説明

ガス容器用カードル装置およびカードル装置用開弁ユニット

【課題】カードル装置に格納されたガス容器の容器弁を安全に且つ容易に開弁でき、しかも装置全体を大形化することなくガス容器の高圧化に対応できるようにする。
【解決手段】格納した各ガス容器(2)の容器弁(3)に集合配管(5)を接続する。この集合配管(5)を介してガス容器(2)から貯蔵ガスを取出せるようにする。容器弁(3)に開弁操作部(7)を設ける。高圧流体供給源(S)を有する開弁ユニット(11)と作動流体供給路(12)とを設ける。作動流体供給路(12)を介して開弁操作部(7)と高圧流体供給源(S)とを接続する。高圧流体供給源(S)から供給する高圧の作動液(17)により、開弁操作部(7)で容器弁(3)を開き操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス容器など複数のガス容器を格納するカードル装置とこれに使用される開弁ユニットに関し、さらに詳しくは、カードル装置に格納されたガス容器の容器弁を安全に且つ容易に開弁でき、しかも装置全体を大形化することなくガス容器の高圧化に対応できる、ガス容器用カードル装置とカードル装置用開弁ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に高圧ガスを大量に輸送したり保管する際には、大形のガス容器を装備した専用トレーラーを用いることもあるが、小形のガス容器(ガスボンベ)をカードル装置(格納架台)に格納して纏めて扱うことが多い。一方、近年では、環境汚染の少ない水素ガスを燃料とする技術が開発されており、この水素ガス容器は大容量化と小形化を進めるため、貯蔵ガス圧力は、例えば70MPaなどの高圧化が望まれている。
【0003】
上記のような高圧ガスを貯蔵し搬送する場合、鋼製容器では重量が大きくガス輸送の効率が低いことから、軽量の炭素繊維で補強した樹脂製ガス容器が多く使用される傾向にある(例えば、特許文献1参照)。しかしこの炭素繊維補強樹脂製ガス容器は長尺容器の製作が困難であり、従って、上記のカードル装置には多本数のガス容器が格納されることとなる。このカードル装置に格納されたガス容器は、それぞれの容器弁に集合配管が接続してあり、この集合配管にカードル元弁が付設してある。
【0004】
上記のカードル装置に格納されたガス容器は、ガス充填所からガスを使用する場所へ搬送され、カードル装置ごとその使用場所に設置される。この場合、カードル装置はトレーラーの台車に積載される場合や、カードル装置が台車を備えておってこれをトレーラーで牽引される場合などがあるが、トレーラーは通常このカードル装置を使用場所に残したまま、空のガス容器を格納したカードル装置を運搬してガス充填所へ移動していく。そして上記の使用場所に設置されたカードル装置は、上記の集合配管が燃料電池などのガス使用機器に接続され、各容器弁が開弁されたのちカードル元弁が開弁されて、各ガス容器からガス使用機器へ貯蔵ガスが供給される。
【0005】
【特許文献1】特開平9−40078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の各容器弁は、カードル装置の搬送中は閉じておく必要があり、使用場所に設置されると、上記の集合配管をガス使用機器に接続して、全ての容器弁を開き操作したのち、カードル元弁を開き操作する必要がある。しかしながら、上記のようにカードル装置へのガス容器の格納本数が増加すると、その全ての容器弁を開閉操作することは極めて煩雑であり、作業者にかかる負担が大きくなる問題がある。
【0007】
上記の容器弁に開弁操作手段を付設し、この開弁操作手段を遠隔操作して容器弁を簡単に開弁することが考えられる。しかし、カードル装置の設置場所によっては、開弁操作手段を駆動するための動力源の手配が容易でなく、特にトレーラーが移動してしまった場合は、そのトレーラーの電源や油圧源などを使用することができない。
【0008】
また、特に上記のガス容器が水素ガスを貯蔵している場合にあっては、容器弁の近傍に電磁装置を設けることは安全対策が容易でなく、好ましくない。一方、エアーコンプレッサで供給される圧力空気や通常の工場内などに配管されて使用される圧力空気を用いて、上記の開弁操作手段をより安全に作動させることが考えられる。しかしながら、これらのエアーコンプレッサ等から供給される圧力空気は、一般に圧力が0.6〜0.8MPa程度と低い。このため、この低圧の圧力空気を開弁操作手段に供給して、例えば前記の70MPa程度の高圧ガスを貯蔵したガス容器の容器弁を開弁するのは容易でない。また開弁操作手段のシリンダ径を大きくして上記の低圧の圧力空気を用いることが考えられるが、この場合は開弁操作手段やバルブ装置が大形化し、ひいてはカードル装置全体が大形化する問題がある。
【0009】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、カードル装置に格納されたガス容器の容器弁を安全に且つ容易に開弁でき、しかも装置全体を大形化することなくガス容器の高圧化に対応できる、ガス容器用カードル装置とカードル装置用開弁ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図3に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
すなわち、本発明1はカードル装置に関し、複数のガス容器(2…)を格納して、各ガス容器(2)に付設された容器弁(3)のガス取出口(4)に集合配管(5)を接続し、この集合配管(5)を介してガス容器(2)から貯蔵ガスを取出可能に構成した、ガス容器用カードル装置であって、高圧流体供給源(S)を有する開弁ユニット(11)と作動流体供給路(12)とを備え、上記の各容器弁(3)に開弁操作部(7)を設けて、この開弁操作部(7)と上記の高圧流体供給源(S)とを上記の作動流体供給路(12)を介して接続し、この高圧流体供給源(S)から供給する高圧の作動流体(17)により上記の開弁操作部(7)が上記の容器弁(3)を開き操作することを特徴とする。
【0011】
また、本発明2はカードル装置用開弁ユニットに関し、複数のガス容器(2)を格納するガス容器用カードル装置(1)に使用され、ガス容器(2)の容器弁(3)に設けた開弁操作部(7)へ作動流体供給路(12)を介して接続される高圧流体供給源(S)を有し、この高圧流体供給源(S)から供給される高圧の作動流体(17)により、上記の開弁操作部(7)が上記の容器弁(3)を開き操作することを特徴とする。
【0012】
一般に、上記の容器弁は閉弁バネなどの閉弁手段を備えた常閉型に構成してあり、上記の開弁操作部へ作動流体が供給されない状態では、容器弁が閉じた状態に保持される。そしてこの開弁操作部に作動流体が供給されることで、上記の閉弁手段の閉じ力に抗して容器弁が開き操作される。ここで、上記の作動流体の圧力は特定の範囲に限定されず、上記の閉弁手段の閉じ力に対応して、即ちガス容器に貯蔵されるガス圧力に対応して設定されるが、通常、1〜数MPaが経済的にも望ましい。
【0013】
上記の高圧流体供給源は、増圧器で構成することができ、これにより上記の作動流体を所定の高圧に容易にできるので、好ましい。
上記の増圧器で供給される作動流体には、非圧縮性流体を用いることができ、作動流体の容積を少なくして小形化できるので、好ましい。またこの場合には、作動流体を貯溜する貯溜部を設けて循環使用することができる。なお、この非圧縮性流体には、水−グリコール型作動液などの、不燃性のものを用いるのが好ましい。
【0014】
上記の増圧器は、任意の駆動源で駆動することができるが、この増圧器に駆動ガス貯蔵容器を接続し、この駆動ガス貯蔵容器から供給される駆動ガスにより上記の増圧器を駆動して上記の作動流体を高圧化すると、他から動力源を必要としないうえ電気を使用しないので、任意の設置場所で安全に使用でき、好ましい。なお、上記の駆動ガスとしては、ガス容器の貯蔵ガスと反応しない、窒素ガスなどの不活性ガスが好ましい。
【0015】
また、上記の増圧器にエアーコンプレッサを接続可能に構成し、このエアーコンプレッサからの加圧空気により上記の増圧器を駆動して上記の作動流体を高圧化してもよい。エアーコンプレッサからの圧力空気は比較的容易に手配できるうえ、このエアーコンプレッサは容器弁やガス流路から離隔して配置できるので、安全に使用でき、好ましい。なお、上記のエアーコンプレッサは、予めカードル装置に備えておくと、動力源の確保が容易であり、好ましい。
【0016】
一方、前記の高圧流体供給源は、高圧の作動ガス貯蔵容器で構成することができる。この場合には、前記の増圧器で構成する場合と異なって、この高圧流体供給源を駆動する動力が不要であり、しかもこの高圧流体供給源に作動流体が貯蔵されるので、安価でコンパクトに実施することができ、好ましい。また、この作動ガスを用いる場合は、作動液を使用する場合と異なって、作動流体供給路内のガス抜きを省略できる等、容易にメンテナンスできる利点もある。なお、上記の作動ガスとしては、前記の駆動ガスと同様、ガス容器の貯蔵ガスと反応しない、窒素ガスなどの不活性ガスが好ましい。
【0017】
上記の開弁操作部は、通常、作動流体を供給することで容器弁が開弁され、作動流体の供給を停止することで容器弁が閉弁される。そこで、上記の作動流体供給路に圧力検出部を設けると、作動流体が供給されて容器弁が開弁されている状態を容易に確認することができ、好ましい。
【0018】
上記の容器弁は、急速に開弁すると、出口路や集合配管へ流出する際に断熱圧縮を生じて高温となり、フィルタや弁シート等の樹脂製部品を熱で溶かしたり、熱分解して微粉末を発生したりするなど種々の問題を生じる。また、集合配管に接続されるガス機器等に、急激な圧力上昇による大きな負担が加わる問題もあり、上記のバルブ装置はゆっくりと開くことが望ましい。そこで、上記の作動流体供給路に流路抵抗部を設けて、開弁操作部への作動流体の供給速度を制限すると、開弁操作部による容器弁の開き操作をゆっくり行うことができ、好ましい。
【0019】
上記の集合配管にカードル元弁が付設されている場合には、このカードル元弁の元弁操作部に第2の作動流体供給路を介して上記の高圧流体供給源を接続することができ、これによりこのカードル元弁も遠隔操作で開閉できるので好ましい。特に上記の作動流体供給路に圧力検出部を設けた場合には、この圧力検出部による検出に連動させることで、容器弁が確実に開弁したのちに上記のカードル元弁を開弁させることができ、好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
即ち上記の容器弁は、開弁操作部へ作動流体を供給することにより開弁されるので、ガス容器の格納本数が増加しても、開弁操作を安全に且つ容易に行うことができる。しかも高圧流体供給源から供給される上記の作動流体は高圧であるので、ガス容器に貯蔵されるガス圧力が高圧化しても、これに対応して作動流体の設定圧力を高めることで、開弁操作部を大形化することなく容易に容器弁を開き操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の第1実施形態の、ガス容器用カードル装置の概略構成を示す回路図である。
【0022】
図1に示すように、このガス容器用カードル装置(1)には、高圧水素ガスを貯蔵した複数のガス容器(2…)が格納してあり、各ガス容器(2)に付設された容器弁(3)のガス取出口(4)に集合配管(5)が接続してある。この集合配管(5)にはカードル元弁(6)が付設してあり、上記の容器弁(3)とこのカードル元弁(6)とを順次開弁することにより、上記のガス容器(2)から水素ガスが取り出される。
【0023】
上記の容器弁(3)には開弁操作部(7)が設けてあり、この開弁操作部(7)が有する閉弁手段(8)により、通常は上記の容器弁(3)が閉じられている。また、上記のカードル元弁(6)には元弁操作部(9)が設けてあり、この元弁操作部(9)の閉弁手段(10)により、このカードル元弁(6)も通常は閉じられている。
【0024】
上記のガス容器用カードル装置(1)には、開弁ユニット(11)と作動流体供給路(12)と第2作動流体供給路(13)とが設けてあり、この開弁ユニット(11)に高圧流体供給源(S)としての増圧器(14)が設けてある。この増圧器(14)は上記の作動流体供給路(12)を介して前記の開弁操作部(7)に接続してあり、上記の第2作動流体供給路(13)を介して前記の元弁操作部(9)に接続してある。なお、上記の作動流体供給路(12)と第2作動流体供給路(13)とは、それぞれ開弁ユニット(11)に設けた接続部(15)で、開弁ユニット(11)内の各供給路上流部(12a・13a)と分離可能に接続してある。
【0025】
次に、上記の開弁ユニット内の構造について説明する。
上記の開弁ユニット(11)内には貯溜部(16)が設けてあり、この貯溜部(16)に非圧縮流体の、例えば水−グリコール型など不燃性の作動液(17)が貯溜される。この貯溜部(16)は上記の増圧器(14)に給液路(18)を介して接続してある。この増圧器(14)と上記の接続部(15)との間の供給路上流部(12a)には、切換弁(19)とオリフィスなどの流路抵抗部(20)とが順に設けてあり、この流路抵抗部(20)をバイパスするバイパス路(21)が設けられ、この流路抵抗部(20)の下流側に圧力検出部(22)が接続してある。
【0026】
前記の第2作動流体供給路(13)は、上記の切換弁(19)よりも上流側で分岐してあり、この第2作動流体供給路(13)の上流部(13a)にも、上記と同様、第2切換弁(23)とオリフィスなどの第2流路抵抗部(24)とが順に設けてあり、この第2流路抵抗部(24)をバイパスするバイパス路(25)が設けられ、この第2流路抵抗部(24)の下流側に第2圧力検出部(26)が接続してある。
【0027】
上記の各バイパス路(21・25)には、それぞれ切換弁(19)側や第2切換弁(23)側への流れは許容するが、接続部(15)側への流れは阻止する逆止弁(27)が設けてある。また、上記の切換弁(19)と第2切換弁(23)は、それぞれ上記の貯溜部(16)に戻し路(28)を介して接続してある。
【0028】
上記の増圧器(14)の駆動部(29)には、エアーコンプレッサ(30)が駆動ガス供給路(31)を介して接続してある。この駆動ガス供給路(31)には、フィルタ(32)と圧力調整器(33)とが設けてあり、これにより、エアーコンプレッサ(30)からの所定圧力の空気で上記の増圧器(14)が駆動される。上記のエアーコンプレッサ(30)は、例えば1MPa未満の低圧のものでよく、小形でよいのでカードル装置(1)に予め付設しておいてもよいが、このカードル装置(1)を設置した場所で手配してもよく、この場合はカードル装置(1)にエアーコンプレッサの付設を省略できるので、コンパクトに構成することができる。
【0029】
次に、上記のガス容器用カードル装置の作動について説明する。
上記の容器弁(3)とカードル元弁(6)は、上記の増圧器(14)から作動液(17)が供給されていない状態にあっては、いずれも閉弁手段(8・10)の閉じ力により閉弁されており、ガス容器(2)からの水素ガスの取出しが停止されている。
【0030】
上記のエアーコンプレッサ(30)により駆動ガス供給路(31)から圧力空気を送り込んで上記の増圧器(14)を駆動すると、貯溜部(16)から給液路(18)を経て供給された作動液(17)が増圧器(14)により加圧され、例えば数MPaとなって送り出される。そして、上記の切換弁(19)を図1に示す戻し姿勢から供給姿勢に切換えると、上記の高圧の作動液(17)が流路抵抗部(20)と接続部(15)とを順に経て、作動流体供給路(12)から容器弁(3)の開弁操作部(7)へ徐々に供給される。そしてこの開弁操作部(7)へ供給される作動液(17)が所定圧力に達すると、前記の閉弁手段(8)の閉じ力に抗して容器弁(3)が開き操作される。このとき、上記の圧力検出部(22)は作動流体供給路(12)内が所定圧力に達したことを検出し、これにより容器弁(3)が開弁されていることを表示する。
【0031】
上記の圧力検出部(22)の検出と表示により、容器弁(3)が開弁されたことを確認したのち、前記の第2切換弁(23)が供給姿勢に切換えられる。これにより、上記の高圧の作動液(17)が第2流路抵抗部(24)と接続部(15)とを順に経て、第2作動流体供給路(13)からカードル元弁(6)の元弁操作部(9)へ徐々に供給される。そしてこの元弁操作部(9)へ供給される作動液(17)が所定圧力に達すると、前記の閉弁手段(10)の閉じ力に抗してカードル元弁(6)が開き操作される。このとき上記の第2圧力検出部(26)は第2作動流体供給路(13)内が所定圧力に達したことを検出して、カードル元弁(6)が開弁されていることを表示する。そして上記の操作により容器弁(3)とカードル元弁(6)とが順に開弁され、これによりガス容器(2)に貯蔵された高圧の水素ガスが取り出される。
【0032】
水素ガスの取出しを停止する場合は、上記の切換弁(19)と第2切換弁(23)とがそれぞれ図1に示す戻し姿勢に切換えられ、エアーコンプレッサ(30)が停止される。これにより増圧器(14)の駆動が停止されるとともに、上記の作動流体供給路(12)と第2作動流体供給路(13)とから作動液(17)がバイパス路(21・25)と戻し路(28)を経て貯溜部(16)へ戻される。この結果、作動流体供給路(12)と第2作動流体供給路(13)内の圧力が低下し、上記の容器弁(3)とカードル元弁(6)は、それぞれ閉弁手段(8・10)の閉じ力により閉弁される。
【0033】
図2は本発明の第2実施形態の、ガス容器用カードル装置の概略構成を示す回路図である。なお、この第2実施形態では、上記の第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してあり、同様に作用するので説明を省略する。
【0034】
この第2実施形態では、作動流体として、窒素ガスなどの不活性ガスからなる作動ガス(17)を用いてあり、開弁ユニット(11)には作動ガス貯蔵容器(34)が配置してある。この作動ガス貯蔵容器(34)の容器弁(35)は、給気路(36)を介して増圧器(14)に接続してあり、この給気路(36)にフィルタ(37)と圧力調整器(38)が付設され、所定圧力の作動ガスが増圧器(14)へ供給される。
【0035】
一方、上記の作動ガス貯蔵容器(34)の容器弁(35)は、駆動ガス供給路(31)を介して上記の増圧器(14)の駆動部(29)に接続してある。即ち、上記の作動ガス(17)は増圧器(14)を駆動する駆動ガスに兼用されており、従って、上記の作動ガス貯蔵容器(34)は、駆動ガス貯蔵容器(39)に兼用されている。
【0036】
なお、この実施形態では作動ガス貯蔵容器(34)の容器弁(35)に駆動ガス供給路(31)を接続して、作動ガス貯蔵容器(34)を駆動ガス貯蔵容器(39)に兼用したが、本発明では作動ガス貯蔵容器とは別に駆動ガス貯蔵容器を備えてもよく、また図2の仮想線に示すように、前記の第1実施形態と同様、上記の駆動ガス供給路(31)にエアーコンプレッサを接続するように構成してもよい。さらに、前記の第1実施形態では増圧器をエアーコンプレッサで駆動したが、この第1実施形態においても、このエアーコンプレッサに代えて駆動ガス貯蔵容器を付設し、この駆動ガス貯蔵容器からの駆動ガスで増圧器を駆動してもよい。
【0037】
上記の増圧器(14)は、前記の第1実施形態と同様、作動流体供給路(12)と第2作動流体供給路(13)とに接続され、開弁ユニット(11)内の各供給路上流部(12a・13a)にはそれぞれ切換弁(19)と第2切換弁(23)とが設けてある。そしてこの切換弁(19)と第2切換弁(23)とがそれぞれ排気路(40)を介して排気口(41)に接続してある。
【0038】
上記の作動ガス貯蔵容器(34)の容器弁(35)を開くと、作動ガス(17)が増圧器(14)に供給されるとともに、増圧器(14)の駆動部(29)に駆動ガスとして供給される。これにより増圧器(14)が駆動されて上記の作動ガス(17)が、例えば数MPaに加圧され、前記の第1実施形態と同様、この増圧器(14)から送り出される。そして、上記の切換弁(19)と第2切換弁(23)とを順次供給姿勢へ切換えることにより、ガス容器(2)の容器弁(3)が開弁されたのちカードル元弁(6)が開弁されて、ガス容器(2)内の水素ガスが取り出される。
【0039】
水素ガスの取出しを停止する場合は、作動ガス貯蔵容器(34)の容器弁(35)を閉じ、上記の切換弁(19)と第2切換弁(23)とをそれぞれ戻し姿勢に切換える。これにより増圧器(14)の駆動が停止されるとともに、上記の作動流体供給路(12)内や第2作動流体供給路(13)内の高圧の作動ガス(17)が、バイパス路(21・25)と排気路(40)を経て排気口(41)から排出される。この結果、作動流体供給路(12)と第2作動流体供給路(13)内の圧力が低下し、上記の容器弁(3)とカードル元弁(6)は、それぞれ閉弁手段(8・10)の閉じ力により閉弁される。
【0040】
図3は本発明の第3実施形態の、ガス容器用カードル装置の概略構成を示す回路図である。なお、この第3実施形態では、上記の第1実施形態や第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付してあり、同様に作用するので説明を省略する。
【0041】
この第3実施形態では、高圧流体供給源(S)として高圧の作動ガス貯蔵容器(34)が付設してある。この作動ガス貯蔵容器(34)の容器弁(35)は、給気路(36)を介して作動流体供給路(12)と第2作動流体供給路(13)とに接続してあり、この給気路(36)にフィルタ(37)と圧力調整器(38)が付設してある。開弁ユニット(11)内の各供給路上流部(12a・13a)には、上記の第1実施形態や第2実施形態と同様、それぞれ切換弁(19)と第2切換弁(23)とが設けてあり、この切換弁(19)と第2切換弁(23)とが、上記の第2実施形態と同様、それぞれ排気路(40)を介して排気口(41)に接続してある。
【0042】
上記の作動ガス貯蔵容器(34)の容器弁(35)を開くと、高圧の作動ガス(17)が上記の圧力調整器(33)で所定の圧力、例えば数MPaに調整されて送り出され、切換弁(19)と第2切換弁(23)とを順次供給姿勢へ切換えることにより、ガス容器(2)の容器弁(3)が開弁されたのちカードル元弁(6)が開弁されて、ガス容器(2)内の水素ガスが取り出される。
【0043】
上記の水素ガスの取出しを停止する場合は、上記の第2実施形態と同様、作動ガス貯蔵容器(34)の容器弁(35)を閉じ、上記の切換弁(19)と第2切換弁(23)とをそれぞれ戻し姿勢に切換える。これにより、上記の作動流体供給路(12)と第2作動流体供給路(13)内の高圧の作動ガス(17)が排気口(41)から排出され、上記の容器弁(3)とカードル元弁(6)が、それぞれ閉弁手段(8・10)の閉じ力により閉弁される。
【0044】
上記の各実施形態で説明したカードル装置や開弁ユニットは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、増圧器や作動ガス貯蔵容器、エアーコンプレッサ、切換弁、流路抵抗部、圧力検出部などの形状や構造、形成位置等を、これらの実施形態に限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0045】
例えば上記の各実施形態では、切換弁や第2切換弁を電磁弁で構成したので、簡単に付設することができるが、例えば空気や不活性ガスなどで作動するガス圧弁で構成すると、より安全に実施できるので好ましい。
【0046】
また、上記の第1実施形態や第2実施形態では、1台の増圧器で作動流体供給路と第2作動流体供給路とへ供給する作動流体の圧力を高めた。しかし本発明では増圧器を複数設けて、作動流体供給路へ供給する作動流体と、第2作動流体供給路へ供給する作動流体とを互いに異なる増圧器で高圧にしてもよい。
【0047】
上記の各実施形態では、全ての容器弁の開閉操作部に同じ作動流体供給路を接続した。しかし本発明では複数の作動流体供給路を備えるとともに、カードル装置に格納されたガス容器を複数のグループに分け、それぞれ異なる作動流体供給路を接続して各作動流体供給路に設けた切換弁を操作することで、特定のガス容器のみから貯蔵ガスを取り出すことができる。
【0048】
上記の各実施形態では、圧力検出部の検出により容器弁の開弁を表示し、この表示を確認したのち第2切換弁を切換え操作した。しかし本発明ではこの圧力検出部を第2切換弁に連動させ、圧力検出部の検出により第2切換弁を自動的に切換えるように構成してもよい。
【0049】
上記の各実施形態では、上記の圧力検出部や流路抵抗部を開弁ユニット内に設けたが、本発明ではこれらの圧力検出部や流路抵抗部を、開弁ユニットの外側の作動流体供給路や第2作動流体供給路に設けてもよい。また、上記の容器弁や開弁操作手段は、例えばパイロット作動により徐々に開弁する構成のものを採用することができ、この場合は、上記の流路抵抗部やバイパス路を省略することができる。
【0050】
さらに、上記の各実施形態では、いずれもカードル装置用開弁ユニットをガス容器用カードル装置に付設した。しかし本発明の開弁ユニットはカードル装置に使用されるものであればよく、例えばこの開弁ユニットをカードル装置が積載されるトレーラーの台車などに付設したものであってもよい。
【0051】
なお、上記の作動流体は特定の種類に限定されず、また本発明のカードル装置に格納されるガス容器は、水素ガス以外のガス種を貯蔵するものであってもよく、貯蔵ガス圧力も上記の実施形態や特定のガス圧力に限定されないことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のガス容器用カードル装置やこれに使用される開弁ユニットは、格納されるガス容器の容器弁を安全に且つ容易に開弁でき、しかも装置全体を大形化することなくガス容器の高圧化に対応できるので、高圧の水素ガス容器を格納するカードル装置に特に好適であるが、他のガス容器を格納するカードル装置にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態の、ガス容器用カードル装置の概略構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す、図1相当図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す、図1相当図である。
【符号の説明】
【0054】
1…ガス容器用カードル装置
2…ガス容器
3…容器弁
4…ガス取出口
5…集合配管
6…カードル元弁
7…開弁操作部
9…元弁操作部
11…開弁ユニット
12…作動流体供給路
13…第2作動流体供給路
14…増圧器
17…作動流体(作動液、作動ガス)
20…流路抵抗部
22…圧力検出部
30…エアーコンプレッサ
34…作動ガス貯蔵容器
39…駆動ガス貯蔵容器
S…高圧流体供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガス容器(2…)を格納して、各ガス容器(2)に付設された容器弁(3)のガス取出口(4)に集合配管(5)を接続し、この集合配管(5)を介してガス容器(2)から貯蔵ガスを取出可能に構成した、ガス容器用カードル装置であって、
高圧流体供給源(S)を有する開弁ユニット(11)と作動流体供給路(12)とを備え、
上記の各容器弁(3)に開弁操作部(7)を設けて、この開弁操作部(7)と上記の高圧流体供給源(S)とを上記の作動流体供給路(12)を介して接続し、
この高圧流体供給源(S)から供給する高圧の作動流体(17)により上記の開弁操作部(7)が上記の容器弁(3)を開き操作することを特徴とする、ガス容器用カードル装置。
【請求項2】
上記の高圧流体供給源(S)を増圧器(14)で構成した、請求項1に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項3】
上記の作動流体(17)を非圧縮流体で構成した、請求項2に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項4】
上記の増圧器(14)に駆動ガス貯蔵容器(39)を接続し、この駆動ガス貯蔵容器(39)から供給される駆動ガスにより上記の増圧器(14)を駆動して上記の作動流体(17)を高圧化する、請求項2または3に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項5】
上記の増圧器(14)にエアーコンプレッサ(30)を接続可能に構成し、このエアーコンプレッサ(30)からの加圧空気により上記の増圧器(14)を駆動して上記の作動流体(17)を高圧化する、請求項2または3に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項6】
上記のエアーコンプレッサ(30)を予め備えた、請求項5に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項7】
上記の高圧流体供給源(S)を高圧の作動ガス貯蔵容器(34)で構成した、請求項1に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項8】
上記の作動流体供給路(12)に圧力検出部(22)を設けた、請求項1から7のいずれか1項に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項9】
上記の作動流体供給路(12)に流路抵抗部(20)を設けて、上記の開弁操作部(7)への作動流体(17)の供給速度を制限した、請求項1から8のいずれか1項に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項10】
上記の集合配管(5)にカードル元弁(6)を付設し、このカードル元弁(6)の元弁操作部(9)に第2の作動流体供給路(13)を介して上記の高圧流体供給源(S)を接続した、請求項1から9のいずれか1項に記載のガス容器用カードル装置。
【請求項11】
複数のガス容器(2)を格納するガス容器用カードル装置(1)に使用され、ガス容器(2)の容器弁(3)に設けた開弁操作部(7)へ作動流体供給路(12)を介して接続される高圧流体供給源(S)を有し、この高圧流体供給源(S)から供給される高圧の作動流体(17)により、上記の開弁操作部(7)が上記の容器弁(3)を開き操作することを特徴とする、カードル装置用開弁ユニット。
【請求項12】
上記の高圧流体供給源(S)を増圧器(14)で構成した、請求項11に記載のカードル装置用開弁ユニット。
【請求項13】
上記の増圧器(14)へ駆動ガスを供給するための駆動ガス貯蔵容器(39)を備えた、請求項12に記載のカードル装置用開弁ユニット。
【請求項14】
上記の増圧器(14)を駆動するためのエアーコンプレッサ(30)を備えた、請求項12に記載のカードル装置用開弁ユニット。
【請求項15】
上記の高圧流体供給源(S)を高圧の作動ガス貯蔵容器(34)で構成した、請求項11に記載のカードル装置用開弁ユニット。
【請求項16】
上記の作動流体供給路(12)の圧力を検出する圧力検出部(22)を備えた、請求項11から15のいずれか1項に記載のカードル装置用開弁ユニット。
【請求項17】
上記の作動流体供給路(12)での作動流体(17)の供給速度を制限する流路抵抗部(20)を備えた、請求項11から16のいずれか1項に記載のカードル装置用開弁ユニット。
【請求項18】
容器弁(3)に接続された集合配管(5)に付設されるカードル元弁(6)と上記の高圧流体供給源(S)とを、第2作動流体供給路(13)を介して接続した、請求項11から17のいずれか1項に記載のカードル装置用開弁ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−247696(P2007−247696A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68696(P2006−68696)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】