説明

ガス化装置

【課題】触媒粒子の消費量を格段に低減可能なガス化装置を提供する。
【解決手段】本発明のガス化装置1は、流動媒体粒子P2、流動媒体粒子P2から供給される熱により有機ガスG2とチャーP3とに熱分解する有機物原料P1及び有機物原料P1の熱分解を促進する触媒粒子が貯留されるガス化炉10と、ガス化炉10内に貯留される粒子を流動化して、これら粒子のうちの触媒粒子をガス化炉10内に滞留させるとともにチャーP3及び流動媒体粒子P2の一部をガス化炉10に設けられた排出口から排出する流動化装置11と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バイオマスや石炭等の有機物原料をガス化してメタン等の有機ガスを取り出すガス化装置が提案されている。ガス化装置の一例として、特許文献1に開示されているものが挙げられる。特許文献1のガス化装置は、ガス化炉、及び燃焼炉を備えている。ガス化炉内には、例えば粉末状の有機物原料や、加熱された砂等の流動媒体粒子、ガス化を促進させる触媒粒子等が供給される。ガス化炉には、粒子を流動化させる流動化ガスが供給される。ガス化炉にはオーバーフロー管が取付けられており、オーバーフロー管は燃焼炉に通じている。燃焼炉には排ガス管が取付けられており、排ガス管は分離器を経てガス化炉に通じている。
【0003】
このようなガス化装置において、ガス化炉内に供給された有機物原料は、流動媒体粒子の熱により有機ガスとチャーとに分解される。チャー及び流動媒体粒子は、流動化ガスにより流動化され、オーバーフロー管を経て燃焼炉に運ばれる。燃焼炉に運ばれたチャーが燃焼させられ、燃焼熱により流動媒体粒子が加熱される。加熱された流動媒体粒子は排ガス管、分離器を経てガス化炉に運ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−146036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガス化装置にあっては、有機物原料が触媒効果により効率よく分解され、またガス化に伴って生成されるタールが触媒効果により分解される。したがって、特許文献1の技術によれば、有機ガスが高効率で得られるとともに、タールによる作動不良が防止される。一方で、このようなガス化装置には、次に説明するように触媒粒子を有効利用する観点で改善の余地がある。
【0006】
触媒粒子を用いるガス化装置において触媒効果を十分に発現させるには、ガス化炉内で触媒粒子を十分に流動させて、有機物原料に触媒粒子が接触する確率を高めるとよい。触媒粒子を十分に流動させると、触媒粒子の一部が流動媒体粒子等とともにガス化炉から溢れ出して燃焼炉に運ばれる。燃焼炉内に運ばれた触媒粒子は、酸素雰囲気で加熱されることにより劣化してしまう。触媒粒子は、燃焼炉内から流動媒体粒子とともに排ガス管、分離器を経てガス化炉に帰還する。触媒粒子は、サイクロン等の分離器で粉砕されて微細化される。微細化された触媒粒子は、微細化前よりもガス化炉内での流動性が高くなり、燃焼炉に運ばれやすくなる。触媒粒子が循環を繰り返すと、触媒粒子の触媒能が劣化により低下することや微細化された触媒粒子が排ガスとともに排出されること等により、触媒粒子の実質的な量が減少してしまう。
【0007】
このように従来のガス化装置にあっては、本来ならば反応により消費されないはずの触媒粒子が、無視できないほど消費されてしまう課題がある。本発明は、前記事情に鑑み成されたものであって、触媒粒子の消費量を格段に低減可能なガス化装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガス化装置は、流動媒体粒子、該流動媒体粒子から供給される熱により有機ガスとチャーとに熱分解する有機物原料及び該有機物原料の熱分解を促進する触媒粒子が貯留されるガス化炉と、前記ガス化炉内に貯留される粒子を流動化して、該粒子のうちの前記触媒粒子を前記ガス化炉内に滞留させるとともに前記チャー及び前記流動媒体粒子の一部を前記ガス化炉に設けられた排出口から排出する流動化装置と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、前記流動化装置は、前記粒子を流動化させる流動化ガスを前記ガス化炉内に供給するガス供給装置を含み、前記触媒粒子の前記流動化ガスに対する追従性が、前記流動媒体粒子の前記流動化ガスに対する追従性よりも小さく設定されるとともに、前記ガス化炉内の前記排出口の近傍に供給される前記流動化ガスの線速度が、前記ガス炉内に供給される前記流動化ガスの線速度の平均値未満に設定されるとよい。
【0010】
また、前記排出口の近傍に供給される前記流動化ガスの線速度が、前記触媒粒子の粒径及び密度により定まる触媒粒子の流動化下限速度未満に設定されるとよい。
【0011】
また、前記排出口の近傍を除いた前記ガス化炉内の少なくとも一部に供給される前記流動化ガスの線速度が、前記触媒粒子の粒径及び密度により定まる触媒粒子の流動化下限速度以上に設定されることが好ましい。
【0012】
また、前記ガス化炉内の底面における少なくとも前記排出口の近傍の面が、前記排出口に向うにつれて鉛直方向上方に向かう傾斜面になっている構成にしてもよい。
【0013】
また、前記排出口の近傍における前記ガス化炉の底部に設けられた回収口と、前記回収口に流入した前記触媒粒子を前記ガス化炉内に循環させる循環装置と、を有する構成にしてもよい。
【0014】
また、前記ガス化炉内に供給される前記流動化ガスの線速度の平均値が、前記流動媒体粒子の粒径及び密度により定まる流動媒体粒子の流動化下限速度の3倍以上12倍以下に設定されることが好ましい。
【0015】
また、前記排出口から排出された前記チャーを燃焼させて前記流動媒体粒子を加熱する燃焼炉と、前記燃焼炉内で加熱された前記流動媒体粒子を前記ガス化炉内に移送する移送装置と、を有する構成にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
前記の本発明のガス化装置において、ガス化炉に貯留された有機物原料は、触媒粒子とともに流動化されて触媒粒子と混合される。有機物原料が流動媒体粒子から供給される熱により熱分解して、有機ガスとチャーとが生成される。触媒粒子により有機物原料の熱分解が促進されるので、有機ガスが効率よく生成される。流動媒体粒子、生成されたチャー、触媒粒子の一部は排出口から排出されて取り出される。流動化装置が、ガス化炉内に貯留される粒子のうちの触媒粒子を選択的にガス化炉内に滞留させるので、触媒粒子の消費量を格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施形態のガス化装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】ガス化炉の(a)は斜視図、(b)はA−A’線矢視図である。
【図3】流動化下限速度の説明図である。
【図4】変形例1におけるガス化炉の(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図5】変形例2におけるガス化炉の(a)は斜視図、(b)はB−B’線矢視図である。
【図6】変形例3におけるガス化炉の(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図7】変形例4におけるガス化炉の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。また、実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0019】
図1は、本発明に係る一実施形態のガス化装置1の概略構成を示す模式図である。図1に示すようにガス化装置1は、ガス化炉10、流動化装置11、燃焼炉12を備えている。ガス化炉10には、流動化装置11、原料供給管13、流動媒体供給管14、ガス回収装置15、オーバーフロー管16が接続されている。燃焼炉12は、オーバーフロー管16、移送管17と接続されている。移送管17は、分離器18と接続されており、分離器18は、流動媒体供給管14と接続されている。
【0020】
ガス化装置1は、概略すると以下のように動作する。原料供給管13を通してガス化炉10内に、有機物原料P1が供給される。流動媒体供給管14を通してガス化炉10内に、加熱された流動媒体粒子P2が供給される。ガス化炉10内には、有機物原料P1の熱分解を促進する触媒粒子が貯留されている。流動化装置11は、ガス化炉10内に流動化ガスG1を供給する。ガス化炉10内の有機物原料P1や流動媒体粒子P2、触媒粒子は、流動化ガスG1により流動化されて流動層Fを形成する。
【0021】
有機物原料P1は、流動媒体粒子P2から受ける熱により、有機ガスを含んだ生成ガスG2とチャーP3とに熱分離する。生成ガスG2は、流動化ガスG1とともにガス回収装置15により回収され、外部に取り出される。チャーP3及び流動媒体粒子P2は、オーバーフロー管16を通して燃焼炉12に運ばれる。触媒粒子は、ガス化炉10内に滞留するようになっている。
【0022】
チャーP3は燃焼炉12内で燃焼し、流動媒体粒子P2は燃焼により生じた熱により加熱される。燃焼により生じた排ガスG3や未燃焼のチャーP3、加熱された流動媒体粒子P2は、移送管17を通して分離器18に運ばれる。未燃焼のチャーP3及び流動媒体粒子P2は、分離器18により排ガスG3等から分離され、流動媒体供給管14を通してガス化炉10内に運ばれる。このように、ガス化装置1は、流動媒体粒子P2を循環させて有機物原料P1を熱分解して生成ガスG2を取り出すとともに、生成されたチャーP3を利用して流動媒体粒子P2を再加熱するようになっている。以下、ガス化装置1の構成要素について説明する。
【0023】
原料供給管13は、例えばスクリューフィーダ等を含んで構成され、ガス化装置1の外部から供給される有機物原料P1をガス化炉10内に運搬する。
流動媒体供給管14は、ガス化炉10の概略鉛直上方に向かって延びている。流動媒体供給管14の一端はガス化炉10内に通じており、流動媒体供給管14の他端はガス化炉10の鉛直上方に設置された分離器18に通じている。分離器18にて分離された流動媒体粒子P2等は、流動媒体供給管14内を重力により降下してガス化炉10内に運ばれる。
【0024】
ガス回収装置15は、排気管151、回収分離器152、及びガス取出管153を含んでいる。排気管151の一端はガス化炉10内に通じており、排気管151の他端は回収分離器152に通じている。回収分離器152は、排気管151を通して回収された生成ガスG2等に同伴する粉塵等の不要物P4を遠心分離等により分離する。生成ガスG2に含まれる有機ガス等は、ガス取出管153を通してガス化装置1の外部に取り出され、例えばガスタービン等に供給される。
【0025】
オーバーフロー管16は、ガス化炉10の概略鉛直下方に向かって延びている。オーバーフロー管16の一端は、ガス化炉10内に通じており、オーバーフロー管16の他端は燃焼炉12内に通じている。ガス化炉10内において流動層Fの上層を構成する流動媒体粒子P2及びチャーP3は、オーバーフロー管16内に溢れ出し、オーバーフロー管16内を重力により降下して燃焼炉12内に運ばれる。
【0026】
燃焼炉12は、チャーP3を燃焼させ、燃焼により生じた熱を利用して流動媒体粒子P2を例えば800℃程度に加熱する。燃焼炉12には、風箱121、補助燃料供給管122、熱交換器123、及び移送管17が接続されている。風箱121には、空気供給管124が接続されている。空気供給管124を通して空気G4が供給され、空気G4は風箱121を介して燃焼炉12内に供給される。チャーP3の燃焼により生じる熱量が、流動媒体粒子P2を所定の温度まで加熱するのに必要な熱量に対して不足する場合等に、燃焼炉12に補助燃料供給管122を通して補助燃料L1が供給される。燃焼炉12内の余分な熱は、熱交換器123により取り出され、例えば流動化ガスG1の生成や加熱に用いられる。移送管17の一端は、燃焼炉12内に通じており、移送管17の他端は分離器18に通じている。燃焼炉12内で加熱された流動媒体粒子P2や未燃焼のチャーP3は、空気供給管124から供給された空気G4や燃焼による排ガスG3等によって移送管17内を移送されて分離器18まで運ばれる。
【0027】
分離器18は、例えばサイクロン等の固形分離器により構成され、流動媒体粒子P2や未燃焼のチャーP3等の固形分を、排ガスG3や空気G4等から分離する。分離器18は、外筒181、内筒182を含んでおり、排ガスG3や空気G4は内筒182を通してガス化装置1の外部に排気される。外筒181は、流動媒体供給管14と通じている。流動媒体粒子P2や未燃焼のチャーP3は、外筒181から流動媒体供給管14へ運ばれる。
【0028】
図2(a)は、ガス化炉10の構成を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、ガス化炉10のA−A’線矢視断面図である。図2(b)には、ガス化炉10の動作状態を模式的に図示している。
【0029】
図2(a)に示すように、ガス化炉10は、概略箱状のものである。ガス化炉10の壁面のうち、図示Y方向において対向する面の一方の面に原料供給口101と流動媒体供給口102とが設けられており、他方の面に排出口104が設けられている。原料供給口101に原料供給管13が接続されており、流動媒体供給口102に流動媒体供給管14が接続されている。排出口104にオーバーフロー管16が接続されている。ガス化炉10の天井面にガス取出口103が設けられている。ガス取出口103に排気管151が接続されている。
【0030】
本実施形態では、ガス化炉10の底面105が鉛直方向に対して傾斜している。底面105は、原料供給口101から排出口104に向うにつれて鉛直上方(図示Z方向)に向かう傾斜面になっている。底面105を含んだガス化炉10の底部は、焼結金網や多孔質板等により構成されている。底面105は、流動化ガスG1を通すとともに、ガス化炉10内の粒子をほとんど通さないようになっている。
【0031】
ガス化炉10の底部には、流動化装置11が設けられている。本実施形態の流動化装置11は、ガス供給装置110、ガス室111a〜111d、ガス管112a〜112dを含んでいる。ガス供給装置110は、流動化ガスG1として例えば水蒸気を供給するものである。ガス室111a〜111dは互いに独立している。原料供給口101から排出口104に向かって、ガス室111a、ガス室111b、ガス室111c、ガス室111dがこの順に並んでいる。すなわち、ガス室111aが最も原料供給口101側に配置されており、ガス室111dが最も排出口104側に配置されている。
【0032】
ガス室111a〜111dの天井面は、ガス化炉10の底部と共通になっている。ガス室111a〜111dには、それぞれガス管112a〜112dが接続されている。ここでは、ガス管112a〜112dがいずれもガス供給装置110に接続されている。ガス管112a〜112dには、図示略の電磁バルブ等が設けられており、ガス管112a〜112d内のガス圧を、互いに独立して調整可能になっている。なお、ガス供給装置110は、ガス室111a〜111dで共通に設けられていてもよいしで、ガス室111a〜111dごとに設けられていてもよい。
【0033】
ガス管112a〜112d内のガス圧を調整することにより、ガス管112a〜112d内を通る流動化ガスG1の線速度をガス管112a〜112dごとに調整することが可能になっている。ガス管112a〜112d内を通る流動化ガスG1の線速度は、それぞれVa、Vb、Vc、Vdに設定されている。線速度Va〜Vdのうち、最も原料供給口101側に配置されたガス室111aに供給される流動化ガスG1の線速度Vaが最も大きく設定されており、以下、Vb、Vcの順に小さくなり、最も排出口104に近いガス室111dに供給される流動化ガスG1の線速度Vdが最も小さく設定されている。流動化ガスG1の線速度の設定方法については後述する。
【0034】
図2(b)に示すように、ガス化炉10内には触媒粒子P5が貯留されている。触媒粒子P5は、有機物原料P1の材質に応じて適宜選択される材質のものであり、例えばドロマイトや石灰等のカルシウム系触媒の粒子、酸化鉄系触媒の粒子、ニッケル系触媒の粒子である。触媒粒子P5の流動化ガスG1に対する追従性は、流動媒体粒子P2の流動化ガスG1に対する追従性よりも低く設定されている。
【0035】
各種粒子の流動化ガスに対する追従性は、流動化ガスと粒子との速度差(ドリフト速度)により評価可能である。所定のガス、粒子に対するドリフト速度は、実験や数値シミュレーション等により求めることができる。鉛直下方から上方に向けて噴出された流動化ガスについては、流動化ガスから粒子が受ける力が粒子に働く重力に対して大きくなるほど、粒子が鉛直上方に向かう速度が大きくなりドリフト速度が小さくなるので、粒子の流動化ガスに対する追従性が高くなる。一般に追従性は、流動化ガスと粒子との密度差が大きくなるほど、また粒子の粒径が大きくなるほど低下する。したがって、例えば流動媒体粒子の材質と粒径を決定し、触媒粒子の材質を決定すれば、触媒粒子の追従性が流動媒体粒子よりも低くなるように触媒粒子の粒径を決定することができる。
【0036】
次に、流動化ガスの線速度の設定方法について説明する。図3は、流動化ガスの流速変化に対する粉状層の状態変化を示す説明図である。図3に示すグラフにおいて縦軸は、容器内に粒子からなる粉状層を形成した状態で、容器底部から流動化ガスを噴出した場合の粉状層における圧損を示し、横軸は流動化ガスの線速度を示している。
【0037】
図3に示すように、流動化ガスの線速度が0から増加するにつれて圧損が増加する。この状態で、粒子はほとんど流動せずに、粉状層は静止層として振舞う。流動化ガスの線速度が閾値を超えると圧損が低下する。これは、粒子が流動化され、粒子間を流動化ガスが通りやすくなるためである。すなわち、圧損が上昇から下降に転じる線速度が流動化下限速度であり、線速度が流動化下限速度以上であれば粉状層が流動層として振舞う。流動化下限速度を超えて線速度を増加させると、圧損は低下した後にほぼ一定になる。この状態は、粉状層は流動化ガスの気泡を含んで流体と同様に振舞っており、この状態はバブリングと呼ばれる。さらに線速度を増加させると、粒子が固まりとなって容器内を浮き上がり崩れる挙動が繰り返される(スラッギング)。バブリング状態に管理することにより、スラッギング状態よりも圧損が少なくなり、かつ状態安定するので、流動層を良好に制御することができる。
【0038】
前記の流動化下限速度は、流動化ガスの線速度と、粒子径、流動化ガスと粒子との密度差等により定まり、実験や数値シミュレーション等により求められる。以下、具体的な数値例を用いて説明する。流動媒体粒子として珪砂(粒径300μm、密度2700kg/m)を採用し、流動化ガスとして水蒸気を採用した場合に、流動媒体粒子の流動化下限速度は0.029m/sになる。前記のように流動層を安定に構成する観点でバブリングにするには、線速度を流動化下限速度の例えば3倍以上12倍以下にするとよい。一方、触媒粒子としてγアルミナ(粒径500μm、密度3500kg/m)を採用すると、触媒粒子の流動化下限速度は、0.106m/sになる。
【0039】
本実施形態では、排出口104近傍における流動化ガスG1の線速度が、流動媒体粒子P2の流動化下限速度以上、触媒粒子の流動化下限未満の範囲内に設定されている。また、排出口104近傍を除いた部分の流動化ガスG1の線速度は、触媒粒子の流動化下限以上に設定されている。例えば、前記の数値例を用いると、排出口104近傍における流動化ガスG1の線速度は、0.029m/s以上0.106m/s未満の範囲内に設定され、特に流動層を良好に制御する観点では0.087m/s以上0.106m/s未満の範囲内に設定される。また、排出口104近傍を除いた部分の線速度は触媒粒子P5を良好に流動化する観点で、触媒粒子P5の流動化下限速度の3倍以上(0.318m/s以上)に設定される。なお、γアルミナの粒径を450μmに変更すると、触媒粒子の流動化下限速度が0.087m/sになり、流動媒体粒子の流動化速度の3倍とほぼ一致してしまう。このような場合には、流動媒体粒子として粒径がより小さいものを選択すること、流動媒体粒子として密度がより小さいものを選択すること、触媒粒子として粒径がより大きいものを選択すること、触媒粒子として密度がより大きいものを選択すること等により、好適な流動化下限速度の範囲を広げることができる。
【0040】
以上のようなガス化炉10において、貯留された触媒粒子P5は、流動化ガスG1により流動化されて有機物原料P1、流動媒体粒子P2と混合される。したがって、有機物原料P1が触媒粒子P5と接触する確率が高められ、有機物原料P1が効率よく熱分解する。流動媒体粒子P2、熱分解により生成されたチャーP3、及び触媒粒子P5は、原料供給口101から排出口104に向かって流動する。排出口104近傍における流動化ガスG1の線速度が、流動媒体粒子P2の流動化下限速度以上になっているので、流動媒体粒子P2及びチャーP3は流動性を保持したまま排出口104に至りオーバーフロー管16に流入する。一方、排出口104近傍における流動化ガスG1の線速度が、触媒粒子P5の流動化下限速度未満になっているので、排出口104近傍で触媒粒子P5は、流動性が低下して沈降する。沈降した触媒粒子P5は、ガス化炉10の底面が傾斜面になっているので、傾斜面に沿って排出口104側から原料供給口101に向かって重力により移動する。原料供給口101側に移動した触媒粒子P5は、流動化ガスG1により再度流動化されて、有機物原料P1等と混合される。
このように本実施形態のガス化装置1にあっては、触媒粒子P5の流れP5fが循環流となり、触媒粒子P5がガス化炉10内に滞留するので、触媒粒子P5の消費量が格段に低減される。
【0041】
[変形例]
次に、前記実施形態のガス化装置に対して、ガス化炉、流動化装置を変形した変形例1〜4について説明する。変形例1〜4においてガス化炉と流動化装置とを除いた部分の構成については、前記実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0042】
図4(a)は、変形例1のガス化炉20、流動化装置21を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、変形例1のガス化炉20、流動化装置21をZ方向からみた平面図である。図4(a)、(b)に示すように、ガス化炉20は、底面の一部のみが傾斜面になっている点で前記実施形態と異なる。
【0043】
ガス化炉20の内壁面には、原料供給口201、流動媒体供給口202、ガス回収口203、排出口204が設けられている。排出口204は、原料供給口201及び流動媒体供給口202と対向する内壁面に設けられている。この内壁面において排出口204は、X負方向に偏った位置に配置されている。原料供給口201及び流動媒体供給口202は、排出口204と概略対角方向、すなわちX正方向に偏った位置に配置されている
【0044】
排出口204直下の底面は、Y方向に向うにつれて鉛直下方(Z負方向)に向かう傾斜面になっている。排出口204が配置されている内壁面のX正方向の部分直下における底面は、水平面になっている。ここでは、傾斜面の排出口204側(Y負方向側)の端における鉛直方向の高さは、水平面の鉛直方向の高さと略一致している。傾斜面の鉛直下方には、ガス室211a〜211dが設けられている。ガス室211a〜211dのうち、ガス室211aは原料供給口201に近い位置に配置されており、原料供給口201から離れるY負方向にガス室211b、ガス室211c、ガス室211dがこの順に並んでいる。水平面の鉛直下方には、ガス室211eが配置されている。
【0045】
ガス室211a〜211eは、互いに独立している。ガス室211a〜211e内には、前記実施形態と同様のガス供給装置から流動化ガスが供給される。排出口204近傍に配置されたガス室211dを通してガス化炉20に供給される流動化ガスの線速度は、流動媒体粒子の流動化下限速度以上、触媒粒子の流動化下限未満の範囲内に設定されている。ここでは、ガス化炉20に供給される流動化ガスのうち、ガス室211dを通して供給される流動化ガスの線速度が最も小さく、次いでガス室211c、ガス室211b、ガス室211aの順に線速度が大きくなっている。
【0046】
図4(b)に示すように、原料供給口201から供給された有機物原料P1は、触媒粒子P5、及び流動媒体供給口202から供給された流動媒体粒子P2と混合され、Y負方向に流動しつつ熱分解する。流動媒体粒子P2と熱分解により生成されたチャーP3は、排出口204からオーバーフロー管16に流入する。排出口204近傍に到達した触媒粒子P5は、流動性が低下して沈降し、傾斜面を伝って原料供給口201側に移動する。このように変形例1においても触媒粒子P5がガス化炉20内に滞留するので、触媒粒子P5の消費量が格段に低減される。
【0047】
図5(a)は、変形例2のガス化炉30、流動化装置31を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図5(b)のB−B’線矢視断面図である。図5(a)、(b)に示すように、ガス化炉30は、底面の一部のみが傾斜面になっており、傾斜面がX方向の全幅にわたって延在している点で変形例1と異なる。
【0048】
ガス化炉30の内壁面には、前記実施形態と同様の配置で、原料供給口301、流動媒体供給口302、ガス回収口303、排出口304が設けられている。排出口304直下の底面は、Y方向に向うにつれて鉛直下方(Z負方向)に向かう傾斜面306になっている。この傾斜面306は、Y方向における排出口304側に配置されており、傾斜面306のY方向は水平面305になっている。
【0049】
水平面305の鉛直下方にはガス室311aが設けられており、傾斜面306の鉛直下方には、ガス室311bが設けられている。ガス室311a、311bは、互いに独立している。ガス室311aには、前記実施形態と同様のガス供給装置310からガス管312aを介して流動化ガスG1が供給される。ガス室311bには、ガス管312bを介して流動化ガスG1が供給される。排出口304近傍に配置されたガス室311bを通してガス化炉30に供給される流動化ガスG1の線速度は、流動媒体粒子の流動化下限速度以上、触媒粒子の流動化下限未満の範囲内に設定されている。ガス室311aを通してガス化炉30に供給される流動化ガスG1の線速度は、ガス室311bよりも大きくなっている。
【0050】
図5(b)に示すように、原料供給口301から供給された有機物原料P1は、流動媒体供給口302から供給された流動媒体粒子P2、及び触媒粒子P5と混合され、Y負方向に流動しつつ熱分解する。流動媒体粒子P2と熱分解により生成されたチャーP3は、排出口304からオーバーフロー管16に流入する。排出口304近傍に到達した触媒粒子P5は、流動性が低下して沈降し、傾斜面306を伝って原料供給口301側に移動する。このように変形例2においても触媒粒子P5がガス化炉30内に滞留するので、触媒粒子P5の消費量が格段に低減される。
【0051】
図6(a)は、変形例3のガス化炉40、流動化装置41を模式的に示す斜視図であり、図6(b)は、変形例3のガス化炉40、流動化装置41をZ方向からみた平面図である。図6(a)、(b)に示すように、ガス化炉40は、底面の一部のみが傾斜面になっており、傾斜面がX方向及びY方向において傾斜している点で変形例1、2と異なる。
【0052】
ガス化炉40の内壁面には、変形例2と同様の配置で、原料供給口401、流動媒体供給口402、排出口404が設けられている。また、変形例2と同様に、ガス化炉40のガス取出口403は、ガス化炉40の天井面の略中央に配置されている。排出口304直下の底面は、X方向、Y方向の各々に向うにつれて鉛直下方(Z負方向)に向かう傾斜面406になっている。ここでは、傾斜面406が箱状のガス化炉40の角部のみに配置されており、傾斜面406を除いたガス化炉40の底面は、水平面405になっている。
【0053】
水平面405の鉛直下方にはガス室411aが設けられており、傾斜面406の鉛直下方には、ガス室411bが設けられている。ガス室411a、411bは、互いに独立している。ガス室411a、411bには、前記実施形態と同様のガス供給装置から流動化ガスG1が供給される。排出口404近傍に配置されたガス室411bを通してガス化炉40に供給される流動化ガスG1の線速度は、流動媒体粒子の流動化下限速度以上、触媒粒子の流動化下限未満の範囲内に設定されている。ガス室411aを通してガス化炉40に供給される流動化ガスG1の線速度は、ガス室411bよりも大きくなっている。
【0054】
図6(b)に示すように、流動媒体粒子P2と熱分解により生成されたチャーP3は、排出口404からオーバーフロー管16に流入する。排出口404近傍に到達した触媒粒子P5は、流動性が低下することにより沈降し、傾斜面406を伝って原料供給口401側に移動する。このように変形例3においても触媒粒子P5がガス化炉40内に滞留するので、触媒粒子P5の消費量が格段に低減される。
【0055】
図7は、変形例4のガス化炉50、流動化装置51を模式的に示す断面図である。図7に示すようにガス化炉50は、底面が水平面になっている点、底部に触媒粒子の回収口が設けられている点で、前記実施形態、変形例1〜3と異なる。
【0056】
ガス化炉50の内壁面には、前記実施形態と同様の配置で、原料供給口501、流動媒体供給口502、ガス回収口503、排出口504が設けられている。ガス化炉50の底面は、排出口504近傍を除いて水平面505になっている。水平面505の鉛直下方には、ガス室511aが設けられている。ガス室511aには、前記実施形態と同様のガス供給装置510からガス管512aを介して流動化ガスG1が供給される。排出口504近傍におけるガス化炉50の底部には、回収口506が設けられている。回収口506の鉛直下方には、ガス室511bが設けられている。ガス室511bには、ガス供給装置510からガス管512bを介して、ガス室511aと独立して流動化ガスG1が供給される。ガス室511aから回収口506を通してガス化炉50に供給される流動化ガスG1の線速度は、流動媒体粒子の流動化下限速度以上、触媒粒子の流動化下限未満の範囲内に設定されている。回収口506は、触媒回収管513と通じている。触媒回収管513内には、ガス室511bから流動化ガスG1が供給される。ここでは、触媒回収管513が、流動媒体供給管14と接続されている。
【0057】
原料供給口501から供給された有機物原料P1は、流動媒体供給口502から供給された流動媒体粒子P2、及び触媒粒子P5と混合され、Y負方向に流動しつつ熱分解する。流動媒体粒子P2と熱分解により生成されたチャーP3は、排出口504からオーバーフロー管16に流入する。排出口504近傍に到達した触媒粒子P5は、流動性が低下することにより、回収口506内に沈降する。回収口506内に沈降した触媒粒子P5は、ガス室511bから供給される流動化ガスにより流動化され、触媒回収管513内を通して流動媒体供給管14まで運ばれる。触媒粒子P5は、流動媒体供給管14を通してガス化炉10内に戻される。このように変形例4において、流動媒体供給管14の一部と、回収口506、触媒回収管513が循環経路を構成しており、循環経路と循環経路内に流動化ガスG1を供給するガス室511b、ガス供給装置510により循環装置が構成されている。これにより、触媒粒子P5の流れP5fが循環流となり、触媒粒子P5がガス化炉50内に滞留するので、触媒粒子P5の消費量が格段に低減される。
【符号の説明】
【0058】
1・・・ガス化装置、10・・・ガス化炉、11・・・流動化装置、12・・・燃焼炉、13・・・原料供給管、14・・・流動媒体供給管、15・・・ガス回収装置、16・・・オーバーフロー管、17・・・移送管、18・・・分離器、P1・・・有機物原料、P2・・・流動媒体粒子、P5・・・触媒粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体粒子、該流動媒体粒子から供給される熱により有機ガスとチャーとに熱分解する有機物原料及び該有機物原料の熱分解を促進する触媒粒子が貯留されるガス化炉と、
前記ガス化炉内に貯留される粒子を流動化して、該粒子のうちの前記触媒粒子を前記ガス化炉内に滞留させるとともに前記チャー及び前記流動媒体粒子の一部を前記ガス化炉に設けられた排出口から排出する流動化装置と、を備えていることを特徴とするガス化装置。
【請求項2】
前記流動化装置は、前記粒子を流動化させる流動化ガスを前記ガス化炉内に供給するガス供給装置を含み、
前記触媒粒子の前記流動化ガスに対する追従性が、前記流動媒体粒子の前記流動化ガスに対する追従性よりも小さく設定されるとともに、前記ガス化炉内の前記排出口の近傍に供給される前記流動化ガスの線速度が、前記ガス炉内に供給される前記流動化ガスの線速度の平均値未満に設定されることを特徴とする請求項1に記載のガス化装置。
【請求項3】
前記排出口の近傍に供給される前記流動化ガスの線速度が、前記触媒粒子の粒径及び密度により定まる触媒粒子の流動化下限速度未満に設定されることを特徴とする請求項2に記載のガス化装置。
【請求項4】
前記排出口の近傍を除いた前記ガス化炉内の少なくとも一部に供給される前記流動化ガスの線速度が、前記触媒粒子の粒径及び密度により定まる触媒粒子の流動化下限速度以上に設定されることを特徴とする請求項2又は3に記載のガス化装置。
【請求項5】
前記ガス化炉内の底面における少なくとも前記排出口の近傍の面が、前記排出口に向うにつれて鉛直方向上方に向かう傾斜面になっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のガス化装置。
【請求項6】
前記排出口の近傍における前記ガス化炉の底部に設けられた回収口と、
前記回収口に流入した前記触媒粒子を前記ガス化炉内に循環させる循環装置と、を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のガス化装置。
【請求項7】
前記ガス化炉内に供給される前記流動化ガスの線速度の平均値が、前記流動媒体粒子の粒径及び密度により定まる流動媒体粒子の流動化下限速度の3倍以上12倍以下に設定されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のガス化装置。
【請求項8】
前記排出口にから排出された前記チャーを燃焼させて前記流動媒体粒子を加熱する燃焼炉と、
前記燃焼炉内で加熱された前記流動媒体粒子を前記ガス化炉内に移送する移送装置と、を有することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載のガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−275369(P2010−275369A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126891(P2009−126891)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)