説明

ガス感受性構造及びガス感受性構造を含む構成要素

1つ以上のガス状分析物を監視するように構成されるシステム10の構成要素である。ある実施例において、前記構成要素は、導管14及びガス感受性フィルム20を有する。導管14は、ガス流がその中を通ることを可能にするように形成される。ガス感受性フィルム20は、このガス流と連通して配置され、このガス流内にある1つ以上のガス分析物に対し感受性がある。前記フィルム20は、発光可能染料及び高分子マトリックスを有する。前記染料は、前記1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある。高分子マトリックスは、前記染料を担持し、多孔性であり、並びに前記フィルムが前記1つ以上のガス状分析物の少なくとも約20%から約90%の濃度のダイナミックレンジ(i)、及び約80ミリ秒未満の前記ダイナミックレンジの少なくとも一部にわたる応答時間(ii)を持つように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上のガス状分析物の濃度を決めることを可能にするガス感受性構造及び上記濃度を決めるためのシステムの構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
発光可能(luminescable)媒体と接するガス体にある分析物に関する情報を決めるために、この発光可能媒体の発光(luminescence)の1つ以上の態様を測定する発光可能媒体を含むセンサが知られている。ある従来の発光可能媒体は、高分子フィルム及びこの高分子フィルムに取り付けられる発光可能染料を有するガス感受性フィルムを有する。これら従来の発光可能媒体において、例えば応答時間及びダイナミックレンジのような、この発光可能媒体の様々なセンサ特性は、高分子内における架橋度及び/又は分子量の機能である。一般的に、発光可能媒体のダイナミックレンジを増大させる架橋度及び/又は分子量は、この発光可能媒体の応答時間も増大さる傾向がある。結果として、発光可能媒体のダイナミックレンジを高めるために、この発光可能媒体の応答時間が悪くならなければならない。同様に、発光可能媒体に向上する応答時間を提供するために、この発光可能媒体のダイナミックレンジが抑えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの態様は、1つ以上のガス状分析物を監視するように構成されるシステムの構成要素に関する。ある実施例において、この構成要素は、導管及びガス感受性フィルムを有する。この導管は、ガス流がその中を通ることを可能にするように形成される。ガス感受性フィルムは、ガス流と連通して配置され、このガス流内にある1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある。幾つかの例において、前記フィルムは染料及び高分子マトリックスを有する。この染料は、前記1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある。高分子マトリックスは、前記染料を担持し、多孔質であり、並びに前記フィルムが1つ以上のガス状分析物の少なくとも約20%から約90%までの濃度のダイナミックレンジ(i)、及び約80ミリ秒未満のダイナミックレンジの少なくとも一部にわたる応答時間を持つように形成される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のもう1つの態様は、ガス感受性構造に関する。ある実施例において、この構造は、基板及びフィルムを有する。このフィルムは、基板上に配置され、1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある。幾つかの例において、前記フィルムは高分子マトリックス及び染料を有する。この高分子マトリックスは、10%よりも大きな多孔度を持つ。前記染料は、この高分子マトリックスにより担持され、1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある。
【0005】
本発明のもう1つの態様は、ガス感受性構造に関する。ある実施例において、この構造は、基板及びフィルムを有する。このフィルムは、基板上に配置され、1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある。幾つかの例において、前記フィルムは染料及び高分子マトリックスを有する。この染料は、前記1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある。高分子マトリックスは、前記染料を担持し、前記フィルムが1つ以上のガス状分析物の少なくとも約20%から約90%までの濃度のダイナミックレンジ(i)、及び約80ミリ秒未満のダイナミックレンジの少なくとも一部にわたる応答時間を持つように形成される。
【0006】
本発明のこれら及び他の目的、特徴並びに特性は、構造物の関連する要素及び部品の組み合わせの動作及び機能の方法、並びに製造の経済性と同じく、それら全てが本明細書の一部を形成する、添付図面を参照して以下の説明及び特許請求の範囲を考慮する際にさらに明らかとなり、同様の参照番号は、様々な図面において対応する部分を指定する。しかしながら、これら図面は単に図例及び説明を目的とするためであり、本発明の範囲を規定しているつもりではないことを明確に理解すべきである。明細書及び特許請求の範囲に用いられるように、複数あることを述べなくても、文脈上他の意味を明らかに述べない限り、それらが複数あることも含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】本発明のある実施例による、ガス体にある1つ以上の分析物に関連する情報を決めるために構成されるシステムを概略的に説明している。
【図1B】本発明のある実施例による、ガス体にある1つ以上の分析物に関連する情報を決めるために構成されるシステムを概略的に説明している。
【図2】本発明のある実施例による、ガス体にある1つ以上の分析物に関連する情報を決めるために構成されるセンサの構造を概略的に説明している。
【図3】本発明のある実施例による、ガス体にある1つ以上の分析物に関連する情報を決めるために構成されるセンサの構造を概略的に説明している。
【図4】本発明のある実施例による、発光可能媒体を概略的に説明している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1Aを参照すると、ガス体にある1つ以上の分析物に関する情報を決めるために構成されるシステム10が説明されている。システム10は、センサ12、導管14及び処理器16を有する。ある実施例において、センサ12と導管14とは脱着可能なように互いに結合されることができる。図1Aは、センサ12から切り離された導管14を説明している。
【0009】
図1Bは、センサ12と導管14とが一緒に結合したときのシステム10を概略的に説明している。導管14は、ガス体が通過する流路18を備える。(例えば図1Bに説明されるように)センサ12が導管14に結合されている場合、センサ12は、センサ12と処理器16との間にある動作通信リンク(例えば有線リンク、無線リンク、不連続リンク、ネットワークを介したリンク等)を介して処理器16に供給される出力信号を生成するよう作動する。センサ12により生成した出力信号に基づいて、処理器16は、流路18内に配置されるガス体に含まれる1つ以上の分析物の1つ以上の特性に関する情報を決める。
【0010】
ある実施例において、導管14は、この導管14にガスを送出する及び/又は導管14からガスを受け取るもう1つの導管又は管類と結合されてもよい。その場合、導管14は通例、"気道アダプタ(airway adapter)"と呼ばれる。より特定の実施例において、導管14はガス送達システムの一部である流体回路の一部を形成する。例えば、このガス送達システムは、患者に呼吸療法を提供するように設計される。このような例において、導管14がその一部である流体回路は、患者の気道と通信するように構成される患者インターフェース器具にガスを送出する(例えばガス供給元及び/又は流れ発生器から)及び/又はその器具からガスを受け取る。患者インターフェース器具の幾つかの例は、例えば気管内チューブ、鼻カニューレ、気管切開チューブ、マスク又は他の患者インターフェース器具を含んでいる。本発明は、これらの例に限定されることなく、如何なるガス体にある分析物の決定を考慮している。
【0011】
ある実施例において、導管14は、この導管14が配置される流体回路を通り送出されるガス流における1つ以上のガス状分析物を監視するために構成されるシステムの構成要素を形成し、この導管14は選択的に前記流体回路から脱着可能である。これは、導管14が必要に応じて取り外される及び/又は置き換えられることを可能にする。例えば、導管14及び/又は導管14に含まれる若しくは担持される何らかの要素(例えば以下にさらに論じられる発光可能媒体20)が取り替えられない又は新しくされない場合、時間の経過と共に、導管14がそれの構成要素である、1つ以上のガス状分析物を監視するために構成されるシステムの性能は低下する。
【0012】
図1A及び図1Bに見られるように、ある実施例において、導管14は、発光可能媒体20を担持している。ある実施例において、センサ12は、エミッタ22及び感光検出器24を含む。
【0013】
センサ12及び導管14を脱着可能なように結合するために様々な機構が実施されてよいことを分かるべきである。幾つかの実施例において、センサ12を収容するハウジングの外面上に着座範囲(seating area)が設けられる。この着座範囲は、導管14を確実に受け取るのに適している。例えば、2003年9月9日公布、発明の名称"OXYGEN MONITORING APPARATUS"、出願人Labuda他の米国特許番号US 6,616,896号(以後'896特許)に開示される方法及び2003年10月14日公布、発明の名称"OXYGEN MONITORING APPARATUS"、出願人Blazerwiez他の米国特許番号US 6,632,402(以後'402特許)に開示される方法で、センサ12及び導管14は結合される。さらにこれら参考文献の両方は、エミッタ22、感光検出器24及び/又は発光可能媒体20の幾つか又は全てに類似する構成要素を含む(1)、並びにセンサ12及び処理器16に類似の方法でガス体にある1つ以上の分析物に関連する情報を決めるセンサを開示している。これにより'402特許及び'896特許は共に、参照することによりそれら全てを本開示に組み込まれる。これらの例は、限定を意味しているのではなく、センサ12及び導管14を結合するのに適した如何なる方法も使用され得ることが分かるべきである。加えて、もう1つの実施例において、センサ12及び導管14は、互いに恒久的に接続される又は少なくとも簡単には分離されないかである。
【0014】
センサ12と導管14とが結合されるとき、エミッタ22は、発光可能媒体20に向けた電磁放射線を放出する。以下にさらに説明されるように、エミッタ22により放射される電磁放射線は、発光可能媒体20を発光させる波長を持つ電磁放射線を含む。エミッタ22は、1つ以上の有機発光ダイオード(OLED)、レーザ(例えばダイオードレーザ又は他のレーザ源)、発光ダイオード(LED)、熱陰極管(HCFL)、冷陰極管(CCFL)、白熱灯、ハロゲン電球、受信する環境光及び/又は他の電磁放射線源を含んでもよい。
【0015】
ある実施例において、エミッタ22は、1つ以上の緑色及び/又は青色LEDを含む。これらLEDは一般に、発光可能媒体20の発光可能な構成要素の吸収領域において高い強度(intensity)を持ち、他の波長(例えば赤色及び/又は赤外線)で少量の放射線を出力する。これは、センサ12の迷干渉光(stray interfering light)及び/又は光分解を最小限にする。
【0016】
本発明は、LEDの用途に決して限定されない一方、LEDをエミッタ22として実装する他の利点は、軽量、コンパクト性、低電力消費、低い電圧要件、低い熱生成、信頼性、耐久性、比較的低コスト及び安定性を含む。さらに、これらは非常に素早く、確実に及び再現可能なようにオン及びオフを切り替えられる。
【0017】
幾つかの実施において、システム10は、エミッタ22により放射される放射線を誘導する、焦点合わせをする及び/又は別の方法で処理するために、センサ12及び/又は導管14の一方若しくは両方内に配置される1つ以上の光学素子(図示せず)を有する。例えば、1つ以上のレンズが放射線を選択した方向に視準してもよい。さらに特定の例として、組み込まれた'896及び'402特許は共に、エミッタ22に類似するエミッタにより放射される放射線を処理する光学素子の使用を開示している。フィルタ及びミラーも本発明に使用するのに考えられる。その上、本発明は、エミッタ及び検出器の物理的な配列が様々な配列の何れか1つにすることが可能であると考える。
【0018】
センサ12と導管14とが結合されるとき、エミッタ22からの電磁放射線は、(例えば既定の周波数を持つ、既定の最大及び/又は最小振幅を持つ等のような)既定の振幅変調を備えて、発光可能媒体20に到達する。ある実施例において、エミッタ22は、前記既定の振幅変調を備える電磁放射線を放射するように駆動する。もう1つの実施例において、センサ12は、エミッタ22により放射される電磁放射線の振幅を変調する1つ以上の光学素子(図示せず)を含む。前記1つ以上の光学素子は、1つ以上の定期的に駆動する能動素子(例えば液晶積層(liquid crystal stack)等)及び/又はエミッタ22により放射される電磁放射線の光学路内に及び光学路から定期的に移動する1つ以上の受動素子(例えばフィルタ、ハーフミラー等)を含む。
【0019】
導管14は、この導管14の壁に形成されるウィンドウ26を有する。ウィンドウ26は、センサ12と導管14とが結合されるとき、電磁放射線、例えばエミッタ22により放射される電磁放射線が導管14の内部に入る及び/又は出てくることを可能にするために、実質的に透過である。例えば、ウィンドウ26は、サファイア、1つ以上の高分子(例えばポリエチレン等)、ガラス及び/又は他の実質的に透過である材料から形成される。幾つかの実施例(図示せず)において、導管14がウィンドウ26に類似するウィンドウを2つ含んでもよい。'402特許に示される及び開示されるように、これら2つのウィンドウは、電磁放射線が導管14を通過することを可能にするために、導管14において互いに反対側に配置される。本実施例において、感光検出器24は、センサ12と導管14とが結合されるとき、エミッタ22とは反対側の導管14に位置決められる。
【0020】
発光可能媒体20は、エミッタ22からの放射線及び/又は何らかの他の励起エネルギーに応じて、エミッタ22により供給される電磁放射線の波長とは異なる波長で、実質的に無指向性方式により波線28で示される電磁放射線を放射するように発光する媒体である。この発光した電磁放射線28の強度及び/又は残光(persistence)は、導管14内にあるガス体に含まれる1つ以上の分析物の相対量に従って増減する。ある実施例において、酸素、二酸化炭素、1つ以上の麻酔薬及び/又は他のガス状分析物は、発光反応を消光(quenching)させることにより、この発光反応28の強度及び/又は残光を生じさせる。適切な分析物の濃度が増大するにつれて、発光放射線28の強度及び/又は残光の加減も増大する。幾つかの実施例において、分析物の濃度の増大により引き起こされる発光放射線28の強度及び/又は残光の加減は、発光放射線28の強度及び/又は残光の減少を含む。ある実施例において、発光可能媒体20は、(例えば以下に説明されるような)発光フィルムとして形成される。
【0021】
図1A及び図1Bに説明される実施例において、発光可能媒体20は、熱キャパシタ30と接触して、すぐ近くに又はそうでなければ熱的に結合したように配される。熱キャパシタ30は、発光可能媒体20を略一定の動作温度に保ち、それにより発光可能媒体20の温度の変化に起因するシステム10の不正確さを減少又は削除するのに用いられる。本発明は、熱キャパシタ30に加えて又はその代わりに、発光可能媒体20を略一定の動作温度に保つための如何なる加熱器又は熱制御システムを用いることも考慮していると理解されるべきである。
【0022】
感光検出器24は、センサ12と導管14とが結合される場合、感光検出器24が発光可能媒体20から少なくとも発光した電磁放射線28の一部を受信するようなセンサ12内に位置決められる。この受信した放射線に基づいて、感光検出器24は、受信した放射線の1つ以上の特徴に関連する1つ以上の出力信号を生成する。例えば、前記1つ以上の出力信号は、放射線の量、放射線の強度、放射線の変調及び/又は放射線の他の特徴に関連してもよい。ある実施例において、感光検出器24は、PINダイオードを有する。他の実施例において、他の感光装置が感光検出器24として用いられる。例えば、感光検出器24がダイオードアレイ、CCDチップ、CMOSチップ、光電子増倍管及び/又は他の感光装置の形式をとってもよい。
【0023】
図2は、1つ以上のフィルタ素子32がセンサ12内において発光可能媒体20と感光検出器24との間に位置決められている、感光検出器24を含むセンサ12の実施例を概略的に説明している。組み込まれる'896及び'402特許の両方に開示されるように、フィルタ素子32は一般に、発光可能媒体20が放射していない電磁放射線が感光検出器24に入射することを防ぐように構成される。例えば、ある実施例において、フィルタ素子32は、波長特定であり、発光放射線28がこの素子を通り、感光検出器24に入射することを可能にする一方、他の波長を持つ放射線(例えば、空間放射線、エミッタ22により放射される及びウィンドウ26から反射される電磁放射線等)を実質的にブロックする。
【0024】
図2に説明されるセンサ12の実施例において、センサ12は基準の感光検出器34及びビームスプリット素子36も含む。この組み込まれる'896特許に開示されるように、ビームスプリット素子36は、感光検出器24に向けて伝搬している放射線の一部を基準の感光検出器34に向ける。基準の感光検出器34により生成される1つ以上の出力信号は、感光検出器24により生成される1つ以上の出力信号におけるシステムノイズ(例えばエミッタ22における強度ゆらぎ等)を考慮する及び/又は補償するための基準として使用される。
【0025】
図2において、フィルタ32、基準の感光検出器34及びビームスプリット素子36がセンサ12内に置かれているように示されたとしても、これは説明を目的とするためであることを分かるべきである。他の実施例において、ビームスプリット素子36、基準の感光検出器34及び/又は1つ以上のフィルタ32の幾つか又は全てが導管14内に置かれてもよい。
【0026】
図3は、センサ12のさらにもう1つの構成を概略的に説明する。図3に説明される構成において、熱キャパシタ30は少なくとも一部が透光性であり、ウィンドウ26に隣接して置かれる。この構成において、発光可能媒体20は、キャパシタ30のウィンドウ26とは反対側において熱キャパシタ30と熱連通して位置決められる。発光可能媒体20は、キャパシタ30と発光可能媒体20との間の境界の反対側にある発光可能媒体20の側において流路18に曝されている。見られるように、エミッタ22が放射する電磁放射線38は、発光可能媒体20に入射するために、ウィンドウ26及び熱キャパシタ30の両方を通る。発光可能媒体20から放射された発光放射線28は、実質的に上述したのと同じように、熱キャパシタ30及びウィンドウ26を戻り、フィルタ素子32及び感光検出器24に入射する。この構成の例が米国特許出願番号11/368,832、公開番号US20060145078に開示されているので、この内容は参照することによりここに組み込まれる。幾つかの例において、熱キャパシタ30及びウィンドウ26は、単一の一体部品として形成されてもよい。
【0027】
図4は、本発明の1つ以上の実施例により、発光可能媒体20の側面図を概略的に説明している。図4に見られるように、発光可能媒体20は、少なくとも基板40とフィルム42とを含む。上述したように、発光可能媒体20は、これら発光可能媒体20の発光の1つ以上の特徴が1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受けるような、ガスに対して感受性のある構造である。例えば、ある実施例において、発光可能媒体20の発光の強度及び/又は残光は、前記1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける。
【0028】
基板40は、フィルム42がその上に形成及び/又は置かれるベースを供給する。例えば、基板40は、この機能を可能にする剛性及び表面特性を持つ如何なる有機又は無機材料から構成されてもよい。さらに、基板40を構成する材料は、発光可能媒体20の発光及び/又は発光可能媒体20から適切な検出器(図1から図3においてセンサ12)に発光放射線の伝達を実質的に抑えるべきではない。従って、ある実施例において、基板40は、発光可能媒体20から発光した電磁放射線及び/又は発光を励起させるために、発光可能媒体20に供給される電磁放射線に対し少なくとも幾分かは透光性である。例えば、基板40は、上記電磁放射線に対し実質的に透過でもよい。ある実施例において、基板40は、その上にフィルム42を置いた後、(例えば図1から図3に示される及び上述したシステムに類似するシステムを使用するために)別個のユニットに分離される1枚の基板材料を含む。
【0029】
フィルム42は、染料を担持する高分子マトリックスから構成される。ある実施例において、この染料は、1つ以上のガス状分析物に対し感受性があり、前記高分子マトリックスは、前記染料を基板40上のタクト(tact)に保持する構造を提供し、これにより発光可能媒体20である前記ガス感受性構造を作り出す。以下にさらに論じられるように、フィルム42は、向上した応答時間で向上したダイナミックレンジにわたり前記1つ以上のガス状分析物の濃度の検出を可能にするように形成される。
【0030】
フィルム42に含まれる染料は、如何なるガス感受性の発光染料(例えば蛍光染料)を含んでもよい。上記染料の幾つかの限定ではない例は、ポルフィリン(porphyrin)ベースの染料、ルテニウム(ruthenium)ベースの染料、パリレン(parylene)ベースの染料、イオン感受性フルオロファ(fluorophre)(例えばフルオロセイン(fluoroscein)ベースの染料、ピレン(pyrene)ベースの染料等)及び/又は他のガス感受性染料を含む。前記1つ以上のガス状分析物が酸素、二酸化炭素、麻酔剤及び/又は他のガス組成の1つ以上を含むような染料が選択される。
【0031】
フィルム42における高分子マトリックスは、前記染料を固定することが可能である如何なる高分子(又は高分子の組み合わせ)から形成されてもよい。上記染料の幾つかの限定ではない例は、メタクリル、シリカエアロゲル(silica aerogel)、ポリカーボネート、ポリスチレン、PVC、ビニルピロリドン(vinyl pyrrolidone)、ポリエステル及び/又は他の高分子を含んでいる。幾つかの例において、前記マトリックスを形成するのに用いられる高分子は、発光可能媒体20に供給される放射線に対し少なくとも一部が透光性(例えば実質的に透過)であり、発光可能媒体20の発光及び/又は発光可能媒体20から適切な検出器への発光放射線の伝達を実質的に抑制しないように、発光可能媒体20から発光する発光放射線及び/又は発光を励起する。発光可能媒体20のダイナミックレンジ及び/又は応答時間の一方若しくは両方を向上させるために、フィルム42の高分子マトリックスを形成するのに用いられる高分子の特徴(例えば架橋結合、分子量等)のみに頼る代わりに、発光可能媒体20のこれらの特徴及び/又は他の特徴を向上させるように構成される構造を持つフィルム42の高分子マトリックスが形成される。
【0032】
ここに用いられるように、"ダイナミックレンジ"という用語は、発光可能媒体20の発光に基づいて検出される1つ以上の分析物の濃度範囲を指している。一般に、前記高分子マトリックスの外で発光可能媒体20を形成するのに用いられる染料は、比較的低いダイナミックレンジを持つ。例えば、前記染料が高分子マトリックスの外側にあった場合、すなわち高分子マトリックスが前記染料の実質的に自由な、周囲のガスへのアクセスを提供した場合、前記ガス内にある1つ以上のガス状分析物は前記発光を消光するために前記染料にアクセスすることができる染料内の"位置"の全ては、前記1つ以上のガス状分析物のかなり低い濃度により飽和されてもよい。
【0033】
高分子マトリックスを形成するのに用いられる高分子が前記1つ以上のガス状分析物の染料へのアクセスを抑制しない場合、この飽和点よりも高い濃度の前記1つ以上のガス状分析物の存在が追加の消光を生じさせないだろう。代わりに、この高い濃度は、フィルム42の染料を飽和した1つ以上のガス状分析物の同様のかなり低い濃度として、前記発光の消光を検出するセンサ(例えば図1から図3に示されるセンサ12)により感知され、前記1つ以上のガス状分析物の濃度のセンサによる不正確な測定値を生じさせる。
【0034】
この飽和を避けるために、前記1つ以上のガス状分析物を前記マトリックスに拡散するのを可能にする架橋度及び/又は分子量を持つ高分子マトリックスを形成するための高分子が選択される。前記染料にアクセスするために前記1つ以上のガス状分析物を前記高分子マトリックスの高分子を介し拡散することはさらに、これら1つ以上のガス状分析物の拡散が1つ以上のガス状分析物の濃度の関数となるので、発光可能媒体20のダイナミックレンジを増大させる。ある実施例において、前記高分子マトリックスは、発光可能媒体20のダイナミックレンジは前記1つ以上のガス状分析物の少なくとも約20%から約90%までの濃度であるような架橋度及び/又は分子量を持つ高分子を用いて形成される。ある実地例において、前記高分子マトリックスは、前記発光可能媒体20のダイナミックレンジが少なくとも約20%から95%まであるような架橋度及び/又は分子量を持つ高分子を用いて形成される。ある実施例において、発光可能媒体20のダイナミックレンジは、少なくとも約20%から約100%まであるような架橋度及び/又は分子量を持つ高分子を用いて形成される。
【0035】
一般に、発光可能媒体20の比較的大きなダイナミックレンジを生じさせる架橋度及び/又は分子量を持つ高分子マトリックスの高分子が選択される場合、そのダイナミックレンジにわたり前記染料にアクセスするために前記1つ以上のガス状分析物を前記高分子マトリックスを介する拡散処理は、(例えば前記1つ以上の分析物が前記マトリックスを介し拡散するので)前記1つ以上のガス状分析物の分子が染料と接触するのに要する時間にも影響する。特に、分子が染料に到達するのに要する時間は増大し、これが発光可能媒体20と連通するガス体にある1つ以上のガス状分析物の濃度の変化と、これら1つ以上のガス状分析物により供給される消光する量の対応する変化との間にある遅延を増大させる。この開示を目的として、この遅延は、発光可能媒体20の"応答時間"と呼ばれている。
【0036】
より特定的な"限定ではない"応答時間の定義の例は、発光可能媒体20により供給される信号が前記1つ以上のガス状分析物の濃度の変化に応じて、その濃度の変化に応じて前記信号がもたらすその変化の何かの下方のパーセンテージから、その濃度の変化に応じて前記信号がもたらすその変化の何かの上方のパーセンテージまで行くのに要する時間である。幾つかの例において、前記信号の変化の下方のパーセンテージは、その変化の10%と規定され、前記信号の変化の上方のパーセンテージはその変化の90%と規定される。
【0037】
発光可能媒体20と連通するガス体が、前記1つ以上のガス状分析物の濃度の突然の変化に左右されない実施例において、すなわち上記変化の検出の遅延が大して重要ではない場合、前記1つ以上のガス状分析物がフィルム42の高分子マトリックスに拡散することにより生じる応答時間の遅延は、例えば図1から図3に示されると共に、上述されるような発光可能媒体20を含むシステムの動作を抑制しない。しかしながら、他の実施例において、ガス体にある1つ以上のガス状分析物の濃度は、(例えば、発光可能媒体20の発光に基づいて)かなり小さな遅れ(lag)を用いて定量化されるべきである。上述した高分子マトリックスの強化(例えば向上したダイナミックレンジ)を提供するために、フィルム42の高分子マトリックスは、1つ以上のガス状分析物の分子よりも幾分か大きな開口を形成すべきである。これは、高分子マトリックス及び染料の有効表面範囲を増大させ、前記1つ以上のガス状分析物を上述した高分子マトリックスに拡散することに関連する利点を維持する一方、発光可能媒体20の前記応答時間を許容可能しきい値より下に保つ。
【0038】
発光可能媒体20の応答時間に対する許容可能しきい値は、監視される1つ以上のガス状分析物の関数、このガス体の性質及び/又は組成、及び/又は発光可能媒体20が前記1つ以上のガス状分析物を監視するのに実施するシステムの動作要件であることを分かるべきである。前記応答時間の幾つかの限定ではない例は、約90ミリ秒、約80ミリ秒及び約60ミリ秒を含む。幾つかの例において、発光可能媒体20の応答時間に対する許容可能しきい値は、発光可能媒体20のダイナミックレンジの少なくとも一部にわたり応答時間を指定する。幾つかの例において、前記発光可能媒体20の応答時間に対する許容可能しきい値は、実質的に発光可能媒体20の全ダイナミックレンジにわたり応答時間を指定する。
【0039】
上述したことより、フィルム42の設計において、発光可能媒体20のダイナミックレンジと、発光可能媒体20の応答時間との間に均衡(tension)が存在する、すなわち、高分子マトリックスに対し異なる高分子を選択することを介してダイナミックレンジが増大するため、応答時間が増大する、又はその反対もあることを分かるべきである。上述したように、従来は、フィルム42のダイナミックレンジ及び応答時間は主にフィルム42を形成するのに用いられる、例えば架橋度及び分子量のような高分子のパラメタの関数である。上述したフィルム42における高分子マトリックスの多孔率は、比較的大きなダイナミックレンジを可能にするために、従来の発光可能媒体に適さなかった(例えば結果生じるフィルムの比較的大きな応答時間が原因により)フィルム42に高分子が実装されることを可能にする一方、許容可能及び/又は向上した応答時間を保つ。本実施例において、発光可能媒体20のダイナミックレンジ及び応答時間にある相互制約は、従来の実質的に多孔質ではない発光可能媒体にわたり緩和される。さらに、多孔率及び/又は高分子(異なる高分子パラメタと)の異なる組み合わせは、従来の多孔質ではない発光可能媒体において、異なる高分子間を簡単に切り替えることにより利用可能であるよりも、ダイナミックレンジと応答時間との間にある固有のトレードオフの良好なカスタマイズを容易にする。
【0040】
ある実施例において、フィルム40の高分子マトリックス(及び含まれる染料)を基板42に設けるために、高分子マトリックス及び染料は、例えば堆積した後、前記溶剤を前記マトリックスから蒸発させるために、低い沸点を持つ溶剤を用いた一連の液滴として前記基板42に塗布されてもよい。例えばそれはスパッタリング、スピンコーティング、蒸着、吹き付け及び/又は他のコーティング処理のようなコーティング処理である。前記マトリックスの多孔性、前記マトリックスにより形成される開口の大きさ及び/又は前記マトリックスの他の特徴は、前記コーティング処理のパラメタを調節することにより制御されてもよい。基板40上にフィルム42を形成することが限定ではないこと意味すること分かるべきである。幾つかの実施例において、フィルム42は、基板40から切り離して適切な多孔率で形成され、次いで例えば接着剤等を用いて基板40に取り付けられてもよい。ある実施例において、高分子マトリックスは、10%よりも高い多孔率で形成される。ある実施例において、高分子マトリックスは、12%よりも高い多孔率で形成される。
【0041】
本発明が最も実用的で好ましい実施例であると現在考えられるものに基づいて、説明を目的に詳細に説明されたとしても、このような詳細が単にそれを目的とするだけであり、本発明が開示された実施例に限定されない一方、添付する請求項の精神及び範囲内にある修正案及び同等な装置も含んでいることを意味すると理解すべきである。例えば、本発明が可能な限り、何れかの実施例の1つ以上の特徴が他の何れかの実施例の1つ以上の特徴と組み合わされることができることを意図していると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のガス状分析物を監視するように構成されるシステムの構成要素であり、
(a)ガス流がその中を通ることを可能にするように形成される導管、
(b)前記ガス流内にある1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある、前記ガス流と連通して配置されるガス感受性フィルム、
を有する構成要素において、
前記フィルムは、
(1)前記1つ以上のガス状分析物に対し感受性がある染料、及び
(2)前記染料を担持する高分子マトリックス
を有し、ここで前記高分子マトリックスは、多孔質であると共に、前記フィルムが(i)前記1つ以上のガス状分析物の少なくとも約20%から約90%までの濃度のダイナミックレンジ、及び(ii)約80ミリ秒未満の前記ダイナミックレンジの少なくとも一部にわたる応答時間を持つように形成される、
構成要素。
【請求項2】
前記1つ以上のガス状分析物の前記約20%から約90%までの濃度の前記フィルムの応答時間は約80ミリ秒未満である請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記高分子マトリックスは、前記1つ以上のガス状分析物の分子直径よりも大きな物理的な開口を形成する請求項1に記載の構成要素。
【請求項4】
前記染料は発光性であり、前記染料の発光の1つ以上の特徴は、前記1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける請求項1に記載の構成要素。
【請求項5】
前記染料の発光の強度及び残光は、前記1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける請求項4に記載の構成要素。
【請求項6】
前記高分子マトリックス及び/又は基板の一方又は両方は、前記染料により発光される電磁放射線に対し少なくとも幾分かは透光性である請求項1に記載の構成要素。
【請求項7】
前記1つ以上のガス状分析物は酸素を有する請求項1に記載の構成要素。
【請求項8】
(a)基板、及び
(b)1つ以上のガス状分析物に対し感受性のある、前記基板上に置かれるフィルム
を有するガス感受性構造において、前記フィルムは、
(1)10%より大きな多孔率を持つ高分子マトリックス、及び
(2)前記1つ以上のガス状分析物に対し感受性のある、前記高分子マトリックスにより担持される染料
を有するガス感受性構造。
【請求項9】
前記染料は発光性であり、前記染料の発光の1つ以上の特徴は、前記1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける請求項8に記載の構造。
【請求項10】
前記染料は、第2の波長の電磁放射線に曝されることに応じて、第1の波長の電磁放射線を発光する請求項9に記載の構造。
【請求項11】
前記染料によって、前記第1の波長で発光される前記電磁放射線の1つ以上の特徴は、前記1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける請求項10に記載の構造。
【請求項12】
前記染料の発光の強度及び/又は残光は、前記1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける請求項9に記載の構造。
【請求項13】
前記高分子マトリックス及び/又は前記基板の一方又は両方は、前記染料により発光される電磁放射線に対し少なくとも幾分かは透光性である請求項8に記載の構造。
【請求項14】
前記1つ以上のガス状分析物は酸素を有する請求項8に記載の構造。
【請求項15】
(a)基板、及び
(b)1つ以上のガス状分析物に対し感受性のある、前記基板上に置かれるフィルム
を有するガス感受性構造において、前記フィルムは、
(1)前記1つ以上のガス状分析物に対し感受性のある染料、及び
(2)前記染料を担持する高分子マトリックス
を有し、前記高分子マトリックスは、(i)前記1つ以上のガス状分析物の少なくとも約20%から約90%までの濃度のダイナミックレンジ、及び(ii)約80ミリ秒未満の前記ダイナミックレンジの少なくとも一部にわたる応答時間を持つように形成される、
ガス感受性構造。
【請求項16】
前記1つ以上のガス状分析物の約20%から約90%までの濃度の前記フィルムの応答時間は約80ミリ秒未満である請求項15に記載の構造。
【請求項17】
前記高分子マトリックスは、多孔質であると共に、前記1つ以上のガス状分析物の前記分子直径よりも大きな開口を形成する請求項15に記載の構造。
【請求項18】
前記染料は発光性であり、前記染料の発光の1つ以上の特徴は、前記1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける請求項15に記載の構造。
【請求項19】
前記染料は、第2の波長の電磁放射線に曝されることに応じて、第1の波長の電磁放射線を発光する請求項18に記載の構造。
【請求項20】
前記染料により、前記第1の波長で発光される前記電磁放射線の1つ以上の特徴は、1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける請求項19に記載の構造。
【請求項21】
前記染料の前記発光の強度及び/又は残光は、前記1つ以上のガス状分析物があることによって影響を受ける請求項18に記載の構造。
【請求項22】
前記高分子マトリックス及び/又は前記基板の一方又は両方は、前記染料により発光される電磁放射線に対し少なくとも幾分かは透過である請求項15に記載の構造。
【請求項23】
前記1つ以上のガス状分析物は酸素を有する請求項15に記載の構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−516877(P2011−516877A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503526(P2011−503526)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051401
【国際公開番号】WO2009/125325
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】