説明

ガスハイドレートの合成方法とこの方法で合成されたガスハイドレートに石炭粒子を含む燃料混合物

【課題】石炭粒子がガスハイドレートの核発生を誘導することにより、比較的簡単な工程で、極めて短時間にガスハイドレートを合成する。
【解決手段】原料ガスと水とを反応させて原料ガスと水との水和物であるガスハイドレート10を合成する。水100重量%に対して石炭粒子を0.5〜50重量%混合することにより、石炭粒子がガスハイドレート10の核発生を誘導する。また石炭粒子は褐炭、泥炭及び亜瀝青炭からなる群より選ばれた1種又は2種以上の粒子を含む。更に原料ガスは、メタンガス、エタンガス、プロパンガス及びブタンガスからなる群より選ばれた1種又は2種以上を含むガスであるか、或いは天然ガスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス等の原料ガスと水とを反応させて原料ガスと水との水和物であるガスハイドレートを合成する方法と、この方法で合成されたガスハイドレートに石炭粒子を含む燃料混合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、化石燃料の中で二酸化炭素の排出量が少なくかつ燃料として利用し易い気体であるため、現在、その需要が伸びている。アメリカ合衆国やロシア連邦などでは、ガス用パイプラインが発達し、このパイプラインにより天然ガスの埋蔵地(以下、ガス田という)と天然ガスの消費地とが結ばれており、天然ガスをそのまま上記パイプラインを用いて消費地に送り、消費地でそのまま燃料として利用している。一方、天然ガスの消費地が日本などの島国の場合、海外のガス田に、天然ガスを液化して液化天然ガス(以下、LNGという)を作るLNG製造装置を建設し、このLNG製造装置で製造されたLNGを大型タンカー(以下、LNG船という)で消費地に輸送している。
しかしながら、LNG製造装置のプラントコストは極めて高く、また中小規模のガス田が多いため、このような中小規模のガス田にLNG製造装置を建設しても採算がとれない問題点があった。またLNG船に積んだ天然ガスをその液化温度(−162℃)以下に常に保たなければならないため、LNG船自体の建造及び維持のために莫大な費用が掛る問題点もあった。
【0003】
これらの点を解消するために、天然ガスと水からガスハイドレートを合成して輸送することが注目されている。上記ガスハイドレートは、このガスハイドレートの自己保存性からLNGの約30%の天然ガスを貯蔵できる、即ちLNGでは1m3中に600Nm3(ノルマルm3)の天然ガスを貯留できるのに対し、ガスハイドレートでは1m3中に170Nm3の天然ガスを貯留できるとともに、貯蔵温度がLNGより高いため、ガス田でのガスハイドレートの合成設備や輸送船の建造及び維持等に掛るコストを低減できる。
しかし、上記ガスハイドレートには、天然ガスと水からガスハイドレートの合成を開始するまでに誘導時間として数時間も要する問題点があった。
この点を解消するために、原料ガスと水とを反応させて原料ガスと水との水和物であるガスハイドレートを製造するガスハイドレートの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このガスハイドレートの製造方法では、先ず原料ガスを水中へ分散するか或いはミキシングして低純度のガスハイドレートスラリーを製造した後に、この低純度のガスハイドレートスラリーを濾過して未反応水を除去する。次にこの脱水したガスハイドレートを原料ガスにより撹拌混合するか或いは機械的撹拌手段により撹拌混合しながら、ガスハイドレートに付着している残存水と原料ガスとを再反応させて高純度のガスハイドレートを製造する。この結果、高純度のガスハイドレートを効率的に製造できるようになっている。
【特許文献1】特開2005−263675号公報(請求項1、段落[0008])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の特許文献1に示されたガスハイドレートの製造方法では、第1生成工程で低純度のガスハイドレートを製造し、脱水工程で低純度のガスハイドレートから未反応の水を除去し、更に第2生成工程で上記脱水したガスハイドレートを再反応させて高純度のガスハイドレートを製造するため、比較的多くの工程を経る必要があり、製造工程が比較的複雑化するとともに、ガスハイドレートの核発生までに数時間を要する不具合があった。
本発明の目的は、比較的簡単な工程で、極めて短時間にガスハイドレートの核を発生させることができ、これによりガスハイドレートを比較的短時間に合成することができる、ガスハイドレートの合成方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、ガスハイドレート及び石炭粒子を混合輸送することにより、エネルギ源を効率的かつ低コストで輸送でき、また大気圧下に置くことにより、原料ガスをそのまま都市ガスとして利用できるとともに、石炭粒子を火力発電や石炭ガス化発電の燃料として利用できる、混合燃料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、原料ガスと水とを反応させて原料ガスと水との水和物であるガスハイドレート10を合成するガスハイドレートの合成方法の改良である。
その特徴ある構成は、水100重量%に対して石炭粒子を0.5〜50重量%混合することにより、石炭粒子がガスハイドレート10の核発生を誘導するところにある。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に石炭粒子が褐炭、泥炭及び亜瀝青炭からなる群より選ばれた1種又は2種以上の粒子を含むことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に原料ガスがメタンガス、エタンガス及びブタンガスからなる群より選ばれた1種又は2種以上を含むガスであるか、或いは天然ガスであることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に記載の方法で合成されたガスハイドレートに石炭粒子を含む燃料混合物である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明では、水に石炭粒子を所定の割合で混合することにより、石炭粒子がガスハイドレートの核発生を誘導するので、極めて短時間にガスハイドレートの核を発生させることができる。この結果、ガスハイドレートを比較的短時間に合成することができる。
請求項2に係る発明では、石炭粒子が比較的多くの水分を含む所定の粒径の褐炭等を含むので、褐炭等に含まれる水分がガスハイドレートの合成に利用することができる。この結果、ガスハイドレートを効率良く合成できる。
請求項3に係る発明では、原料ガスがメタンガス等を含むガスであるか、或いは天然ガスであるので、これらの天然ガス等の産出地が中小規模のガス田であっても、比較的簡単な構成のガスハイドレートの合成設備を上記中小規模の天然ガス田に比較的容易に建設できる。また合成されたガスハイドレートには、ガスハイドレートの自己保存性からLNGの約30%の天然ガスを貯蔵できるとともに、貯蔵温度がLNGより高いため、輸送船の建造費や維持費等を従来のLNG船より低減できる。
請求項4に係る発明では、上記方法で合成されたガスハイドレートに石炭粒子を含むので、ガスハイドレート及び石炭粒子を混合輸送することができる。この結果、エネルギ源を効率的かつ低コストで輸送できる。また上記燃料混合物をその消費地で大気圧下に置くことにより、原料ガスをそのまま都市ガスとして利用できるとともに、石炭粒子を火力発電や石炭ガス化発電の燃料として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明は、原料ガスと水とを反応させて原料ガスと水との水和物であるガスハイドレート10を合成する方法である。このガスハイドレート10は、加圧・冷却することにより水分子11が水素結合で連なった水クラスター12が生成され、更に加圧・冷却することにより水クラスター12が水素結合で連なってかご構造の水クラスター13が生成され、このかご構造の水クラスター13の中に、原料ガス分子14が取込まれた包接水和物である、即ち原料ガス分子14が正十二面体、十四面体又は十六面体のかご構造の水クラスター13の中に閉込められてできた結晶である。上記ガスハイドレート10を合成するには、先ず水100重量%に対して石炭粒子を0.5〜50重量%、好ましくは1〜50重量%混合して混合物を調製する。ここで、石炭原料を水100重量%に対して0.5〜50重量%の範囲に限定したのは、0.5重量%未満では石炭粒子が少なく過ぎてガスハイドレート10の核発生を速やかに誘導できず、50重量%を越えると石炭粒子と水の混合物(スラリー)の撹拌が困難になるか或いは石炭粒子と水が十分に接触することができなくなるからである。また石炭粒子は褐炭、泥炭及び亜瀝青炭からなる群より選ばれた1種又は2種以上の粒子を含む。ここで、石炭粒子の平均粒径は粒子といわれる常識的なサイズ、例えば2mm以下であればよい。なお、石炭粒子の平均粒径はそのハンドリング上の点から50μm以上であることが好ましい。また石炭粒子が褐炭等を含むとしたのは、褐炭等に比較的多くの水分を含むため、この水分をガスハイドレートの合成に用いることができるからである。更に原料ガスは、メタンガス、エタンガス、プロパンガス及びブタンガスからなる群より選ばれた1種又は2種以上を含むガスであるか、或いは天然ガスである。ここで、原料ガスがメタンガス等を含むガスであるか、或いは天然ガスであるとしたのは、海外の中小規模のガス田で採取された上記天然ガス等を有効利用するためである。なお、上記石炭粒子及び水の混合物は水に石炭原料が分散した分散液の状態であっても、或いはスラリーの状態であってもよい。
【0008】
次に上記石炭粒子及び水の混合物を圧力容器に収容し、この圧力容器に燃料ガスを供給して混合する。このとき圧力容器内の圧力は3.8〜5.5MPa、好ましくは5.0〜5.5MPaに保持され、圧力容器内の温度は0.1〜5.0℃、好ましくは0.1〜2.0℃に保持される。ここで、圧力容器内の圧力を3.8〜5.5MPaの範囲内に限定したのは、3.8MPa未満ではガスハイドレートを生成できず、5.5MPaを越えるとガスハイドレートの生成率が殆ど変化せず経済的でないからである。また、圧力容器内の温度を0.1〜5.0℃の範囲内に限定したのは、0.1℃未満ではガスハイドレートの生成率が殆ど変化せず経済的でなく、5.0℃を越えるとより高い圧力に保持しないとガスハイドレートを生成できないからである。
【0009】
このように構成されたガスハイドレートの合成方法では、石炭粒子及び水の混合物と原料ガスとを上記所定圧力及び所定温度で混合すると、石炭粒子がガスハイドレートの核発生を誘導する、即ち、石炭粒子がガスハイドレートの核形成のトリガーとなるので、極めて短時間にガスハイドレートの核を発生させることができる。この結果、比較的短時間でガスハイドレートを合成できる。石炭粒子がガスハイドレートの核形成のトリガーとなる技術的理由は、現段階で十分に解明されていないが、核誘導であると推察される。
また石炭粒子が比較的水分を多く含む褐炭等であれば、褐炭等に含まれる水分がガスハイドレートを合成するための水分として利用できるので、効率良くガスハイドレートを合成できる。
また原料ガスがメタンガス等を含む天然ガスであれば、この天然ガスの産出地が中小規模のガス田であっても、ガスハイドレートの合成設備は比較的簡単な構造であるため、このガスハイドレートの合成設備を中小規模の天然ガス田に比較的容易に建設できる。また合成されたガスハイドレートには、ガスハイドレートの自己保存性からLNGの約30%の天然ガスを貯蔵できるとともに、貯蔵温度がLNGより高いため、輸送船の建造費や維持費等を低減できる。
更に上記方法で合成されたガスハイドレートから石炭粒子を分離することなく、ガスハイドレート及び石炭粒子を混合輸送すれば、ガスハイドレート及び石炭粒子からなるエネルギ源を効率的かつ低コストで輸送できる。この結果、エネルギ源の消費地で上記燃料混合物を大気圧下に置くことにより、原料ガスをそのまま都市ガスとして利用できるとともに、石炭粒子を火力発電や石炭ガス化発電の燃料として利用できる。
【実施例】
【0010】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
図2に示すように、撹拌機51付きのオートクレーブ52を用意した。このオートクレーブ52には、冷却器53を介して容積2.5リットルのタンク54を接続した。撹拌機51は、電動モータ51aと、オートクレーブ52内に回転可能に挿入された回転軸51bと、電動モータ51aの出力軸51cと、この出力軸51cに嵌着された駆動プーリ51dと、回転軸51bの上部に嵌着された従動プーリ51eと、これらのプーリ51d,51eに掛け渡されたベルト51fと、回転軸51bの下部に放射状に固着された複数の撹拌羽根51gとを有する。またタンク54にはこのタンクに貯留されるメタンガスの圧力を検出する圧力計56が設けられ、冷却器53のうち水等の冷却液が通る冷却槽53aに挿入されメタンガスが通る蛇行管53bの出口にはメタンガスの温度を検出する第1熱電対61が挿入され、更にオートクレーブ52にはこのオートクレーブに収容される褐炭及び水の混合物57の温度を検出する第2熱電対62が挿入される。なお、図2中の符号71〜73は第1〜第3開閉弁であり、符号52aは覗き窓である。
先ず第1〜第3開閉弁71〜73を閉じた状態で、水100mlに、平均粒径45〜75μmの褐炭粒子を12.5g(107℃で1時間乾燥したもの、以下同じ)混合して混合物57を調製した後に、この混合物57をオートクレーブ52に貯留した。次いで第1開閉弁71を開いてタンク54に圧力5.5MPaのメタンガスを貯留した後に、第1開閉弁71を閉じた。また冷却器53の冷却槽53aに0.1〜1℃の水等の冷却液を流した。次に第1〜第3開閉弁71〜73のうち第2開閉弁72のみを開いて、オートクレーブ52と冷却器53とタンク54を連通接続した。このときタンク54内のメタンガスは冷却器53により0.1〜1℃の範囲内に調整された後にオートクレーブ52に供給された。また第2開閉弁72を開いたときから5分毎にタンク54内のメタンガスの圧力を圧力計56により測定した。更に圧力計56の指針が変化したときに、電動モータ51aにより回転軸51b及び撹拌羽根51gを1000rpmの回転速度で回して、撹拌羽根51gによるオートクレーブ52内の混合物57の撹拌混合を開始した。オートクレーブ52と冷却器53とタンク54を連通接続してから240分経過するまで、ガスハイドレートを合成し続けた。即ち、ガスハイドレートの合成時間は240分とした。
【0011】
<比較例1>
褐炭粒子を混合しない水をオートクレーブに貯留し、攪拌機の回転軸及び撹拌羽根の回転速度を600rpmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<比較例2>
褐炭粒子を混合しない水をオートクレーブに貯留し、攪拌機の回転軸及び撹拌羽根の回転速度を800rpmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<比較例3>
褐炭粒子を混合しない水をオートクレーブに貯留したこと以外は、実施例1と同様にしてガスハイドレートを合成した。
【0012】
<試験1及び評価>
実施例1及び比較例1〜3のガスハイドレートの合成において、タンク内のメタンガスの圧力の変化からメタンガス及び水の反応率H(ガスハイドレートの合成率、%)を次の式(1)及び式(2)を用いて算出した。式(1)において、Sをガスハイドレートの生成量とし、Smaxをガスハイドレートの理論最大生成量とした。また式(2)において、P1及びP2をタンクのそれぞれ初期圧力及び最終圧力とし、Vをオートクレーブの容積とし、Rを気体定数とし、Tを絶対温度とした。
H = (S/Smax)×100 ………(1)
S = (P1−P2)×V/(R×T) ………(2)
なお、式(1)中の理論最大生成量は、ガスハイドレート(メタンハイドレート)の理論化学式[CH4・5.75H2O]から、水[H2O]5.75モルに対して1モルのメタン[CH4]が反応して生成するものと仮定して計算した。その結果を図3に示す。
図3から明らかなように、水に褐炭粒子を混合しない比較例1〜3ではタンク内のメタンガスの圧力が変化するまでの時間、即ちガスハイドレートの核発生誘導時間が約180分と長い時間を要したのに対し、実施例1ではガスハイドレートの核発生誘導がオートクレーブと冷却器とタンクを連通接続すると略同時に開始した。このように実施例1でガスハイドレートの核発生が速やかに行われたのは、褐炭粒子がガスハイドレートの核発生を誘導したためであると考えられる。この結果、比較例1〜3では、ガスハイドレートの合成に240分以上と多くの時間を要したのに対し、実施例1では、ガスハイドレートの合成に60分程度と少ない時間で済むことが判った。
【0013】
<実施例2>
平均粒径0.5〜1.0mmの褐炭粒子を25g用い、ガスハイドレートの合成時間を60分としたこと以外は、実施例1と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<実施例3>
平均粒径0.5〜1.0mmの褐炭粒子を12.5g用いたこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<実施例4>
平均粒径100〜150μmの褐炭粒子を12.5g用いたこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<実施例5>
平均粒径100〜150μmの褐炭粒子を12.5g用い、この褐炭粒子を100mlの水と混合してスラリー状にした以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<実施例6>
平均粒径100〜150mmの褐炭粒子を50g用いたこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
【0014】
<試験2及び評価>
実施例2〜6のガスハイドレートの合成において、タンク内のメタンガスの圧力の変化からメタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)を算出した。その結果を図4に示す。
図4から明らかなように、褐炭粒子の平均粒径を100〜150μmとそれぞれ同一にした状態で、褐炭粒子の含有量を水100重量%に対して25重量%、12.5重量%及び50重量%に変えた実施例4、5及び6では、メタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)が殆ど変らないことが判った。また褐炭粒子の平均粒径を100〜150μmとそれぞれ同一にした状態で、褐炭粒子と水の混合物が液状である実施例4と、褐炭粒子と水の混合物がスラリー状である実施例5とを比較した場合、メタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)が殆ど変らないことが判った。更に褐炭粒子の含有量を水100重量%に対してそれぞれ25重量%と同一にした状態で、褐炭粒子の平均粒径を0.5〜1.0mmと100〜150μmとに変えた実施例3及び4では、メタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)が殆ど変らないことが判った。
【0015】
<実施例7>
タンク内のメタンガスの圧力を4MPaとしたこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<実施例8>
タンク内のメタンガスの圧力を4.5MPaとしたこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<実施例9>
タンク内のメタンガスの圧力を5MPaとしたこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<試験3及び評価>
実施例2及び7〜9のガスハイドレートの合成において、タンク内のメタンガスの圧力の変化からメタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)を算出した。その結果を図5に示す。
図5から明らかなように、タンク内のメタンガスの圧力の上昇に伴って、メタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)が上昇することが判った。またタンク内のメタンガスの圧力がそれぞれ5MPa及び5.5MPaである実施例9及び2では上記反応率の上昇傾向があまり変化しなかった。このことからタンク内のメタンガスの圧力を5MPaとしたときがガスハイドレート生成の最適条件であると考えられる。更に実施例7のようにタンク内のメタンガスの圧力が4MPaと比較的低くても、ガスハイドレートを生成できることが判った。このことから褐炭粒子にガスハイドレートの核発生の誘導効果があると考えられる。
【0016】
<実施例10>
オートクレーブに供給されるメタンガスの温度を冷却器により2.5〜3.6℃に保持したこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<実施例11>
オートクレーブに供給されるメタンガスの温度を冷却器により1.6〜3.5℃に保持したこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<実施例12>
オートクレーブに供給されるメタンガスの温度を冷却器により0.2〜1.4℃に保持したこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<比較例4>
オートクレーブに供給されるメタンガスの温度を冷却器により3.6〜4.8℃に保持したこと以外は、実施例2と同様にしてガスハイドレートを合成した。
<試験4及び評価>
実施例10〜12及び比較例4のガスハイドレートの合成において、タンク内のメタンガスの圧力の変化からメタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)を算出した。その結果を図6に示す。
図6から明らかなように、比較例4では60分経過後のメタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)が約15%と低かったのに対し、実施例10〜12では60分経過後のメタンガス及び水の反応率(ガスハイドレートの合成率)が約48%、約63%及び約83%と高かった。この結果、オートクレーブに供給されるメタンガスの温度がガスハイドレートの生成に影響を与えることが判った。またタンク内のメタンガスの圧力が5MPaである場合、オートクレーブに供給されるメタンガスの最適な温度は2.5℃以下であることが判った。
【0017】
<試験5及び評価>
実施例2の方法でガスハイドレートを合成した後に、このガスハイドレートに含まれる褐炭粒子の成分(以下、分離前の褐炭成分という)と、上記褐炭粒子を含むガスハイドレートを大気圧まで減圧してガスハイドレートをメタンガス及び水に分解したときの褐炭粒子の成分(以下、分離後の褐炭成分という)とを比較した。その結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1から明らかなように、分離後の褐炭成分が分離前の褐炭成分と殆ど変化しないことが判った。このことから天然ガス田で合成された褐炭粒子を含むガスハイドレートを輸送して消費地で大気圧まで減圧したときに、メタンガスのみならず褐炭粒子も燃料として利用できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施形態のガスハイドレートの生成及び分解のメカニズムを示す分子の模式図である。
【図2】そのガスハイドレートを合成するための実験装置の構成図である。
【図3】水に褐炭を混合した場合と褐炭を混合しなかった場合のメタンガスと水の反応率の時間経過(0〜240分)に伴う変化を示す図である。
【図4】褐炭の水に対する混合割合を変えたときのメタンガス及び水の反応率の時間経過(0〜60分)に伴う変化を示す図である。
【図5】圧力を変えたときのメタンガス及び水の反応率の時間経過(0〜60分)に伴う変化を示す図である。
【図6】温度を変えたときのメタンガス及び水の反応率の時間経過(0〜60分)に伴う変化を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ガスハイドレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスと水とを反応させて前記原料ガスと前記水との水和物であるガスハイドレート(10)を合成するガスハイドレートの合成方法において、
前記水100重量%に対して石炭粒子を0.5〜50重量%混合することにより、前記石炭粒子が前記ガスハイドレート(10)の核発生を誘導することを特徴とするガスハイドレートの合成方法。
【請求項2】
石炭粒子が褐炭、泥炭及び亜瀝青炭からなる群より選ばれた1種又は2種以上の粒子を含む請求項1記載のガスハイドレートの合成方法。
【請求項3】
原料ガスが、メタンガス、エタンガス、プロパンガス及びブタンガスからなる群より選ばれた1種又は2種以上を含むガスであるか、或いは天然ガスである請求項1記載のガスハイドレートの合成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の方法で合成されたガスハイドレートに石炭粒子を含む燃料混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−254668(P2007−254668A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83290(P2006−83290)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】