のGC装置100においては、検出対象成分を捕集するときは吸引ポンプ104によって試料ガスを流動させ、検出対象成分を検出するときはキャリアガス源108によってキャリアガスを流動させており、即ち、試料ガスおよびキャリアガスを流動させる装置等がそれぞれ別個に必要となるため、装置の大型化および製造コストの上昇という問題があった。そこで、本発明者は、この問題を解決すべく検討を行い、図8に示す構成のGC装置を思いつくに至った。
【0006】
図8に示すGC装置200は、試料ガスの通過に応じて試料ガス成分を捕集し且つキャリアガスの通過に応じて前記捕集した試料ガス成分を脱離させる捕集手段211と、捕集手段211からキャリアガスによって搬送された試料ガス成分を検出する検出手段212と、試料ガスおよび前記キャリアガスを捕集手段211から検出手段212に向かう方向に流動させるガス流動手段213と、を有し、それぞれが直列に接続されて構成されている。
【0007】
このGC装置200によれば、捕集手段211、検出手段212、および、ガス流動手段213がそれぞれ直列に接続されていることから、ガス流動手段213によって、試料ガスおよびキャリアガスを同一方向に流動させて、試料ガス成分の捕集および検出を行うことが可能となり、それぞれのガス毎にポンプやガスシリンダ等のガス流動手段を設ける必要が無く、ガス流動手段を共通化することが可能となり、GC装置200を小型化することができる。
【特許文献1】特開2006−337158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、GC装置200の構成における試料ガス成分の捕集時に、試料ガスが捕集手段211とともに検出手段212にも流動されるため、検出手段212(詳細には、検出手段212を構成する分離カラム等)に試料ガス成分が付着して、試料ガス成分の検出を行う前に検出手段212が汚染されてしまって、正確なベースライン(基準値)を得ることができなくなり、高い精度の検出を行うことができないという新たな問題があることが判明した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、試料ガスおよびキャリアガスを流動させる手段を共通化できるとともに、高精度の成分検出が可能なガスクロマトグラフ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置は、図1の基本構成図に示すように、試料ガスの通過に応じて試料ガス成分を捕集し且つキャリアガスの通過に応じて前記捕集した試料ガス成分を脱離させる捕集手段11と、前記捕集手段11から前記キャリアガスによって搬送された前記試料ガス成分を検出する検出手段12と、前記捕集手段11と前記検出手段12とを直列に接続する流路20と、前記試料ガスおよび前記キャリアガスを前記捕集手段11から前記検出手段12に向かう方向に流動させるガス流動手段13と、を有するガスクロマトグラフ装置1において、前記流路20が、前記検出手段12が検出する試料ガス成分を取り除くように前記試料ガスを洗浄するガス洗浄手段21と、前記ガス洗浄手段21を前記捕集手段11と前記検出手段12との間に介在させた洗浄流路20A及び前記捕集手段11と前記検出手段12とを直接に接続した直接流路20Bのどちらか一方に選択的に切り替える流路切替手段22と、を有し、前記流路切替手段22が、前記試料ガスの流動に応じて前記洗浄流路20Aに切り替え、且つ、前記キャリアガスの流動に応じて前記直接流路20Bに切り替える手段であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、試料ガスの流動時はガス洗浄手段を捕集手段と検出手段との間に介在させることから、ガス洗浄手段が検出手段の手前で試料ガス成分を取り除くので、成分検出前に検出手段が汚染されることが無くなり、また、キャリアガスの流動時は捕集手段と検出手段とを直接に接続することから、ガス洗浄手段によって必要な試料ガス成分が取り除かれることがなく、そのため、ガス流動手段を共通化した構成において、成分検出前の検出手段の汚染を防止することができ、よって、小型化が可能であるとともに、高精度の成分検出が可能なガスクロマトグラフ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一実施形態について、図2〜図5の図面を参照して説明する。
【0013】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)1は、図2に示すように、試料ガスを濃縮する捕集装置11と、試料ガスに含まれる試料ガス成分を検出する検出装置12と、捕集装置11と検出装置12を直列に接続する流路20と、試料ガスおよびキャリアガスを流動させるポンプ13と、ポンプ13によるガスの流動を安定させるバッファ31と、各ガスが排出される排出口32と、大気を吸入する大気吸入口33と、試料ガスを導入する試料導入部34と、大気を濾過してキャリアガスを生成する活性炭フィルタ41と、捕集装置11および検出装置12に導入されるガスを切り替える導入ガス切替バルブ42と、GC装置1を制御する制御装置51と、を備えている。
【0014】
捕集装置11は、請求項の捕集手段に相当し、試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため試料ガス成分を捕集して濃縮するための装置であり、捕集管11aと捕集管加熱冷却装置11bとを備えている。
【0015】
捕集管11aは、例えば、内径5mm程度、長さ20〜30cm程度のガラス管の内部に、耐熱性樹脂またはカーボンブラックなどの検出対象成分に対応した捕集剤を充填したものである。そして、低温にされた捕集管11a内部に試料ガスを通すことによって、試料ガス成分を捕集剤に吸着(捕集)したのち、高温に加熱されることで、捕集した試料ガス成分が捕集剤から脱離されて、高濃度の試料ガスを生成することができる。また、捕集管11aは、一般的に、試料ガスが導入される方の端部側により多くの試料ガス成分を吸着する性質を有している。
【0016】
捕集管加熱冷却装置11bは、試料ガス成分の捕集に応じて捕集管11aを冷却し、試料ガス成分の脱離に応じて捕集管11aを加熱するものであり、加熱手段として電熱線などのヒータを備え、冷却手段としてペルチェ素子などを備えた、既存の装置である。また、捕集管加熱冷却装置11bは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0017】
検出装置12は、請求項の検出手段に相当し、捕集装置11に直列に接続されており、捕集装置11によって生成された高濃度の試料ガスが導入されてその成分検出(分析)を行う装置であり、分離カラム12aとカラム加熱冷却装置12bと検出センサ12cとを備えている。
【0018】
分離カラム12aは、試料ガスに含まれる成分の分離を行うためのものであり、内径2〜6mm、長さ数mの管に粒状の固定相を充填したパックドカラム、内径約0.5mm以下、長さ数十mの細い管の壁面に直接液状の固定相を保持させたキャピラリーカラム、または、エッチング処理によりガラス板に微細なカラム溝が形成されてなるマイクロカラムなどの、既存のカラムが用いられる。
【0019】
カラム加熱冷却装置12bは、分離カラム12aへの試料ガスの導入及び試料ガス成分の分離に応じて分離カラム12aの温度を調節するものであり、加熱手段として電熱線などのヒータを備え、冷却手段としてペルチェ素子などを備えた、既存の装置である。また、カラム加熱冷却装置12bは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0020】
検出センサ12cは、分離カラム12aにおいて分離されたのちにキャリアガスによって搬送されてきた試料ガスの成分を検出するためのものであり、例えば、水素炎イオン化型検出器、熱伝導度型検出器などの既存の検出器が用いられており、検出センサ12cは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。なお、検出センサ12cの構成および動作については、本発明の本質とは関係しないため詳細は省略する。
【0021】
流路20は、試料ガスおよびキャリアガスが捕集装置11から検出装置12に流動されるようにそれぞれを直列に接続するものであり、通過するガスを洗浄して不要な成分を取り除くガススクラバ21と、捕集装置11と検出装置12とガススクラバ21のそれぞれの接続順序を切り替える流路切替バルブ22と、を備えている。
【0022】
ガススクラバ21は、請求項のガス洗浄手段に相当し、ガススクラバ21内を通過するガスを洗浄して不要な成分を取り除くものであり、例えば、水などの洗浄水を噴霧した雰囲気中に被洗浄ガスを通して洗浄する水式のガススクラバや、イオン交換樹脂によってガス中の汚染物質を吸着処理するイオン交換式のガススクラバなどが知られている。なお、本実施形態においては、ガス洗浄手段としてガススクラバ21を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、活性炭フィルタなど、試料ガスから検出装置12を汚染する成分を取り除くことができるものであれば、どのようなものを用いても良い。
【0023】
流路切替バルブ22は、請求項の流路切替手段に相当し、例えば、六方電磁弁などが用いられており、捕集装置11と検出装置12とガススクラバ21とのそれぞれの接続(即ち、流路)を切り替えるものである。詳細には、試料ガスの流動時には、試料ガスの流動方向の上流側から、捕集装置11、ガススクラバ21、検出装置12の順にそれぞれを直列に接続(以下、洗浄流路20A)し、また、キャリアガスの流動時には、キャリアガスの流動方向の上流側から、ガススクラバ21、捕集装置11、検出装置12の順にそれぞれを直列に接続(以下、直接流路20B)して、流路を切り替えるものである。
【0024】
ポンプ13は、請求項のガス流動手段に相当し、バッファ31を介して検出装置12に直列に接続されており、ポンプ吸入口13aから吸入したガスをポンプ排出口13bから排出して流動させるものであり、試料ガスおよびキャリアガスを捕集装置11から検出装置12に向かう方向に流動させ、また、それぞれのガスが適切に流動されるように、状況に応じて、その流動の速さや流動量を細かく制御できる、既存のものである。なお、ポンプ13は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。また、ポンプ13が接続される位置は、試料ガスおよびキャリアガスを捕集装置11から検出装置12に向かう方向に流動させることができれば、その接続位置は任意である。
【0025】
バッファ31は、ポンプ13に直列に接続されており、ポンプ13による流動の乱れを抑制し、流動量を一定に保つための既存のものであり、バッファ31を経路上に配設することで流動量が安定するため検出精度を高めることができる。また、ポンプ13の流動の乱れによる誤差が許容範囲内であれば、バッファ31を省略してもよい。
【0026】
排出口32は、ポンプ排出口13bに接続されており、試料ガスおよびキャリアガスをGC装置1外に排出する部位である。大気吸入口33は、活性炭フィルタ41に接続されており、ポンプ13の動作によって大気を吸入して活性炭フィルタ41に導入する部位である。
【0027】
試料導入部34は、GC装置1に対して試料ガスを導入するための導入部である。
【0028】
活性炭フィルタ41は、ポンプ13が動作して捕集装置11から検出装置12に向かう方向に吸引することにより、大気吸入口33から吸入された大気に含まれる不純物を活性炭によって取り除いてキャリアガスを生成するものである。
【0029】
導入ガス切替バルブ42は、例えば、既存の三方電磁弁などが用いられており、3つのポートa、b、cを備えていて、ポートaには活性炭フィルタ41、ポートbには試料導入部34、ポートcには流路切替バルブ22、がそれぞれ接続されている。導入ガス切替バルブ42は、GC装置1に導入されるガスを切り替えるものであり、即ち、活性炭フィルタ41と流路切替バルブ22(a−c接続)、または、試料導入部34と流路切替バルブ22(b−c接続)、を選択的に接続するものである。
【0030】
制御装置51は、制御対象部位である捕集管加熱冷却装置11b(ア)、カラム加熱冷却装置12b(イ)、検出センサ12c(ウ)、ポンプ13(エ)、流路切替バルブ22(オ)、および、導入ガス切替バルブ42(カ)に接続されており、それぞれを連動して制御する図示しないマイクロコンピュータ(MPU)を備えている。MPUは、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)、CPUのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM、各種のデータを格納するとともにCPUの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM、および、上述した制御対象部位との間で制御情報を送受信するためのシリアルインタフェースなどを含むI/O部等で構成されている。
【0031】
制御装置51のCPUは、ROMに格納されたプログラムに基づいて、捕集管11aの温度が適温となるように捕集管11aの加熱・冷却を行う捕集管加熱冷却手段、分離カラム12aの温度が適温となるように分離カラム12aの加熱・冷却を行うカラム加熱冷却手段、試料ガスに含まれる試料ガス成分を検出する成分検出手段、捕集装置11内および検出装置12内を流動される試料ガスおよびキャリアガスの流量および流速を制御する流量制御手段、試料ガスの導入に応じて洗浄流路20Aに切り替え且つキャリアガスの導入に応じて直接流路20Bに切り替える流路切替手段、および、試料ガスの導入に応じて試料導入部34と流路切替バルブ22とを接続し且つキャリアガスの導入に応じて活性炭フィルタ41と流路切替バルブ22とを接続する導入ガス切替手段、として動作するものである。
【0032】
次に、ガスクロマトグラフ装置1の制御装置51(即ち、CPU)が実行する本発明に係る処理の一例を、図3に示すフローチャート、および、図4〜図5に示す各ステップに対応する概略動作図を参照して説明する。
【0033】
制御装置51のCPUは、GC装置1の電源投入により起動されると、流路切替バルブ22によって直接流路20Bに切り替え、導入ガス切替バルブ42によって、活性炭フィルタ41と流路切替バルブ22とを接続(a−c接続)する、などの所定の初期化動作を実行したあと、ステップS110に進む。
【0034】
ステップS110では、捕集管加熱冷却装置11bおよびカラム加熱冷却装置12bによって、捕集管11aおよび分離カラム12aを高温に加熱して不純成分を取り出したのち、ポンプ13による流動を開始する。これにより、キャリアガスが捕集管11aおよび分離カラム12aを通過するように流動され、不純成分がキャリアガスによってGC装置1外に排出される(以上、図4 クリーニング動作)。不純成分の排出が完了したのち、ステップS120に進む。
【0035】
ステップS120では、流路切替バルブ22によって、洗浄流路20Aに切り替え、導入ガス切替バルブ42によって、試料導入部34と流路切替バルブ22とを接続(b−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって、捕集管11aを冷却し、そして、試料導入部34から試料ガスを導入する。これにより、試料ガスが、捕集装置11に導入されて試料ガス成分の捕集が行われたのち、捕集装置11を通過した試料ガスがガススクラバ21によって洗浄されて残留していた試料ガス成分を取り除かれ、洗浄された試料ガスが検出装置12を経由して排出口32から排出される(以上、図5 サンプリング動作)。そして、試料ガス成分の捕集が完了したのち、ステップS130に進む。
【0036】
ステップS130では、流路切替バルブ22によって、再度直接流路20Bに切り替え、導入ガス切替バルブ42によって、活性炭フィルタ41と流路切替バルブ22とを再度接続(a−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aをガス成分分離に適した温度に冷却するとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって捕集管11aを高温に加熱する。これにより、捕集装置11内に脱離されて滞留している高濃度の試料ガスが、キャリアガスによって押し出され(即ち、パージされ)、検出装置12(即ち、分離カラム12a)に導入される(以上、図4 打ち込み動作)。このとき、ポンプ13によって流動されるキャリアガスの量は、試料ガスを捕集装置11から検出装置12まで搬送する程度の少量である。そして、高濃度の試料ガスが分離カラム12a内に導入されたのち、ステップS140に進む。なお、分離カラム12aの温度は、検出動作まで維持される。
【0037】
ステップS140では、キャリアガスによって、分離カラム12a内に導入された試料ガスに含まれる試料ガス成分が、分離カラム12a内で分離され、それぞれの試料ガス成分が時間差をもって検出センサ12cに搬送されて、各成分の検出が行われる(以上、図4 検出動作)。そして、全ての検出対象成分が搬送されたのち、本フローチャートの処理を終了する。
【0038】
次に、上述したガスクロマトグラフ装置1における、試料ガスの成分検出を行うときの動作の一例について、図4〜図5を参照して説明する。
【0039】
GC装置1での成分検出は、最初に、捕集管11aおよび分離カラム12aを高温に加熱して不純成分を取り出したのち、直接流路20Bに切り替えキャリアガスを流動させて、捕集装置11および検出装置12のクリーニングを行う(図4 クリーニング動作)。
【0040】
そして、クリーニングが完了すると、捕集管11aをガス成分分離に適した温度に冷却するとともに、流路切替バルブ22によって洗浄流路20Aに切り替え、試料導入部34から導入した試料ガスが捕集装置11、ガススクラバ21、検出装置12、を順に通過するように流動させて、捕集装置11による試料ガス成分の捕集(濃縮)を行う(図5 サンプリング動作)。
【0041】
試料ガス成分の捕集が完了したのち、捕集管11aを加熱し、分離カラム12aを冷却するとともに、流路切替バルブ22によって直接流路20Bに切り替え、活性炭フィルタ41で生成したキャリアガスが、ガススクラバ21、捕集装置11、検出装置12、を順に通過するように流動させて、脱離された試料ガス成分を検出装置12(即ち、分離カラム12a)に導入する(図4 打ち込み動作)。
【0042】
そして、引き続きキャリアガスを流すことによって、分離カラム12a内に導入された試料ガスに含まれる試料ガス成分を、分離カラム12a内で分離して検出センサ12cまで搬送し、試料ガス成分の検出を行う(図4 検出動作)。
【0043】
上記より、本実施形態によれば、試料ガス成分の捕集時は、流路切替バルブ22によって洗浄流路20Aに切り替え、即ち、捕集装置11と検出装置12との間にガススクラバ21を介在させることから、ガススクラバ21が検出装置12の手前で試料ガスから試料ガス成分を取り除くので、成分検出前に検出装置12が汚染されることが無くなり、また、クリーニング動作時および試料ガス成分の検出時は、流路切替バルブ22によって直接流路20Bに切り替え、即ち、捕集装置11と検出装置12とを直接に接続することから、ガススクラバ21によって必要な試料ガス成分が取り除かれることがなく、そのため、ポンプ13を共通化した構成において、成分検出前に検出装置12、即ち、分離カラム12aが汚染されることを防止でき、よって、小型化が可能であるとともに、高精度の成分検出が可能なガスクロマトグラフ装置1を得ることができる。
【0044】
また、流路切替バルブ22で直接流路20Bに切り替えることにより、GC装置1のクリーニングまたは試料ガス成分の検出時は、捕集装置11より上流にガススクラバ21が接続されるので、キャリアガス(即ち、活性炭フィルタ41で濾過された大気)をさらに洗浄することができ、より不純物の少ないキャリアガスを捕集装置11および検出装置12に供給することができる。そのため、さらに高精度の成分検出が可能となる。
【0045】
また、流路切替バルブ22による接続の切替により、捕集管11aの試料ガスが導入される方の端部が、成分検出時には検出装置12に接続されることから、前記端部付近には多くの試料ガス成分が付着されており、その脱離によってより濃度の高い試料ガスから検出装置12に近い箇所に滞留し、短時間で濃度の高い試料ガスを導入することが可能となるため、成分検出のピークを明確にすることができ、より高精度の成分検出が可能となる。
【0046】
なお、本実施形態においては、流路切替バルブ22に六方弁を用いているが、これに限定するものではなく、例えば、図6に示すように、三方弁を用いて、試料ガスの流動時には、試料ガスの流動方向の上流側から、捕集装置11、ガススクラバ21、検出装置12の順にそれぞれを直列に接続(図6 d−f接続、即ち、洗浄流路20Aに接続)し、また、キャリアガスの流動時には、キャリアガスの流動方向の上流側から、捕集装置11、検出装置12の順にそれぞれを直列に接続(図6 e−f接続、即ち、直接流路20Bに接続)するようにしてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、検出動作時に分離カラム12aの温度を一定の温度に保ちつつ試料ガス成分の分離を行う方法(定温法)を用いているが、これに限らず、例えば、検出動作時に分離カラム12aの温度を昇温させつつ試料ガス成分の分離を行う方法(昇温法)など、検出対象となる試料ガスに応じてその方法を変更しても良い。
【0048】
なお、上述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のガスクロマトグラフ装置の基本構成図である。
【図2】本発明のガスクロマトグラフ装置の実施形態を示す構成図である。
【図3】図2中のガスクロマトグラフ装置のCPUが実行する本発明に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図2中のガスクロマトグラフ装置のクリーニング動作、打ち込み動作、および、検出動作の状態を示す図である。
【図5】図2中のガスクロマトグラフ装置のサンプリング動作の状態を示す図である。
【図6】本発明のガスクロマトグラフ装置の他の実施形態を示す構成図である。
【図7】従来のガスクロマトグラフ装置の構成図である。
【図8】ガス流動手段を共通化したガスクロマトグラフ装置の基本構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ガスクロマトグラフ装置
11 捕集手段(捕集装置)
12 検出手段(検出手段)
13 ガス流動手段(ポンプ)
20 流路
20A 洗浄流路
20B 直接流路
21 ガス洗浄手段(ガススクラバ)
22 流路切替手段(流路切替バルブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスの通過に応じて試料ガス成分を捕集し且つキャリアガスの通過に応じて前記捕集した試料ガス成分を脱離させる捕集手段と、前記捕集手段から前記キャリアガスによって搬送された前記試料ガス成分を検出する検出手段と、前記捕集手段と前記検出手段とを直列に接続する流路と、前記試料ガスおよび前記キャリアガスを前記捕集手段から前記検出手段に向かう方向に流動させるガス流動手段と、を有するガスクロマトグラフ装置において、
前記流路が、前記検出手段が検出する試料ガス成分を取り除くように前記試料ガスを洗浄するガス洗浄手段と、前記ガス洗浄手段を前記捕集手段と前記検出手段との間に介在させた洗浄流路及び前記捕集手段と前記検出手段とを直接に接続した直接流路のどちらか一方に選択的に切り替える流路切替手段と、を有し、
前記流路切替手段が、前記試料ガスの流動に応じて前記洗浄流路に切り替え、且つ、前記キャリアガスの流動に応じて前記直接流路に切り替える手段である
ことを特徴とするガスクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−236591(P2009−236591A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81077(P2008−81077)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)