説明

ガス捕集袋用積層材および該積層材を用いたガス捕集袋

【課題】搬送用のガス捕集袋に必要とされるVOCガス等保存性能ならびに強度および柔軟性に優れ、作製が容易なガス捕集袋用積層材および該積層材を用いたガス捕集袋を提供する。
【解決手段】ガス捕集袋用積層材は、中間層(B)10と中間層(B)の両側に積層される外層(A)11aおよび(C)11bの少なくとも3層からなるガス捕集袋用積層材であって、中間層(B)のASTM F392−74のA法に定められた屈曲耐久性評価法による23℃−50%Rでのピンホール発生に至る屈曲回数が2,000回以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス捕集袋用積層材および該積層材からなるガス捕集袋に関し、より詳しくは、試料ガスを搬送するために用いられるガス捕集袋用積層材および該積層材を用いたガス捕集袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車体を構成する部品や建材、家具、合成樹脂製品などから発生する揮発性有機化合物ガスや、化学プラントなどの工場から排出される有害ガス、さらには香水の香り成分などのガス(以下、VOCガス等と総称する。VOCはVolatile Organic Compoundsの略語である。)成分の計測が行われている。これらVOCガス等成分の計測は、たとえばVT−SHED(Variable Temperature Shield Housing for Evaporative Determination)などの計測装置によって行われる(特許文献1)。
【0003】
上記計測装置によるVOCガス等の計測方法は、計測すべきVOCガス等が存在する場所に計測装置を配置し、密閉空間を形成する計測装置の測定室内に計測すべきVOCガス等を収容した後、たとえば規格に定められた時間−温度曲線にしたがって測定室内の温度を変化させ、この間に測定室内に蒸散した成分を計測するというものである。
【0004】
しかし、たとえば大気中のVOCガス等を計測する場合のように、計測装置の測定室内に計測すべきVOCガス等を直に収容することが困難な場合には、採取した試料ガスを計測装置のあるところまで搬送するためのガス捕集袋が必要になる。そのような捕集袋として、ポリエチレンフィルムとアルミ箔とポリエチレンテレフタレート(PET)とを積層した材料を用いた汎用品や、フッ化ビニル樹脂からなるテドラー(登録商標)フィルムなどが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−315868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送用のガス捕集袋の袋体材料には、遠隔地で捕集したVOCガス等を計測装置に搬送するまでのあいだ、収容したガスを逸失せず、その性質を変化させないガスバリア性や、袋体がVOCガス等を吸着しないガス非吸着性などのVOCガス等保存性能が必要とされる。特に近年、有害ガスの規制の強化や計測機器の精度の改良などを受けて、より精度の高いVOCガス等の計測が求められている。そのため、ガス捕集袋の材料はより高いVOCガス等保存性能が必要である。また、搬送時に突刺しや擦過などの外力に耐えうる強度を有し、ガス捕集に支障をきたさない程度の柔軟性を有することも必要である。
【0007】
しかし、高精度計測に必要とされる高いVOCガス等保存性能を有し、かつ強度や柔軟性に優れたガス捕集袋はなく、他の用途に用いられる汎用品で代用しているのが現状である。たとえば、従来のガス捕集袋で内層をポリエチレン層にしたものは、ポリエチレンが有する熱溶着性によって密閉袋を製造することができるものの、ポリエチレンはガスを吸着する傾向があり、またガスバリア性が低く、ガス捕集袋に収容したガスが継続的に外部に流出するため、正確な計測結果が得られない。このようなガス捕集袋では、ガスバリア性を高めるためにアルミ箔を積層しているが、アルミ箔は強度および柔軟性が低いため、さらにその外側にPETなどを積層する必要がある。
【0008】
また、テドラー(登録商標)などのフッ化ビニル樹脂フィルムを用いたものは、比較的ガスを透過しやすい性質であるためガスバリア性が充分とはいえず、樹脂自身からもフェノールやジメチルアセトアミドなどが涌き出すため、正確な計測結果が得られない。涌き出しを低減するため、使用前に約140℃で4時間程度のベーキング処理を行う必要がある。さらに、テドラー(登録商標)フィルムは太陽光などの光線を透過しやすい性質であるため、収容したVOCガス等が光線によって変質するおそれがあり、また、柔軟性が低く硬いため扱いづらく、VOCガス等を捕集するときや搬送時にピンホールなどの破損が生じやすく、接着しにくいため袋体への加工性に劣る。
【0009】
なお、搬送用のガス捕集袋は特許文献1に提案されている圧力吸収用バッグとは異なるものである。特許文献1の圧力吸収用バッグは、密閉された大容量の測定室の一部であり、その容積は最大で5m3になるものもある。この大容量の圧力吸収用バッグは、計測装置1台に4個取り付けられているが、収容後から計測に至るまでの短時間だけVOCガス等を収容することを目的として製造されているため、搬送用ガス捕集袋に求められるような高いVOCガス等保存性能を必要とせず、また、搬送時に要求されるような強度や柔軟性も必要としない。したがって、上記圧力吸収用バッグのような、計測装置に備えられるガス収容袋と、搬送を前提としたガス捕集袋とは、VOCガス等保存性能、強度および柔軟性において明確に区別される。
【0010】
以上のように、搬送を前提とし、袋内に収容した試料ガスの組成を長時間にわたって保持することができるガス捕集袋はこれまでなく、検討すらされてこなかった。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、搬送用のガス捕集袋に必要とされるVOCガス等保存性能ならびに強度および柔軟性に優れ、作製が容易なガス捕集袋用積層材および該積層材を用いたガス捕集袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガス捕集袋用積層材は、中間層(B)と中間層(B)の両側に積層される外層(A)および(C)の少なくとも3層からなるガス捕集袋用積層材であって、中間層(B)のASTM F392−74のA法に定められた屈曲耐久性評価法による23℃−50%Rでのピンホール発生に至る屈曲回数が2,000回以上であることを特徴としている。
【0013】
また、外層(A)および(C)が、エチレン含有量が35〜55モル%で厚さが10〜50μmのエチレンビニルアルコール共重合体からなるものであることが好ましい。
【0014】
本発明のガス捕集袋は、ガス捕集袋用積層材を用いた、試料ガスを搬送するためのガス捕集袋であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス捕集袋用積層材は、ガスバリア性およびガス非吸着性に優れ、また、強度および柔軟性に優れる。さらに、外層(A)および(C)に、エチレンビニルアルコール共重合体を用いたガス捕集袋用積層材は、層構成がほぼ対称形となるため、カーリングが生じにくく、また、エチレンビニルアルコール共重合体が優れた熱溶着性を有するため、ガス捕集袋の作製が容易である。
【0016】
本発明のガス捕集袋は、用いる積層材がガスバリア性およびガス非吸着性に優れるため、収容した試料ガスの組成を長時間にわたって保持することができ、また、積層材は強度および柔軟性に優れるため、搬送時に突刺しや擦過などの外力に耐えることができ、試料ガスを安全に計測装置まで運ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態によるガス捕集袋用積層材の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のガス捕集袋用積層材は、図1に示されるように、ASTM F392−74のA法に定められた屈曲耐久性評価法による23℃−50%Rでのピンホール発生に至る屈曲回数(以下、耐ピンホール性ともいう。)が2,000回以上である中間層(B)10と、その両側に積層される外層(A)11aおよび(C)11bの少なくとも3層からなる積層材である。
【0019】
本発明のガス捕集袋用積層材の外層(A)および(C)は、ガスバリア性およびガス非吸着性に優れ、充分な強度を有するガス捕集袋を作製するために必要な熱溶着性を有するという理由から、エチレン含有量が35〜55モル%のエチレンビニルアルコール共重合体からなることが好ましい。本発明においてエチレンビニルアルコール共重合体は、エチレン酢酸ビニル共重合体のけん化物のことをいう。エチレンビニルアルコール共重合体は、ポリエチレンと異なり、高分子鎖にランダムに一定量の水酸基を有し、これら水酸基同士が水素結合で引き付けあっていると考えられている。そのため、分子運動が抑制され、高分子鎖間へのVOCガス等の侵入を抑止し、ポリエチレンに比べて良好なガスバリア性とガス非吸着性を有すると考えられる。
【0020】
エチレンビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は35〜55モル%であり、好ましくは40〜50モル%である。エチレン含有量が35モル%未満では熱溶着性が低下し、外層との熱溶着性および袋の気密性が低下する傾向がある。エチレン含有量が55モル%を超えるとガス捕集袋に収容したVOCガス等を吸着しやすくなり、吸着後にVOCガス等が層の端面に移動し、そこから放散されるため、正確な計測ができなくなる傾向があり、またガスバリア性が低下する傾向がある。
【0021】
外層(A)および(C)のエチレンビニルアルコール共重合体のエチレン含有量の差異は、好ましくは10モル%以内であり、より好ましくは5モル%以内であり、エチレン含有量が同一であることが最も好ましい。外層(A)および(C)のエチレンビニルアルコール共重合体のエチレン含有量の差異が10モル%を超えると、ガス捕集袋用積層材の層構成が非対称となり、ガス捕集袋の作製に先立って行う極微量のVOCガス等を除去するベーキング処理に際して積層材がカーリングを引き起こし、ガス捕集袋を作製しにくくなる傾向がある。
【0022】
エチレンビニルアルコール共重合体のけん化度は特に限定されるものではないが、好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは98モル%以上であり、最も好ましくは99モル%以上である。けん化度が90モル%未満ではガスバリア性およびガス非吸着性が低下する傾向がある。
【0023】
外層(A)および(C)は、エチレン含有量が35〜55モル%のエチレンビニルアルコール共重合体を主として含有し、必要に応じてエチレン酢酸ビニル共重合体およびその部分けん化物や、充填材や顔料などの他の成分を添加することができる。外層中のエチレンビニルアルコール共重合体の含量は特に限定されるものではないが、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、最も好ましくは100重量%である。
【0024】
外層(A)および(C)の厚さは特に限定されるものではないが、好ましくは10〜50μmであり、より好ましくは15〜40μmである。厚さが10μm未満では積層加工が困難になり、熱溶着強度が充分でなくなる傾向があり、50μmを超えると柔軟性を損なう傾向がある。
【0025】
また、外層(A)および(C)の厚さの差異は、好ましくは10μm以内であり、より好ましくは5μm以内であり、厚さが同一であることが最も好ましい。外層(A)および(C)の厚さの差異が10μmを超えると、ガス捕集袋用積層材の層構成が非対称となり、ベーキング処理に際してカーリングを引き起こし、ガス捕集袋を作製しにくくなる傾向がある。また、外層(A)および(C)を同一または近似した構成とすることにより、ガス捕集袋の作製に際して内側、外側の区別をすることなく用いることができる。
【0026】
本発明のガス捕集袋用積層材は、積層材の同じ外層同士を、または相対する外層を対向させて熱溶着することによって、積層材の表裏の区別なく様々な形状を有する気密性に優れたガス捕集袋を容易に作製することができる。
【0027】
本発明のガス捕集袋用積層材の中間層(B)は、その両側に積層されるエチレンビニルアルコール共重合体からなる外層(A)および(C)を補強し、積層材全体としての強度および柔軟性を改善するものである。エチレンビニルアルコール共重合体は優れたガスバリア性およびガス非吸着性を有するが、その高い結晶性のために強度および柔軟性が充分でないからである。
【0028】
中間層(B)は、ASTM F392−74のA法に定められた屈曲耐久性評価法による温度23℃、相対湿度50%でのピンホール発生に至る屈曲回数が2,000回以上であることを特徴とする。これによって、エチレンビニルアルコール共重合体からなる外層(A)および(C)を補強し、搬送時に突刺しや擦過などの外力によってピンホールなどの破損が生じにくくなり、また、同時にガス捕集に支障をきたさない程度の柔軟性も有する。
【0029】
この点についてさらに説明する。発明者らは、中間層(B)として様々な材料を用いて、エチレンビニルアルコール共重合体からなる外層(A)および(C)に貼り合わせた積層材の耐ピンホール性と、中間層(B)単体の耐ピンホール性を評価したところ、積層材の耐ピンホール性は、中間層(B)単体の耐ピンホール性の20%前後になるとの結果を得た。これは、中間層(B)の両側に積層されたエチレンビニルアルコール共重合体からなる外層(A)および(C)の耐ピンホール性が低いことに影響されたためと考えられる。なお、耐ピンホール性とは、最初のピンホールが発生するまでの屈曲回数をゲルボテスターで測定した結果をいい、ASTM F392−74のA法に定められた屈曲耐久性評価法による23℃−50%Rでのピンホール発生に至る屈曲回数のことをいう。
【0030】
また、発明者らは、一定以上の耐ピンホール性を有する材料を中間層(B)に使用したものは、積層材の各層に同じ材料を用いたものと比べて、積層材の耐ピンホール性が50%程度改善されることを見出した。そして、ガス捕集袋用材料として用いられているテドラーフィルムの耐ピンホール性が180回であること、および、VOCガス等のガス捕集袋においてはテドラーフィルム以上の耐ピンホール性の向上が要求されていることを考慮し、本発明のガス捕集袋用積層材は、テドラーフィルムの2倍以上の耐ピンホール性が必要と考え、積層材としての耐ピンホール性が400回以上であり、中間層(B)単体としての耐ピンホール性が2,000回以上であることが必要との結論に至った。
【0031】
中間層(B)に用いられる合成樹脂としては、ナイロン6などのポリアミド、芳香族系ポリアミド、ポリウレタンなどが挙げられる。これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。また、合成樹脂には必要に応じて充填材や顔料などの他の成分を添加することができる。中間層(B)中の合成樹脂の含量は特に限定されるものではないが、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、最も好ましくは100重量%である。
【0032】
中間層(B)の厚さは特に限定されるものではないが、好ましくは8〜30μmである。厚さが8μm未満では外層(A)および(C)との積層加工が困難になる傾向があり、30μmを超えると柔軟性を損ない、逆に耐ピンホール性が低下する傾向がある。
【0033】
本発明のガス捕集袋用積層材は、中間層(B)ならびに外層(A)および(C)からなることを基本的な構成としているが、外層(A)および(C)の外側に、さらにエチレンビニルアルコール共重合体やポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどからなる最外層を積層しても良く、外層(A)および(C)には、いずれか一方の面に、ガスバリア性をさらに強化し、VOCガス等が光線によって変質することを防止するアルミ蒸着層を形成しても良い。アルミ蒸着層の厚さは特に限定されるものではないが、好ましくは300〜800Åである。
【0034】
本発明のガス捕集袋用積層材全体の厚さは特に限定されるものではないが、好ましくは25〜150μmであり、より好ましくは40〜100μmである。厚さが25μm未満ではガス捕集袋として充分な強度を得ることができない傾向があり、150μmを超えると柔軟性が低下するため、扱いにくい傾向がある。
【0035】
本発明のガス捕集袋用積層材の製造方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出ラミネート法などの公知の方法を採用することができる。また、接着に際してポリウレタン系またはポリイミド系の接着剤を使用しても良い。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
参考例1〜3
ボニール(宇部興産(株)製ナイロン6フィルム、厚さ15μm)、シルクロンNES85(大倉工業(株)製ポリウレタンフィルム、厚さ25μm)およびエバールフィルムEF−XL((株)クラレ製エチレンモル%が32モル%のエチレンビニルアルコール共重合体、厚さ15μm)の耐ピンホール性を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0038】
(耐ピンホール性の測定)
ASTM F392−74のA法に定められた23℃−50%Rでの屈曲耐久性評価法に準拠し、300mm×210mm(略A4サイズ)の試験片を切り出し、この試験片をゲルボフレックステスター(理学工業(株)製)にセットして所定の屈曲を一定回数繰り返し、それを取り外して発生したピンホール数をカウントした。この試験を様々な屈曲回数について行い、屈曲回数と発生ピンホール数の関係から、最初のピンホールが発生したであろう屈曲回数(以下、Np=1と略記する。)を統計的に求めた。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1
中間層(B)にボニール(厚さ15μm)、その両側の外層(A)および(C)にエバールフィルムEF−HS((株)クラレ製エチレンモル%が47モル%のエチレンビニルアルコール共重合体、厚さ30μm)を使用し、それらを順次ドライラミネート法によって積層してガス捕集袋用積層材を得た。得られた積層材を用いて以下の試験を行った。結果を表2に示す。
【0041】
(涌き出し量の測定)
得られた積層材を用いて、インパルス型熱シール機によって寸法が350mm×170mm×500mmであるガス捕集袋を作製し、この袋体に高純度窒素ガスを封入し、24時間後の涌き出し量を、GC/FID(水素炎イオン化検出器を使用したガスクロマトグラフ)で測定した。
【0042】
(VOCガス濃度保持率の測定)
得られた積層材を用いて作製したガス捕集袋に、ほぼ等しい濃度(1000ppb)の24種類の成分よりなる標準ガスを封入した。それを一定時間保存した後、袋内のガス濃度をGC/FIDで測定した。ガスの代表例としてベンゼン、トルエン、メタキシレンおよびスチレンを選び、6時間経過後の残存率を求めた。
【0043】
(引張強度の測定)
作製した積層材から、長さ200mm、幅10mmの短冊状の試験片を切り出し、この試験片を積層材の流れ方向(以下、MDと略記する。)および積層材の流れ方向と直交する方向(以下、TDと略記する。)の2つの方向に切り出し、JIS K−7127に準拠して引張強度を求めた。
【0044】
(突刺し強度の測定)
後述する比較例2の積層材および比較例3のテドラー(登録商標)フィルムから、100mm×100mmの試験片を切り出し、リング状の保持具でクランプ、中心部を鋼製針(太さ1mmφ、先端0.5Rの球形)で突刺した時の抵抗力を求め、これを突刺し強度とした。
【0045】
(耐ピンホール性の測定)
作製した積層材を用いて参考例1〜3と同様の方法により測定した。
【0046】
実施例2
外層(A)および(C)にエバールフィルムEF−E((株)クラレ製エチレンモル%が44モル%のエチレンビニルアルコール共重合体、厚さ20μm)を使用したほかは実施例1と同様の方法によりガス捕集袋用積層材を得た。得られた積層材を用いて実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0047】
実施例3
中間層(B)にシルクロンNES85(厚さ25μm)を使用したほかは実施例2と同様の方法によりガス捕集袋用積層材を得た。得られた積層材を用いて実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0048】
比較例1
中間層(B)にエバールフィルムEF−XL(エチレンモル% 32モル%、厚さ15μm)を使用したほかは実施例2と同様の方法によりガス捕集袋用積層材を得た。得られた積層材を用いて実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0049】
比較例2
中間層(B)にエバールフィルムEF−XL(エチレンモル% 32モル%、厚さ15μm)、その一方の面に外層(A)としてエバールフィルムEF−E(エチレンモル% 44モル%、厚さ20μm)、他方の面に外層(C)としてボニール(厚さ15μm)を使用し、実施例1と同様の方法によりガス捕集袋用積層材を得た。得られた積層材を用いて実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0050】
比較例3
テドラー(登録商標)フィルム(商品名、Dupont社製、厚さ50μm)をガス捕集袋用材として使用した。このテドラー(登録商標)フィルムを用いて実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2に示されるように、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムのメタン換算のガスの涌き出し量は、テドラー(登録商標)フィルムよりも1桁低いことがわかる。この結果から、エチレンビニルアルコール共重合体を配置した積層材は高精度分析用のガス捕集袋に適していることがわかる。また、外層にエチレンビニルアルコール共重合体フィルムを使用した実施例1〜3および比較例1および2では、測定したすべての成分の濃度保持率が100%であった。一方、テドラー(登録商標)フィルムを用いた比較例3では、測定したすべての成分の濃度保持率が90〜98%であった。これらの結果から、エチレンビニルアルコール共重合体を配置した積層材を用いたガス捕集袋は、ガスバリア性およびガス非吸着性に優れることがわかる。
【0053】
また、中間層(B)にナイロン6フィルムまたはポリウレタンフィルムを配置した積層材は、引張強度がMDで5.2以上、TDで4.8以上であり、耐ピンホール性も600回以上であり、テドラー(登録商標)フィルム(比較例3)より優れた引張強度および耐ピンホール性を有し、中間層(B)にエバールフィルムを用いた比較例1および2より優れた耐ピンホール性を有することがわかる。これらの結果から、中間層(B)のASTM F392−74のA法に定められた屈曲耐久性評価法による23℃−50%Rでのピンホール発生に至る屈曲回数が2,000回以上である実施例1〜3の積層材は柔軟性に優れ、かつ搬送用のガス捕集袋用積層材として充分な強度を有することがわかる。さらに、外層(A)と(C)に異なる材料を用いた比較例2の積層材は層構成が非対称であるため、カーリングが生じやすく、ガス捕集袋を作製しにくいことが予測される。
【符号の説明】
【0054】
1 ガス捕集袋用積層材
10 中間層(B)
11a 外層(A)
11b 外層(C)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層(B)と中間層(B)の両側に積層される外層(A)および(C)の少なくとも3層からなるガス捕集袋用積層材であって、
中間層(B)のASTM F392−74のA法に定められた屈曲耐久性評価法による23℃−50%Rでのピンホール発生に至る屈曲回数が2,000回以上であるガス捕集袋用積層材。
【請求項2】
外層(A)および(C)が、エチレン含有量が35〜55モル%で厚さが10〜50μmのエチレンビニルアルコール共重合体からなるものである請求項1記載のガス捕集袋用積層材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス捕集袋用積層材を用いた、試料ガスを搬送するためのガス捕集袋。

【図1】
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【公開番号】特開2012−20784(P2012−20784A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162019(P2010−162019)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(509286891)株式会社大阪造船ドック (2)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【Fターム(参考)】