説明

ガスタービン及びガスタービンの燃焼器挿入孔形成方法

【課題】ガスタービンの組立作業または分解作業を容易化すること。
【解決手段】ガスタービン1は、燃焼器39と、筒状に形成されて前記燃焼器39を内部に収容する燃焼部ケーシング31と、燃焼部ケーシング31の側周部に形成される孔であって、前記孔の燃焼部ケーシング31の周方向に直交する方向の大きさが前記孔の燃焼部ケーシング31の周方向の大きさよりも大きく形成されると共に、前記孔に挿入されている燃焼器39と燃焼器39と共に移動される部材と前記孔とを燃焼器39が移動される方向から見たときに、前記孔が燃焼器39及び燃焼器39と共に移動される部材との外形を全て含むように形成される燃焼器挿入孔31aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン及びガスタービンの燃焼器挿入孔形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料を燃焼させた燃焼ガスからエネルギーを取り出す装置としてガスタービンがある。ガスタービンは、燃料を燃焼させることで発生する燃焼ガスのエネルギーを用いてタービンを回転させてロータから回転エネルギーを出力する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガスタービンの燃焼器を組立分解するためのガスタービン組立分解装置によって、ガスタービンの燃焼器の組立分解を容易にする技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−168931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、燃焼器のトラジションピース(尾筒)の出口は横幅が広い。よって、特許文献1に開示されている技術では、特許文献1の段落番号0053に記載されているように、燃焼器をケーシングから引き抜こうとするとケーシングに開けられる縦長の取り出し口(燃焼器挿入孔)にトラジションピースが干渉する。このため、燃焼器をケーシングから引き抜く際に、燃焼器を回転させる必要がある。これにより、特許文献1に開示されている技術は、ガスタービンの組立作業または分解作業の容易化が不十分である。
【0006】
さらに、燃焼器には燃焼ガスの流れ方向を変える役割もあるため、軸対象形状ではなく、全体的に湾曲した形状となっている(実施例では尾筒部が湾曲しています)。また、燃焼器には燃焼器冷却用の蒸気配管など、燃焼器と共に移動される部材が取り付けられる場合がある(実施例では尾筒部に配管が取り付けられています)。この点においても、ケーシングから燃焼器を取り出す際には、燃焼器の形状や付属物を考慮して、燃焼器挿入孔との干渉を避けるように、燃焼器を回転させたり傾けたりする工夫が必要となる。しかしながら、燃焼器は重量物であるため、作業者の負担が大きく、作業にも時間を要するという問題があった。
【0007】
一方、単に燃焼器との干渉を避けるためだけなら、燃焼器挿入孔の直径を大きくすればよい。しかしながら、燃焼器は燃焼部ケーシングの周方向に互いに隣り合う状態で複数設けられることから、燃焼器挿入孔の直径を大きくするだけでは、互いに隣り合う燃焼器挿入孔との距離が減少し、燃焼部ケーシングの強度が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ガスタービンの組立作業または分解作業を容易化し、さらに燃焼部ケーシングの強度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガスタービンは、燃料を燃焼させて燃焼ガスを発生させる燃焼器と、筒状に形成されて前記燃焼器を内部に収容する燃焼部ケーシングと、前記燃焼部ケーシングの側周部に形成されて前記燃焼部ケーシングの前記内部と外部とを連通する孔であって、前記孔の前記燃焼部ケーシングの周方向と直交する方向の大きさが前記孔の前記燃焼部ケーシングの周方向の大きさよりも大きく形成されると共に、前記孔に挿入されている前記燃焼器と前記燃焼器と共に移動される部材と前記孔とを前記燃焼器が移動される方向から見たときに、前記孔が前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材との外形を全て含んで形成される燃焼器挿入孔と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成により、本発明に係るガスタービンは、前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材が前記燃焼器挿入孔を介して燃焼部ケーシングの内部に挿入される際、または、前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材が前記燃焼器挿入孔を介して燃焼部ケーシングの内部から引き抜かれる際に、前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材が前記所定方向に移動されても、前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材が前記燃焼器挿入孔近傍の燃焼部ケーシングと干渉しない。
【0011】
これにより、前記ガスタービンは、前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材が回転や傾けられることなく、前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材が前記燃焼器挿入孔を介して前記燃焼部ケーシングの内部に挿入される。また、前記ガスタービンは、前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材が回転や傾けられることなく、前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材が前記燃焼器挿入孔を介して前記燃焼部ケーシングの内部から引き抜かれる。結果として、前記ガスタービンは、前記ガスタービンの組立作業または分解作業が容易化される。
【0012】
また、前記ガスタービンは、前記燃焼器挿入孔の形状が、前記燃焼部ケーシングの周方向の大きさよりも、前記燃焼部ケーシングの周方向と直交する方向の大きさの方が大きく形成される。これにより、前記ガスタービンは、前記燃焼器挿入孔が前記燃焼部ケーシングの周方向に複数形成される場合、互いに隣り合う前記燃焼器挿入孔同士の間の距離の減少が低減できる。結果として、前記ガスタービンは、隣り合う前記燃焼器挿入孔同士の間の前記燃焼部ケーシングの強度の低下を低減できる。
【0013】
本発明の好ましい態様としては、前記燃焼器挿入孔は、中心が異なる2つの円形孔が互いに重なり合う部分を有して複合されて形成されることが望ましい。
【0014】
ここで、前記燃焼部ケーシングの肉厚は、通常100mm程度に形成される。よって、前記燃焼器挿入孔は、加工方法によっては工具の剛性が不足して、前記燃焼器挿入孔の精度が低下するおそれがある。しかしながら、本発明に係るガスタービンは、上記構成により、加工する際に工具に求められる剛性が比較的に小さい円形の孔を複合させて前記燃焼器挿入孔が形成される。よって、前記ガスタービンは、前記燃焼器挿入孔が精度よく形成される。
【0015】
本発明の好ましい態様としては、前記燃焼器が前記燃焼部ケーシングの内部に設置される際に、前記燃焼器と前記燃焼器挿入孔の内周面との間に生じる隙間に設けられて、前記燃焼器と前記燃焼器挿入孔の内周面との間に生じる前記隙間を埋めるスペーサを備えることが望ましい。
【0016】
上記構成により、本発明に係るガスタービンの前記スペーサは、前記燃焼器と前記燃焼部ケーシングとの間の隙間を埋めて、前記燃焼部ケーシングの内部の空気の流れの乱れを抑制する。また、前記スペーサは、前記燃焼部ケーシングの内部の前記空気を前記燃焼器の空気取入口へ導くように形成、配置されるといわゆるフローガイドの機能も実現できる。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガスタービンの燃焼器挿入孔形成方法は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを発生させる燃焼器を内部に収容する燃焼部ケーシングの側周部に形成されて前記燃焼部ケーシングの前記内部と外部とを連通する孔であって、前記孔に挿入されている前記燃焼器と前記燃焼器と共に移動される部材と前記孔とを前記燃焼器が移動される方向から見たときに、前記孔が前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材との外形を全て含んで形成される燃焼器挿入孔を形成する際、所定の点を中心として円形に形成される第1円形孔を前記燃焼部ケーシングに形成する手順と、前記所定の点とは別の点を中心として円形に形成される第2円形孔を前記第1円形孔と重なる部分を有するように前記燃焼部ケーシングに形成する手順と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る燃焼器挿入孔形成方法を用いれば、加工する際に工具に求められる剛性が比較的に小さい円形に形成される前記第1円形孔を形成し、続いて前記第1円形孔と同様に加工する際に工具に求められる剛性が比較的に小さい円形に形成される前記第2円形孔を形成することで、前記燃焼器挿入孔を形成できる。よって、前記ガスタービンは、より容易に前記燃焼器挿入孔が形成される。また、前記ガスタービンは、より精度よく前記燃焼器挿入孔が形成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ガスタービンの組立作業または分解作業を容易化し、さらに燃焼部ケーシングの強度を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るガスタービンの概略構成図である。本実施形態に係るガスタービン1は、図1に示すように、流体の流れの上流側から下流側に向けて順に、圧縮部20と、燃焼部30と、タービン部10と、排気部40とを含んで構成される。
【0022】
圧縮部20は空気を加圧して、燃焼部30へ加圧された空気を送り出す。燃焼部30は、前記加圧された空気に燃料を供給する。そして、燃焼部30は、燃料を燃焼させる。タービン部10は、燃焼部30から送り出された前記燃焼ガスが持つエネルギーを回転エネルギーに変換する。排気部40は、前記燃焼ガスを大気へと排出する。
【0023】
圧縮部20は、空気取入口21と、圧縮部ケーシング22と、圧縮機静翼23と、圧縮機動翼24と、抽気マニホールド25とを有する。空気取入口21は、大気から空気を圧縮部ケーシング22に取り込む。
【0024】
圧縮部ケーシング22内には、複数の圧縮機静翼23と複数の圧縮機動翼24とが交互に設けられる。抽気マニホールド25は、圧縮機静翼23及び圧縮機動翼24の外側に設けられ、圧縮部20によって圧縮された空気を燃焼部30に導く。
【0025】
燃焼部30は、燃焼部ケーシング31と、燃焼器39とを有する。燃焼部ケーシング31の内部には燃焼部車室36が形成される。燃焼器39は、内筒32と、尾筒33と、燃料ノズル34とを含んで構成される。
【0026】
内筒32は、略円筒形状に形成され、圧縮空気の通路として燃焼部車室36の内部に設けられる。内筒32は、燃料ノズル34を構成するメインノズルと、パイロットノズルとを内部に支持する。加えて、燃焼部車室36には、圧縮空気の通路として尾筒33が設けられる。尾筒33は筒状に形成され、尾筒33の内部に、燃料が燃焼する燃焼領域が形成される。
【0027】
内筒32の軸方向の端部のうち、一方の端部は、尾筒33が接続される。また、内筒32の尾筒33とは反対側の他方の端部には、内筒32の内部に配置される燃料ノズル34に燃焼を供給するための配管が接続される。さらに、後述の図2に示すように、内筒32の外周面には、内筒32の内部に圧縮空気を導入する空気取入口35が形成される。
【0028】
燃料は、空気取入口35を介して内筒32の内部に導入された圧縮空気に対して燃料ノズル34から噴射されて、尾筒33内部の燃焼領域に導かれる。燃焼領域に導入された燃料は、図示しない点火装置によって点火され、燃焼することによって運動エネルギーを持った燃焼ガスとなる。
【0029】
タービン部10は、タービン部ケーシング15の内部に、タービン車室11と、タービン静翼12と、タービン動翼13とを有する。タービン車室11内には、複数のタービン静翼12と複数のタービン動翼13とが交互に配設されている。排気部40は、排気部ケーシング42の内部に排気ディフューザ41を有する。排気ディフューザ41は、タービン部10に接続されて、タービン部10を通過した燃焼ガス、つまり排気ガスを整流する。
【0030】
ガスタービン1は、回転体としてのロータ50を有する。ロータ50は、圧縮部20、燃焼部30、タービン部10、排気部40の中心部を貫通するように設けられる。ロータ50は、圧縮部20側の端部が軸受51により回転自在に支持され、排気部40側の端部が軸受52により回転自在に支持される。
【0031】
ロータ50は、ケーシング60の内部に設けられ、回転軸RLを軸に回転する。ロータ50は、複数のディスク14を含んで構成される。ディスク14には、圧縮機動翼24及びタービン動翼13が植設される。さらに、ロータ50の圧縮部20側の端部には、図示しない発電機の駆動軸が連結される。
【0032】
上記構成により、まず、圧縮部20の空気取入口21から取り込まれた空気が、複数の圧縮機静翼23と圧縮機動翼24とによって圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。続いて、燃焼部30で前記圧縮空気に対して所定の燃料が供給され、前記燃料は燃焼する。
【0033】
そして、この燃焼部30で生成された作動流体である高温・高圧の燃焼ガスが有するエネルギーは、タービン部10を構成する複数のタービン静翼12と複数のタービン動翼13とを通過する際に回転エネルギーに変換される。前記回転エネルギーは、タービン動翼13を介してロータ50に伝達され、ロータ50が回転運動する。これにより、ガスタービン1は、ロータ50に連結された発電機を駆動する。なお、タービン部10を通過後の排気ガスは、排気部40の排気ディフューザ41を通過して大気に放出される。
【0034】
図2は、本実施形態に係る燃焼器近傍を拡大して示す模式図である。ガスタービン1は、トップハット37と、スペーサ38とをさらに備える。燃焼器39は、燃焼部ケーシング31に形成される燃焼器挿入孔31aに挿入されて燃焼部車室36内に支持される。燃焼器39は、内筒32と尾筒33とが連結された状態で、トップハット37を介して内筒32が燃焼器挿入孔31aに取り付けられる。また、トップハット37は、トップハットノズルを内部に支持する。
【0035】
トップハット37は、内筒32と連結されている。また、トップハット37は、フランジを有して形成されており、前記フランジが燃焼器挿入孔31a近傍の燃焼部ケーシング31に連結される。これにより、トップハット37は、内筒32を燃焼部車室36内に支持する。
【0036】
ここで、一般的に、燃焼器挿入孔31aは、略円筒形状に形成される内筒32及び尾筒33が挿入できる程度の大きさに形成される。つまり燃焼器挿入孔31aは、内筒32及び尾筒33の筒状部分の径よりも若干大きい径を有する円形に形成される。よって、一般的なガスタービンでは、燃焼部ケーシング31と内筒32との間の隙間は比較的小さい。
【0037】
しかしながら、詳細は後述するが、本実施形態では、ガスタービン1の燃焼器挿入孔31aは、一般的なガスタービンの構成よりも燃焼部ケーシング31の周方向と直交する方向に大きく形成される。これによって、内筒32と燃焼部ケーシング31との間の外周側(内筒32の回転軸RLに対して径方向外側)の隙間は、一般的なガスタービンの構成よりも大きい。
【0038】
スペーサ38は、内筒32と燃焼部ケーシング31との間の前記隙間に設けられる。スペーサ38は、例えば、トップハット37に取り付けられている。スペーサ38は、内筒32と燃焼部ケーシング31との間の回転軸RLに対する外周側の隙間を埋めて、燃焼器39の周囲の空気の流れを均一にする。
【0039】
なお、スペーサ38は、燃焼部車室36内の空気を空気取入口35へ導くように形成されて配置されると好ましい。スペーサ38は、例えば、図2に示すように、燃焼部ケーシング31の燃焼部車室36側の内面と空気取入口35とを滑らかにつなぐように形成されて配置される。これにより、スペーサ38は、フローガイドの機能も実現する。また、スペーサ38は、内筒32に取り付けられてもよい。
【0040】
ここで、ガスタービン1は、例えば、保守点検の際に燃焼器39が燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる。燃焼器39は、燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる際、内筒32が尾筒33から取り外される。また、燃焼器39は、燃焼器39を燃焼部車室36内に支持する支持部材から取り外される。また、燃焼器39は、トップハット37が、燃焼器挿入孔31a近傍の燃焼部ケーシング31から取り外される。
【0041】
この時、内筒32と、トップハット37と、スペーサ38とは互いに組みつけられている状態、つまり一体のままである。燃焼器39は、内筒32と、トップハット37と、スペーサ38とが一体の状態のまま、燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる。
【0042】
次に、燃焼器39は、尾筒33の内筒32側とは反対側の端部が、タービン部10の部材から取り外される。次に、尾筒33が燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる。ここで、尾筒33に連結される蒸気配管33aも尾筒33の一部として燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から共に引き抜かれる。
【0043】
なお、本実施形態では、燃焼器39が燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる場合を説明するが、燃焼器39が燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36に挿入される場合も、ガスタービン1は、同様の作用及び効果を有する。
【0044】
ここで、一般的なガスタービンは、上述のように、燃焼器挿入孔31aは、略円筒形状に形成される内筒32及び尾筒33が挿入できる程度の大きさに形成される。しかしながら、尾筒33は、内筒32と連結される端部側からタービン部10の部材と連結される端部側に向かって尾筒33の軸線が湾曲して形成される。
【0045】
また、尾筒33のタービン部10側の端部は、略矩形形状に形成される。燃焼器39が燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる際、前記矩形形状の尾筒33の端部が燃焼器挿入孔31a近傍の燃焼部ケーシング31と干渉しやすい。また、尾筒33に設けられる蒸気配管33aも、燃焼器39が燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる際に燃焼器挿入孔31a近傍の燃焼部ケーシング31と干渉しやすい。
【0046】
よって、一般的なガスタービンの場合、燃焼器挿入孔31aから燃焼器39を引き抜く際に、燃焼器39を引き抜く角度によっては、尾筒33が燃焼器挿入孔31a近傍の燃焼部ケーシング31と干渉するおそれがある。よって、従来のガスタービンでは、燃焼器39を回転させたり傾けたりしながら、燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜く必要がある。
【0047】
図3は、本実施形態に係る燃焼器挿入孔を内筒が燃焼部車室内に配置される時の内筒の軸線に沿う方向から示す模式図である。燃焼器挿入孔31aは、第1円形孔31aaと、第2円形孔31abとが複合されて形成される。燃焼器挿入孔31aは、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとが複合されて、達磨形状や、ひょうたん形状のようにくびれ部を有する形状に形成される。
【0048】
第1円形孔31aaと第2円形孔31abとは、第1円形孔31aaの中心C1と、第2円形孔31abの中心C2とが、重ならないように形成される。また、中心C1と中心C2との距離は、第1円形孔31aaの半径と第2円形孔31abの半径との和よりも小さく設定される。
【0049】
中心C1は、例えば、図2に示す略円筒形状に形成される内筒32の軸線CL上に形成される。つまり、第1円形孔31aaは、内筒32の軸線CLを中心に円形状に形成される。
【0050】
ここで、図3に実線で示す外形Kは、図2に示す内筒32が燃焼部車室36内に配置される時の内筒32の軸線CLに沿う方向から燃焼器39を見たときの燃焼器39の外形線を示す。ここで、外形Kは、トップハット37のフランジよりも燃焼部車室36に配置される側の燃焼器39の部材の外形をいう。また、外形Kは、図2に示す内筒32が燃焼部車室36内に配置される時の内筒32の軸線CL沿う方向から燃焼器39を投影した時の投影図である。なお、以下「内筒32が燃焼部車室36内に配置される時の内筒32の軸線CL」を、単に「内筒32の軸線CL」という。
【0051】
第2円形孔31abは、図2に示す内筒32の軸線CLに沿う方向から燃焼器39が挿入された燃焼器挿入孔31aを見たときに、第1円形孔31aaに収まりきらない燃焼器39の外形Kを全て含むように形成される。
【0052】
つまり、燃焼器挿入孔31aは、図2に示す内筒32の軸線CLに沿う方向から燃焼器39が挿入された燃焼器挿入孔31aを見たときに、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとで燃焼器39の外形Kを全て含むように、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとが形成される。
【0053】
ここで、燃焼器挿入孔31aは、燃焼部ケーシング31に燃焼部ケーシング31の周方向に並んで複数形成される。例えば、燃焼器挿入孔31aが、図2に示す内筒32の軸線CLに沿う方向から燃焼器39が挿入された燃焼器挿入孔31aを見たときに、燃焼器39の外形Kを全て含むように1つの孔として略円形に形成された場合、従来のガスタービンよりも隣り合う燃焼器挿入孔31a同士の間の距離が小さくなる。
【0054】
これにより、図2に示す内筒32の軸線CLに沿う方向から燃焼器39が挿入された燃焼器挿入孔31aを見たときに、燃焼器39の外形Kを全て含むように燃焼器挿入孔31aが1つの孔として略円形に形成された場合、隣り合う燃焼器挿入孔31a同士の間の燃焼部ケーシング31の強度が低下するおそれがある。
【0055】
ここで、燃焼器挿入孔31aがくびれ部を有する形状に形成される場合、中心C1と中心C2とを結ぶ仮想の線は、通常、燃焼部ケーシング31の周方向と略直交する方向に沿う。つまり、燃焼器挿入孔31aは、燃焼部ケーシング31の周方向と直交する方向の大きさが、燃焼部ケーシング31の周方向の大きさよりも大きい。これは、図2に示す内筒32の軸線CLに沿う方向から燃焼器39が挿入された燃焼器挿入孔31aを見たときに、燃焼器39の外形Kは、燃焼部ケーシング31の周方向に直交する方向に比較的大きいためである。
【0056】
よって、燃焼器挿入孔31aがくびれ部を有する形状に形成される場合、ガスタービン1は、互いに隣り合う燃焼器挿入孔31a同士の間の距離の減少が低減される。結果として、ガスタービン1は、隣り合う燃焼器挿入孔31a同士の間の燃焼部ケーシング31の強度の低下を低減できる。
【0057】
燃焼器挿入孔31aは、例えば、図2に示す内筒32の軸線CLに沿う方向から燃焼器39が挿入された燃焼器挿入孔31aを見たときに、燃焼器39の外形Kを全て含むように、略楕円形に形成されてもよい。この場合であっても、ガスタービン1は、互いに隣り合う燃焼器挿入孔31a同士の間の距離の減少が低減される。結果として、ガスタービン1は、隣り合う燃焼器挿入孔31a同士の間の燃焼部ケーシング31の強度の低下を低減できる。
【0058】
また、この場合、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとが複合されて形成される孔の形状よりも、略楕円形に形成される燃焼器挿入孔31aの方が、開口の形状が滑らかに形成されるため、応力が集中する部位が低減される。
【0059】
ここで、燃焼器挿入孔31aが略楕円形に形成される場合、燃焼器挿入孔31aは、例えば工作機械によってエンドミルで加工される。しかしながら、燃焼部ケーシング31の肉厚は、一般的に100mm程度ある。よって、燃焼器挿入孔31aを略楕円形に形成する場合、前記工作機械の前記エンドミルの剛性不足によって、燃焼器挿入孔31aの加工精度が低下するおそれがある。また、前記工作機械では、前記エンドミルで燃焼器挿入孔31aを形成できないおそれがある。
【0060】
しかしながら、燃焼器挿入孔31aは、上述のように、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとが複合されて、達磨形状や、ひょうたん形状のようにくびれ部を有する形状に形成されると、以下に説明する燃焼器挿入孔31aの加工方法によって容易に形成される。
【0061】
燃焼器挿入孔31aを、くびれ部を有する形状に形成する場合、燃焼器挿入孔31aは、例えば工作機械によって、まず中心C1を中心に第1円形孔31aaが内径切削バイトによる内周加工によって形成される。前記バイトは、中心C1を中心に、円を描くようにして移動しながら第1円形孔31aaを形成する。この加工方法によれば、前記バイトには、比較的大きな剛性が必要とされない。よって、前記工作機械は、燃焼部ケーシング31の肉厚に関係なく、第1円形孔31aaを精度よく形成できる。
【0062】
次に、燃焼器挿入孔31aは、前記工作機械によって、中心C2を中心に第2円形孔31abが前記バイトによって形成される。前記バイトは、中心C2を中心に、円を描くようにして移動しながら第2円形孔31abを形成する。この加工方法によれば、上述のように、前記バイトには比較的大きな剛性が必要とされない。よって、前記工作機械は、燃焼部ケーシング31の肉厚に関係なく、第2円形孔31abを精度よく形成できる。
【0063】
これにより、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとは、1つの燃焼器挿入孔31aとして形成される。上記加工方法により、燃焼器挿入孔31aは略楕円形に形成される場合よりも、容易に形成され、加工工数も低減される。
【0064】
上記構成及び上記加工方法により、ガスタービン1は、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとが複合されて、達磨形状や、ひょうたん形状のようにくびれ部を有する形状に燃焼器挿入孔31aが形成されることによって、燃焼器挿入孔31aの加工が容易化されると共に、隣り合う燃焼器挿入孔31a同士の間の燃焼部ケーシング31の強度の低下を低減できる。
【0065】
図4は、本実施形態に係る燃焼器が燃焼器挿入孔を介して燃焼部車室から引き抜かれる際の様子を示す模式図である。燃焼器39は、図4に示すように、まず内筒32と、トップハット37と、スペーサ38とが一体の状態のまま、燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる。
【0066】
図3に示すように、内筒32の軸線CLに沿う方向から燃焼器39が挿入された燃焼器挿入孔31aを見たときに、燃焼器挿入孔31aは、燃焼器39の外形Kを全て含む。よって、内筒32と、トップハット37と、スペーサ38とは、内筒32の軸線CL方向に沿って直線上を移動されても、内筒32と、トップハット37と、スペーサ38とは、燃焼器挿入孔31a近傍の燃焼部ケーシング31と干渉しない。
【0067】
次に、図4に示すように、尾筒33が、内筒32の軸線CL方向に沿って直線上を移動されて、燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる。この時、尾筒33も、燃焼器挿入孔31a近傍の燃焼部ケーシング31とは干渉しない。
【0068】
このように、ガスタービン1は、燃焼器39が回転や傾けられることなく、燃焼器39が燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる。また、ガスタービン1は、燃焼器39が回転や傾けられることなく、燃焼器39が燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36に挿入される。
【0069】
これにより、ガスタービン1は、例えば、保守点検の際のガスタービン1の組立作業または分解作業が容易化される。結果として、ガスタービン1は、ガスタービン1の組立作業または分解作業に必要とされる作業時間が低減される。
【0070】
なお、燃焼器39は、内筒32の軸線CLに沿って直線上を移動されると説明したが、本実施形態はこれに限定されない。燃焼器39は、燃焼器39が移動される方向に沿って直線上を移動されて、燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36から引き抜かれる、または、燃焼器挿入孔31aを介して燃焼部車室36に挿入されてもよい。
【0071】
この場合、燃焼器挿入孔31aは、燃焼器39が移動される方向から燃焼器39が挿入された燃焼器挿入孔31aを、燃焼器39が移動される方向から見たときに、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとで燃焼器39の外形Kを全て含むように、第1円形孔31aaと第2円形孔31abとが形成される。
【0072】
このように、ガスタービン1は、燃焼部ケーシング31の側周部に形成される孔であって、前記孔の燃焼部ケーシング31の中心軸に沿う方向の大きさが前記孔の燃焼部ケーシング31の周方向の大きさよりも大きく形成されると共に、前記孔に挿入されている燃焼器39と燃焼器39と共に移動される部材と前記孔とを燃焼器39が移動される方向から見たときに、前記孔が燃焼器39及び燃焼器39と共に移動される部材との外形Kを全て含むように形成される燃焼器挿入孔31aと、を備える。
【0073】
これにより、ガスタービン1は、例えば、保守点検の際のガスタービン1の組立作業または分解作業が容易化される。結果として、ガスタービン1は、ガスタービン1の組立作業または分解作業に必要とされる作業時間が低減される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本実施形態に係るガスタービンは、燃焼器が燃焼器挿入孔を介して燃焼部車室から引き抜かれる、または燃焼器が燃焼器挿入孔を介して燃焼部車室に挿入される構成のガスタービンに適している。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施形態に係るガスタービンの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る燃焼器近傍を拡大して示す模式図である。
【図3】本実施形態に係る燃焼器挿入孔を内筒が燃焼部車室内に配置される時の内筒の軸線に沿う方向から示す模式図である。
【図4】本実施形態に係る燃焼器が燃焼器挿入孔を介して燃焼部車室から引き抜かれる際の様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ガスタービン
10 タービン部
11 タービン車室
12 タービン静翼
13 タービン動翼
14 ディスク
15 タービン部ケーシング
20 圧縮部
21 空気取入口
22 圧縮部ケーシング
23 圧縮機静翼
24 圧縮機動翼
25 抽気マニホールド
30 燃焼部
31 燃焼部ケーシング
31a 燃焼器挿入孔
31aa 第1円形孔
31ab 第2円形孔
32 内筒
33 尾筒
33a 蒸気配管
34 燃料ノズル
35 空気取入口
36 燃焼部車室
37 トップハット
38 スペーサ
39 燃焼器
40 排気部
41 排気ディフューザ
42 排気部ケーシング
50 ロータ
51 軸受
52 軸受
60 ケーシング
C1、C2 中心
CL 軸線
K 外形
RL 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを発生させる燃焼器と、
筒状に形成されて前記燃焼器を内部に収容する燃焼部ケーシングと、
前記燃焼部ケーシングの側周部に形成されて前記燃焼部ケーシングの前記内部と外部とを連通する孔であって、前記孔の前記燃焼部ケーシングの周方向と直交する方向の大きさが前記孔の前記燃焼部ケーシングの周方向の大きさよりも大きく形成されると共に、前記孔に挿入されている前記燃焼器と前記燃焼器と共に移動される部材と前記孔とを前記燃焼器が移動される方向から見たときに、前記孔が前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材との外形を全て含んで形成される燃焼器挿入孔と、
を備えることを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記燃焼器挿入孔は、中心が異なる複数の円形孔が複合されて形成されることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
前記燃焼器が前記燃焼部ケーシングの内部に設置される際に、前記燃焼器と前記燃焼器挿入孔の内周面との間に生じる隙間に設けられて、前記燃焼器と前記燃焼器挿入孔の内周面との間に生じる前記隙間を埋めるスペーサを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスタービン。
【請求項4】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを発生させる燃焼器を内部に収容する燃焼部ケーシングの側周部に形成されて前記燃焼部ケーシングの前記内部と外部とを連通する孔であって、前記孔に挿入されている前記燃焼器と前記燃焼器と共に移動される部材と前記孔とを前記燃焼器が移動される方向から見たときに、前記孔が前記燃焼器及び前記燃焼器と共に移動される部材との外形を全て含んで形成される燃焼器挿入孔を形成する際、
所定の点を中心として円形に形成される第1円形孔を前記燃焼部ケーシングに形成する手順と、
前記所定の点とは別の点を中心として円形に形成される第2円形孔を前記第1円形孔と重なる部分を有するように前記燃焼部ケーシングに形成する手順と、
を備えることを特徴とするガスタービンの燃焼器挿入孔形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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