説明

ガスセル

【課題】ガスセルのメンテナンス作業等における作業性を向上させる。
【解決手段】内部にガスを流通させる空間を有し、該空間内のガスに光を照射して光学的測定を行うためのガスセルにおいて、両端が開放された筒状部材111並びに筒状部材111の側面に設けられ筒状部材111の内部空間と外部を連通させるガス導入口112及びガス排出口113を有するセル本体110と、筒状部材111の一端の開口を覆うように取り付けられる第1端面体120、140と、筒状部材111の他端の開口を覆うように取り付けられる第2端面体130、150と、筒状部材111の内壁よりも外側を該筒状部材111の一端側から他端側に貫通する複数のネジ挿通孔とを設け、筒状部材111の一端側から前記ネジ挿通孔に挿入したネジ160によって第2端面体130、150を筒状部材111の他端側に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式のガス分析装置で使用されるガスセルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定室に光を照射し、前記測定室に存在するガス分子による光の吸収又は散乱を測定することにより、測定室内のガスの定量分析及び/又は定性分析を行う光学式のガス分析装置が知られている。こうした光学式のガス分析装置は、通常、測定対象ガスが導入されるガスセル、該ガスセル内に光を照射するための光源、及びガスセルから外部に出た光を検出する検出器等から構成されており、ガスが流れる配管(例えば、半導体製造装置のガス流路や自動車の排ガス管等)の途中に取り付けて使用されることが多い。
【0003】
上記のような光学式のガス分析装置では、ガスセル内における光路長が大きくなるほど高い検出感度が得られる。そのため、高感度を必要とする装置では、ガスセルの内部で光を反射させることにより光路長を大きくすることのできる光反射型のガスセルが採用されている。
【0004】
図5に、一般的な光反射型ガスセルの構成を示す。ガスセルは、両端が開放された筒状部材411並びに該筒状部材の側面に形成されたガス入口412及びガス出口413を備えたセル本体410と、筒状部材411の両端にそれぞれネジ470、460によって固定された第1板状部材420及び第2板状部材430と、前記第1板状部材420及び第2板状部材430の対向面上にそれぞれ配置された第1反射鏡440及び第2反射鏡450とを備えている。第2板状部材430には、光源(図示略)からの光をガスセル内に導入するための光入射窓431と、ガスセル内から外部へ光を導出するための光出射窓432が設けられており、光出射窓432からガスセル外に出射した光は検出器(図示略)によって検出される。図5では反射鏡440、450を平面鏡としたが、特許文献1に記載のように凹面鏡を用いる場合もある。なお、実際の構成では、気密シール材としてOリングやガスケット等を各部材間に使用するが、本質的でないため図中では省略している(以下同様)。
【0005】
上記のような光反射型のガスセルでは、反射鏡440、450が、ガスセル内の試料ガスが流通する空間に露出して配置されているため、使用するうちに反射鏡440、450の表面にガス分子が吸着したり、反射鏡440、450の表面被膜が変質したりする。こうしたガス分子の吸着や皮膜の変質は、反射鏡の反射率を低下させ、測定精度低下の原因となることから、光反射型のガスセルでは一定期間使用するごとに反射鏡を交換する必要がある。
【0006】
図5に示したような従来の光反射型ガスセルにおいて反射鏡440、450を交換する際には、まず、ガスセルの両側からネジ470、460を取り外し、セル本体410から第1板状部材420、第1反射鏡440、第2板状部材430、及び第2反射鏡450を取り外す。そして、第1反射鏡440及び第2反射鏡450を新しいものと交換した後、取り外しの際と逆の手順で第1板状部材420、第1反射鏡440、第2板状部材430、及び第2反射鏡450をセル本体410に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-249725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、半導体製造装置のガス配管等に上記のようなガスセルを取り付ける場合、一般的に、セル本体410は配管に組み込まれて容易に取り外せない状態となる。また、半導体製造装置等を小型化する観点から、一般に、セル本体410が取り付けられた配管の周辺は種々の配管や装置が密集した状態となっており、セル本体410の両側(図5中では右側と左側)に広い作業空間を確保するのは困難である。そのため、従来の光反射型ガスセルを備えたガス分析装置において上記反射鏡の交換等のメンテナンス作業を行う際には、作業者が、セル本体410両側の狭い空間内でドライバー等の工具を用いて第1板状部材固定用のネジ470及び第2板状部材固定用のネジ460の取り付け及び取り外しを行わなければならないため、作業負担が大きかった。
【0009】
なお、ここでは光反射型のガスセルを例に説明したが、両端が開放された筒状部材を備えたセル本体と、該筒状部材の両端を覆うように取り付けられる二枚の板状部材を有し、光源からの光を一方の板状部材に設けられた窓から取り入れてセル内を通過させると共に、該セル内を通過した光を他方の板状部材に設けられた窓からセル外に出射させて光検出器へと導く光透過型のガスセルにおいても、メンテナンス時等において前記板状部材の着脱を行う場合に同様の問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、上記のような反射鏡や板状部材の着脱作業における作業者の負担を軽減することのできるガスセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係るガスセルは、内部にガスを流通させる空間を有し、該空間内のガスに光を照射して該ガスの光学的測定を行うために用いられるガスセルであって、
a) 両端が開放された筒状部材、並びに該筒状部材の側面に設けられ、該筒状部材の内部空間と外部を連通させるガス導入口及びガス排出口を有するセル本体と、
b) 前記筒状部材の一端の開口部を覆うようにして該筒状部材に取り付けられる第1端面体と、
c) 前記筒状部材の他端の開口部を覆うようにして該筒状部材に取り付けられる第2端面体と、
d) 前記セル本体において、前記筒状部材の内壁よりも外側を該筒状部材の一端側から他端側に貫通するように形成された複数のネジ挿通孔と、
を有し、
前記第2端面体が、前記筒状部材の一端側から前記ネジ挿通孔に挿入されたネジによって前記筒状部材の他端側に固定されることを特徴としている。
【0012】
ここで、第1端面体及び第2端面体は、いずれも上述のような反射鏡と板状部材から構成されるものであってもよく、板状部材のみから成るものであってもよい。例えば、本発明に係るガスセルを光通過型のガスセルとする場合、第1端面体及び第2端面体はいずれも板状部材のみで構成されたものとする。一方、本発明に係るガスセルを、筒状部材の両端間で光を複数回往復させる多重反射型のガスセルとする場合、第1端面体と第2端面体の双方を反射鏡及び板状部材から構成されたものとする。また、本発明に係るガスセルを、筒状部材の両端間で光を1回だけ往復させる単反射型のガスセルとする場合には、第1端面体及び第2端面体のいずれか一方を反射鏡と板状部材から成るものとし、他方を板状部材のみから成るものとする。なお、ここで「板状部材のみ」とは、板状部材を有し反射鏡は有しないことを意味しており、板状部材に加えて反射鏡以外の他の部材を備えた構成を除外するものではない。
【0013】
また、上記本発明に係るガスセルは、前記ガスセルが、光源から照射された光を前記筒状部材の内部空間の両端間で一回以上往復させた後に光検出器へと導く光反射型のガスセルであって、
前記第2端面体が、前記ネジによって前記筒状部材に固定される板状部材と、該板状部材と前記筒状部材の間に挟持される反射鏡とを含んで成り、
前記第2端面体を前記筒状部材に取り付けた状態において、前記反射鏡の外周が、前記筒状部材の軸線方向から見て該筒状部材の内壁よりも外側且つ前記複数のネジ挿通孔よりも内側に位置するものとすることが望ましい。
【0014】
また、上記本発明に係るガスセルは、第1端面体にも、前記セル本体のネジ挿通孔と対応する位置にネジ挿通孔を設け、該第1端面体のネジ挿通孔に前記ネジを通過させた上で、該ネジを前記筒状部材の一端側からセル本体のネジ挿通孔に挿通させる構成としてもよい。これにより、第1端面体及び第2端面体をセル本体に一度にネジ留めすることが可能となる。但し、このような構成とした場合、ガスセルからネジを取り外した際に、第1端面体と第2端面体がほぼ同時にセル本体から外れることとなるため、各部材を落下させないよう慎重に作業を行う必要が生じる。
【0015】
そこで、本発明では、セル本体に対する第1端面体及び第2端面体の着脱作業を安定して行うことができるよう、第1端面体とセル本体の間の固定、及びセル本体と第2端面体の間の固定を、それぞれ異なるネジによって行う構成とすることが望ましい。
【0016】
すなわち、本発明に係るガスセルは、
e) 前記セル本体において、前記筒状部材の一端の開口部の周囲に、前記複数のネジ挿通孔からずらして形成された複数のネジ穴と、
f) 前記複数のネジ穴と対応する前記第1端面体上の位置に形成された複数のネジ挿通孔とを有し、
前記第1端面体が、前記第1端面体のネジ挿通孔を通って前記セル本体のネジ穴に至るネジによって前記筒状部材の一端側に固定されるものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のような構成から成る本発明のガスセルによれば、第1端面体を固定するネジと第2端面体を固定するネジをセル本体の同一の側(すなわち上記筒状部材の一端側)から着脱することが可能となる。このため、セル本体の両側からネジの着脱を行わなければならなかった従来のガスセルに比べて、メンテナンス等を行う作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係るガスセルを備えたガス分析装置の構成を示す縦断面図。
【図2】同実施例に係るガスセルを構成する各部の上面図であり、(a)は第1板状部材を、(b)は第1反射鏡を、(c)はセル本体を、(d)は第2反射鏡を、(e)は第2板状部材を示している。
【図3】本発明の他の実施例に係るガスセルを備えたガス分析装置の構成を示す縦断面図。
【図4】本発明の更に他の実施例に係るガスセルを備えたガス分析装置の構成を示す縦断面図。
【図5】従来のガスセルの構成を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係るガスセルを備えたガス分析装置の一実施例を示す縦断面図であり、図2はガスセルを構成する各部材の上面図である。図2中の線Aは、図1における断面位置を表している。なお、以下では、図1を基準に上下前後左右を定義するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
本実施例に係るガス分析装置は、ガスセル内でレーザー光の多重反射を行い、該レーザー光の減衰からガス中の所定成分(例えば水分)の濃度を計測するものである。本実施例に係るガス分析装置は、大きく分けてガスセル100と光学ユニット200から構成されており、更に、ガスセル100は、セル本体110、第1板状部材120、第2板状部材130、第1反射鏡140、及び第2反射鏡150を含んでいる。
【0021】
セル本体110は、上端及び下端が開放された筒状部材111と、該筒状部材111の周面に接続されたガス導入管112及びガス排出管113を有している。筒状部材111は、外周面が角筒形状、内周面が円筒形状を成しており、該内周面で囲まれた空間がガスセル100における測定室114として機能する。ガス導入管112及びガス排出管113は測定室114と連通しており、ガス導入管112から導入されて測定室114を通過した測定対象ガスが、ガス排出管113を通って排出される構成となっている。なお、図1中の白矢印はガスの流通方向を示している。
【0022】
第1板状部材120及び第2板状部材130は、それぞれ前記筒状部材111の上方及び下方に配置される円盤状の部材である。第1反射鏡140及び第2反射鏡150は、いずれも円形の反射鏡であり、第1反射鏡140は筒状部材111の上端と第1板状部材120の間に、第2反射鏡150は、筒状部材111の下端と第2板状部材130の間に配置される。なお、第1板状部材120及び第2板状部材130の直径はいずれも前記筒状部材111の端面の対角寸法と略同一となっており、第1反射鏡140の直径は、第1板状部材120より僅かに小さくなっている。また、第2反射鏡150の直径は筒状部材111の内径(つまり測定室114の直径)よりも僅かに大きくなっている。なお、第2板状部材130の上面には、第2反射鏡150の厚みと略同一の深さ及び第2反射鏡150の直径よりも僅かに大きな直径を有する凹部から成る第2反射鏡収容部131が設けられている。
【0023】
また、第2板状部材130には、測定室114に光を導入するための光導入口132a、及び測定室114から光を導出するための光導出口132bが形成されており、第2反射鏡150には、前記光導入口132a及び光導出口132bに対応する位置にそれぞれ貫通孔151a、151bが形成されている。光導入口132a及び光導出口132bには、シール用に透明な窓板133a、133bが設けられており、該窓板133a、133bは押さえリング134a、134bによって第2板状部材130に固定されている。
【0024】
なお、本実施例では、第1板状部材120及び第1反射鏡140が本発明における第1端面体に相当し、第2板状部材130及び第2反射鏡150が本発明における第2端面体に相当する。また、筒状部材111の上端及び下端がそれぞれ本発明における筒状部材の一端及び他端に相当する。
【0025】
上記本実施例におけるガスセル100において、第1板状部材120及び第1反射鏡140は、短ネジ170によってセル本体110の上部に固定され、第2板状部材130は、長ネジ160によってセル本体110の下部に固定される。短ネジ170は、相対的に短尺のネジであり、第1板状部材120の上面から挿入され、第1板状部材120及び第1反射鏡140を貫通して筒状部材111の上端付近所定の深さまで到達する。一方、長ネジ160は、相対的に長尺のネジであり、筒状部材111の上面から挿入され、該筒状部材111を貫通して第2板状部材130の所定の深さまで到達する。
【0026】
図2に示すように、第1板状部材120及び第1反射鏡140には、それぞれ短ネジ170を通すための4つのネジ挿通孔(以下、短ネジ挿通孔121、141と呼ぶ)が設けられており、筒状部材111の上端開口の周囲には、前記短ネジ挿通孔121、141に対応する位置に、短ネジ170の先端を挿入するための4つのネジ穴(以下、短ネジ穴115と呼ぶ)が形成されている。更に、筒状部材111の上端開口の周囲には、筒状部材111の軸線方向から見て前記短ネジ穴115と重ならない位置に、長ネジ160を通すための4つのネジ挿通孔(以下、長ネジ挿通孔116と呼ぶ)が設けられている。該4つの長ネジ挿通孔116は、いずれも筒状部材111の軸線方向と平行に延びる貫通孔であり、各長ネジ挿通孔116の上端部には長ネジ160の頭部を収容するための座ぐり部117が形成されている。第2板状部材130の上面には、前記筒状部材111の長ネジ挿通孔116に対応する位置に、長ネジ160の先端を挿入するための4つのネジ穴(以下、長ネジ穴135と呼ぶ)が形成されている。なお、図1及び図2から明らかなように、長ネジ160は第2反射鏡150の外周よりも外側を通るため、第2反射鏡150には長ネジ160を通すための孔を形成する必要はない。上記構成において、短ネジ穴115及び長ネジ穴135の内周面には、それぞれ短ネジ170及び長ネジ160の外周面に設けられたねじ山と螺合するねじ山が形成されている。一方、短ネジ挿通孔121、141、及び長ネジ挿通孔116の内周面には必ずしもネジ山を形成する必要はない。
【0027】
光学ユニット200は、半導体レーザー等から成る光源210、光検出器220、及びこれらを収容する筐体230を備えており、筐体230は図示しないネジ等によって第2板状部材130の下面に固定されている。
【0028】
以上のような構成から成るガス分析装置において、光源210から出射された光は窓板133a、光導入口132a、及び貫通孔151aを通って測定室114内に入り、対向配置された第1反射鏡140と第2反射鏡150の間で多重反射された後、貫通孔151b、光導出口132b、及び窓板133bを通ってガスセル100の外に出て光検出器220に入射する。光検出器220では、入射した光が電気信号に変換され、該電気信号は公知の信号処理回路(図示略)によって処理される。
【0029】
続いて、上記ガスセル100における第1反射鏡140及び第2反射鏡150の交換手順について説明する。まず、作業者がドライバー等の工具を用いて短ネジ170を回転させ、該短ネジ170を上方へと抜き取る。これにより、第1板状部材120及び第1反射鏡140とセル本体110との締結が解除されるので、第1板状部材120及び第1反射鏡140をセル本体110の上部から取り外す。
【0030】
以上により、長ネジ160の頭部が外部に露出するので、同様に工具を用いて長ネジ160を回転させて上方へ抜き取る。これにより、長ネジ160によるセル本体110と第2板状部材130の締結が解除されるので、第2板状部材130(及び第2板状部材130に載置されている第2反射鏡150と第2板状部材130の下部に固定されている筐体230)をセル本体110の下部から取り外す。なお、長ネジ160を取り外す際は、第2板状部材130や筐体230が落下しないよう、作業者が筐体230を手などで支持しながら作業を行う。
【0031】
続いて、第2板状部材130上面の第2反射鏡収容部131に載置されている第2反射鏡150を新しいものと交換する。このとき、新しい第2反射鏡150に設けられた貫通孔151a、151bの位置と、第2板状部材130に設けられた光導入口132a及び光導出口132bの位置とが一致するように位置合わせを行う。その後、新しい第2反射鏡150を載置した第2板状部材130(及び筐体230)をセル本体110の下部に配置し、第2板状部材130の長ネジ穴135とセル本体110の長ネジ挿通孔116の位置が合うように位置合わせを行う。そして、セル本体110の上方から長ネジ挿通孔116に長ネジ160を挿入し、工具等を用いて長ネジ160を回すことにより、第2板状部材130をセル本体110に締結する。これにより、第2反射鏡150は第2板状部材130とセル本体110の間に挟持された状態となる。
【0032】
次に、セル本体110の上面に新しい第1反射鏡140を載せ、更にその上に第1板状部材120を載置する。このとき、セル本体110の筒状部材111に設けられた短ネジ穴115と、第1反射鏡140に設けられた短ネジ挿通孔141及び第1板状部材120に設けられた短ネジ挿通孔121の位置を互いに一致させるようにする。そして、第1板状部材120の上方から短ネジ挿通孔121、141、及び短ネジ穴115に短ネジ170を挿入し、工具等を用いて該短ネジ170を回すことにより、第1板状部材120及び第1反射鏡140をセル本体110に締結する。
【0033】
以上の通り、本実施例に係るガスセル100によれば、第1板状部材120及び第2板状部材130をセル本体110に固定するためのネジ(すなわち短ネジ170及び長ネジ160)の取り付け及び取り外し作業を全てセル本体110の一方の側から行うことができるため、反射鏡の交換等のメンテナンス作業における作業者の負担を軽減することができる。また、従来のようにガスセルの両側に作業用のスペースを確保する必要がないため、ガス分析装置が取り付けられる装置(例えば、半導体製造装置)の小型化に寄与することができる。更に、ネジ160、170の取り付けや取り外しをセル本体110の上方から行う構成としたことにより、ネジ160、170を緩めた際などに、該ネジ160、170が落下するのを防止する効果も得られる。
【0034】
以上、実施例を用いて本発明を実施するための形態について説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容されるものである。例えば、上記実施例では、第1反射鏡140にはネジ挿通孔を設け、第2反射鏡150にはネジ挿通孔を設けない構成としたが、これに限らず、両方にネジ挿通孔を設けた構成としてもよい。また、両方にネジ挿通孔を設けない構成とすることもできる。具体的には、第1反射鏡140を、筒状部材111の上部開口を覆うことができ、且つ短ネジ170が該第1反射鏡140の外周よりも外側を通るような寸法とし、筒状部材111と第1板状部材120の間に該第1反射鏡140を挟持することで第1反射鏡140を固定する構成とすることができる。また、第2反射鏡150を、長ネジ160が該第2反射鏡150の外周よりも内側を通るような寸法とすると共に、該第2反射鏡150に長ネジ160を通過させるためのネジ挿通孔を設けた構成とすることもできる。
【0035】
また、各反射鏡140、150の直径を筒状部材111の内径よりも小さくし、所定の係合手段等によって第1板状部材120及び第2板状部材130の対向面にそれぞれ第1反射鏡140及び第2反射鏡150を取り付けた構成としてもよい。また、第1板状部材120及び第2板状部材130の測定室114を臨む面の少なくとも一部に金属薄膜を蒸着することによって第1反射鏡140及び第2反射鏡150を形成してもよい。但し、この場合、反射鏡を交換する際には、各板状部材120、130ごと新しいものに取り替える必要がある。なお、上記実施例では反射鏡を平面鏡としたが、凹面鏡を用いるようにしてもよい。
【0036】
上記実施例では、長ネジ160によって第2板状部材130をセル本体110に固定した後、短ネジ170によって第1板状部材120(及び第1反射鏡140)をセル本体110に固定するという二段階のネジ留めを行うものとしたが、図3に示すように、第1板状部材120の上面から、第1板状部材120、第1反射鏡140及びセル本体110を貫通して第2板状部材130の所定の深さまで到達する長ネジ180によって、第1板状部材120と第2板状部材130をセル本体110に一度にネジ留めできる構成としてもよい。この場合、第1板状部材120及び第1反射鏡140には筒状部材111の長ネジ挿通孔116と対応する位置に、前記長ネジ180を通すためのネジ挿通孔を形成する。
【0037】
また更に、図1〜3の例では、光源からの光を入射させるための光通過部(窓板133a、光導入口132a、及び貫通孔151a)と検出器へ光を出射するための光通過部(窓板133b、光導出口132b、及び貫通孔151b)をそれぞれ別個に設ける構成を示したが、特開2007-17610に記載のように、光通過部を一つだけ設け、該一つの光通過部から光の入射及び出射を行う構成としてもよい。
【0038】
図1〜3の例では、セル本体110の筒状部材111の両端が上下を向くように配置し、該筒状部材111の下方に光源210及び光検出器220を配置した構成を示したが、各部の配置はこれに限定されるものではなく、例えば、筒状部材111の上方に光源210及び光検出器220を配置してもよい。また、筒状部材111の両端が左右を向くように配置し、該筒状部材の右側又は左側に光源210及び光検出器220を配置するようにしてもよい。
【0039】
また、上記の例では多重反射型のガスセルを例に説明を行ったが、本発明に係るガスセルは、これに限らず、光源からの光を筒状部材の両端間で一往復させて検出器へと導く単反射型のガスセルや、光源からの光を筒状部材の一端から他端へ通過させて検出器に導入する光通過型のガスセルとしてもよい。
【0040】
図4に本発明に係るガスセルを光通過型のガスセルとした場合の構成例を示す。なお、同図において図1と同一又は対応する構成要素については同一符号を付し、適宜説明を省略する。この例では、ガスセル100に反射鏡は設けられず、第1板状部材120及び第2板状部材130がそれぞれ本発明における第1端面体及び第2端面体に相当する。光源210から出射した光は第1板状部材120に設けられた窓板133a及び光導入口132aを通って測定室114に入射し、第2板状部材130に設けられた光導出口132b及び窓板133bを通って測定室114外に出て光検出器220で検出される。光学ユニット200は、光源210、該光源210を収容した第1筐体231、光検出器220、及び該光検出器220を収容した第2筐体232を含んでおり、第1筐体231及び第2筐体232は図示しないネジ等によってそれぞれ第1板状部材120及び第2板状部材130に固定されている。本例において、第2板状部材130は、筒状部材111の一端側(図中の上端側)からセル本体110を貫通して筒状部材111の他端側(図中の下端側)へと至る長ネジ160によって筒状部材111の他端側に固定され、第1板状部材120は、該第1板状部材120を貫通して筒状部材111の一端側の所定の深さに至る短ネジ170によって筒状部材111の一端側に固定される。そのため、第1板状部材120を固定するためのネジ170と第2板状部材130を固定するためのネジ160の取り付け及び取り外しをセル本体110の同一の側から行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
100…ガスセル
110…セル本体
111…筒状部材
112…ガス導入管
113…ガス排出管
114…測定室
120…第1板状部材
130…第2板状部材
131…第2反射鏡収容部
132a…光導入口
132b…光導出口
133a、133b…窓板
140…第1反射鏡
150…第2反射鏡
151a、151b…貫通孔
170…短ネジ
121、141…短ネジ挿通孔
115…短ネジ穴
160…長ネジ
116…長ネジ挿通孔
117…座ぐり部
135…長ネジ穴
200…光学ユニット
210…光源
220…光検出器
230…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガスを流通させる空間を有し、該空間内のガスに光を照射して該ガスの光学的測定を行うために用いられるガスセルであって、
a) 両端が開放された筒状部材、並びに該筒状部材の側面に設けられ、該筒状部材の内部空間と外部を連通させるガス導入口及びガス排出口を有するセル本体と、
b) 前記筒状部材の一端の開口部を覆うようにして該筒状部材に取り付けられる第1端面体と、
c) 前記筒状部材の他端の開口部を覆うようにして該筒状部材に取り付けられる第2端面体と、
d) 前記セル本体において、前記筒状部材の内壁よりも外側を該筒状部材の一端側から他端側に貫通するように形成された複数のネジ挿通孔と、
を有し、
前記第2端面体が、前記筒状部材の一端側から前記ネジ挿通孔に挿入されたネジによって前記筒状部材の他端側に固定されることを特徴とするガスセル。
【請求項2】
前記ガスセルが、光源から照射された光を前記筒状部材の内部空間の両端間で一回以上往復させた後に光検出器へと導く光反射型のガスセルであって、
前記第2端面体が、前記ネジによって前記筒状部材に固定される板状部材と、該板状部材と前記筒状部材の間に挟持される反射鏡とを含んで成り、
前記第2端面体を前記筒状部材に取り付けた状態において、前記反射鏡の外周が、前記筒状部材の軸線方向から見て該筒状部材の内壁よりも外側且つ前記複数のネジ挿通孔よりも内側に位置するものであることを特徴とする請求項1に記載のガスセル。
【請求項3】
e) 前記セル本体において、前記筒状部材の一端の開口部の周囲に、前記複数のネジ挿通孔からずらして形成された複数のネジ穴と、
f) 前記複数のネジ穴と対応する前記第1端面体上の位置に形成された複数のネジ挿通孔とを有し、
前記第1端面体が、前記第1端面体のネジ挿通孔を通って前記セル本体のネジ穴に至るネジによって前記筒状部材の一端側に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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