説明

ガス化設備の二酸化炭素回収方法及び装置

【課題】ガス化ガスを生成する際に排出される燃焼排ガス中に窒素や酸素が含まれることを防止して、二酸化炭素吸収の特別なプロセス等を用いることなく、二酸化炭素を確実に回収し得るガス化設備の二酸化炭素回収方法及び装置を提供する。
【解決手段】燃焼炉5へ燃焼炉流動用ガスとして蒸気又は二酸化炭素を供給する燃焼炉流動用ガス供給手段9と、前記燃焼炉5へ金属粒子Mを酸化させた金属酸化物MOを供給する金属酸化炉10と、該金属酸化炉10から燃焼炉5へ供給される金属酸化物MO中の酸素にて可燃性固形分の燃焼を行わせることにより発生した二酸化炭素及び蒸気を含む燃焼排ガスから流動媒体を分離する媒体分離手段としてのサイクロン8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化設備の二酸化炭素回収方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料として、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の原料を用い、ガス化ガスを生成するガス化設備の開発が進められている。
【0003】
図3は開発が進められているガス化設備の一例を示すものであって、該ガス化設備は、前記原料が投入され且つ蒸気又は空気又は酸素等のガス化炉流動用ガスにより流動媒体(硅砂等)の流動層1を形成して前記原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉2と、該ガス化炉2で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に連結管3を介して導入され且つ空気又は酸素等の燃焼炉流動用ガスにより流動層4を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行う燃焼炉5と、該燃焼炉5の燃焼排ガスを抜き出す排ガス配管6途中に設けられ且つ前記燃焼排ガスから流動媒体を分離し該分離した流動媒体をダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に供給する媒体分離手段としてのサイクロン8とを備えてなる構成を有している。
【0004】
前述の如きガス化設備においては、通常運転時、ガス化炉2において、ガス化炉流動用ガスにより流動層1が形成されており、ここに石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の原料を投入すると、該原料は水蒸気ガス化してガス化され、ガス化ガスと可燃性固形分とが生成され、前記ガス化炉2で生成された可燃性固形分は流動媒体と共に連結管3を介して、前記燃焼炉流動用ガスにより流動層4が形成されている燃焼炉5へ導入され、該可燃性固形分の燃焼が行われ、該燃焼炉5からの燃焼排ガスは、排ガス配管6を介してサイクロン8へ導入され、該サイクロン8において、前記燃焼排ガスから流動媒体が分離され、該分離された流動媒体はダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に戻され、循環される。
【0005】
ここで、前記燃焼炉5で可燃性固形分の燃焼に伴い高温になった流動媒体が燃焼排ガスと共に排ガス配管6を通り前記サイクロン8で分離され、前記ダウンカマー7を介してガス化炉2に供給されることにより、ガス化炉2の高温が保持されると共に、原料の熱分解によって生成したガスや、その残渣原料が蒸気と反応することによって、水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]が起こり、H2やCO等の可燃性のガス化ガスが生成される。
【0006】
前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスは、図示していない媒体分離装置で煤塵等が分離除去された後、化学プラント或いはガスタービン等に供給される一方、前記サイクロン8で流動媒体が分離された燃焼排ガスは、排ガス処理設備へ送られる。
【0007】
因みに、前記ガス化設備における通常運転中の熱不足時、即ち前記ガス化炉2において原料のガス化のための充分な熱が得られないような場合には、前記ガス化炉2へ供給される原料と同じ石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料が補助的に前記燃焼炉5へ投入されて燃焼が行われ、不足する熱を補うようになっている。又、前記ガス化設備における通常運転に到る前段階での循環予熱運転時には、前記ガス化炉2への原料の投入は行わずに、該ガス化炉2の底部から蒸気の代わりに流動用の空気を供給した状態で、前記石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料が予熱用として前記燃焼炉5へ投入されて燃焼が行われ、該燃焼炉5での燃料の燃焼に伴い高温になった流動媒体が燃焼排ガスと共に排ガス配管6を通り前記サイクロン8で分離され、前記ダウンカマー7を介してガス化炉2に供給されることにより、ガス化設備の循環予熱が行われるようになっている。
【0008】
尚、前述の如きガス化炉と燃焼炉とを備えたガス化設備と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−41959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年、地球温暖化の観点より二酸化炭素の削減が求められているが、図3に示されるようなガス化設備では、前記燃焼炉5からサイクロン8を介して窒素、酸素、二酸化炭素、蒸気等を含む燃焼排ガスが排出されるため、排ガス処理設備において燃焼排ガスから二酸化炭素を選択的に分離・回収し、地中等に貯留するための技術開発が進められている。
【0011】
前記二酸化炭素の分離・回収技術の一つに、吸収液としてアルカノールアミン水溶液等のアミン系の吸収液を利用するアミン法と呼ばれる化学吸収法がある。該アミン法における前記吸収液は、アミノ基を分子構造の中に有しており、一般にアミンと呼ばれ、40〜50[℃]の温度でアミノ基と二酸化炭素が結合反応を起こし、アミン炭酸塩を形成し、該アミン炭酸塩を加熱(110〜130[℃])すると、二酸化炭素は吸収液から解脱反応し、放散される。そして、前記アミン法においては、二酸化炭素が低圧、低濃度でも高い除去率が得られ、火力発電所のような大規模処理に向いている。しかしながら、吸収液の再生に多大なエネルギーを要することが課題となっていた。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ガス化ガスを生成する際に排出される燃焼排ガス中に窒素や酸素が含まれることを防止して、二酸化炭素吸収の特別なプロセス等を用いることなく、二酸化炭素を確実に回収し得るガス化設備の二酸化炭素回収方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ガス化炉流動用ガスにより流動媒体の流動層を形成して投入される原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ燃焼炉流動用ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行いつつ該燃焼熱を前記ガス化炉に供給する燃焼炉とを備えたガス化設備の二酸化炭素回収方法であって、
前記燃焼炉へ供給される燃焼炉流動用ガスとして蒸気又は二酸化炭素を用いると共に、前記燃焼炉へ金属酸化物を供給し、該金属酸化物中の酸素にて前記可燃性固形分の燃焼を行わせることにより、二酸化炭素及び蒸気を含む燃焼排ガスを回収することを特徴とするガス化設備の二酸化炭素回収方法にかかるものである。
【0014】
又、本発明は、ガス化炉流動用ガスにより流動媒体の流動層を形成して投入される原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ燃焼炉流動用ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行いつつ該燃焼熱を前記ガス化炉に供給する燃焼炉とを備えたガス化設備の二酸化炭素回収装置であって、
前記燃焼炉へ燃焼炉流動用ガスとして蒸気又は二酸化炭素を供給する燃焼炉流動用ガス供給手段と、
前記燃焼炉へ金属粒子を酸化させた金属酸化物を供給する金属酸化炉と、
該金属酸化炉から燃焼炉へ供給される金属酸化物中の酸素にて前記可燃性固形分の燃焼を行わせることにより発生した二酸化炭素及び蒸気を含む燃焼排ガスから流動媒体を分離する媒体分離手段と
を備えたことを特徴とするガス化設備の二酸化炭素回収装置にかかるものである。
【0015】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0016】
燃焼炉流動用ガス供給手段から燃焼炉へ燃焼炉流動用ガスとして蒸気又は二酸化炭素を供給すると共に、金属酸化炉から燃焼炉へ金属粒子を酸化させた金属酸化物を供給すると、ガス化炉で生成されて流動媒体と共に燃焼炉へ導入される可燃性固形分が前記金属酸化物中の酸素にて燃焼され、この燃焼により発生した燃焼排ガスから流動媒体を媒体分離手段で分離すれば、該燃焼排ガスには二酸化炭素及び蒸気だけが含まれる形となり、温度を下げれば蒸気は水となるため、二酸化炭素を確実に回収することが可能となる。
【0017】
前記ガス化設備の二酸化炭素回収装置においては、前記流動媒体として前記燃焼炉で還元される金属酸化物の金属粒子を用い、前記媒体分離手段で燃焼排ガスから分離される金属粒子を前記ガス化炉及び金属酸化炉へ導くよう構成することができる。
【0018】
又、前記ガス化設備の二酸化炭素回収装置においては、前記流動媒体として金属粒子より平均粒子径の大きい珪砂を用い、該金属粒子より平均粒子径の大きい珪砂を前記燃焼排ガスから分離して前記ガス化炉へ導く第一サイクロンと、該第一サイクロンで珪砂が分離された燃焼排ガスから金属粒子を分離して前記金属酸化炉へ導く第二サイクロンとを前記媒体分離手段とすることもでき、このようにすると、仮に前記燃焼炉で金属酸化物の還元が充分に行われず、還元し切れていない金属酸化物を含む金属粒子があったとしても、該金属粒子はガス化炉へ導入されないため、ガス化炉において生成されるガス化ガスが前記金属酸化物中の酸素により燃焼してしまうことが避けられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス化設備の二酸化炭素回収方法及び装置によれば、ガス化ガスを生成する際に排出される燃焼排ガス中に窒素や酸素が含まれることを防止して、二酸化炭素吸収の特別なプロセス等を用いることなく、二酸化炭素を確実に回収し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施例を示す全体概要構成図である。
【図2】本発明の第二実施例を示す全体概要構成図である。
【図3】開発が進められているガス化炉と燃焼炉とを備えたガス化設備の一例を示す全体概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の第一実施例であって、図中、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図3に示す従来のものと同様であるが、本第一実施例の特徴とするところは、図1に示す如く、燃焼炉5へ燃焼炉流動用ガスとして蒸気又は二酸化炭素を供給する燃焼炉流動用ガス供給手段9と、前記燃焼炉5へ金属粒子Mを酸化させた金属酸化物MOを供給する金属酸化炉10と、該金属酸化炉10から燃焼炉5へ供給される金属酸化物MO中の酸素にて可燃性固形分の燃焼を行わせることにより発生した二酸化炭素及び蒸気を含む燃焼排ガスから流動媒体を分離する媒体分離手段としてのサイクロン8とを備えた点にある。
【0023】
本第一実施例の場合、前記流動媒体として前記燃焼炉5で還元される金属酸化物MOの金属粒子Mを用い、前記媒体分離手段としてのサイクロン8で燃焼排ガスから分離される金属粒子Mをガス化炉2及び金属酸化炉10へ導くよう構成してあり、このように構成するために、前記サイクロン8の下方に、底部から流動用の蒸気が供給されるループシールボックス11を配置し、該ループシールボックス11のループシール管11aとガス化炉2内へ通じるダウンカマー7とを接続すると共に、前記ループシールボックス11のループシール管11bと金属酸化炉10内へ通じるダウンカマー12とを接続するようにしてある。
【0024】
又、前記金属酸化炉10は、空気等の金属酸化炉流動用ガスにより金属粒子Mの流動層13を形成し、該金属粒子Mの酸化を行って金属酸化物MOを生成し、該金属酸化物MOを連絡管14を介して前記燃焼炉5の下部へ導くようにし、前記金属酸化物MOを生成する際に発生した窒素及び酸素をガス回収設備(図示せず)に回収するようにしてある。
【0025】
更に又、前記金属粒子Mの金属としては、例えば、Ni、Fe、Cu、Co等、或いはこれらの混合物を用い、該金属の粒子構造を保つための担体としてAl23、ZrO2、TiO2、SiO2、MgO、NiAlO4、MgAl24、CoAl24等、或いはこれらの混合物を用い、該担体の表面に前記金属を分散させる形で付着させた金属粒子Mとすることにより、前記金属同士の付着合体による大径化を防止するようにしてある。
【0026】
次に、上記第一実施例の作用を説明する。
【0027】
通常運転時、ガス化炉2において、蒸気又は空気又は酸素等のガス化炉流動用ガスにより流動媒体としての金属粒子Mの流動層1が形成されており、ここに石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の原料を投入すると、該原料は水蒸気ガス化してガス化され、ガス化ガスと可燃性固形分とが生成され、前記ガス化炉2で生成された可燃性固形分は流動媒体としての金属粒子Mと共に連結管3を介して、燃焼炉流動用ガスとしての蒸気又は二酸化炭素により流動層4が形成されている燃焼炉5へ導入される。
【0028】
前記燃焼炉5には、金属酸化炉10で金属粒子Mを酸化させた金属酸化物MOが連絡管14を介して供給されており、燃焼炉5内において、金属酸化物MO中の酸素にて前記可燃性固形分の燃焼が行われ、該燃焼炉5からの燃焼排ガスは、排ガス配管6を介してサイクロン8へ導入され、該サイクロン8において、前記燃焼排ガスから流動媒体としての金属粒子Mが分離され、該分離された流動媒体としての金属粒子Mの一部は、ループシールボックス11からループシール管11aとダウンカマー7とを介して前記ガス化炉2に戻され、循環される。
【0029】
ここで、前記燃焼炉5で可燃性固形分の燃焼に伴い高温になった流動媒体としての金属粒子Mが燃焼排ガスと共に排ガス配管6を通り前記サイクロン8で分離され、前記ループシールボックス11からループシール管11aとダウンカマー7とを介してガス化炉2に供給されることにより、ガス化炉2の高温が保持されると共に、原料の熱分解によって生成したガスや、その残渣原料が蒸気と反応することによって、水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]が起こり、H2やCO等の可燃性のガス化ガスが生成される。
【0030】
前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスは、図示していない媒体分離装置で煤塵等が分離除去された後、化学プラント或いはガスタービン等に供給される一方、前記サイクロン8で流動媒体としての金属粒子Mが分離された燃焼排ガスは、排ガス処理設備へ送られるが、該燃焼排ガスには二酸化炭素及び蒸気だけが含まれる形となり、温度を下げれば蒸気は水となるため、二酸化炭素を確実に回収することが可能となる。
【0031】
尚、前記燃焼炉流動用ガスとしては、サイクロン8で金属粒子Mが分離された燃焼排ガスの一部を利用することも可能である。
【0032】
又、前記サイクロン8において分離された流動媒体としての金属粒子Mの一部は、ループシールボックス11からループシール管11bとダウンカマー12とを介して前記金属酸化炉10に供給され、空気等の金属酸化炉流動用ガスにより金属粒子Mの流動層13が形成され、該金属粒子Mの酸化が行われて金属酸化物MOが生成され、該金属酸化物MOが連絡管14を介して前記燃焼炉5の下部へ導かれ、循環される。前記金属酸化炉10において、金属酸化物MOを生成する際に発生した窒素及び酸素はガス回収設備(図示せず)に回収される。
【0033】
こうして、ガス化ガスを生成する際に排出される燃焼排ガス中に窒素や酸素が含まれることを防止して、二酸化炭素吸収の特別なプロセス等を用いることなく、二酸化炭素を確実に回収し得る。
【0034】
図2は本発明の第二実施例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1に示すものと同様であるが、本第二実施例の特徴とするところは、図2に示す如く、前記流動媒体として金属粒子Mより平均粒子径の大きい珪砂を用い、該金属粒子Mより平均粒子径の大きい珪砂を前記燃焼排ガスから分離して前記ガス化炉2へ導く第一サイクロン8aと、該第一サイクロン8aで珪砂が分離された燃焼排ガスから金属粒子Mを分離して前記金属酸化炉10へ導く第二サイクロン8bとを前記媒体分離手段とした点にある。
【0035】
尚、前記担体の表面に金属を分散させる形で付着させた金属粒子Mは平均粒子径で50〜200[μm]程度、珪砂は平均粒子径で200〜1000[μm]程度であるため、両者の平均粒子径の差を利用することにより、第一サイクロン8aで珪砂を燃焼排ガスから分離し、第二サイクロン8bで金属粒子Mを分離することは可能である。
【0036】
次に、上記第二実施例の作用を説明する。
【0037】
通常運転時、ガス化炉2において、蒸気又は空気又は酸素等のガス化炉流動用ガスにより流動媒体としての珪砂の流動層1が形成されており、ここに石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の原料を投入すると、該原料は水蒸気ガス化してガス化され、ガス化ガスと可燃性固形分とが生成され、前記ガス化炉2で生成された可燃性固形分は流動媒体としての珪砂と共に連結管3を介して、前記燃焼炉流動用ガスにより流動層4が形成されている燃焼炉5へ導入される。
【0038】
前記燃焼炉5には、金属酸化炉10で金属粒子Mを酸化させた金属酸化物MOが連絡管14を介して供給されており、燃焼炉5内において、金属酸化物MO中の酸素にて前記可燃性固形分の燃焼が行われ、該燃焼炉5からの燃焼排ガスは、排ガス配管6を介して第一サイクロン8aへ導入され、該第一サイクロン8aにおいて、前記燃焼排ガスから金属粒子Mより平均粒子径の大きい流動媒体としての珪砂が分離され、該分離された流動媒体としての珪砂はダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に戻され、循環される。
【0039】
ここで、前記燃焼炉5で可燃性固形分の燃焼に伴い高温になった流動媒体としての珪砂が燃焼排ガスと共に排ガス配管6を通り前記第一サイクロン8aで分離され、前記ダウンカマー7を介してガス化炉2に供給されることにより、ガス化炉2の高温が保持されると共に、原料の熱分解によって生成したガスや、その残渣原料が蒸気と反応することによって、水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]が起こり、H2やCO等の可燃性のガス化ガスが生成される。
【0040】
前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスは、図示していない媒体分離装置で煤塵等が分離除去された後、化学プラント或いはガスタービン等に供給される一方、前記第一サイクロン8aで流動媒体としての珪砂が分離された燃焼排ガスは、第二サイクロン8bにおいて、更に金属粒子Mが分離された後、排ガス処理設備へ送られるが、該燃焼排ガスには二酸化炭素及び蒸気だけが含まれる形となり、温度を下げれば蒸気は水となるため、二酸化炭素を確実に回収することが可能となる。
【0041】
尚、前記燃焼炉流動用ガスとしては、第二サイクロン8bで更に金属粒子Mが分離された燃焼排ガスの一部を利用することも可能である。
【0042】
又、前記第二サイクロン8bにおいて分離された金属粒子Mは、ダウンカマー12を介して前記金属酸化炉10に供給され、空気等の金属酸化炉流動用ガスにより金属粒子Mの流動層13が形成され、該金属粒子Mの酸化が行われて金属酸化物MOが生成され、該金属酸化物MOが連絡管14を介して前記燃焼炉5の下部へ導かれ、循環される。前記金属酸化炉10において、金属酸化物MOを生成する際に発生した窒素及び酸素はガス回収設備(図示せず)に回収される。
【0043】
更に又、仮に前記燃焼炉5で金属酸化物MOの還元が充分に行われず、還元し切れていない金属酸化物MOを含む金属粒子Mがあったとしても、該金属粒子Mはガス化炉2へ導入されないため、ガス化炉2において生成されるガス化ガスが前記金属酸化物MO中の酸素により燃焼してしまうことが避けられる。
【0044】
こうして、第二実施例においても、第一実施例の場合と同様、ガス化ガスを生成する際に排出される燃焼排ガス中に窒素や酸素が含まれることを防止して、二酸化炭素吸収の特別なプロセス等を用いることなく、二酸化炭素を確実に回収し得る。
【0045】
尚、本発明のガス化設備の二酸化炭素回収方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 流動層
2 ガス化炉
4 流動層
5 燃焼炉
8 サイクロン(媒体分離手段)
8a 第一サイクロン(媒体分離手段)
8b 第二サイクロン(媒体分離手段)
9 燃焼炉流動用ガス供給手段
10 金属酸化炉
11 ループシールボックス
12 ダウンカマー
13 流動層
M 金属粒子
MO 金属酸化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化炉流動用ガスにより流動媒体の流動層を形成して投入される原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ燃焼炉流動用ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行いつつ該燃焼熱を前記ガス化炉に供給する燃焼炉とを備えたガス化設備の二酸化炭素回収方法であって、
前記燃焼炉へ供給される燃焼炉流動用ガスとして蒸気又は二酸化炭素を用いると共に、前記燃焼炉へ金属酸化物を供給し、該金属酸化物中の酸素にて前記可燃性固形分の燃焼を行わせることにより、二酸化炭素及び蒸気を含む燃焼排ガスを回収することを特徴とするガス化設備の二酸化炭素回収方法。
【請求項2】
ガス化炉流動用ガスにより流動媒体の流動層を形成して投入される原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ燃焼炉流動用ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行いつつ該燃焼熱を前記ガス化炉に供給する燃焼炉とを備えたガス化設備の二酸化炭素回収装置であって、
前記燃焼炉へ燃焼炉流動用ガスとして蒸気又は二酸化炭素を供給する燃焼炉流動用ガス供給手段と、
前記燃焼炉へ金属粒子を酸化させた金属酸化物を供給する金属酸化炉と、
該金属酸化炉から燃焼炉へ供給される金属酸化物中の酸素にて前記可燃性固形分の燃焼を行わせることにより発生した二酸化炭素及び蒸気を含む燃焼排ガスから流動媒体を分離する媒体分離手段と
を備えたことを特徴とするガス化設備の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記流動媒体として前記燃焼炉で還元される金属酸化物の金属粒子を用い、前記媒体分離手段で燃焼排ガスから分離される金属粒子を前記ガス化炉及び金属酸化炉へ導くよう構成した請求項2記載のガス化設備の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記流動媒体として金属粒子より平均粒子径の大きい珪砂を用い、該金属粒子より平均粒子径の大きい珪砂を前記燃焼排ガスから分離して前記ガス化炉へ導く第一サイクロンと、該第一サイクロンで珪砂が分離された燃焼排ガスから金属粒子を分離して前記金属酸化炉へ導く第二サイクロンとを前記媒体分離手段とした請求項2記載のガス化設備の二酸化炭素回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−248376(P2010−248376A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99486(P2009−99486)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)