説明

ガスタービン航空エンジンのためのCMCフローミキサのローブ構造体を製造する方法

マルチローブスカートを形成している部分から下流に延びた環状部分を有するガスタービンのフローミキサのためのローブ構造体を製造する方法であって、ローブ構造体の環状部分に対応する第1のプリフォーム部分(111)と、ローブ構造体のマルチローブスカートに対応する第2のプリフォーム部分(112)とを有する繊維プリフォームを得るために、この繊維プリフォームの構成要素が、マルチローブスカートのプリフォーム部分のローブを通る流れの方向に延びた接続ライン(121)に沿って、少なくとも部分的に一緒に組み合わせられるように、一緒に組み合わせられ、かつ製造されるローブ構造体の形状に対応する成形具によって成形された繊維テクスチャの構成要素から、耐火性繊維の繊維プリフォームを形成することと、少なくとも部分的にセラミックのマトリックスによって、組み合わせられ成形された繊維プリフォームを高密度化することとを具備する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイパスガスタービン航空エンジンのための、セラミックマトリックス複合(CMC)材料でできたフローミキサを形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
バイパスガスタービン航空エンジンでは、ファンを通って入る流入空気の流れが、コンプレッサ、燃焼室及びタービンを通過する一次流れと、コンプレッサ、燃焼室及びタービンを迂回する二次流れ、即ちファン流れとに分けられる。出口で、燃焼ガスを含む「熱い」一次流れと「冷たい」ファン流れとが、一緒に混合される。
【0003】
射出ジェットのノイズを減少させるために、これら流れ間の混合を促進するローブミキサを使用することが知られている。
【0004】
このようなローブミキサの重さを最小にし、さらに、良い機械的挙動を維持するために、ローブミキサの形成にCMC材料を使用するという提案がなされている。CMC材料は、熱構造特性、即ちこれらCMC材料が高温でこのような特性を維持する能力を備えた構造部品として機能することを可能にする機械特性が知られている。代表的なCMC材料は、少なくとも部分的にセラミックのマトリックスにより高密度化された耐火性繊維(炭素繊維かセラミック繊維)でできた繊維強化材を含む。
【0005】
CMCローブミキサは、文献WO2006/035186に記載されている。この文献に記載されたミキサは、CMC材料で別々に形成されて、一緒に組み合わせられるセクタの形態である複数のローブ構造体でできており、また、ミキサには、内部補強リングが設けられている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、複数のセクタを一緒に組み合わせる、又は単一片のCMCローブミキサ、即ち複数のCMCセクタを一緒に組み合わせることによって得られないミキサを構成することによって、完全なミキサを形成する目的のために、ローブミキサのセクタを構成する展開可能でない(non-developable)CMCローブ構造体が得られるのを可能にする特定の方法を提供することである。
【0007】
この目的は、ガスタービンのフローミキサのためのローブ構造体を製造する方法であって、このローブ構造体は、ローブ構造体の長軸の周りに配置された複数のローブを有するマルチローブスカートを形成している部分から下流に延びた上流の環状部分を有し、この方法は、ローブ構造体の前記環状部分に対応する第1のプリフォーム部分と、ローブ構造体の前記マルチローブスカートに対応する第2のプリフォーム部分とを有する組み合わせられた繊維プリフォームを得るために、この繊維プリフォームの構成要素が、前記マルチローブスカートのプリフォーム部分の前記複数のローブを通る流れの方向にそれぞれ実質的に延びた複数の接続ラインに沿って、少なくとも部分的に一緒に組み合わせられるように、一緒に組み合わせられ、かつ、製造されるローブ構造体の形状に対応する形状の成形具によって成形された繊維テクスチャの複数の構成要素から、製造されるローブ構造体の形状に対応する形状を有する耐火性繊維の繊維プリフォームを形成することと、少なくとも部分的にセラミックのマトリックスによって、前記組み合わせられかつ成形された繊維プリフォームを高密度化することとを具備する方法によって果される。
【0008】
「環状部分」という用語は、ここでは、リングのセクタ(長軸がリングの軸線である)又は完全なリングを意味して使用される。同様に、「マルチローブスカート」という用語は、ここでは、完全なマルチローブスカートのセクタ又は完全なマルチローブスカートを意味して使用される。
【0009】
従って、プリフォームを高密度化することによって得られる繊維プリフォームとローブ構造体とは、形成されるミキサのセクタに対応する形状を有することができ、ミキサは、ミキサの軸線の周りで複数のローブ構造体を一緒に組み合わせることにより得られる。
【0010】
変形例では、繊維プリフォームは、形成される完全なミキサの形状に対応する形状であることができ、また、一旦プリフォームが高密度化されると、複数のセクタを一緒に組み合わせる必要なく、ミキサが得られる。
【0011】
本発明は、流れ方向に延びた複数のラインに沿った複数のローブにプリフォームの複数の構成要素をそれぞれ組み合わせることにより、ミキサを通るガスの流れに対する外乱を最小にすることによって、及び、展開可能でない形状を有するプリフォームであるにもかかわらず、組み合わせられたプリフォームを高密度化することにより、単一部品としてローブ構造体を形成することによって、空力水頭損失が制限されるので、特に優れている。
【0012】
繊維プリフォームの複数の構成要素は、縫合(stitching)によって、又はヤーンか針を埋め込むことによって、複数の接続ラインに沿ってそれぞれ組み合わせられることができる。
【0013】
前記複数の接続ラインは、好ましくは、複数のローブの側面に沿って、又はこれらローブの外側頂部に沿ってそれぞれ延びている。
【0014】
繊維プリフォームの複数の構成要素は、重なる構成要素の隣接している縁部と、又は構成要素の隣接している縁部と重なるアセンブリストリップによって一緒に組み合わせられることができる。
【0015】
構成要素は、好ましくは、ガスの流れを乱す可能性があるかなり余分な厚みを有するのを避けるために、隣接している縁部の重なりゾーンで減少された厚さでできていることができる。
【0016】
繊維プリフォームを形成する繊維テクスチャ要素は、立体織り又はマルチレイヤ織りにより形成されることができ、かくして、繊維テクスチャ要素に、剥離に対する良い耐性を与える。
【0017】
好ましくは、繊維プリフォームを形成する繊維テクスチャ要素は、セラミック繊維で、特に炭化ケイ素(SiC)繊維でできている。これは、セラミックのマトリックスの高密度化の後に得られたCMC材料が高い剛性(stiffness)を有することを確実にし、かくして、ローブのための補強リングを与える必要性を回避する。このようなリングの存在は、空力的観点から不利である
一実施の形態では、本方法は、ストリップの形態で繊維テクスチャ要素を形成することと、ストリップを通り、ストリップの一方の側面からほぼ垂直に、ストリップの幅未満である長さに亘って、この側面から延びた複数の切込みを形成することと、繊維テクスチャからセクタ形状の要素を切り取ることと、前記セクタの縁部と前記ストリップの対応する切込みの縁部とを一緒に接続することによって、ストリップと各セクタとを組み合わせることとを具備し、かくして、各セクタが、切込みの縁部の間に挿入されることとを具備する。
【0018】
前記ストリップ形状の要素は、切込みの部分の厚さよりも厚い切込みでない部分の厚さに関して、立体織りによって形成されることができる。かくして、ローブ構造体の環状部分に対応する第1の部分を直接得ることが可能であり、それは、マルチローブスカートに対応する第2のプリフォーム部分の厚さよりも厚い厚さを有する。
【0019】
変形例では、ローブ構造体の前記環状部分に対応する前記第1のプリフォーム部分は、前記ストリップ形状の要素に繊維テクスチャの少なくとも1つの追加環状プライを重ねることによって得られることができる。そして、追加環状プライは、ローブのこれらのスターターゾーンを強化するために、前記ストリップ形状の要素における切込みの端部のマルチローブスカートに対応するプリフォーム部分で前記複数のローブのスターターゾーンを覆うことができる。
【0020】
他の実施の形態では、本方法は、各々が、ローブ構造体の前記環状部分に対応する前記第1のプリフォーム部分を構成している第1の環状プライの少なくとも1つのセクタと、ミキサの前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分のセクタとを具備する、複数の繊維テクスチャ要素を形成することと、前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分のセクタの隣接している縁部に少なくとも沿って、これら要素を一緒に組み合わせることと、を具備する。
【0021】
ローブ構造体、少なくとも1つの環状部分に対応する第1のプリフォーム部分を形成するために、繊維テクスチャの追加環状プライが、少なくとも前記第1の環状プライのセクタを覆って加えられることができる。そして、追加及び実質的な環状プライが、前記複数のローブのスターターゾーンを強化するために、前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分の複数のローブのスターターゾーンを覆うことができる。
【0022】
また、本発明は、上述のように規定された方法で製造されたローブ構造体を形成する複数のセクタを一緒に組み合わせることによって得られる、又はこのような方法で製造されたローブ構造体によって直接形成されるガスタービンのためのCMCフローミキサを供給する。
【0023】
また、本発明は、このようなCMCミキサに適したバイパスガスタービン航空エンジンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の方法により得られることができる種類のローブミキサの斜視図である。
【図2】図2は、図1のミキサの装着方法を示す概略的な断片の断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る方法を実行する際に使用するのに適した成形具要素の概略的な斜視図である。
【図4】図4は、本発明に係る方法を実行する際に使用するのに適した成形具要素の概略的な斜視図である。
【図5】図5は、本発明に係る方法を実行する際に使用するのに適した成形具要素の概略的な斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態におけるローブ構造体のための繊維プリフォームの構成要素を形成しており、切込みを備えたストリップの形態での要素の断片の図である。
【図7】図7は、図6のVII−VIIの面の断面図である。
【図8】図8は、図6のVIII−VIIIの面の断面図である。
【図9】図9は、本発明の第1の実施の形態におけるローブ構造体のための繊維プリフォームの構成要素を形成するために、セクタ形状の要素から切り取られることができる繊維テクスチャを示す部分図である。
【図10】図10は、図9のX−Xの面の断片の断面図である。
【図11】図11は、本発明の第1の実施の形態において、図8の繊維テクスチャから切り取られたセクタ形状の要素と一緒に組み合わせられた図5のストリップ形状の要素を示す断片の概略図である。
【図12】図12は、本発明の第1の実施の形態において、セクタ形状の要素の隣接している縁部と、ストリップ形状の要素の切込みとの間の重なりを有するアセンブリを示す拡大した部分の詳細図である。
【図13】図13は、ローブ構造体のための繊維プリフォームの立体織り構成要素の織り方を示す図である。
【図14】図14は、ローブ構造体のための繊維プリフォームの立体織り構成要素の織り方を示す図である。
【図15】図15は、ローブ構造体のための繊維プリフォームの立体織り構成要素の織り方を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第1の実施の形態の変形例において、アセンブリストリップを使用して、セクタ形状の要素の隣接している縁部と、ストリップ形状の要素の切込みとの間の重なりを有するアセンブリを示す拡大した部分の詳細図である。
【図17】図17は、図3の成形具要素に形成されるように与えられた発明の第1の実施の形態に係る構成要素のアセンブリでできたローブ構造体のための繊維プリフォームを示す断片の斜視的な概略図である。
【図18】図18は、ローブ構造体の環状部分に対応するプリフォームの部分のための繊維テクスチャの追加環状プライの使用を示す断片の斜視的な概略図である。
【図19】図19は、図18のXIX−XIXの面の断片の断面図である。
【図20】図20は、図18のXX−XXの面の断片の断面図である。
【図21】図21は、本発明の第2の実施の形態において、ローブ構造体のための繊維プリフォームの構成要素の図である。
【図22】図22は、図21のXXII−XXIIの面の断片の断面図である。
【図23】図23は、図21に示された種類のセクタ形状の要素が、本発明の第2の実施の形態においてどのように互いに組み合わせられるかを示す部分的な概略図である。
【図24】図24は、本発明の第2の実施の形態において、セクタ形状の要素の隣接している縁部の間の重なりを備えたアセンブリを示す拡大した部分の詳細図である。
【図25】図25は、本発明の第2の実施の形態の変形例において、アセンブリストリップを使用したセクタ形状の要素の隣接している縁部の間のアセンブリを示す拡大した部分の詳細図である。
【図26】図26は、図4の成形具要素に成形されるように与えられた本発明の第2の実施の形態の構成要素を一緒に組み合わせることによって形成されたローブ構造体のための繊維プリフォームを示す部分的な概略図である。
【図27】図27は、特に、ローブ構造体の環状部分に対するプリフォームの部分に対して使用された追加繊維プライを示す図26のXXVII−XXVIIの面の断片の断面図である。
【図28】図28は、特に、ローブ構造体の環状部分に対するプリフォームの部分に対して使用された追加繊維プライを示す図26のXXVIII−XXVIIIの面の断片の断面図である。
【図29】図29は、本発明の第1又は第2の実施の形態で得られるようなローブ構造体の概略的な斜視図である。
【図30】図30は、本発明のさらなる他の実施の形態で得られるようなローブ構造体の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の方法により得られることができる種類のガスタービン航空エンジンのためのローブフローミキサ(lobed flow mixer)を示している。
【0026】
このようなミキサの一般的な形状は、既知である。このミキサは、ミキサの長軸5の周り全体に配置された複数のローブ13を有する完全なマルチローブ構造体、即ちスカートを形成している部分3の近くに下流に延びたリング形状部分2を有する。「上流」並びに「下流」という用語は、ここでは、ミキサを通るガスのストリームの一般的な流れの方向に関して使用される。複数のローブ13は、これらローブの1つであるローブ13aを除いて同様の形状であり、このローブ13aは、エンジンが支持マストに接続されるゾーンに位置されている。このローブ13aは、幅が広くされ、かつ平らにされた外側頂部(crest)を与える。
【0027】
本発明の文脈(context)では、ミキサ1は、CMC材料でできている。CMC材料という用語は、ここでは、耐火性繊維(炭素かセラミック)ででき、少なくとも部分的にセラミックのマトリックスによって高密度化された(緻密にされた)(densified)繊維強化材を含む材料を含むように使用される。少なくともマトリックスの外面は、セラミックでできている。耐火性の酸化物タイプの化合物が、ここでは、「セラミック」という用語に含まれることが理解される。このようなCMC材料の代表例は、C/SiC材料(炭素繊維の強化材と炭化ケイ素のマトリックス)、SiC/SiC材料(SiCの強化繊維とSiCのマトリックス)並びにC/C−SiC材料(炭素繊維の強化材と、炭素(繊維に近い)とSiCとの両方のマトリックス)である。例えば熱分解炭素(PyC)又は窒化ホウ素(BN)の中間プライが、繊維とマトリックスとの間に介在されることができる。本発明の文脈では、繊維強化材を形成するためにSiC繊維を使用することが好ましく、このSiC繊維には、PyCの中間相コーティングが予め設けられることができる。
【0028】
図2に示されるように、ミキサ1は、金属の接続タブ7によって内側金属シュラウド6との接続により支持されている。一端部では、接続タブは、内側シュラウド6と一体的に形成されたフランジにボルトで固定されている。外側の他端部では、接続タブ7は、ミキサのリング2にボルトで固定されている。接続タブ7は、弾性変形に対する容量を与えるように、湾曲形状であり、かくして、CMC材料でできたミキサと金属でできた内側シュラウド6との間に熱発生源の差の拡大を受けるように機能する。他の弾性変形可能な接続タブ(図示されない)は、内側シュラウド6を外側シュラウド8に接続するように、接続タブ7と交替する。これらシュラウド6、8は、ガスノズルの排気ゾーンのためのケーシングでミキサ1を支持するように機能する。このようなアセンブリは、上記文献WO2006/035186に記載されている。
【0029】
図示された例では、ミキサ1は、ここでは3つのセクタである複数のCMCセクタ10を一緒に組み合わせることによって形成される。これらセクタは、実質的に等しい所定の角度に亘って延びることができる。各セクタ10は、ミキサのリング2のセクタを形成している環状部分11と、ミキサのマルチローブスカート3のセクタを形成している複数のローブ13を有するマルチローブスカート12とを備えたローブ構造体を形成している。これらセクタ10は、例えば、ボルト留め又はリベット留めにより、隣接している縁部と一緒に組み合わせられる。
【0030】
本発明の方法の特徴によると、CMCローブ構造体10の強化材を構成している繊維プリフォームは、繊維テクスチャプリフォームの構成要素でできており、これら要素は、完全なローブ構造体プリフォームを構成するように、互いに組み合わせられ、成形具要素に成形される。
【0031】
ローブ構造体10の形状に対応する形状を有するこのような成形具要素、即ち前者20が、図3に示されている。これは、ローブ構造体の環状部分11に対応する環状部分21と、ローブ構造体のマルチローブスカート12に対応するマルチローブ部分22とを有する。このマルチローブ部分は、長軸25の周りの部分に配置され、ローブ構造体の複数のローブ13に対応する複数のローブ23を有する。
【0032】
また、プリフォームを形成するとき、又は部分的な高密度化により強固化される(consolidated)間、繊維プリフォームが前者20のリリーフに対して密接に係合することによって形成されるのを可能にするように、複数のシェーパ要素が設けられている。
【0033】
従って、図4は、シェーパキー30を示している。これは、2つの隣接しているローブ23の外側頂部の間に係合するのに適するように、成形具20のローブ23の形状に合う形状のシュラウド形状部分31と突出部分33とを有し、かくして、複数のキー30と前者20との間に挟まれた繊維テクスチャ20(図示されない)を形成する。形成されたローブ構造体が、異なる形状の複数のローブを有するとき、対応する異なる形状の複数のキーが使用される。図示された例では、キー30は、周辺方向に対して複数のローブ23の間のピッチに対応するセクタを占めている。また、マルチローブ構造体22のこのような形状が可能であれば、より大きなサイズのセクタを覆うキーが使用されることができる。
【0034】
図5は、例えばエラストマでできた比較的厚い可撓性のメンブレン40を示している。このメンブレンは、形成されるローブ構造体の形状に対応する。キー30とメンブレン40とが使用される方法が、以下に詳細に述べられる。
【0035】
図6ないし図12を参照すると、本発明の第1の実施の形態において、ローブ構造体10のための繊維プリフォームがどのようにして得られるかの説明がなされる。
【0036】
繊維テクスチャのストリップ101が形成されて、複数のカット部、即ち複数の切込み102が、ストリップの長手方向の側縁部101aの一方からストリップの全体の厚さを貫通して、縁部101aにほぼ垂直な方向に形成される。これら切込み102は、それぞれ同じ幅であり、縁部101aに対向している縁部101bに沿って切られていないゾーン110を残すように、ストリップ101の幅のみの部分に亘って延びている。これら切込みのピッチpは、ローブ構造体のプリフォームの複数のローブが形成され始める位置の回りのピッチに対応しており、即ち、製造されるローブ構造体の複数のローブ13の開始位置13b(図1)の間のピッチに対応する。
【0037】
ストリップ101のゾーン110は、ローブ構造体のプリフォームの第1の部分を形成しており、このゾーンは、環状部分11に対応し、複数のローブ13との接続とほぼ同じくらいの長さだけ延びている。図7に示されるように、ゾーン110には、少なくとも縁部101bからの幅の部分に亘って厚さe1が与えられることができ、この厚さは、リング2においてより厚い厚さを得るように、ストリップ101の残りの部分120の厚さe2よりも厚く、かくして、ミキサが装着される。
【0038】
図8に示されるように、マルチローブスカート12に対応するローブ構造体プリフォームの第2の部分を形成するストリップ101のゾーン120では、切込み102の縁部に沿って、マージンゾーン104aと106aとにおける厚さe2よりも薄い厚さe3を有することが可能である。従って、ローブ構造体の繊維プリフォームの他の構成要素を備えたアセンブリが、以下でさらに詳細に説明されるように、かなりの余分な厚さが生じることなく、マージンゾーン104aと106aとに重なりが生じることができる。
【0039】
ストリップ101と関連するローブ構造体の繊維プリフォームの他の構成要素は、図9に示されるストリップ105のような繊維テクスチャのストリップから切り取られることによって効果的に得られることができるセクタ形状の要素130である。
【0040】
図9では、鎖点線は、要素130が切り取られる線を示している。要素130は、一般的にほぼ三角形であり、各々が、ベース132と2つの縁部134と136とを有する。要素130のベース132は、ストリップ105の側部105aと、対向している側部105bとに沿って、交互に延びている。図10に示されることができるように、ストリップ105は、要素130の縁部134と136とに沿ったよりわずかな厚さe5のマージンゾーン134aと136aとを除いて、ストリップ101のゾーン120の厚さe2とほぼ等しい厚さe4を有する。マージンゾーン134aと136aとの幅は、マージンゾーン104aと106aとの幅とほぼ等しい。
【0041】
セクタを形成する要素130は、図11に示されるように、ストリップ105から切り取られた要素130を挿入するために、これら縁部104と106とを離して広げることにより切込み102を開けることによって、ストリップ101と組み合わせられる。そして、マージンゾーン104aと134aとは、マージンゾーン106aと136aとに対して互いに重なる。ストリップ105の幅は、要素130が、前記縁部の全長に亘って切込み102の縁部104と106との間の空間を占めるように選択されており、使用される要素130と同じくらい、切込み102があり、各要素130は、それぞれの切込みの縁部の間に挿入される。
【0042】
図12は、マージンゾーン104aと106aと、マージンゾーン134aと136aとのそれぞれの重なりを示している。厚さe3とe5とは、かなりの余分な厚さが生じるのを避けるために、これらの合計の厚さは、厚さe2とe4とにほぼ等しいような方法で、例えば互いに等しいように選択されている。要素130とストリップ101との接続は、縫合ヤーン140を使用して、これらの重ねられたマージンゾーンで縫合することによって、効果的に形成される。縫合は、本縫いか鎖縫合を使用して果されることができる。他の接続方法が、例えば、文献US4628847に記載されているようにヤーンを埋め込むことによって、又は文献WO97/06948に記載されているように針又はピンを埋め込むことによって、又は接着剤によって、考えられ、接続が、それらが一緒に組み合わせられた後に、繊維プリフォームの構成要素を共に高密度化する(co-densifying)ことによって完了する。
【0043】
ストリップ101と105とは、厚さが可変のインタロックタイプの立体織りによって、効果的に形成される。
【0044】
上述のように、繊維プリフォームは、好ましくはセラミック繊維で、特にSiC繊維でできている。そして、織り方は、"Tyranno ZMI"という名前で日本の供給業者宇部興産株式会社により販売されているヤーン、又は"Nicalon"という名前で日本の供給業者日本カーボンにより販売されているヤーンを使用して果されることができる。織りを促進し、織りの間、ヤーンが損傷するのを避けるために、SiCヤーンに影響を与えることなく、続いて除去されることができる材料でヤーンを覆うことが可能であり、例えば、材料は、水に溶解されることによって除去されることができるポリビニルアルコール(PVA)でできたヤーンで覆われることができる。
【0045】
図13ないし図15は、厚さe1=約3ミリメートル(mm)、e2=e4=約1.5mm、e3=e5=0.75mmを有する織物を得るために、このようなヤーンと共にそれぞれ使用される基本的な織り方(weave)を示している。
【0046】
インタロックタイプの織り方を備えた立体織りは、各縦糸ヤーンが、横糸ヤーンの複数のプライと一緒に接続し、縦糸ヤーンの経路が同一である織り方である。
【0047】
縦糸ヤーンと横糸ヤーンとのプライを取り除く、又は加えることによって、1つの厚さから他の厚さに次第に変化させることができる。
【0048】
例えば、マルチプレーン、マルチサテン又はマルチサージタイプの織り方を備えたマルチレイヤ織りである他の立体織りの方法が使用されることができる。厚さが可変の繊維テクスチャを織るのに適したこのような織り方は、文献PCT FR2006/050617に特に記載されている。
【0049】
繊維テクスチャの繊維がセラミックで、特にSiCでできているとき、縫合ヤーン140は、SiCできていることができ、例えば、繊維テクスチャを形成するために使用されるのと同一であることができる。同様に、炭素で作られた縫合ヤーンを使用することが可能である。
【0050】
図16は、実施の形態の変形例を示しており、要素130が、マージンゾーン104a、134aと106a、136aとを覆うアセンブリストリップ150によってストリップ101と組み合わせられている。マージンゾーンは、端部を揃えて配置されており、重ねられていない。ストリップ150は、例えば立体織りにより得られる繊維テクスチャから切り取られ、ストリップ101と要素130との繊維テクスチャと同じ種類である。アセンブリストリップの厚さは、かなりの余分な厚さをもたらすのを避けるように選択される。ストリップ101と要素130との間の接続は、例えば、ヤーン160を縫合することによって、マージンゾーン104a、134aと106a、136aとにアセンブリストリップ150を縫合することによって形成される。
【0051】
ストリップ101が要素130と組み合わせられた後に、アセンブリは、製造されたローブ構造体に所望の繊維プリフォームを得るように、前者20に形成される。そして、アセンブリは、ストリップ101のゾーン120により形成され、セクタ形状の要素130は、ローブ構造体のマルチローブスカート12に対応する繊維プリフォーム部分を得るために、前者20のマルチローブ部分22に与えられる。繊維プリフォームは、シェーピングキー30(図4)の助けと、メンブレン40(図5)の助けとにより形成されることができる。
【0052】
図17は、このようにして得られるようなローブ構造体の繊維プリフォーム100の部分を示している。プリフォーム100は、前者20の環状部分21にストリップ101のゾーン110を成形することにより形成され、ローブ構造体の環状部分11に対応する環状プリフォーム部分111と、前者20の部分22を成形することによって形成され、ローブ構成体のマルチローブスカート12に対応するマルチローブプリフォーム部分112とを有する。
【0053】
図17に示される例では、繊維プリフォーム100は、プリフォームの構成要素(即ち、ストリップ21に形成された切込みの縁部に沿って縫合されたマージンゾーン)の間の接続ライン121が、プリフォーム部分122の複数のローブ113の側面に沿って延びるようにして、前者20に配置されている。このような配置は、ミキサにおいて、プリフォーム100が高密度化された後に得られたローブ構造体を組み合わせることによって製造され、これら接続ラインは、機械的に最も少ない圧力がかけられるミキサのゾーンに位置されているので、効果的である。
【0054】
変形例では、プリフォームの構成要素の間の接続ラインは、複数のローブ113の外側頂部に沿って配置されることができる。また、このような構成は、ミキサにおいて、最終的に得られ、接続ラインが最低温度に晒されているミキサのゾーンに位置されているので、効果的である。
【0055】
どちらの場合でも、接続ラインは、最終的に得られたミキサを通過するガスの流れの流れ方向にほぼ延びているので、接続ラインの存在によって引き起こされるいかなる表面不規則性も、ガスのストリームの流れをほとんど乱さない。
【0056】
ストリップ101とセクタ形状の要素130の寸法は、製造されるローブ構造体の形状に対応する形状のプリフォーム100を得るために、好ましくは、プリフォームが高密度化された後に、好ましくは果される最終的な機械加工を考慮して、当然に選択される。従って、ストリップ101の長さは、プリフォーム部分111に望まれるように、周囲の長さの関数として選択され、一方、ストリップ101の長さは、複数のローブ113が形成された後、軸方向にプリフォーム100に対して所望の寸法の関数として選択される。さらに、セクタ形状の要素130のベース132の長さは、プリフォーム部分112の下流の縁部により形成された層の展開された長さに対応する全長を得るために、ストリップ101の長さに加えるように選択される。
【0057】
図18は、実施の形態の変形例であり、ストリップ101が、(より薄い厚さである切込み102のそばのマージンゾーンは別として)プリフォーム部分112の厚さと等しいプリフォーム部分111の厚さを示している。
【0058】
ローブ構造体の環状部分に対応するプリフォーム部分の余分な厚さは、例えばストリップ101と同じ種類の追加繊維プライ107を加えることによって与えられることができる。図19並びに図20に示されるように、プライ107は、切込み102のところに位置している複数のローブ113のスターターゾーンを覆い、強化するために、ゾーン110の幅に実質的に対応する第1の値と、切込み102を備えたレジスタにおける第1の値よりも大きい幅の第2のゾーンの間で変化する幅である。
【0059】
追加の繊維プライ107は、例えば、複数の縫合、針又はピンの嵌め込み、又は接着剤によって、要素130と同じ方法でストリップ101に接続されることができる。
【0060】
本発明の第2の実施の形態が、図21ないし図26を参照して以下に説明される。
【0061】
第2の実施の形態では、ローブ構造体繊維プリフォームは、複数の構成要素を組み合わせて成形することにより形成され、各々が、ローブ構造体の環状部分に対応する第1のプリフォーム部分を構成している少なくとも1つのプライのセクタと、ローブ構造体のマルチローブスカートに対応する第2のプリフォーム部分のセクタとを有する。
【0062】
図21は、2つのセクタ形状の部分210と220とを有する繊維テクスチャの単一片として形成されたこのような構成要素201のダイヤグラムである。部分220は、部分210が延びている角度αよりも大きい角度βだけ延びている。
【0063】
要素201は、図22に示されることができるように、長縁部204と206とに沿ったよりわずかな厚さe7であるマージンゾーン204aと206aとを除いて、一定の厚さe6である。
【0064】
複数のセクタ形状の要素201が、図23並びに図24に概略的に示されるように、隣接している縁部に沿って延びたマージンゾーンの互いの重なりと一緒に組み合わせられる。一緒に組み合わせられた要素201は、例えば、互いに重なっているマージンゾーンに沿って縫合することによって、要素201を構成している繊維テクスチャと好ましくは同じ種類の縫合ヤーン240を使用することによって、互いに接続される。他のアセンブリ技術、特に針かピンを埋め込む又は接着剤を使用して果される技術が使用されることができる。厚さe7は、マージンゾーン204aと206aとが互いに重なるとき、かなり余分な厚さをもたらすのを避けるために、厚さe6の半分とほぼ等しいように選択されることができる。
【0065】
そして、リングセクタ形成部分210を結合させることによって形成される環状部分を備えたリングのセクタの一般的な形状を有することを得ることができ、セクタ220を結合させることによって形成された平面部分(展開されることができない)を備えている。
【0066】
繊維プリフォームを構成している要素201は、例えば、インタロックタイプの立体織りで、本発明の第1の実施の形態について上述された方法で、より薄いマージンゾーンを使用して形成されることができる。これら構成要素201を形成するために、第1の実施の形態と同様、上述したのと同じ種類のヤーンを使用することが可能である。
【0067】
図25は、実施の形態の変形例を示しており、要素201は、互いを重ねるために決して置かれないマージンゾーン204aと206aとを重ねたアセンブリストリップ250によって互いに組み合わせられている。テクスチャが、例えば、立体織りで得た種類を織って要素201の繊維テクスチャと同じ種類の繊維からストリップ250を切り取る。アセンブリストリップ250の厚さが、いかなるかなりの余分な厚さをももたらすのを避けるように選択することができる。要素201とアセンブリストリップ250との接続は、例えば、ヤーン260を縫合することによってマージンゾーン204aと206aにアセンブリストリップ250を縫合することによって、作られている。また、針かピンを埋め込む、又は接着剤を使用することによって接続をなすことも可能であろう。
【0068】
要素201を一緒に組み合わせて接続した後、アセンブリは、製造されるローブ構造体に所望のプリフォームを得るために前者20で形成される。セクタ形状の組み合わせられた部分210は、ローブ構造体の環状部分に対するプリフォーム部分211を構成しているプライを得るために、前者20の環状部分21に与えられる。セクタ形状の組み合わせられた部分220は、製造されるローブ構造体のマルチローブスカートに対応するマルチローブプリフォーム部分212を得るために、可能であればシェーパキー30又はメンブレン40の助けにより、前者20のマルチローブ部分22に与えられる。
【0069】
図26は、このようにして得られたローブ構造体のプリフォーム200の一部分を示している。プリフォーム部分211の厚さは、例えば、要素201と同じ種類の追加繊維プライ207を加えることによって強化されることができる。図26ないし図28に示されるように、プライ207は、プリフォーム部分210の幅にほぼ対応する第1の値と、これより大きな第2の値との間で変化する幅であり、かくして、これらゾーンを強化するために、プリフォーム200の複数のローブ213のスターターゾーンと同じくらいの長さだけ延びている。プライ207と同様であるが、部分210の幅に対応する一定の幅を有することが可能なさらなる追加プライ208は、プリフォーム部分211の他の側に配置されることができ、このプライ208は、一緒に組み合わせられた要素201のアセンブリを与える前に、前者20の環状部分21に配置される。これらプライ207、208は、例えば、縫合、針かピンを埋め込むこと又は接着剤を使用することによって、セクタを形成している部分210に接続されることができる。
【0070】
要素201は、追加プライを加える必要なく、比較的厚い厚さの環状プリフォーム部分211を直接得るために、セクタ210においてより比較的厚い厚さで形成されることができる。
【0071】
繊維プリフォーム200は、前者20に配置されており、また、セクタを形成している部分220の間のアセンブリラインは、好ましくは、プリフォーム100に関する上述の理由により、(図26に示されるように)ローブの側面に沿って、又はローブの外側頂部に沿って位置されるようにして成形されている。
【0072】
要素201の寸法は、可能であれば、プリフォームが高密度化された後、任意の最終的な機械加工を考慮に入れて、製造されるローブ構造体の形状に対応する形状のローブ構造体のプリフォーム200を得るように選択される。特に、セクタ形状の部分220は、所望のローブ213が十分に形成されることが可能な大きさである角度βだけ延びる必要がある。
【0073】
上記では、プリフォームを組み合わせる目的のために互いに重なる、又はアセンブリストリップと重なるファイバプリフォームの構成要素のマージンゾーンは、比較的薄い厚さであることが考えられる。それにもかかわらず、これは必須ではなく、プリフォームの構成要素の組み合わせの間に生じた余分な厚さが、最終的に得られるようなミキサの空気力学的挙動にほとんど影響しなければ、重なるマージンゾーンの厚さが比較的小さい必要はない。
【0074】
繊維プリフォーム100又は200は、乾いた繊維テクスチャ要素(即ち、含浸されていない)から、又は予め含浸された繊維テクスチャ要素から得られることができる。
【0075】
テクスチャが予め含浸されていないとき、及び少なくとも部分的にセラミックでできたマトリックスでプリフォームを高密度化する前に、先の工程は、強固化マトリックスによる部分的な高密度化で繊維プリフォームを強固化することにより果されることができる。この強固化工程は、例えば、好ましくは溶剤に溶解された樹脂であるセラミック前駆体又は炭素前駆体の溶液の組成物を含む繊維プリフォームを含浸させて、溶剤を除去した後、必要であれば、樹脂を硬化させた後、熱処理で前駆体を変換することにより果されることができる。一例として、SiC前駆体は、ポリカーボンシラン、ポリチタンカーボンシラン、ポリシラザン又はポリシロキサンのタイプの樹脂であるが、例えば、炭素に対する前駆体は、フェノール樹脂のような比較的高いコークス含有量を有する樹脂である。繊維プリフォームを強固化する方法は、文献WO2006/090087、FR06/54542並びにUS5846379に特に記載されており、これら方法は、繊維とマトリックスとの間に中間相コーティングを形成することを含むことが理解される。例えば、熱分解炭素又は窒化ホウ素(BN)であるこのような中間相コーティングは、プリフォームの構成要素を形成するために使用される繊維テクスチャに予め形成されることができる、あるいはこれら要素が一緒に組み合わせられた後に形成されることができる。そして、中間相コーティングの形成は、化学蒸着浸透により果されることができる。
【0076】
強固化目的のために、乾いた繊維プリフォーム100又は200は、例えば、雌型要素を構成しているシェーパキー30によって、雄型を構成している前者20に成形される。シェーパキーは、取り外されて、メンブレン40が、所定の位置に入れられる。繊維プリフォームは、強固化マトリックスのために液体の前駆体と共に含浸される。プリフォームの含浸は、前者20とメンブレン40との間の空間を取り除くことによってアシストされることができ、続いて、好ましくは、メンブレンが漏れないフィルムで覆われる。
【0077】
樹脂が乾燥され、硬化された後、熱処理が、セラミック又は炭素中の熱分解により前駆体樹脂を変形させるように果され、かくして、セラミック又は炭素マトリックスにより部分的に高密度化された強固化繊維プリフォームを得る。強固化プリフォームは、前者20とメンブレン40によって規定されるような所望の形状で「固まって(”frozen”)」いる。エラストマでできたプリフォーム40の使用は、比較的滑らかな外観を与え、プリフォームの構成要素の間に形成された接続からの生じるような不規則性を減少させるのに貢献する。
【0078】
予め含浸された繊維テクスチャを使用するとき、予め含浸させること(pre-inpregration)は、上記の種類のセラミック又は炭素前駆体樹脂により果されることができ、樹脂は、必要であれば、含浸目的に使用される溶剤を除去した後に予め重合されることができる。
【0079】
予め含浸された繊維テクスチャの要素を組み合わせることによって得られた繊維プリフォームは、例えば、メンブレン40によって前者20に成形される。プリフォームのモールド成形は、圧力差を加えることによってアシストされることができ、続いて、樹脂が完全に硬化される。
【0080】
そして、セラミック又は炭素中で前駆体樹脂を熱分解することによる熱処理の変化が果されて、さらに、セラミック又は炭素マトリックスで部分的に高密度化された強固化繊維プリフォームが得られる。
【0081】
どちらの場合でも、強固化プリフォームの高密度化は、例えば、化学蒸気浸透(CVI)によりセラミックマトリックスを形成することによって続けられる。
【0082】
セラミックマトリックスは、SiCのような耐火性セラミックであることができ、効果的には、「セルフヒーリング("self-healing”)」セラミックマトリックスであることができる。「セルフヒーリング」セラミックマトリックスは、所定の温度範囲内での粘性状態を通過することができる材料のマトリックスの少なくとも1つの成分相を形成することによって、マトリックスに、特に熱サイクリングの効果の下で形成される「ヒーリング」クラックを満たす。「セルフヒーリング」特性を有する組成物は、酸化、ガラス質の組成物を形成するという効果の下で、例えば、アルミナケイ酸タイプ、又は可能な構成の特定のガラス質の組成物である。炭化ホウ素BC、又はSi−B−Cの3成分系でできたマトリックス相は、ガラス質の組成物のための前駆体を構成する。
【0083】
セラミックマトリックスの高密度化の後、図29に示される構造体10のように、ローブミキサのセクタを形成するCMCローブ構造体が得られる。
【0084】
乾いた繊維プリフォームに対して、液体の技術(硬化及び熱分解に続く強固化マトリックスのための液体の前駆体による含浸)よりもCVIを使用することによって、プリフォームの強固化を得ることができることが認められる。このような状況の下では、堅い(rigid)成形具要素は、プリフォームに気相へのアクセスを促進するように、所望の形状で、効果的にはマルチプライ穿孔で繊維プリフォームを保つのに適した前者20とシェーパキー30とに対して使用される。
【0085】
説明された例では、ミキサは、3つのセクタを一緒に組み合わせることによって得られる。当然、ミキサを形成しているセクタの数と、ローブ構造体を構成している各々は、3つよりも多くても良く、形成されるローブ構造体の形状に適したプリフォームを形成するために使用される。
【0086】
また、ミキサのための完全な繊維プリフォームを高密度化することによって、単一部分のようなCMCのミキサ19を形成することも可能である。このようなミキサが、図30に示されている。繊維プリフォームを形成するために、得られる完全なミキサの形状に対応する形状を有する前者とメンブレンとでできた繊維プリフォームが使用をされる。図6ないし図12の実施の形態では、繊維テクスチャストリップ101のゾーン120の2つの端部が、切込みの縁部として扱われ、プリフォームの構成要素が一緒に組み合わせられるのと同じようにして、繊維テクスチャストリップ101のゾーン110の2つの端部が、これらマージンゾーンによって一緒に組み合わせられる。かくして、完全なリングを形成する。
【0087】
従って、ここでの記載並びに特許請求の範囲において、「ローブ構造体」という用語は、完全なローブミキサ、又は単にこのようなミキサのセクタを示すものとして理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンのフローミキサのためのローブ構造体を製造する方法であって、
このローブ構造体は、ローブ構造体の長軸の周りに配置された複数のローブを有するマルチローブスカートを形成している部分から下流に延びた上流の環状部分を有し、
この方法は、
ローブ構造体の前記環状部分に対応する第1のプリフォーム部分と、ローブ構造体の前記マルチローブスカートに対応する第2のプリフォーム部分とを有する組み合わせられた繊維プリフォームを得るために、この繊維プリフォームの構成要素が、前記マルチローブスカートのプリフォーム部分の前記複数のローブを通る流れの方向にそれぞれ実質的に延びた複数の接続ラインに沿って、少なくとも部分的に一緒に組み合わせられるように、一緒に組み合わせられ、かつ、製造されるローブ構造体の形状に対応する形状の成形具によって成形された繊維テクスチャの複数の構成要素から、製造されるローブ構造体の形状に対応する形状を有する耐火性繊維の繊維プリフォームを形成することと、
少なくとも部分的にセラミックのマトリックスによって、前記組み合わせられかつ成形された繊維プリフォームを高密度化することとを具備する方法。
【請求項2】
前記プリフォームの構成要素は、縫合によって一緒に組み合わせられる請求項1の方法。
【請求項3】
前記プリフォームの構成要素は、ヤーン、針又はピンを埋め込むことによって一緒に組み合わせられることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】
前記プリフォームの構成要素は、前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分の前記複数のローブの側面に沿って延びた接続ラインに沿って、一緒に組み合わせられる請求項1ないし3のいずれか1の方法。
【請求項5】
前記プリフォームの構成要素は、前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分の前記複数のローブの外側頂部に沿って延びた接続ラインに沿って、一緒に組み合わせられる請求項1ないし3のいずれか1の方法。
【請求項6】
前記プリフォームの構成要素は、重なる構成要素の隣接している縁部と一緒に組み合わせられる請求項1ないし5のいずれか1の方法。
【請求項7】
前記プリフォームの構成要素は、構成要素の隣接している縁部と重なるアセンブリストリップによって一緒に組み合わせられる請求項1ないし7のいずれか1の方法。
【請求項8】
前記プリフォームの構成要素は、構成要素の隣接している縁部の重なりゾーンに減少された厚さで形成される請求項1ないし7のいずれか1の方法。
【請求項9】
前記繊維プリフォームの構成要素は、立体織りにより形成される請求項1ないし8のいずれか1の方法。
【請求項10】
前記繊維プリフォームの構成要素は、セラミック繊維でできている請求項1ないし9のいずれか1の方法。
【請求項11】
前記繊維プリフォームの構成要素は、炭化ケイ素繊維でできている請求項1ないし10のいずれか1の方法。
【請求項12】
ストリップの形態で繊維テクスチャ要素を形成することと、
ストリップを通り、ストリップの一方の側面からほぼ垂直に、ストリップの幅未満である長さに亘って、この側面から延びた複数の切込みを形成することと、
繊維テクスチャからセクタ形状の要素を切り取ることと、
前記セクタの縁部と前記ストリップの対応する切込みの縁部とを一緒に接続することによって、ストリップと各セクタとを組み合わせることとを具備し、かくして、各セクタが、切込みの縁部の間に挿入されることとを具備する請求項1ないし11のいずれか1の方法。
【請求項13】
前記ストリップ形状の要素は、切込みの部分の厚さよりも厚い切込みでない部分の厚さに関して、立体織りによって形成されている請求項12の方法。
【請求項14】
ローブ構造体の前記環状部分に対応する前記第1のプリフォーム部分は、前記ストリップ形状の要素に繊維テクスチャの少なくとも1つの追加環状プライを重ねることによって得られる請求項12の方法。
【請求項15】
追加環状プライが、前記ストリップ形状の要素に形成された前記切込みの端部のところで、ローブ構造体の前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分の前記複数のローブのスターターゾーンを覆っている請求項14の方法。
【請求項16】
各々が、ローブ構造体の前記環状部分に対応する前記第1のプリフォーム部分を構成している第1の環状プライの少なくとも1つのセクタと、ミキサの前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分のセクタとを具備する、複数の繊維テクスチャ要素を形成することと、
前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分のセクタの隣接している縁部に少なくとも沿って、これら要素を一緒に組み合わせることと、を具備する請求項1ないし11のいずれか1の方法。
【請求項17】
ローブ構造体の前記環状部分に対応する前記第1のプリフォーム部分を形成するために、繊維テクスチャの少なくとも1つの追加環状プライが、少なくとも前記第1の環状プライのセクタを覆って加えられる請求項16の方法。
【請求項18】
追加及び実質的な環状プライが、前記複数のローブのスターターゾーンを強化するために、前記マルチローブスカートに対応する前記第2のプリフォーム部分の複数のローブのスターターゾーンを覆っている請求項17の方法。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれか1の方法により製造されたローブ構造体を形成する複数のセクタを一緒に組み合わせることによって得られることを特徴とするCMCガスタービンのフローミキサ。
【請求項20】
請求項1ないし18のいずれか1の方法により製造されたローブ構造体により構成されていることを特徴とするCMCガスタービンのフローミキサ。
【請求項21】
請求項19又は請求項20のフローミキサに適したバイパスガスタービン航空エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2010−518313(P2010−518313A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549451(P2009−549451)
【出願日】平成20年2月11日(2008.2.11)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050207
【国際公開番号】WO2008/104692
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE