説明

ガスセンサの被水防止装置

【課題】内燃機関の吸気管に設けられたガスセンサを、吸気に含まれる凝縮水の熱衝撃から保護すると共に、ガス成分の検出精度を高く維持する。
【解決手段】吸気マニホールドの垂直管壁30に空燃比センサ10が装着されている。空燃比センサ10の検出部18が吸気流路に突出配置されている。検出部18の吸気上流側及び吸気下流側の垂直管壁30の内壁に複数のリング状凹溝36及び37が刻設されている。検出部18の吸気上流側で垂直管壁30の内壁に付着した水滴wは、リング状凹溝36によって検出部18に向かって前進するのを阻止される。上方の垂直管壁30から流下する水滴wはリング状凹溝37で流下を阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気管に設けられたガスセンサの検出部が、吸気に含まれる凝縮水の付着によって熱衝撃を受け損傷するのを防止可能にしたガスセンサの被水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関の吸気管や排気管には、吸気中の特定ガス成分を検出するセンサが設けられている。このようなセンサとして、例えば、ジルコニアなどの固体電解質からなるガス検出素子を用いて、O濃度を検出する空燃比センサや、排気中のNO濃度を検出するNOセンサ等がある。これらのガスセンサは、ガス検出素子を内蔵した検出部が吸気又は排気に曝される位置に配置され、この検出部で特定ガス成分を検出する。例えば、空燃比センサにおいては、検出部にはヒータが内蔵され、このヒータを用いてガス検出素子を高温に加熱し活性化することで、特定ガス成分を検出する。
【0003】
エンジンの停止後など、吸気又は排気の温度が低下した時、凝縮水が析出する。前記センサのガス検出素子は、熱衝撃に弱いセラミックで形成されているため、低温の凝縮水がガス検出素子に付着すると、ガス検出素子が急冷され、熱衝撃によりガス検出素子にクラックや割れが発生するおそれがある。運転中高温の排気は、凝縮水の析出量は少ないため、あまり問題とならない。一方、吸気流路のうち、インタークーラの下流側では、インタークーラで吸気が冷却されるため、凝縮水が析出しやすい。燃料の燃焼により水蒸気が生成されるため、吸気より排気のほうが水蒸気分圧が高い。そのため、特に、排気を吸気流路に再循環するEGR装置を備えた内燃機関では、インタークーラの下流側吸気流路で凝縮水の析出量が多い。
【0004】
特許文献1に開示された手段は、ガスセンサの上流側排気流路に水溜室を設け、排気流路と該水溜室とを連通する孔を設けたものであり、排気流路に滞留した凝縮水を該孔を通して該水溜室に溜めるようにしている。
【0005】
特許文献2に開示された手段は、水平方向に配置された排気流路で、ガスセンサの上流側排気流路に排気流路内を上下に分割する仕切板を設けている。この仕切板によって排気流路の底部に溜まった滞留水の巻上げを抑制し、滞留水がガス検出素子に付着しにくくしたものである。
【0006】
図6〜図9に、吸気マニホールドに装着された空燃比センサの構成を示す。吸気マニホールド120は、垂直部120aと水平部120bとで構成され、垂直部120aの管壁に空燃比センサ100が設けられている。水平部120bは、4本の分岐管122a〜dに分かれ、各分岐管は、夫々がシリンダブロック124に設けられた4個のシリンダヘッドに接続されている。吸気aは凝縮水を含み、吸気マニホールド120の壁面に付着した大きな水滴w1は、壁面を旋回しながら進み、小さな水滴w2は吸気に含まれて、吸気aと共に流れる。内燃機関の停止後、吸気マニホールド120の上部壁に付着した水滴w3は、空燃比センサ100の検出部106のほうへ落下してくる。
【0007】
ガスセンサ100の軸方向中央に雄ネジ102及びナット104が一体形成されている。垂直部120aの管壁に設けられたボス部126に雌ネジ孔128が形成され、該雌ネジ孔128に雄ネジ102が螺合している。ガスセンサ100の検出部106が、垂直部120aの管壁から吸気流路内に突設されている。検出部106のケースは外壁108及び内壁110からなり、夫々に吸気導入孔112が穿設されている。内壁110の内側にガス検出素子114が配置され、ガス検出素子114の内側にヒータ116が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−2723号公報
【特許文献2】特開2010−112222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された被水防止手段は、排気流路に水溜室を設けるため、排気管の製造工程が増加し、高コストになるという問題がある。特許文献2に開示された被水防止手段は、排気流路に仕切板を設けるため、排気管の製造工程が増加し、高コストになると共に、排気の圧力損失が増加し、内燃機関の熱効率を低下させるという問題がある。
【0010】
図9において、吸気aは、管壁の近傍で管壁との摩擦により流速が小さく、かつ圧力が高い。逆に流速が大きい流路中央域では圧力が低い。そのため、吸気aは、管壁近傍に配置された吸気導入孔112から検出部106の内部に進入し、ガス検出素子114に接触した後、流路中央側の吸気導入孔112から出て行く。この時、吸気aに含まれる水滴がガス検出素子114に付着することで、前述の熱衝撃による破損の問題が起こる。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、簡易かつ低コストな手段で、吸気流路内に突設された検出部が、吸気に含まれる凝縮水による熱衝撃で損傷するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため、本発明のガスセンサの被水防止装置は、内燃機関の吸気流路内に突設された検出部を備えたガスセンサの被水防止装置において、少なくとも検出部より吸気流れ方向において上流側吸気管の内壁に、吸気流れ方向と交差し、吸気管壁面に付着した内壁に付着した水滴が検出部に接触することを抑制する凹溝を設けたものである。
【0013】
吸気流路では、管壁に付着した凝縮水は、吸気流によって壁面を旋回しながら進む。ガスセンサの検出部の少なくとも吸気上流側に、前記凹溝を設けたことにより、該凹溝が凝縮水の前進に対する抵抗となり、凝縮水の前進を阻止する。これによって、検出部に凝縮水が付着するのを防止でき、ガス検出素子が凝縮水によって破損するのを防止できる。なお、ガスセンサが取り付けられる管壁が上下方向に配置された吸気管においては、ガスセンサの下流側上方管壁にも凹溝を設けるとよい。これによって、管壁を伝って流下する凝縮水がガスセンサの検出部に到達するのを防止できる。
【0014】
本発明において、前記凹溝が、吸気流れ方向に複数配置された凹溝で構成されているとよい。凹溝を吸気流れ方向に複数配置することで、壁面に付着した凝縮水の前進抑止効果を向上できる。
【0015】
本発明において、前記凹溝が、前記検出部の吸気上流側及び吸気下流側に配設された螺旋状凹溝と、該螺旋状凹溝を結ぶ連絡用凹溝とから構成されているとよい。螺旋状凹溝に付着した凝縮水は、吸気流で押され、螺旋状凹溝に沿って吸気下流側へ前進する。そして、連絡用凹溝を経由して下流側の螺旋状凹溝に流出する。そのため、検出部に凝縮水が付着するのを防止できる。
【0016】
なお、管壁が上下方向に配置された吸気管においては、上方の管壁に付着し該管壁を伝って流下する凝縮水は、螺旋状凹溝に流入し、該螺旋状凹溝及び連絡用凹溝を伝って上流側(下方領域)に刻設された螺旋状凹溝に流下する。そのため、検出部の上方から流下する凝縮水が検出部に付着するのを防止できる。
【0017】
本発明において、ガスセンサの検出部の周囲に該検出部に設けられた吸気導入口を覆う位置まで吸気流路内に突出配置された筒状カバーを備え、該筒状カバーの内壁が突出方向の先端側で拡径されたテーパ壁で形成され、かつ該テーパ壁の先端部から前記吸気導入口に至るまでの領域に螺旋溝が形成されているとよい。該筒状カバーによって吸気に含まれる凝縮水が直接吸気導入孔から検出部の内部に浸入するのを防止できる。
【0018】
また、筒状カバーの先端部から筒状カバーの内部に進入した吸気は、螺旋溝に沿って旋回する。筒状カバーの内径は根元部に向かって徐々に狭まるので、吸気は旋回速度を増しながら筒状カバーの奥に進入し、検出部に設けられた吸気導入孔から検出部の内部へ進入する。そのため、吸気導入孔が検出部の根元側に設けられているときでも、吸気の主流のガス成分を検出できると共に、吸気の流速を増大できるので、ガス成分を応答性良く検出できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内燃機関の吸気流路内に突出配置された検出部を備えたガスセンサの被水防止装置において、少なくとも検出部より吸気流れ方向において上流側吸気管の内壁に、吸気流れ方向と交差し、吸気管壁面に付着した水滴が検出部に接触するするのを防止した凹溝を設けたので、検出部の吸気上流側で管壁に付着した凝縮水が検出部の内部へ浸入するのを防止でき、これによって、ガス検出素子の熱衝撃による損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明装置の第1実施形態に係る吸気マニホールドの断面図である。
【図2】本発明装置の第2実施形態に係る吸気マニホールドの断面図である。
【図3】本発明装置の第3実施形態に係る吸気マニホールドの断面図である。
【図4】図3中のC方向から視た図である。
【図5】本発明装置の第4実施形態に係る吸気マニホールドの断面図である。
【図6】内燃機関に設けられた吸気マニホールドの正面図である。
【図7】図6中のA―A線に沿う断面図である。
【図8】図6中のB―B線に沿う断面図である。
【図9】従来の空燃比センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0022】
(実施形態1)
本発明装置の第1実施形態を図1に基づいて説明する。本実施形態は、内燃機関に設けられた吸気マニホールド又は吸気管の垂直管壁に装着された空燃比センサに適用された例である。吸気マニホールド又は吸気管の垂直管壁30に、雌ネジ孔34が設けられている。この雌ネジ孔34に空燃比センサ10が螺着されている。空燃比センサ10は、出力端子が内蔵され、リード線11が接続された基部12と、雌ネジ孔34に螺合する雄ネジ16と、雄ネジ16と一体形成されたナット14と、垂直管壁30から吸気流路内に突出配置される検出部18とで構成され、雄ネジ16が雌ネジ孔34に螺合することで、垂直管壁30に固定されている。
【0023】
検出部18の垂直管壁30に近い根元部には、周方向に複数の吸気導入孔20が穿設されている。吸気導入孔20から検出部18の内部に進入した吸気aが、検出部18に内蔵されたガス検出素子(図示省略)に接触することで、吸気中の酸素濃度を検出する。空燃比センサ10の取付け場所の近傍で吸気上流側、即ち、下方領域の垂直管壁30の内壁に、4条のリング状凹溝36が刻設されている。また、空燃比センサ10の近傍で吸気下流側、即ち上方管壁に3条のリング状凹溝37が刻設されている。
【0024】
リング状凹溝36及び37は、四角断面を有し、垂直管壁30の軸方向と直角方向の面に平行で、互いに等間隔に配置されている。また、空燃比センサ10の上流側吸気流路には、インタークーラ及びEGRガスの導入口(図示省略)が設けられている。インタークーラで冷却された吸気a及びEGRガスは凝縮した水滴wを含んでいる。
【0025】
かかる構成において、空燃比センサ10の吸気上流側で、垂直管壁30に付着した水滴wは、4条のリング状凹溝36により前進を阻まれる。これによって、垂直管壁30を伝う水滴wが検出部18に到達するのを防止できる。そのため、検出部58aに内蔵されたガス検出素子に水滴wが付着し、その熱衝撃によってガス検出素子が破損するのを防止できる。
【0026】
また、検出部18の吸気下流側、即ち上方の垂直管壁30に付着した水滴wは、重力により垂直管壁30を伝って下方へ流下する。この流下する水滴wはリング状凹溝37で流下を阻止され、検出部18に到達するのを防止できる。この水滴wの一部は、稼動している内燃機関の熱で気化し、吸気aと共に下流側に運ばれる。
【0027】
(実施形態2)
次に、本発明装置の第2実施形態を図2によって説明する。本実施形態は、第1実施形態と同様に、内燃機関に設けられた吸気マニホールド又は吸気管の垂直管壁30に空燃比センサ10が装着されている。空燃比センサ10は、第1実施形態の空燃比センサ10と同一構成を有している。空燃比センサ10の取付け場所より吸気上流側(下方領域)の垂直管壁30の内壁に、螺旋状の凹溝38が刻設されている。また、空燃比センサ10の吸気下流側(上方領域)の垂直管壁30に、螺旋状の凹溝40が刻設され、螺旋状凹溝38と螺旋状凹溝40とを連絡する螺旋状の連絡用凹溝42が刻設されている。
【0028】
螺旋状凹溝38,40及び連絡用凹溝42は、図示のように、四角断面をもつ。螺旋状凹溝38又は螺旋状凹溝40は、互いに等間隔に配置されている。連絡用凹溝42は、空燃比センサ10と干渉しない位置に刻設される。空燃比センサ10の上流側吸気流路には、インタークーラ(図示省略)が設けられている。インタークーラで冷却された吸気aは凝縮した水滴wを含んでいる。
【0029】
かかる構成において、空燃比センサ10の吸気上流側で、螺旋状凹溝38に付着した水滴wは、吸気aの流れで下流側に押され、螺旋状凹溝38の底面を螺旋状凹溝38に沿って吸気下流側へ前進する。そして、連絡用凹溝42を経由し、再飛散することなく、下流側の螺旋状凹溝40に流出する。そのため、検出部18に水滴wが付着するのを防止できる。そのため、検出部18に内蔵されたガス検出素子に水滴wが付着し、その熱衝撃によってガス検出素子が破損するのを防止できる。
【0030】
なお、検出部18の上方の垂直管壁30に付着した水滴wは、重力により垂直管壁30を伝って流下し、螺旋状凹溝40に流入する。螺旋状凹溝40に流入した水滴wは、重力により螺旋状凹溝40を下方へ流れ、連絡用凹溝42を経由して螺旋状凹溝38に至る。そのため、この流下する水滴wが検出部18に到達するのを防止できる。
【0031】
(実施形態3)
次に、本発明装置の第3実施形態を図3及び図4により説明する。内燃機関に設けられた吸気マニホールド又は吸気管の垂直管壁30に空燃比センサ10が装着されている。空燃比センサ10は、第1実施形態の空燃比センサ10と同一構成を有している。垂直管壁30には、雌ネジ孔34を有するボス部32が、圧入又はねじ込み等の手段で固定されている。空燃比センサ10は、雄ネジ14が雌ネジ孔34に螺合することで、垂直管壁30に固定される。
【0032】
空燃比センサ10の上流側垂直管壁30には、第1実施形態と同一構成の4条のリング状凹溝36が、垂直管壁30の軸方向と直角方向にかつ互いに等間隔に刻設され、下流側の垂直管壁30には、第1実施形態と同一構成の3条のリング状凹溝37が、垂直管壁30の軸方向と直角方向にかつ互いに等間隔に刻設されている。
【0033】
ボス部32と一体に円筒形の保護カバー22が設けられ、保護カバー22は検出部18の周囲に配置され、吸気流路に突出配置されている。保護カバー22の吸気流路への突出量Lは、少なくとも吸気導入孔20を覆うように設定され、例えば、検出部18の突出量の2/3程度とする。保護カバー22の内壁22aは、先端側が拡径された円錐形のテーパ面を形成している。吸気導入孔20より先端側の内壁22aには、螺旋形状に刻設された円弧状断面の螺旋溝24が設けられている。螺旋溝24の根元側終端部に貫通孔26が刻設されている。
【0034】
貫通孔26の内壁側開口は螺旋溝24の根元側終端部に配置されている。貫通孔26は内壁22aの接線方向に配置され、保護カバー22の外壁における貫通孔26の外壁開口26aは、図4に示すように、保護カバー22の中心より吸気下流側に配置されている。螺旋溝24の根元側終端部及び貫通孔26は、吸気導入孔20より保護カバー22の先端側に配置されている。保護カバー22の外壁側先端部には、平坦なテーパ面22bが形成されている。テーパ面22bは、垂直管壁30の軸方向と直角方向の面に対し、θ(<90°、好ましくは30〜60°)の角度をもつように形成されている。
【0035】
テーパ面22bより根元側の保護カバー22の外壁には、周方向に複数のスリット状溝28が刻設されている。スリット状溝28はリング状をなし、並列に配置されている。また、空燃比センサ10の上流側吸気流路には、インタークーラ(図示省略)が設けられている。インタークーラで冷却された吸気aは凝縮した水滴wを含んでいる。
【0036】
かかる構成において、かかる吸気aが吸気マニホールドの垂直管壁30を上方へ流れると、水滴wが垂直管壁30に付着する。空燃比センサ10の上流側(下方領域)で、垂直管壁30に付着した水滴wは、リング状凹溝36が抵抗となって上方へ進入するのを阻まれる。また、吸気aに含まれる水滴wは、保護カバー22に阻まれ、吸気導入孔20に浸入するのを阻止される。保護カバー22の外壁に設けられたスリット状溝28に付着した水滴wは、吸気流によりスリット状溝28に沿って滑り、保護カバー22の下流側へ流出する。
【0037】
保護カバー22の先端部近辺の吸気aは、テーパ面22bに沿って流れ、吸気流路の中心側に偏向される。吸気流路の中央領域を流れる吸気aの一部は、保護カバー22の先端部から保護カバー22の内部に回り込み、螺旋溝24に沿って旋回を開始する。旋回を開始した吸気aは、内壁22aが根元側に向かって徐々に縮径しているので、徐々に旋回速度を増す。そのため、吸気中に含まれる重い水滴wに大きな遠心力が付加され、水滴wは螺旋溝24の底に押し付けられる。
【0038】
大きな遠心力を付加された水滴wは、貫通孔26を通って外壁開口26aから保護カバー22の吸気下流側へ流れる。貫通孔26は、内壁22aの接線方向に配置されているので、水滴wはスムーズに貫通孔26に流入する。保護カバー22の吸気下流側は、負圧になっているので、水滴wの下流側への流出が助長される。内燃機関の停止後、上方の垂直管壁30を伝って流下してくる水滴wは、リング状凹溝37に流入し、それ以上の流下を阻止される。一部の水滴wが保護カバー22に到達した場合でも、スリット状溝28によってガイドされ、上流側(下方領域)へ流下する。また、リング状凹溝36及び37に滞留した水滴wは、稼動中の内燃機関の熱で蒸発し、水蒸気となって下流側に流れるか、あるいは内燃機関の停止後、下方へ流下する。
【0039】
本実施形態によれば、吸気aに含まれ垂直管壁30の内壁に付着した水滴wは、吸気流に抗して4条のリング状凹溝36により前進を阻まれる。これによって、垂直管壁30を伝う水滴wが検出部18に到達するのを防止できる。また、保護カバー22で検出部18を覆うことで、吸気aに含まれる水滴wが吸気導入孔20から検出部18の内部へ浸入するのを防止できる。さらに、保護カバー22の先端側から保護カバー22の内部へ進入した水滴wを含む吸気aは、水滴wが貫通孔26から保護カバー外に排出され、水滴wが離脱した吸気のみが螺旋溝24に沿って速い旋回速度で吸気導入孔20に導入されるので、ガス検出素子への水滴wの付着を防止できると共に、吸気aの主流のガス成分を応答性良く検出できる。
【0040】
このように、リング状凹溝36と、保護カバー22と、保護カバー22に設けられた貫通孔26とによって、検出部18に内蔵されたガス検出素子が水滴の熱衝撃により損傷するのを防止できる。また、螺旋溝24に沿って旋回する水滴wは、大きな遠心力が働き、螺旋溝24の底に押し付けられ、かつ貫通孔26の外壁開口26aは、負圧状態の保護カバー下流側にあるので、水滴wを貫通孔26からスムーズに保護カバー外に流出させることができる。
【0041】
また、保護カバー22の外壁に周方向にスリット状溝28が刻設されているので、スリット状溝28に付着した水滴wは、飛散することなく、吸気流によって下流側に押される。そして、スリット状溝28に沿って保護カバー22の下流側にスムーズに流出できる。また、保護カバー22の先端部にテーパ面22bを形成したので、テーパ面22bに付着した水滴wは、テーパ面22bに沿って吸気流路の中心側へ流出させることができる。そのため、この水滴wが保護カバー22の内部に進入するのを防止できる。
【0042】
また、検出部18の上方の垂直管壁30に付着し流下する水滴wは、リング状凹溝37に入り込むことで流下を阻止される。また、一部の水滴wがリング状凹溝37より下方へ流下した場合でも、保護カバー22によって検出部18に付着するのを防止できる。保護カバー22の外壁に流下した水滴wは、保護カバー22の外壁に刻設されたスリット状溝28によってガイドされ、上流側(下方領域)へ流下させることができる。
【0043】
なお、保護カバー22の外壁及び内壁の表面に、例えば、フッ素樹脂などの撥水性材料からなる被膜を被覆するとよい。これによって、保護カバー22の外壁に付着した水滴を保護カバー22の外壁に沿って下流側へ流出させるのが容易になる。また、保護カバー22の内部に進入した水滴の旋回速度が増加し、水滴に働く遠心力を増大できるので、貫通孔26を通して保護カバー22の外側へ流出させるのが促進される。
【0044】
(実施形態4)
次に、本発明装置の第4実施形態を図5により説明する。本実施形態は、図3に示す保護カバー付き空燃比センサ10の上流側及び下流側の垂直管壁30に、図2に示す第2実施形態と同一構成の螺旋状凹溝38,40及び連絡用凹溝42を設けたものである。空燃比センサ10の吸気上流側で、螺旋状凹溝38に付着した水滴wは、吸気aの流れで下流側に押され、螺旋状凹溝38の底面を螺旋状凹溝38に沿って吸気下流側へ前進する。そして、連絡用凹溝42を経由して下流側の螺旋状凹溝40に流出する。
【0045】
吸気aに含まれる水滴は、保護カバー22に阻まれ、保護カバー22の先端部から進入した吸気aは、螺旋溝24で旋回力を付与されて、根元側へ進入すると共に、この吸気aに含まれる水滴wは貫通孔26から保護カバー外へ排出される。そして、水滴wが離脱した吸気が大きな旋回速度で吸気導入孔20から検出部18の内部に進入する。そのため、検出部18に内蔵されたガス検出素子が、水滴wによる熱衝撃で損傷するのを防止できると共に、吸気の主流をガス検出素子まで積極的に導入でき、ガス成分を応答性良く検出できる。
【0046】
また、上方の垂直管壁30に付着し垂直管壁30を伝って流下する水滴wは、螺旋状凹溝40に流入し、連絡用凹溝42を伝って螺旋状凹溝38に流下するので、検出部18に付着するのを防止できる。一部の水滴wが螺旋状凹溝40を越えても、保護カバー22で阻止されるので、検出部18に付着するのを防止できる。
【0047】
なお、第4実施形態の変形例として、螺旋状の連絡用凹溝42の代わりに、図5に示すように、上流側螺旋状凹溝38の最下流側領域と下流側螺旋状凹溝40の最上流側領域とを、垂直管壁30の軸方向に配置された直線状の連絡用凹溝44で連絡するようにしてもよい。これによって、連絡用凹溝の加工が容易になる。
【0048】
第3実施形態及び第4実施形態で用いられた保護カバー22の代わりに、吸気導入孔20を覆うだけの突出量Lを有し、内壁がテーパ面を形成せず、かつ貫通孔26を有しない単純な円筒形状の保護カバーを設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、内燃機関の吸気管に設けられたガスセンサを、吸気に含まれる凝縮水による熱衝撃から保護し、かつガス成分の検出精度を高く維持できる。
【符号の説明】
【0050】
10 空燃比センサ(ガスセンサ)
11 リード線
12 基部
14 ナット
16 雄ネジ
18 検出部
20 吸気導入孔
22 保護カバー(筒状カバー)
22a 内壁
22b テーパ面
24 螺旋溝
26 貫通孔
26a 外壁開口
28 スリット状溝
30 垂直管壁
32 ボス部
34 雌ネジ孔
36,37 リング状凹溝
38、40 螺旋状凹溝
42,44 連絡用凹溝
a 吸気
w 水滴(凝縮水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気流路内に突設された検出部を備えたガスセンサの被水防止装置において、
少なくとも前記検出部より吸気流れ方向において上流側吸気管の内壁に、吸気流れ方向と交差し、吸気管壁面に付着した水滴が前記検出部に接触することを抑制する凹溝を設けたことを特徴とするガスセンサの被水防止装置。
【請求項2】
前記凹溝が、吸気流れ方向に複数配置された凹溝で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの被水防止装置。
【請求項3】
前記凹溝が、前記検出部の吸気上流側及び吸気下流側に配設された螺旋状凹溝と、該螺旋状凹溝を結ぶ連絡用凹溝とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサの被水防止装置。
【請求項4】
前記検出部の周囲に該検出部に設けられた吸気導入口を覆う位置まで吸気流路内に突出配置された筒状カバーを備え、
該筒状カバーの内壁が突出方向の先端側で拡径されたテーパ壁で形成され、かつ該テーパ壁の先端部から前記吸気導入口に至るまでの領域に螺旋溝が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガスセンサの被水防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−44308(P2013−44308A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184225(P2011−184225)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)