説明

ガス充填装置

【課題】 充填口側に過大な外力が付加されたときに、これに伴った引張り力を離脱カップリングに良好に伝え離脱カップリングを分離できるようにする。
【解決手段】 スタンド3の側面部3Cには、フック5によりアイボルト11を介して離脱カップリング8を吊下し、その下方となる位置にホースガイド12を設ける。ホースガイド12よりも下側となる位置には、前,後の角隅部3F,3G側に位置してボビン形状をなす案内突起13,14を設ける。そして、充填口7側に付加される外力でホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3に巻きつくように引張られたときには、案内突起13により充填口側ホース部6Bを二点鎖線で示すように案内し、離脱カップリング8のプラグ10に対しソケット9から分離可能な方向(矢示A方向)の引張り力を伝える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素ガス、天然ガス等の高圧ガスを充填対象の貯留タンク等に充填して供給するのに好適に用いられるガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用の燃料として、例えばガソリン、軽油等を用いることは知られている。しかし、このようなガソリン、軽油等の燃料は、排気ガス中に有害物質が発生してしまうために、これに替わる燃料として水素ガス、天然ガス等の高圧ガスを用いることが検討されている。
【0003】
そして、この場合のガス充填装置は、高圧ガスの充填設備に設けられたスタンドと、基端側が該スタンドに接続して取付けられ先端側が自由端となって延びるホースと、例えば自動車等の貯留タンク内に前記高圧ガスを充填するため該ホースの先端側に設けられた充填口等とにより構成されている。
【0004】
また、水素ガス等は自動車側の貯留タンクに非常に高い圧力をもって充填することが要求される。そして、ガス充填装置のホースが無理に引張られて損傷、破損する等の事故が発生したときには、水素等の超高圧なガスが外部に漏れ出さないようにする必要がある。このため、前記ホースの途中位置には緊急用の離脱カップリング等を取付けることが知られている(例えば、特許文献1,2,3,4参照)。
【0005】
この種の従来技術による離脱カップリングは、前記スタンド側に一方のホースを介して接続されたソケットと、前記充填口側に他方のホースを介して接続されたプラグと、該プラグを前記ソケットに着脱可能に固定(連結)し前記ホース等の引張り強度よりも強度が弱い脆弱部を有した固定手段等とにより構成されている。
【0006】
そして、離脱カップリングの固定手段は、例えば充填口を用いて高圧ガスの充填作業等を行っている途中で、前記ホースが過大な力(外力)で引張られたときに、強度の弱い脆弱部が破断(せん断)されることにより前記ソケットとプラグを分離させ、ホース等に過大な外力が作用するのを防ぐものである。
【0007】
【特許文献1】特開2002−295766号公報
【特許文献2】特開2004−293777号公報
【特許文献3】特開2004−353821号公報
【特許文献4】特開2005−106197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術では、前記ホースの引張り方向が通常の方向である限りは、過大な外力に従って離脱カップリングの固定手段(脆弱部)を破断することにより、ソケットとプラグとを円滑に分離することができる。しかし、例えば水素ガスの充填作業等に用いるホースは、高い圧力に対する耐久性を確保するため頑丈な構造に形成され、任意の方向に柔軟性をもって曲げることはできないものである。
【0009】
このため、例えば充填口を用いて自動車の貯留タンクに高圧ガスを充填する作業の途中で、自動車が誤って発進されるような場合には、ホースがスタンドに巻きつく方向に引張られる可能性があり、この場合にはホースの途中個所がスタンドの角隅部等に強く接触(干渉)するのみで、このときの引張り力が離脱カップリングの固定手段に上手く伝わらないことがある。
【0010】
この結果、過大な外力(引張り力)がホースに付加されているにも拘らず、離脱カップリングのプラグをソケットから分離できないという事態が発生する虞れがある。そして、この場合には過大な外力が充填口やホース等に付加されることになり、最悪の場合にはガス漏れの発生原因になるという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、例えば充填口側に過大な外力が付加されたときには、これに伴った引張り力を離脱カップリングに良好に伝えることができ、離脱カップリングを円滑かつ確実に分離できるようにしたガス充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明は、高圧ガスの充填設備に設けられたスタンドと、基端側が該スタンドに接続して取付けられ先端側が自由端となって延び当該先端側に充填口が設けられたホースと、該ホースの長さ方向途中部位に設けられ常時は前記充填口側に向けたガスの流通を許し前記充填口側に過大な引張り力が付加されたときには前記ホースの途中部位を分離して前記ガスの流通を遮断する離脱カップリングとからなるガス充填装置に適用される。
【0013】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記スタンドには、前記充填口側に付加される外力で前記ホースがスタンドに巻きつくように引張られたときに、前記ホースの途中部位が前記離脱カップリングによって分離可能な方向に前記ホースを案内する案内部材を設けたことにある。
【0014】
また、請求項2の発明は、前記案内部材は、前記充填口と離脱カップリングとの間に位置する前記ホースの途中個所が摺動可能に接触するように前記スタンドの角隅部側に位置して突設された案内突起により構成している。
【0015】
また、請求項3の発明によると、前記充填口と離脱カップリングとの間に位置する前記ホースの途中個所には、前記案内部材と接触する位置に保護筒体を挿通して設ける構成としている。
【0016】
さらに、請求項4の発明によると、前記案内部材は、前記離脱カップリングを吊下げた状態で前記ホースを引張り方向に移動可能に案内する案内レールにより構成している。
【発明の効果】
【0017】
上述の如く、請求項1に記載の発明によれば、充填口側に付加される外力でホースがスタンドに巻きつくように引張られたときには、スタンドに設けた案内部材でホースまたは離脱カップリングを案内することにより、離脱カップリングに対して分離可能な方向の引張り力を伝えることができ、ホースの途中部位を離脱カップリングによって確実に分離することができる。
【0018】
従って、例えば充填口を用いて自動車の貯留タンク等に高圧ガスを充填する作業の途中で自動車が誤って発進され、ホースがスタンドに巻きつくように引張られた場合でも、離脱カップリングが確実に分離する結果、過大な外力が充填口やホース等に付加されるのを防止でき、ガス漏れ等の発生を未然に防ぎ、ガス充填装置としての安全性や信頼性を向上することができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、スタンドの角隅部側に設けた案内突起により案内部材を構成しているので、ホースがスタンドに巻きつくように引張られた場合でも、充填口と離脱カップリングとの間に位置するホースの途中個所を案内突起に摺動可能に接触させ、離脱カップリングに対して分離可能な方向の引張り力を伝えることができる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によると、ホースの途中個所には案内部材と接触する位置に保護筒体を挿通して設ける構成としているので、ホースの途中個所が案内部材に直に接触(摺動)するのを保護筒体で防止でき、ホースの摩耗、損傷を防ぐと共に、ホースの耐久性、寿命を向上することができる。
【0021】
さらに、請求項4に記載の発明では、スタンドに案内部材としての案内レールを設ける構成としているので、ホースがスタンドに巻きつく方向に引張られた場合でも、前記案内レールに離脱カップリングを吊下げた状態で前記ホースの引張り方向に移動させるように、離脱カップリングをホースと共に案内することができ、これにより離脱カップリングに対して分離可能な方向の引張り力を伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係るガス充填装置として、自動車に水素ガスを供給するガス充填装置を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0023】
ここで、図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は水素ガス(高圧ガス)の充填設備に設置されたガス充填装置で、このガス充填装置1は、後述のスタンド3、ホース6、充填口7および離脱カップリング8等により構成されている。
【0024】
そして、ガス充填装置1は、例えば水素ガスを燃料として用いる水素自動車等の車両(以下、自動車2という)に対し、例えば35〜70MPa程度の超高圧にまで加圧された水素ガス(液化ガス)を、後述のスタンド3、ホース6、充填口7等を用いて図1に示す如く充填(供給)するものである。なお、この場合の自動車2には、液化状態の水素ガスを貯留する貯留タンク(図示せず)が搭載されている。
【0025】
3はガス充填装置1を構成するスタンドで、該スタンド3は、図1に示すように、前面部3A、後面部3B、左,右の側面部3C,3Dおよび上面部3E等を有し、長方形状をなす箱体として形成されている。そして、スタンド3の側面部3Cは、前面部3Aとの間が前側の角隅部3Fとなり、後面部3Bとの間が後側の角隅部3Gとなっている。
【0026】
また、スタンド3の側面部3Cには、その上部側にガス供給部となるマニホールド4が設けられ、該マニホールド4には、後述のスタンド側ホース部6Aが接続される接続部4Aが設けられている。そして、スタンド3内には、マニホールド4の接続部4A等に向けて水素ガスを供給するためのガス配管が配設され、必要に応じて各種のバルブ、計器類(いずれも図示せず)等が収納されている。
【0027】
5はマニホールド4に固定して設けられた突起部としてのフックで、該フック5は、図4に示すように略L字状をなした掛止め金具等により構成されている。そして、フック5には、後述のアイボルト11が掛止めされ、これにより後述の離脱カップリング8がフック5から吊下げられた状態に保持されるものである。
【0028】
6はスタンド3に接続して取付けられた高圧ガス充填用のホースで、このホース6は、内部を超高圧な水素ガスが流通するもので、高い耐圧性能を得るために頑丈な多層構造の中空ホースとして形成されている。このため、ホース6は、任意の方向に柔軟性をもって曲げることはできず、大きく湾曲した状態で曲がるに留まるものである。
【0029】
そして、ホース6は、図2に示すように基端側がマニホールド4の接続部4Aに接続されたスタンド側ホース部6Aと、先端側が後述の充填口7に接続された充填口側ホース部6Bとからなり、2分割した構成となっている。また、ホース6の途中部位には、ホース部6A,6B間に位置して後述の離脱カップリング8が設けられるものである。
【0030】
7は充填口側ホース部6Bの先端側に設けられた充填口で、該充填口7は、ホース6の自由端となる先端側(充填口側ホース部6Bの先端側)に接続されている。そして、充填口7は、自動車2の貯留タンク側の充填口(図示せず)に着脱可能に接続され、自動車2の貯留タンク内に水素ガスを充填(供給)するものである。
【0031】
8はホース6のスタンド側ホース部6Aと充填口側ホース部6Bとの間に設けられた離脱カップリングで、該離脱カップリング8は、互いに分離可能に連結されたソケット9とプラグ10とにより大略構成されている。そして、ソケット9とプラグ10との間には、ホース6の引張り強度よりも弱い脆弱部としての連結ピン(図示せず)等が設けられている。
【0032】
また、離脱カップリング8のソケット9、プラグ10内には、常時は開弁し緊急時に閉弁される遮断弁(図示せず)がそれぞれ設けられている。そして、これらの遮断弁は、プラグ10がソケット9から分離されたときに自動的に閉弁してガス漏れ等の発生を防止するものである。なお、離脱カップリング8の詳細構成については、前述した特許文献1〜4に記載の構成とほぼ同様のものでよい。
【0033】
ここで、離脱カップリング8のソケット9側には、スタンド側ホース部6Aの先端側が接続される接続部9Aが設けられ、この接続部9Aは、マニホールド4側から供給される水素ガスをスタンド側ホース部6Aを介してソケット9、プラグ10内へと導くものである。そして、プラグ10には、充填口側ホース部6Bの基端側が接続されている。
【0034】
これにより、例えば自動車2側の充填口に充填口7を接続したままの状態で、この自動車2が誤って走り出した場合等にホース6の充填口側ホース部6Bが無理に強く引張られると、この引張り力が離脱カップリング8に伝えられる限りは、前述した脆弱部としての連結ピンが引張り力によって破断される。この結果、離脱カップリング8は、前記プラグ10がソケット9から図4中の矢示A方向に分離され、過大な外力がマニホールド4、充填口側ホース部6B、充填口7等に作用するのを防ぐものである。
【0035】
11は離脱カップリング8のソケット9側に設けられた掛止め部としてのアイボルトで、該アイボルト11は、スタンド側ホース部6Aが接続されたプラグ10とは反対側となる位置でソケット9の一側端部(上端側)に螺着等の手段を用いて取付けられている。そして、アイボルト11は、スタンド3側のマニホールド4から図4に示す如く突出したフック5に掛止めされ、離脱カップリング8をフック5から下向きに吊下げた状態に保持するものである。
【0036】
これにより、アイボルト11は、後述の如くホース6の充填口側ホース部6Bが引張られる方向に追従して、離脱カップリング8全体がフック5に対して前,後方向、左,右方向等に揺動されるのを許し、離脱カップリング8の動き(揺動方向)が不自由に拘束されてしまうのを防ぐものである。
【0037】
12はスタンド3の側面部3Cに設けられたホースガイドで、該ホースガイド12は、図1に示すように略コ字形状をなすガイド枠として形成されている。そして、ホースガイド12は、図2に示す如くフック5によりアイボルト11を介して吊下された離脱カップリング8の下方となる位置、かつ後述の案内突起13,14よりも上側となる位置に配置されている。
【0038】
ここで、ホースガイド12内には、ホース6の充填口側ホース部6Bが挿通されている。そして、ホースガイド12は、後述の案内突起13,14と共に充填口側ホース部6Bの動き(挙動)を制約し、例えば図4中の矢示B方向に充填口側ホース部6Bが引張られたときには、これに追従して離脱カップリング8が矢示B方向に引張られるのを抑えつつ、矢示A方向の引張り力を離脱カップリング8に伝えるものである。
【0039】
13,14はスタンド3の側面部3Cに設けられた案内部材としての案内突起を示し、該案内突起13,14のうち一方の案内突起13は、前側の角隅部3Fに近い位置に配置され、他方の案内突起14は、後側の角隅部3Gに近い位置に配置されている。そして、これらの案内突起13,14は、図2に示す如くホースガイド12よりも下側となる位置で、例えば二等辺三角形の位置関係をなすように配置されている。
【0040】
ここで、案内突起13,14は、図4に示す如く円形のボビン(糸巻き)形状に形成され、スタンド3の側面部3Cからホースガイド12よりも小さい突出長さをもって水平方向に突出している。そして、案内突起13,14の外周面には、例えば図4中に二点鎖線で示すようにホース6の充填口側ホース部6Bが摺動可能に接触するものである。
【0041】
これにより、案内突起13または14は、後述の如くホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3に巻きつく方向に引張られた場合でも、離脱カップリング8のプラグ10がソケット9から分離可能な方向(例えば、矢示A方向)に充填口側ホース部6Bを案内するものである。
【0042】
15はスタンド3に設けられた充填口ホルダで、該充填口ホルダ15は、例えば図2、図3に示すように案内突起14の先端(突出端)側に固定して設けられ、案内突起14を介してスタンド3の側面部3Cに取付けられている。そして、充填口ホルダ15には、図2に示すように待機状態の充填口7が掛止めされるものである。一方、図1に例示するように自動車2の貯留タンクに水素ガスの充填を行う場合には、充填口7が手動操作等により図3に示す如く充填口ホルダ15から外される。
【0043】
本実施の形態によるガス充填装置1は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0044】
まず、水素ガス(高圧ガス)の充填作業を行う場合には、例えばスタンド3の前側となる位置(前面部3Aの前方側)に図1に示すように充填対象の自動車2を停車させる。そして、この状態で自動車2の貯留タンクの充填口(図示せず)を開き、ガス充填装置1の充填口7を自動車2の前記充填口に接続した状態に保持する。
【0045】
次に、この状態でスタンド3側のバルブ(図示せず)を開き、マニホールド4からスタンド側ホース部6A、離脱カップリング8のソケット9、プラグ10、充填口側ホース部6Bおよび充填口7を介して自動車2の貯留タンク内に水素ガスを供給する。これにより、スタンド3からホース6等を介して自動車2に水素ガスを充填することができる。
【0046】
ところで、ガス充填装置1を用いて自動車2に水素ガスを充填しているときには、例えば運転者または同乗者等が誤って自動車2を発進させてしまい、ホース6(充填口側ホース部6B)を充填口7と一緒に無理に引張ってしまうことが考えられる。
【0047】
特に、水素ガスの充填途中で自動車2を、図1中に矢印で示す方向に誤発進させると、ホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3の側面部3Cから前面部3A側に巻きつくように引張られ、充填口側ホース部6Bの途中部分がスタンド3の角隅部3Fに強く接触(干渉)する可能性がある。そして、この場合には、離脱カップリング8のプラグ10に矢示A方向に引張り力が上手く伝わらず、充填口側ホース部6Bや充填口7等に過大な外力が付加される虞れがある。
【0048】
そこで、本実施の形態によれば、スタンド3の側面部3Cには、フック5によりアイボルト11を介して吊下された離脱カップリング8の下方となる位置にホースガイド12を設けると共に、該ホースガイド12よりも下側となる位置には、前,後の角隅部3F,3G側に位置してボビン形状をなす案内突起13,14を設ける構成としている。
【0049】
このため、充填口7側に付加される外力でホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3に巻きつくように引張られたときには、スタンド3の側面部3Cに角隅部3F側に位置して設けた案内突起13により充填口側ホース部6Bを図1中に二点鎖線で示す如く案内することができる。これによって、離脱カップリング8のプラグ10に対し、ソケット9から分離可能な方向(矢示A方向)の引張り力を伝えることができる。
【0050】
この結果、ホース6の充填口側ホース部6Bに過大な外力が付加されるような場合には、例えば案内突起13で充填口側ホース部6Bの途中個所を案内することにより、離脱カップリング8のプラグ10をソケット9から矢示A方向に分離することができる。そして、プラグ10がソケット9から分離されたときには、該ソケット9、プラグ10内にそれぞれ設けた遮断弁(図示せず)を自動的に閉弁させ、ガス漏れ等の発生を防止することができる。
【0051】
また、ホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3の側面部3Cから後面部3Bの方向へと後側に巻きつくように引張られたときには、スタンド3の角隅部3G側に位置して側面部3Cに設けた案内突起14により充填口側ホース部6Bの途中部分を案内することができる。これにより、離脱カップリング8のプラグ10に対し、ソケット9から分離可能な方向(矢示A方向)の引張り力を伝えることができる。
【0052】
従って、ガス充填装置1の充填口7を用いて自動車2の貯留タンクに高圧ガス(水素ガス)を充填する作業の途中で、自動車2が誤って発進し、ホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3に巻きつくように引張られた場合でも、離脱カップリング8を確実に分離できる。これにより、過大な外力が充填口7や充填口側ホース部6B等に付加されるのを防止でき、ガス漏れ等の発生を未然に防ぎ、ガス充填装置1としての安全性や信頼性を向上することができる。
【0053】
一方、水素ガス等の充填途中で自動車2が、図1中に示す矢印の方向とは逆向きに誤って発進(例えば、後進)された場合には、ホース6の充填口側ホース部6Bが充填口7と一緒に、例えば図4中の矢示B方向に引張られることになる。しかし、ホース6の充填口側ホース部6Bは、その途中部分がホースガイド12内に摺動可能に挿通され、その動きが制限されている。
【0054】
このため、充填口側ホース部6Bに作用する矢示B方向の外力は、ホースガイド12によりホース6に対する引張り方向が変えられ、充填口側ホース部6Bの基端側が接続された離脱カップリング8のプラグ10側には、例えば矢示A方向の引張り力が作用するようになる。従って、このような場合でも、過大な外力が作用したときには、離脱カップリング8のプラグ10をソケット9側から矢示A方向に分離させ、ガス漏れ等の発生を防ぐことができる。
【0055】
従って、本実施の形態によれば、ガス充填装置1の充填口7を用いて自動車2の貯留タンクに高圧ガスを充填する作業の途中で自動車2が誤って発進しても、スタンド3に設けたホースガイド12、案内突起13,14により充填口側ホース部6Bを摺動可能に案内することができる。このため、例えば矢示A方向に引張り力を離脱カップリング8に対して作用させることができ、離脱カップリング8のプラグ10をソケット9側から分離させることにより、過大な外力が充填口7等に付加されるのを未然に防ぐことができる。
【0056】
次に、図5、図6は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
しかし、本実施の形態の特徴は、ホース6のうち、充填口7と離脱カップリング8との間に位置する充填口側ホース部6Bの途中には、案内突起21,22のいずれかと接触する位置に保護筒体23を挿通して設ける構成としたことにある。
【0058】
ここで、案内突起21,22は、第1の実施の形態で述べた案内突起13,14と同様に案内部材として構成され、スタンド3の角隅部3F,3Gに近い位置でホースガイド12と共に二等辺三角形の位置関係をなすように配設されている。しかし、この場合の案内突起21,22は、比較的小径な棒状突起により構成され、ホースガイド12と同等の突出長さを有している。
【0059】
また、保護筒体23は、図5に示すように全長Lの剛性パイプを用いて形成され、充填口側ホース部6Bの途中部分に挿通した状態で、この部分を外側から被覆するように覆う構成となっている。そして、保護筒体23は、充填口側ホース部6Bの途中部分が案内突起21,22に直に接触するのを防ぐと共に、例えば案内突起21に対して図5に示す如く、寸法L1 ,L2 (但し、L1 <L2 L=L1 +L2 )の位置関係を満たすように取付けられている。
【0060】
かくして、このように構成された本実施の形態でも、スタンド3に設けたホースガイド12、案内突起21,22によりホース6の充填口側ホース部6Bを摺動可能に案内することができ、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
特に、本実施の形態によれば、充填口側ホース部6Bの途中個所には案内突起21,22と接触する位置に保護筒体23を挿通して設ける構成としている。このため、充填口側ホース部6Bの途中部分が案内突起21,22に直に接触(摺動)するのを保護筒体23により防止でき、充填口側ホース部6Bの摩耗、損傷等を抑えることができると共に、充填口側ホース部6Bの耐久性、寿命を向上することができる。
【0062】
しかも、保護筒体23は、例えば案内突起21(22)に対して図5に示す寸法L1 ,L2 (L1 <L2 )の位置で接触するように充填口側ホース部6Bに取付けている。このため、ホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3に巻きつくように、図5中の矢示C方向に引張られた場合には、保護筒体23が案内突起21に対して梃子(てこ)の作用を発揮することができる。
【0063】
即ち、保護筒体23の一側端部23Aは、案内突起21を梃子の支点とし、他側端部23Bを矢示C方向の外力が付加される力点とした場合に、一側端部23Aを作用点として矢示D方向に大なる力を発生できる。そして、一側端部23Aに生じる力(矢示D方向の力)で、離脱カップリング8のプラグ10をソケット9側から矢示A方向に分離させる引張り力を良好に作用させることができる。
【0064】
次に、図7および図8は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、スタンドとしてのスタンドに案内レールを設け、該案内レールにより離脱カップリングを吊下げた状態で移動可能に保持する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0065】
図中、31は本実施の形態で採用したガス充填装置で、このガス充填装置31は、第1の実施の形態で述べたガス充填装置1と同様に、スタンド3、ホース6、充填口7および後述の離脱カップリング34等により構成されている。
【0066】
32はスタンド3に設けられたマニホールドで、該マニホールド32は、第1の実施の形態で述べたマニホールド4と同様にホース6(スタンド側ホース部6A)に対するガス供給部を構成するものである。しかし、このマニホールド32は、スタンド3の側面部3Cに近い位置で上面部3Eに設けられている。そして、マニホールド32には、スタンド側ホース部6Aの基端側が接続されている。
【0067】
33はスタンド3に設けられた案内部材としての案内レールで、該案内レール33は、スタンド3の側面部3Cよりも大なる長さの案内バーとして形成され、長さ方向両端側は、略U字形状をなす前,後の湾曲部33A,33Bとなっている。そして、案内レール33は、スタンド3の上部側(マニホールド32に近い位置)を側面部3Cに沿って水平方向に延び、前,後の湾曲部33A,33Bがスタンド3の前面部3A,後面部3Bにそれぞれ廻込むようにして固定されている。
【0068】
ここで、案内レール33には、後述する離脱カップリング34のアイボルト37が掛止めされ、これにより、離脱カップリング34は、案内レール33からアイボルト37を介して吊下げられた状態に保持される。そして、案内レール33は、例えば図8に示す如く湾曲部33Aの位置までアイボルト37を移動可能に案内し、このときに離脱カップリング34はスタンド3の前面部3Aに対面する位置まで移動する。また、案内レール33の湾曲部33Bの位置までアイボルト37が移動したときには、離脱カップリング34はスタンド3の後面部3Bと対面する位置まで移動するものである。
【0069】
34は本実施の形態で採用した離脱カップリングで、該離脱カップリング34は、第1の実施の形態で述べた離脱カップリング8と同様に構成され、互いに分離可能に連結されたソケット35とプラグ36とを有している。そして、離脱カップリング34のソケット35側には、スタンド側ホース部6Aの先端側が接続される接続部35Aが設けられ、プラグ36の下端側には、充填口側ホース部6Bの基端側が接続されている。
【0070】
37は離脱カップリング34のソケット35側に設けられた掛止め部としてのアイボルトで、該アイボルト37は、第1の実施の形態で述べたアイボルト11と同様に構成され、スタンド側ホース部6Aが接続されたプラグ36とは反対側となる位置でソケット35の一側端部(上端側)に螺着等の手段を用いて取付けられている。そして、アイボルト37は、スタンド3側の上部側に設けた案内レール33に移動可能に掛止めされ、離脱カップリング34を案内レール33から下向きに吊下げた状態に保持するものである。
【0071】
かくして、このように構成された本実施の形態でも、スタンド3に設けた案内レール33により離脱カップリング34をアイボルト37を介して吊下げた状態で移動可能に保持することができ、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
即ち、本実施の形態によれば、水素ガスの充填途中等にホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3に巻きつくように引張られた場合には、離脱カップリング34側のアイボルト37が図7に示す状態から図8に示すように、案内レール33に沿って湾曲部33Aの位置まで滑動するように移動し、このときに離脱カップリング34は、ホース6の充填口側ホース部6B等と一緒にスタンド3の前面部3Aに対面する位置まで移動できる。
【0073】
この結果、水素ガスの充填途中等に自動車2を誤発進させた場合でも、ホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3に巻きついた状態となるのを、図8に示すように防ぐことができ、離脱カップリング34に対し矢示A方向(プラグ36をソケット35側から分離させる方向)の引張り力を、安定して良好に作用させることができる。
【0074】
次に、図9は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、一対の吊り金具等を用いて離脱カップリングを案内レールから吊下げた状態で移動可能に保持する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0075】
図中、41は本実施の形態で採用したガス充填装置で、このガス充填装置41は、第1の実施の形態で述べたガス充填装置1と同様に、スタンド3、ホース6、充填口7および後述の離脱カップリング44等により構成されている。
【0076】
42はスタンド3に設けられたマニホールドで、該マニホールド42は、第1の実施の形態で述べたマニホールド4と同様にホース6(スタンド側ホース部6A)に対するガス供給部を構成するものである。しかし、このマニホールド42は、スタンド3の側面部3Cに近い位置で上面部3Eに設けられている。そして、マニホールド42には、スタンド側ホース部6Aの基端側が接続されている。
【0077】
43はスタンド3に設けられた案内部材としての案内レールで、該案内レール43は、スタンド3の側面部3Cよりも大なる長さの案内バーとして形成され、長さ方向両端側は、略U字形状をなす前,後の湾曲部43A,43Bとなっている。そして、案内レール43は、スタンド3の上部側(マニホールド42に近い位置)を側面部3Cに沿って水平方向に延び、前,後の湾曲部43A,43Bがスタンド3の前面部3A,後面部3Bにそれぞれ廻込むようにして固定されている。
【0078】
44は本実施の形態で採用した離脱カップリングで、該離脱カップリング44は、第1の実施の形態で述べた離脱カップリング8とほぼ同様に構成され、互いに分離可能に連結されたソケット45とプラグ46とを有している。そして、離脱カップリング44のソケット45には、その一側端部(上端側)にスタンド側ホース部6Aの先端側が接続され、プラグ46の下端側には、充填口側ホース部6Bの基端側が接続されている。
【0079】
47,47は離脱カップリング44のソケット45側に設けられた掛止め部としての一対の吊り金具で、該各吊り金具47は、第1の実施の形態で述べたアイボルト11と同様に構成され、スタンド側ホース部6Aが接続されたプラグ46とは反対側となる位置でソケット45の一側端部(上端側)に螺着、溶接等の手段を用いて取付けられている。そして、吊り金具47は、スタンド3側の上部側に設けた案内レール43に移動可能に取付けられ、離脱カップリング44を案内レール43から下向きに吊下げた状態に保持するものである。
【0080】
ここで、吊り金具47は、案内レール43に沿って前,後の湾曲部43A,43Bの位置まで移動可能であり、このときに離脱カップリング44は、ホース6の充填口側ホース部6B等と一緒にスタンド3の前面部3A,後面部3Bと対面する位置まで移動されるものである。
【0081】
かくして、このように構成された本実施の形態でも、スタンド3に設けた案内レール43により離脱カップリング44を一対の吊り金具47を介して吊下げた状態で移動可能に保持することができ、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
即ち、本実施の形態によれば、スタンド3に案内部材としての案内レール43を設ける構成としているので、ホース6の充填口側ホース部6Bがスタンド3に巻きつく方向に引張られた場合でも、吊り金具47により離脱カップリング44を案内レール43に吊下げた状態で充填口側ホース部6B等の引張り方向に移動させるように、離脱カップリング44を充填口側ホース部6Bと共に案内することができる。これにより、離脱カップリング44に対して分離可能な方向の引張り力を伝えることができる。
【0083】
なお、前記第1の実施の形態では、スタンド3の側面部3Cにマニホールド4を介してフック5を設け、離脱カップリング8をアイボルト11によりフック5から吊下げた状態で、離脱カップリング8をスタンド3の側面部3Cと対向した位置に配置する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばスタンド3の前面部3A、後面部3Bまたは側面部3D側にフック等を介して離脱カップリングを吊下げた状態に保持する構成としてもよい。そして、この点は第2〜第4の実施の形態についても同様である。
【0084】
また、前記第3の実施の形態では、案内レール33の両端側に略U字状の湾曲部33A,33Bを形成し、これらの湾曲部33A,33Bをスタンド3の前面部3A,後面部3Bにそれぞれ廻込んだ状態で固定するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば案内レールの両端側をスタンド3の側面部3Cに固定して設ける構成としてもよい。この点は、第4の実施の形態についても同様である。
【0085】
また、前記各実施の形態では、スタンド3を、前面部3A、後面部3B、左,右の側面部3C,3Dおよび上面部3Eから長方形状をなす箱体として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば正方形状をなす箱体でスタンドを形成してもよく、円柱形状または棒状をなすスタンドであってもよい。また、上端側が水平方向に突出するL字状のスタンドであってもよいものである。
【0086】
また、実施の形態では、ガス充填装置としては、地上設置式ガス充填装置を例示したが、本発明はこれに限らず、車両にガス充填装置を搭載した車載式ガス充填装置として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるガス充填装置を自動車と一緒に示す斜視図である。
【図2】スタンドの側面部をホースおよび離脱カップリング等と共に図1中の矢示II−II方向から拡大して示す側面図である。
【図3】充填口を充填口ホルダから取外した状態を示す図2と同様位置の側面図である。
【図4】ホースおよび離脱カップリング等を図3中の矢示IV−IV方向からみた拡大断面図である。
【図5】第2の実施の形態によるガス充填装置のホースおよび離脱カップリング等を示す側面図である。
【図6】ホースおよび離脱カップリング等を図5中の矢示VI−VI方向からみた拡大断面図である。
【図7】第3の実施の形態によるガス充填装置を示す斜視図である。
【図8】図7中の離脱カップリングが案内レールに沿ってスタンドの前面部側に移動した状態を示す斜視図である。
【図9】第4の実施の形態によるガス充填装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0088】
1,31,41 ガス充填装置
3 スタンド
3A 前面部
3B 後面部
3C 側面部
4,32,42 マニホールド(ガス供給部)
5 フック
6 ホース
6A スタンド側ホース部
6B 充填口側ホース部
7 充填口
8,34,44 離脱カップリング
9,35,45 ソケット
10,36,46 プラグ
11,37 アイボルト
12 ホースガイド
13,14,21,22 案内突起(案内部材)
15 充填口ホルダ
23 保護筒体
33,43 案内レール(案内部材)
47 吊り金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスの充填設備に設けられたスタンドと、基端側が該スタンドに接続して取付けられ先端側が自由端となって延び当該先端側に充填口が設けられたホースと、該ホースの長さ方向途中部位に設けられ常時は前記充填口側に向けたガスの流通を許し前記充填口側に過大な引張り力が付加されたときには前記ホースの途中部位を分離して前記ガスの流通を遮断する離脱カップリングとからなるガス充填装置において、
前記スタンドには、前記充填口側に付加される外力で前記ホースがスタンドに巻きつくように引張られたときに、前記ホースの途中部位が前記離脱カップリングによって分離可能な方向に前記ホースを案内する案内部材を設けたことを特徴とするガス充填装置。
【請求項2】
前記案内部材は、前記充填口と離脱カップリングとの間に位置する前記ホースの途中個所が摺動可能に接触するように前記スタンドの角隅部側に位置して突設された案内突起により構成してなる請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項3】
前記充填口と離脱カップリングとの間に位置する前記ホースの途中個所には、前記案内部材と接触する位置に保護筒体を挿通して設ける構成としてなる請求項1または2に記載のガス充填装置。
【請求項4】
前記案内部材は、前記離脱カップリングを吊下げた状態で前記ホースを引張り方向に移動可能に案内する案内レールにより構成してなる請求項1に記載のガス充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−120656(P2007−120656A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314903(P2005−314903)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)水素安全利用等基盤技術開発 水素インフラに関する研究開発 水素充てん機の実用化技術の開発、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】