説明

ガス化発電プラント

【課題】ガス化炉の暖機時間を短縮することが可能なガス化発電プラントを提供することを目的とする。
【解決手段】炉内と熱交換する流体が流通する流体流通路131を有し、燃料をガス化して生成ガスを発生するガス化炉101と、ガス化炉101によって発生した生成ガス中に含まれる不純物を取り除くガス精製設備と、ガス精製設備により精製されたガスによって駆動されるガスタービンと、ガスタービンから導出された排気により流体を加熱する熱交換器と、を備え、ガス化炉101を暖機する際には、熱交換器により加熱された流体が加圧気体によって加圧されて流体流通路131へと供給されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化発電プラントに関し、特に、ガス化炉の暖機運転に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、石炭ガス化発電プラントにおいては、石炭をガス化炉でガス化して生成ガスにし、発生した生成ガスによってガスタービンを駆動し、ガスタービンに接続されている発電機を発電させている。石炭ガス化発電プラントの起動運転時にガス化炉を軽油や天然ガス等の起動用燃料を燃焼させて起動させることによって、起動用燃料から生成された生成ガス中に含まれている硫黄分によりガス化炉を構成している壁、節炭器、蒸発器等が酸露点腐食したり生成ガス中のダストが固着することを防止するために、ガス化炉内を露点温度以上に暖機(ウォーミング)している。
【0003】
特許文献1には、暖機ガスである不活性ガスを用いてガス化炉内を暖機すると共に、排熱回収ボイラによって加熱した給水(以下、「高温水」という。)をガス化炉に循環させてガス化炉の壁、節炭器、蒸発器を内部から暖機してガス化炉の暖機運転時間を短縮することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3676022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、ガス化炉の暖機の際に、ガス化炉の壁、節炭器、蒸発器内の水の圧力が低い場合には、ガス化炉の壁、節炭器、蒸発器へと水を供給する缶水循環路に高温水を供給することによって、缶水循環路内にフラッシュ現象(減圧沸騰)が発生してエロージョンや過大な流速が生じる恐れがある。エロージョンや過大な流速の発生を防止するためには、缶水循環路に供給する高温水の流量に上限を設ける必要がありガス化炉の暖機時間を短縮できず石炭ガス化発電プラントの運用性を向上させることが出来ないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ガス化炉の暖機時間を短縮することが可能なガス化発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のガス化発電プラントは、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るガス化発電プラントによれば、炉内と熱交換する流体が流通する流体流通路を有し、燃料をガス化して生成ガスを発生するガス化炉と、該ガス化炉によって発生した生成ガスから不純物を取り除くガス精製設備と、該ガス精製設備により精製されたガスによって駆動されるガスタービンと、該ガスタービンから導出された排気により流体を加熱する熱交換器と、を備え、前記ガス化炉を暖機する際には、加圧気体によって加圧された流体が導かれる前記流体流通路へと前記熱交換器により加熱された流体が供給されることを特徴とする。
【0008】
この結果、ガス化炉の暖機の際には、加圧された流体と加熱された流体とを流体流通路に供給することで、流体流通路に生じるフラッシュ現象を防止することができ、加熱された流体の供給量を低下させることなく流体流通路へと供給することができる。したがって、ガス化炉の暖機時間を短縮することができ、ガス化発電プラントの運用性を向上することができる。
【0009】
また、ガス化発電プラントの起動運転時は、ガスタービンに起動用燃料が別途供給される。これによりガスタービンは、起動運転を開始するが、本発明では、ガス化炉の暖機を行う際に、加圧された流体と加熱された流体とを流体流通路に供給することとしたため、ガス化炉の暖機時間の短縮を図ることが可能となり、ガス化炉で生成ガスを発生させてガスタービンへと早期に供給することができる。したがって、ガスタービンの起動用燃料の消費を低減することができ、ガス化発電プラントの起動運転時におけるコスト削減を図ることができる。
【0010】
さらに、本発明に係るガス化発電プラントによれば、前記加圧された流体は、前記加熱された流体の飽和圧力以上に加圧されることを特徴とする。
【0011】
ガス領域を介して飽和圧力以上に加圧された流体を流体流通路へと供給することにより、加圧された流体と加熱された流体とが合流し、流体流通路内の流体が過大流速になることを防ぐことができる。そのため、加熱された流体の供給量を制限する必要がなくなり供給量の上限を高くすることができる。したがって、ガス化炉の暖機時間を短縮して、ガス化発電プラントの運用性を向上することができる。
【0012】
さらに、本発明に係るガス化発電プラントによれば、前記流体流通路は、流体領域とガス領域とを有し、前記加圧気体は、前記ガス領域に供給されることを特徴とする。
【0013】
流体流通路のガス領域に加圧気体を供給して流体流通路の流体領域の流体を加圧することにより、加圧された流体と加熱された流体とが合流した際に、流体流通路内の流体が過大流速になることを防ぐことができる。そのため、加熱された流体の供給量を制限する必要がなくなり供給量の上限を高くすることができる。したがって、ガス化炉の暖機時間を短縮して、ガス化発電プラントの運用性を向上することができる。
【0014】
さらに、本発明に係るガス化発電プラントによれば、前記加圧気体は、非凝縮性気体であることを特徴とする。
【0015】
非凝縮性気体を用いて加熱された流体に合流する流体を加圧することとした。また、非凝縮性気体は、凝縮してドレン化することがない。そのため、流体流通路に導かれる流体を飽和圧力以上に維持したままガス化炉を暖機することができる。従って、ガス化炉の暖機時間を短縮して、ガス化発電プラントの運用性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
ガス化炉の暖機の際には、加圧された流体と加熱された流体とを流体流通路に供給することとしたため、流体流通路に生じるフラッシュ現象を防止することができる。そのため、加熱された流体の供給量を低下させることなく加熱された流体を流体流通路へと供給することができため、ガス化炉の暖機時間の短縮を図ることが可能となる。また、ガス化炉の暖機時間が短縮されることにより、ガス化発電プラントの運用性を向上することができるとともに、ガス化炉で生成ガスを発生させてガスタービンへと早期に供給することが可能となる。よって、ガスタービンの起動用燃料の消費を低減することができ、ガス化発電プラントの起動運転時におけるコスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図である。
【図2】図1に示した石炭ガス化炉の暖機系統の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、本発明の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントの概略構成図が示されている。
図1に示されているように、石炭を燃料とする石炭ガス化複合発電プラント(IGCC;Integrated Coal Gasification Combined Cycle)100は、主として、石炭(燃料)をガス化する石炭ガス化炉(ガス化炉)101と、石炭ガス化炉101によってガス化された生成ガスからダストおよび硫黄分を取り除くガス精製設備(図示せず)と、ガス精製設備によって精製された精製ガスを燃焼して駆動されるガスタービン106と、ガスタービン106から導出される排ガス(排気)の熱を回収する排熱回収ボイラ(熱交換器)107と、排熱回収ボイラ107により発生した蒸気が導かれる蒸気タービン109と、ガスタービン106および蒸気タービン109によって駆動される発電機(図示せず)とを備えている。
【0019】
石炭ガス化炉101は、図示しない石炭供給経路から供給された燃料である石炭をガス化して生成ガスを発生するものである。また、石炭ガス化炉101は、壁部に設けられている水管154(図2参照)等に水(流体)を流動させて蒸気を発生する。この例では、石炭ガス化炉101は、石炭ガス化炉循環水ポンプ103(図1では、1台のみを示す。)を有する、いわゆる強制循環型ボイラとされる。
【0020】
石炭ガス化炉101は、下方から上方へと生成した生成ガスが導かれるように石炭ガス化炉101の上流側に形成された石炭ガス化部(図示せず)と、石炭ガス化炉101の下流側に接続されて、生成ガスが上流側から下流側へと導かれる順に、蒸発器151、過熱器(図示せず)、節炭器153とを備えている。生成ガスは、蒸発器151、過熱器、節炭器153を通過する際に、蒸発器151、過熱器、節炭器153各々において熱交換が行われる。石炭ガス化部は、蒸発器151、過熱器、節炭器153と共に石炭ガス化炉圧力容器102内に格納されている。これにより、生成ガスが石炭ガス化炉圧力容器102外へと流出することが防止されている。
【0021】
石炭ガス化部には、下方から、コンバスタ(図示せず)及びリダクタ(図示せず)が設けられている。コンバスタは、石炭及びチャーの一部分を燃焼させている。コンバスタには、噴流床が採用されているが、流動床式や固定床式であっても構わない。
【0022】
コンバスタ及びリダクタには、それぞれ、コンバスタバーナー(図示せず)及びリダクタバーナー(図示せず)が設けられている。これらのバーナーに対して石炭供給経路から石炭が供給される。
コンバスタバーナーには、後述するガスタービン106の圧縮機(図示せず)により圧縮された空気が供給されるようになっている。すなわち、本実施形態の石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)100は、いわゆる空気吹きとなっている。ここで、ガスタービン106の圧縮機から供給される空気は、ガス化剤として用いられる。
【0023】
リダクタは、コンバスタから導かれた高温のガスによって石炭をガス化させている。これにより、石炭から一酸化炭素や水素等の可燃性の生成ガスが生成される。石炭ガス化反応は、石炭及びチャー中の炭素が高温ガス中の二酸化炭素及び水分と反応して一酸化炭素や水素を生成する吸熱反応である。
【0024】
蒸発器151には、石炭ガス化炉循環水ポンプ103から水が供給される。蒸発器151に供給された水は、リダクタから導かれた高温の生成ガスと熱交換することによって蒸気とされ、気水分離器であり、且つ、ガス領域および水領域(流体領域)を有する石炭ガス化炉蒸気ドラム152へと導かれる。
因みに、石炭ガス化炉蒸気ドラム152内の水を有する範囲を水領域といい、水を有しない範囲をガス領域という。
【0025】
過熱器には、石炭ガス化炉蒸気ドラム152内で水分が分離されたことによって発生した蒸気が導かれる。過熱器に導かれた蒸気は、高温の生成ガスと熱交換することによって過熱蒸気とされて蒸気タービン109へと導かれる。
【0026】
節炭器153には、高圧給水ポンプ113によって昇圧された水が供給される。節炭器153に供給された水は、蒸発器151および過熱器に熱を与えることによって温度が低下した生成ガスと熱交換することによって温度が上昇する。温度が上昇した水は、石炭ガス化炉蒸気ドラム152へと導かれる。
【0027】
蒸発器151、過熱器、節炭器153を通過して温度が下げられた生成ガスには、不純物であるダストや、硫化水素または硫化カルボニルといった硫黄化合物が含まれており、ダスト及び硫黄化合物を含む生成ガスを石炭ガス化炉101からガス精製設備へと導く。ちなみに、ガス精製設備は、脱塵装置104と、脱硫装置105とを備えている。
【0028】
脱塵装置104は、生成ガス中の不純物であるダストを取り除くものである。脱硫装置105は、生成ガス中の不純物である硫黄化合物を取り除くものである。生成ガスは、脱塵装置104および脱硫装置105により、脱塵と脱硫とが行われて精製されたクリーンな精製ガスとしてガスタービン106へと導かれる。
【0029】
ガスタービン106に導かれた精製ガスは、まず、ガスタービン106に設けられている燃焼器(図示せず)へと送られる。ガスタービン106は、燃焼器と、燃焼器によって燃焼された排ガスによって駆動されるタービン(図示せず)と、燃焼器へと高圧の空気を送り出す圧縮機(図示せず)とを備えている。
【0030】
燃焼器では、導かれた精製ガスと、空気とが燃焼されて排ガス(排気)が排出される。燃焼器から排出された排ガスは、タービンへと導かれ、タービンを回転駆動させる。タービンが排ガスによって回転駆動されることによって、タービンに接続されている回転軸(図示せず)が回転される。回転されている回転軸上には、圧縮機が接続されており、圧縮機は、回転軸が回転されることによって回転駆動して空気を圧縮する。圧縮機によって圧縮された空気は、燃焼器と石炭ガス化炉101とに導かれる。また、回転軸には、発電機が接続されているため、回転軸を回転させることによって、発電機が駆動して発電する。
【0031】
ガスタービン106を回転駆動させた排ガスは、排熱回収ボイラ107へと導かれる。排熱回収ボイラ107は、ガスタービン106から導かれた排ガスの熱によって過熱蒸気を発生するものである。排熱回収ボイラ107において熱が回収された排ガスは、煙突108から石炭ガス化複合発電プラント100の外へと排出される。
【0032】
排熱回収ボイラ107において発生された過熱蒸気は、蒸気タービン109へと導かれる。また、蒸気タービン109には、前述した石炭ガス化炉蒸気ドラム152および過熱器から過熱蒸気が導かれる。蒸気タービン109は、ガスタービン106と同回転軸に接続されており、いわゆる一軸式のコンバインドシステムとなっている。なお、一軸式のコンバインドシステムに限らず、別軸式のコンバインドシステムであっても構わない。
【0033】
ガスタービン106によって駆動されている回転軸は、蒸気タービン109に蒸気が導かれることによって更に駆動力が増加する。そのため、回転軸に接続されている発電機の発電量が増加する。
蒸気タービン109を回転駆動した蒸気は、復水器111へと導かれる。復水器111に導かれた蒸気は、海水によって冷却されて水(復水)に戻される。復水は、低圧給水ポンプ112によって排熱回収ボイラ107へと給水され、排熱回収ボイラ107に導かれた排ガスによって高温の水になる。高温の水の一部は、高圧給水ポンプ113によってウォーミング給水(加熱流体)135として後述する缶水循環経路131(図2参照)へと給水され、残りは排熱回収ボイラ107内へ再度導かれて過熱蒸気とされる。
【0034】
次に、石炭ガス化炉の暖機の方法について図2を用いて説明する。
図2には、石炭ガス化炉の暖機系統が示されている。
石炭ガス化炉101の暖機系統は、石炭ガス化炉蒸気ドラム152から石炭ガス化炉101の壁部に設けられている水管154に水を導く缶水循環経路(流体流通路)131と、石炭ガス化炉蒸気ドラム152にて発生した蒸気を、図示しない過熱器へ導く過熱器入口管134と、缶水循環経路131の一部から分岐された水を節炭器153へと導く節炭器循環経路132と、缶水循環経路131の一部からさらに分岐された水を蒸発器151へと導く蒸発器循環経路133とを備えている。
【0035】
また、石炭ガス化炉蒸気ドラム152に接続されている缶水循環経路131には、前述した排熱回収ボイラ107(図1参照)の一部から導かれた、例えば、約100℃に加熱された暖気用の給水(以下、「ウォーミング給水」という。)135が合流されている。ウォーミング給水(加熱流体)135が合流した缶水循環経路131内の水は、石炭ガス化炉循環水ポンプ103によって昇圧される。昇圧された水は、缶水循環経路131と、缶水循環経路131から分岐している節炭器循環経路132および蒸発器循環経路133を経て石炭ガス化炉101に設けられている水管154、節炭器153、蒸発器151へと供給される。
なお、石炭ガス化炉蒸気ドラム152に接続されている過熱器入口管134は、石炭ガス化炉蒸気ドラム152内の水が気水分離されることにより発生した飽和蒸気を過熱器へと供給している。
【0036】
石炭ガス化複合発電プラント100(図1参照)が起動を停止している場合には、缶水循環経路131内の水の圧力は、低圧となっている。そのため、石炭ガス化複合発電プラント100の起動運転時に、石炭ガス化炉蒸気ドラム152から導出される低圧の缶水循環経路131内の水に温度が100℃のウォーミング給水135を合流させた場合には、缶水循環経路131内にフラッシング現象を生じる。
【0037】
そこで、低温の水(大気温度〜約80℃程度)が貯溜されている石炭ガス化炉蒸気ドラム152内のガス領域に、石炭ガス化複合発電プラント100内に設けられている空気分離装置110によって空気から発生させた窒素ガス(加圧気体)をガス供給経路136にて供給する。石炭ガス化炉蒸気ドラム152内のガス領域に窒素ガスを高圧にして導くことによって石炭ガス化炉蒸気ドラム152内は、約4MPaから10MPaに加圧される。
【0038】
石炭ガス化炉蒸気ドラム152内が加圧されることによって石炭ガス化炉蒸気ドラム152内の水は、ウォーミング給水135の飽和圧力よりも高圧とされる。これにより、石炭ガス化炉蒸気ドラム152内の加圧された低温の水(加圧流体)を缶水循環経路131へと導出し、高温のウォーミング給水135と合流させた場合であっても、缶水循環経路131内にフラッシング現象が生じることを防止することができる。
【0039】
このようにフラッシング現象を抑制することによって、缶水循環経路131に合流されるウォーミング給水135の流量を減少させることなく缶水循環経路131から節炭器循環経路132、蒸発器循環経路133へと温度の上昇した水(約250℃〜350℃程度)を供給することができ、さらに、缶水循環経路131、節炭器循環経路132、蒸発器循環経路133から水管154、節炭器153、蒸発器151へ温度の上昇した水を供給することによって、石炭ガス化炉101を内部から暖機することができる。
【0040】
次に、石炭ガス化複合発電プラントの起動運転の方法について説明する。
ガスタービン106(図1参照)は、ガスタービン106の燃焼器に石油等の起動用燃料を供給し、燃焼器に供給された起動用燃料が燃焼することにより発生した排ガスによって起動する。ガスタービン106の燃焼器から導出された排ガスは、排熱回収ボイラ107に供給され、図示しない給水系路から給水された水を加熱して高温の水と蒸気を発生する。排熱回収ボイラ107において発生した蒸気は、蒸気タービン109へと導かれる。これにより、蒸気タービン109が起動する。
【0041】
排熱回収ボイラ107で発生した高温の水の一部は、排熱回収ボイラ107から取り出されて高圧給水ポンプ113によって昇圧される。昇圧された高温の水は、ウォーミング給水135として缶水循環経路131(図2参照)へと供給され、缶水循環経路131へ供給されたウォーミング給水135と石炭ガス化炉蒸気ドラム152より加圧された水とによって、前述したように石炭ガス化炉101が暖機される。
以上のように、石炭ガス化複合発電プラント100の各機器が暖機されることによって、石炭ガス化複合発電プラント100が起動されることとなる。
【0042】
以上の通り、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電プラントによれば、以下の作用効果を奏する。
石炭ガス化炉(ガス化炉)101の暖機の際には、石炭ガス化炉蒸気ドラム152内のガス領域に窒素ガス(加圧気体)を供給し、ウォーミング給水(加熱流体)135の飽和圧力以上に加圧された低温の水(加圧流体)と、ウォーミング給水135とを缶水循環経路(流体流通路)131に供給される。これにより、加圧された水とウォーミング給水135とが缶水循環経路131に合流した際に発生するフラッシュ現象及び過大流速を防止することができる。そのため、ウォーミング給水135の供給量を低下させることなく缶水循環経路131へと供給することができる。したがって、石炭ガス化炉101の暖機時間の短縮を図ることが可能となり、石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)100の運用性を向上することができるとともに、石炭ガス化炉101で生成ガスを発生させてガスタービン106へと早期に供給することができるため、ガスタービン106の起動用燃料の消費を低減することができ、石炭ガス化複合発電プラント100の起動運転時におけるコスト削減を図ることができる。
【0043】
また、ウォーミング給水135に合流する水を加圧する窒素ガス(非凝縮性気体)は、凝縮してドレン化することがないため、缶水循環経路131に導かれる水をウォーミング給水135の飽和圧力以上に維持したまま石炭ガス化炉101を暖機することができる。従って、石炭ガス化炉101の暖機時間を短縮して、石炭ガス化複合発電プラント100の運用性を向上することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、窒素ガスを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、非凝縮性、かつ、非腐食性の気体を用いても良い。
また、窒素ガスは、空気分離装置110によって分離されたものを用いるとして説明したが、別途、窒素ガスを発生させる機器を設けても良い。
【0045】
さらに、窒素ガスを石炭ガス化炉蒸気ドラム152に供給するとして説明したが、缶水循環経路131、節炭器循環経路132、蒸発器循環経路133から水管154、節炭器153、蒸発器151を経由し石炭ガス化炉蒸気ドラム152に至る経路、および石炭ガス化炉蒸気ドラム152から過熱器入口管134を経由し蒸気タービン109へ至る経路上のガス領域を有する部分に供給しても良い。
【符号の説明】
【0046】
100 石炭ガス化複合発電プラント(ガス化発電プラント)
101 石炭ガス化炉(ガス化炉)
102 石炭ガス化炉圧力容器
103 石炭ガス化炉循環水ポンプ
104 脱塵装置
105 脱硫装置
106 ガスタービン
107 排熱回収ボイラ(熱交換器)
108 煙突
109 蒸気タービン
110 空気分離装置
111 復水器
112 低圧給水ポンプ
113 高圧給水ポンプ
131 缶水循環路(流体流通路)
132 節炭器循環経路
133 蒸発器循環経路
134 過熱器入口管
135 ウォーミング給水(加熱流体)
136 ガス供給経路
151 蒸発器
152 石炭ガス化炉蒸気ドラム
153 節炭器
154 水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内と熱交換する流体が流通する流体流通路を有し、燃料をガス化して生成ガスを発生するガス化炉と、
該ガス化炉によって発生した生成ガスから不純物を取り除くガス精製設備と、
該ガス精製設備により精製されたガスによって駆動されるガスタービンと、
該ガスタービンから導出された排気により流体を加熱する熱交換器と、を備え、
前記ガス化炉を暖機する際には、加圧気体によって加圧された流体が導かれる前記流体流通路へと前記熱交換器により加熱された流体が供給されるガス化発電プラント。
【請求項2】
前記加圧された流体は、前記加熱された流体の飽和圧力以上に加圧されることを特徴とする請求項1に記載のガス化発電プラント。
【請求項3】
前記流体流通路は、流体領域とガス領域とを有し、
前記加圧気体は、前記ガス領域に供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス化発電プラント。
【請求項4】
前記加圧気体は、非凝縮性気体であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のガス化発電プラント。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241781(P2011−241781A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116199(P2010−116199)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)