説明

ガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法

【課題】本発明の目的は、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉を提供する。
【解決手段】バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉において、スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、前記クエンチ部内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズルを該生成ガスノズルよりも下方の位置に設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭等の固体燃料をガス化するガス化炉、ガス化炉を備えたガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化炉を備えたガス化発電プラントの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭等の固体燃料をガス化するガス化炉を運転する場合には、ガス化炉のスラグタップ開口部での溶融スラグの固化・閉塞を防ぎ、溶融スラグを安定に流下させる必要がある。このため、ガス化炉のスラグタップ下面側を加熱する必要がある。
【0003】
ガス化炉のスラグタップ下面側を加熱する方法として、スラグタップ直下に設けられた起動バーナを用いるのが通例である。しかしながらガス化炉のランニングコストを低減するには、この起動バーナから投入する軽油等の助燃燃料を削減することが不可欠である。 特開平7−11261号公報には、ガス化炉の起動バーナから酸化剤と、ガス化炉で発生したCO及びH2を主成分とする生成ガス(リサイクルガス)を再循環させて投入し、スラグタップの加熱と、ランニングコストの低減を図る技術が開示されている。
【0004】
特開平7−292368号公報には、スラグタップの下部にガス化炉で生成した生成ガスの一部を導入して燃焼させるリサイクルガスバーナと、酸素又は酸素富化空気の投入ノズルを設けて、このリサイクルガスバーナから供給した生成ガスと、酸素又は酸素富化空気の投入ノズルから供給した酸素とをスラグタップの直下で混合して燃焼させ、前記スラグタップを加熱する構成にして、溶融スラグが固化することによるスラグタップ開口部の閉塞を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−11261号公報(第1図)
【特許文献2】特開平7−292368号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特開平7−292368号公報に開示されたガス化炉においては、スラグタップの開口部を加熱するためにガス化炉で生成した生成ガスの一部をリサイクルバーナから供給して燃焼させることにより、溶融スラグの固化によるスラグタップの開口部の閉塞を防止しているが、溶融スラグの固化防止を優先させるためにリサイクルバーナから供給して燃焼させる生成ガス量が多くなり、加熱で消費する熱エレルギーが増大してガス化炉のエネルギー効率の低下が大きくなる。
【0007】
更に、ガス化炉のスラグタップ開口部の温度が適正な温度よりも高温となって、スラグタップの開口部から高温の溶融スラグが流下してクエンチ部のノズルや、壁面を損傷することになり、ガス化炉の信頼性が低下する。
【0008】
本発明の目的は、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス化炉は、バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉において、スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、前記クエンチ部内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズルを該生成ガスノズルよりも下方の位置に設置したことを特徴とする。
【0010】
本発明のガス化発電プラントは、バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備え、スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、前記クエンチ部内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズル、及び助燃用の燃料を燃焼させる起動バーナを該生成ガスノズルよりも下方のクエンチ部の位置にそれぞれ設置し、スラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部に温度計を設置し、この温度計で測定した温度検出値に基づいて生成ガスノズルから供給する生成ガス量、及び酸素含有ガスノズルから供給する酸素含有ガス量を制御する制御装置を設置したガス化炉を備えており、このガス化炉のガス化部で生成した生成ガスを前記ガス化炉から導いて生成ガスの脱硫を行なう脱硫装置と、この脱硫装置によって脱硫した生成ガスを燃料として燃焼し燃焼ガスを発生させる燃焼器と、燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、このガスタービンで駆動して発電する発電機及び空気を圧縮して前記燃焼器に燃焼用空気として供給する圧縮機と、前記脱硫装置から分岐した生成ガスの一部を前記ガス化炉の生成ガスノズルに供給する系統と、前記圧縮機から抽気した空気から酸素を分離する空気分離器と、この空気分離器で分離した酸素を前記ガス化炉の酸素含有ガスノズルに供給する系統を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明のガス化炉の運転方法は、バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉の運転方法において、スラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部の温度を測定してこの測定した温度検出値に基づいて、スラグタップに近接したクエンチ部に設置した生成ガスノズルを通じて前記ガス化部で発生した生成ガスの一部をスラグタップに近接したクエンチ部内に供給する生成ガス量を制御すると共に、この供給された生成ガスを燃焼させるために前記クエンチ部に設置した酸素含有ガスノズルを通じて供給する酸素含有ガス量を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明のガス化発電プラントの運転方法は、バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられその中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉を備えており、このガス化炉のガス化部で生成した生成ガスを前記ガス化炉から導いて脱硫装置で生成ガスの脱硫を行ない、脱硫した生成ガスを燃料として燃焼器で燃焼して燃焼ガスを発生させ、発生した燃焼ガスでタービンを駆動して該タービンで駆動した発電機で発電し、該タービンで駆動した圧縮機で空気を圧縮して前記燃焼器に燃焼用空気として供給し、前記脱硫装置から分岐した生成ガスの一部を前記ガス化炉のクエンチ部に設置した生成ガスノズルに供給すると共に、前記圧縮機から抽気した空気から空気分離器で酸素を分離してこの分離した酸素を前記ガス化炉のクエンチ部に設置した酸素含有ガスノズルに供給するようにしたガス化発電プラントの運転方法において、ガス化炉のスラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部の温度を測定してこの測定した温度検出値に基づいて、スラグタップに近接したクエンチ部に設置した前記生成ガスノズルを通じて前記ガス化部で発生した生成ガスの一部をスラグタップに近接したクエンチ部内に供給する生成ガス量を制御すると共に、この供給された生成ガスを燃焼させるためにクエンチ部に設置した前記酸素含有ガスノズルを通じて供給する酸素含有ガス量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図。
【図2】図1に示した本発明の第1実施例であるガス化炉の内部の流動状態を模式的に示した説明図。
【図3】本発明の第2実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図。
【図4】図3に示した本発明の第2実施例であるガス化炉の内部の流動状態を模式的に示した説明図。
【図5】本発明の第3実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図。
【図6】図5に示した本発明の第3実施例であるガス化炉の内部の流動状態を模式的に示した説明図。
【図7】図5に示した本発明の第3実施例のガス化炉の生成ガスノズル高さ断面における流動状態を模式的に示した説明図。
【図8】図5に示した本発明の第3実施例のガス化炉の酸素含有ガスノズル高さ断面における流動状態を模式的に示した説明図。
【図9】本発明の第4実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図。
【図10】図9に示した本発明の第4実施例であるガス化炉のスラグタップ部を示す上面図。
【図11】本発明の第5実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図。
【図12】図11に示した本発明の第5実施例であるガス化炉の内部の流動状態を模式的に示した説明図。
【図13】本発明の第5実施例であるガス化炉でのクエンチ部投入酸素量に対するスラグタップ開口部の直下近傍ガス温度のガス化試験結果
【図14】本発明の第6実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図。
【図15】図14に示した本発明の第6実施例であるガス化炉のスラグタップ部を示す上面図。
【図16】本発明の第7実施例であるガス化発電プラントの構成を示す全体構成図。
【図17】本発明の第8実施例であるガス化発電プラントの構成を示す全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例であるガス化炉及びガス化発電プラントについて図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1実施例であるガス化炉について図1及び図2を用いて説明する。
【0017】
本発明の第1実施例は、定常運転中のガス化炉のスラグタップの加熱に、酸素含有ガス、及びガス化炉で発生した生成ガスの一部を用いるように構成したガス化炉である。
【0018】
図1は本発明の第1実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図であり、図1に示したように、ガス化炉1は外形が円筒状に形成されており、このガス化炉1の頂部と底部に開口部を有し、その内部で燃料の石炭中の可燃分を酸素と燃焼反応させてガス化し、CO及びH2を主成分とする生成ガスを発生させるガス化部2と、ガス化部2で石炭中の灰分が溶融した溶融スラグをその中央部に形成した開口部から下方に流下させるスラグタップ3と、スラグタップ3の直下に位置して、溶融したスラグを下方の冷却水槽6に導くバッファ空間となるクエンチ部5と、クエンチ部5の下方に位置するスラグ冷却水槽6とを備えている。
【0019】
ガス化部2を内部に形成するガス化炉1の壁面には、上段バーナ7と下段バーナ8がそれぞれ接線方向に取り付けられており、前記上段バーナ7と下段バーナ8からは、微粉にした固体燃料の石炭と、酸素含有ガスの一例として、窒素及び酸素(図示せず)とが、ガス化部2内に投入されてこのガス化部2内で旋回流を形成する。尚、窒素の他、不活性ガスを用いてもよい。
【0020】
そして前記ガス化部2の内部では、上段バーナ7と下段バーナ8から投入された石炭中の可燃分が酸素との燃焼反応によってガス化し、CO及びH2を主成分とする生成ガスを発生する。この生成ガスは、前記上段バーナ7と下段バーナ8からガス化部2内に投入される酸素量が、石炭の完全燃焼に必要な酸素量よりも少ない条件で供給されて石炭中の可燃分と燃焼反応することによって得られる。
【0021】
ガス化部2内で発生した生成ガスの流れ102は、ガス化部2の内壁面近傍を旋回しながら下降し、ガス化部2の下部に設置されたスラグタップ3で反転して上昇流となってガス化部2内をその軸心部に沿って上昇する。
【0022】
また、一部の生成ガスは、ガス化部2の下部に設置されたスラグタップ3の中央部に形成されたスラグタップ開口部4を下降してクエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101となる。
【0023】
一方、前記ガス化部2の内部で石炭中の灰分(不燃物)は、ガス化部2内に形成された旋回流によって遠心力を受けてガス化部2の内壁面側に移動する。この灰分は、石炭と酸素の燃焼反応で形成される高温火炎にさらされて溶融し、溶融スラグとなってガス化部2の内壁面に付着する。
【0024】
そしてこの溶融スラグはガス化部2の内壁面を流下し、スラグタップ3の上面を通ってスラグタップ3の中央部に形成されたスラグタップ開口部4からクエンチ部5に流下する。
【0025】
クエンチ部5に流下した溶融スラグはクエンチ部5の下方に設置されたスラグ冷却水槽6に落下して冷却水によって急冷され、非晶質(ガラス状)の水砕スラグとして回収される。水砕スラグは、灰分を減容化し、重金属の溶出を検出限界以下に抑制できることから、路盤材や骨材などに有効利用できる可能性がある。
【0026】
ガス化炉1に設けたクエンチ部5の役割は、溶融スラグの融点以上と高温なガス化部2及びスラグタップ開口部4と、低温のスラグ冷却水槽6とを繋ぐバッファ空間であり、スラグタップ開口部4から流下した溶融スラグを、スラグ冷却水槽6に導くことである。
【0027】
従って、クエンチ部5の上部、特に、スラグタップ開口部4の直下付近のガス温度は、溶融スラグの融点以上に保温する必要がある。これは、ひとたび溶融スラグが冷却して固化すると、固化した溶融スラグによってスラグタップ開口部4が閉塞して溶融スラグをガス化炉1から系外に排出できなくなり、ガス化炉1の運転を停止せざるを得なくなるためである。
【0028】
クエンチ部5の上部は、ガス化部2からの輻射熱と、クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101、及びスラグタップ開口部4より流下する溶融スラグの持込み熱で、高温場となる。
【0029】
溶融スラグの融点が高い場合には、スラグタップ開口部4の直下付近のガス温度を溶融スラグの融点以上に保温すべく、スラグタップ開口部4の直下付近を、さらに加熱する必要がある。
【0030】
そこで、定常運転時のスラグタップ開口部4の直下付近の加熱には、ガス化炉1のガス化部2で発生する生成ガスの一部を燃料としてクエンチ部5内に供給して燃焼し、スラグタップ開口部4を加熱する。
【0031】
本実施例ではガス化部2で発生した生成ガスの一部をクエンチ部5内に供給する供給手段として、クエンチ部5の壁面に生成ガスノズル9を設置する。更に、前記生成ガスノズル9から供給する生成ガスをクエンチ部5内で燃焼させるために必要な酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズル10を、生成ガスノズル9の下部となる位置のクエンチ部5の壁面に設置する。
【0032】
前記生成ガスノズル9に供給するガス化部2で発生した生成ガスは、後述する第7実施例のガス化発電プラントで、ガス化部2で生成されてガス化炉1の上部から排出した生成ガス19を脱硫装置18で分岐し、生成ガスノズル供給用の生成ガス29としてこの生成ガスノズル9に供給するように構成している。
【0033】
本実施例では生成ガスノズル9から供給される生成ガス量を制御する制御装置200が設置されており、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部4の閉塞を防止させるために生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給して燃焼させ、スラグタップ開口部4を所望の温度に加熱する生成ガスの供給量が常に適正な流量となるように制御する。
【0034】
即ち、クエンチ部5の壁面に上から順に設置されたスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12と、生成ガスノズル9の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計13と、酸素含有ガスノズル10の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計14とによってそれぞれ計測された温度検出値を制御装置200に入力させる。温度計12を設置する場所は、スラグタップ開口部4の直下近傍であり、例えば、スラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部に設置する。
【0035】
そしてスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12で検出した温度検出値は、前記制御装置200において予め設定された溶融スラグの固化を防止し得るスラグタップ開口部4の温度に対応した下限の設定温度との温度偏差を計算し、この計算した温度偏差に基づいて生成ガスノズル9からクエンチ部5に供給すべき生成ガスの流量となる指令信号、並びにこの生成ガスを燃焼させるために必要な、酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5に供給すべき酸素の流量となる指令信号をそれぞれ演算して、前記生成ガスノズル9の上流に設置した生成ガスの流量調整部36、並びに酸素含有ガスの流量を調節するために前記酸素含有ガスノズル10の上流に設置した酸素の流量調整部37及び窒素の流量調整部38の各開度を操作する指令信号として出力する。
【0036】
この結果、常に最小流量の生成ガスを前記生成ガスノズル9からクエンチ部5に供給し、この生成ガスを燃焼させるのに必要な酸素含有ガスを供給することによって前記生成ガスを燃焼させ、スラグタップ開口部4を石炭灰の融点以上となる所望の温度に加熱できるので、溶融スラグが固化してスラグタップ開口部4を閉塞することは防止できる。
【0037】
また、温度計13、14は溶損防止の監視用に使用する。
【0038】
生成ガスノズル9からクエンチ部5に投入する生成ガスの供給量を少なくするほどガス化炉1のエネルギー効率が良くなる。このため、クエンチ部5の壁面に設ける生成ガスノズル9をスラグタップ3の直下の位置に配設し、生成ガスをスラグタップ開口部4の直下に向けて供給して燃焼させ、スラグタップ開口部4の直下付近を加熱するのが好適である。
【0039】
生成ガスノズル9からクエンチ部5に供給された生成ガス、及びガス化部2から生成ガスの流れ101としてスラグタップ開口部4を下降してクエンチ部5内に流入する生成ガスをそれぞれ燃焼させるために必要な酸素含有ガスは、生成ガスノズル9よりも下方の位置となるクエンチ部5の壁面に設置した酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する。
【0040】
また、クエンチ部5内の温度を監視するために、クエンチ部5の壁面には、上から順にスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12と、生成ガスノズル9の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計13と、酸素含有ガスノズル10の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計14を、各2本ずつ対応させてそれぞれ設置している。
【0041】
本実施例のガス化炉1では上記した構成を採用することによって、生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10の各ノズルの口径を小さくでき、前記生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10をスラグタップ3に近い高さの位置に設置できる。
【0042】
スラグタップ3に近い位置から生成ガス、及び酸素含有ガスを供給できれば、高温火炎をスラグタップ開口部4に近づけることができる。これにより、少ない燃料でスラグタップ開口部4を高温化できる。
【0043】
酸素含有ガスノズル10の酸素と、ガス化部2からスラグタップ開口部4を下降してクエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101でスラグタップ開口部4を加熱する場合も、酸素含有ガスノズル10をスラグタップ3に近づけたほうが良い。スラグタップに近い位置で酸素を供給すれば、クエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101とスラグタップ開口部4の直下で混合して燃焼するためである。
【0044】
これは、クエンチ部5の壁面が、水冷メンブレン構造(冷却水管とメンブレンバー(金属板)を交互に溶接した冷却壁面の構造)であることによる。ノズルやバーナの挿入口を迂回させて冷却水管を配設させるために冷却水管をノズルやバーナの挿入口の位置では曲げて配設する必要があるが、これに対してノズルやバーナの口径を小径に形成することができれば、水管の曲げ量はより小さくなり、生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10をスラグタップ3に近づけて配設することが可能になる。
【0045】
次に、ガス化炉1のガス化部2で溶融した溶融スラグを、スラグタップ開口部4で溶融スラグを冷却・固化させることなく、スラグタップ開口部4からクエンチ部5及び該クエンチ部5の下方に設置されたスラグ冷却水槽6に安定に流下させるスラグタップ開口部4の加熱方法について、図1及び図2を用いて更に詳細に説明する。
【0046】
図2は、図1に示した本実施例のガス化炉1のスラグタップ3付近を示す部分拡大図に、ガスの流動状況を模式的に加えた説明図である。
【0047】
図2において、ガス化炉1のクエンチ部5の壁面には、上から順に、生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10が設置されている。酸素含有ガスノズル10は、生成ガスノズル9の直下の位置に設けられており、スラグタップ開口部4の直下に存在する生成ガスの、クエンチ部5の下方への拡散を抑制させている。
【0048】
クエンチ部5内の温度を監視する箇所は、スラグタップ開口部4の直下近傍と、クエンチ部5の壁面近傍とする。スラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12は、スラグタップ開口部4からの溶融スラグの流下状況を監視する。これは、スラグタップ開口部4内に温度計を設置しても、絶えず流下する溶融スラグの付着によってガス温度の正確な計測が難しいことと、温度計が破損する恐れがあるためである。
【0049】
これに対し、スラグタップ開口部4の直下近傍のガス温度を、溶融スラグの融点以上に加熱できれば、溶融スラグの温度計への付着のリスクを抑えることができる。
【0050】
従って、図1に示したように、本実施例ではスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12によってスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定し、この温度計12で測定した温度の検出値に基づいて制御装置200にて設定温度との偏差を計算して、この偏差温度に対応した生成ガス量を演算すると共に、この生成ガス量を燃焼させるために必要な酸素量を演算して各指令信号を出力し、生成ガスの流量調整部36を操作して生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給する必要最小限の生成ガス量を制御すると共に、酸素含有ガスノズル供給用の流量調整部37の開度を操作して酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素量を制御して前記生成ガスを好適に燃焼させる。 即ち、前記温度計12で測定したスラグタップ開口部4の直下近傍の温度が所望の温度を保持するように制御装置200によって生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給する必要最小限の生成ガス量を制御すると共に、酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素量を制御することによって前記生成ガスを燃焼させ、スラグタップ開口部4の直下近傍のガス温度が溶融スラグの融点以上となるように加熱するものである。
【0051】
前記温度計12によるスラグタップ開口部4の直下近傍の温度監視は、スラグタップ開口部4の下端面における溶融スラグが冷却・固化するリスクを監視して、制御装置200によって生成ガスの流量調整部36の開度を操作して生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給して燃焼させる生成ガスの流量を必要最小限に調節すると共に、酸素含有ガスノズル供給用の流量調整部37の開度を操作して、生成ガスを燃焼させるために必要となる酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素量を調節して前記生成ガスを好適に燃焼させて、スラグタップ開口部4の直下近傍のガス温度が溶融スラグの融点以上となるように加熱する。
【0052】
本実施例では、生成ガスノズル9の直上に対向して温度計12を2本設置した場合について説明したが、設置する温度計の数は、多いほど良い。
【0053】
クエンチ部5の壁面近傍のガス温度は、生成ガスノズル9の直下の位置となる壁面近傍の温度を測定する温度計13、及び/或いは酸素含有ガスノズル10の直下の位置となる壁面近傍の温度を測定する温度計14を設置して計測すると良い。これは、クエンチ部5の壁面を保護するものである。
【0054】
そしてスラグタップ開口部4からクエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101の拡散状況を前記温度計13、及び/或いは温度計14によって監視する。
【0055】
生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10から、それぞれ生成ガス、及び酸素含有ガスをクエンチ部5内に投入する場合は、クエンチ部5の壁面と上記生成ガスノズル9と酸素含有ガスノズル10の焼損リスクを回避する必要がある。このため、生成ガスノズル9の直下の壁面近傍の温度計13と、酸素含有ガスノズル10の直下の壁面近傍の温度計14を用いて温度を監視すると良い。
【0056】
温度計13及び温度計14のいずれの温度計も、対向させて各2箇所以上設置して生成ガスノズル9と酸素含有ガスノズル10、及び壁面近傍のガス温度を監視する。
【0057】
次に、図2を用いて図1に示した本実施例のガス化炉1におけるクエンチ部5の壁面に生成ガスノズル9及び酸素含有ガスノズル10を1本ずつ設置したガス化炉1におけるスラグタップ開口部4を加熱する場合のスラグタップ3近傍からクエンチ部5内のガスの流れについて説明する。
【0058】
ガス化部2内で発生する生成ガスの流れ102の一部が、スラグタップ3の上面付近で反転せずにスラグタップ開口部4に流入する。これが、クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101であり、下降する旋回流である。
【0059】
クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101となる生成ガス量は、スラグタップ開口部4の形状や、ガス化部2内のガス流速等に影響されるものの、全生成ガス量の数%以上に達する。本実施例では、スラグタップ開口部4の形状を、楕円とした場合で説明する。
【0060】
図2に示したようにガス化部2からクエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101は、クエンチ部5内で拡散しながら減衰し、クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104となり、クエンチ部5の中心部、即ち、スラグタップ開口部4の直下に集まる。
【0061】
これは、ガス化部2で発生する生成ガスの流れ102が旋回流を形成し、ガス化部2の
軸心側が負圧となるためである。このため、ガス化部2で発生した生成ガス及びクエンチ
部5内のガスは、全てガス化部2の軸心に沿って上昇し、ガス化炉1から排出されて下流
側の機器に流下する。
【0062】
そこで、スラグタップ開口部4の直下に、酸素を含むガスを供給すると、クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104と混合・燃焼するため、スラグタップ開口部4の直下を加熱できる。ガス化炉1のランニングコスト低減と、スラグタップ3の耐火材やクエンチ部5の壁面の長寿命化には、スラグタップ開口部4の直下の局所的な加熱が有効である。
【0063】
この場合、クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104と、クエンチ部5内に酸素含有ガスノズル10から投入された酸素含有ガスの流れ106とを緩慢混合させる流動が良い。クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104の拡散を、クエンチ部5内に酸素含有ガスノズル10から投入された酸素含有ガスの流れ106で抑え、かつ、両者を緩慢混合させることによって、高温火炎が形成されないので、スラグタップ3の耐火材を保護できる。
【0064】
上記の流動を形成するための方法の一つは、クエンチ部5の壁面に設置された1本の酸素含有ガスノズル10を用い、クエンチ部5内にこの酸素含有ガスノズル10から投入された酸素含有ガスの流れ106による上昇渦の形成である。
【0065】
ここで、スラグタップ開口部4をさらに加熱させる必要がある場合は、ガス化部2で生成した生成ガスの一部を供給する生成ガスノズル9から生成ガスをスラグタップ開口部4の直下に補給し、酸素含有ガスも増量して燃焼させる。
【0066】
そして、スラグタップ開口部4でのスラグ流下状況の監視と、上記のクエンチ部5に投入するガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12を設置してスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を監視し、制御装置200によって前記温度計12で検出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量を調節すると共に、この生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素量を調節することで前記生成ガスを好適に燃焼させることによって、ガス化部2でガス化される石炭の性状が変わっても、クエンチ部5に生成ガスノズル9及び酸素含有ガスノズル10から投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量を必要最小限に抑制できる。
【0067】
以上説明したように、本実施例によれば、バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉において、スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、前記クエンチ部内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズルを該生成ガスノズルよりも下方の位置に設置した構成のガス化炉により、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得る。
【0068】
また、以上説明したように、本実施例によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。
【0069】
また、以上説明した実施例では、生成ガスノズル9よりも酸素含有ガスノズル10を下に配置したが、生成ガスノズル9よりも酸素含有ガスノズル10を上に配置したり、同じ高さに配置しても良い。スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、スラグタップに近接したクエンチ部の位置に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズルを設置したことにより、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得る。
【実施例2】
【0070】
本発明の第2実施例であるガス化炉について図3及び図4を用いて説明する。
【0071】
本発明の第2実施例のガス化炉は図1及び図2に示した第1実施例のガス化炉と基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ下記に説明する。
【0072】
図3は本発明の第2実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図であり、第1実施例のガス化炉と同様に、前記ガス化部2の内部では上段バーナ7と下段バーナ8から投入された石炭中の可燃分が酸素との燃焼反応によってガス化し、CO及びH2を主成分とする生成ガス102を発生する。
【0073】
ガス化部2内で発生した生成ガスの流れ102は、ガス化部2の内壁面近傍を旋回しながら下降し、ガス化部2の下部に設置されたスラグタップ3で反転して上昇流となってガス化部2内をその軸心部に沿って上昇する。また、一部の生成ガスは、ガス化部2の下部に設置されたスラグタップ3の中央部に形成されたスラグタップ開口部4を下降してクエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101となる。
【0074】
一方、前記ガス化部2の内部で石炭中の灰分(不燃物)は、ガス化部2内に形成された旋回流によって遠心力を受けてガス化部2の内壁面側に移動する。この灰分は、石炭と酸素の燃焼反応で形成される高温火炎にさらされて溶融し、溶融スラグとなってガス化部2の内壁面に付着する。
【0075】
そしてこの溶融スラグはガス化部2の内壁面を流下し、スラグタップ3の上面を通ってスラグタップ3の中央部に形成されたスラグタップ開口部4からクエンチ部5に流下し、クエンチ部5の下方に設置されたスラグ冷却水槽6に落下して冷却水によって急冷され、非晶質(ガラス状)の水砕スラグとして回収される。
【0076】
ガス化炉1に設けたクエンチ部5の役割は、溶融スラグの融点以上と高温なガス化部2及びスラグタップ開口部4と、低温のスラグ冷却水槽6とを繋ぐバッファ空間であり、スラグタップ開口部4から流下した溶融スラグを、スラグ冷却水槽6に導くことである。
【0077】
従って、クエンチ部5の上部、特に、スラグタップ開口部4の直下付近のガス温度は、溶融スラグの融点以上に保温する必要がある。これは、ひとたび溶融スラグが冷却して固化すると、固化した溶融スラグによってスラグタップ開口部4が閉塞して溶融スラグをガス化炉1から系外に排出できなくなり、ガス化炉1の運転を停止せざるを得なくなるためである。
【0078】
クエンチ部5の上部は、ガス化部2からの輻射熱と、クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101、及びスラグタップ開口部4より流下する溶融スラグの持込み熱で、高温場となる。
【0079】
溶融スラグの融点が高い場合には、スラグタップ開口部4の直下付近のガス温度を溶融スラグの融点以上に保温すべく、スラグタップ開口部4の直下付近を、さらに加熱する必要がある。
【0080】
スラグタップ開口部4の直下付近を加熱する最も簡便な運転方法は、ガス化炉1の起動・停止時の助燃用としてクエンチ部5の壁面に起動バーナ11を設け、この起動バーナ11によって燃料を燃焼させてスラグタップ開口部4の直下付近を加熱することである。
【0081】
起動バーナ11はガス化炉1の起動時にガス化部2内を加熱し、またガス化炉1の停止時に溶融スラグをガス化部2から流下させるためにガス化部2内を加熱するものである。
【0082】
一般に、起動バーナ11の燃料は軽油等である。このため、ガス化炉1と独立した運用が可能である。
【0083】
一方で、ガス化炉1のランニングコスト低減と、エネルギー効率向上を両立させる必要がある。このため、ガス化炉1の起動・停止、及び非常時を除いて、起動バーナ11による軽油等の助燃燃料を用いないでスラグタップ開口部4の直下付近を加熱する必要がある。
【0084】
そこで、定常運転時のスラグタップ開口部4の直下付近の加熱には、起動バーナ11で軽油を燃焼させる代わりに、ガス化炉1のガス化部2で発生する生成ガスの一部を燃料としてクエンチ部5内に供給して燃焼し、スラグタップ開口部4を加熱する。
【0085】
本実施例ではガス化部2で発生した生成ガスの一部をクエンチ部5内に供給する供給手段として、起動バーナ11の上部となる位置のクエンチ部5の壁面に生成ガスノズル9を設置している。
【0086】
更に、前記生成ガスノズル9から供給する生成ガスをクエンチ部5内で燃焼させるために必要な酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズル10を、起動バーナ11の上部で、且つ、生成ガスノズル9の下部となる位置のクエンチ部5の壁面に設置している。
【0087】
前記生成ガスノズル9に供給するガス化部2で発生した生成ガスは、後述する第7実施例のガス化発電プラントで、ガス化部2で生成されてガス化炉1の上部から排出した生成ガス19を脱硫装置18で分岐し、生成ガスノズル供給用の生成ガス29としてこの生成ガスノズル9に供給するように構成している。
【0088】
本実施例では生成ガスノズル9から供給される生成ガス量を制御する制御装置200が設置されており、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部4の閉塞を防止させるために生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給して燃焼させ、スラグタップ開口部4を所望の温度に加熱する生成ガスの供給量が常に適正な流量となるように制御する。
【0089】
即ち、クエンチ部5の壁面に上から順に設置されたスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12と、生成ガスノズル9の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計13と、酸素含有ガスノズル10の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計14とによってそれぞれ計測された温度検出値を制御装置200に入力させる。温度計12を設置する場所は、スラグタップ開口部4の直下近傍であり、例えば、スラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部に設置する。
【0090】
そしてスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12で検出した温度検出値は、前記制御装置200において予め設定された溶融スラグの固化を防止し得るスラグタップ開口部4の温度に対応した下限の設定温度との温度偏差を計算し、この計算した温度偏差に基づいて生成ガスノズル9からクエンチ部5に供給すべき生成ガスの流量となる指令信号、並びにこの生成ガスを燃焼させるために必要な、酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5に供給すべき酸素の流量となる指令信号をそれぞれ演算して、前記生成ガスノズル9の上流に設置した生成ガスの流量調整部36、並びに酸素含有ガスの流量を調節するために前記酸素含有ガスノズル10の上流に設置した酸素の流量調整部37及び窒素の流量調整部38の各開度を操作する指令信号として出力する。
【0091】
この結果、常に最小流量の生成ガスを前記生成ガスノズル9からクエンチ部5に供給し、この生成ガスを燃焼させるのに必要な酸素含有ガスを供給することによって前記生成ガスを燃焼させ、スラグタップ開口部4を石炭灰の融点以上となる所望の温度に加熱できるので、溶融スラグが固化してスラグタップ開口部4を閉塞することは防止できる。
【0092】
また、温度計13、14は溶損防止の監視用に使用する。
【0093】
生成ガスノズル9からクエンチ部5に投入する生成ガスの供給量を少なくするほどガス化炉1のエネルギー効率が良くなる。このため、クエンチ部5の壁面に設ける生成ガスノズル9をスラグタップ3の直下の位置に配設し、生成ガスをスラグタップ開口部4の直下に向けて供給して燃焼させ、スラグタップ開口部4の直下付近を加熱するのが好適である。
【0094】
生成ガスノズル9からクエンチ部5に供給された生成ガス、及びガス化部2から生成ガスの流れ101としてスラグタップ開口部4を下降してクエンチ部5内に流入する生成ガスをそれぞれ燃焼させるために必要な酸素含有ガスは、生成ガスノズル9よりも下方の位置で、起動バーナ11よりも上方の位置となるクエンチ部5の壁面に設置した酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する。
【0095】
また、クエンチ部5内の温度を監視するために、クエンチ部5の壁面には、上から順にスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12と、生成ガスノズル9の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計13と、酸素含有ガスノズル10の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計14を、各2本ずつ対応させてそれぞれ設置している。
【0096】
本実施例のガス化炉1では上記した構成を採用することによって、生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10の各ノズルの口径を、起動バーナ11の口径よりも小さくでき、前記生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10をスラグタップ3に近い高さの位置に設置できる。
【0097】
スラグタップ3に近い位置から生成ガス、及び酸素含有ガスを供給できれば、起動バーナ11を用いた場合よりも、高温火炎をスラグタップ開口部4に近づけることができる。これにより、少ない燃料でスラグタップ開口部4を高温化できる。
【0098】
酸素含有ガスノズル10の酸素と、ガス化部2からスラグタップ開口部4を下降してクエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101でスラグタップ開口部4を加熱する場合も、酸素含有ガスノズル10をスラグタップ3に近づけたほうが良い。スラグタップに近い位置で酸素を供給すれば、クエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101とスラグタップ開口部4の直下で混合して燃焼するためである。
【0099】
これは、クエンチ部5の壁面が、水冷メンブレン構造(冷却水管とメンブレンバー(金属板)を交互に溶接した冷却壁面の構造)であることによる。ノズルやバーナの挿入口を迂回させて冷却水管を配設させるために冷却水管をノズルやバーナの挿入口の位置では曲げて配設する必要があるが、これに対してノズルやバーナの口径を小径に形成することができれば、水管の曲げ量はより小さくなり、生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10を、起動バーナ11よりもスラグタップ3に近づけて配設することが可能になる。
【0100】
次に、ガス化炉1のガス化部2で溶融した溶融スラグを、スラグタップ開口部4で溶融スラグを冷却・固化させることなく、スラグタップ開口部4からクエンチ部5及び該クエンチ部5の下方に設置されたスラグ冷却水槽6に安定に流下させるスラグタップ開口部4の加熱方法について、図3及び図4を用いて更に詳細に説明する。
【0101】
図4は、図3に示した本実施例のガス化炉1のスラグタップ3付近を示す部分拡大図に、ガスの流動状況を模式的に加えた説明図である。
【0102】
図4において、ガス化炉1のクエンチ部5の壁面には、上から順に、生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10、起動バーナ11が設置されている。酸素含有ガスノズル10は、生成ガスノズル9の直下の位置に設けられており、スラグタップ開口部4の直下に存在する生成ガスの、クエンチ部5の下方への拡散を抑制させている。
【0103】
クエンチ部5内の温度を監視する箇所は、スラグタップ開口部4の直下近傍と、クエンチ部5の壁面近傍とする。スラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12は、スラグタップ開口部4からの溶融スラグの流下状況を監視する。これは、スラグタップ開口部4内に温度計を設置しても、絶えず流下する溶融スラグの付着によってガス温度の正確な計測が難しいことと、温度計が破損する恐れがあるためである。
【0104】
これに対し、スラグタップ開口部4の直下近傍のガス温度を、溶融スラグの融点以上に加熱できれば、溶融スラグの温度計への付着のリスクを抑えることができる。
【0105】
従って、図3に示したように、本実施例ではスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12によってスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定し、この温度計12で測定した温度の検出値に基づいて制御装置200にて設定温度との偏差を計算して、この偏差温度に対応した生成ガス量を演算すると共に、この生成ガス量を燃焼させるために必要な酸素量を演算して各指令信号を出力し、生成ガスの流量調整部36を操作して生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給する必要最小限の生成ガス量を制御すると共に、酸素含有ガスノズル供給用の流量調整部37の開度を操作して酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素量を制御して前記生成ガスを好適に燃焼させる。
【0106】
即ち、前記温度計12で測定したスラグタップ開口部4の直下近傍の温度が所望の温度を保持するように制御装置200によって生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給する必要最小限の生成ガス量を制御すると共に、酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素量を制御することによって前記生成ガスを燃焼させ、スラグタップ開口部4の直下近傍のガス温度が溶融スラグの融点以上となるように加熱するものである。
【0107】
前記温度計12によるスラグタップ開口部4の直下近傍の温度監視は、スラグタップ開口部4の下端面における溶融スラグが冷却・固化するリスクを監視して、制御装置200によって生成ガスの流量調整部36の開度を操作して生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給して燃焼させる生成ガスの流量を必要最小限に調節すると共に、酸素含有ガスノズル供給用の流量調整部37の開度を操作して、生成ガスを燃焼させるために必要となる酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素量を調節して前記生成ガスを好適に燃焼させて、スラグタップ開口部4の直下近傍のガス温度が溶融スラグの融点以上となるように加熱する。
【0108】
本実施例では、生成ガスノズル9の直上に対向して温度計12を2本設置した場合について説明したが、設置する温度計の数は、多いほど良い。
【0109】
クエンチ部5の壁面近傍のガス温度は、起動バーナ11より上部側の位置となる生成ガスノズル9の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計13、及び/或いは酸素含有ガスノズル10の直下の壁面近傍の温度を測定する温度計14を設置して計測すると良い。これは、起動バーナ11の火炎インピンジを監視し、クエンチ部5の壁面を保護するものである。
【0110】
起動バーナ11を使用しない場合は、スラグタップ開口部4からクエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101の拡散状況を前記温度計13、及び/或いは温度計14によって監視する。
【0111】
生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10から、それぞれ生成ガス、及び酸素含有ガスをクエンチ部5内に投入する場合は、クエンチ部5の壁面と上記生成ガスノズル9と酸素含有ガスノズル10の焼損リスクを回避する必要がある。このため、生成ガスノズル9の直下の壁面近傍の温度計13と、酸素含有ガスノズル10の直下の壁面近傍の温度計14を用いて温度を監視すると良い。
【0112】
温度計13及び温度計14のいずれの温度計も、対向させて各2箇所以上設置して生成ガスノズル9と酸素含有ガスノズル10、及び壁面近傍のガス温度を監視する。
【0113】
次に、図4を用いて図3に示した本実施例のガス化炉1におけるクエンチ部5の壁面に生成ガスノズル9及び酸素含有ガスノズル10を1本ずつ設置したガス化炉1におけるスラグタップ開口部4を加熱する場合のスラグタップ3近傍からクエンチ部5内のガスの流れについて説明する。
【0114】
ガス化部2内で発生する生成ガスの流れ102の一部が、スラグタップ3の上面付近で反転せずにスラグタップ開口部4に流入する。これが、クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101であり、下降する旋回流である。
【0115】
クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101となる生成ガス量は、スラグタップ開口部4の形状や、ガス化部2内のガス流速等に影響されるものの、全生成ガス量の数%以上に達する。本実施例では、スラグタップ開口部4の形状を、楕円とした場合で説明する。 図4に示したようにガス化部2からクエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101は、クエンチ部5内で拡散しながら減衰し、クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104となり、クエンチ部5の中心部、即ち、スラグタップ開口部4の直下に集まる。
【0116】
これは、ガス化部2で発生する生成ガスの流れ102が旋回流を形成し、ガス化部2の軸心側が負圧となるためである。このため、ガス化部2で発生した生成ガス及びクエンチ部5内のガスは、全てガス化部2の軸心に沿って上昇し、ガス化炉1から排出されて下流側の機器に流下する。
【0117】
そこで、スラグタップ開口部4の直下に、酸素を含むガスを供給すると、クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104と混合・燃焼するため、スラグタップ開口部4の直下を加熱できる。ガス化炉1のランニングコスト低減と、スラグタップ3の耐火材やクエンチ部5の壁面の長寿命化には、スラグタップ開口部4の直下の局所的な加熱が有効である。 この場合、クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104と、クエンチ部5内に酸素含有ガスノズル10から投入された酸素含有ガスの流れ106とを緩慢混合させる流動が良い。クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104の拡散を、クエンチ部5内に酸素含有ガスノズル10から投入された酸素含有ガスの流れ106で抑え、かつ、両者を緩慢混合させることによって、高温火炎が形成されないので、スラグタップ3の耐火材を保護できる。
【0118】
上記の流動を形成するための方法の一つは、クエンチ部5の壁面に設置された1本の酸素含有ガスノズル10を用い、クエンチ部5内にこの酸素含有ガスノズル10から投入された酸素含有ガスの流れ106による上昇渦の形成である。
【0119】
ここで、スラグタップ開口部4をさらに加熱させる必要がある場合は、ガス化部2で生成した生成ガスの一部を供給する生成ガスノズル9から生成ガスをスラグタップ開口部4の直下に補給し、酸素含有ガスも増量して燃焼させる。
【0120】
そして、スラグタップ開口部4でのスラグ流下状況の監視と、上記のクエンチ部5に投入するガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12を設置してスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を監視し、制御装置200によって前記温度計12で検出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量を調節すると共に、この生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素量を調節することで前記生成ガスを好適に燃焼させることによって、ガス化部2でガス化される石炭の性状が変わっても、クエンチ部5に生成ガスノズル9及び酸素含有ガスノズル10から投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量を必要最小限に抑制できる。
【0121】
図3及び図4に示した本実施例のガス化炉1では、バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉において、スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、前記クエンチ部内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズルを該生成ガスノズルよりも下方の位置に設置し、助燃用の燃料を燃焼させる起動バーナを酸素含有ガスノズルよりも下方となるクエンチ部の位置に設置した構成のガス化炉によって、ガス化炉1の起動・停止時の助燃用として起動バーナを設けた場合でも、第1実施例のガス化炉1の場合と同様に、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得る。
【0122】
また、以上説明した実施例では、生成ガスノズル9よりも酸素含有ガスノズル10を下に配置したが、生成ガスノズル9よりも酸素含有ガスノズル10を上に配置したり、同じ高さに配置しても良い。スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、スラグタップに近接したクエンチ部の位置に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズルを設置したことにより、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得る。
【0123】
以上説明したように、本実施例によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。
【実施例3】
【0124】
次に本発明の第3実施例であるガス化炉について図5乃至図8を用いて説明する。
【0125】
本発明の第3実施例のガス化炉は図1及び図2に示した第1実施例のガス化炉と基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ下記に説明する。
【0126】
本発明の第3実施例のガス化炉は、定常運転中のガス化炉1のスラグタップの加熱に、酸素含有ガスノズル、及びガス化炉で発生した生成ガスの一部を供給する生成ガスノズル9を対向させて各2本ずつクエンチ部5の壁面に設置したガス化炉である。尚、ここでは2本の例で説明するが、実施例4の4本の例や、その他複数本でも実施できる。
【0127】
図5は本発明の第3実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図であり、本実施例のガス化炉1では、図5に示したように生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10、及び起動バーナ11を対向させて各2本ずつクエンチ部5の壁面に設置した構成である。即ち、図1に示した第1実施例のガス化炉1とは、クエンチ部5に設置した各ノズルの本数が、それぞれ1本から2本に変更されたことが異なる。
【0128】
図6は、図5に示したガス化炉1のスラグタップ3付近を示す部分拡大図に、ガスの流動状況を模式的に加えた説明図である。
【0129】
図6において、本実施例のガス化炉1に備えられたスラグタップ開口部4の形状は、第1実施例のガス化炉1で説明した楕円形状だけでなく、矩形、小判型、ひし形の頂点部分を円弧状とした形状など、扁平のものが適する。
【0130】
これは、クエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101の拡散を抑え、スラグタップ開口部4の直下に、生成ガスを滞流できるためである。
【0131】
扁平のスラグタップ開口部4とした場合、クエンチ部5内に流入する生成ガスの流れ101の旋回(周方向)成分が、スラグタップ開口部4の長軸方向側の壁面に衝突し、減衰するためである。
【0132】
次に、図6を用いて図5に示した本実施例のガス化炉1におけるクエンチ部5の壁面に生成ガスノズル9及び酸素含有ガスノズル10を1本ずつ設置したガス化炉1におけるスラグタップ開口部4の直下を加熱する場合のスラグタップ3近傍からクエンチ部5内のガスの流れについて説明する。
【0133】
スラグタップ開口部4の直下に、酸素含有ガスノズル10から酸素を含むガスを供給し、クエンチ部5内で反転する生成ガスの流れ104と混合・燃焼させる。スラグタップ3の耐火材の保護のため、クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104の拡散を、クエンチ部5に投入された酸素含有ガスの流れ106で抑え、かつ、両者を緩慢混合させて、スラグタップ開口部4の直下で高温火炎を形成させない流動を形成させる。
【0134】
このため、本実施例のガス化炉1では、スラグタップ開口部4の直下で、2本の酸素含有ガスノズル10を水平に、対向させて設置する。これらの左右の酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に投入された酸素含有ガスの流れ106は、スラグタップ開口部4の直下で衝突して減衰し、クエンチ部5を上昇する燃焼ガスの流れ107とともに、ゆっくり上昇する。
【0135】
ここで、上昇する酸素は生成ガスと混合して燃焼し、クエンチ部5を上昇する燃焼ガスの流れ107となる。
【0136】
スラグタップ開口部4をさらに加熱する場合には、スラグタップ開口部4の直下で、酸素含有ガスノズル10の上方の位置に配設した生成ガスノズル9から燃料となる生成ガスをスラグタップ開口部4の直下に補給して燃焼させ、加熱する。生成ガスノズル9から供給する上記生成ガスの燃焼に必要な酸素は、酸素含有ガスノズル10から投入する。
【0137】
次に、図7を用いて第3実施例のガス化炉1のクエンチ部5に備えられた生成ガスノズル9の設置高さ断面における流動状態について説明する。
【0138】
図7において、2本の対向する生成ガスノズル9から噴出する生成ガスは対向噴流としてクエンチ部5内に供給されており、クエンチ部5内に投入された生成ガスの流れ105は、直進流でスラグタップ開口部4の直下に達し、相互に衝突する。
【0139】
ここで、2本の対向する生成ガスノズル9からクエンチ部5に投入された対向噴流の生成ガスの流れ105は減衰し、衝突によって流れ105から約90度流れる方向が変更された壁面方向に拡散する生成ガスの流れ108となる。
【0140】
対向噴流の生成ガスの流れ105の衝突により壁面方向に拡散する生成ガスの流れ108は渦流れを形成し、クエンチ部5内を拡散する生成ガスの流れ109として、スラグタップ開口部4の直下に循環し、スラグタップ開口部4に向かって上昇する。
【0141】
以上の流動状態によって、生成ガスはスラグタップ開口部4の直下に滞流しやすく、クエンチ部5の下方から上昇する酸素と混合・燃焼して、スラグタップ開口部4の直下近傍を、局所的に加熱する。
【0142】
次に、図8を用いて第3実施例のガス化炉1のクエンチ部5に備えられた酸素含有ガスノズル10の設置高さ断面における流動状態について説明する。
【0143】
図8において、2本の対向する酸素含有ガスノズル10から酸素含有ガスは対向噴流としてクエンチ部5内に供給されており、クエンチ部5内に投入された酸素含有ガスの流れ106は、直進流でスラグタップ開口部4の直下に達し、相互に衝突する。
【0144】
ここで、2本の対向する酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5に投入された対向噴流の酸素含有ガスの流れ106は減衰し、衝突によって流れ106から約90度流れる方向が変更された壁面方向に拡散する酸素含有ガスの流れ110となる。
【0145】
対向噴流の酸素含有ガスの流れ106の衝突により壁面方向に拡散する酸素含有ガスの流れ110は渦流れを形成し、クエンチ部5内を拡散する酸素含有ガスの流れ111として、スラグタップ開口部4の直下に循環しながら、スラグタップ開口部4に向かって上昇する。
【0146】
ここで、クエンチ部内を拡散する酸素含有ガスの流れ111は、衝突により側壁方向に拡散する生成ガスの流れ108、及びクエンチ部内を拡散する生成ガスの流れ109の、クエンチ部5の下方への拡散を抑える役目も併せ持つ。このため、図4にも示したように、酸素含有ガスノズル10を、生成ガスノズル9よりも下方の位置に設置する必要がある。
【0147】
図5に示した本実施例のガス化炉1においても、図1に示した第1実施例のガス化炉1の場合と同様に、スラグタップ開口部4での溶融スラグの流下状況の監視と、クエンチ部5に投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12でスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定して監視し、制御装置200によって前記温度計12で出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量、及びこの生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10から投入する酸素含有ガス量を調節して供給して前記生成ガスを好適に燃焼させることによって、スラグタップ開口部4での溶融スラグを所望の温度に加熱して温度低下による固化を未然に防止できる。
【0148】
この結果、ガス化部2でガス化される石炭の性状が変わっても、スラグタップ開口部4を加熱して溶融スラグの固化を防止するために、クエンチ部5に生成ガスノズル9及び酸素含有ガスノズル10から投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量を必要最小限に抑制できる。
【0149】
また、生成ガスノズル9の直下のクエンチ部5の壁面に設置した温度計13と、酸素含有ガスノズル10の直下のクエンチ部5の壁面に設置した温度計14によって、クエンチ部5の壁面と前記各ノズルのガス温度を監視することができる。
【0150】
これは、生成ガスと酸素がクエンチ部5の壁面近傍に拡散した場合を想定し、クエンチ部5の壁面、生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10の損傷を防ぐためである。
【0151】
以上説明したように、本実施例によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。
【実施例4】
【0152】
次に本発明の第4実施例であるガス化炉について図9及び図10を用いて説明する。
【0153】
本発明の第4実施例のガス化炉は図5乃至図8に示した第3実施例のガス化炉と基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ下記に説明する。
【0154】
本発明の第4実施例のガス化炉は、図9に示したように、酸素含有ガスノズル10、及び生成ガスノズル9を、それぞれ90度間隔でクエンチ部5の壁面に4本ずつ設置したガス化炉1である。
【0155】
また、ガス化炉1のスラグタップ開口部4は、図10に示すように、ひし形の頂点部分を円弧状に曲線をもたせた形状を採用している。
【0156】
図9は本発明の第4実施例であるガス化炉の概略構成を示す断面図であり、本実施例のガス化炉1では、図9に示したようにスラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12、生成ガスノズル9の直下の壁面近傍に設置した温度計13、酸素含有ガスノズル10の直下の壁面近傍に設置した温度計14も、前記各ノズル本数に対応させて、各4本ずつ設けている。
【0157】
図10は、図9に示した本発明の第4実施例におけるガス化炉1のスラグタップ部3から見たクエンチ部4の上面図であり、スラグタップ開口部4の形状は扁平状の一例としてひし形の頂点部分を円弧状に曲線をもたせた形状を採用している。
【0158】
この第4実施例のガス化炉1では、前記第3実施例のガス化炉1でも述べたように、スラグタップ開口部4の形状を扁平とすると、クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101の旋回成分を、スラグタップ開口部4内の長軸方向側の壁面に衝突させて減衰させる効果がある。
【0159】
ガス化部2で溶融した溶融スラグは、旋回流でクエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101に同伴し、スラグタップ開口部4の全周から流下する。そこでスラグタップ開口部4を円弧状とすることで、溶融スラグを流下させる濡れぶち長さを長くできる。
【0160】
これにより、スラグタップ開口部4を流れる溶融スラグの液膜を薄くでき、局所的なスラグの滞留や、スラグタップ3の耐火材の溶損を抑制する。
【0161】
次に、クエンチ部5に設置するノズル配置について説明すると、クエンチ部5に設置される生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10は、それぞれ90度の間隔に4本設置し、スラグタップ開口部4の短辺側、及び長辺側の中心線上で、各2本ずつ対向して配設させている。
【0162】
これにより、生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5に投入した生成ガス、酸素含有ガスの流れを、スラグタップ開口部4の直下で、相互に確実に衝突させることができる。
【0163】
仮に前記ノズルの設置場所に誤差を生じた場合でも、前記各ノズル9、10をそれぞれ90度間隔に4本ずつ設ける方が、各ノズルを2本設けた場合よりも、スラグタップ開口部4の直下で、各ノズルから噴出する生成ガス、酸素含有ガスの噴流が相互に衝突しやすくなる。
【0164】
また、前記各ノズル9、10から噴出する生成ガス、酸素含有ガスの噴流による、クエンチ部5内での溶融スラグの飛散を抑制するためには、生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10には、限界流速がある。
【0165】
ここで、クエンチ部5内で溶融スラグが飛散すると、生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10、起動バーナ11を閉塞させる原因となる。クエンチ部5のノズル、バーナを閉塞させると、スラグタップ開口部4を加熱できなくなって、溶融スラグで閉塞し、ガス化炉停止につながる。
【0166】
そこで、クエンチ部5に投入する生成ガス、及び酸素含有ガスの流量をパラメータとして増減する場合に、これらの生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10のノズル本数を多く設置して、運転方法の自由度を確保する。
【0167】
例えば、生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5に投入する生成ガス及び酸素含有ガスを少量とした場合、使用する生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10の本数を、それぞれ対向する2本ずつ設置した場合では、生成ガス及び酸素含有ガスのガス量が増加すると、対向する2本のノズルでは、前記限界流速を超過してしまう。
【0168】
そこでこの限界流速に対処するために本実施例のガス化炉1の生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10は、対向する2本のノズルに加えて、この対向する2本のノズルと90度の位置に配設した別の対向する各2本のノズルも併せた各4本のノズルを使用する。
【0169】
これにより、前記生成ガスノズル9、及び酸素含有ガスノズル10の各4本のノズルから噴出される噴流の流速を限界以下に抑えて、クエンチ部5内での溶融スラグ飛散を防止することが可能となる。
【0170】
図9に示した本実施例のガス化炉1においても、図1に示した第1実施例のガス化炉1の場合と同様に、スラグタップ開口部4での溶融スラグの流下状況の監視と、クエンチ部5に投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12でスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定して監視し、制御装置200によって前記温度計12で検出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量、及びこの生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10から投入する酸素量を調節して供給して前記生成ガスを好適に燃焼させることによって、スラグタップ開口部4での溶融スラグを所望の温度に加熱して温度低下による固化を未然に防止できる。
【0171】
以上説明したように、本実施例によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。
【実施例5】
【0172】
次に本発明の第5実施例であるガス化炉について図11及び図12を用いて説明する。
【0173】
本発明の第5実施例のガス化炉は図5乃至図8に示した第2実施例のガス化炉と基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ下記に説明する。
【0174】
本発明の第5実施例のガス化炉1のスラグタップ開口部4は、図11に示すように、小判型とした円弧状に曲線をもたせた形状を採用している。
【0175】
図12は、図11に示したガス化炉1のスラグタップ3付近を示す部分拡大図に、ガスの流動状況を模式的に加えた説明図である。
【0176】
図11及び図12に示したように、本実施例のガス化炉1に備えられたスラグタップ開口部4の形状を、小判型などの扁平とすると、ガス化炉1のクエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101の旋回成分は、スラグタップ開口部4内の小判型の長軸方向側の壁面に衝突して減衰する。これにより、クエンチ部5内での生成ガスは拡散しにくく、クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104となりやすい。
【0177】
クエンチ部5で反転する生成ガスの流れ104は、酸素含有ガスノズル10から供給される酸素とスラグタップ開口部4の直下で混合・燃焼し、スラグタップ3を上昇する燃焼ガスの流れ103となって、スラグタップ開口部4を加熱する。
【0178】
スラグタップ開口部4では、ガス化部2の軸心側はガス化部2で発生する生成ガスの流れ102の旋回流で負圧となり、スラグタップ3を上昇する燃焼ガスの流れ103で加熱される。
【0179】
これに対し、スラグタップ開口部4のガス化部2の外周側は、旋回しながらクエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101で加熱される。この旋回流は、ガス化部2の外周側ほど強くなるので、スラグタップ開口部4の小判型の長辺を長くするほど、クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101が強くなる。
【0180】
ガス化部2の壁面からスラグタップ3の上面を流下する溶融スラグは、ガス化部2で発生する生成ガスの流れ102、クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101といった旋回流に同伴される。
【0181】
溶融スラグの多くは小判型のスラグタップ開口部4の短辺側から流下する。小判型のスラグタップ開口部4は、スラグタップ3を上昇する燃焼ガスの流れ103による溶融スラグのガス化部2上方への吹き上げのリスクを軽減する。
【0182】
万が一、スラグタップ開口部4の小判型の短辺側を流下する溶融スラグが温度の低下によって固化する場合を想定すると、スラグタップ開口部4の小判型の長辺の長さが縮小する。スラグタップ開口部4の長辺の長さの縮小は、クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101を弱め、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12の温度低下を招くことになる。
【0183】
そこで図11に示した本実施例のガス化炉1においても、図1に示した第1実施例のガス化炉1の場合と同様に、スラグタップ開口部4での溶融スラグの流下状況の監視と、クエンチ部5に投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12でスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定して監視し、制御装置200によって前記温度計12で検出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量、及びこの生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10から投入する酸素量を調節して供給して前記生成ガスを好適に燃焼させることによって、スラグタップ開口部4での溶融スラグを所望の温度に加熱して温度低下による固化を未然に防止できる。
【0184】
また、本実施例のガス化炉1では、スラグタップ開口部4の直下近傍のクエンチ部5の壁面に設置した温度計12による温度監視によって溶融スラグの流下状況を監視できる。また、生成ガスノズル9の直下のクエンチ部5の壁面に設置した温度計13、酸素含有ガスノズル10の直下のクエンチ部5の壁面に設置した温度計14による温度監視によって、クエンチ部5の壁面、並びに生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10の保護を図ることも可能となる。
【0185】
最後に、本発明の効果を示す一例として、スラグタップ開口部4を小判型としたガス化部1でのガス化試験で、酸素含有ガスノズル10又は起動バーナ11から、クエンチ部5に酸素含有ガスを供給し、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で溶融スラグの流下状況を監視した試験結果を、図13に示す。
【0186】
本図は、灰溶流点1420℃、燃料比1.2の石炭を用い、クエンチ部5に酸素含有ガスのみ投入したガス化試験結果である。まず、酸素70Nm3/h、酸素濃度25%の酸素含有ガスを、起動バーナ11よりクエンチ部5に投入した条件を基準条件とした。この条件計測した、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12のガス温度を、基準温度とした。次に、酸素濃度40%に高めた酸素含有ガスを、酸素含有ガスノズル10よりクエンチ部5に投入した条件について、上記のガス温度で基準温度からの増分を示す。
【0187】
基準条件でも、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で計測したガス温度は、灰融点に近い温度を示し、溶融スラグの安定流下も確認された。また、酸素含有ガスを酸素含有ガスノズル10よりクエンチ部5に投入した条件では、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で計測したガス温度が、基準温度より最高100℃以上上昇し、溶融スラグも、基準条件と同様に、安定に流下した。
【0188】
従って、本発明で示した温度計測方法を採用することで、溶融スラグの流下状況の監視しながら、クエンチ部5の加熱条件の調整するガス化運転が可能となった。また、クエンチ部5への酸素含有ガスの投入位置については、スラグタップ開口部4に近い酸素含有ガスノズル10とする方が、スラグタップ開口部4の直下近傍のガス温度の加熱に有利であることを確認した。
【0189】
酸素含有ガスノズル10は、構造の複雑な起動バーナ11と異なり、冷却の容易な単管ノズル構造で良い。よって、酸素量及び酸素濃度をさらに増加させた運転も可能である。また、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で計測したガス温度が顕著に低下した場合には、生成ガスノズル9より、生成ガスを投入すると良い。
【0190】
以上説明したように、本実施例によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。本実施例は、スラグタップ開口部の高温化が必要な、高融点の炭種のガス化運転に、特に有効である。
【実施例6】
【0191】
次に本発明の第5実施例であるガス化炉について図14及び図15を用いて説明する。
【0192】
本発明の第6実施例のガス化炉は図1及び図2に示した第1実施例のガス化炉と基本的な構成は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ下記に説明する。
【0193】
図14に示した本発明の第6実施例のガス化炉1は、クエンチ部5の壁面に設置される起動バーナ11の位置を、酸素含有ガスノズル10と同じ高さで、且つ、対応配置した酸素含有ガスノズル10から90度ずれた位置に設置した構成のガス化炉1である。
【0194】
本実施例のガス化炉1で起動バーナ11を酸素含有ガスノズル10と同じ高さ位置に配置した理由は、スラグタップ開口部4から流下する溶融スラグの飛散・付着による起動バーナ11の噴出口の閉塞リスクの低減をするためである。起動バーナ11がスラグタップから下方に離れるほど、飛散スラグ付着によるバーナ先端閉塞のリスクが高まる。最下部の起動バーナを上方に移動できれば、このリスクを軽減することができる。
【0195】
逆に、起動バーナ11の設置高さが低い(スラグタップ開口部4の下面から離れる)ほど、スラグタップ開口部4から流下する溶融スラグが起動バーナ11付着しやすくなる。そこで、起動バーナ11保護の観点から、その設置高さを上方の酸素含有ガスノズル10と同じ高さの位置に変更できれば好適である。
【0196】
ガス化炉1の定常運転中において、起動バーナ11はスラグタップ開口部4の加熱に使用せず、起動バーナ11自身を保護するためのパージ用窒素を供給する程度である。したがって、起動バーナ11の設置高さを酸素含有ガスノズル10と同じ高さの位置に変更しても、クエンチ部5内の流動に及ぼす影響は小さい。
【0197】
また、2本の起動バーナ11を、酸素含有ガスノズル10と同じ設置高さで、酸素含有ガスノズルの設置位置と90度ずれた位置になるようにクエンチ部5の壁面に相互に対向して設置すると、起動バーナ11の用途が広がる。
【0198】
すなわち、ガス化炉1の定常運転中に、酸素含有ガスノズル10のみならず、起動バーナ11からも酸素含有ガスを供給する運用を行なうことも可能となる。これにより、より多くの酸素含有ガス量を、低流速でクエンチ部5内に供給することができる。
【0199】
以上の構成のガス化炉1の運用を想定すると、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12は、対向して設置された一対の温度計12に加えて、前記酸素含有ガスノズル10と同じ高さに設置された2本の起動バーナ11側にも夫々設置して、合計4箇所とするのが良い。
【0200】
図15は、図14に示した本発明の第6実施例におけるガス化炉1のスラグタップ部から見たクエンチ部5の上面図であり、スラグタップ開口部4の形状は小判型を採用している。
【0201】
また、ガス化部2に設置された下段バーナ8の配置について説明すると、図15に示したように、ガス化部2の壁面に90度間隔で接線方向に設置した4本の下段バーナ8の中心線112を引くと、全ての下段バーナ8の中心線を接線とする仮想円113が一意的に決まる。
【0202】
クエンチ部5に流入する生成ガスの流れ101の旋回流は、全ての下段バーナ8の中心線を接線とする前記仮想円113に沿って形成される。
【0203】
このため、全ての下段バーナ8の中心線を接線とする仮想円113の直径を、スラグタップ開口部4の長辺より小さくなるように形成すれば、クエンチ部5内に高温の生成ガスが多く流入することになる。
【0204】
これによって、ガス化部2で溶融した溶融スラグが流下するスラグタップ開口部4の外周側を高温の生成ガスによって効果的に加熱でき、溶融スラグの冷却・固化によるスラグタップ開口部4の閉塞のリスクを回避することができる。
【0205】
図14に示した本実施例のガス化炉1においても、図1に示した第1実施例のガス化炉1の場合と同様に、スラグタップ開口部4での溶融スラグの流下状況の監視と、クエンチ部5に投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12でスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定して監視し、制御装置200によって前記温度計12で検出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量、及びこの生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10から投入する酸素量を調節して供給して前記生成ガスを好適に燃焼させることによって、スラグタップ開口部4での溶融スラグを所望の温度に加熱して温度低下による固化を未然に防止できる。
【0206】
以上説明したように、本実施例によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。
【実施例7】
【0207】
次に本発明の第7実施例であるガス化発電プラントについて図16を用いて説明する。
【0208】
本発明の第7実施例のガス化発電プラントを構成するガス化炉は図5乃至図8に示した第3実施例のガス化炉と基本的な構成は同じであるので、ガス化炉1に関する構成の説明は省略し、ガス化発電プラントの構成について下記に説明する。
【0209】
図16は、図5乃至図8に示した第3実施例のガス化炉1を備えたガス化発電プラントの全体構成を示しており、本実施例のガス化発電プラントでは、ガス化炉1のガス化部で発生した生成ガス19を精製し、その一部を生成ガス29としてクエンチ部5に設置した生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給する系統と、スラグタップ開口部4から流下する溶融スラグの流下状況を監視する手段に基づいてクエンチ部5の加熱条件を調節する制御装置200を備えている。
【0210】
まず、石炭ガス化発電プラントのプロセスフローについて説明すると、ガス化炉1のガス化部2に設置された上段バーナ7及び下段バーナ8から微粉に下燃料の石炭と、酸素含有ガスとをこのガス化部2内に投入して石炭中の可燃分が酸素との燃焼反応によってガス化し、CO及びH2を主成分とする生成ガス19を発生させる。
【0211】
ガス化部2で発生した生成ガス19は、ガス化炉1の頂部から排出され、ガス化炉1の下流側に順次配設された熱回収部15で冷却された後に、脱塵装置16、脱塩装置17、脱硫装置18に流入して順次、脱塵、脱塩、脱硫されて、生成ガス19中の不純物を除去する。
【0212】
脱硫装置18では、生成ガス19中の硫黄分は石膏として回収される。また、脱硫の過程では、微量の硫黄分(HS等)を含んだ排ガス21が発生する。硫黄分を含んだ排ガス21は、脱硫装置18からフレアスタック47に供給して完全燃焼させた後に、煙突28から系外に放出される。
【0213】
脱硫装置18を出た脱硫された生成ガス19の多くは、発電用燃料の生成ガス20として、ガスタービン装置を構成する燃焼器22に供給される。前記燃焼器22では、圧縮機23に取り込まれた空気33を加圧して燃焼用空気として供給し、前記発電用燃料の生成ガス20と混合させて燃焼し、高温の燃焼ガスを発生させる。
【0214】
燃焼器22で発生した燃焼ガスは、タービン24を駆動し、発電機(図示せず)を回転させて発電する。また、タービン24を駆動した排ガスは、排熱回収ボイラ26に供給されて該排ガスと給水との熱交換によって蒸気27を発生させ、この排熱回収ボイラ26で熱回収されて温度が低下した排ガスは煙突28から系外に放出される。
【0215】
排熱回収ボイラ26で排ガスとの熱交換で発生した蒸気27は、蒸気タービン25を駆動し、発電機(図示せず)を回転させて発電する。蒸気タービン25を流下した蒸気は冷却されて給水となり、前記排熱回収ボイラ26に供給される。
【0216】
前記ガスタービン装置と蒸気タービンとを組み合わせた複合発電によって、効率の高い発電システムが提供できる。
【0217】
一方、前記脱硫装置18を流下した生成ガスの一部は生成ガス29として、ガス化炉1のクエンチ部5に設置された生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給され、スラグタップ開口部4を加熱する燃料に用いられる。
【0218】
ガス化炉1のクエンチ部5に設置された酸素含有ガスノズル10に供給する酸素31、窒素32は、空気分離器30に取り込む空気41を原料として前記空気分離器30にて製造される。
【0219】
そして、生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給された生成ガス29は、酸素含有ガスノズル10から供給される酸素31と混合して燃焼し、スラグタップ開口部4を加熱することでスラグタップ開口部4から流下する溶融スラグの固化を防止する。
【0220】
次に、ガス化炉1のスラグタップ開口部4からの溶融スラグの流下状況を監視する監視手段について説明する。監視手段は、次の4種類である。
【0221】
・スラグタップ開口部の直下近傍のガス温度の監視手段:スラグタップ開口部の直下近傍のガス温度はスラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12で計測する。スラグタップ開口部4から流下する溶融スラグの固化を防ぐため、温度計12で計測するスラグタップ開口部4の直下近傍のガス温度はガス化部2に投入される灰分の溶融温度以上の温度を確保することが望ましい。
【0222】
・スラグタップの差圧の監視手段:スラグタップの差圧となるガス化部2とクエンチ部5の差圧を、差圧測定器42によって計測する。仮にスラグタップ開口部4が溶融スラグ等で閉塞すると、差圧測定器42の差圧が上昇する。従って、差圧測定器42で計測するスラグタップ3の差圧は所定値以下の状態を保持する。
【0223】
・溶融スラグの流下画像の監視手段:クエンチ部5に設置した監視カメラ46を用いて、スラグタップ開口部4、又はスラグタップ開口部4の直下のクエンチ部5を撮影し、溶融スラグの流下画像を監視する。そして監視カメラ46でガス化炉1の定常運転中の状態を撮影した画像を基準にして、溶融スラグの流下量、速度、粘性に変化がないかを、監視カメラ46で撮影した画像を目視又はスラグ流下画像処理装置45によって確認する。
【0224】
・スラグ重量の監視手段:スラグタップ開口部4からスラグ冷却水槽6に落下した溶融スラグは、冷却されて固化し、粒状の水砕スラグとなる。水砕スラグは、スラグ冷却水槽6の底部に設置したスラグ回収バルブ44を介して、ガス化炉1の系外に排出される。
【0225】
単位時間あたりのスラグ排出量は、ガス化炉1の系外に排出された水砕スラグをスラグ重量計測器43で計測することによって測定する。そして、ガス化部2に投入した単位時間あたりの灰分の総重量に対して、スラグ重量計測器43で計測したスラグ排出量の割合に変化がないかを監視する。
【0226】
次に本実施例のガス化発電プラントに備えられたガス化炉1において、上記監視手段のデータを取り込んだスラグタップ開口部4の加熱制御を行なう制御装置200によるスラグタップ開口部4の加熱条件の調整アルゴリズムは、以下の手順となる。
【0227】
1)ガス化炉1の定常運転時の初期条件としては、クエンチ部5に生成ガスノズル9から生成ガスを供給せずに酸素含有ガスノズル10から酸素含有ガスのみを投入する。酸素濃度は空気に近い20〜25%程度が望ましい。
【0228】
2)上記した4項目の監視手段のいずれかで異常を検知した場合、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定する温度計12の検出温度を第1優先にして制御装置200によって酸素含有ガスノズル10の上流側に設置した酸素の流量調整部37を調節して酸素の流量を増加させ、酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素濃度を高くする。酸素濃度の上限は、スラグタップ3の耐火材、クエンチ部5の壁面、酸素含有ガスノズル10、生成ガスノズル9を保護する温度範囲に基づいて設定する。
【0229】
クエンチ部5内の温度監視は、スラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12、生成ガスノズル9の直下のクエンチ部5の壁面に設置した温度計13、酸素含有ガスノズル10の直下のクエンチ部5の壁面に設置した温度計14を用いてそれぞれ測定して監視する。
【0230】
即ち、スラグタップ開口部4での溶融スラグの流下状況の監視と、クエンチ部5に投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12でスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定して監視し、制御装置200によって温度計12で出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量、及びこの生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10から投入する酸素含有ガス量を調節して供給してこの生成ガスを好適に燃焼させることによって、スラグタップ開口部4での溶融スラグを所望の温度に加熱して温度低下による固化を未然に防止する。
【0231】
また、生成ガスノズル9の直下のクエンチ部5の壁面に設置した温度計13、及び酸素含有ガスノズル10の直下のクエンチ部5の壁面に設置した温度計14は、前記生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10の監視、及びクエンチ部5の壁面の監視に用いられる。
【0232】
3)前記2)の操作で、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で測定した温度が、ガス化部2に投入される灰分の溶流温度に達しない場合には、制御装置200からの指令信号によって酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素の濃度及び酸素の流量を更に増加させる。
【0233】
この場合、制御装置200から酸素の流量調整部37、及び窒素の流量調整部38に対して、酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素濃度を一定とする操作を行なうように指令信号を出す。クエンチ部5の温度監視については、2)と同様とする。
【0234】
4)スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で測定したスラグタップ開口部4の直下近傍の温度低下は、溶融スラグの付着などによる、スラグタップ開口部4の開口面積の減少を示す。スラグタップ開口部4の開口面積が減少すると、クエンチ部5の他の温度の低下、溶融スラグの流下量の減少も観測される。
【0235】
これらの現象が見られた場合、制御装置200から生成ガスの流量調整部36に対して、生成ガスノズル9からクエンチ部5内に生成ガスを供給する指令を出す。ここで、生成ガス量の上限は、酸素含有ガスノズル10から供給する酸素量で生成ガスノズル9から供給される生成ガスが完全燃焼できる流量とする。
【0236】
5)前記4)の操作によっても、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で測定した温度が、ガス化部2に投入される灰分の溶流温度に達しない場合に、制御装置200からの指令信号によって生成ガスノズル9からクエンチ部5内に供給する生成ガスの流量、及び酸素含有ガスノズル10からクエンチ部5内に供給する酸素含有ガスの流量をそれぞれ増加させる。
【0237】
この場合、制御装置200には、窒素、酸素、生成ガスの順に流量変化させる制御ロジックと、供給する酸素量を、生成ガスの完全燃焼に必要な流量に調整する制御ロジックを持たせると良い。
【0238】
6)前記5)の操作によっても、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で測定した温度が十分に上昇せず、流下する溶融スラグの画像及び流量にも改善が見られない場合には、スラグタップ開口部4への溶融スラグの付着が進み、スラグタップ差圧が上昇する。
【0239】
この場合、制御装置200からクエンチ部5の壁面に設置した起動バーナ11を再点火させてガス化炉1の停止操作に入る指令を出す。
【0240】
更に制御装置200からの指令によって、上段バーナ7と下段バーナ8からガス化部2への石炭供給、並びに酸素含有ガスノズル10及び生成ガスノズル9からの生成ガス及び酸素の供給も、速やかに停止させる。起動バーナ11を再点火させる理由はガス化部2から溶融スラグをクエンチ部5内に抜き出すためである。
【0241】
尚、事前の分析などで、ガス化部2に投入される灰分の溶流温度が高い情報を得ている場合は、上記2)から始めても良い。
【0242】
また、上記したガス化炉1の運転においては、クエンチ部5に設置した対向する各2本のノズル及びバーナを用いるので、対向配置されたこれらのノズル及びバーナの間で流量偏差が生ると前記ノズル及びバーナから供給される噴流の衝突位置が、クエンチ部5の中心部からずれ、流下する溶融スラグを吹き飛ばす要因となる。従って、制御装置200には、対向配置されたノズル及びバーナから供給する噴流の流量偏差を、±5〜10%以下に抑制する制御ロジックを追加すると良い。
【0243】
図16に示した本実施例のガス化発電プラントに備えられたガス化炉1においても、図1に示した第1実施例のガス化炉1の場合と同様に、スラグタップ開口部4での溶融スラグの流下状況の監視と、クエンチ部5に投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12でスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定して監視し、制御装置200によって前記温度計12で検出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量、及びこの生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10から投入する酸素量を調節して供給して前記生成ガスを好適に燃焼させることによって、スラグタップ開口部4での溶融スラグを所望の温度に加熱して温度低下による固化を未然に防止できる。
【0244】
また、スラグタップの開口部近傍のクエンチ部に温度計を設置し、温度計で測定したスラグタップの開口部の近傍の温度検出値に基づいて酸素含有ガスノズルから供給する酸素含有ガスを制御し、クエンチ部に供給する酸素濃度を変更する制御装置を備えることもできる。上述した手順2で説明した、監視手段のいずれかで異常を検知した場合にクエンチ部5内に供給する酸素濃度を高くする以外に、通常運転時に酸素含有ガスの酸素濃度を上昇させる制御を行って運転をしても良い。酸素含有ガスの酸素濃度上昇は、窒素などの顕熱の熱ロスを削減でき、酸素と生成ガスの投入量の削減をすることができる。これにより発電効率を向上できる。
【0245】
以上説明したように、本実施例によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。
【実施例8】
【0246】
次に本発明の第8実施例であるガス化発電プラントについて図17を用いて説明する。
【0247】
本発明の第7実施例のガス化発電プラントを構成するガス化炉は図5乃至図8に示した第3実施例のガス化炉と基本的な構成は同じであり、また、ガス化発電プラントの構成は図16に示したガス化発電プラントと基本的な構成は同じであるので、ガス化炉1に関する構成及び図16のガス化発電プラントと共通した構成の説明は省略し、相違するガス化発電プラントの構成についてのみ下記に説明する。
【0248】
図17に示した本発明の第7実施例のガス化発電プラントの構成が、図16に示した本発明の第7実施例のガス化発電プラントと異なる点は、スラグタップ開口部4を加熱するための酸素31、窒素32を、圧縮機23に取り込む空気33から賄うことである。
【0249】
ガス化発電プラントで必要な全ての酸素含有ガスを、ガスタービン装置のタービン24で駆動する圧縮機23から供給するものであり、補機点数の削減による所内動力の低減といった効果がある。
【0250】
ガス化炉1のスラグタップ開口部4の加熱に、生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10、又は起動バーナ11から生成ガス、酸素含有ガス、又は助燃燃料を供給しなくても、スラグタップ開口部4の直下近傍の温度計12で測定したガス温度が所望の温度よりも高い場合には、制御装置200によって、圧縮機23から空気分離器30に供給する空気量を調節する空気の流量調整部48に対して空気量を低減する指令を出し、前記生成ガスノズル9、酸素含有ガスノズル10、又は起動バーナ11からクエンチ部5内に供給する生成ガス、酸素含有ガス、又は助燃燃料の供給を低減、或いは停止させる。
【0251】
余剰となった空気は、制御装置200によって、圧縮機23からフレアスタック47に供給する空気量を調節するフレアスタックの空気の流量調整部49に対して空気量を増加させる指令を出し、このフレアスタック47を経由して煙突28に排出させる。
【0252】
図17に示した本実施例のガス化発電プラントに備えられたガス化炉1においても、図1に示した第1実施例のガス化炉1の場合と同様に、スラグタップ開口部4での溶融スラグの流下状況の監視と、クエンチ部5に投入する生成ガス量、及び酸素含有ガス量の調整のために、スラグタップ開口部4の直下近傍に設置した温度計12でスラグタップ開口部4の直下近傍の温度を測定して監視し、制御装置200によって前記温度計12で検出した温度に基づいて生成ガスノズル9から供給する生成ガスの流量、及びこの生成ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガスノズル10から投入する酸素量を調節して供給して前記生成ガスを好適に燃焼させることによって、スラグタップ開口部4での溶融スラグを所望の温度に加熱して温度低下による固化を未然に防止できる。
【0253】
以上説明したように、本実施例によれば、溶融スラグの固化によるスラグタップ開口部の閉塞を防止するスラグタップの開口部の加熱を省エネルギーで行なってガス化炉の効率を高く維持し得るガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化炉の運転方法、及びガス化発電プラントの運転方法が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0254】
有機物をガス化し、灰分を溶融スラグ化する石炭ガス化炉、ガス化炉を備えたガス化発電プラント、に適用できる。
【符号の説明】
【0255】
1:ガス化炉、2:ガス化部、3:スラグタップ、4:スラグタップ開口部、5:クエンチ部、6:スラグ冷却水槽、7:上段バーナ、8:下段バーナ、9:生成ガスノズル、10:酸素含有ガスノズル、11:起動バーナ、12、13、14:温度計、15:熱回収部、16:脱塵装置、17:脱塩装置、18:脱硫装置、19:ガス化部で発生した生成ガス、20:生成ガス、21:排ガス、22:燃焼器、23:圧縮機、24:タービン、25:蒸気タービン、26:排熱回収ボイラ、27:蒸気、28:煙突、29:生成ガス、30:空気分離器、31:酸素、32:窒素、33:空気、200:制御装置、35:助燃燃料の流量調整部、36:生成ガスの流量調整部、37:酸素含有ガスノズル供給用の酸素の流量調整部、38:酸素含有ガスノズル供給用の窒素の流量調整部、39:起動バーナ供給用の酸素の流量調整部、40:起動バーナ供給用の窒素の流量調整部、41:空気、42:差圧測定器、43:スラグ重量計測器、44:スラグ回収バルブ、45:スラグ流下画像処理装置、46:監視カメラ、47:フレアスタック、48:圧縮機から空気分離器への空気の流量調整部、49:フレアスタックの空気の流量調整部、101:クエンチ部に流入する生成ガスの流れ、102:ガス化部で発生する生成ガスの流れ、103:スラグタップを上昇する燃焼ガスの流れ、104:クエンチ部で反転する生成ガスの流れ、105:クエンチ部に投入された生成ガスの流れ、106:クエンチ部に投入された酸素含有ガスの流れ、107:クエンチ部を上昇する燃焼ガスの流れ、108:衝突により側壁方向に拡散する生成ガスの流れ、109:クエンチ部内を拡散する生成ガスの流れ、110:衝突により側壁方向に拡散する酸素含有ガスの流れ、111:クエンチ部内を拡散する酸素含有ガスの流れ、112:下段バーナの中心線、113:全ての下段バーナの中心線を接線とする仮想円。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉において、
スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、
スラグタップに近接したクエンチ部の位置に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズルを設置したことを特徴とするガス化炉。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化炉において、
前記酸素含有ガスノズルを該生成ガスノズルよりも下方の位置に設置したことを特徴とするガス化炉。
【請求項3】
請求項1に記載のガス化炉において、
クエンチ部に設置され、助燃用の燃料を燃焼させる起動バーナを、酸素含有ガスノズルよりも下方となる位置に設置されていることを特徴とするガス化炉。
【請求項4】
請求項1に記載のガス化炉において、
スラグタップの開口部は扁平型に形成されており、このスラグタップの前記扁平型の開口部を形成する長軸方向の直下のクエンチ部に、生成ガスノズル、及び酸素含有ガスノズルを、それぞれ対向させて設置したことを特徴とするガス化炉。
【請求項5】
請求項3に記載のガス化炉において、
クエンチ部に設置され、助燃用の燃料を燃焼させる起動バーナを、スラグタップの前記扁平型の開口部を形成する短軸方向の直下であって、酸素含有ガスノズルと同じ高さの位置に設置したことを特徴とするガス化炉。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載のガス化炉において、
ガス化部に石炭及び酸素を供給して該ガス化部内で燃焼反応させる上段バーナ及び下段バーナのうち下段バーナを、この下段バーナの軸心を通る中心線が、スラグタップの開口部を扁平型に形成した該スラグタップの長辺より小さい直径の円の接線上に位置するように前記ガス化部の壁面に設置されていることを特徴とするガス化炉。
【請求項7】
請求項1に記載のガス化炉において、
スラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部に温度計を設置し、前記温度計で測定したスラグタップの温度検出値に基づいて酸素含有ガスノズルから供給する酸素含有ガスを制御し、前記クエンチ部に供給する酸素濃度を変更する制御装置を備えたことを特徴とするガス化炉。
【請求項8】
請求項1に記載のガス化炉において、
前記生成ガスノズル及び酸素含有ガスノズルを、それぞれ対向させて設置し、対向するガスノズルの流量偏差が所定値以下よなるように制御する制御装置を有することを特徴とするガス化炉。
【請求項9】
請求項3に記載のガス化炉において、
スラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部に温度計を設置し、この温度計で測定した温度検出値に基づいて酸素含有ガスノズルから供給する酸素含有ガスを制御する制御装置を設置し、
前記制御装置は対向して配設した前記生成ガスノズル及び酸素含有ガスノズルからそれぞれ供給する生成ガス及び酸素量の流量偏差を±5%以下となるように制御することを特徴とするガス化炉。
【請求項10】
バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備え、スラグタップに近接したクエンチ部の位置にガス化部で発生した生成ガスの一部を該クエンチ部内に供給する生成ガスノズルを設置し、前記クエンチ部内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガスノズル、及び助燃用の燃料を燃焼させる起動バーナを該生成ガスノズルよりも下方の位置にそれぞれ設置し、スラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部に温度計を設置し、この温度計で測定した温度検出値に基づいて生成ガスノズルから供給する生成ガス量、及び酸素含有ガスノズルから供給する酸素含有ガス量を制御する制御装置を設置したガス化炉を備えており、
このガス化炉のガス化部で生成した生成ガスを前記ガス化炉から導いて生成ガスの脱硫を行なう脱硫装置と、この脱硫装置によって脱硫した生成ガスを燃料として燃焼し燃焼ガスを発生させる燃焼器と、燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、このガスタービンで駆動して発電する発電機及び空気を圧縮して前記燃焼器に燃焼用空気として供給する圧縮機と、前記脱硫装置から分岐した生成ガスの一部を前記ガス化炉の生成ガスノズルに供給する系統と、前記圧縮機から抽気した空気から酸素を分離する空気分離器と、この空気分離器で分離した酸素を前記ガス化炉の酸素含有ガスノズルに供給する系統を備えたことを特徴とするガス化発電プラント。
【請求項11】
バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられ、その中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉の運転方法において、
スラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部の温度を測定してこの測定した温度検出値に基づいて、スラグタップに近接したクエンチ部に設置した生成ガスノズルを通じて前記ガス化部で発生した生成ガスの一部をスラグタップに近接したクエンチ部内に供給する生成ガス量を制御すると共に、この供給された生成ガスを燃焼させるために前記クエンチ部に設置した酸素含有ガスノズルを通じて供給する酸素含有ガス量を制御することを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項12】
請求項11に記載のガス化炉の運転方法において、
生成ガスノズルから供給する生成ガスは、酸素含有ガスノズルからクエンチ部内に供給する酸素含有ガスの供給位置よりも上方となるクエンチ部内の位置に供給し、
生成ガスノズルから供給される生成ガスは対向させて設置した複数の生成ガスノズルからそれぞれ対向させてクエンチ部内に流量偏差が所定値以下となる流量で供給させ、
酸素含有ガスノズルから供給される酸素含有ガスは対向させて設置した複数の酸素含有ガスノズルからそれぞれ対向させてクエンチ部内に流量偏差が所定値以下となる流量で供給させたことを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項13】
バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化し石炭中の灰分を溶融スラグ化するガス化部と、ガス化部の底部に設けられその中央部に溶融スラグを流下させる開口部を有するスラグタップと、スラグタップの直下にクエンチ部を備えたガス化炉を備えており、
このガス化炉のガス化部で生成した生成ガスを前記ガス化炉から導いて脱硫装置で生成ガスの脱硫を行ない、脱硫した生成ガスを燃料として燃焼器で燃焼して燃焼ガスを発生させ、発生した燃焼ガスでタービンを駆動して該タービンで駆動した発電機で発電し、該タービンで駆動した圧縮機で空気を圧縮して前記燃焼器に燃焼用空気として供給し、前記脱硫装置から分岐した生成ガスの一部を前記ガス化炉のクエンチ部に設置した生成ガスノズルに供給すると共に、前記圧縮機から抽気した空気から空気分離器で酸素を分離してこの分離した酸素を前記ガス化炉のクエンチ部に設置した酸素含有ガスノズルに供給するようにしたガス化発電プラントの運転方法において、
ガス化炉のスラグタップ直下で開口部に突出させない位置のクエンチ部の温度を測定してこの測定した温度検出値に基づいて、スラグタップに近接したクエンチ部に設置した前記生成ガスノズルを通じて前記ガス化部で発生した生成ガスの一部をスラグタップに近接したクエンチ部内に供給する生成ガス量を制御すると共に、この供給された生成ガスを燃焼させるためにクエンチ部に設置した前記酸素含有ガスノズルを通じて供給する酸素含有ガス量を制御することを特徴とするガス化発電プラントの運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−137144(P2011−137144A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266067(P2010−266067)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度〜20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)/パイロット試験設備およびゼロエミッション化技術に関する研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)