説明

ガスタービン用燃料の添加材混合装置

【課題】ガスタービン用の燃料に添加物を効率よく攪拌・混合するための添加材混合装置を提供するものである。
【解決手段】燃焼器に燃料を供給する配管1の内部に配置され、添加材を燃料に混合するガスタービン用燃料の添加材混合装置2であって、前記配管1の内面と隙間を空けて該配管軸心方向に沿って配置され流路断面積を制限する流路断面積制限部材3と、該流路断面積制限部材3の上流側の前記隙間に設けられた旋回翼4と、前記隙間の前記旋回翼4の下流側で前記流路断面積制限部材3の表面又はそれに対向する前記配管1の内面の少なくとも一方に設けられた複数の突起物5を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン用の油系燃料に添加物を混合するための添加材混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるデュアル燃料焚きが可能な燃焼器を有するガスタービンでは、天然ガス等のガス燃料による運転前の先行起動時やガス燃料がなくなった後の運転を蒸留油や灯油等の油系燃料により行う。しかし油系燃料をそのまま燃焼させると大量の排煙が発生するため、通常燃焼の安定性を確保するために薬剤や水等の添加材を油系燃料に混ぜて燃焼させることが行われている。ここで、親油性の高い添加材を使用する場合は予め油系燃料に添加材を混合しておくことが行われている。一方、水等の親油性の低い添加材を使用する場合は、別系統の配管から添加材を燃料供給配管に噴射した後、図10に示すように、F方向に流れてきた燃料と添加材の混成流体を旋回翼50により旋回流動させ、かつ配管1の内面に設けられた突起物60に衝突させて攪拌・混合させる添加材混合装置が用いられている。
【0003】
また、例えば下記特許文献1には、汚濁水等とオゾン空気との混合流体を攪拌・混合する攪拌装置が開示されている。この攪拌装置は、チューブ内に互いに向き合いチューブ軸芯に対して対称的に交差した2枚の半楕円形翼盤(旋回翼)と、その下流側チューブの内周壁に頭頂部をチューブ軸芯方向に向けた半球状の頭部と逆截頭円錐台状の脚部とで一体成型された1個以上の突起物で構成されている。また、当該突起物はチューブ軸芯に対し放射状に配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−124577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記親油性の高い添加材を予め油系燃料に混合する方法では、添加材は高価であるため燃料コストが増加する要因となる。一方、親油性の低い添加材を上記添加材混合装置等で混合する方法では、燃料コストを抑えることはできるが、混合特性は当該装置を通過する流体の流速に大きく依存するため、ガスタービンの燃料供給配管のように配管径が大きいものでは、流速が遅ければ混合特性が著しく悪化するおそれがある。さらに、当該装置位置の配管径を小さく絞り込むことも考えられるが、ガス燃料による通常運転時を含め圧損により流量効率の悪化を招くことになる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ガスタービン用の燃料に添加物を効率よく攪拌・混合するためのガスタービン用燃料の添加材混合装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置は、燃焼器に燃料を供給する配管内に配置され、添加材を燃料に混合するガスタービン用燃料の添加材混合装置であって、前記配管の内面と隙間を空けて該配管軸心方向に沿って配置され流路断面積を制限する流路断面積制限部材と、該流路断面積制限部材の上流側の前記隙間に設けられた旋回翼と、前記隙間の前記旋回翼の下流側で前記流路断面積制限部材の表面又はそれに対向する前記配管の内面の少なくとも一方に設けられた複数の突起物を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、流路断面積制限部材により流路断面積を小さくすることで、配管径を維持しつつ流速を増加させることができる。そして、流路断面積を狭くするために流路断面積制限部材を用いないで単に配管径を小さくする場合よりも旋回翼の直径を大きくできるため、強力な旋回流を発生させることができる。さらに配管1の内面積を広く確保できるため、多くの突起物を設置できる。従って、流速の低い配管内であっても強力な旋回流を多くの突起物に効果的に衝突させることが可能となり、燃料と添加材の攪拌・混合を効率的に行うことができる。
【0009】
また、上記ガスタービン用燃料の添加材混合装置において、前記複数の突起物が前記配管の軸線と平行かつ直行する格子状に配置されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、配管の軸線と平行かつ直行する格子状に突起物が配置されているので、旋回流の流れに突起物の配置が沿わず、突起物との衝突により旋回流が乱されやすくなり、燃料と添加材の攪拌・混合をより効率的に行うことができる。
【0011】
また、上記ガスタービン用燃料の添加材混合装置において、前記複数の突起物が前記配管の軸線に沿って円周方向の配置が順次ずれるようにして千鳥状に配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、配管の軸線に沿って円周方向の配置が順次ずれるようにして千鳥状に突起物が配置されているので、旋回流の流れに突起物の配置が沿うため旋回流は突起物により乱されにくくなる一方、添加材混合装置通過後の下流側配管遠方まで旋回流が強く残るため、燃料と添加材の攪拌・混合をより効率的に行うことができる。
【0013】
また、上記ガスタービン用燃料の添加材混合装置において、添加材を供給する添加材噴出ノズルを、前記配管1の内面の周方向に均等に配置するようにして、前記隙間に設けたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、混合流路の全域に均等に添加材を供給するので、燃料と添加材の攪拌・混合をより効率的に行うことができる。
【0015】
また、上記ガスタービン用燃料の添加材混合装置において、前記添加材噴出ノズルが前記旋回翼と前記複数の突起物の間に配置され、噴出方向が旋回翼により生じる旋回流の旋回方向に向けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、添加材の噴出方向を旋回流の旋回方向に向けられることで、旋回力を弱めないで突起物による燃料と添加材の攪拌・混合をより効率的に行うことができる。
【0017】
また、上記ガスタービン用燃料の添加材混合装置において、前記旋回翼には傾斜角を前記配管外部から調節可能な旋回翼傾斜角可変機構が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、旋回翼の傾斜角度を任意に調節可能となるため、流体の旋回角速度を幅広い流速に対応した最適な旋回角速度に設定可能となり、最適な混合特性を得ることができる。
【0019】
また、上記ガスタービン用燃料の添加材混合装置において、前記旋回翼の表面に複数の突起物が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、流路断面積制限部材表面や配管1の内面に設けていた突起物数を少なくでき添加材混合装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置によれば、ガスタービン用の燃料と添加材の攪拌・混合を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の縦断面図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の縦断面図であって、図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の突起物の平面配置図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の縦断面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の断面図であって、図4におけるB−B断面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の変形例の縦断面図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の変形例の断面図であって、図6におけるC−C断面図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の縦断面図である。
【図9】本発明の第三の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の旋回翼傾斜角可変リンク機構の構成図である。
【図10】従来用いられているガスタービン用燃料の添加材混合装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(第一の実施形態)
図1及び図2は、本発明の第一の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置のそれぞれ縦断面図及びA−A断面図である。図1及び図2に示すように、ガスタービンの燃焼器に燃料を供給する配管1の内部に添加材混合装置2が配置される。この添加材混合装置2は配管1の内面と隙間を有して配管軸心方向に沿って配置されF方向に流れる燃料の流路断面積を制限する流路断面積制限部材3と、配管1の内面と流路断面積制限部材3の表面との隙間を埋めるように設けられ、配管1の円周方向に複数配列するスワラー(旋回翼)4と、上記隙間のうち旋回翼4の下流側で流路断面積制限部材3の表面とそれに対向する配管1の内面それぞれに設けられた複数の突起物5を備えている。燃料はデュアル燃料焚きで用いられる油形燃料が主たる対象であり、添加材としては燃焼安定性を確保可能な薬剤や水等が用いられる。
【0024】
ここで、流路断面積制限部材3は配管1の内面から突出した図示しない支持部材によって支持されており、断面形状は円形が好ましいが、多角形であってもよい。また、配管軸線方向端部の形状は、錐体形状や半球形状等、流路断面積が配管1の全断面積と流路断面積制限部材3で制限された断面積との間で漸次変化するように流線形状とすることが好ましい。
【0025】
旋回翼4は、流路断面積制限部材3または配管1のいずれか一方または両方に支持されている。両方に支持されている場合は、旋回翼4を流路断面積制限部材3の支持部材として代用してもよい。
また、旋回翼4は、径方向視して翼形状の断面を有しており、翼弦(コード)方向が配管軸線方向に対して傾斜角を有するように設けられている。
【0026】
突起物5は図2に示すように配管1の中心から放射状に複数設けられ、平面的な配置パターンとしては例えば、図3(a)に示すように、配管1の軸線と平行かつ直行する格子状配置や、図3(b)に示すように、配管1の軸線に沿って円周方向の配置が順次ずれるようにした千鳥状配置が好ましい。また、配管1の内面の突起物5aと流路断面積制限部材表面の突起物5bは平面上重ならないように配置することが好ましい。なお、突起物は配管1の内面又は流路断面積制限部材3の表面の一方のみに設けてもよい。
さらに、突起物5の形状は円柱形状の他、突起物の高さ方向(配管半径方向)で流体の突起物通過距離が異なる形状、例えば、球形状、ソロバンの珠形状、多角形の板等でもよい。板の場合は配管軸線方向に対する角度を可変としてもよい。
【0027】
次に、上記構成からなるガスタービン用燃料の添加材混合装置2の作用効果について説明する。
添加材10を図示しない別系統の配管により上流側で供給した後、F方向に流れてきた燃料と添加材10の混成流体は、流路断面積制限部材3に到達する。その後、流体は流路断面積制限部材3により流路断面積が小さくなった流路で流速を増加させ、旋回翼4を通過する。旋回翼4は配管1の内面と流路断面積制限部材3の表面との隙間部分に配置されているので、旋回翼4の直径を配管1の内部で最大限に確保でき、旋回直径の大きい強力な旋回流を発生させ突起物に衝突させることができる。これにより燃料と添加材の攪拌・混合を効率的に行うことができる。
【0028】
また、突起物5を上記の通り格子状に平面配置すれば、旋回流の流れに突起物5の配置が沿わないため、突起物5との衝突により旋回流が乱されやすくなり、燃料と添加材10の攪拌・混合をより効率的に行うことができる。
さらに、突起物5を上記の通り千鳥状に平面配置すれば、旋回流の流れに突起物5の配置が沿うため旋回流は突起物5により乱されにくくなる一方、添加材混合装置2の通過後の下流側配管遠方まで旋回流が強く残るため、燃料と添加材10の攪拌・混合をより効率的に行うことができる。
【0029】
(第二の実施形態)
図4及び図5は、本発明の第二の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置のそれぞれ縦断面図及びB−B断面図である。基本的な構成の説明は第一の実施形態の説明と同様であるので省略する。本実施形態の添加材混合装置2Aでは、添加材10を供給する添加材噴出ノズル6aを配管1の内面の周方向に均等に配置して、配管1の内面と流路断面積制限部材3の表面との隙間に設ける。また、図5に示すように添加材噴出ノズル6aは配管外周のマニホールド7aから添加材10を均等に供給されるようにしてもよい。
【0030】
上記構成からなるガスタービン用燃料の添加材混合装置2Aの作用効果については、第一の実施形態の作用効果の他に、添加材10を添加材混合装置2の全域に均等に供給することで燃料と添加材10との攪拌・混合をより効率的に行うことができるという作用効果がある。第一の実施形態の場合、親油性の低い添加材10を配管1の上流側で供給すれば、添加材混合装置2に添加材10が到達するまでに燃料粒子と添加材粒子の分離及び凝着が進む。この場合、添加材10が比重の大きいものであれば、重力によって流路断面積制限部材3の下側の流路のみを通過するおそれがある。しかし、本実施形態であれば添加材10を流路断面積制限部材3の周囲の流路全域に均等に直接供給するので上記のおそれはなくなり、燃料と添加材10の攪拌・混合をより効率的に行うことができる。
【0031】
(第二の実施形態の変形例)
図6及び図7は、本発明の第二の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置の変形例であり、それぞれ当該装置の縦断面図及びC−C断面図である。基本的な構成の説明は第二の実施形態の説明と同様であるので省略する。本実施形態の添加材混合装置2Bでは、添加材噴出ノズル6bが旋回翼4と突起物群の間に配置され、噴出方向が旋回翼4により生じる旋回流の旋回方向に向けられている。また、図6及び図7に示すようにマニホールド7bは配管1の外周面と一体化した形状であってもよい。
【0032】
上記構成からなるガスタービン用燃料の添加材混合装置2Bの作用効果については、第二の実施形態の作用効果の他に、添加材10の噴出方向を旋回流の旋回方向に一致させることで、旋回力を弱めないで旋回流を突起物5に衝突させることができるため、燃料と添加材10の攪拌・混合をより効率的に行うことができるという作用効果がある。
【0033】
(第三の実施形態)
図8及び図9は、本発明の第三の実施形態に係るガスタービン用燃料の添加材混合装置のそれぞれ縦断面図及び旋回翼傾斜角可変リンク機構の構成図である。基本的な構成の説明は第一の実施形態の説明と同様であるので省略する。本実施形態の添加材混合装置2Cでは、旋回翼4のコード方向と配管軸線方向との傾斜角を調節可能な旋回翼傾斜角可変機構20を設けている。当該旋回翼傾斜角可変機構20としては、例えば図9に示すように、旋回翼4の前縁部に設けられた旋回軸21によって、旋回翼4と配管1の外部に設けられた回転レバー22の一端とが連結され、当該回転レバー22の他端をアクチュエータにより進退させることにより旋回翼4の傾斜角を変化させるリンク機構がある。なお、アクチュエータの代わりに手動レバー等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 配管
2、20 添加材混合装置
3 流路断面積制限部材
4、40 旋回翼
5、5a、5b、50 突起物
6a、6b 添加材噴出ノズル
7a、7b マニホールド
10 添加材
20 旋回翼傾斜角可変機構
21 旋回軸
22 回転レバー
23 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器に燃料を供給する配管内に配置され、添加材を燃料に混合するガスタービン用燃料の添加材混合装置であって、
前記配管の内面と隙間を空けて該配管軸心方向に沿って配置され流路断面積を制限する流路断面積制限部材と、
該流路断面積制限部材の上流側の前記隙間に設けられた旋回翼と、
前記隙間の前記旋回翼の下流側で前記流路断面積制限部材の表面又はそれに対向する前記配管の内面の少なくとも一方に設けられた複数の突起物を備えることを特徴とするガスタービン用燃料の添加材混合装置。
【請求項2】
前記複数の突起物が前記配管の軸線と平行かつ直行する格子状に配置されていることを特徴とする請求項1記載のガスタービン用燃料の添加材混合装置。
【請求項3】
前記複数の突起物が前記配管の軸線に沿って円周方向の配置が順次ずれるようにして千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項1記載のガスタービン用燃料の添加材混合装置。
【請求項4】
添加材を供給する添加材噴出ノズルを、前記配管1の内面の周方向に均等に配置するようにして、前記隙間に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一の請求項に記載のガスタービン用燃料の添加材混合装置。
【請求項5】
前記添加材噴出ノズルが前記旋回翼と前記複数の突起物の間に配置され、噴出方向が旋回翼により生じる旋回流の旋回方向に向けられていることを特徴とする請求項4記載のガスタービン用燃料の添加材混合装置。
【請求項6】
前記旋回翼には傾斜角を前記配管外部から調節可能な旋回翼傾斜角可変機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一の請求項に記載のガスタービン用燃料の添加材混合装置。
【請求項7】
前記旋回翼の表面に複数の突起物が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一の請求項に記載のガスタービン用燃料の添加材混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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