説明

ガスタービン装置

【課題】重質油を燃料とするガスタービン装置において、改質器の停止時にコークスを除去することにより、改質器内でのコークスの成長を抑制することができるガスタービン装置を提供することにある。
【解決手段】
昇圧されて供給される重質油及び水を混合加熱する加熱器2と、加熱器により加熱された重質油と水の混合物を滞留させて、重質油を熱分解して得られる改質燃料と重質油に含有される不純物を濃縮したタールとに分離する改質器6と、改質器によって分離された改質燃料を減圧する減圧器9と、減圧器によって分離した改質ガスと改質油を燃焼する燃焼器14と、燃焼器によって生成した燃焼ガスにより駆動されるタービン13とを有する。さらに、酸素供給手段である圧縮機22は、改質器の停止時に、改質器中に酸素を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン装置に係り、特に、重質油を燃料とするに好適なガスタービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の重質油を燃料とするガスタービン装置としては、例えば、特開平2003−90227号公報に記載のように、重質油と水を加熱器で加熱した後、改質器にて改質燃料と重質油中の不純物を濃縮したタールとに分離し、改質燃料を燃焼器に供給して、タービン駆動用の燃焼ガスを得るものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平2003−90227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開平2003−90227号公報の改質器を用いる方式では、改質器の内部に、重質油と水の混合物が一定時間以上滞留すると、重質油の一部が炭化し、固体化するコーキングが改質器の高温壁面において発生する可能性がある。コーキングが長時間の間に成長すると、改質器下部のタール抜出系統を閉塞する場合が生じる。完全に抜出系統が閉塞すると、改質器内部にタールが滞留し、短時間で改質器内部がコークスにて閉塞する事態へと繋がるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、重質油を燃料とするガスタービン装置において、改質器の停止時にコークスを除去することにより、改質器内でのコークスの成長を抑制することができるガスタービン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、昇圧されて供給される重質油及び水を混合加熱する加熱器と、前記加熱器により加熱された前記重質油と前記水の混合物を滞留させて、前記重質油を熱分解して得られる改質燃料と重質油に含有される不純物を濃縮したタールとに分離する改質器と、前記改質器によって分離された前記改質燃料を減圧する減圧器と、前記減圧器によって分離した改質ガスと改質油を燃焼する燃焼器と、前記燃焼器によって生成した燃焼ガスにより駆動されるタービンとを有するガスタービン装置であって、前記改質器の停止時に、前記改質器中に酸素を供給する酸素供給手段と備えるようにしたものである。
かかる構成により、改質器の停止時にコークスを除去することにより、改質器内でのコークスの成長を抑制し得るものとなる。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、さらに、前記改質器の内部の温度を計測する温度計測器と、前記温度計測器によって計測された温度に基づいて、前記酸素供給手段による酸素供給量を調節する制御手段を備えるようにしたものである。
【0008】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記酸素供給手段は、空気を圧縮する空気圧縮機である。
【0009】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記酸素供給手段は、昇圧された空気を貯蔵する空気ボンベである。
【0010】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記酸素供給手段は、前記改質器の停止時に前記改質器に供給される水に対して、過酸化水素を供給する過酸化水素水タンク及び過酸化水素ポンプである。
【0011】
(6)上記(1)において、好ましくは、さらに、前記改質器の出口の二酸化炭素濃度を計測する二酸化濃度計を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、重質油を燃料とするガスタービン装置において、改質器の停止時にコークスを除去することにより、改質器内でのコークスの成長を抑制し得るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態によるガスタービン装置の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本発明の第1の実施形態によるガスタービン装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態によるガスタービン装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【0014】
重質油タンク1に貯蔵された重質油16は、重質油ポンプ4によって15〜20Paに昇圧され、加熱器2に供給される。また、水タンク3に貯蔵された水15は、水ポンプ5によって15〜20Paに昇圧され、加熱器2に供給される。加熱器2の内部において、重質油と水は、430〜460℃に加熱された後に混合される。
【0015】
加熱混合された重質油と水の混合物は、改質器6に導入される。改質器6の内部で一定時間滞留させると、改質器6の内部で、軽質油分っである改質燃料18と重質油中の不純物を濃縮したタール17とに分離される。タール17は、タール分抜出部7によって抜き出され、外部に排出される。
【0016】
改質器6で分離された改質燃料18は減圧器8で減圧され、減圧に伴い改質燃料18は改質ガス19と改質油20に更に分離する。分離した改質ガス19と改質油20は、気液分離器9でそれぞれに分離される。分離した改質ガス19は、直接、燃焼器14に供給される。分離した改質油20は、一旦改質油タンク10に貯蔵された後、改質油ポンプ11を用いて、燃焼器14に供給される。
【0017】
ここで、減圧器8と気液分離器9との間の配管には、三方弁28が設けられている。通常、三方弁28は、減圧器8と気液分離器9とを接続するように切り替えられている。改質器6の停止時には、三方弁28は、減圧器8を直接燃焼器14に接続するように切り替えられる。
【0018】
燃焼器14では改質油及び改質ガスが燃焼し、その燃焼ガスはタービン13に供給され、タービン13を駆動する。タービン13の駆動により、圧縮12や図示しない発電機が駆動される。タービン13を駆動した燃焼ガスは、排ガス25として外部に排出される。
【0019】
さらに、本実施形態では、酸素供給手段である空気圧縮機22と、改質器6の内部温度を測定する温度計測器23と、温度計測器23によって計測された温度によって流量を調節する流量調節弁24と、制御手段40と、三方弁28と燃焼器14との間の蒸気切替ライン29に設けられたCO2濃度計26とを備えている。
【0020】
改質器6の内部は430〜460℃と高温であるために、重質油と水の混合物が一定時間以上滞留すると、重質油の一部が炭化し、固体化するコーキングが改質器の高温壁面において発生する可能性がある。改質器を停止する際には、重質油16の供給を停止し、重質油供給系統には水15のみが供給される。そのため、停止時に加熱器2で生成されるのは水蒸気のみである。その際、蒸気は気液分離器9への系統から、三方弁28により、蒸気切替ライン29側へ切替られ、ガスタービン燃焼器14へ直接供給される。また、その過程の中で、加熱器2で生成される水蒸気に圧縮機22で昇圧された空気21が供給される。改質器6は、熱容量が大きいために、停止操作後の数時間は改質条件の430〜450℃が維持されるため、430〜460℃の高温下で、水蒸気中に含有する酸素がコークスの主成分である炭素と反応し、二酸化炭素に転換される。二酸化炭素は、三方弁28,蒸気切替ライン29,燃焼器14を経て、排ガス25として外部に排出される。このように、改質器の停止時には、改質器6の中に空気を導入することでコークスの主成分の炭素を二酸化炭素に転換して外部に排出できるので、コークスを除去できる。なお、空気圧縮機22により供給される空気の圧力は、改質条件と同様に15〜20MPa程度が好ましいものである。
【0021】
酸素量が多い場合、コークスと酸素が急激に反応するために、改質器内部温度の急激な温度上昇に繋がる。そのために、改質器内部温度の許容値以下になるように、制御手段40は、温度計測器23によって計測された改質器6の内部温度により空気流量調節弁24を調節して、供給する空気21の量を制御する。例えば、改質器内部温度の許容値を500℃とすると、改質器6の内部温度が500℃になると、制御手段40は、空気流量調節弁24を調節して、供給する空気21の量を半減する。すると、改質器6の内部温度は徐々に低下するので、改質器6の内部温度が400℃になると、制御手段40は、空気流量調節弁24を調節して、供給する空気21の量を元の流量の戻す。
【0022】
コークスの除去が完了したかをモニタリングするために、蒸気切替ライン29に二酸化炭素濃度計26を設け、二酸化炭素の発生量を評価する事により間接的にコークス除去完了を評価できる。ガスタービン装置のオペレータは、二酸化炭素濃度計26によって検出された二酸化炭素濃度が0になると、圧縮機22の動作を停止する。
【0023】
ここで、図2を用いて、本発明の第1の実施形態によるガスタービン装置におけるコークス除去の試験結果について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態によるガスタービン装置におけるコークス除去の試験結果の説明図である。
【0024】
図2は、20MPa,450℃で空気(酸素)を付加した蒸気でのコークス洗浄試験結果の一例を示している。図2の横軸は反応時間(min)を示し、縦軸はコークスの反応率(wt%)を示している。図から明らかなように、2時間程度でコークスが95%程度除去されていることが確認された。高温の重質油が流通する供給系統、改質器他に、改質装置停止時の蒸気パージ運転に酸素が含有させることにより、重質油のパージと同時に、生成したコークスを除去することが可能となる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、重質油を燃料とするガスタービン装置において、改質器の停止時にコークスを除去することにより、改質器内でのコークスの成長を抑制し得るものとなる。
【0026】
次に、図3を用いて、本発明の第2の実施形態によるガスタービン装置の全体構成について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態によるガスタービン装置の全体構成を示すシステム構成図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0027】
本実施形態では、図1に示した空気圧縮機22に代えて、昇圧された空気が充填されたガスボンベ27を備えている。改質器6の停止時には、重質油16の供給を停止し、重質油供給系統には水15のみが供給される。加熱器2で生成された水蒸気に対して、ガスボンベ27から昇圧された空気21を供給される。改質器6は430〜460℃と高温であるために、水蒸気中に含有する酸素がコークスの主成分である炭素と反応し、二酸化炭素に転換する形で、コークスを除去できる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、重質油を燃料とするガスタービン装置において、改質器の停止時にコークスを除去することにより、改質器内でのコークスの成長を抑制し得るものとなる。
【0029】
また、高価な空気圧縮機に代えて、安価な空気ボンベを用いることで、システムコストを低減することができる。
【0030】
次に、図4を用いて、本発明の第3の実施形態によるガスタービン装置の全体構成について説明する。
図4は、本発明の第3の実施形態によるガスタービン装置の全体構成を示すシステム構成図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0031】
本実施形態では、図1に示した空気圧縮機22及び流量調節弁21に代えて、過酸化水素タンク30と、過酸化水素供給ポンプ32を備えている。過酸化水素タンク30に貯蔵された過酸化水素31は、過酸化水素供給ポンプ32によって昇圧されて、水タンク3と水ポンプ5の間の配管に供給される構成となっている。
【0032】
改質器6の停止時には、重質油16の供給を停止し、重質油供給系統には水15のみが供給される。その過程の中で、水15に過酸化水素供給ポンプ32にて過酸化水素31が供給される。過酸化水素31は水15と供に輸送され、改質器6は430〜460℃と高温であるために、過酸化水素31が熱分解して生じた酸素がコークスの主成分である炭素と反応し、二酸化炭素に転換する形で、コークスを除去できる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、重質油を燃料とするガスタービン装置において、改質器の停止時にコークスを除去することにより、改質器内でのコークスの成長を抑制し得るものとなる。
【0034】
また、過酸化水素を用いて、液体状態にて酸素分を供給することにより、酸素分供給の補機動力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態によるガスタービン装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるガスタービン装置におけるコークス除去の試験結果の説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態によるガスタービン装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態によるガスタービン装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1…重質油タンク
2…加熱器、
3…水タンク
4…重質油ポンプ
5…溶媒又は水ポンプ
6…改質器
7…タール分抜出部
8…減圧器
9…気液分離器
10…改質油タンク
11…改質油ポンプ
12…圧縮機
13…タービン
14…燃焼器
15…水
16…重質油
17…タール
18…改質燃料
19…改質ガス
20…改質油
21…空気
22…空気圧縮機、
23…温度計測器
24…流量調節弁
25…排ガス
26…CO2濃度計
27…ガスボンベ
28…三方弁
29…蒸気切替ライン
30…過酸化水素タンク
31…過酸化水素
32…過酸化水素供給ポンプ
40…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧されて供給される重質油及び水を混合加熱する加熱器と、
前記加熱器により加熱された前記重質油と前記水の混合物を滞留させて、前記重質油を熱分解して得られる改質燃料と重質油に含有される不純物を濃縮したタールとに分離する改質器と、
前記改質器によって分離された前記改質燃料を減圧する減圧器と、
前記減圧器によって分離した改質ガスと改質油を燃焼する燃焼器と、
前記燃焼器によって生成した燃焼ガスにより駆動されるタービンとを有するガスタービン装置であって、
前記改質器の停止時に、前記改質器中に酸素を供給する酸素供給手段と備えることを特徴とするガスタービン装置。
【請求項2】
請求項1記載のガスタービン装置において、
さらに、前記改質器の内部の温度を計測する温度計測器と、
前記温度計測器によって計測された温度に基づいて、前記酸素供給手段による酸素供給量を調節する制御手段を備えることを特徴とするガスタービン装置。
【請求項3】
請求項1記載のガスタービン装置において、
前記酸素供給手段は、
空気を圧縮する空気圧縮機であることを特徴とするガスタービン装置。
【請求項4】
請求項1記載のガスタービン装置において、
前記酸素供給手段は、
昇圧された空気を貯蔵する空気ボンベであることを特徴とするガスタービン装置。
【請求項5】
請求項1記載のガスタービン装置において、
前記酸素供給手段は、
前記改質器の停止時に前記改質器に供給される水に対して、過酸化水素を供給する過酸化水素水タンク及び過酸化水素ポンプであることを特徴とするガスタービン装置。
【請求項6】
請求項1記載のガスタービン装置において、
さらに、前記改質器の出口の二酸化炭素濃度を計測する二酸化濃度計を備えることを特徴とするガスタービン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−177660(P2007−177660A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375190(P2005−375190)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)