説明

ガスコンロ

【課題】 燃焼火炎が被加熱物の底面部から調理人側にあふれないようにするとともに、調理人側に燃焼排気ガスが放出されるのを防止できるガスコンロを提供する。
【解決手段】 コンロ本体4と、コンロ本体4に設けられた燃焼ガスバーナ6と、燃焼ガスバーナ6の周囲に設けられる五徳8とを備え、五徳8は、周方向に間隔を置いて複数の爪48が設けられた五徳爪部50と、周方向に延びる板状部52が設けられた五徳熱板部54とを有し、五徳熱板部54はコンロ本体4の手前側に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば調理用鍋等の被加熱物を加熱するためのガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロは、調理用鍋やフライパン等の被加熱物を加熱するための熱源として用いられ、コンロ本体と、コンロ本体に設けられた燃焼ガスバーナと、燃焼ガスバーナの周囲に設けられる五徳とを備えている。燃焼ガスバーナの外周部には、多数の炎孔が周方向に並んで設けられ、この炎孔からの燃焼用ガスが燃焼することによって、燃焼火炎が放射状に噴出される。図9は従来の五徳の一例を示す図であり、五徳110は、リング状のベース112と、ベース112の全周方向に間隔を置いて設けられた5本の爪114とを有し、これらの爪114が半径方向内方に突出し、これらの爪114上に被加熱物が載置される。燃焼ガスバーナからの燃焼火炎は、五徳110の複数の爪114の間を通って被加熱物の底面部に作用し、被加熱物が加熱される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−219056号公報
【特許文献2】特開2003−269731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来のガスコンロでは、次のような問題がある。例えば、業務用のガスコンロなどでは強力な火力(例えば10,000kcal以上)を必要とする場合がある。図10は、調理鍋の如き被加熱物120をガスコンロ118により加熱する様子を簡略的に示す説明図であり、強力な火炎の場合、燃焼ガスバーナ116より燃焼火炎が噴出すると、噴出された燃焼火炎が五徳110の複数の爪114の間を通って、被加熱物120の底面部の全周方向から外方へあふれてしまう(これを、「炎あふれ」という)。この炎あふれの状態では、あふれた燃焼火炎が、ガスコンロ118の手前側で調理している調理人の着衣の袖口等に引火する恐れがあった。
【0005】
また、燃焼火炎により生じた高温の排気ガス(これを、「燃焼排気ガス」という)も同様に調理人側に流れるため、調理人側の周囲温度が高温になり、快適な調理環境を得ることができなかった。
【0006】
本発明の目的は、燃焼ガスバーナからの燃焼火炎が調理人側にあふれないようにするとともに、調理人側に燃焼排気ガスが流れるのを防止できるガスコンロを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載のガスコンロでは、コンロ本体と、前記コンロ本体に設けられた燃焼ガスバーナと、前記燃焼ガスバーナの周囲に設けられる五徳とを備え、前記五徳は、周方向に間隔を置いて複数の爪が設けられた五徳爪部と、周方向に延びる板状部が設けられた五徳熱板部とを有し、前記五徳熱板部は前記コンロ本体の手前側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載のガスコンロでは、前記五徳熱板部は、前記五徳の周方向に90〜270度の角度範囲に渡って設けられていることを特徴とする。
また、本発明の請求項3に記載のガスコンロでは、前記コンロ本体の背面側には、燃焼排気ガスを排出するための排気筒に連通する排気開口が設けられ、前記五徳熱板部の両端部と前記排気開口の両端部との間には、それぞれ燃焼排気ガスを前記排気開口に導くための排気ガイドが設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載のガスコンロでは、前記コンロ本体の背部には上方に延びるガード部材が設けられ、前記ガード部材の前面は、前記五徳に載置される調理用鍋の外周面を覆うように円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載のガスコンロでは、前記ガード部材は中空状に形成され、その上面には、コンロ本体内の空気を外部に排出するための通気開口が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載のガスコンロでは、前記コンロ本体の上面は天板により覆われており、前記天板は前記コンロ本体の後部を覆う後天板と、前記コンロ本体の前部を覆う前天板とから構成され、前記後天板と前記前天板が分離して前記コンロ本体に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7に記載のガスコンロでは、前記前天板の上面は、前記五徳の前記五徳熱板部の上面とほぼ同じ高さに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載のガスコンロによれば、五徳は、周方向に間隔を置いて複数の爪が設けられた五徳爪部と、周方向に延びる板状部が設けられた五徳熱板部とを有しており、五徳熱板部をコンロ本体の手前側に配置したので、この五徳熱板部により燃焼ガスバーナからの燃焼火炎や燃焼排気ガスがコンロ本体の手前側(すなわち、調理人側)に噴出するのを防止することができる。したがって、燃焼ガスバーナからの燃焼火炎が調理鍋などの被加熱物の底面部から調理人側にあふれることがなく、燃焼火炎が調理人の着衣の袖口等に引火するのを防止することができる。また、調理人側に燃焼排気ガスが流れないため、調理人の周囲温度が高温になることがことなく、快適な調理環境を得ることが可能となる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載のガスコンロによれば、五徳熱板部は、五徳の周方向に90〜270度の角度範囲に渡って設けられているので、調理人側への炎あふれ及び燃焼排気ガスの流れを確実に防止することができる。この五徳熱板部の角度範囲は、ガスコンロの種類、用途等に応じて適宜設定することができ、例えば、この角度範囲が270度を超えると、燃焼排気ガスの背面側への流れがスムーズに行われなくなり、またこの角度範囲が90度未満になると、燃焼火炎及び燃焼排気ガスが調理人側に噴出するようになる。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載のガスコンロによれば、コンロ本体の背面側には、燃焼排気ガスを排出するための排気筒に連通する排気開口が設けられ、五徳熱板部の両端部と排気開口の両端部との間には、それぞれ燃焼排気ガスを排気開口に導くための排気ガイドが設けられているので、五徳熱板部により外部への放出が遮断された燃焼排気ガスは排気ガイドに案内されて排気開口にスムーズに流れ、この排気開口から排気筒を通して上方に流れる。一般に、ガスコンロの上方には、換気扇を備えた排気フードが配設されており、このように排気筒を通して燃料排気ガスを上方に流すことによって、燃焼排気ガスの排気フードでの捕集率を高めることができる。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載のガスコンロによれば、コンロ本体の背部にはガード部材が設けられ、このガード部材の前面が調理鍋の外周面を覆うように円弧状に形成されているので、五徳爪部の間を通して流れる燃焼排気ガスは、五徳に載置された調理用鍋とガード部材の前面との間を通して上方に流れる。したがって、かく流れる燃焼排気ガスが調理用鍋の側面を加熱し、ガスコンロの加熱効率を高めることができる。一般に、ガスコンロの上方には、換気扇を備えた排気フードが配設されており、燃焼排気ガスが調理用鍋とガード部材との間を流れることによってその流速が高められて排気フードに向けて上方に流れ、このようにしても、燃焼排気ガスの排気フードでの捕集率を高めることができる。 また、本発明の請求項5に記載のガスコンロによれば、ガード部材の上面には通気開口が設けられているので、コンロ本体内の空気はガード部材内部を通り、その上面の通気開口から外部に流れ、これによって、コンロ本体内が高温となるのを防止することができるとともに、かく流れる空気流によってガード部材を冷却することができる。
【0017】
また、本発明の請求項6に記載のガスコンロによれば、コンロ本体の後部を覆う後天板とコンロ本体の前部を覆う前天板とが分離してコンロ本体に取り付けられているので、燃焼排気ガス等により熱せられた後天板からの熱が前天板に伝達するのを防止できる。したがって、前天板が加熱されて高温になるのを抑えることができ、調理人が前天板に触れても火傷をする恐れがなくなる。
【0018】
また、本発明の請求項7に記載のガスコンロによれば、前天板の上面は、五徳の五徳熱板部の上面とほぼ同じ高さに形成されているので、前天板の上面に載置した被加熱物をその上面に沿ってスライド移動させるだけで五徳熱板部上に載置でき、五徳上に被加熱物を容易に載置させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に従うガスコンロの一実施形態について説明する。図1は、本実施形態によるガスコンロを示す概略斜視図、図2は、図1のガスコンロの概略断面図、図3は、図1のガスコンロの平面図、図4は、本実施形態による五徳の分解斜視図である。
【0020】
図1において、図示のガスコンロ2は、コンロ本体4と、コンロ本体4に設けられた燃焼ガスバーナ6と、燃焼ガスバーナ6の周囲に設けられる五徳8と、を備えている。以下、図1〜図4を参照して、各構成要素について詳述する。
【0021】
コンロ本体4は、上面が略円形状に開口された矩形状の本体ケース10から構成されている。この本体ケース10の内部には、後述する燃焼ガスバーナ6等の各部品が配設される。コンロ本体4の下面の四隅にはそれぞれ、脚体12が下方に延設されている。本実施形態のガスコンロ2は、調理場の床面に設置して使用する形態のものであり、4本の脚体12がこの床面に設置される。なお、本発明は、システムキッチンのキッチン台に収容されるビルトイン式の形態のもの、またコンロ台に載置されるテーブル式の形態のものにも適用することも可能である。
【0022】
コンロ本体4の下面には、外部からのガスチューブ(図示せず)が接続されるガス供給プラグ14が設けられており、ガスチューブを介して都市ガス等の燃焼用ガスがこのガス供給プラグ14へ供給される。このガス供給プラグ14より、コンロ本体4の内部に向かってガス供給管16が延びており、その端部にはガスノズル18が設けられている。そして、ガス供給プラグ14とガスノズル18との間にはガスコック20が介挿されており、このガスコック20を開状態にすると、ガス供給プラグ14からの燃焼用ガスが燃焼ガスバーナ6へ供給される。またガスコック20を閉状態にすると、ガス供給プラグ14からの燃焼用ガスの供給を遮断することができる。コンロ本体4の正面には操作パネル22が設けられており、ガスコック20を開閉操作するための操作用つまみ24がこの操作パネル22に配設されている。なお、図示しないが、操作パネル22には、この他にも各種のつまみやスイッチ類等が設けられている。
【0023】
コンロ本体4内部の底部には、汁受けプレート26が前後方向(図2において左右方向)にスライド移動自在に設けられている。この汁受けプレート26は、五徳8(後述する)上に載置した調理鍋などの被加熱物28からの吹きこぼれ等を受け、コンロ本体4の内底部が吹きこぼれ等により汚れるのが防止される。
【0024】
燃焼ガスバーナ6は、コンロ本体4の内部に設けられており、バーナ本体30と、混合管32と、点火プラグ34とから構成されている。バーナ本体30は略円筒状であり、その上面には多数の炎孔36が周方向に並んで設けられている(図3参照)。また、混合管32は円筒状に形成されており、一方の端部にはガス受入口38が設けられ、このガス受入口38にガス供給管16に接続されたガスノズル18が挿入され、またその他端部はバーナ本体30の下部に接続されている。点火プラグ34は、バーナ本体30に設けた炎孔36から噴出する混合ガス(後述する)に点火するためのものであり、スパークを発生させるための放電電極(図示せず)を有し、またパイプ40を介してガスコック20に接続されている。
【0025】
バーナ本体30は、コンロ本体4の内部に取り付けられた略半円状のバーナ受け台42上に載置され、バーナ本体30の後部側がバーナ受け台42に支持され、その前部側は、五徳受け台44(後述する)から下方に延設された例えばフック状の固定部材46に混合管32を掛けることにより支持されている。
【0026】
次に、五徳8について説明すると、この五徳8は、図4に示すように、周方向に間隔を置いて複数の爪48が設けられた五徳爪部50と、周方向に延びる板状部52が設けられた五徳熱板部54とを有しており、五徳爪部50及び五徳熱板部54はそれぞれ別体に構成されている。
【0027】
五徳爪部50は、鉄等の金属で形成され、略半円状のベース56を有し、このベース56上に周方向に間隔を置いて複数の爪48(本実施形態では5本)が設けられている。複数の爪48の各々は、略L字型で、ベース56から上方に延びる接続部55と、接続部55の上端部から半径方向内方に延びる載置部57を有し、載置部57は半径方向内方に向かって下り傾斜しながら延びている。なお、複数の爪48の形状は、これに限られることなく、周知の形状のものを用いることができ、例えば、爪48の先端を半径方向内方に向かって水平方向に(すなわち、被加熱物28の底面部と平行に)延びるように構成してもよい。また、本実施形態では爪48を5本設けたが、これに限られることなく、例えば4本でも6本でもよく、その本数は適宜設定することができる。
【0028】
手前側(調理人側)に配置される五徳熱板部54は、周方向に延びる半ドーナツ状の板状部52と、板状部52の外周部より鉛直方向下方に延びる垂直板部58とを有している。五徳熱板部54は、熱伝導性のよい材料、例えば鉄等の金属で形成され、また五徳熱板部54の周方向に対して垂直な平面による断面形状は、略L字型となっている(図2及び図4参照)。また、垂直板部58の両端部にはそれぞれ、固定片60が外方に突出して設けられており、この固定片60には、略L字型の排気ガイド62(後述する)が取付ねじ64等によって固定されている。なお、五徳熱板部54と排気ガイド62とを一体に構成することも可能である。
【0029】
五徳爪部50及び五徳熱板部54は、コンロ本体4内部に設けた五徳受け台44上に載置され(図2参照)、したがって、五徳8は、燃焼ガスバーナ6の周囲を囲むようにして設けられる(図3参照)。五徳受け台44はリング状に構成されており、五徳爪部50のベース56と、五徳熱板部54の垂直板部58とがそれぞれこの五徳受け台44の受け凹部59に収容載置され、五徳受け台44は、コンロ本体4内部に設けた支持プレート66に取り付けられている。具体的には、五徳受け台44の外周部は、支持プレート66に設けた支持孔の外周縁に係止されて支持されている。五徳爪部50及び五徳熱板部54を五徳受け台44上に載置した状態では、五徳爪部50及び五徳熱板部54は互いに近接対置(あるいは接触対置)した状態で位置付け保持されるため、五徳8全体として略円形状に保持され、ガスコンロ2の使用中などに互いに離れてしまう恐れがない。なお、この形態では、五徳熱板部54は、五徳8の周方向に約180度の角度範囲に渡って設けられている(図3参照)。
【0030】
また、板状部52の上面及び複数の爪48の載置部57の上端面とはほぼ同じ高さに設定されており、これらは同一平面(この平面を、「載置面」という)を規定している。この載置面は、調理用鍋の如き被加熱物28が載置される面であり、実質上水平な面となっている。さらに、五徳熱板部54を五徳受け台44上に載置した状態において、排気ガイド62,62の先端部は、第1排気開口72(後述する)の両端部まで、コンロ本体4の前後方向に延びている(図3参照)。そして、この排気ガイド62,62によって、燃焼排気ガスの通路となるガス排気通路74(後述する)が形成される。
【0031】
また、コンロ本体4の上面は天板76によって覆われている。天板76は、コンロ本体4の後部(図3において上側)を覆う後天板78と、コンロ本体4の前部(図3において下側)を覆う前天板80とから構成されている。前天板80及び後天板78は、例えば錆や腐食に強く、且つ耐久性のよいステンレスやホーロー等から形成される。前天板80の五徳8側には、略半円状の前開口が設けられており、また後天板78の五徳8側にも、略半円状の後開口が設けられている。後天板78に設けられた後開口の外周の一部は、コンロ本体4の背面側(図3において上側)に向かって凹状に延びており、後述する第2排気開口82を形成している。前天板80及び後天板78の前開口及び後開口は、略円形状の五徳開口84を規定し、この五徳開口84のほぼ中心部に五徳8及び燃焼ガスバーナ6が配置される。
【0032】
前天板80及び後天板78は、互いに分離してコンロ本体2の上面に装着されている。すなわち、前天板80及び後天板78をコンロ本体4に装着した状態においては、前天板80と後天板78との間には隙間86が形成されている。この隙間86を設けることにより、燃焼ガスバーナ6により被加熱物28を加熱した際、燃焼排気ガス(後述する)等により後天板78が加熱され高温になった場合でも、この熱が後天板78から前天板80へ伝達されるのを抑えることができる。したがって、前天板80が高温になるのを防止することができ、調理人が前天板80に触れて火傷等をする恐れがなくなる。なお、図示しないが、前天板80と後天板78との断熱をより確実にするに、前天板80と後天板78との間の隙間86に断熱材を介挿してもよい。
【0033】
前天板80の上面は、五徳熱板部54の上面(すなわち、板状部52の上面)とほぼ同じ高さになるように構成されている。このように構成することによって、被加熱物28の重量が大きい時でも、被加熱物28を前天板80に載せて後方にスライド移動させるだけで容易に五徳8上に載置させることが可能となる。なお、前天板80の上面の表面には、被加熱物28をスライド移動させても傷が付かないように、例えばフッ素コート等のコーティングを施しておくのが好ましい。
【0034】
また、後天板78の上面は、前天板80の上面よりも所定長さだけ高くなるように構成されており、後天板78の後開口の外周の一部には、鉛直方向下方に延びる壁部88が設けられている。これにより、例えば被加熱物28を後方にスライド移動させて五徳8上に載置させる際に、勢い余って被加熱物28を大きくスライド移動させてしまったとしても、被加熱物28の外側面が壁部88に当接し、被加熱物28が転倒するのを防止することができる。
【0035】
さらに、コンロ本体4の背面側には、例えばステンレス等で形成された排気筒90が設けられており、コンロ本体4の背面側より上方に延びている。排気筒90は、中空筒状に構成され、その内部には上下方向に延びる排気流路92が規定されており、また排気筒90の下面は開口されて排気流路92に通じている(図2参照)。排気筒90のコンロ本体4側の側面下部には、ガス排気通路74と排気流路92とを連通する第1排気開口72が設けられている(図1中に示す斜線部分)。また、後天板78の背面側及びコンロ本体4の背面側にそれぞれ切り欠き(図示しない)が設けられ、この切り欠き及び第1排気開口72とを介して、ガス排気通路74と排気流路92とが連通される。この排気筒90は、例えば調理場内の壁(図示せず)に沿って設置され、排気筒90によってガスコンロ2に近接する調理場内の壁の表面が覆われ、このように設置することによって、この調理場内の壁が燃焼排気ガスによって加熱されて焦げ付いたり、壁紙が剥がれてしまう等の問題が解消される。
【0036】
次に、上述したガスコンロ2を用いた加熱調理について説明する。加熱調理する際には、例えばスープ等の食材が入った調理用鍋(例えば、寸胴鍋)等の被加熱物28を五徳8上に載置する。前天板80の上面と五徳熱板部54の上面とがほぼ同じ高さに構成されているので、被加熱物28を前天板80上に載置させ、この状態(図2中の矢印Aで示す二点鎖線部分)から被加熱物28を図2中の矢印Xの方向に後方にスライド移動させることによって、五徳8上に載置することができる(図2中の矢印A’で示す実線部分)。
【0037】
被加熱物28を五徳8上に載置させた状態においては、五徳8上における被加熱物28は、図3中に二点鎖線で示すように配置され、被加熱物28の底面部の外周と後天板78切り欠きの縁部との間は開口が規定され、この開口が上述した第2排気開口82となる。
【0038】
このように被加熱物28を五徳8上に載置させた後、燃焼ガスバーナ6を燃焼させて被加熱物28を加熱する。燃焼ガスバーナ6を燃焼させるには、操作用つまみ24を点火方向に回せばよい。ガスコック20をかく操作すると、燃焼用ガスが混合管32内を通ってバーナ本体30に供給され、点火プラグ34のスパークにより点火されて燃焼ガスバーナ6にて燃焼が開始される。
【0039】
燃焼用ガスの燃焼はバーナ本体30の上方の燃焼空間94で行われ、この燃焼火炎が、バーナ本体30の炎孔36より被加熱物28の底面部に向かって噴出され、この燃焼火炎により被加熱物28が加熱される。
【0040】
バーナ本体30の全周に炎孔36が設けられているので、燃焼火炎はバーナ本体30の全周方向から噴出される。そして、五徳爪部50においては、炎孔36からの燃焼火炎は、五徳爪部50の複数の爪48の間を通って、被加熱物28の底面部に直接作用する。また、五徳熱板部54においては、炎孔36からの燃焼火炎は、被加熱物28の底面部に直接作用せずに、五徳熱板部54の板状部52の下面側に作用する。五徳熱板部54は、熱伝導性の良い金属で構成されているため、燃焼火炎によって五徳熱板部54が熱せられると、この熱が熱伝導により五徳熱板部54を介して被加熱物28の底面部に伝達される。したがって、被加熱物28の底面部の奥側(すなわち、コンロ本体4の背面側)及び中心部近傍においては、バーナ本体30からの燃焼火炎が五徳爪部50の複数の爪48の間を通り、燃焼火炎により直接的に被加熱物28が加熱され、また被加熱物28の底面部の手前側(すなわち、コンロ本体4の手前側)においては、バーナ本体30からの燃焼火炎により熱せられた五徳熱板部54からの熱が伝導されて、この伝導された熱により被加熱物28が加熱される。
【0041】
この加熱調理中、被加熱物28の底面部の手前側においては、五徳熱板部54の垂直板部58により燃焼火炎が遮断されるため、被加熱物28の底面部から外方(調理人側)に燃焼火炎があふれることがなく、調理人の着衣の袖口等に燃焼火炎が引火するのを防止することが可能となる。
【0042】
また、高温の燃焼排気ガスが生じるが、この燃焼排気ガスの流れは、図2中に矢印で示すようになる。すなわち、燃焼室94の手前側においては、燃焼排気ガスは調理人側へ流れていこうとするが、その流れは五徳熱板部54の垂直板部58によって遮断され、燃焼排気ガスが調理人側に流れることはない。したがって、燃焼排気ガスによって調理人の周囲温度が高温になることが防止でき、快適な調理環境を得ることが可能となる。また、被加熱物28の底面と五徳熱板部54の板状部52の上面とは接触しており、被加熱物28の底面と五徳熱板部54の板状部52との間から燃焼排気ガスが調理人側に漏出して手前側に流れることも防止できる。
【0043】
燃焼室94にて発生した燃焼排気ガスは、五徳熱板部54に設けた排気ガイド62,62に沿って第1排気開口72及び第2排気開口82へと導かれ、燃焼排気ガスが周囲(特に、図3において左右方向)に拡散することがなく、このように流れる燃焼排気ガスは後天板78に直接触れることがなく、燃焼排気ガスによって後天板78が加熱されるのを防止することができる。第2排気開口82に流れた燃焼排気ガスは、第2排気開口82から排出された後、排気筒90と被加熱物28との間の空間を上方に流れる。また、第1排気開口72に流れた燃焼排気ガスは排気筒90内の排気流路92を通り、排気筒90の下部開口より吸気された空気とともに上方に流れる。
【0044】
ガスコンロ2が設置される調理室の上方には、換気扇を備えた排気フード(図示せず)が設置されており、排気筒90を上方に流れる燃焼排気ガス及び第2排気開口82から上方に排出される燃焼排気ガスは、排気フードに向けて上方に流れ、この排気フードにて捕集されて室外に排出される。
【0045】
以上のように、上述したガスコンロ2では、燃焼火炎が調理人側にあふれてしまうのを防止できるとともに、燃焼排気ガスが調理人側に流れるのを防止でき、燃焼排気ガスを効率よく外部へ排気することが可能となる。
【0046】
次に、図5を参照して、ガスコンロの他の実施形態について説明する。図5は、他の実施形態による五徳を備えたガスコンロの平面図である。なお、以下の説明において、図1〜図4の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
この他の実施形態のガスコンロ2Aでは、五徳熱板部54Aを、五徳8Aの周方向に約90度の角度範囲に渡って設けている。五徳爪部50Aは、五徳8Aの周方向に約270度の角度範囲に渡って設けられており、このように五徳爪部50Aが広範囲に設けられていることに関連して、爪48Aが7本設けられている。したがって、燃焼火炎によって直接加熱される被加熱物28の底面部の領域(すなわち、面積)が、上記実施形態の場合よりも大きくなる。したがって、被加熱物28の加熱効率や昇温速度を上げたい場合などには、五徳爪部50Aの角度範囲を大きくすればよい。なお、五徳熱板部54の角度範囲が90度より小さくなると、図5から理解されるように、燃焼火炎及び燃焼排気ガスが調理人側まで流れる恐れがある。
【0048】
さらに、図6を参照して、ガスコンロのさらに他の実施形態について説明する。図6は、さらに他の実施形態による五徳8Bを備えたガスコンロ2Bの平面図である。
この他の実施形態のガスコンロ2Bでは、五徳熱板部54Bを、五徳8Bの周方向に約270度の角度範囲に渡って設けている。また、五徳爪部50Bは、五徳8Bの周方向に約90度の角度範囲に渡って設けられており、このように五徳爪部50Bの角度範囲が狭いことに関連して、爪48Bが3本設けられている。したがって、このように五徳熱板部54Bの角度範囲を大きくすることによって、燃焼火炎が調理人側にあふれてしまうのをより確実に防止できるとともに、燃焼排気ガスが調理人側に放出されるのをより確実に防止できる。なお、五徳熱板部54Bの角度範囲が270度より大きくなると、図6から理解されるように、燃焼排気ガスの排気流路92側への流れが悪くなる恐れがある。
【0049】
上記の種々の実施形態による五徳は一例に過ぎず、五徳熱板部54は、機種、用途等に応じて、90〜270度の角度範囲の間で適宜設定することが可能である。
上述した実施形態では、排気筒を備えたガスコンロに適用して説明したが、排気筒を備えていないものにも同様に適用することができる。図7は、ガスコンロのさらに他の実施形態を示す斜視図であり、図8は、図7のガスコンロの断面図である。
【0050】
この実施形態では、コンロ本体4Cの背部にガード部材100が設けられ、ガード部材100がコンロ本体4Cの上端部に取り付けられている。ガード部材100は、コンロ本体4Cの上端部から上方に延び、前壁101、後壁102、一対の側壁103,104及び上壁105を備え、その内部が中空で、底面は開放され、その上壁105の両側部に略三角状の上通気開口106が設けられている。前壁101の前面(燃料ガスバーナ6に載置した調理用鍋28の外周面に対向する面)は略半円弧状に形成され、五徳8に載置された調理用鍋28の後部側の略半分を覆う。燃焼ガスバーナ6に所要の通りに載置した状態(燃焼ガスバーナ6の中心と調理用鍋28の中心とが一致するように載置した状態)において、この調理用鍋28(例えば、寸胴鍋)の周側面とガード部材100の前面とが同心状となるように構成され、これら両面間の間隔が3〜10cm程度となるように設定される。この間隔の最小値は、燃焼排気ガス中の一酸化ガス濃度を考慮し、その濃度が300ppm以上にならないように設定され、またこの間隔の最大値は、これら両面間を流れる燃焼排気ガスの加熱効率を考慮し、その加熱効率が小さくならない程度に設定される。
【0051】
このガスコンロ2Cでは、また、五徳爪部58の外周側に案内部材107が配設されている。この案内部材107は略半円状であり、コンロ本体4C内の支持プレート66から上方に延び、その上端部はガード部材110の前壁101の下端部に設けられた内フランジ108の下面近傍まで延びている。この案内部材107の一端側は前天板80の略半円状の前開口の一端部に近接して位置し、その他端側が上記前開口の他端部に近接して位置し、コンロ本体4Cの後部側にて略半円状の後開口を規定し、前天板80の前開口及び案内部材170による後開口が略円形状の五徳開口84Cを規定する。
【0052】
この実施形態では、さらに、コンロ本体2Cの底板11の後部に下通気開口132が設けられ、この下連通開口132を通してコンロ本体2Cの下部空間133と外部とが連通されている。支持プレート66の後部に中通気開口134が設けられ、この中通気開口134を通してコンロ本体2Cの下部空間133とコンロ本体2Cの上部空間135とが連通されている。また、ガード部材110の底面が開放されており、この開放開口を通してコンロ本体4Cの上部空間135とガード部材100内とが連通されている。この実施形態のその他の構成は、図1〜図4に示す実施形態と実質上同一である。
【0053】
このガスコンロ2Cにおいては、上述したと同様の構成の五徳8を備えているので、五徳8に関する上述した作用効果を奏する。加えて、燃焼ガスバーナ6からの燃焼排気ガスは、図8に実線矢印で示すように、燃焼室94の手前側においては、五徳熱板部54の垂直板部58によって遮断されて燃焼室94側に戻るように流れ、燃焼室94内の燃焼排気ガスは、五徳爪部50の複数の爪48間を通し、調理用鍋28の後部外周面とガード部材100の前面との間を通して上方に流れる。このように流れる燃焼排気ガスは、調理用鍋28の周側壁(特に、後部の周側壁)を加熱し、これによって、燃焼排気ガスの熱を有効に利用して燃焼ガスバーナ6の加熱効率を高めることができる。また、一般に、ガスコンロ2が設置される調理室の上方には、換気扇を備えた排気フード(図示せず)が設置されるが、燃焼排気ガスが調理用鍋28の周側壁とガード部材100の前壁101との間を流れる際に、その流速が高められて上方に流れ、これによって、上方に流れる燃焼排気ガスの排気フードへの捕集率が高められ、燃焼排気ガスの周囲への拡散を抑えることができる。更に、図8に破線矢印で示すように、コンロ本体2Cの底板11の下通気開口132、支持プレート66の中通気開口134、ガード部材110の底面の開放開口及びその上壁105の上通気開口106を通して空気が流れるので、コンロ本体4Cの下部空間133内の暖かい空気(所謂、だまり)は、この空気流とともにガード部材110内を流れ上通気開口106から上方に排出され、かく排出された空気流は排気フード(図示せず)に捕集される。このようにしてコンロ本体4C内の空気が外部に排出されるので、コンロ本体4C内の温度上昇を抑えることができるとともに、かく流れる空気流によってガード部材110を冷却することができる。
【0054】
尚、上述した形態では、下通気開口132をコンロ本体4Cの底板11の後部に設けているが、コンロ本体4C内の空気の流れを促進するためにこの下通気開口132をコンロ本体4Cの底板11の前部又はその前板の下部に設けるようにしてもよい。
【0055】
以上、本発明に従う種々のガスコンロの実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、五徳爪部と五徳熱板部とを別体に構成したが、これらを一体に構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態にガスコンロを示す概略斜視図である。
【図2】図1のガスコンロの概略断面図である。
【図3】図1のガスコンロの上面図である。
【図4】本発明の一実施形態による五徳の分解斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態による五徳を備えたガスコンロの上面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態による五徳を備えたガスコンロの上面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態によるガスコンロを示す概略斜視図である。
【図8】図7のガスコンロの概略断面図である。
【図9】従来の五徳を示す斜視図である。
【図10】従来のガスコンロによる炎あふれを示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
2,2A,2B,2C ガスコンロ
4,4C コンロ本体
6 燃焼ガスバーナ
8,8A,8B 五徳
48,48A,48B 爪
50,50A,50B 五徳爪部
52 板状部
54,54A,54B 五徳熱板部
62 排気ガイド
76 天板
78 後天板
80 前天板
100 ガード部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロ本体と、前記コンロ本体に設けられた燃焼ガスバーナと、前記燃焼ガスバーナの周囲に設けられる五徳とを備え、前記五徳は、周方向に間隔を置いて複数の爪が設けられた五徳爪部と、周方向に延びる板状部が設けられた五徳熱板部とを有し、前記五徳熱板部は前記コンロ本体の手前側に配置されていることを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
前記五徳熱板部は、前記五徳の周方向に90〜270度の角度範囲に渡って設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスコンロ。
【請求項3】
前記コンロ本体の背面側には、燃焼排気ガスを排出するための排気筒に連通する排気開口が設けられ、前記五徳熱板部の両端部と前記排気開口の両端部との間には、それぞれ燃焼排気ガスを前記排気開口に導くための排気ガイドが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスコンロ。
【請求項4】
前記コンロ本体の背部には上方に延びるガード部材が設けられ、前記ガード部材の前面は、前記五徳に載置される調理用鍋の外周面を覆うように円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスコンロ。
【請求項5】
前記ガード部材は中空状に形成され、その上面には、コンロ本体内の空気を外部に排出するための通気開口が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のガスコンロ。
【請求項6】
前記コンロ本体の上面は天板により覆われており、前記天板は前記コンロ本体の後部を覆う後天板と、前記コンロ本体の前部を覆う前天板とから構成され、前記後天板と前記前天板が分離して前記コンロ本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガスコンロ。
【請求項7】
前記前天板の上面は、前記五徳の前記五徳熱板部の上面とほぼ同じ高さに形成されていることを特徴とする請求項6に記載のガスコンロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−46884(P2006−46884A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291298(P2004−291298)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)