説明

ガス容器およびその製造方法

【課題】 金属箔の損傷やはく離を適切に抑制することができるガス容器およびその製造方法を課題とする。
【解決手段】 樹脂ライナ11およびこれに接合された金属箔12からなる内殻13と、内殻13の外周に配置された補強層からなる外殻14と、を有するガス容器1において、金属箔12に伸縮部41を設けた。伸縮部41は、金属箔12自体が樹脂ライナ11に沿って伸縮することを許容する。伸縮部41は、平面視、複数の円形の凸部42などからなり、この複数の凸部42は、金属箔12をプレス成形することなどにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外殻がFRP層などの補強層からなるガス容器に関し、特に内殻が樹脂ライナと金属箔とからなるガス容器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス容器の内殻が樹脂のみからなると、ガス容器内に貯留したガスが樹脂ライナの外部へと透過し易い問題があった。そこで、樹脂ライナの外表面をアルミ等の金属箔で被覆することにより、ガス容器外へのガスの透過を抑制するようにしたガス容器が開発された(例えば、特許文献1参照。)。このガス容器では、金属箔の外表面がFW法(フィラメントワインディング法)によりFRP層で覆われている。
【特許文献1】特開2000−46296号公報(第3頁および第1図)
【特許文献2】特開平10−274391号公報(第4頁)
【特許文献3】特開平10−274392号公報(第5頁)
【特許文献4】特開2002−188794号公報(第2頁および第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、ガス容器内にガスが充填されると、ガス容器の内圧が高まる。しかし、特許文献1に記載のガス容器では、内圧の上昇によってFRP層の繊維は伸びるものの、金属箔は、FRP層の伸びに追従することができなかった。このため、ガスの充填によって、金属箔が破れたり、金属箔が樹脂ライナからはく離してしまうおそれがあった。その結果、ガス容器外へのガスの透過を十分に抑制することができなかった。特に、このような金属箔の損傷は、ガス容器に充填するガスが高圧となるほど早期に生じ易かった。
【0004】
本発明は、金属箔の損傷やはく離を適切に抑制することができるガス容器およびその製造方法を提供することをその目的としている。
また本発明は、水素透過抑制膜の損傷や、樹脂ライナからの水素透過抑制膜のはく離を適切に抑制することができるガス容器を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のガス容器は、樹脂ライナおよびこれに接合された金属箔からなる内殻と、内殻の外周に配置された補強層からなる外殻と、を有するガス容器において、金属箔は、樹脂ライナに沿った金属箔自体の伸縮を許容する伸縮部を有しているものである。
【0006】
この構成によれば、金属箔が伸縮部を有しているため、ガス容器の内圧に応じて補強層が伸縮しても、その伸縮に金属箔が追従することができる。これにより、ガス容器へのガスの充填および放出を繰り返しても、金属箔の損傷やはく離を適切に抑制することが可能となる。なお、金属箔としては、アルミニウム、スズ、銅、SUS、形状記憶合金などが挙げられる。
【0007】
ここで、樹脂ライナに沿った金属箔自体の伸縮とは、樹脂ライナの面内方向に金属箔が伸縮する場合のみならず、樹脂ライナの面内方向に直交する方向(径方向)に金属箔が伸縮する場合が含まれる。すなわち、伸縮部は、樹脂ライナの面上において金属箔自体の伸縮を許容する。
【0008】
この場合、伸縮部は、皺状、襞状、エンボス状、波状又は蛇腹状であることが、好ましい。同様に、伸縮部は、平面視、円形の凹凸が複数形成された構造からなることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、例えば伸縮部が皺状である場合には、ガス容器の内圧が高まると、伸縮部の皺の縮みよった部分が伸ばされるようになる。これにより、金属箔は、補強層の伸びに適切に追従することができる。また、上記のような形状の伸縮部とすることで、金属箔を比較的薄く形成することができ、ガス容器の容量も好適に確保し得る。
【0010】
これらの場合、金属箔は、樹脂によりラミネートされていることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、金属箔と樹脂ライナとの接合性を高め得る。
【0012】
この場合、金属箔がラミネートされる樹脂は、樹脂ライナを形成する樹脂と同種であることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、ガス容器の内圧に応じて補強層および樹脂ライナが伸縮する際、その伸縮に金属箔がより一層良好に追従することが可能となる。
【0014】
これらの場合、金属箔は、樹脂ライナの略全域に亘ってこれに接合されており、伸縮部は、金属箔の略全域に亘って設けられていることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、金属箔が樹脂ライナの略全域に亘っているため、ガス容器外へのガスの透過を確実性よく抑制することができる。また、伸縮部が金属箔の略全域に亘っているため、金属箔が全方向に伸縮することが可能となり、金属箔の伸縮性を高め得る。
【0016】
これらの場合、金属箔は、樹脂ライナの内面に接合されていることが、好ましい。
【0017】
この構成とは逆に、金属箔が樹脂ライナと補強層との間に位置すると、金属箔と樹脂ライナの外面との間や金属箔と補強層との間に、ガス容器内から透過したガスが残留するおそれがある。上記のように、樹脂ライナの内面に金属箔を接合することで、このような不具合を解消して、ガスの透過をガス容器の最も内側で抑制することができる。
【0018】
本発明の他のガス容器は、樹脂ライナおよびこれに接合された金属箔からなる内殻と、内殻の外周に配置された補強層からなる外殻と、を有するガス容器において、金属箔は、樹脂ライナに沿って伸縮可能に構成されているものである。
【0019】
本発明の他のガス容器は、樹脂ライナおよびこれに設けられた水素透過抑制膜からなる内殻と、内殻の外周に配置された補強層からなる外殻と、を有するガス容器において、水素透過抑制膜は、樹脂ライナに沿った水素透過抑制膜自体の伸縮を許容する伸縮部を有しているものである。
【0020】
この構成によれば、水素透過抑制膜が伸縮部を有しているため、ガス容器の内圧に応じて補強層が伸縮しても、その伸縮に水素透過抑制膜が追従することができる。これにより、ガス容器への水素の充填および放出を繰り返しても、水素透過抑制膜の損傷やはく離を適切に抑制することができる。なお、水素透過抑制膜は、上記の金属箔のほか、合成ゴムや気密性の高い樹脂で構成することができる。
【0021】
本発明のガス容器の製造方法は、樹脂ライナおよびこれに接合された金属箔からなる内殻と、内殻の外周に配置された補強層からなる外殻と、を有するガス容器の製造方法であって、樹脂ライナに沿った金属箔の伸縮を許容する伸縮部を金属箔に形成する第1工程と、第1工程の後、金属箔を樹脂ライナに接合して内殻を構成する第2工程と、第2工程の後、内殻の外周に補強層を配置して外殻を構成する第3工程と、を有するものである。
【0022】
この構成によれば、伸縮部を形成した金属箔を樹脂ライナに接合しているため、ガス容器の内圧に応じて補強層が伸縮しても、その伸縮に金属箔が追従することができる。これにより、ガス容器へのガスの充填および放出を繰り返しても、金属箔の損傷やはく離を適切に抑制することができる。
【0023】
この場合、第1工程と第2工程との間に、金属箔を樹脂によりラミネートするラミネート工程を更に有することが、好ましい。
【0024】
この構成によれば、ラミネート後の第2工程において、金属箔と樹脂ライナとの接合性を高め得る。
【0025】
この場合、ラミネート工程は、金属箔の両面を樹脂によりラミネートすることで行われることが、好ましい。
【0026】
これらの場合、第2工程は、ラミネート後の金属箔を樹脂ライナに溶着することにより行われることが、好ましい。
【0027】
この構成によれば、接着に比べて、金属箔と樹脂ライナとの接合力を高め得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明のガス容器およびその製造方法によれば、金属箔が伸縮可能であるため、金属箔の損傷やはく離を適切に抑制することができる。
【0029】
本発明の他のガス容器によれば、同様に水素透過抑制膜が伸縮可能であるため、水素透過抑制膜の損傷や、樹脂ライナからの水素透過抑制膜のはく離を適切に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るガス容器およびその製造方法について説明する。このガス容器は、内殻の一部となる金属箔が伸縮可能に構成されていて、金属箔が外殻の伸縮に追従することができるものである。以下では、先ず、ガス容器の構造について説明し、その後、ガス容器の製造方法について説明する。
【0031】
図1に示すように、ガス容器1は、全体として密閉円筒状の容器本体2と、容器本体2の長手方向の一端部または両端部に取り付けられた口金3と、を具備している。容器本体2の内部は、各種のガスを貯留する貯留空間5となっている。ガス容器1は、常圧のガスを充填することもできるし、常圧に比して圧力が高められたガスを充填することもできる。すなわち、本発明のガス容器1は、高圧ガス容器として機能することができる。
【0032】
例えば、燃料電池システムでは、高圧の状態で用意された燃料ガスを減圧して、燃料電池の発電に供している。本発明のガス容器1は、高圧の燃料ガスを貯留するのに適用することができ、燃料ガスとしての水素ガスや、圧縮天然ガス(CNGガス)などを貯留することができる。ガス容器1に充填される水素の圧力としては、例えば35MPaあるいは70MPaであり、CNGガスの圧力としては、例えば20MPaである。以下は、高圧水素ガス容器1を一例に説明する。
【0033】
口金3は、例えばステンレスなどの金属で形成され、容器本体2の半球面状をした端壁部の中心に設けられている。口金3の開口部は、配管やバルブアッセンブリなどの機能部品をねじ込み接続可能に構成されている。例えば、燃料電池システム上のガス容器1は、バルブアッセンブリを介して、貯留空間5と図示省略した外部のガス流路との間が接続される。そして、ガス容器1は、バルブアッセンブリおよびガス流路を介して、貯留空間5に例えば水素ガスが充填されると共に、貯留空間5から例えば水素ガスが放出される。
【0034】
容器本体2は、樹脂ライナ11および金属箔12からなる内殻13と、内殻13の外周に配置された補強層からなる外殻14と、で構成されている。外殻14の補強層は、例えば炭素繊維およびエポキシ樹脂を含むFRP層で構成されている。FRP層14は、FW法により作られており、内殻13のうち外側に位置する樹脂ライナ11の外表面を被覆するようにこれを巻きつけている。
【0035】
樹脂ライナ11は、硬質のガスバリア性を有する樹脂で形成されている。樹脂ライナ11を形成する樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66などを挙げることができ、ここでは高密度ポリエチレンとなっている。また、樹脂ライナ11は、これら列記の樹脂にガラス繊維などの補強繊維や着色剤を添加したもので形成されてもよい。
【0036】
樹脂ライナ11は、軸方向に所定の長さ延在する筒状の胴部21と、胴部21の一端側または両端側の縮径された端部に形成された返し部22と、返し部22の中央部に開口した連通部23と、を有している。返し部22は、樹脂ライナ11の強度を確保するのに機能している。返し部22の外周面とFRP層14の端部との間に口金3が位置している。なお、後述するように、樹脂ライナ11は、長手方向の中央で例えば二分割された半割り中空体のライナ構成部材同士を接合することにより構成される。
【0037】
金属箔12は、樹脂ライナ11の内表面の略全域に亘ってこれに接合されている。すなわち、金属箔12は、樹脂ライナ11の胴部21の内表面に接合された胴部用箔31と、返し部22の内表面に接合された返し部用箔32と、を有している。なお、返し部用箔32を省略してもよい。金属箔12は、樹脂ライナ11よりも薄い厚み(板厚)を有し、例えば樹脂ライナ11の約1/2〜約1/10の厚みを有している。金属箔12の厚みは、目標特性と材料によって決定される。
【0038】
金属箔12は、樹脂ライナ11よりもガスを透過しない材料からなり、ガス容器1外へのガスの透過を抑制(または阻止)する。すなわち、金属箔12は、例えば水素ガスの透過を抑制する水素透過抑制膜として機能する。金属箔12の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミ合金、スズ、銅、SUS、軟鋼、形状記憶合金などが挙げられる。また、金属箔12は、弾性係数の小さい延性材料からなることが好ましく、より好ましくは、FRP層14の伸びに追従できるように、FRP層14の弾性係数に近い材料からなる。本実施形態の金属箔12は、アルミニウムにより形成されている。
【0039】
図2は、樹脂ライナ11に接合する前の状態の金属箔12の平面図であり、図3は、その断面図である。
【0040】
金属箔12は、樹脂ライナ11に沿った金属箔12自体の伸縮を許容する伸縮部41を有している。伸縮部41は、平面視、円形の凹凸が複数形成された構造で構成されている。より詳細には、伸縮部41の要素となる一つの円形の凸部42は、例えばプレス成形等により、金属箔12の内表面側へと突出して形成されている。複数の凸部42は、金属箔12の面内の略全域において、例えば千鳥状に整然配列するように形成されている。このような構造の伸縮部41を金属箔12の略全域に設けたことで、金属箔12は、その面内方向(つまり、ガス容器1の軸方向および周方向を含む全方向)に伸縮することが可能となっている。なお、金属箔12は、樹脂ライナ11の面内方向に直交する径方向にも伸縮し得る。
【0041】
なお、凸部42を金属箔の外表面側、すなわち樹脂ライナ11に接合される面にも形成してもよい。また、複数の凸部42の配列は、金属箔12が伸縮可能であれば適宜設計変更することができるし、凸部42の個数も限定されるものではない。さらに、凸部42を円形としたことで、あらゆる方向への金属箔12の伸縮に対応し得るようにしたが、もちろん凸部42の形状を方形や三角形などとしてもよい。この場合、ガス容器1の内圧により生ずる金属箔12の応力としては、軸応力よりも円周応力の方向が大きくなることを考慮して、例えば周方向に横長な長円形の凸部42としてもよい。
【0042】
図4は、樹脂ライナ11に接合する前の状態の金属箔12に樹脂ラミネートを施した断面図である。
【0043】
金属箔12の両面は、樹脂によりラミネートされている。すなわち、金属箔12の内表面側には、ラミネート層51が設けられ、金属箔12の外表面には、ラミネート層52が設けられている。各ラミネート層51,52は、樹脂ライナ11を形成する樹脂と同種の樹脂で形成されており、本実施形態の各ラミネート層51,52は、高密度ポリエチレンの樹脂ライナ11に対応して、ポリエチレンで形成されている。
【0044】
このように、樹脂ライナ11との接合界面に位置する金属箔12の部分に、ラミネート層52を設けたことで、樹脂ライナ11と金属箔12との溶着による接合性を高めることができる。なお、金属箔12の内表面側のラミネート層51を省略してもよいが、ラミネート層51を設けておくことで、外力による破損防止の点で有用となる。もっとも、各ラミネート51,52を省略して、金属箔12を樹脂ライナ11に直接的に接合するようにしてもよい。なお、図1ないし図3ではラミネート層51,52を省略すると共に、図1では、伸縮部41の凹凸形状についても省略した。
【0045】
ここで、本実施形態のガス容器1の作用について説明する。ガス容器1の内部は、貯留空間5にガスが満充填されているときには高圧状態となり、ガスが消費等のために放出されると低圧状態に移行する。ガス容器1にガスが十分に充填されて、その内圧が高くなると、ガス容器1のFRP層14および内殻13は、全体として僅かに伸びるように膨張する。内圧の上昇に伴ってFRP層14が伸びても、上述のように金属箔12が伸縮部41を有しているため、その伸びに追従して金属箔12も全体として伸びる。
【0046】
一方、ガス容器1からガスが十分に放出されて、その内圧が低くなると、ガス容器1のFRP層14および内殻13は、全体として僅かに縮むように収縮する。この場合も、金属箔12が伸縮部41を有しているため、内圧の低下に伴ってFRP層14が縮んでも、その縮みに追従して金属箔12も全体として縮む。
【0047】
このように、ガス容器1へのガスの充填および放出を繰り返し行っても、金属箔12がFRP層14の伸縮に適切に追従して伸縮することができる。したがって、金属箔12が破れるなどの損傷や、樹脂ライナ11からの金属箔12のはく離など、金属箔12への悪影響を適切に抑制することができる。ゆえに、金属箔12のガス不透過性を維持することができ、ガス容器1としてのガスの不透過性を維持することができる。
【0048】
また一般に、ガスが貯留空間5に充填および放出される際には、貯留空間5の温度が変化する。例えば、ガスが水素ガスである場合には、その放出時には貯留空間5の温度が減少し、その充填時には貯留空間5の温度は上昇する。特に温度上昇の際には、金属箔12には引張りの熱応力が生じるが、伸縮部4を有する金属箔12はその熱応力にも適切に対応することができる。この点でも、金属箔12の伸縮部41は、有効に機能している。
【0049】
さらに、金属箔12は、樹脂ライナ11の内表面に接合されているため、ガスの透過をガス容器1の最も内側で抑制することができる。もっとも、金属箔12を樹脂ライナ11の外表面に接合することもできるが、これらの間の接合界面に樹脂ライナ11から透過したガスが残留するおそれがある。
【0050】
ここで、図5を参照して、本発明のガス容器1の効果について更に言及する。本発明者らは、ガス容器1の水素ガスの透過性を調べる実験を行った。具体的には、ガス容器1に対して水素ガスを充填および放出させることを所定の回数繰り返し行い、そのときのガス容器1内からの水素ガスの透過量を測定した。金属箔12としてはアルミニウムを用いて行った。また比較例1として、金属箔を有しないガス容器について同様の実験を行った。比較例2として、アルミニウムの金属箔が本発明のような伸縮部41を有しないガス容器について同様の実験を行った。
【0051】
図5から理解されるように、比較例2のガス容器は、比較例1に比べて水素ガスの透過を抑制することができるものの、水素ガスの充填・放出の回数が増加するにつれて、透過量が増加するものであった。これに対し、本発明のガス容器1は、水素ガスの充填・放出の回数に関らず、透過量がほとんどなく、しかもほとんど増加しないものであった。この結果より、水素ガスの充填・放出の回数を繰り返して行っても、金属箔12が伸縮部41を有しているために、ガス容器1からは水素ガスが透過し難いことが確認された。
【0052】
なお、このような伸縮機能を有する金属箔12の伸縮部41は、上記の構造以外の他の構造を適用することができる。
【0053】
例えば、伸縮部41を全体的にあるいは部分的に皺状に形成して、金属箔12に皺を持たせるようにしてもよい。伸縮部41を部分的に皺状にする場合には、上記同様に伸縮部41の要素となる一つの皺を複数設け、複数の皺を金属箔12の略全域において整然配列させてもよい。伸縮部41が皺状である場合には、ガス容器1の内圧が高まると、伸縮部41の皺の縮みよった部分が伸ばされるようになる。このため、上記同様に金属箔12は、FRP層14の伸縮に適切に追従することができる。
【0054】
またこれに代えて、伸縮部41を全体的にあるいは部分的に襞状に形成して、金属箔12に襞を持たせるようにしてもよい。伸縮部41を部分的に襞状にする場合には、伸縮部41の要素となる一つの襞を例えば周方向または軸方向に延在するように形成してもよい。またこの場合には、襞を複数設け、複数の襞を金属箔12の略全域において整然配列させてもよい。
【0055】
さらにこれに代えて、伸縮部41を全体的にあるいは部分的にエンボス状に形成してもよい。伸縮部41をエンボス状にすることには、例えば上記で説明した複数の凸部42で構成することが含まれる。またこれに代えて、伸縮部41を全体的にあるいは部分的に波状に形成してもよい。伸縮部41を波状にすることには、例えば上記の皺状や襞状に構成することが含まれる。
【0056】
またこれらに代えて、伸縮部41を全体的にあるいは部分的に蛇腹状に形成してもよい。伸縮部41を全体的に蛇腹状にする場合には、蛇腹を構成する複数の折返し部は、ガス容器1の軸方向に沿って並んでもよいし、あるいはガス容器1の周方向に沿って並んでもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0057】
このように、金属箔12の表面を平坦でない面に加工等して、伸縮機能(伸縮部41)を金属箔12に具備させることができる。なお、金属箔12と伸縮部41とを同一の材料で構成する例について説明したが、もちろんこれらが別材料であってもよい。すなわち、金属箔12の基材と、その基材の表面に設ける伸縮部41とを違う材料で構成して、全体として複合材料からなる金属箔12としてもよい。
【0058】
次に、図6を参照して、ガス容器1の製造方法について説明する。
先ず、図6(a)に示すように、樹脂ライナ11の割体となる一対のライナ構成部材71,72を成形する。例えば、高密度ポリエチレンを金型内に射出する射出成形法を用いて、一対のライナ構成部材71,72を成形する。もっとも、ブロー成形法や回転成形法を用いてもよい。
【0059】
次に、金属箔12を例えばプレス成形して、例えば複数の凸部42からなる伸縮部41を金属箔12に形成する。その後、金属箔12の両面を二枚のポリエチレンフィルムで挟み、熱圧着することで金属箔12の両面をポリエチレンフィルムでラミネートする。これにより、金属箔12の表裏各面には、ラミネート層51,52が積層される。このような金属箔12を二つのライナ構成部材71,72に対応して二つ用意する。なお、図6では、伸縮部41やラミネート層51,52を省略して示している。
【0060】
次いで、図6(b)に示すように、ラミネート後の各金属箔12を各ライナ構成部材71,72の内表面に溶着することで接合する。もっとも、溶着に代えて、各金属箔12を各ライナ構成部材71,72に接着するようにしてもよい。その後、ライナ構成部材71の連通部23に口金3を嵌合し、またライナ構成部材72の連通部23に口金3を嵌合する。なお、例えばライナ構成部材72に口金3を設けない構成であってもよい。また、このような構成に代えて、口金3とライナ構成部材71(または72)を一体成形(インサート成形)するようにしてもよい。
【0061】
次に、図6(c)に示すように、ライナ構成部材71の円筒状の端部とライナ構成部材72の円筒状の端部とを溶着する。このとき、金属箔12,12同士も、そのラミネート層(51または52)などを介して接合する。これにより、樹脂ライナ11および金属箔12からなる内殻13が構成される。そして最終的に、FW法により樹脂ライナ11の外表面にFRP層14を設けることで、ガス容器1が製造される。なお、ライナ構成部材(71,72)を二つとしたが、もちろん三つ以上の複数であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態に係るガス容器の構成を示す拡大断面図である。
【図2】実施形態に係る金属箔の構成を示す平面図である。
【図3】図2のIII-III線で切断した金属箔の断面図である。
【図4】図3の金属箔の両面をラミネートした状態を示す断面図である。
【図5】ガス容器から透過する水素の透過量と、ガス容器への水素の充填・放出回数との関係を示すグラフである。
【図6】実施形態に係るガス容器の製造方法を概略的に示す工程図である。
【符号の説明】
【0063】
1:ガス容器、11:樹脂ライナ、12:金属箔、13:内殻、14:FRP層(外殻)、41:伸縮部、42:凸部、51:ラミネート層、52:ラミネート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ライナおよびこれに接合された金属箔からなる内殻と、当該内殻の外周に配置された補強層からなる外殻と、を有するガス容器において、
前記金属箔は、前記樹脂ライナに沿った当該金属箔自体の伸縮を許容する伸縮部を有しているガス容器。
【請求項2】
前記伸縮部は、皺状、襞状、エンボス状、波状又は蛇腹状である請求項1に記載のガス容器。
【請求項3】
前記伸縮部は、平面視、円形の凹凸が複数形成された構造からなる請求項1に記載のガス容器。
【請求項4】
前記金属箔は、樹脂によりラミネートされている請求項1ないし3のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項5】
前記金属箔は、前記樹脂ライナの内面に接合されている請求項1ないし4のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項6】
樹脂ライナおよびこれに接合された金属箔からなる内殻と、当該内殻の外周に配置された補強層からなる外殻と、を有するガス容器において、
前記金属箔は、前記樹脂ライナに沿って伸縮可能に構成されているガス容器。
【請求項7】
樹脂ライナおよびこれに設けられた水素透過抑制膜からなる内殻と、当該内殻の外周に配置された補強層からなる外殻と、を有するガス容器において、
前記水素透過抑制膜は、前記樹脂ライナに沿った当該水素透過抑制膜自体の伸縮を許容する伸縮部を有しているガス容器。
【請求項8】
樹脂ライナおよびこれに接合された金属箔からなる内殻と、当該内殻の外周に配置された補強層からなる外殻と、を有するガス容器の製造方法であって、
前記樹脂ライナに沿った前記金属箔の伸縮を許容する伸縮部を当該金属箔に形成する第1工程と、
前記第1工程の後、前記金属箔を前記樹脂ライナに接合して前記内殻を構成する第2工程と、
前記第2工程の後、前記内殻の外周に前記補強層を配置して前記外殻を構成する第3工程と、
を有するガス容器の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程と前記第2工程との間に、前記金属箔を樹脂によりラミネートするラミネート工程を更に有する請求項8に記載のガス容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−250172(P2006−250172A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64185(P2005−64185)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】