説明

ガス化方法及びガス化設備

【課題】ガス化設備で原料をガス化する際に、熱分解ガスによって改質ガス化反応が阻害される問題を防止して、改質ガス化反応を促進させる。
【解決手段】分離器11で分離した循環粒子3を移動させつつ原料2を混合することにより原料2に含まれる揮発分を熱分解させて熱分解ガス19を取り出した後、熱分解残渣をガス化炉1に供給して改質ガス化により改質ガス化ガス21を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化設備で原料をガス化する際に、熱分解反応により生成するタールによってガス化反応が阻害される問題を防止して、ガス化反応を促進できるようにしたガス化方法及びガス化設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマス、石炭、廃棄物、石油残渣、重質油等の種々の有機物原料をガス化することにより高品位のガス化ガスを製造する技術が提案されるようになってきている。
【0003】
図5は2塔式と称されるガス化設備の一例を示すものであり、このようなガス化設備としては特許文献1がある。
【0004】
図5に示すガス化設備においては、流動層ガス化炉1に供給される原料2は、例えば800℃以上の高温を有して供給される循環粒子3(砂等)と、下部から供給される水蒸気、空気、酸素、二酸化炭素等のガス化剤4とにより形成される流動層5によって流動加熱され、ガス化されてガス化ガス6を生成する。
【0005】
流動層ガス化炉1で生成したガス化ガス6は、サイクロン等の分離器7に導いて固形分を除去した後、タール除去装置、電気集塵機等の精製装置を経た後、発電設備の燃料として供給したり、合成ガス原料として供給したり、或いは圧縮機で圧縮して液化したガス製品として取り出すようにしている。
【0006】
又、流動層ガス化炉1において原料2をガス化する際に生成したチャーは、循環粒子3と共に流動層燃焼炉8に供給され、流動層燃焼炉8において空気又は酸素等の酸化剤9の供給によりチャーを燃焼することによって循環粒子を例えば900℃以上の温度に加熱するようにしている。流動層燃焼炉8から導出される燃焼ガス10はサイクロン等の分離器11に導かれて循環粒子3と排ガス12とに分離され、分離した循環粒子3は前記流動層5に没入した降下管Aにより流動層ガス化炉1に供給するようにしている。又、分離器11で分離した排ガス12は、熱回収用の熱交換器13等を経てバグフィルタ等の集塵器により集塵されて煙突に導かれる。
【0007】
前記流動層ガス化炉1においては、原料2が流動層5により加熱されて、熱分解により熱分解ガスを生成する熱分解反応と、熱分解残渣がガス化剤4の作用を受けて改質ガス化ガスを生成する改質ガス化反応とが混在した状態で起こっている。熱分解反応では、メタンCH、タール等の炭化水素CHや、その他一酸化炭素CO、二酸化炭素CO、水素H等を含む熱分解ガスが生成され、改質ガス化反応では、水蒸気ガス化の場合は一酸化炭素CO、水素Hを主成分とする改質ガス化ガスが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−41959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記流動層ガス化炉1に原料2が供給されると、先ず熱分解による熱分解ガスが生成し、続いてガス化剤の作用を受けて改質ガス化による改質ガス化ガスが生成するが、前記熱分解ガスには多くのタールが含まれており、前記したように流動層ガス化炉1において熱分解反応と改質ガス化反応が同時に行われる従来のガス化設備においては、熱分解反応によって生成した熱分解ガスが、改質ガス化反応を阻害するという問題がある。
【0010】
ここで、有機物原料の熱分解反応によって発生するタールは、水性ガス化反応(炭素+水蒸気→一酸化炭素+水素)を阻害する作用があるとの研究報告がある(林ら.Fuel.2005;Volume84:p1612)。
【0011】
このように、図5の流動層ガス化炉1において生成する熱分解ガスが改質ガス化反応を阻害するために、原料が改質ガス化されるのに時間が掛ると共に、改質ガス化ガスの生成量が減少するという問題がある。このため、反応時間を長く保持することによって改質ガス化ガスの生成量を増大しようとした場合には、流動層ガス化炉1の容積を増大する必要があるため設備が大型になってしまう問題がある。
【0012】
更に、流動層ガス化炉1からは熱分解ガスと改質ガス化ガスが混合したガス化ガス6が取り出されるために、タール除去装置等の処理装置が大型になるという問題がある。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、ガス化設備で原料をガス化する際に、熱分解ガスによって改質ガス化反応が阻害される問題を防止して、改質ガス化反応を促進させるようにしたガス化方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、循環粒子とガス化剤の存在下で原料をガス化するガス化炉と、ガス化炉でのガス化時に生成したチャーを導入して燃焼することにより循環粒子を加熱する燃焼炉と、燃焼炉からの燃焼ガスを分離器に導いて排ガスと循環粒子とに分離し循環粒子を前記ガス化炉に戻すようにしているガス化方法であって、分離器で分離した循環粒子を移動させつつ原料を混合することにより原料を熱分解させて熱分解ガスを取り出した後、熱分解残渣をガス化炉に供給して改質ガス化により改質ガス化ガスを生成することを特徴とするガス化方法、に係るものである。
【0015】
上記ガス化方法において、熱分解時間が0.3秒〜10秒であることは好ましい。
【0016】
本発明は、循環粒子とガス化剤の存在下で原料をガス化するガス化炉と、ガス化炉でのガス化時に生成したチャーを導入して燃焼することにより循環粒子を加熱する燃焼炉と、燃焼炉からの燃焼ガスを分離器に導いて排ガスと循環粒子とに分離し循環粒子を前記ガス化炉に戻すようにしているガス化設備であって、分離器で分離した循環粒子を粒子移動部内に移動させつつ原料供給装置から原料を供給して原料を熱分解させ、熱分解ガス取出口により熱分解ガスを取り出すと共に、熱分解残渣を前記ガス化炉に供給する熱分解装置を備えたことを特徴とするガス化設備、に係るものである。
【0017】
上記ガス化設備において、熱分解装置は、分離器で分離した循環粒子が流下する上側降下管と、該上側降下管の下端から上り勾配に形成された傾斜管と、該傾斜管の上端から循環粒子を流下させてガス化炉に供給する下側降下管とにより粒子移動部を形成しており、前記傾斜管の上端と下端の途中に原料を供給する原料供給装置を有することは好ましい。
【0018】
上記ガス化設備において、熱分解装置は、分離器で分離した循環粒子が流下する上側降下管の下端を包囲し流動化ガスにより循環粒子を流動化して溢流させる溢流装置と、該溢流装置から溢流した循環粒子を流下させてガス化炉に供給する下側降下管とにより粒子移動部を形成しており、前記溢流装置または下側降下管の途中に原料を供給する原料供給装置を有することは好ましい。
【0019】
上記ガス化設備において、熱分解装置は、分離器で分離した循環粒子が流下する上側降下管の下端を包囲し流動化ガスにより循環粒子を流動化して溢流させる上段の溢流装置と、該上段の溢流装置から溢流した循環粒子を降下させる中間降下管と、該中間降下管の下端を包囲し流動化ガスにより循環粒子を流動化して溢流させる下段の溢流装置と、該下段の溢流装置から溢流した循環粒子を流下させてガス化炉に供給する下側降下管とにより粒子移動部を形成しており、前記上段の溢流装置または中間降下管の途中に原料を供給する原料供給装置を有し、上段の溢流装置と下段の溢流装置の少なくとも一方に熱分解ガス取出口を有することは好ましい。
【0020】
上記ガス化設備において、熱分解装置にガス導入装置を備え、導入されたガスが上昇流形成ガスであなることは好ましい。
【0021】
又、上記ガス化設備において、上昇流形成ガスがガス化剤であることは好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガス化方法及び装置によれば、分離器で分離した循環粒子を移動させつつ原料を混合することにより原料を制限時間内に熱分解させて熱分解ガスを取り出した後、熱分解残渣をガス化炉に供給して改質ガス化により改質ガス化ガスを生成するようにしたので、ガス化炉において熱分解ガスが発生するのを防止することができ、よってガス化炉での改質ガス化反応が熱分解ガスにより阻害される問題が防止できるため、ガス化炉での改質ガス化反応が促進し、改質ガス化ガスの生成量を増大できるという優れた効果を奏し得る。
【0023】
又、0.3秒〜数秒の熱分解時間で熱分解を行って熱分解ガスの生成のみを予め行うようにしたので、熱分解による熱分解ガスと改質ガス化による改質ガス化ガスとを効果的に分けて取り出すことができ、よって熱分解ガスと改質ガス化ガスの精製等の後処理がそれぞれに適した方法で効率的に行えるようになるという効果がある。又、熱分解装置から取り出された熱分解ガスを改質することによって改質ガス化ガスを生成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のガス化設備の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1のガス化設備における熱分解装置の具体的な構成の一例を示す概略側面図である。
【図3】図1のガス化設備における熱分解装置の具体的な構成の他の例を示す概略側面図である。
【図4】図1のガス化設備における熱分解装置の具体的な構成の他の例を示す概略側面図である。
【図5】従来のガス化設備の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1は図5に示したガス化設備に適用した本発明の一例を示すもので、分離器11と流動層ガス化炉1との間に熱分解装置14を備えた構成としている。熱分解装置14は、分離器11によって分離した循環粒子3を粒子移動部15内で移動させつつ原料供給装置16により原料2を供給して原料を熱分解させる一方、ガス導入装置17により上昇流形成ガス18を供給して熱分解ガスを上昇させ、熱分解残渣を循環粒子3と共に前記流動層ガス化炉1に供給するようにしている。更に、前記熱分解装置14には熱分解ガス19を取り出すための熱分解ガス取出口20を備えている。尚、図1では熱分解装置14に、ガス導入装置17により上昇流形成ガス18を供給しているが、上昇流形成ガス18は供給しなくてもよい。即ち、図1に示すように、分離器11で分離された循環粒子3は流動層5に没入した降下管Aによってシールされて流動層ガス化炉1に供給されるため、降下管A内で発生した熱分解ガス19は自身の圧力によって上昇し熱分解ガス取出口20から取り出されるようになる。
【0027】
上記したように、流動層ガス化炉1には、熱分解装置14によって分解された後の熱分解残渣が供給されるので、流動層ガス化炉1では熱分解ガスがほとんど生成されないため、熱分解ガスによる阻害をあまり受けることなく良好な改質ガス化反応が行われ、よって流動層ガス化炉1からはより多くの改質ガス化ガス21が取り出されるようになる。
【0028】
図2は、前記熱分解装置14の具体的な構成の一例を示すもので、熱分解装置14は分離器11で分離した循環粒子3が流下する上側降下管22と、該上側降下管22の下端から上り勾配に形成された傾斜管23と、該傾斜管23の上端から循環粒子3を流下させて流動層ガス化炉1に導く下側降下管24とからなる粒子移動部15を形成しており、更に、前記傾斜管23の上端と下端の途中に原料2を供給する原料供給装置16と、前記傾斜管23内に下側から上昇流形成ガス18を供給するガス導入装置17とを備えている。図2の例では傾斜管23の下側から上昇流形成ガス18を吹き込んで循環粒子を流動させる分散板25を備えた場合を示している。上昇流形成ガス18としては、熱分解ガス19の生成、及びその後の精製に対して悪影響を生じないものであれば種々のものを用いることができ、原料2のガス化に用いられるガス化剤を用いることができる。
【0029】
前記原料供給装置16には傾斜管23の内部の圧力に関係なく原料2を供給できるスクリューフィーダ等を用いることができ、又、原料供給装置16によって傾斜管23の複数箇所から原料2を供給するようにしてもよい。
【0030】
前記傾斜管23の上端部には、下側降下管24の上端と連通して熱分解ガス19を取り出す熱分解ガス取出口20が備えてあり、熱分解ガス取出口20から取出した熱分解ガス19はサイクロン等の分離器26に導かれて固形粒子が除去され、後方に導かれるようになっている。
【0031】
以下に図2に示した形態例の作動を説明する。
【0032】
分離器11で分離された循環粒子3は、上側降下管22を流下して上り勾配になっている傾斜管23の下端に供給される。傾斜管23に供給された循環粒子3は、ガス導入装置17により供給されて分散板25から吹き出される上昇流形成ガス18によって流動し、このとき、上側降下管22内は落下してくる循環粒子3によって塞がれているため、循環粒子は傾斜管23内を上方へ移動した後上端から下側降下管24へ流入される。又、前記上昇流形成ガス18も傾斜管23内を上方へ移動した後、熱分解ガス取出口20から取り出される。
【0033】
この状態において、原料供給装置16により傾斜管23に原料2を供給すると、原料2は傾斜管23内の循環粒子3と混合加熱されることにより熱分解され、熱分解により生成した熱分解ガス19は前記上昇流形成ガス18と共に傾斜管23内を上方へ移動して、熱分解ガス取出口20から取り出されるようになる。
【0034】
このとき、傾斜管23における原料供給装置16の設置位置と傾斜管23の上端部との間の長さと、ガス導入装置17により供給する上昇流形成ガス18の圧力の調整とによって原料2の熱分解時間を調節することができるので、前記したように800℃以上の循環粒子3が供給されて原料2の熱分解を行う場合には、熱分解が0.3秒〜10秒の制限時間内で行われるよう熱分解時間を調節することができる。これによって、熱分解反応をほぼ完了させることができる。ここで、熱分解が0.3秒未満であると、熱分解が十分に行われず、また、10秒を超えると、原料2から発生するチャーの不活性化が進行し得る。
【0035】
従って、熱分解装置14で熱分解がほぼ完了した熱分解残渣が流動層ガス化炉1に供給されるようになるので、流動層ガス化炉1では熱分解ガスがほとんど生成されず、よって熱分解ガスによる阻害をあまり受けることなく良好な改質ガス化反応が行われ、流動層ガス化炉1からより多くの良質の改質ガス化ガス21を取り出すことができる。
【0036】
図3は、前記熱分解装置14の具体的な構成の他の例を示すもので、熱分解装置14は分離器11で分離した循環粒子3が流下する上側降下管22の下端を包囲し、分散板27を介して流動化ガス28を供給することにより循環粒子3を流動化し、一側の仕切板29の上端から一定量の循環粒子3を溢流させるようにした溢流装置30と、該溢流装置30から溢流した循環粒子3を流下させて流動層ガス化炉1に導く下側降下管24とからなる粒子移動部15を形成しており、前記下側降下管24の途中に原料2を供給する原料供給装置16と、該原料供給装置16より下部位置において下側降下管24に上昇流形成ガス18を供給するガス導入装置17とを備えている。図3の例ではガス導入装置17は下側降下管24の周方向から上昇流形成ガス18を吹き込むようにしており、又、原料供給装置16も下側降下管24の周方向から原料2を供給するようにしてもよい。ここで、下側降下管24は図1に示したように流動層5に没入されているため、ガス導入装置17を省略しても下側降下管24内に生成した熱分解ガス19は自身の圧力により上昇して熱分解ガス取出口20から取り出されるようになる。
【0037】
図3の形態では、分離器11で分離された循環粒子3は、上側降下管22を流下して溢流装置30に供給される。溢流装置30には流動化ガス28が供給されているため循環粒子3は流動化し、一側の仕切板29の上端から溢流して下側降下管24により流動層ガス化炉1に導かれる。又、ガス導入装置17により下側降下管24に供給された上昇流形成ガス18は、流動層ガス化炉1内の圧力が高いことによって下側降下管24内を上昇し、熱分解ガス取出口20から取り出される。
【0038】
この状態において、原料供給装置16により下側降下管24に原料2を供給すると、原料2は下側降下管24内を流下する間に循環粒子3と混合加熱されることにより熱分解され、熱分解により生成した熱分解ガス19は前記上昇流形成ガス18と共に下側降下管24内を上昇して、熱分解ガス取出口20から取り出されるようになる。この時、上昇流形成ガス18を吹き込むことにより、熱分解ガス19が流動媒体3及び分解残渣に同伴して流動層ガス化炉1に導入されるのを防止することができる。
【0039】
このとき、下側降下管24における原料供給装置16の設置位置とガス導入装置17による上昇流形成ガス18の吹込位置との間の長さと、ガス導入装置17により吹き込む上昇流形成ガス18の圧力の調整とによって原料2の熱分解時間を調節することができるので、前記したように800℃以上の循環粒子3が供給されて原料2の熱分解を行う場合には、熱分解が0.3秒〜10秒の制限時間内で行われるよう熱分解時間を調節することができる。これによって、熱分解反応をほぼ完了させることができる。
【0040】
従って、熱分解装置14で熱分解がほぼ完了した熱分解残渣が流動層ガス化炉1に供給されるようになるので、流動層ガス化炉1ではほとんど熱分解ガスが生成されず、よって熱分解ガスによる阻害をあまり受けることなく良好な改質ガス化反応が行われ、流動層ガス化炉1からより多くの良質の改質ガス化ガス21を取り出すことができる。
【0041】
図4は、前記熱分解装置14の具体的な構成の更に他の例を示すもので、熱分解装置14は分離器11で分離した循環粒子3が流下する上側降下管22の下端を包囲し、分散板27を介して流動化ガス28を供給することにより循環粒子3を流動化し、一側の仕切板29の上端から一定量の循環粒子3を溢流させるようにした上段の溢流装置31と、該上段の溢流装置31から溢流した循環粒子3を流下させる中間降下管32と、中間降下管32の下端を包囲し、分散板27を介して流動化ガス28を供給することにより循環粒子3を流動化し、一側の仕切板29の上端から一定量の循環粒子3を溢流させるようにした下段の溢流装置33と、下段の溢流装置33から溢流した循環粒子3を流動層ガス化炉1に導く下側降下管24とからなる粒子移動部15を形成しており、前記中間降下管32の途中に原料2を供給する原料供給装置16を備えている。更に、図4の例では上段の溢流装置31と下段の溢流装置33の夫々に熱分解ガス19を取り出す熱分解ガス取出口20を備えている。尚、熱分解ガス取出口20は、上段の溢流装置31と下段の溢流装置33のいずれか一方に備えるようにしてもよい。又、前記中間降下管32の途中において、原料2供給する原料供給装置16の下方に、上昇流形成ガス18を吹き込むガス導入装置17を備えるようにしてもよい。
【0042】
図4の形態では、分離器11で分離された循環粒子3は、上側降下管22を流下して上段の溢流装置31に供給される。上段の溢流装置31には流動化ガス28が供給されているため循環粒子3は流動化し、一側の仕切板29の上端から溢流して中間降下管32により下段の溢流装置33に導かれる。下段の溢流装置33には流動化ガス28が供給されているため循環粒子3は流動化し、一側の仕切板29の上端から溢流して下側降下管24により動層ガス化炉1に導かれる。又、上段の溢流装置31及び下段の溢流装置33に供給される流動化ガス28は夫々に設けられた熱分解ガス取出口20から取り出される。
【0043】
この状態において、原料供給装置16により中間降下管32に原料2を供給すると、原料2は中間降下管32内を流下する間及び下段の溢流装置33内を流動する間に循環粒子3と混合加熱されることにより熱分解され、熱分解により生成した熱分解ガス19は熱分解ガス取出口20から取り出されるようになる。
【0044】
このとき、中間降下管32における原料供給装置16の設置位置を選定することによって原料2の熱分解時間を調節することができるので、前記したように800℃以上の循環粒子3が供給されて原料2の熱分解を行う場合には、熱分解が0.3秒〜10秒の制限時間内で行われるよう熱分解時間を調節することができる。これによって、熱分解反応をほぼ完了させることができる。
【0045】
従って、熱分解装置14で熱分解がほぼ完了した熱分解残渣が流動層ガス化炉1に供給されるようになるので、流動層ガス化炉1ではほとんど熱分解ガスが生成されず、よって熱分解ガスによる阻害をあまり受けることなく良好な改質ガス化反応が行われ、流動層ガス化炉1からより多くの良質の改質ガス化ガス21を取り出すことができる。
【0046】
上記したように、熱分解装置14で原料を制限時間内で熱分解させて熱分解ガス19を生成し、その後、熱分解残渣を流動層ガス化炉1に導いて改質ガス化により改質ガス化ガス21を生成することができるので、熱分解ガス19と改質ガス化ガス21とを効果的に分けて取り出すことができるため、熱分解ガス19と改質ガス化ガス21の精製等の後処理がそれぞれに適した方法で効率的に行えるようになる。又、熱分解装置14から取り出された熱分解ガス19を改質することによって改質ガス化ガスを生成することもできる。
【0047】
尚、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、粒子移動部は図示以外の形状としてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 流動層ガス化炉(ガス化炉)
2 原料
3 循環粒子
4 ガス化剤
7 分離器
8 流動層燃焼炉(燃焼炉)
9 酸化剤
10 燃焼ガス
11 分離器
12 排ガス
14 熱分解装置
15 粒子移動部
16 原料供給装置
17 ガス導入装置
18 上昇流形成ガス
19 熱分解ガス
20 熱分解ガス取出口
21 改質ガス化ガス
22 上側降下管
23 傾斜管
24 下側降下管
28 流動化ガス
30 溢流装置
31 上段の溢流装置
32 中間降下管
33 下段の溢流装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環粒子とガス化剤の存在下で原料をガス化するガス化炉と、ガス化炉でのガス化時に生成したチャーを導入して燃焼することにより循環粒子を加熱する燃焼炉と、燃焼炉からの燃焼ガスを分離器に導いて排ガスと循環粒子とに分離し循環粒子を前記ガス化炉に戻すようにしているガス化方法であって、分離器で分離した循環粒子を移動させつつ原料を混合することにより原料を熱分解させて熱分解ガスを取り出した後、熱分解残渣をガス化炉に供給して改質ガス化により改質ガス化ガスを生成することを特徴とするガス化方法。
【請求項2】
熱分解時間が0.3秒〜10秒である請求項1に記載のガス化方法。
【請求項3】
循環粒子とガス化剤の存在下で原料をガス化するガス化炉と、ガス化炉でのガス化時に生成したチャーを導入して燃焼することにより循環粒子を加熱する燃焼炉と、燃焼炉からの燃焼ガスを分離器に導いて排ガスと循環粒子とに分離し循環粒子を前記ガス化炉に戻すようにしているガス化設備であって、分離器で分離した循環粒子を粒子移動部内に移動させつつ原料供給装置から原料を供給して原料を熱分解させ、熱分解ガス取出口により熱分解ガスを取り出すと共に、熱分解残渣を前記ガス化炉に供給する熱分解装置を備えたことを特徴とするガス化設備。
【請求項4】
熱分解装置は、分離器で分離した循環粒子が流下する上側降下管と、該上側降下管の下端から上り勾配に形成された傾斜管と、該傾斜管の上端から循環粒子を流下させてガス化炉に供給する下側降下管とにより粒子移動部を形成しており、前記傾斜管の上端と下端の途中に原料を供給する原料供給装置を有する請求項3に記載のガス化設備。
【請求項5】
熱分解装置は、分離器で分離した循環粒子が流下する上側降下管の下端を包囲し流動化ガスにより循環粒子を流動化して溢流させる溢流装置と、該溢流装置から溢流した循環粒子を流下させてガス化炉に供給する下側降下管とにより粒子移動部を形成しており、前記溢流装置または下側降下管の途中に原料を供給する原料供給装置を有する請求項3に記載のガス化設備。
【請求項6】
熱分解装置は、分離器で分離した循環粒子が流下する上側降下管の下端を包囲し流動化ガスにより循環粒子を流動化して溢流させる上段の溢流装置と、該上段の溢流装置から溢流した循環粒子を降下させる中間降下管と、該中間降下管の下端を包囲し流動化ガスにより循環粒子を流動化して溢流させる下段の溢流装置と、該下段の溢流装置から溢流した循環粒子を流下させてガス化炉に供給する下側降下管とにより粒子移動部を形成しており、前記上段の溢流装置または中間降下管の途中に原料を供給する原料供給装置を有し、上段の溢流装置と下段の溢流装置の少なくとも一方に熱分解ガス取出口を有する請求項3に記載のガス化設備。
【請求項7】
熱分解装置にガス導入装置を備え、導入されたガスが上昇流形成ガスとなる請求項3〜6のいずれか1つに記載のガス化設備。
【請求項8】
上昇流形成ガスがガス化剤である請求項3〜7のいずれか1つに記載のガス化設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−26413(P2011−26413A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172381(P2009−172381)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(598132048)財団法人 石炭エネルギーセンター (8)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)