説明

ガス化システムのタール除去方法及び装置

【課題】ガス化ガス中のタールの蓄積によって誘引通風機が停止しガス化システム全体が停止する問題を解決する。
【解決手段】ガス化システムにて生成されるガス化ガスを誘引通風機で誘引する際に、ガス化ガス中のタールが誘引通風機の加圧により凝縮し高粘度のタールとなって誘引通風機のドレン貯留部に蓄積されるのを防止するために、誘引通風機10のドレン貯留部29及びドレン排出管30に、タールを加熱するための加熱器31を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化システムで原料をガス化して生成されるガス化ガス中のタールの蓄積によって誘引通風機が停止しガス化システム全体が停止する問題を解決するガス化システムのタール除去方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマス、石炭、重質油等の種々の原料をガス化することにより高品位のガス化ガスを製造する技術が提案されるようになってきている。
【0003】
図5は2塔式と称されるガス化システムの一例を示すものであり、このようなガス化システムとしては特許文献1がある。
【0004】
図5に示すガス化システムにおいては、流動層ガス化炉1に供給される前記原料2は、例えば800℃以上の高温の流動媒体3(砂等)と混合されると共に、下部から供給される水蒸気、空気、二酸化炭素等のガス化剤4により形成される流動層5によって流動されてガス化されることによりガス化ガス6を生成する。
【0005】
流動層ガス化炉1で生成したガス化ガス6は、サイクロン7に導いて固形分を除去している。更に、ガス化ガス6にはタールが含まれており、このタールは製品としてのガス化ガスの品質を低下するばかりでなく、後段の機器に悪影響を及ぼすため、スプレー塔8に導いて水の噴射によりタールを凝集させて除去している。そして、ガス化ガス6はクーラ9により温度が低下された後誘引通風機10により誘引されている。この誘引通風機10は流動層ガス化炉1からのガス化ガス6の取り出し量を制御している。
【0006】
誘引通風機10によって取り出されたガス化ガス6は、電気集塵機11により集塵を行った後、発電設備12の燃料として供給したり、或いは圧縮機13で圧縮することにより液化したガス製品14として取り出すようにしている。
【0007】
又、流動層ガス化炉1において原料2をガス化する際に生成したチャーは、流動媒体3と共に流動層燃焼炉15に供給され、流動層燃焼炉15において空気16の供給によりチャーが燃焼することによって流動媒体を例えば900℃以上の温度に加熱するようにしている。流動層燃焼炉15から導出される燃焼排ガス17は分離器18に導かれて流動媒体3と排ガス19とに分離され、分離した流動媒体3は前記流動層ガス化炉1に供給される。又、分離器18で分離した排ガス19は、熱回収用の熱交換器20等を経てバグフィルタ等の集塵器21により集塵された後、誘引通風機22により誘引されて煙突23から排出される。この誘引通風機22は流動層燃焼炉15における空塔速度を制御している。
【0008】
前記したように、流動層ガス化炉1からのガス化ガス6は、スプレー塔8により水を噴射してタールを除去しているが、タールには多数の成分が含まれているために、スプレー塔8においてすべてのタールを取り切ることはできず、このために、残りのタールはクーラ9で冷却されることにより凝縮し、更に誘引通風機10ではガス化ガス6が圧縮されるために凝縮し、これによって凝縮したタールが誘引通風機10内に堆積するという問題がある。
【0009】
図6、図7は前記ガス化ガス6を誘引する誘引通風機10の一例を示したものであり、図示の誘引通風機10は、モータ24で駆動される回転翼25がケーシング26内に設けられており、回転翼25の中心からガス化ガス6を吸引して遠心力により外周部の排出口27から排出するようになっており、前記ケーシング26とモータ24は台28上に支持されている。
【0010】
又、前記ケーシング26の底部には、ガス化ガス6中の水蒸気が凝縮した凝縮水及び凝縮したタールを貯めるためのドレン貯留部29が設けられており、更に、ドレン貯留部29に溜ったタールを含むドレンを下部に排出するためのドレン排出管30がドレン貯留部29の側部に接続されている。
【特許文献1】特開2005−41959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、図6、図7に示した誘引通風機10では、前記したように図5のクーラ9でガス化ガス6が冷却される際にタールが凝縮し、更に誘引通風機10でガス化ガス6が圧縮されることによりタールが凝縮し、このように凝縮したタールが誘引通風機10のドレン貯留部29内に堆積する。このタールは粘度が高いためにドレン排出管30を閉塞させる問題を引き起こし、その後運転が継続されるとタールがケーシング26内に溜まり続けて回転翼に達し、誘引通風機10をトリップさせてしまう。誘引通風機10がトリップするとガス化システム全体が停止するという問題がある。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、ガス化ガス中のタールの蓄積によって誘引通風機が停止しガス化システム全体が停止する問題を解決するようにしたガス化システムのタール除去方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ガス化システムにて生成されるガス化ガスを誘引通風機で誘引する際に、ガス化ガス中のタールが誘引通風機の加圧により凝縮し高粘度のタールとなって誘引通風機のドレン貯留部に蓄積されるのを防止するためのガス化システムのタール除去方法であって、誘引通風機のドレン貯留部及びドレン排出管のタールを加熱することによりタールを軟化させて排出することを特徴とするガス化システムのタール除去方法である。
【0014】
上記ガス化システムのタール除去方法において、タールを加熱する温度は40℃〜300℃とすることができる。
【0015】
本発明は、ガス化システムにて生成されるガス化ガスを誘引通風機で誘引する際に、ガス化ガス中のタールが誘引通風機の加圧により凝縮し高粘度のタールとなって誘引通風機のドレン貯留部に蓄積されるのを防止するためのガス化システムのタール除去装置であって、誘引通風機のドレン貯留部及びドレン排出管に、タールを加熱するための加熱器を備えたことを特徴とするガス化システムのタール除去装置である。
【0016】
上記ガス化システムのタール除去装置において、加熱器は電気ヒータであってもよい。
【0017】
又、ガス化システムのタール除去装置において、加熱器は流体加熱器であってもよい。
【0018】
又、ガス化システムのタール除去装置において、ドレン排出管がドレン貯留部から下り勾配に形成された傾斜管であることは好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス化システムのタール除去方法及び装置によれば、誘引通風機のドレン貯留部及びドレン排出管のタールを加熱してタールを軟化させて排出するようにしたので、ガス化ガス中の高粘度のタールが誘引通風機に蓄積して誘引通風機を停止させる問題を解決し、ガス化システムの稼働率を向上できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1、図2は図6、図7に示した従来の誘引通風機10に適用した本発明の一例を示すもので、誘引通風機10のケーシング26の底部に設けられているガス化ガス6中の凝縮水及び凝縮したタールを貯めるためのドレン貯留部29と、該ドレン貯留部29に溜ったタール及び水を含むドレンを下方へ排出するためのドレン排出管30に、タールを加熱するための加熱器31を設けている。
【0022】
本発明者らの試験によると、ガス化ガス6中に含まれるタールは、40℃以上、好ましくは50℃以上に熱すると軟化して流動性が高まることが判明した。従って、前記ドレン貯留部29及びドレン排出管30に備えた加熱器31は、40℃以上の温度に加熱することにより、タールの流動性を高めた状態に保持するようにしている。又、加熱器により300℃以上の温度で加熱すると、ドレン貯留部29のタールが熱分解を起こし、炭化物を生成して下流部のドレン排出管30が閉塞してしまうため、加熱の上限温度は300℃程度とすることが好ましい。
【0023】
又、前記ドレン排出管30には、ドレン貯留部29から下り勾配に形成した傾斜管30aを設けている。
【0024】
図1、図2に示す加熱器31は、前記ドレン貯留部29及びドレン排出管30の外周に沿って電気加熱線32(ラインヒータ)を配置した電気ヒータ33の場合を示している。
【0025】
又、加熱器31は、図3、図4に示すように、前記ドレン貯留部29及びドレン排出管30の外周に沿うようにジャケット34を形成し、該ジャケット34内に温水等の加熱流体35を流すようにした流体加熱器36としてもよい。
【0026】
以下に上記形態例の作動を説明する。
【0027】
図5の流動層ガス化炉1で生成したガス化ガス6は、スプレー塔8により水を噴射してタールを除去しているが、タールには多数の成分が含まれているために、スプレー塔8においてすべてのタールを取り切ることはできず、この取り切れないタールはクーラ9で冷却される際に凝縮し、更に誘引通風機10でガス化ガス6が圧縮される際に凝縮し、このように凝縮したタールは誘引通風機10内に堆積する。
【0028】
ここで、前記ドレン貯留部29及びドレン排出管30に備えた加熱器31により40℃以上の温度で加熱するようにしたので、ドレン貯留部29のタールは40℃以上に加熱されて軟化し流動性が高められる。これにより、加熱器にて40℃以上の温度に加熱されているドレン排出管30を通してタールを確実に排出することができる。更にこのとき、ドレン貯留部29に接続したドレン排出管30は下り勾配の傾斜管30aによって形成されているので、タールは更に流下し易くなって確実に排出されるようになる。
【0029】
上記したように、誘引通風機10のタールが確実に排出されるため、従来のように高粘度のタールが蓄積されて誘引通風機10がトリップする問題を確実に防止することができ、よって、ガス化システムの稼働率を大幅に向上させることができる。
【0030】
尚、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、加熱器による加熱の方法は図示例のみに限定されないこと、誘引通風機の構成には限定されないこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を実施するガス化システムにおける誘引通風機の一例の概略を示す切断側面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】本発明を実施するガス化システムにおける誘引通風機の他の例の概略を示す切断側面図である。
【図4】図3のIV−IV方向矢視図である。
【図5】従来のガス化システムの一例を示す概略構成図である。
【図6】従来のガス化システムにおける誘引通風機の一例を示す切断側面図である。
【図7】図6のVII−VII方向矢視図である。
【符号の説明】
【0032】
6 ガス化ガス
10 誘引通風機
29 ドレン貯留部
30 ドレン排出管
30a 傾斜管
31 加熱器
33 電気ヒータ
36 流体加熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化システムにて生成されるガス化ガスを誘引通風機で誘引する際に、ガス化ガス中のタールが誘引通風機の加圧により凝縮し高粘度のタールとなって誘引通風機のドレン貯留部に蓄積されるのを防止するためのガス化システムのタール除去方法であって、誘引通風機のドレン貯留部及びドレン排出管のタールを加熱することによりタールを軟化させて排出することを特徴とするガス化システムのタール除去方法。
【請求項2】
タールを加熱する温度が40℃〜300℃である請求項1に記載のガス化システムのタール除去方法。
【請求項3】
ガス化システムにて生成されるガス化ガスを誘引通風機で誘引する際に、ガス化ガス中のタールが誘引通風機の加圧により凝縮し高粘度のタールとなって誘引通風機のドレン貯留部に蓄積されるのを防止するためのガス化システムのタール除去装置であって、誘引通風機のドレン貯留部及びドレン排出管に、タールを加熱するための加熱器を備えたことを特徴とするガス化システムのタール除去装置。
【請求項4】
加熱器が電気ヒータである請求項3に記載のガス化システムのタール除去装置。
【請求項5】
加熱器が流体加熱器である請求項3に記載のガス化システムのタール除去装置。
【請求項6】
ドレン排出管がドレン貯留部から下り勾配に形成された傾斜管である請求項3〜5のいずれか1つに記載のガス化システムのタール除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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