説明

ガス成分計測装置及び方法

【課題】ガス組成以外に、煤塵濃度、炭化水素濃度を一度の計測で同時に測定することができるガス成分計測装置及び方法を提供する。
【解決手段】基本レーザ光(YAGレーザ光:1064nm)11Aを発振するレーザ装置13と、発振された基本レーザ光11Aを532nmのYAG第2高調波の第1の波長変換レーザ光11Bに波長変換する第1の波長変換部12Aと、532nmの第1の波長変換レーザ光11Bを導入し、被測定ガスGに照射して第1のラマン散乱光15を発生させる測定チャンバ20と、発生した第1のラマン散乱光15Aを計測するラマン散乱光検出器18とを具備し、波長532nmの第1の波長変換レーザ光11Bの計測結果により、被測定ガスGのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ計測において被測定ガス中のガス組成以外に、煤塵濃度、炭化水素濃度を一度の計測で同時に測定することができるガス成分計測装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガス中のダスト(煤塵)成分の濃度をレーザ照射によるミー散乱光により計測することが知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−24249号公報
【特許文献2】特開2005−24250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のレーザ装置で煤塵濃度を求めるには、ミー散乱光を計測するという独自の操作が必要であり、レーザラマン散乱分析とは別の計測装置が必要であった。
しかしながら、独立の装置構成は大掛かりとなり、コンパクトなガス成分分析と、煤塵濃度分析とを同時にできる分析手法の確立が要望されている。
特に、単一の検知手段のみを使用することにより、複数の分析(ガス組成、煤塵濃度、炭化水素濃度)が実現することができれば、装置内部品点数を減少でき、コンパクトな分析装置が提供できることとなる。すなわち、複数の分析装置を用いる場合には、各々の装置のメンテナンスが必要となり、コストと手間がかかるという問題もある。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑み、ガス組成以外に、煤塵濃度、炭化水素濃度を単一の検知装置で同時に測定することができるガス成分計測装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、基本レーザ光を発振するレーザ照射装置と、発振された基本レーザ光を第1の波長変換レーザ光に波長変換する第1の波長変換部と、波長変換された第1の波長変換レーザ光を導入し、被測定ガスに照射して第1のラマン散乱光を発生させる測定チャンバと、発生した第1のラマン散乱光を計測するラマン散乱光検出器とを具備し、第1のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求めることを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0007】
第2の発明は、基本レーザ光を発振するレーザ照射装置と、発振された基本レーザ光を第1波長変換レーザ光に波長変換する第1の波長変換部と、基本レーザ光と第2の波長変換レーザ光とを合波させ、その合波光を第2の波長変換レーザ光に波長変換する第2の波長変換部と、第2波長変換レーザ光を導入し、被測定ガスに照射して第2のラマン散乱光を発生させる測定チャンバと、発生した第2のラマン散乱光を計測するラマン散乱光検出器とを具備し、第2のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵と炭化水素とを濃度をベースラインより求めることを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0008】
第3の発明は、基本レーザ光を発振するレーザ照射装置と、発振された基本レーザ光を第1波長変換レーザ光に波長変換する第1の波長変換部と、第1波長変換レーザ光を導入し、被測定ガスに照射して第1のラマン散乱光を発生させる測定チャンバと、基本レーザ光と第2の波長変換レーザ光とを合波させ、その合波光を第2の波長変換レーザ光に波長変換する第2の波長変換部と、第2波長変換レーザ光を導入し、被測定ガスに照射して第2のラマン散乱光を発生させる測定チャンバと、発生した第1又は第2のラマン散乱光を計測するラマン散乱光検出器とを具備し、第1のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求め、且つ、第2のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵と炭化水素とを濃度をベースラインより求め、両者の差分から煤塵濃度を推定することを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0009】
第4の発明は、第1乃至請求項3のいずれか一つの発明において、基本レーザ光が1064nmのYAGレーザ光であることを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0010】
第5の発明は、第2又は3の発明において、基本レーザ光が1064nmのYAGレーザ光であり、第1波長変換レーザ光が532nmのYAGレーザ光の第2高調波であり、第2波長変換レーザ光が355nmのYAGレーザ光の第3高調波であることを特徴とするガス成分計測装置にある。
【0011】
第6の発明は、400nm〜1,100nmのレーザ光を測定チャンバ内に導入し、被測定ガスに照射して第1のラマン散乱光を発生させ、発生した第1のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求めることを特徴とするガス成分計測方法にある。
【0012】
第7の発明は、400nm以下のレーザ光を測定チャンバ内に導入し、被測定ガスに照射して第2のラマン散乱光を発生させ、発生した第2のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度と炭化水素の濃度とをそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求めることを特徴とするガス成分計測方法にある。
【0013】
第8の発明は、400nm〜1,100nmのレーザ光を測定チャンバ内に導入し、被測定ガスに照射して第1のラマン散乱光を発生させ、400nm以下のレーザ光を測定チャンバ内に導入し、被測定ガスに照射して第2のラマン散乱光を発生させ、第1のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求め、且つ、第2のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵と炭化水素とを濃度をベースラインより求め、両者の差分から煤塵濃度を推定することを特徴とするガス成分計測方法にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の波長のレーザ光を用いてラマン散乱光のピーク信号スペクトルからガス組成を求めると共に、そのピーク信号スペクトルを除いたベースラインを煤塵濃度として求めることができ、単一の検知装置でガス成分と煤塵濃度と炭化水素濃度とを同時に測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1に係るガス成分計測装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係るガス成分計測装置の概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係るガス成分計測装置の概略図である。
【図4】図4は、バイオマスガス化ガスを第1の波長変換レーザ光(532nm)で計測したラマン散乱光のピーク信号スペクトルチャートである。
【図5】図5は、バイオマスガス化ガスを第2の波長変換レーザ光(355nm)で計測したラマン散乱光のピーク信号スペクトルチャートである。
【図6−1】図6−1は、波長532nmにおけるミー散乱光強度と煤塵濃度との関係の検量線である。
【図6−2】図6−2は、波長355nmにおけるミー散乱光強度と煤塵濃度との関係の検量線である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0017】
本発明による実施例に係るガス成分計測装置及び方法について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係るガス成分計測装置の概略図である。
図1に示すように、ガス成分計測装置10Aは、基本レーザ光(YAGレーザ光:1064nm)11Aを発振するレーザ装置13と、発振された基本レーザ光11Aを532nmのYAG第2高調波の第1の波長変換レーザ光11Bに波長変換する第1の波長変換部12Aと、532nmの第1の波長変換レーザ光11Bを導入し、被測定ガスGに照射してラマン散乱光15を発生させる測定チャンバ20と、発生した第1のラマン散乱光15Aを計測するラマン散乱光検出器18とを具備し、波長532nmの第1の波長変換レーザ光11Bの計測結果により、被測定ガスGのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求めるようにしたものである。
【0018】
本発明では、基本レーザ光として、特定のレーザ光(YAGレーザの第2高調波:532nm)を用いることで、ガス組成成分と煤塵成分とを同時に把握することができる。
図4はバイオマスガス化ガスを第1の波長変換レーザ光(532nm)で計測したラマン散乱光のピーク信号スペクトルチャートである。
ここで、図4中、そのピーク信号スペクトルを除いたベースラインが煤塵起因のミー散乱光による濃度である。
【0019】
一般にはベースラインは静電ノイズや迷光などのノイズ情報でしかないが、532nmの第1の波長変換レーザ光11Bを用いる場合には、このベースラインの情報には煤塵に起因するミー散乱光が含まれているので、煤塵濃度情報として価値がある。
【0020】
本発明では、波長としてYAGレーザ光の第2高調波である532nmを用いているが、本発明はこれに限定されず、400nm以上のレーザ光、さらに好適には500nm以上のレーザ光とするのが好ましい。なお、波長が長くなるにつれてミー散乱強度が減少するので、400〜1,100nmの範囲、より好適には400〜700nmの範囲のレーザ光を用いることが好ましい。
【0021】
ここで、本実施例では、ラマン散乱光検出器18は、第1の波長変換レーザ光11Bの照射により発生する第1のラマン散乱光15Aを計測する分光部16とICCD(Intensified Charge Coupled Device)カメラ17から構成されている。
ここで、図1において、符号14は被測定ガスGが導入され、第1の波長変換レーザ光11Bを照射してガス成分を計測する測定チャンバ20内の測定領域、21aは第1の波長変換レーザ光11Bを反射する反射ミラー、22は第1の波長変換レーザ光11Bを集光する集光レンズ、23はデータ処理手段(CPU)を各々図示する。
【0022】
ここで、レーザ装置13からの基本レーザ光11Aは、第1の波長変換部12Aにより、基本レーザ光(YAG:1064nm)11Aを532nmのYAGレーザの第2高調波の第1の波長変換レーザ光11Bに波長変換させ、反射ミラー21aを介して測定チャンバ20側へ反射させて、集光手段である集光レンズ22により集光し、次いで測定チャンバ20内へ送られ、測定領域14内に第1の波長変換レーザ光11Bを入射させ、測定チャンバ20内に導入される被測定ガスGへ照射している。
なお、測定チャンバ20は被測定バスGを内部に導入、保持又は排出させる機能を有するものであり、この導入は、生成ガスを送球する送給管の一部を又は送給管から分枝させて導入するようにしてもよい。
【0023】
また、測定領域14の中心部から散乱された第1のラマン散乱光15Aは、例えば偏光子、集光レンズ及びフィルタ等の光学群(図示せず)を介して分光部16で分光され、該分光部16に接続されたICCDカメラ17により各波長の光の強度を計測する。
前記ICCDカメラ17からの計測データは、データ処理手段(CPU)23に送られ、ここで計測データの処理がなされる。
また、同時に発生する煤塵起因のミー散乱光も同様に計測され、計測データの処理がなされる。
【0024】
図4はバイオマスガス化ガスのラマン散乱光計測結果のチャートである。図4に示すように、水素(H2)が8%、水(H2O)が62%、二酸化炭素(CO2)が12%、一酸化炭素(CO)が6%、メタン(CH4)が1%、窒素(N2)が12%である。なお割合はチャートからの計算による。
本発明では、特定の532nmのYAGレーザの第2高調波の第1の波長変換レーザ光11Bを用いてラマン散乱光のピーク信号スペクトルからガス組成を求めると共に、そのピーク信号スペクトルを除いたベースラインから煤塵濃度を求めることができ、一度の計測でガス成分と煤塵濃度とを同時に測定が可能となる。
【0025】
以下に、レーザ装置を用いたガス組成及び煤塵濃度を同時に計測できるガス成分計測装置10Aの各構成部材について説明する。
【0026】
なお、測定チャンバ20内に設けられるパワーメータ26は、レーザ装置13から出力される第1の波長変換レーザ光11Bの進行方向上に設けられており、第1の波長変換レーザ光11Bの出力を正確に計測することが出来る計算機器である。この数値をフィードバックし、レーザ装置13の出力を調整する。
これにより、レーザ光の位置検出精度が向上し、光軸修正を迅速に行うことが可能となる。ただし、劣悪環境では不向きである。
【0027】
また、反射ミラー21aは、波長変換された第1の波長変換レーザ光11Bの進行方向を、被測定ガスGの存在する測定チャンバ20の方向へ、反射により向けさせるミラーである。このミラー21aの角度を調整することにより、測定領域14内で任意の位置での計測を可能としている。
【0028】
次に、第1の波長変換レーザ光11Bが照射できるような形で被測定ガスGを保持又は流通させる機能を有する測定チャンバ20について説明する。測定チャンバ20は、計測される被測定ガスGが内部に存在しており、それを外部(レーザ部や分光器を含む)にリークさせないような構造をしている。なお、測定用の第1の波長変換レーザ光11B及び被測定ガスGからの第1のラマン散乱光15Aは、第1の窓27−1及び第2の窓27−2から出入りする。
【0029】
第2の窓27−2は、被測定バスGを外部へ流出させないための石英ガラス製の窓である。石英ガラス製にしているのは、その窓を第1の波長変換レーザ光11Bが透過できるようにするためである。なお、この窓は二重にしており、石英ガラス1枚が破損しても、ガスがリークしないようにしている。
【0030】
また、測定チャンバ20の第1の波長変換レーザ光11Bの通路には、電磁弁(図示せず)が設けられており、通常は、閉じている。これは、長期間に亙って測定チャンバ20側の第2の窓27−2を被測定バスGに曝しておくと、該被測定バスG中の不純物により、第2の窓27−2が汚れてしまい、その汚れの為にレーザによる測定が困難となるからである。なお、前記電磁弁は測定時には開口される。
【0031】
測定チャンバ20は、第1の波長変換レーザ光11Bの進行方向上の被測定ガスGが存在している測定領域14を含む場所であり、該測定領域14に存在する被測定ガスGに第1の波長変換レーザ光11Bが照射されることにより測定がなされる。ただし、被測定ガスGは、この場所で留まっている必要は無く、ガス供給用の配管の途中であって、その配管中をガスが滞留することなく流れている(動いている)状態であっても測定可能である。
【0032】
また、被測定ガスGからの第1のラマン散乱光15Aを分光し、測定データとして取り出す機能を有する分光部16を有するラマン散乱光検出器18について説明する。ここで、測定領域14の中心部から散乱された第1のラマン散乱光15Aは、第1の波長変換レーザ光11Bからある角度をなして、第2の窓27−2及び第1の窓27−1を経由して分光部16へ入る。
【0033】
上記分光部16内に設けられる偏光子(図示せず)は、特定の偏光面を持つ散乱光のみを進行方向は変えずに透過させる偏光手段であり、この偏光子で透過した散乱光は、集光レンズ(図示せず)により集光された後に、フィルタ(図示せず)により、特定の波長の散乱光のみ透過させるようにしている。
【0034】
そして、特定の波長領域となった第1のラマン散乱光15Aは分光部16で分光され、ここに接続されているICCDカメラ17により、光の強度を計測している。そして、このICCDカメラ17は光電子増倍型のデバイスであり、ここで分光部16により分光された各波長の光の強度を計測するようにしている。また、光検出器は、ICCDカメラの他に、例えばアバランシェ・フォトダイオード(APD)、光電子増倍管(PMT)等を例示することができる。
【実施例2】
【0035】
図2は、実施例2に係るガス成分計測装置の概略図である。
図2に示すように、ガス成分計測装置10Bは、基本レーザ光(1064nm)11Aを発振するレーザ装置13と、発振された基本レーザ光11Aを532nmの第2高調波の第1の波長変換レーザ光11Bに波長変換する第1の波長変換部12Aと、基本レーザ光(1064nm)11Aを第1の波長変換部12Aの後流側に迂回させる迂回光路と、1064のnmの基本レーザ光11Aと532nmの第1高調波のレーザ光11Bとの合波光11Cを第3高調波(355nm)の第2波長変換レーザ光11Dに波長変換する第2の波長変換部12Bと、355nmの第2の波長変換レーザ光11Dを導入し、被測定ガスGに照射して第2のラマン散乱光15Bを発生させる測定チャンバ20と、発生した第2のラマン散乱光15Bを計測するラマン散乱光検出器18とを具備し、波長355nmの第2の波長変換レーザ光11Dの計測結果により、被測定ガスGのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵及び炭化水素(HC)濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求めるようにしたものである。
ここで、21b、21c、21dは反射ミラーであり、第1の波長変換部12Aを迂回する迂回光路を形成している。
【0036】
実施例2では、1064nmの基本レーザ光11Aと532nmの第1の波長変換レーザ光11Bとを合波させて合波光11Cとし、この合波光11Cを第2の波長変換部12Bにより355nmの第2の波長変換レーザ光11Dとし、この第2の波長変換レーザ光11Dを用いて、355nm以下の波長をカットして検出器18で検出することで、ガス組成と、煤塵濃度(ミー散乱光)とHC(蛍光)濃度とを併せたものを計測できる。
【0037】
図5がその結果を示すチャートである。ここで、図5中、ベースラインが煤塵濃度(ミー散乱光)と炭化水素(HC)濃度(蛍光)とを併せたものである。
【0038】
一般にはベースラインは静電ノイズや迷光などのノイズ情報でしかないが、355nmの第2の波長変換レーザ光11Dを用いる場合には、このベースラインの情報には煤塵に起因するミー散乱光と炭化水素に起因する蛍光とが含まれているので、煤塵濃度情報及び炭化水素濃度情報として価値がある。
【0039】
本発明では、波長としてYAGレーザ光の第3高調波である355nmを用いているが、本発明はこれに限定されず、400nm以下の蛍光を発生させるレーザ光を用いるのが好ましい。
【実施例3】
【0040】
図3は、実施例3に係るガス成分計測装置の概略図である。
図3に示すように、ガス成分計測装置10Cは、基本レーザ光(1064nm)11Aを発振するレーザ装置13と、発振された基本レーザ光11Aを532nmの第2高調波の第1の波長変換レーザ光11Bに波長変換する第1の波長変換部12Aと、基本レーザ光(1064nm)を第1の波長変換部12Aの後流側に迂回させる迂回光路と、1064のnmの基本レーザ光11Aと532nmの第1の波長変換レーザ光11Bとの合波光11Cを、第3高調波(355nm)の第2の波長変換レーザ光11Dに波長変換する第2の波長変換部12Bと、532nmの第1の波長変換レーザ光11Bと、355nmの第2の波長変換レーザ光11Dとを時間遅れで導入し、被測定ガスGに照射して第1及び第2のラマン散乱光15A、15Bを発生させる測定チャンバ20と、発生した第1及び第2のラマン散乱光15A、15Bを計測するラマン散乱光検出器18とを具備し、波長532nmの第1の波長変換レーザ光11Bの計測結果により、被測定ガスGのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求め、且つ波長355nmの第2の波長変換レーザ光11Dの計測結果により、被測定ガスGのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵及び炭化水素(HC)濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求め、両者の差分から煤塵濃度を推定するようにしたものである。なお、図3中、符号22a、22bはレンズ、21e〜21gは反射ミラーを図示する。
【0041】
ここで、両者の差分から煤塵濃度を推定する工程を説明する。
図6−1は、波長532nmにおけるミー散乱光強度と煤塵濃度との関係の検量線である。図6−2は、波長355nmにおけるミー散乱光強度と煤塵濃度との関係の検量線である。
【0042】
工程1) 実施例3では、実施例1と実施例2とを組合せた構成であり、波長532nmの第1の波長変換レーザ光11Bの計測結果により、計測値(例えば1.8A.U)から煤塵濃度(1.0mg/mN)を、第1の検量線(図6−1)により求める。
工程2) 次に、波長355nmの第2の波長変換レーザ光11Dの計測結果により、煤塵濃度(1.0mg/mN)から、ミー散乱光強度(例えば15A.U)を、第2の検量線(図6−2)により求める。
工程3) そして、波長355nmの第2の波長変換レーザ光11Dでの実際の計測値から、工程2)により求めたミー散乱光強度(例えば15A.U)を除して、炭化水素(HC)の濃度を求める。
【0043】
ここで、炭化水素(HC)は、アントラセンやナフタレンといった炭化水素類の集合物であり、その濃度の傾向により燃焼状況を予測することができる。
さらには、特定のHC(例えばアントラセンやナフタレン等)を予め検量線を作成しておき、その検量線にHC濃度を当てはめて、大凡のアントラセンやナフタレン等濃度を求めるようにしてもよい。
【0044】
本発明にかかるガス成分計測装置は、例えば加圧流動床ボイラ、ガス化炉、コークス炉等からの生成ガスの煤塵濃度の計測や、例えばタービンやガスエンジン、各種ボイラに供給される導入ガスのガス中の煤塵濃度を計測する際において、レーザ光の光軸を常に監視することで長期間に亙って安定してガス成分計測を行うことができることとなる。
また、発電プラントのみならず、化学プラントから得られる有用ガス(例えばGTL)のガス組成を計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係るガス成分計測装置によれば、係る長期間に亙って安定してガス成分の計測と共に、被測定ガス中の煤塵濃度、炭化水素(HC)濃度を同時に得られる。
【符号の説明】
【0046】
10A〜10C ガス成分計測装置
11A 基本レーザ光(1064nm)
11B 第1の波長変換レーザ光(532nm)
11C 合波光
11D 第2の波長変換レーザ光(355nm)
12A 第1の波長変換部
12B 第2の波長変換部
G 被測定ガス
13 レーザ装置
14 測定領域
15A 第1のラマン散乱光
15B 第2のラマン散乱光
18 ラマン散乱光検出器
20 測定チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本レーザ光を発振するレーザ照射装置と、
発振された基本レーザ光を第1の波長変換レーザ光に波長変換する第1の波長変換部と、
波長変換された第1の波長変換レーザ光を導入し、被測定ガスに照射して第1のラマン散乱光を発生させる測定チャンバと、
発生した第1のラマン散乱光を計測するラマン散乱光検出器とを具備し、
第1のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求めることを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項2】
基本レーザ光を発振するレーザ照射装置と、
発振された基本レーザ光を第1の波長変換レーザ光に波長変換する第1の波長変換部と、
基本レーザ光と第1の波長変換レーザ光とを合波させ、その合波光を第2の波長変換レーザ光に波長変換する第2の波長変換部と、
第2の波長変換レーザ光を導入し、被測定ガスに照射して第2のラマン散乱光を発生させる測定チャンバと、
発生した第2のラマン散乱光を計測するラマン散乱光検出器とを具備し、
第2のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵と炭化水素とを濃度をベースラインより求めることを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項3】
基本レーザ光を発振するレーザ照射装置と、
発振された基本レーザ光を第1の波長変換レーザ光に波長変換する第1の波長変換部と、
第1の波長変換レーザ光を導入し、被測定ガスに照射して第1のラマン散乱光を発生させる測定チャンバと、
基本レーザ光と第1の波長変換レーザ光とを合波させ、その合波光を第2の波長変換レーザ光に波長変換する第2の波長変換部と、
第2の波長変換レーザ光を導入し、被測定ガスに照射して第2のラマン散乱光を発生させる測定チャンバと、
発生した第1又は第2のラマン散乱光を計測するラマン散乱光検出器とを具備し、
第1のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求め、且つ、
第2のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵と炭化水素との濃度をベースラインより求め、両者の差分から煤塵濃度を推定することを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つにおいて、
基本レーザ光が1064nmのYAGレーザ光であることを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項5】
請求項2又は3において、
基本レーザ光が1064nmのYAGレーザ光であり、
第1の波長変換レーザ光が532nmのYAGレーザ光の第2高調波であり、
第2の波長変換レーザ光が355nmのYAGレーザ光の第3高調波であることを特徴とするガス成分計測装置。
【請求項6】
400nm〜1,100nmのレーザ光を測定チャンバ内に導入し、被測定ガスに照射して第1のラマン散乱光を発生させ、
発生した第1のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求めることを特徴とするガス成分計測方法。
【請求項7】
400nm以下のレーザ光を測定チャンバ内に導入し、被測定ガスに照射して第2のラマン散乱光を発生させ、
発生した第2のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度と炭化水素の濃度とをそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求めることを特徴とするガス成分計測方法。
【請求項8】
400nm〜1,100nmのレーザ光を測定チャンバ内に導入し、被測定ガスに照射して第1のラマン散乱光を発生させ、
400nm以下のレーザ光を測定チャンバ内に導入し、被測定ガスに照射して第2のラマン散乱光を発生させ、
第1のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵濃度をそのピーク信号スペクトルを除いたベースラインより求め、且つ、
第2のラマン散乱光の計測結果により、被測定ガスのガス組成をラマン散乱光のピーク信号スペクトルより求めると共に、排ガス中の煤塵と炭化水素との濃度をベースラインより求め、両者の差分から煤塵濃度を推定することを特徴とするガス成分計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公開番号】特開2011−123031(P2011−123031A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283281(P2009−283281)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】