説明

ガス圧発電ビジネスモデル

【課題】燃料ガスの供給圧力を利用した発電を経済的に行うための仕組みを提供する。
【課題手段】ガス供給事業者が比較的高圧な状態で供給している燃料ガスの供給圧力を利用して発電を行う減圧発電施設1と、減圧発電施設1で減圧した燃料ガスの供給を受ける複数の事業所3からなり、前記各事業所3には使用している燃料ガス量を計測するガス使用量計測装置7を設け、ガス使用量計測装置7で計測した燃料ガス使用量は、電力の優先使用権を算定する電力優先使用権算定装置8に取り込むことができるようにしておく。前記電力優先使用権算定装置8により、減圧発電施設1からの燃料ガス供給を受けている事業所3に対し、減圧発電施設1で発電した電力の優先使用権を燃料ガス使用量に応じて設定する。各事業所3は電力優先使用権に基づき減圧発電施設1から電力の供給を受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス圧発電ビジネスモデルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許3597552号に記載があるように、都市ガスを供給するパイプラインは、上流側の幹線管では高圧で供給し、パイプラインの途中に設けたガバナ等によって減圧した後に需要家へ供給している。ガス会社から需要家へ供給するガス圧力は、一般家庭には1.0KPa〜2.5KPa程度の低圧にまで減圧して供給している。また、工場など大口の需要家には、0.6MPa〜0.7MPa程度の中圧Aや0.15〜0.16MPa程度の中圧Bといった比較的高圧な状態で供給し、事業所内で使用圧力まで減圧することが行われている。
【0003】
ガス圧力を減圧する場合、特許3597552号発明に記載されているように、膨張タービンを用い、圧力エネルギーを回収して電力を発生することが一部で行われている。無駄に捨てられていた圧力エネルギーを利用して電力を発生させることは、CO2の削減が叫ばれている現代では非常に有効な手段となる。しかし実際には、経済性の問題からあまり普及しておらず、燃料ガスの圧力エネルギーは無駄に捨てられている。
【0004】
燃料ガス供給圧力を使用した発電は、大量の燃料ガスを減圧している所が対象となり、ガス供給事業者の整圧設備であれば大量の燃料ガスを減圧しているため、減圧発電施設を設置することで効率よく発電することができる。しかしこの場合、整圧設備だけでは発電した電力を消費しきれないため、電力が余ることになる。近年では余剰電力を電力会社に販売することが行われるようになったが、電力会社へ販売する場合には逆潮流のための設備が必要となり、設備コストが上昇する。
【0005】
また、燃料ガスの供給量が多い工場などであれば、電力も大量に使用しているため、減圧発電施設を設置して発電を行った電力はすべて自家消費することになり、その場合には電力会社から購入する電力量を削減することができる。
しかし単一の事業所では、燃料ガス使用量が少ないために減圧発電施設の稼働率が低くなり、採算性が劣ることになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3597552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、燃料ガスの供給圧力を利用した発電を経済的に行うための仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ガス供給事業者が比較的高圧な状態で供給している燃料ガスの供給圧力を利用して発電を行う減圧発電施設と、減圧発電施設で減圧した燃料ガスの供給を受ける複数の事業所からなり、前記各事業所には使用している燃料ガス量を計測するガス使用量計測装置を設け、ガス使用量計測装置で計測した燃料ガス使用量は、電力の優先使用権を算定する電力優先使用権算定装置に取り込むことができるようにしておき、前記電力優先使用権算定装置により、減圧発電施設からの燃料ガス供給を受けている事業所に対し、減圧発電施設で発電した電力の優先使用権を燃料ガス使用量に応じて設定する。
【発明の効果】
【0009】
単一の事業所では燃料ガス使用量が少ない場合でも、複数事業所での燃料ガス使用量を合わせると燃料ガス使用量は多くなる。複数の事業所に分配供給する前の段階で燃料ガス供給圧力を使用した発電を行うので、減圧発電施設の稼働率は高くなり効率的に発電することができる。発生させた電力は、ガスの需用者に分配して自家消費するようにしており、電力会社の電力網に送るものではないため、逆潮流を防止するための構成は必要がなく、設備コストは低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例でのガス燃料と電力の供給状況を示したフロー図
【図2】各事業所でのガス燃料使用量と電力優先使用権算定状況の説明図
【図3】本発明の他の実施例でのガス燃料と電力の供給状況を示したフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1はガス燃料と電力の供給状況を示したフロー図、図2は各事業所でのガス燃料使用量と電力優先使用権算定状況の説明図である。図1は工業団地内にA社からF社の6事業所が入居しており、各事業所に燃料ガスを供給するようにしている。都市ガス会社は、中圧A供給配管4を通じて中圧A(0.6MPa〜0.7MPa)のガス燃料を供給しており、中圧A供給配管4は工業団地2の入口に設置している減圧発電施設1に接続する。減圧発電施設1は、中圧Aで供給されてきたガス燃料を中圧B(0.15〜0.16MPa)に減圧して、工業団地2内の各事業所3へ供給する。減圧発電施設1では、燃料ガスの圧力エネルギーによって膨張タービンを回転させて発電機を駆動し、電力エネルギーを発生するものであり、燃料ガスの圧力を低下させる代わりに電力エネルギーを取り出す。
【0012】
減圧発電施設1と各事業所3の間は中圧B供給配管5で接続しており、減圧発電施設1で中圧Bに減圧した燃料ガスは中圧B供給配管5を通して各事業所3に供給する。事業所3には、中圧B供給配管5を通して送られてきた燃料ガスの使用量を計測するガス使用量計測装置7を設置しておき、事業所3での燃料ガス使用量の情報は電力優先使用権算定装置8へ送る。事業所3では、電力会社の商用電力供給線9を接続しており、電力は電力会社から購入しているが、商用電力供給線9とは別に減圧発電施設1で発生した電力を供給する発電電力供給線6も接続しておき、減圧発電施設1で発生した電力も導入することができるようにしている。
【0013】
電力優先使用権算定装置8は、各事業所3で使用した燃料ガス量を集計しておき、各事業所3での電力優先使用権を設定する。減圧発電施設1での発電は、事業所3で燃料ガスを使用し、燃料ガスが流れることで行えるため、電力優先使用権は事業所3で使用した燃料ガス量に基づいて定める。燃料ガス使用量の多い事業所には多くの電力優先使用権を設定し、燃料ガス使用量の少ない事業所への電力優先使用権は少なく設定する。減圧発電施設1から供給した燃料ガス量全体に対する各事業所での燃料ガス使用量が、図2に記載しているように、A社30%、B社20%、C社10%、D社20%、E社10%、F社10%であったとする。この場合、各事業所に割り当てる電力優先使用権は、A社30%、B社20%、C社10%、D社20%、E社10%、F社10%となる。
【0014】
減圧発電施設1で発生した電力は、各事業所に設定した電力優先使用権に基づいて、各事業所に供給する。減圧発電施設1で発電することのできる電力量は、各事業所が使用する電力量に比べると非常に少ないものとなるが、減圧発電施設1から供給された電力を使用することで電力会社から購入する電力量を削減することができる。
【0015】
また、図3に記載しているように、事業所では電力供給を受ける代わりに現金を受けとるようにしてもよい。減圧発電施設1による電力供給は、減圧発電施設1から距離が近い事業所であるA社とB社にのみ行うようにし、減圧発電施設1からの距離が離れているC社からF社は電力優先使用権をA社又はB社に販売するようにしておく。電力供給を受ける事業所は、電力供給を受けない事業所が持つ電力優先使用権を買い取ることで、減圧発電施設1からより多くの電力を導入することができる。このようにした場合、電力供給に要するコストを削減することができる。
【0016】
減圧発電施設1は、複数の事業所3に供給するガス燃料で発電を行うものであるため、一事業所で発電する場合に比べて発電機の稼働率を高くすることができ、システムの有効利用が図れる。また、発電した電力は自家消費するものであるため、余剰電力を電力会社に売る場合に必要となる逆潮流のための設備は不要であり、設備コストを下げることができる。そして、これまでほとんど使用されていなかった燃料ガスが持つ圧力エネルギーを使用して電力エネルギーを得るものであるため、エネルギーの有効利用が図れる。減圧発電施設で発電した電力エネルギーを使用することで、電力会社からの購入する電力量が少なくなるため、CO2の削減に貢献することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 減圧発電施設
2 工業団地
3 事業所
4 中圧A供給配管
5 中圧B供給配管
6 発電電力供給線
7 ガス使用量計測装置
8 電力優先使用権算定装置
9 商用電力供給線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給事業者が比較的高圧な状態で供給している燃料ガスの供給圧力を利用して発電を行う減圧発電施設と、減圧発電施設で減圧した燃料ガスの供給を受ける複数の事業所からなり、前記各事業所には使用している燃料ガス量を計測するガス使用量計測装置を設け、ガス使用量計測装置で計測した燃料ガス使用量は、電力の優先使用権を算定する電力優先使用権算定装置に取り込むことができるようにしておき、前記電力優先使用権算定装置により、減圧発電施設からの燃料ガス供給を受けている事業所に対し、減圧発電施設で発電した電力の優先使用権を燃料ガス使用量に応じて設定するものであることを特徴とするガス圧発電ビジネスモデル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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