説明

ガストリンホルモンに対するモノクローナル抗体

【課題】ガストリンホルモンの特定の領域に対する抗体を提供する。
【解決手段】ガストリン17(G17)、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)、ガストリン34(G34)、及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)のN末端及びC末端に選択的なモノクローナル抗体(MAb)、並びにこれらのMAbを産生するハイブリドーマ。また、ガストリン17(G17)、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)、ガストリン34(G34)、及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)の検出及び定量化に有用なMAbパネル。これらは、ガストリン介在性の疾患又は状態をモニターするのに、或いはその治療経過の進行をモニターするのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
[0001] この出願は、「Gastrin Hormone Immunoassays」という名称の米国特許出願第10/813336号と共に、2004年3月29日に同時出願された米国特許仮出願第60/557759号に基づく権利を主張するものであり、各出願の明細書はそのまま、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
(発明の分野)
【0002】
[0002] 本発明は、ガストリンホルモンの特定の領域に対する抗体と、動物、特にヒトの生体内に存在するガストリンホルモンの種々の型と、に関する。本発明は更に、ガストリン介在性の疾患及び状態の検出及び診断、並びにモニタリングへのこれらのモノクローナル抗体(MAb)の適用と、ガストリン介在性の疾患及び状態を予防及び治療するために、本発明のMAbを使用する方法と、に関する。
(発明の背景)
【0003】
[0003] ガストリンホルモンは、100年前に最初に同定され、1960年代に精製されたが、正常組織及び疾患組織の種々の組織に対する影響は、未だ不完全にしか解明されていない。ガストリンシステムに関する知見にこのようなギャップが存在する主な理由の1つは、ガストリンホルモンのいくつかの型を別々に検出し、定量化するのが困難であったことにある。
【0004】
[0004] ペプチドホルモンであるガストリンは、哺乳動物ではいくつかの型が存在し、それらは、ペプチド鎖中のアミノ酸残基の数に基づいて、「小さな」ガストリン及び「大きな」ガストリンの、2つの主要なサイズ別のクラスに分類される。「小さな」ガストリン型には、成熟したガストリン17(G17)、及びグリシン伸長を有するG17(G17−Gly)が含まれ、「大きな」ガストリンには、ガストリン34(G34)、及びグリシン伸長を有するG34(G34−Gly)が含まれる。G17の成熟型は、胃酸分泌の主要なエフェクターであり、この役割では、G34に比べて約6倍の効力があると推算されている。種々の型のガストリンは、in vivoでは、前駆体ペプチドであるプロガストリンから切断されることによって、或いは、場合により、切断型が修飾されることによって産生される。ヒトG34は、G17の全17アミノ酸配列をそのC末端に有し、また、予想通り、G17と免疫学的に交差反応する。
【0005】
[0005] 成熟したG17は、アミノ末端残基及びカルボキシ末端残基の両方で修飾されている。N末端のグルタミン酸は、環状化されて、ピログルタミン酸(pGlu)を形成し、C末端フェニルアラニン残基の遊離カルボキシル基は、ペプチジルα−アミド化モノオキシゲナーゼ(PAM)という酵素によってアミド化されて、C末端Phe−NHを形成する。成熟したG34は、同様にC末端でアミド化されて、C末端Phe−NHを形成する(Dockrayら、Ann.Rev.Physiol.(2001年)、63:119−139を参照)。
【0006】
[0006] 成熟したG17は、ヒトで主要な、「小さな」ガストリン型であり、pEGPWLEEEEEAYGWMDF−NH2(配列番号1)というアミノ酸配列を有する。G17−Glyは、健常ヒト個体における、「小さな」ガストリンの少数構成成分として見出された、プロセシングが不完全な型のガストリンであり、pegpwlEeeeeaygwmdfg(配列番号2)というアミノ酸配列を有する。
【0007】
[0007] ガストリン34は、ヒトで主要な、「大きな」ガストリン型であり、pELGPQGPPHLVADPSKKEGPWLEEEEEAYGWMDF−NH2(配列番号3)というアミノ酸配列を有し、グリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)は、追加のC末端グリシン残基を有し、pELGPQGPPHLVADPSKKEGPWLEEEEEAYGWMDFGというアミノ酸配列(配列番号4)を有する。
【0008】
[0008] ガストリンは、ガストリン放出ペプチド(GRP)に反応して、胃の幽門腔G細胞によって分泌され、胃酸と、いくつかのペプチドホルモン、特に最も注目すべきものとしてはソマトスタチン、のパラクリン作用と、によって抑制される。ガストリンペプチドが、健常な個体の胃における酸分泌を刺激するように機能することは従来から認識されていたが、これらのペプチドが消化管(GI)系の種々の細胞の増殖、分化、及び成熟過程の制御も行うことは、最近になって初めて明らかになったことである。
【0009】
[0009] GI系における局所的活性に加えて、G17、及びより低い程度でG17−Glyは、血流中に放出され、胃癌、結直腸癌、膵癌等の胃腸障害及び疾患に罹患している患者の血清中で増加することが判明している。これらのガストリン分子種が、肺小細胞癌(SCLC)及び肝転移腫瘍を含む、消化管に関連のない他の疾患にも関連していることが、更に最近になって判明した。例えば、「Gastrin and Colon Cancer:a unifying hypothesis」、S.N.Joshiら、Digestive Diseases(1996年)、14:334−344;並びに「Gastrin and Colorectal Cancer」、Smith,A.M.及びWatson,S.A.、Alimentary Pharmacology and Therapeutics(2000年)、14(10):1231−1247を参照のこと。
【0010】
[0010] 抗体は、医学、獣医学、及び他の分野で使用される多数のアッセイで主要な試薬となっている。そのような試験には、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫組織化学(IHC)アッセイ、免疫蛍光(IF)アッセイ等、通常使用される多数のイムノアッセイが含まれる。
【0011】
[0011] モノクローナル抗体(MAb)は、その固有の特性により、ポリクローナル抗血清、及びポリクローナル抗血清から精製された抗体と比較して、上記アッセイの多くに、多くの点で適している。その属性には、標的抗原への単一決定基(monodeterminant)特異性(すなわち、単一エピトープへの特異性)、異なる抗体調製物間で不変な特異性、並びに経時的に不変な親和性及び化学組成が含まれる。更に、MAbは、in vitro法によって、無期限に、かつ無制限な量で産生することができる。これらの特性は、ポリクローナル抗体の特性とは明らかに異なる。ポリクローナル抗体は、in vivo免疫法を必要とし、生物学的変動性と、免疫動物の寿命を限界とした限定的な抗体生産能力と、を不可避的に伴う。
【0012】
[0012] これらの利点がある一方で、個々のMAbの間には相違が存在し、その相違は、異なるMAbが同一のエピトープに特異的である場合にさえ存在する。例えば、単一抗原エピトープ領域を用いた免疫によって誘導されたMAb相互の間では、以下の特性のいずれか又はすべてに関して相違が生じる可能性がある。すなわち、1)エピトープの分子組成及び三次構造に関する細密な特異性、2)抗体イディオタイプ、3)抗体親和性、4)抗体アロタイプ、及び、5)抗体アイソタイプである。これらの特質の相違は、特定のイムノアッセイでのMAbの挙動に影響を与えることがあり、それによって、同一の抗原領域に対して産生された異なるMAb単離株が、所与のアッセイで異なる挙動を示すことがある。従って、一部のMAbは、特定のイムノアッセイにおける試薬として使用された場合、同一のエピトープに結合する他のものより優れているであろう。
【0013】
[0013] イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)でも、ラジオイムノアッセイ(RIA)でも、免疫拡散アッセイでも、或いは、ELISPOT、スロットブロット、ウェスタンブロット等の免疫検出アッセイでもよい。そのような方法に関する一般的な指針としては、例えば、Ausubelら(編集)(1987年)「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons社、New York,N.Y.を参照のこと。或いは、イムノアッセイは、組織試料中の、1つの型のガストリンホルモンを可視化する免疫組織化学(IHC)染色又は免疫蛍光(IF)法であってもよい。例えば、「Principles and Practice of Immunoassay」(1991年)、Christopher P.Price及びDavid J.Neoman(編集)、Stockton Press社、New York,N.Y.を参照のこと。
【0014】
[0014] G17のN末端領域及びC末端領域に選択的なモノクローナル抗体については、文献に記載されている。例えば、Azumaら、Gastroenterologica Japonica(1986年)、21(4):319−324;Ohningら、Peptides(1994年)、15(3):417−423;Fuerleら、Pancreas(1995年)、10(3):281−286;Kovacsら、Peptides(1996年)、17(4):583−587;Ohningら、Am J.Physiol(1996年)、271(3 Pt1):G470−476;Sipponenら(2002年)、Scand J.Gastroenterol.37(7):785−791を参照。しかし、これらの抗体のいずれについても、単独でも、また、組合せても、正常状態及び疾患状態の生体液中のガストリンホルモンのいくつかの型のうち、複数のものを識別及び定量化できることが示されていない。
【0015】
[0015] 抗ガストリンポリクロナール抗体がガストリン活性を抑制するのに有効であることが示され(「Inhibition of gastrin activity by incubation with antibodies to the C−terminal tetrapeptide of gastrin」、Jaffeら、Surgery(1969年)、65(4):633−639)、非ヒト抗ガストリンポリクロナール抗体がゾリンジャー−エリソン症候群に罹患している患者の治療に適用されている。ゾリンジャー−エリソン症候群は、食餌による刺激なしに過剰のガストリンが産生される病的状態である。Hughesら、「Therapy with Gastrin Antibody in the Zollinger−Ellison Syndrome」、Digestive Diseases(1976年)、21(3):201−204を参照。しかし、これらのウサギ抗ガストリン抗体は、「よくても、この患者には短期効果」を有するのみであった(Hughes、204ページ)。米国特許第5886128号明細書及び第5785970号明細書は、ガストリンホルモンに依存して成長し、又は刺激される潰瘍又は腫瘍を、ガストリンホルモンペプチド結合体で免疫することによって治療する方法を開示する。
【0016】
[0016] 最近、血清中における、非アミド化型に対するアミド化型のガストリンホルモンの比率が、十二指腸潰瘍性疾患又は胃萎縮症を発症する、個体の危険プロフィールの指標を提供するものであることが示唆された。T.C.Wangによる、「Diagnosis and Treatment of Gastrointestinal Disease」という名称の米国特許出願公開第2003/0049689号明細書を参照のこと。別のグループは、ペプシノーゲンI/II及びヘリコバクターピロリのマーカーのレベルと共に、絶食時のG17に関する「カットオフ値」との比較によって、胃酸関連疾患の危険を評価するための基礎として、絶食時のG17レベルを測定することを含む方法を用いた。2004年3月18日発行の国際公開第0423148号パンフレットを参照のこと。
【0017】
[0017] 今まで、ガストリンホルモンのG17型、G17−Gly型、G34型、及びG34−Gly型の各々を、高感度で検出し、正確に識別することのできるMAbは、利用可能でなかった。更に、本発明以前には、生体液試料中の上記型のガストリンホルモンの各々の量を正確に測定することはできなかった。臨床試験用のアッセイで本発明のMAbを使用することによって、正常状態及び疾患状態におけるガストリンホルモンの生物学がより正確に示されることになる。本発明のMAbの使用は、ガストリンに関連した疾患及び状態を予防及び治療するための、医薬用途のMAb組成物及び方法も提供する。
(発明の概要)
【0018】
[0018] 本発明は、アミノ酸配列pEGPWLE(G17におけるアミノ酸1〜6に対応する。配列番号5)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はグリシン伸長G17(G17−Gly)のN末端に選択的に結合するモノクローナル抗体(MAb)を提供する。また、アミノ酸配列pEGPWLE(配列番号5)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はGl7−GlyのN末端に選択的に結合するMAbを産生するハイブリドーマを提供する。
【0019】
[0019] 本発明はまた、アミノ酸配列EEAYGWMDF−NH2(配列番号6)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はガストリン34(G34)のC末端に選択的に結合するMAbを提供する。また、アミノ酸配列EEAYGWMDF−NH2(配列番号6)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はガストリン34(G34)のC末端に選択的に結合するMAbを産生するハイブリドーマを提供する。
【0020】
[0020] 本発明はまた、アミノ酸配列pELGPQG(配列番号7)内のエピトープで、ヒトガストリン34(G34)のN末端に選択的に結合するMAbを提供する。また、アミノ酸配列pELGPQG(配列番号7)内のエピトープで、ヒトガストリン34(G34)のN末端に選択的に結合するMAbを産生するハイブリドーマを提供する。
【0021】
[0021] 本発明は更に、アミノ酸配列ygwmdfg(配列番号8)内のエピトープで、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)のC末端に選択的に結合するMAbを提供する。また、アミノ酸配列YGWMDFG(配列番号8)内のエピトープで、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)のC末端に選択的に結合するMAbを産生するハイブリドーマを提供する。
【0022】
[0022] 本発明の抗体のうちの2つ以上の組合せを、G17型、G17−Gly型、G34型、及びG34−Gly型のガストリンホルモンの各々のN末端又はC末端に選択的に結合するMAbパネルの形態で用いることもできる。
【0023】
[0023] (1)アミノ酸配列pEGPWLE(G17におけるアミノ酸1〜6に対応する。配列番号5)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はグリシン伸長G17(G17−Gly)のN末端に選択的に結合するMAb、(2)アミノ酸配列EEAYGWMDF−NH2(配列番号6)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はガストリン34(G34)のC末端に選択的に結合するMAb、(3)アミノ酸配列pELGPQG(配列番号7)内のエピトープで、ヒトガストリン34(G34)のN末端に選択的に結合するMAb、或いは、(4)アミノ酸配列YGWMDFG(配列番号8)内のエピトープで、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)のC末端に選択的に結合するMAb、の医薬組成物も、薬学的に許容される担体と組み合わせて提供される。
【0024】
[0024] 患者におけるガストリン介在性の疾患又は状態は、患者から得た生体液の試料中のガストリンホルモン型のレベルを測定すること、及び、上記試料中のガストリンホルモン型のレベルを、健常個体グループから得た生体液の試料中の上記ガストリンホルモン型の正常レベルと比較すること、によって診断することができる。
【0025】
[0025] そのようなガストリン介在性の疾患又は状態は、(1)アミノ酸配列pEGPWLE(G17におけるアミノ酸1〜6に対応する。配列番号5)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はグリシン伸長G17(G17−Gly)のN末端に選択的に結合するMAb、(2)アミノ酸配列EEAYGWMDF−NH2(配列番号6)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はガストリン34(G34)のC末端に選択的に結合するMAb;(3)アミノ酸配列pELGPQG(配列番号7)内のエピトープで、ヒトガストリン34(G34)のN末端に選択的に結合するMAb、或いは(4)アミノ酸配列YGWMDFG(配列番号8)内のエピトープで、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)のC末端に選択的に結合するMAb、を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、予防又は治療することができる。
【0026】
[0026] 患者におけるガストリン介在性の疾患又は状態の経過をモニターする方法も提供する。この方法は、ガストリン介在性の疾患又は状態に罹患しているか、又はその危険がある患者から得た生体液の試料中のガストリンホルモン型のレベルを、第1の時点で測定するステップと、患者から得た生体液の1つ又は複数の試料中の上記ガストリンホルモン型のレベルを、異なる時点で測定するステップと、それによって、ガストリン介在性の疾患又は状態の経過をモニターするステップと、を含む。
【0027】
[0027] 本発明は、ガストリンホルモン介在性の疾患又は状態に罹患している患者のガストリンホルモン遮断治療を評価する方法も提供する。この方法は、以下のステップa)〜j)を含む。
a)治療の前又は初期に、患者から生体液の第1の試料を得るステップ
b)第1の試料中のガストリンホルモンのレベルを、イムノアッセイ法によって測定するステップ
c)治療対象の疾患又は状態、及び第1の試料中のガストリンホルモンのレベルに基づいて診断を行うステップ
d)ガストリンホルモンに結合して、in vivoでガストリンホルモンの標的受容体との結合を調節する第1の薬剤、又は第1の薬剤を生成する物質、を含む治療を患者に実施するステップ
e)治療の効果が生じると考えられる適当な時間の後、患者から生体液の第2の試料を得るステップ
f)第2の試料の第1のアリコート中の結合及び遊離ガストリンホルモンを含む全ガストリンホルモンのレベルをイムノアッセイによって測定するステップであって、
第2の試料の第1のアリコートを、(i)第1の薬剤が結合したいかなるガストリンホルモンとも置換する第2の薬剤、及び(ii)第2の薬剤に結合しない固定化抗ガストリンホルモン抗体、と共にインキュベートし、
第2の薬剤を洗浄除去し、
ガストリンホルモンには結合するが、前記固定化抗体とは競合しない検出可能抗体を添加し、
ガストリンホルモンに結合した固定化抗体を含み、当該ガストリンホルモンが検出可能抗体と結合している免疫複合体を形成させるステップ
g)免疫複合体中の検出可能抗体の量を検出し、それによって、第2の試料中の全ガストリンホルモンの量を測定するステップ
h)第2の試料の第2のアリコートを用いて、ステップf)及びg)を反復することによって、遊離ガストリンホルモンのレベルを測定するステップであって、
ステップf)におけるインキュベーションを第2の薬剤なしで行うステップ
j)第1の試料中の遊離ガストリンホルモンの測定量を、第2の試料中の遊離ガストリンホルモン及び全ガストリンホルモンの量と比較して、患者のガストリンホルモン遮断治療の有効性を判定するステップ
【0028】
[0028] 本発明は更に、抗ガストリンホルモンMAbと、適当な容器と、を含む、イムノアッセイを実施するためのキットを提供する。抗ガストリンMAbは、MAbs400−1、400−2、400−3、400−4、401−2、445−1、445−2、及び458−1、からなる群から選択されることが好ましい。
(発明の詳細な説明)
【0029】
[0032] 本明細書で使用する語句の定義を以下に示す。
【0030】
[0033] 本明細書で互換性をもって使用される「ガストリンホルモン」又は「ガストリンホルモン型(gastrin hormone form)」は、生物学的活性及び/又は免疫学的交差反応性を有するいかなるガストリンホルモンペプチドも意味する。ガストリンホルモンの主要な型としては、C末端でアミド化されているか、又は遊離C末端を有するガストリン17(G17);グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly);C末端アミド化型及び遊離C末端型の両方を含むガストリン34(G34);グリシン伸長ガストリン34(G34−Gly);並びにプロガストリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
[0034] 本明細書において、試料中のガストリンホルモン型の「総量」は、遊離(非結合)ガストリンホルモン型の量と、複合体(結合)ガストリンホルモン型の量と、の合計を意味する。複合体ガストリンは、試料中の抗体が結合したものでも、他の結合部分が結合したものでもよい。
【0032】
[0035] 本明細書において、「生体液」は、生物起源の物質を含有するいかなる液体も意味する。本発明で使用するのに好適な生体液は、動物、特に哺乳動物、好ましくはヒト個体の体液を含有するものである。体液は、いかなる体液でもよく、これには、血液、血漿、血清、リンパ、脳脊髄液(CSF)、及び同様のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
[0036] 本明細書において、「保存剤」は、生体液の試料、又は生物学的成分を含む液体試料中のガストリンの時間依存的な分解を低減させる、いかなる薬剤、補充剤又は添加剤も意味する。本発明の実施に有用な保存剤は、当技術分野で周知の多数の保存剤のいずれでもよく、アジ化ナトリウム、EDTA、プロテアーゼ阻害剤(例えば、PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオライド)、アプロチニン(トラジロール等))等の一般的な化学的保存剤、或いは、ヘパリン等の生物学的保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
[0037](新規の抗ガストリンモノクローナル抗体)
[0038] 特定の用途に使用するのに最適なモノクローナル抗体(MAb)の選択は、目的の用途における個々の候補MAbの性能を評価することによって行うのが好ましい。それ故、目的の用途における最適な機能性に関して候補MAbを試験することは、目的の使用に最適なMAbを得るための選択過程の一部となる。この選択ステップは、標的抗原への結合、及びMAbを産生するハイブリドーマの連続的クローニングを含む、MAbを得るために通常行う選択ステップに加えて実施するものであり、持続的な細胞増殖及び細胞分裂、並びに無限の期間にわたる一貫した無制限な抗体産生を含む、ハイブリドーマ細胞株の本質的特性の安定性を確実にするものである。
【0035】
[0039] 本明細書において、ガストリンホルモンの特定の型に「選択的」という用語は、抗体が、ガストリンホルモンの特定の型に存在する特定の標的エピトープに特異的であり、他方、標的エピトープを含有する複数の型のガストリンホルモンの各々に結合することを意味する。例えば、成熟した(アミド化された)G17のC末端は、成熟したG17及びG34で共通である。従って、成熟したG17のC末端に存在する標的C末端エピトープに特異的なMAbは、G17(及びG34)に選択的である。
【0036】
[0040] 詳細には、本発明は、生物学的活性のあるガストリンホルモン型、すなわち、アミド化されたガストリン17(G17)、アミド化されたガストリン34(G34)、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)、グリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)、及びプロガストリンのN末端及びC末端に選択的な、優れた特性を有するMAbを同定する方法を開示する。これらのMAbは、生体液中の特定の型のガストリンホルモンを測定することができるように設計された免疫酵素アッセイ(一般的には「ELISA」又は酵素結合免疫吸着アッセイと呼ばれている。)における使用に特に適している。本発明のMAbは、例えば、ELISPOT、ラジオイムノアッセイ、抗体ベースのサンドイッチ捕捉アッセイ、ドットブロット、スロットブロット、ウェスタンブロットアッセイ等の免疫検出アッセイで、ガストリンホルモンを検出及び/又は定量化するのに適している。
【0037】
[0041] 一態様では、本発明は、アミノ酸配列pEGPWLE(配列番号5)内のエピトープで、ガストリン17(G17)のN末端に選択的に結合するMAbを提供する。ガストリン17のN末端(G17)に選択的なこれらのMAbの、ペプチドpEGPWLEEEE(配列番号11)のBSA結合体への結合は、ヒトG17、ウマG17、又はヒトG17−Glyによって抑制される。
【0038】
[0042] 別の態様では、本発明は、アミノ酸配列EEAYGWMDF−NH2(配列番号6)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はガストリン34(G34)のC末端に選択的に結合するMAbを提供する。
【0039】
[0043] 更に別の態様では、本発明は、アミノ酸配列pELGPQG(配列番号7)内のエピトープで、ヒトガストリン34(hG34)のN末端に選択的に結合するMAbを提供する。
【0040】
[0044] 更に別の態様では、本発明は、アミノ酸配列ygwmdfg(配列番号8)内のエピトープで、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)のC末端に選択的に結合するMAbを提供する。
【0041】
[0045] 更に別の態様では、本発明は、プロガストリンに選択的に結合するMAbを提供する。このMAbは、プロガストリンには結合するが、プロセシングされたガストリンホルモン型、すなわち、G17、G34、G17−Gly、又はG34−Glyには結合しない。プロガストリンに選択的な本発明のMAbには、ヒトプロガストリンのC末端に結合するMAbが含まれる。上記MAbはプレプロガストリンに結合すると考えられる。プレプロガストリンは101アミノ酸のペプチド鎖からなり、これがプロセシングされて、プロガストリン及びガストリンが順次生成される。しかし、プレプロガストリンのプロセシングは急速であり、その合成が行われる小胞体(ER)で行われる。プロガストリンに結合する本発明のMAbは、本明細書に記載のアッセイで、試料中のプロガストリンを検出及び定量化するのに有用である。
【0042】
[0046] 本発明のMAbは、会合定数(Ka)約10〜約10LM−1、好ましくは約10〜約10LM−1、更に好ましくは約10〜約10LM−1、更に好ましくは約10〜約1010LM−1、更に好ましくは1010〜1011LM−1、最も好ましくは約1011〜1012LM−1の選択的結合を示すガストリン型に結合することが好ましい。
【0043】
[0047](抗ガストリンモノクローナル抗体パネル)
[0048] 本発明は、ガストリンホルモンのG17型、G17−Gly型、G34型、及びG34−Gly型のうちの1以上の明確な同定及び定量化を可能にする抗ガストリンホルモンMAbパネルを初めて提供するものである。例えば、ガストリンホルモンのG34型のN末端に選択的なMAb、及びG17/G34のC末端(G34のC末端はG17のC末端と同一である。)に選択的なMAb、を含むMAbパネルは、当技術分野で通常行われる多数のイムノアッセイのいずれか1つによる、試料中のG34の特異的同定及び定量化を可能にする。本発明のMAbを使用可能な通常のイムノアッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIAs)、免疫蛍光アッセイ(IF)、免疫組織化学アッセイ(IHC)、免疫拡散アッセイ、及び同様のものが含まれるが、これらに限定されない。そのような通常の診断アッセイの例については、例えば、Dillnerらに交付された、「Synthetic peptides in human papilloma virus1,5,6,8,11,16,18,31,33 and 56 useful in immunoassay for diagnostic purposes」という名称の米国特許第5932412号の明細書を参照されたい。
【0044】
[0049] 本発明の1つ又は複数の追加的なMAbでMAbパネルを補充することによって、試料中における更に別のガストリンホルモン種を特異的に同定及び定量化する能力が得られる。例えば、G17型のN末端に選択的なMAbを上述の抗体パネルに追加することによって、以下に記載の本発明の方法による、試料中の遊離G17ホルモン及び全(結合プラス遊離)G17ホルモンの特異的同定及び定量化が更に可能となる。
【0045】
[0050] 同様に、G34のN末端に選択的なMAbと、グリシン伸長G34のC末端(これはグリシン伸長G17のC末端と同一である。)に選択的なMAbと、を含むMAbパネルは、試料中のグリシン伸長G34の特異的な同定及び定量化を可能にする。更に、G17のN末端に選択的なMAbをパネルに追加することによって、本明細書に記載の通り、試料中の遊離グリシン伸長G17及び全(結合プラス遊離)グリシン伸長G17の同定及び定量化が可能となる。
【0046】
[0051] 他の型のガストリンホルモンの同定、定量化、及びモニタリング用のMAbパネルとして有用な、本発明のMAbから選択されたMAb対の他の組合せも、当業者には自明であろう。本発明は、そのような本発明のMAb対も、本発明のMAb対の組合せも、また、本発明のMAb対の集合も包含する。
【0047】
[0052] 本発明のMAbは、ガストリンホルモン介在性の疾患及び状態になる素因を評価するために、また、それらに罹患している患者のそのような疾患及び状態を検出及び診断するために、ガストリンホルモン型の量及び比率を正確に測定する手段を提供する。例えば、患者の血清又は他の生体液を大規模スクリーニングするための、G17、G34、G17−Gly、及びG34−Glyガストリンホルモン型のいずれか1つ又はすべてに関するELISAアッセイに、本発明の抗ガストリンMAbを組み入れることができる。
【0048】
[0053] 本発明のMAb、本発明のMAbから選択されたMAb対の組合せ、及び本発明のMAbパネルは、高スループット法に適用される際に特に有用である。そのような方法には、ガストリンホルモン抗原検出のためのマイクロチップ法及びマイクロアレイ法が含まれ、それによって、マイクロプレート、スライド、又は、バーチャルウェルを有するプレート等の他のアッセイ基質上で多数の試料を試験することができる(例えば、Garyantesらに交付された米国特許第6565813号に記載のもの)。結合の検出は、利用可能である最先端の検出システムのうちのいずれによって行ってもよい。結合の検出は、例えば、抗原抗体結合等の特異的な生体分子反応によって生じる表面プラズモン抵抗の変化を用いて行うこともできる。酵素アッセイへのこの技術の適用に関しては、例えば、Taremiらに交付された米国特許第5981167号の明細書を参照されたい。この方法は連続流動モードで適用することができ、また、同様に、表面に固定されたペプチド又はタンパク質(ガストリンホルモン等)への抗体結合を検出するのにも、或いはガストリン抗体複合体を検出するのにも適用できる。後者の複合体は、表面に固定された、当該ガストリンホルモン型(G17、G34、G17−Gly、又はG34−Gly)のエピトープに特異的な抗体への結合によって検出してもよく、その場合、エピトープは、複合体の抗体による立体障害を受けないものである。更に、この技術は、放射性標識を必要とせずに、高スループット適用性及び高感度を可能にするという利点を有する。
【0049】
[0054] 本発明のMAbは、例えば、生検物質から得たもの等、組織試料の免疫組織化学(IHC)アッセイ及び免疫蛍光(IF)アッセイにも有用である。そのような分析は、個々のガストリンホルモン型の異常なレベルを検出し、それによって、ガストリンホルモン介在性の疾患及び状態を診断するのに用いることができる。
【0050】
[0055] 本発明のMAbは、当技術分野で周知の、既に確立されている方法に従って、ヒト化することができる。例えば、Waldmanらに交付された、「Labeled humanized anti−CD−18 antibodies and fragments and kits」という名称の米国特許第6689869号の明細書、及び、Carterらに交付された、「Method for making humanized antibodies」という名称の米国特許第6639055号の明細書、を参照されたい。ヒト化抗体は、元のマウスMabの結合親和性に更に適合するように再構成することができる。例えば、Onoらに交付された、「Re−shaped human anti−HM1.24 antibody」という名称の米国特許第6699974号を参照のこと。
【0051】
[0056] 本発明のMAbは、ガストリンホルモン介在性の疾患及び状態の予防及び治療に有用である。本発明の抗ガストリンMAbは、特定のガストリンホルモン型に対する受動免疫用の医薬組成物として製剤化することができる。例えば、Blackburnらに交付された、「Anti−factor IX/IXa antibodies」という名称の米国特許第6391299号(本明細書では、以下、‘299号特許と呼ぶ。)の明細書を参照されたい。本発明のMAbの機能性断片(例えば、Fab断片、F(ab’)2断片、及び対象のガストリンホルモン型への結合能力を保持する任意の断片。断片については‘299号特許を参照。)も、医薬組成物に組み入れて、治療に適用することができる。有用な医薬組成物については、‘299特許を参照のこと。本発明の医薬組成物を投与するのに好適な経路には、皮下、筋肉内、静脈内経路等、非経口投与経路が含まれる。別法では、上記医薬組成物を鼻腔内経路で送達することができる。ガストリンホルモン介在性の疾患又は状態になる可能性が高いと予想される患者における、そのような疾患又は状態の予防又は治療、或いは既にそのような疾患又は状態に罹患している患者の治療、に有効な量で投与した場合に、上記医薬組成物は特に有用である。
【0052】
[0057] 本発明の完全な抗ガストリンMAb又はその機能性断片、特にヒト化抗ガストリンMAbを含有する医薬組成物の、ガストリン介在性の疾患又は状態を治療するのに有効な量は、その疾患又は状態の進行の開始を阻止するか、又はその速度を低減させる量と定義されるが、より好ましくは、その疾患又は状態を安定化させる量であり、更に好ましくは、その疾患又は状態の退行を引き起こす量であり、最も好ましくは、その疾患又は状態の完全な治癒をもたらす量である。
【0053】
[0058] 更に、本発明のMAbは、ガストリンホルモン介在性の疾患及び状態の進行をモニターするためのイムノアッセイに適用することができ、その際、特定のガストリンホルモン型、或いは、遊離ガストリン型若しくは結合ガストリン型、又は全ガストリン型、のレベル又は量は、ガストリンホルモン介在性の疾患又は状態の治療の成否、又は進行に関する指標を提供する。
【0054】
[0059] 更に、本発明のMAbは、ガストリンホルモン介在性の疾患又は状態に罹患している患者のガストリンホルモン遮断治療を評価する方法において有用である。この方法は、
a)治療の前又は初期に、患者から生体液の第1の試料を得るステップと、
b)第1の試料中のガストリンホルモンのレベルを、イムノアッセイ法によって測定するステップと、
c)治療対象の疾患又は状態、及び第1の試料中のガストリンホルモンのレベルに基づいて診断を行うステップと、
d)ガストリンホルモンに結合して、in vivoでガストリンホルモンの標的受容体との結合を調節する第1の薬剤、又は第1の薬剤を生成する物質、を含む治療を患者に実施するステップと、
e)治療の効果が生じると考えられる適当な時間の後、患者から生体液の第2の試料を得るステップと、
f)第2の試料の第1のアリコート中の結合及び遊離ガストリンホルモンを含む全ガストリンホルモンのレベルをイムノアッセイによって測定するステップであって、
第2の試料の第1のアリコートを、(i)第1の薬剤が結合したいかなるガストリンホルモンとも置換する第2の薬剤、及び(ii)第2の薬剤に結合しない固定化抗ガストリンホルモン抗体、と共にインキュベートし、
第2の薬剤を洗浄除去し、
ガストリンホルモンには結合するが、前記固定化抗体とは競合しない検出可能抗体を添加し、
ガストリンホルモンに結合した固定化抗体を含み、当該ガストリンホルモンが検出可能抗体と結合している免疫複合体を形成させるステップと、
g)免疫複合体中の検出可能抗体の量を検出し、それによって、第2の試料中の全ガストリンホルモンの量を測定するステップと、
h)第2の試料の第2のアリコートを用いて、ステップf)及びg)を反復することによって、遊離ガストリンホルモンのレベルを測定するステップであって、
ステップf)におけるインキュベーションを第2の薬剤なしで行うステップと、
j)第1の試料中の遊離ガストリンホルモンの測定量を、第2の試料中の遊離ガストリンホルモン及び全ガストリンホルモンの量と比較して、患者のガストリンホルモン遮断治療の有効性を判定するステップと、
を含む。
【0055】
[0060] 患者におけるガストリンホルモン遮断治療を評価するのに適用される上述の方法は、臨床診療で特に有益である。臨床診療では、ある治療処方計画を進めるか、或いは別のものを進めるかを決定する時期が、患者の予後にとって極めて重要となることがある。本発明の方法は、これらの極めて重要な決定の根拠となる情報を提供する。この方法は、治療の前又は初期段階(例えば、米国特許第5622702号明細書に記載のような、ガストリンホルモンペプチド結合ワクチンで免疫した直後)のガストリンホルモンの測定を備え、また、治療の効果が生じ始めていると予測される期間の後の、全ガストリンホルモン及び/又は遊離ガストリンホルモンの1つ又は複数の測定を備える。
【0056】
[0061] ガストリンホルモン遮断治療は能動免疫であってもよく、その場合、ガストリンに対する抗体を産生させる免疫原を、上述の通りに患者に投与する。別法では、ガストリンホルモン遮断物質を受動的に患者に投与してもよい。ガストリンホルモン遮断物質は、いかなるガストリンホルモン遮断物質でもよく、特に限定されるものではないが、例えば、抗ガストリンホルモン抗体、特にヒト化されたモノクローナル抗ガストリンホルモン抗体が挙げられる。或いは、ガストリンホルモン遮断物質は、ガストリンホルモン受容体又はガストリンホルモン受容体模倣体であってもよい。ガストリンホルモン受容体模倣体は、例えば、可溶性のガストリンホルモン受容体、又は可溶性のガストリンホルモン受容体断片であるが、それ以外に、ガストリンホルモンに結合する機能を有する任意の他の分子等、ガストリンホルモンへのガストリンホルモン受容体の結合を模倣するいかなる分子でもよい。
【0057】
[0062] 本発明は、ガストリンホルモンを含有すると推測される試料をスクリーニングするための組成物、方法、及びキットも提供する。そのようなスクリーニングは、そのようなポリペプチドを含有又は産生していると推測される患者試料又は実験室試料について行うことができる。キットは、本発明の抗体を含有することができる。このキットは、試料と本発明の抗体との相互作用を検出する試薬を含有してもよい。提供される試薬は、放射標識、蛍光標識、又は酵素的に標識されたものであってもよい。このキットは、本発明の抗体と結合又は相互作用することが可能な既知の放射標識された物質を含有してもよい。
【0058】
[0063] キットの試薬は、液体溶液として提供することも、固体の支持体に結合させた状態で提供することも、乾燥粉末として提供することもできる。試薬を液体溶液で提供する場合、液体溶液は、水溶液であることが好ましい。提供する試薬を固体の支持体に結合させる場合、固体支持体は、クロマトグラフィー媒体、複数のウェルを有する試験プレート、又は顕微鏡用スライドであることが好ましい。提供する試薬が乾燥粉末である場合、粉末は、適当な溶剤を添加することによって再構成することができるが、再構成された形で提供されてもよい。
【0059】
[0064] 本発明のキットは、容器に入れた状態で提供するが、容器には、通常、抗体、抗原、又は検出試薬を入れたバイアル、好ましくはそれらが適切に分注されたバイアルが含まれる。本発明のキットは、通常、市販のために、抗体容器、抗原容器、及び試薬容器を収容する手段も含むことになろう。そのような容器は、所望のバイアルを保持するプラスチック容器、1つ又は複数の必要な化学物質(例えば、クロマトグラフィー用の物質、溶媒、溶離液)、並びに検出反応用の試験管、界面活性剤、抗体及び化学物質、を含むものでもよい。
【0060】
[0065] 更に別の実施形態では、本発明は、免疫検出法及びそれに関連したキットに関する。ガストリンホルモン又はそのペプチド断片が、それとの反応性を有する抗体を検出するのに利用可能なこと、或いは、ガストリンホルモン又はガストリンホルモン介在性のエピトープ含有ペプチドを検出するのに、本発明に従って調製された抗体が利用可能なことが提唱されている。通常、これらの方法は、先ず、そのようなホルモン、ペプチド又は抗体を含有することが推測される試料を得るステップと、免疫複合体を形成させるのに有効な条件下で、上記試料を、本発明による抗体又はペプチドと接触させるステップと、その後、免疫複合体の存在を検出するステップと、を含むであろう。
【0061】
[0066] 一般に、免疫複合体形成の検出は、当技術分野で完全に周知のものであり、多数の方法の適用を通じて実現できる。例えば、本発明では、ELISA、RIA、免疫ブロット(例えば、ドットブロット、スロットブロット、ウェスタンブロット等)、間接免疫蛍光法、及び同様のものの適用が企図されている。通常、免疫複合体形成は、放射性標識、酵素タグ(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、又は同様のもの)等の標識の使用によって検出されるであろう。当技術分野で周知の方法に従って、2次結合リガンド(例えば、2次抗体、ビオチン/アビジンリガンド結合物質)を使用することによって、追加的な利点が生じる可能性がある。
【実施例】
【0062】
[0067](実施例1:ヒトG17のC末端に対するモノクローナル抗体の産生)
[0068] CSSEEAYGWMDF−NH2(配列番号10)と、リンカースペーサである(−Cys−Ser−Ser−)配列と、それに続く、ヒトG17及びG34のC末端エピトープを含有するアミノ酸配列(−EEAYGWMDF−NH2、配列番号6)と、を含有するペプチドは、標準的な固相ペプチド合成法によって合成されたものを購入した。
【0063】
[0069] このペプチドを免疫原に組み込み、G17/G34のC末端に対する抗体を、以下の通りにして誘導した。最初に、このペプチドを、ジフテリアトキソイド(「DT」)に、共有結合によって連結させ、ペプチド−担体結合を産生させた。各DT担体上に置換されたペプチド単位の数を測定し、最後に、この結合体を免疫原として処方した。使用した方法は、米国特許第5622702号明細書に記載の通りであった。
【0064】
[0070] 簡潔には、担体へのペプチドの化学結合は、ヘテロ二官能性架橋物質であるε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシサクシニミド(ε−MCS)を用いて行った。この結合体を、0.1Mナトリウムリン酸緩衝生理食塩水、pH7.3(PBS)に対する透析によって精製し、ローリー法のアッセイによってタンパク質濃度を測定した。DT上でのペプチドの置換レベルは、結合体のアミノ酸分析によってモル量で測定した。その後、溶解させた結合体は、結合体溶液をMontanide ISA 703(SEPPIC社製、仏国)オイルと30/70の比率(結合体/アジュバントのwt/wt比)で混合することによって、Montanide ISA 703をアジュバントとした免疫原として処方した。混合は、適当な容積の各々の液体を注射器に引き込み、次に、連結ハブを通して、第2の注射器との間で溶液を前後に迅速に通過させることによって行った。
【0065】
[0071] マウスの免疫は、最初に、容積0.1mL中の0.1mgのペプチドDT結合体免疫原/Moxtanide ISA 703をi.p.注射して行った。最初の注射の3週間後に、同一の用量で第2の注射を投与した。
【0066】
[0072] G17/G34のC末端に選択的なMAbを産生するハイブリドーマを作製するために、当業者に周知の標準的な方法によって、免疫化されたマウスから得た脾細胞を、標準的なマウス骨髄腫融合パートナー細胞株に融合させた。これらの方法は、多数の総説及び実験ハンドブックに記載されている。例えば、Kaprowskiらに交付された米国特許第4196265号明細書「Method of producing antibodies」;「Selected Methods in Cellular Immunology」(「Chapter 17:Immunoglobulin Producing Hybrid Cell Lines」B.Mishell及びS.Shiigi、W.H.Freeman and Co.社、San Francisco、1980年);Harlowe及びLane、「Antibodies;A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、1988年;Zola、「Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques」、CRC Press,Inc.社、Boca Raton,FL、1987年を参照されたい。免疫化されたマウスの追加免疫を、それらの脾細胞を細胞融合用に採集する4日前に、上述したペプチド−DT結合体0.1mgのPBS溶液をi.p.注射することによって行った。ハイブリッド細胞の初期選択は、Mishell及びShiigiの文献に記載の通り、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン補充培地を用いて行った。この融合体をF458と名付けた。
【0067】
[0073] G17のC末端に対するMAbを産生するハイブリドーマを単離するための最初の選択ステップは、標的ペプチドに対する抗体産生と、ハイブリッド細胞株の安定性とに関する細胞の選択を含むものであった。抗体を産生する細胞の選択は、G17/34のC末端に対する抗体のための単一クローンを含有する組織培養ウェルから得られた細胞培地をスクリーニングすることによって実施した。スクリーニングは、リシン−16でシステインを介して、免疫担体であるウシ血清アルブミン(BSA)に連結された、アミド化された合成ペプチド(G34のアミノ酸16〜34−NH2)を含む結合体を標的抗原として用いたELISAによって実施した。適当なELISA法は当業者に知られており、そのうちのいくつかの例は、下記に詳細に説明する。安定した細胞株は、ELISA試験で、hG34(16〜34)NH2−BSA結合体に結合する抗体を産生した各ハイブリッドを2回クローニングすることによって取得した。これらの方法によって、G17及びG34に共通のC末端に対するMAbを産生する15株のハイブリッド細胞株を取得した。
【0068】
[0074](実施例2:全(結合プラス遊離)G17の免疫酵素アッセイで優れた性能を示すモノクローナル抗体の選択)
[0075] 抗ガストリン抗体を含有する可能性のある、ヒト血漿等の生体液試料中のG17の総量を測定する方法が開発されており、2004年3月29日出願の米国特許出願第10/813336号明細書に記載されている。簡潔には、この方法は、生体液試験試料中に存在して、同様に試験試料中に存在する可能性のあるG17N末端エピトープ特異的抗体に、N末端エピトープを介して結合している可能性のあるいかなるガストリンホルモンとも置換するように、ヒトG17のアミノ酸1〜8を含有するペプチド(ヒトG17(1〜8)置換ペプチド)の過剰量を、この生体液試験試料中に添加するステップを含む。一定の時間インキュベーションした後で、置換用のペプチドを含有する試料混合物を、G17のC末端に対して産生された捕獲抗体でコーティングされた96ウェルのELISAプレートに添加する。インキュベーションの後で、プレートを洗浄して、置換用のペプチドを除去し、それに続いて、G17のN末端エピトープに結合する酵素結合抗体を添加することによって、結合しているG17を検出及び定量化する。結合しなかった酵素結合抗体を除去するのに、別の一連の洗浄ステップが必要であり、抗体に連結された酵素の作用によって検出可能な産物を産生する発色基質又は他の基質を添加することによって、検出可能なシグナルを発生させる。例えば、酵素が西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)である場合には、基質はテトラメチルベンジジンスルホナート(TMBS)である。アルカリホスファターゼが、検出に使用された酵素である場合には、有色化合物p−ニトロフェノールを産生する発色基質として、p−ニトロフェノールリン酸を使用することができる。発色の程度は、吸光度単位(AU、p−ニトロフェノールの場合は405nm、また、TNBSの場合には450nmで測定する)で測定し、これは、試験試料中に存在するG17の量を示し、実際の濃度は、試験試料の吸光度を測定して、既知の濃度のG17を用いて作成された検量線と対照させることによって決定する。
【0069】
[0076] ヒト患者からの血漿試料を用いて、このアッセイで予備試験を行った。この血漿試料に所定の濃度のG17を添加し、G17のC末端エピトープに対するポリクローナルウサギ抗体を、試験プレートのウェルにコーティングされた捕獲抗体として用いてイムノアッセイを行った。これらのアッセイから得られた結果及びデータは、一貫性が乏しく、許容されるレベルの感度を与えなかった。従って、試験プレートをコーティングするのに、C末端に選択的なMAbを使用し、このアッセイにおける捕獲抗体として試験した。
【0070】
[0077] 融合体458から得たC末端G17選択的なMAbの各々を全G17アッセイで試験するために、G17のC末端に対する15株の個々のMAbを、最初にプロテインG親和性クロマトグラフィーで精製した。これは、市販キット(HiTrap Protein G HP、1mL、Amersham Biosciences社)を、製造業者の指示に従って使用することによって行った。その後、各MAbの濃度を、波長280nmの吸光度(A280)から決定した。濃度を得るために、A280を濃度係数1.4mL/mgで割った。濃度が0.1〜1.0mg/mLの範囲になるように調整した。その後、G17のC末端へのMAbの結合を質的に確認するために、各溶液をELISAで再試験した(無希釈)。
【0071】
[0078] 次に、15株のMab、1株の陰性対照MAb、及び精製されたMabの3種類の混合物を、上述の通りヒトG17(1〜8)置換ペプチドを用いて、全G17の免疫酵素アッセイでの性能を求めるために試験した。各MAbを、アッセイコーティング緩衝液(1バイアルのConvol pH8.0濃縮緩衝溶液(BDH社、製品番号18052 1U)を2.5Lの水に添加し、アジ化ナトリウム(2.5g)を添加して溶解させる)で最終濃度10μg/mLに希釈し、その後、全G17を測定する方法で上述した通り、96ウェルのELISAプレートのウェルをコーティングするのに用いた(ウェルあたり0.1mLを添加した)。
【0072】
[0079] 終夜、室温でインキュベートして、存在するG17を内因性の血清プロテアーゼで完全に消化させることによって天然のG17が枯渇している血清試料に、既知濃度のG17のアリコートを添加した。G17の既知濃度の標準溶液を調製するために、この「G17添加」された血清の希釈液を調製した。標準溶液中のG17濃度は、0、4.1、64、及び800pMであった。その後、G17のN末端を含むヒトG17(1〜8)置換ペプチドを添加して、これらの試料をアッセイでの試験試料として取り扱った。その後、G17のC末端に選択的な個々のMAbの調製物でコーティングされたプレートウェルに、各G17溶液を添加し、上述した操作法に従って全G17アッセイを行った。
【0073】
[0080] これらのアッセイの結果を表1に示す。結果は、試験プレートのウェルに捕捉MAbとしてコーティングされた15株のモノクローナル抗体の各々を用いたアッセイにおける、各濃度のG17によって得られたA280吸光度度単位で示されている。
【0074】
【表1】

【0075】
[0082] アッセイにおける各MAbの性能を試験した結果に基づいて、最適なMAbを選択した。単離されたMAbを比較するのに使用された規準には、以下のものが含まれていた。すなわち、
1) 0.0pMのG17が添加された際の吸光度の値が低いこと(ベースライン値、好ましくは≦0.1AU)、
2) 4.1pMのG17を添加した際の吸光度がベースラインの倍あること、
3) アッセイの主要な動作範囲である、4.1pMのG17と、64pMのG17との間で、AUの増大(勾配)が最も急であること、そして
4) G17濃度800pMでAUの値が最も高いことである。
【0076】
[0083] これらの規準に基づいて、最も性能の良かったMAbは、F458−3−8G 1H 3Cであった。この抗体の名称をMAb458−1に改め、G17のC末端に選択的に結合する最適なMAbとして、これ以降のアッセイで使用した。これらの規準及び同様のアッセイは、下記に例示する、ガストリンホルモン型G17、G34、G17−Gly、及びG34−Glyの末端のエピトープに対して産生されたMAbの選択にも適用した。
【0077】
[0084] 結合しているホルモンと置換する、適切なアミノ酸配列の置換ペプチドの使用を、他のガストリンホルモンペプチド型のアッセイに組み入れることによって、試料中の遊離ホルモンの量と、全ホルモン(結合ホルモン+遊離ホルモン)の量との両方の測定を行うことができる。置換ペプチドの使用は、当該ペプチドが結合する領域のアミノ酸配列が利用可能ないかなるペプチドホルモンの総量のアッセイにも適用することができる。
【0078】
[0085](実施例3:ヒトG34のN末端に対するモノクローナル抗体の単離及び特性決定)
[0086] G34のアミノ末端に対するMAbを産生するハイブリドーマを、G17及びG34のC末端に対するMAbの産生に関する実施例1に記載の通りに作製した。但し、G34のN末端に存在するエピトープに対して、ドナーマウスの脾細胞を免疫化するのに使用したペプチド、及び、G34のN末端エピトープに特異的なMabを選択するのに使用したペプチドの組成は異なるものであった。G34のN末端エピトープに対する抗体反応を誘導するため、pELGPQGRPPPPC(配列番号12)というペプチドをDTに結合して、免疫原を形成させた。G34のN末端エピトープに対するMabを同定するためのELISAで使用する標的抗原を形成させるために、このペプチドをBSAに同様に連結させた。この融合体にF401という番号を付けた。
【0079】
[0087] F401は、MAb401−2を産生した。G34への特異性は、抑制ELISAによって立証した。この抑制ELISAで、G34N末端のペプチド性免疫摸倣体(immunomimic)(配列番号12)へのMAb401−2の結合が、表2に示す通り、G34ペプチドのみによって抑制されることが示された。
【0080】
【表2】

【0081】
[0089] G17、G17−Gly、及びウマG17を含む他の型のガストリン、並びにCCK8(非硫酸化)及び陰性対照であるGnRHは、401−2 Mabの結合を抑制しなかった(表2に示した通り)。
【0082】
[0090](実施例4:G17のN末端に対するモノクローナル抗体の単離及び特性決定)
[0091] G17のアミノ末端に対するMAbを産生するハイブリドーマを、G17及びG34のC末端に対するMAbの産生に関する実施例1に記載の通りに作製した。但し、G17のN末端に存在するエピトープに対して、ドナーマウスの脾細胞を免疫化するのに使用したペプチド、及び、G17のN末端エピトープに特異的なMabを選択するのに使用したペプチドの組成は異なるものであった。G17のN末端エピトープに対する抗体反応を誘導するため、pEGPWLERPPPPC(配列番号5)というペプチドをDTに結合して、免疫原を形成させた。G17のN末端エピトープに対するMabを同定するためのELISAで使用する標的抗原を形成させるために、このペプチドをBSAに同様に連結させた。加えて、pEGPWLEEEEAAPPC(配列番号16)というペプチドをBSAに連結させて、G17のN末端エピトープに関するELISA標的抗原を作製した。この融合体にF400という番号を付けた。F400は、G17のN末端エピトープに対する4株のMAbを産生した。これらは、MAb番号を400−1から−4まで通して付けた。
【0083】
[0092] MAbは、標準的な方法によって、マウスの腹水液として産生した。試験での使用には、F400 MAbの各々の腹水液を等容積で混合して、前記抗体のプールを形成させた。このプールの抗G17 MAb力価を、ELISAによって測定した。それらを表3に示す。
【0084】
[0093] 4株のF400 MAbの各々の親和性を、抑制ラジオイムノアッセイのスキャッチャード解析によって測定した。この抑制ラジオイムノアッセイでは、当業者に知られている標準的なラジオイムノアッセイ法を用い、放射性ヨウ素化されたG17への各MAbの結合を、標識されていないG17で、その濃度を上昇させながら抑制した。MAb400−1〜−4の各々の親和性(Ka)を表4に示す。G17のN末端エピトープへの特異性は、抑制ELISAによって立証した。この抑制ELISAでは、G17(配列番号11)のN末端のペプチド性免疫摸倣体への、MAb400−1から−4までの結合が、G17、G17−Gly、及びウマG17ペプチドによってのみに抑制され、一方、G34、並びにCCK8(非硫酸化)及び陰性対照であるGnRHは、400−1から−4までのMAbの結合を抑制しないことが示された(表5に示す通り)。
【0085】
[0094](抗G17 MAbの特性決定)
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

【0088】
[0098](実施例5:グリシン伸長G17/G34のC末端に対するモノクローナル抗体の単離及び特性決定)
[0099] G17−Glyのカルボキシ末端エピトープに対するMAbを産生するハイブリドーマを、G17及びG34のC末端に対するMAbの産生に関する実施例1に記載の通りに作製した。但し、G17−Glyのカルボキシ末端エピトープに対して、ドナーマウスの脾細胞を免疫化するのに使用したペプチド、及び、G17−Glyのカルボキシ末端エピトープに特異的なMAbを選択するのに使用したペプチドの組成は異なるものであった。G17−Glyのカルボキシ末端エピトープに対する抗体反応を誘導するため、CPPPPSSYGWMDFG(配列番号14)というペプチドをDTに結合して、免疫原を形成させた。
【0089】
[0100] CGGSKKEGPWLEEEEEAYGWMDFG(配列番号15)というペプチドをBSAに連結させ、G17−Glyのカルボキシ末端エピトープに対するMabを同定するためのELISAで使用する標的抗原を形成させた。G17−Glyには結合するが、G17又はG34には結合しないMAbを選択するために、この融合体には、G17−Gly(配列番号2)ではMAbが抑制されるが、G17(配列番号1)では抑制されないことを実証する追加の選択ステップを用いた。この融合体にF445という番号を付けた。
【0090】
[0101] F445は、グリシン伸長G17に特異的な2株のMAbを産生した。これらには、MAb番号445−1及び445−2を付けた。これらのMAbを作製するのは特に困難であった。発明者らがそれに成功するまでに、約14回の融合を行う必要があった。通常、本明細書に記載の他のガストリンホルモン等、ペプチドホルモンに対するMAbを得るのには、1回の融合で十分である。
【0091】
[0102] G17−Glyへの特異性は、抑制ELISAによって立証した。この抑制ELISAでは、G17−Gly C末端エピトープ標的ペプチド(配列番号14)BSA結合体へのMAb 445−1及び445−2の結合を、G17−Glyペプチド(配列番号2)及びCPPPPSSYGWMDFG(配列番号14)という免疫原ペプチドのみが抑制し、一方、G17、G34、及びウマG17を含む他の型のガストリン、並びにCCK8(非硫酸化)及び陰性対照であるGnRHは、445−1及び445−2 MAbの結合を抑制しなかったことが示された(表6に示す通り)。
【0092】
【表6】

【0093】
[0105](実施例6:G34のC末端に対するモノクローナル抗体の単離及び特性決定)
[0106] ヒトG34及びG17は同一のC末端エピトープを有する。実施例1に記載の融合体番号F458で産生されたMAbは、G34及びG17両方のC末端エピトープに結合するMAbを産生した。この融合体で産生されたMAbに、458−1から−5までの通し番号を付けた。
【0094】
[0107] G17とG34とによって共有されているC末端エピトープへの、MAb458−1から−5までの特異性は、抑制ELISAによって立証した。この抑制ELISAでは、G17/34 C末端エピトープ標的ペプチド(配列番号11)BSA結合体への、MAb458−1から−5の結合を、G17ペプチド(配列番号1)、G34ペプチド(配列番号3)、及びCCK8ペプチド(配列番号13)(これもC末端エピトープを提示する)のみが抑制し、一方、G17−Gly及びG17(1〜9)N末端を含む他の型のガストリン、並びに陰性対照であるGnRHは、458−1から−5までのMAbの結合を抑制しなかったことが示された(表7に示す通り)。
【0095】
【表7】

【0096】
[0109](実施例7:膵癌、胃癌、及び大腸癌の細胞に対するF400 MAbのin vitroでの抗腫瘍細胞有効性の実証)
[0110] 実施例4の図3に示した、G17のN末端に対するMAbのプールを、ヒト膵癌、胃癌、及び大腸癌から得られた腫瘍細胞株の増殖抑制能について試験した。これらのin vitro研究では、各臓器源から2株の細胞株を試験した。試験された6株の個々の腫瘍細胞株は、それ自身のG17ホルモンを産生することが知られていた。これは、オートクリン効果をもたらす可能性があり、G17に対する中和MAbが、それを抑制するかもしれない。
【0097】
[0111] 細胞に対するin vitro試験用のF400 MAb混合物を調製するために、セファロース(Sulfo−Link、Pierce社)に、Sulfo−Linkキットと共に提供された方法によって連結された、G17(配列番号12)のN末端エピトープを提示するペプチドに対するクロマトグラフィーによって、抗体の親和性精製を行った。これらのMAbをPBSに対して透析し、それらの濃度を、A280測定によって決定した。
【0098】
[0112] 細胞は、標準条件(37℃、5%CO、加湿インキュベーター)下で培養した。培地は、10%(v/v)熱不活性化されたウシ胎仔血清(FBS、Sigma社)を含有する完全RPMI1640培地(Gibco社)からなるものであった。
【0099】
[0113] 実験用の細胞を採取するために、準集密的な単層培養中の細胞を、0.025%のエチレンジアミン四酢酸(EDTA、Sigma社)を用いて採取した。細胞を培地で洗浄し、1x10生存細胞/mLの密度で培地に再懸濁し、96ウェル培養プレート中に、0.1mL/ウェルでプレーティングした。終夜のインキュベーションの後、吸引によって培地を除去し、F400 MAbの混合物又は正常なマウス免疫グロブリン(NMIg)のいずれか500μg/mLを含有する新たな培地で置換した。その後、更に48時間、細胞をインキュベートし、それに続いて、哺乳類細胞のin vitro培養における細胞増殖を評価するのに一般的に使用されているテトラゾリウムベースのMTTアッセイによって細胞増殖を評価した。各試験グループ(n=5)について、MTTアッセイで得られた各ウェルの吸光度を平均した。その後、NMIgの存在下における増殖と比較して、F400 MAbが細胞増殖を抑制したパーセントを計算した。
【0100】
[0114] これらの試験の結果を表8に示す。表8は、抗G17 MAb混合物が、試験された各腫瘍細胞株の増殖を抑制したことを示す。抑制は、膵臓腫瘍細胞株の19.5%から、胃細胞株の52.0%にまで及んだ。
【0101】
[0115] 従って、3種類の一般的な消化管の悪性腫瘍に由来する腫瘍に対して、本発明のMAbがin vitroで抗増殖性治療活性を有することが示された。
【0102】
【表8】

【0103】
[0117](実施例8:胃癌細胞に対するF400 Mabのin vivoでの抗腫瘍有効性の実証)
[0118] G17のN末端に対するMAbのプールは、MAb400−1〜−4の各々を含有する腹水液の等容積混合物を含有するものであるが、MGLVA1という、ヒト胃癌から得られた腫瘍細胞株の増殖を抑制するそれらの能力を試験した。MGLVA1細胞はそれら自身のG17ホルモンを産生することが知られており、これは、オートクリン効果をもたらす可能性があり、G17に対する中和MAbが、それを抑制するかもしれない。
【0104】
[0119] in vivo試験用のF400 MAb腹水液混合物を調製するために、それらの腹水液を56℃で30分間加熱することによって、腹水液中の補体を枯渇させた。Sigma社から購入した、陰性対照の腹水液も同様に処理した。
【0105】
[0120] MGLVA1胃腫瘍細胞は、メスのヌードマウスで皮下腫瘍として増殖させた。腫瘍を試験マウスに移植するためには、腫瘍保持マウスから外科的に腫瘍を切除し、約1mmの小片に切断した。その後、これらの断片を、研究で使用されるヌードマウスの側腹部に皮下移植し、腫瘍を生着させる。腫瘍部位を観察し、腫瘍成長をノギスで測定した。腫瘍の生着が観測されたときに、マウスを、試験MAb(F400混合物)で処置されるグループ、又は陰性対照の腹水で処置されるグループに無作為に振り分けた。この研究ではマウス12匹/グループであった。
【0106】
[0121] 第1週には、0.2mLの腹水液(F400混合物又は陰性対照)を、週に2回、マウスの腹腔内に注入した。第1週の後には、注射容積を週2回0.1mLにまで減少させた。週に3回、腫瘍の測定を行った。この研究は27日間継続した。研究の最後に、マウスを屠殺し、腫瘍を切除して、重量を測定した。
【0107】
[0122] F400試験MAb混合物で処置されたマウスのMGLVA1胃癌腫瘍の平均重量は0.75gであった。一方、MGLVA1胃癌腫瘍を保有し、陰性対照の腹水液で処置されたマウスの腫瘍の平均重量は1.5gであった。従って、F400試験混合物の抗G17 MAbは、胃癌細胞に対して強力な増殖阻害作用を示し、腫瘍の重量を50%減少させた。
【0108】
[0123](実施例9:G17及びG34のC末端に対する抗体の力価を測定するためのELISA)
[0124] この解析法の目的は、試験血清中の抗hG17抗体の力価をELISAによって測定することである。簡潔には、本発明の抗hG17抗体ELISAは、hG17(1〜9)−AAPPC−BSA結合体(配列番号16のリンカーを介してしてBSAに連結されたヒトガストリンホルモンペプチドのアミノ酸1〜9)によって提示されたhG17エピトープに対する抗体(Ab、ポリクローナル又はモノクローナルのいずれか)の特異的な結合に基づいている。
【0109】
[0125] 最初のステップで、96ウェルELISAプレートのウェルに結合体を結合させた。遊離している結合体は、96ウェルプレート洗浄機を用いた洗浄ステップで除去した。その後、試験(又は対照)抗血清を添加した。試験血清中に存在する抗hG17 Abは、抗原表面に存在するhG17ペプチドエピトープの存在によって結合体に結合した。その後、検出される抗hG17抗体に種特異的な抗IgGアルカリホスファターゼ試薬の添加によって、抗体を検出した。例えば、ウサギ抗hGH17抗体は、Ab検出試薬としてヤギ抗ウサギIgGアルカリホスファターゼ結合体(「GAR−AP」)を用いて検出する。GAR−APは、ウサギ抗hG17 Abに結合する。続いて、抗Ig−AP結合体のAP部分が、基質から有色産物(p−ニトロフェノール)への変換を触媒する。発色は、ELISAプレートリーダーでの405nmの吸光度として測定した。
【0110】
[0126] 試験試料と同じ動物種から得た、プールされた抗hG17血清を含有する標準血清又は、指定された参照力価を有する抗hGI7 MAbを含有する腹水液を陽性対照として用いた。試験試料と同じ動物種から得た血清、例えば、正常な血清、免疫前の血清等を陰性対照として用いた。
【0111】
[0127] 直線領域における発色の程度は、標的抗原に結合した抗hG17 Abの量に正比例していた。標準曲線を作成するために、陽性標準(抗hG17)血清の連続希釈に対する吸光度のプロットを用いた。その後、陽性標準物質の参照力価(例えば、ウサギ抗hG17陽性標準物質の1:200000希釈)と同じ吸光度を生じる希釈率から試験試料の抗hG17 Ab力価を決定した。
【0112】
[0128] 試薬溶液: この解析法で調製するように特定された試薬及び溶液の量は、便宜のためのみのものである。実際の量は、必要に応じて調節できる。
【0113】
1. 0.02%のNaNを含有する炭酸緩衝液(「炭酸緩衝液」):1.59gのNaCOと、2.93gのNaHCOを約750mlの蒸留水中にマグネチックスターラで溶解させることによって作製する。4mlの5%NaN溶液を添加して、撹拌する。水を加えて1.0リットルに調整する。pHを測定する。pHは、9.6±0.2とすべきである(必要に応じて、1.0MのNaOH又は1.0MのHClでpHを調整する)。必要になるまで冷蔵庫で保存する。
【0114】
2. 0.05%のTween−20及び0.02%のNaNを含有するFTA(PBS)(「FTA/Tween」):9.23gのFTAを約750mlの精製水中に溶解させる。0.5mlのTween−20と4mlの5%NaNを添加する。水を加えて1.000リットルに調整する。
【0115】
3. 1%BSAを含有するFTA/Tween(「BSA/FTA/Tween」):10gのBSAを1000mlのFTA/Tweenに溶解させる。
【0116】
4. 基質緩衝液:50mgのMgCl・6H0を448mlの精製水に溶解させる。50mlのDEAと、2mlの5%のNaNと、を添加する。濃塩酸でpHを9.8に調整する。光から保護して室温で保存する。
【0117】
5. PBS、pH7.2:固体のFTA(FTA赤血球凝集緩衝液(「FTA」)(Becton Dickenson Microbiology Systems社、Cockeysville,MD)から調製することができる。
【0118】
[0129] ELISAの手順: 抗原でのコーティング:炭酸緩衝液中に1μg/ml hG17(1〜9)−AAPPC−BSA結合体の溶液(配列番号16のリンカーを介してBSAに連結されたヒトガストリンホルモンペプチドのアミノ酸1〜9)を調製する。各プレートのコーティングには、最小限5.2mlの抗原溶液が必要である。炭酸緩衝液で、1mg/ml結合体保存溶液の1:1000希釈を行うことによって、抗原溶液を調製する。プレートは、例えば、Microtiter(登録商標)イムノアッセイプレート、硬質スチレン(例えば、Immulon(登録商標)2丸底96ウェルプレート、Dynatech Laboratories,Inc.社、VA;平底96ウェルプレート、ポリスチレン:例えば、Microwell Plates、Nunc社、VWR社販売)等、ELISAアッセイに適したいかなるプレートでもよい。50μl/ウェルの抗原溶液を添加することによって、Immulon(登録商標)2丸底プレートを抗原でコーティングする。水分の消失を防止するために、プレートを湿室(例えば、水分を含んだペーパータオルの入っている密閉容器)に保存し、冷蔵庫(2°〜8℃)で終夜インキュベートする。
【0119】
[0130] 血清希釈液の調製: 陽性標準及び陰性対照、並びに試験血清の1/100.5系列希釈シリーズを、表9に示す通りに調製した。血清は、平底96ウェルプレート内のBSA/FTA/Tween溶液中に希釈した(12チャンネルのマルチピペッターによって、最大12点の血清の同時希釈が可能となる)。
【0120】
【表9】

【0121】
[0132] 各血清の希釈液を、最小作業容積を200μlとするのに十分な容積調製した。血清力価に応じて、各血清の1/100希釈(低力価血清用)又は1/1000希釈(高力価血清用)に始まる希釈液を行Aに作製し、その後、系列希釈を各列の下側へ行Hまで進め(表9を参照)、合計8つの各試料の希釈液を産生させる。陰性対照の連続希釈は、1/100から始めて調製した。陽性標準血清及び事前採血/陰性対照血清の連続希釈試料は、各プレートで2つ組みで行った。
【0122】
[0133] プレートの洗浄: プレート洗浄機(例えば、Ultrawash Plus;又はDynaWasher II(Dynatech Laboratories,Inc社,VA)又は同等のもの)を用いて、コーティングされたプレートを、各々4回、FTA/トゥイーンで洗浄し、その後、残留溶液を除去するために、ペーパータオルの上にプレートを「勢いよく押し付けた」。
【0123】
[0134] 抗体結合: 下記の表10に示す通りに、試料プレート連続希釈を行った後、50μl/ウェルの希釈された血清を、抗原でコーティングされた丸底プレートにおける対応するウェルに移した。プレートを湿室内、室温で1時間インキュベートした。
【0124】
【表10】

【0125】
[0136] 抗体検出試薬: 抗Ig−アルカリホスファターゼ結合体の適当な希釈液をFTA/Tweenで調製した。アッセイではプレートあたり最小限5.2mlが必要であった。プレートは上述の通りに洗浄した。50μl/ウェルのGAR−AP溶液(抗Ig−アルカリホスファターゼ結合体、例えば、ウサギ抗hG17抗体を試験するには、ヤギ抗ウサギIgG(H+L)−アルカリホスファターゼ(Antibodies Inc.社、Davis,CA))を、丸底プレートのすべてのウェルに添加し、湿室内、室温で、1時間インキュベートした。
【0126】
[0137] ウサギ以外の種から得られた血清中の抗hG17抗体を検出するには、試験用血清を産生した種に特異的な抗Ig−AP結合体を用いなければならない(例えばヒト抗hG17抗体は、試薬の各ロットに関して確立した希釈で使用される抗ヒトIgG−AP試薬で検出されるであろう)。陽性標準及び陰性対照血清は、試験血清と同じ種から得るべきである。
【0127】
[0138] 基質溶液: p−NPP錠剤(p−ニトロフェニルリン酸、Phosphatase Substrate Tablets,Sigma 104(「p−NPP」)(Sigma Chemical Co.社、St.Louis,MO)として販売)を冷凍庫から取り出して、室温に暖まるまでおいた。使用する直前に、1錠のp−NPP錠剤を、5mlのDEA基質緩衝液(室温)に添加することによって、1mg/mlのp−NPP溶液を調製した。1枚のアッセイプレートには、基質溶液の各5ml分量で十分であった。基質溶液は、使用するまで暗所に保存した。
【0128】
[0139] 基質の添加: プレートは上述の通りに洗浄した。列1に始まるすべてのウェルに、50μl/ウェルのp−NPP溶液を、8(又は12)チャンネルマルチピペッターを用いて同時に、行Aから始めて添加した。
【0129】
[0140] 反応のモニタリング: 参照力価に最も近い陽性標準物質希釈液の吸光度が、ELISAプレートリーダーの最大線形測定値の10〜30%に達したときに、基質溶液の発色は停止させた。参照力価に対応する希釈液が、リーダーの読み取り範囲の10〜30%に達したとき(通常10〜30分間の発色時間の後)を判定するために、陽性標準物質の吸光度をモニターするのに、MRX自動プレートリーダー;若しくはMR580 MicroELISA自動リーダー(Dynatech Laboratories,Inc.社、VA);又はこれらの等価物等のELISAプレートリーダーを用いた。ELISAリーダーは、p−ニトロフェノール用にA405nmで測定するように設定した。
【0130】
[0141] 反応の停止: 陽性標準物質における上述の通りに選択された希釈液の吸光度が、リーダーの線形範囲の10〜30%に達したときに、8(又は12)チャンネルのピペッターで、50μlの1.0M NaOHを各ウェルに添加することによって、反応を停止させた。NaOH溶液は、基質溶液を添加したのと同じ順序、かつ同じタイミングでウェルに添加した。試薬は、台上でプレートを慎重に振盪することによって、穏やかに混合した。
【0131】
[0142] 吸光度の測定: プレート全体をELISAリーダーで測定した。
【0132】
[0143] データの分析: 各血清の力価は、次の通りに決定した。陰性対照血清で得られた吸光度を、陽性標準物質及び試験血清における、対応する希釈液の吸光度から引いた。(陽性標準物質及び陰性対照の各希釈液の平均を用いた。)陽性標準物質を含む各血清について、片対数グラフ目盛における、横座標(対数目盛)の(1/希釈)に対して、吸光度を縦座標(線形目盛)にプロットした。希釈の逆数をプロットすることによって、力価をX軸上で直接的に読み取ることができた。時として、吸光度が、特定の血清の結合曲線から明確に離れている(異常値)ことがあったが、そのような値はその曲線から排除した。各血清の力価は、陽性標準物質の参照力価(例えば、ウサギ抗hG17陽性標準物質の1:200000希釈)によって生じるものと同じ吸光度を生じる希釈の逆数として決定される。データ分析の例を図1に示す。
【0133】
[0144](実施例10:抑制ELISAによる抗体特異性の測定)
[0145] ペプチド阻害ELISAにも、上記の実施例と同じ方法が行われたが、以下に記載の点が相違していた。
【0134】
[0146] 抑制物質の調製: 通常、適当な標的ホルモンペプチド、この場合はhG17を、1μmol/ml(1000μM)の作業用保存液として調製する。抑制連続希釈は、1:2から1:10までの希釈率で作業用保存液から調製し、プレートのレイアウトに応じて合計8つから12の希釈液を産生する。
【0135】
[0147] 試料希釈の調製: 50%最大結合における抗体試料の希釈率を確定するために、抑制分析の前に、試料の力価測定シリーズを行う。次に、等容積のペプチド性抑制物質と、そして、抑制分析の対照として緩衝液と混合させるために、50%結合濃度の2Xに試料を調製した。試料混合物を湿室内で約30分間インキュベートし、その後、コーティングされ、かつ洗浄されたELISAプレートに添加し、湿室内で、約1時間インキュベートした。
【0136】
[0148] パーセント結合は、抑制物質存在下の試料から得られた吸光度を、抑制物質非存在下で試料対照から得られた吸光度で割って、この値に100を掛けることによって、吸光度の測定値(バックグランドの値が引かれている)から決定した。最後に、パーセント抑制は、100%から結合パーセントを引くことによって決定した。
【0137】
[0149] 試験試料は、血清、細胞培養上清中のMAb、腹水液、又はアフィニティー精製抗体(Ab)であってもよい。G17のアミノ末端以外の標的抗原に対するAbには、適切な標的ホルモン抗原及び抑制物質が使用される。陰性対照として、関連性のないペプチドが含まれているべきである。
【0138】
[0150](ELISA:データ分析)
[0151] 上述のELISAで得られたデータの例を図1に示す。各希釈における正味の吸光度を得るために、平均の陽性標準物質及び試験血清の値から、平均の陰性対照血清の吸光度を引いた。正味の吸光度の値を力価に対してプロットした(この例では、典型的な値を明らかにするために、陰性対照もプロットした)。
【0139】
[0152](ガストリン17の安定性)
[0153] 室温(約22℃)におけるガストリンの安定性を、上述の全ガストリンアッセイによって評価した。これは、15、100、及び600pMを既知のG17濃度とするように試料を調製した直後と、室温で机上に2時間置いた後とに全G17を測定することによって行った。結果を下記の表11に示す。それらは、各試料のG17濃度が実質的に減少していることを実証するものである。
【0140】
【表11】

【0141】
[0155](実施例11:HG17に対する抗血清の抑制ラジオイムノアッセイ(RIA)−抗ヒトガストリン17(hG17)抗血清の抗原結合能(ABC)を測定するための血清力価測定及び抗原抑制RIA)
[0156] 希釈緩衝液:
1.リン酸緩衝食塩水、pH7.2(PBS)+0.02%アジ化ナトリウム(NaN)。可溶性固形物の市販製剤である「FTA赤血球凝集緩衝液」を蒸留水で溶解させて、PBSを産生することができる(9.23g/lによってpH7.2±0.1の溶液が得られる)。
2.1%ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.02%NaNを含有するFTA。
3.補充用子ウシ血清(SCS;GIBCO社)、50ml以下の分量で凍結保存。
4.PEG、MW8000、25%溶液に調製(1リットルあたり250g、ゆっくりと溶解させる)。4℃で保存する。
5.ヒトガストリン17(15−Leu)(Research Plus社、#07−027−002);単回使用分量には、FTA/1%BSA/アジ化物中に5〜10μg/ml。−70℃で保存。
6.ヒトガストリン17−125I(NEN社)。
【0142】
[0157](方法)
[0158] 抑制RIAで試験する各抗血清の容積を確立するために、最初に、試験血清を量の異なる1組のhG17−125Iに対して力価測定を行った。その後、血清を抑制RIAによって試験し、スキャッチャード解析によって抗原結合能(ABC)を計算した。
【0143】
[0159] 力価測定RIAプロトコル:
1. 陽性対照抗血清及びすべての試験抗血清について、アッセイされる各抗血清希釈液用に2つ組みのチューブを用意した。好ましくは、アッセイチューブにおける最終希釈が1:40〜1:400000となるように、血清の5回の10倍希釈を行った。これは、1チューブあたり、10μlから0.001μlの範囲の抗血清が添加されたのと同等である。
2. 300μlの希釈緩衝液を2本のチューブに分注した。これらは試薬ブランクとして機能した。残りのチューブすべてに200μlの希釈緩衝液を添加した。
3. 希釈された抗血清100μlを2つ組みの血清チューブの各々に移した(各希釈につき2X100μlが必要である)。連続希釈には、移動の際の減失を考慮しても、30μlの抗血清から始めることで十分であった(1:10希釈液300μlを産生する)。
4. 非特異的な結合に関する対照として、少なくとも1希釈(1:40、試験血清の最も低い希釈)の陰性血清を含有させた。
5. RIA緩衝液で約10000cpm/0.1mlに希釈された125I標識された抗原(Ag)。下記の希釈手順を参照のこと。
6. すべてのチューブに標識されたガストリン100μlを添加した。添加された総カウント数を確認するために、標識されたhG17 100μlを10本のシンチレーションバイアル又はγ線計数器チューブに添加した。
7. チューブの内容物を振盪又はボルテックスによって混合し、パラフィルムで覆った。
8. チューブを終夜、約18時間、4℃でインキュベートした。これは最小のインキュベーション時間であって、力価測定RIAには更に長いインキュベーションを用いることもできるが、通常、その必要はない。
9. 100μlのSCSをすべてのチューブに添加し、チューブを震動させた。
10. 500μlの25%PEG(4℃又はRT)をすべてのチューブに添加して、ボルテックスによって混合した。
11. 2000Xg、4〜12℃で30分間、チューブを遠心した。
12. すべてのチューブから上清を吸引して、廃棄した。
13. γ線計数器でアッセイチューブ内の沈殿を計測するか、下記に記載の通り、シンチレーション計測用に調製を行った。
【0144】
[0160](計算)
[0161] 2つ組み試料の毎分カウント数(cpm)を平均した。非特異的なバックグランド結合の減算は行わなかった。添加された血清の容積に対する、%hG17−125I結合として、データをプロットした。試料あたりに添加された総cpmの35%に結合した各血清の量を抑制RIA用に選択した。
【0145】
[0162](抑制RIA)
1. 各抑制シリーズに、力価測定RIAで決定された1通りの希釈の抗血清を用いた。用意する2つ組みチューブの数は、無抑制の対照を含む、試験される抑制物質の希釈の数によって決定される。通常は、抗血清1つあたり、抑制物質の希釈8通り(16チューブ)と、2本の無抑制チューブと、を用いた。
2. ゼロ計数ブランクとして、2本のチューブに希釈緩衝液300μlを分注した(自然バックグラウンド計数を確定するため)。
3. 陰性対照血清を受容するもの(非特異的な結合のバックグランドを得るため)として、6本のチューブに緩衝液200μlを分注し、これらのうち2本はアッセイの終わりに試験した。各抗血清あたり2本のチューブに緩衝液200μlを分注した(結合した総カウント数計測用)。これらのチューブには、いかなるhG17抑制物質も添加されなかった。
4. 残りすべてチューブに希釈緩衝液100μlを添加した。
5. 適当な最終濃度(下記参照)が得られるように希釈された無標識のhG17(抑制物質)100μlを、試験抗血清及び対照抗血清の各々の2つ組みチューブに分注した。これらのシリーズによって、各抗血清に関するhG17抑制曲線が確立された。hG17抑制物質は、5120pg/0.1mlに始まる、FTA/アジ化物中での1:1連続希釈によって調製した。
8. チューブの内容物を混合した。
9. RIA緩衝液中の125I標識された抗原を約10000cpm/0.1mlに希釈した。
10. 添加された合計カウント数を確定するために、アッセイ全体にわたって配置されている12本以上のチューブを含むすべてのチューブにhG17−125I 100μlを添加した。
11. 最後に、適切に希釈された抗hG17対照血清、陰性対照血清、又は試験血清100μlを、適切なチューブセットの各チューブに添加した。
12. チューブの内容物を混合し、カバーした(例えばパラフィルムを用いて)。
【0146】
【表12】

【0147】
13. チューブを約42時間(2日間)4℃でインキュベートした。
14. すべてのチューブにSCS 100μlを添加して混合した。
15. すべてのチューブに25%PEG 500μlを添加して混合した。
16. チューブを2000Xg、4℃で30分間、遠心した。
17. すべてのチューブから上清を吸引して廃棄した。
18. γ線計数器でアッセイチューブ内の沈殿を計測するか、シンチレーション計測用に調製を行った。シンチレーション計測用に、すべてのアッセイチューブにdHO 250μlを添加した。水を90〜100℃に加熱することによって、ペレットの溶解が加速される。ペレットの溶解には、2〜3時間を必要とした。その後、シンチレーションバイアルの各々に3mlのシンチレーション液を添加した。溶解したペレットのすべてを、1本のチューブから1本のシンチレーションバイアルに移し、計測用にラック内に配置した。
【0148】
[0164](計算)
1. 2つ組み試料のcpmを平均し、非特異的なバックグランド結合(陰性血清対照の平均によって決定とする)を引いた。
2. 無抑制の抗HG17抗体に結合した総カウント数が予測された範囲内にあったことを確認するために、総カウント数を加算し、ベースラインバックグランド対照を用いた。
3. 抑制物質の各々の量に関して、添加された総カウント数と、結合したカウント数と、を用いて、抗血清のABC及び親和定数を、スキャッチャード解析(結合した抗原に対する結合/遊離のプロット)によって決定した。個々の抗血清に関して、最良の線形回帰線を与えた点を選択し、残りを除去した。これは、プロットを見て、回帰係数に注意することによって行った。一般的には、プロットにおける値の低い部分は用いなかった。ABC及び親和定数は、この目的のために設定したスプレッドを用いて自動的に計算した。
【0149】
[0165](HG17−125Iの希釈)
[0166] hG17−125IはNEN社から購入した。この放射標識されたホルモン(15μCi)には、出荷時に、2200μCi/mmoleの比活性があった。添付されていた商品説明書に従い、崩壊日数に基づいて、凍結乾燥物をdHOで50μCi/mlに希釈した。溶解の後、50μl分量を作製し、鉛の容器に入れて−70℃で保存した。
【0150】
[0167](10000CPMへの希釈)
[0168] 約10000cpmの標識化合物を各アッセイチューブ(0.1ml)に入れた(通常10000〜10400cpm/チューブ)。必要とする希釈hG17−125Iの容積を決定する際には、総カウント数測定と、移動及び泡立ちによる減失を考慮して、3〜4mlの余分を与えた。
【0151】
[0169] 注意:このアッセイで検査される試験試料は、血清でも、細胞培養上清中のMAbでも、腹水液でも、アフィニティー精製Abでもよい。G17のアミノ末端以外の標的抗原に対する抗体には、適当な125I標識標的ホルモン抗原及び抑制物質を使用する。関連のないペプチドも含めて、陰性対照として試験するべきである。
【0152】
[0170](実施例12:ウサギα−GRE11抗体を用いたパラフィン包埋組織上のCCK2受容体の検出)
[0171] 3回の別々のキシレン槽(各槽につき5〜6回上下させる)での浸漬によって、組織切片のパラフィン除去を行った。その後、100%工業用加メチルエタノール(IMS)中でのインキュベーション(各槽につき5〜6回上下させる)によって、それを再水和させた。スライドを蒸留水中で5分間すすいだ。スライドを15%酢酸中で20分間インキュベートすることによって、内因性のアルカリホスファターゼ活性を遮断した。その後、スライドを蒸留水中で5分間すすいだ。スライドを、相互に2スペース離れるようにプラスチックスライドラック中に配置し、pH6のクエン酸緩衝液(1Lあたり2.1gクエン酸一水和物、12.5mL 2M NaOH)の中に入れ、最高出力の電子レンジ(600W)で10分間加熱した。その際、全過程の時間、スライドを覆うのに十分な量の緩衝液が確実に存在するように注意した。その後、スライドを直ちに、冷たい蒸留水の水流中に移し、スライドが乾燥してしまわないように注意しながら3〜4分間おいた。
【0153】
[0172] 疎水性のペンを用いて切片に印を付け、湿室に入れ、pH7.6のトリス緩衝食塩水(TBS)(0.66gトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、8.75g NaCl、約4.15mL HCL)中に、室温(「RT」)で5分間、浸漬させた。スライドを、TBS中の10%正常ヤギ血清と共にRTで20分間、インキュベートすることによって、2次抗体(「Ab」)の非特異的結合を遮断した。スライドから液体を除き、各スライドに、一次抗体(200μl/スライド)を添加し、湿室中、RTに1時間置いた。スライドの洗浄は、最初にTBS(洗浄ビン(squirt bottle)中;組織切片に直接水流を向けないように注意する)で穏やかにすすぎ、次に、5分間、緩衝液中に浸漬させることによって行った。
【0154】
[0173] アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ウサギ2次抗体(又は、試験抗体の産生源を標的とした適当な抗体)を、200μl/スライドのTBS中、1/50希釈でスライドに添加した。次に、スライドをRTで1時間インキュベートし、その後、TBS中で5分間洗浄した。
【0155】
[0174] Fast Red基質(Vector Red、Vector Labs社/Fast Red、Sigma社)を、使用の直前に調製し、各切片に添加して、最長の時間を20分(Vector)又は30分(Sigma社)としてインキュベートした。スライドをTBS、次いで蒸留水ですすぎ、その後、マイヤーヘマトキシリン(時間は変動的)で対比染色を行った。染色の後に、スライドを蒸留水中に移した。
【0156】
[0175] その後、過剰の対比染色を除去するために、スライドを1%酸アルコール(1リットルあたり10mL濃塩酸、700mL IMS、290mL蒸留水)中に浸漬した。但し、Fast Red基質(Sigma社)を用いた場合には、代わりに蒸留水中に移した。スライドを0.5%テトラホウ酸ナトリウム溶液(水で希釈したもの)中で何度か上下させた。この時点で、核が、紫色ではなく、青いかどうかを確認するために、切片の1つを顕微鏡下で検査するのが賢明である。その後、染色されたスライドを蒸留水に移し、それに続いて、IMSに、そして最後にキシレンに移し、その後、DPX(キシレン包埋剤)で包埋した。
【0157】
[0176] 試験及び対照血清/精製抗体の適切な希釈率は、連続希釈を用いて確定した。GI切片は、アルカリホスファターゼ試薬システムを用いて染色するのが最良である。ABCは、更に特異的であるが、高感度であることによる多くの非特異的染色をもたらす。腸管アルカリホスファターゼは、レバミソール(Vector labs社)で遮断することができ、切片を発色させるときには、これを基質溶液に添加する。Vector red基質は、Sigma社の基質製品より問題が少ない。しかし、調製された基質溶液に、レバミソールを1滴、添加する必要がある。
【0158】
[0177] この免疫組織化学法に使用される一次抗体(Ab)は、血清でも、MAbでも、細胞培養上清中のAbでも、腹水液でも、親和性精製されたAbでもよい。
【0159】
[0178] 本明細書で上述した手順は、他のペプチド、特に、他のガストリンホルモン型を含む他のホルモンペプチドの免疫検出アッセイ及び免疫酵素アッセイ用に最適なMAbの単離に適用可能なことを、当業者ならば直ちに認識するであろう。本発明では、本明細書に記載の非限定な実施例によって教示及び例示される全範囲のMAbが企図されている。本明細書で引用したすべての特許及び出版物はそのまま、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0160】
[0179](ハイブリドーマ細胞株の寄託)
[0180] 本発明の特定のMAbを産生する下記のハイブリドーマを、2004年3月25日にATCC(American Type Culture Collection、Manassas,VA)に寄託した。
1. MAb 400−1を産生するハイブリドーマ400−1には、アクセッション番号PTA−5889が指定された。
2. MAb 400−2を産生するハイブリドーマ400−2には、アクセッション番号PTA−5890が指定された。
3. MAb 400−3を産生するハイブリドーマ400−3には、アクセッション番号PTA−5891が指定された。
4. MAb 400−4を産生するハイブリドーマ400−4には、アクセッション番号PTA−5892が指定された。
5. MAb 401−2を産生するハイブリドーマ401−2には、アクセッション番号PTA−5893が指定された。
6. MAb 445−1を産生するハイブリドーマ445−1には、アクセッション番号PTA−5894が指定された。
7. MAb 445−2を産生するハイブリドーマ445−2には、アクセッション番号PTA−5895が指定された。
8. MAb 458−1を産生するハイブリドーマ458−1には、アクセッション番号PTA−5896が指定された。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】hG17−BSAでコーティングされたプレートを用いたELISAを示す図である。血清の力価に対する405nmの吸光度(A405)を示すプロットである。正方形は試験試料を表し、菱形は事前採血試料を表し、三角形は参照標準を表す。陽性標準物質における2x10の力価(1)で得られた吸光度(2)を決定する。試験試料曲線が、この吸光度と交差する点が試験試料の力価(3)を示す。この実施例では、試験試料が2.8x10の力価を有する。
【図2】全ガストリン17の代表的な検量線を示す図である。テトラメチルベンジジンスルホナート(TMBS)色素原を用いた酵素的発色の後の450nmの吸光度(A450)に対して、ガストリン濃度をピコモルでプロットしたものである。
【図3】遊離ガストリン17の代表的な検量線を示す図である。テトラメチルベンジジンスルホナート(TMBS)色素原を用いた酵素的発色の後の450nmの吸光度(A450)に対して、ガストリン濃度をピコモルでプロットしたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ガストリン17(G17)のN末端の、アミノ酸配列pEGPWLE(配列番号5)内のエピトープ、
(ii)ガストリン17(G17)及びガストリン34(G34)のC末端の、アミノ酸配列KKEGPWLEEEEEAYGWMDF−NH(配列番号6)内のエピトープ、
(iii)ヒトガストリン34(G34)のN末端の、アミノ酸配列pELGPQG(配列番号7)内のエピトープ、又は、
(iv)グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)のC末端の、アミノ酸配列YGWMDFG(配列番号8)内のエピトープ、
において、ガストリンホルモン型に選択的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項2】
400−1(ATCCアクセッション番号PTA−5889)、ハイブリドーマ400−2(ATCCアクセッション番号PTA−5890)、ハイブリドーマ400−3(ATCCアクセッション番号PTA−5891)、及びハイブリドーマ400−4(ATCCアクセッション番号PTA−5892)、からなる群より選択されるハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体の結合特性を有する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
ハイブリドーマ458−1(ATCCアクセッション番号PTA−5896)によって産生されるモノクローナル抗体の結合特性を有する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
ハイブリドーマ401−2(ATCCアクセッション番号PTA−5893)によって産生されるモノクローナル抗体の結合特性を有する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
ハイブリドーマ445−1(ATCCアクセッション番号PTA−5894)及び445−2(ATCCアクセッション番号PTA−5895)のいずれかによって産生されるモノクローナル抗体の結合特性を有する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
ヒト化されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
(i)アミノ酸配列pEGPWLE(配列番号5)内のエピトープで、ガストリン17(G17)のN末端に選択的に結合する抗体、
(ii)アミノ酸配列KKEGPWLEEEEEAYGWMDF−NH(配列番号6)内のエピトープで、ガストリン17(G17)又はガストリン34(G34)のC末端に選択的に結合する抗体、
(iii)アミノ酸配列pELGPQG(配列番号7)内のエピトープで、ヒトガストリン34のN末端(G34)に選択的に結合する抗体、及び/又は、
(iv)アミノ酸配列YGWMDFG(配列番号8)内のエピトープで、グリシン伸長ガストリン17(G17−Gly)及びグリシン伸長ガストリン34(G34−Gly)のC末端に選択的に結合する抗体、
のいずれか2つ以上の抗体を含むモノクローナル抗体パネル。
【請求項8】
ハイブリドーマ400−1(ATCCアクセッション番号PTA−5889)、ハイブリドーマ400−2(ATCCアクセッション番号PTA−5890)、ハイブリドーマ400−3(ATCCアクセッション番号PTA−5891)、又はハイブリドーマ400−4(ATCCアクセッション番号PTA−5892)の特性を有する、請求項2に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項9】
401−2(ATCCアクセッション番号PTA−5893)の特性を有する、請求項3に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項10】
445−1(ATCCアクセッション番号PTA−5894)又はハイブリドーマ445−2(ATCCアクセッション番号PTA−5895)の特性を有する、請求項4に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項11】
458−1(ATCCアクセッション番号PTA−5896)の特性を有する、請求項2に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物。
【請求項13】
ガストリン介在性の疾患又は状態の予防又は治療に適した薬剤を調製するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項14】
患者におけるガストリン介在性の疾患又は状態を診断する方法であって、
患者から得た生体液の試料中のガストリンホルモン型のレベルを測定するステップと、前記試料中のガストリンホルモン型のレベルを、健常個体グループから得た生体液の試料中の前記ガストリンホルモン型の正常レベルと比較するステップと、を含む方法。
【請求項15】
患者におけるガストリン介在性の疾患又は状態の経過をモニターする方法であって、
ガストリン介在性の疾患又は状態に罹患しているか、又はその危険がある患者から得た生体液の試料中のガストリンホルモン型のレベルを、第1の時点で測定するステップと、患者から得た生体液の1つ又は複数の試料中の前記ガストリンホルモン型のレベルを、異なる時点で測定するステップと、それによって、ガストリン介在性の疾患又は状態の経過をモニターするステップと、を含む方法。
【請求項16】
イムノアッセイを実施するためのキットであって、
400−1、400−2、400−3、400−4、401−2、445−1、445−2、及び458−1、からなる群より選択されるハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体の特性を有するモノクローナル抗体と、適当な容器と、を含むキット。
【請求項17】
ガストリンホルモン介在性の疾患又は状態に罹患している患者のガストリンホルモン遮断治療を評価する方法であって、
a)治療の前又は初期に、患者から生体液の第1の試料を得るステップと、
b)第1の試料中のガストリンホルモンのレベルを、イムノアッセイ法によって測定するステップと、
c)治療対象の疾患又は状態、及び第1の試料中のガストリンホルモンのレベルに基づいて診断を行うステップと、
d)ガストリンホルモンに結合して、in vivoでガストリンホルモンの標的受容体との結合を調節する第1の薬剤、又は第1の薬剤を生成する物質、を含む治療を患者に実施するステップと、
e)治療の効果が生じると考えられる適当な時間の後、患者から生体液の第2の試料を得るステップと、
f)第2の試料の第1のアリコート中の結合及び遊離ガストリンホルモンを含む全ガストリンホルモンのレベルをイムノアッセイによって測定するステップであって、
第2の試料の第1のアリコートを、(i)第1の薬剤が結合したいかなるガストリンホルモンとも置換する第2の薬剤、及び(ii)第2の薬剤に結合しない固定化抗ガストリンホルモン抗体、と共にインキュベートし、
第2の薬剤を洗浄除去し、
ガストリンホルモンには結合するが、前記固定化抗体とは競合しない検出可能抗体を添加し、
ガストリンホルモンに結合した固定化抗体を含み、当該ガストリンホルモンが検出可能抗体と結合している免疫複合体を形成させるステップと、
g)免疫複合体中の検出可能抗体の量を検出し、それによって、第2の試料中の全ガストリンホルモンの量を測定するステップと、
h)第2の試料の第2のアリコートを用いて、ステップf)及びg)を反復することによって、遊離ガストリンホルモンのレベルを測定するステップであって、
ステップf)におけるインキュベーションを第2の薬剤なしで行うステップと、
j)第1の試料中の遊離ガストリンホルモンの測定量を、第2の試料中の遊離ガストリンホルモン及び全ガストリンホルモンの量と比較して、患者のガストリンホルモン遮断治療の有効性を判定するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
生体液が血清である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1の薬剤が、G17のN末端に対する抗体、又はG17受容体模倣体であり、第2の薬剤がG17N末端ペプチドである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
固定化抗ガストリンホルモン抗体若しくは検出可能抗体、又はそれらの両方がモノクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
(i)固定化抗ガストリンホルモン抗体がG17のC末端に結合し、検出可能抗体がG17のN末端に結合すること、
(ii)第1の薬剤がG34のN末端に対する抗体であり、第2の薬剤がG34N末端ペプチドであること、
(iii)固定化抗体がG17又はG34のC末端に結合すること、
(iv)検出可能抗体がG34のN末端に結合すること、
(v)第1の薬剤が、G17−GlyのN末端に対する抗体、又はG17−Gly受容体模倣体であり、第2の薬剤がG17N末端ペプチドであること、
(vi)検出可能抗体がG17−GlyのN末端に結合すること、
(vii)第1の薬剤がG34−GlyのC末端に対する抗体であり、第2の薬剤がG34N末端ペプチドであること、及び、
(viii)検出可能抗体がG34−GlyのN末端に結合すること、
のいずれか1つ又は複数の特徴を有する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106989(P2012−106989A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−222017(P2011−222017)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2007−506474(P2007−506474)の分割
【原出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(511240209)キャンサー アドヴァンシズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】