説明

ガス検知装置

【目的】 本発明は、冷蔵庫の食物保存室内に保存している食物から腐敗時に発生する臭気ガスの量が微量であり、且つその臭気ガスが複数の種類であったとしても、そのガスの中のアミン類を精度よく検知することができるガス検知装置を提供するものである。
【構成】 本発明は、腐敗時に食物から発生される臭気ガスの中からアミン類を分離するアミンガス分離手段と、上記アミン類を貯める密閉可能なガス溜と、該ガス溜をガス導入側気室、吸着気室及びガス検知気室に夫々分室する開閉自在な仕切手段と、該吸着気室に設けられたアミン類を吸着するガス吸着手段と、上記ガス検知気室内に設けられ、上記ガス吸着手段から脱着したアミン類を測定する検知手段と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷蔵庫等の食物保存室内に保存されている食物、特に腐敗によってアミン類、特にトリメチルアミン(TMA)を発生する食物の鮮度低下を検知するガス検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、冷蔵庫等の食物保存室内に保存されている食物の鮮度を自動的に検知する臭気検知装置が、特開平2−126084号に開示されている。この臭気検知装置によれば、臭気ガスを検知することに伴って抵抗値が低下するガスセンサを冷蔵庫内に設け、このガスセンサにて庫内の臭気度を検知していた。
【0003】通常、家庭等で使用される冷蔵庫の食物保存室内には、肉、魚介類、卵、乳製品、漬物等のように異なった種類の物が保存されており、腐敗に伴って夫々の物から発生される臭気ガスは単一成分のみではなく、複数の成分から成っているのが普通である。
【0004】例えば、肉からはアンモニウムが、魚介類からはアミン類が、また卵、乳製品からは硫化水素が、更に漬物からはメルカプタンが夫々発生することが知られており、これらの臭気ガスの発生によって鮮度が低下したことを判定している。
【0005】しかし乍ら、腐敗の初期にあってはそれらの臭気ガス物質量は微量なこと、また腐敗時に発生する臭気ガスが複数の成分から成っていることから、魚介類から発生するトリメチルアミンを検知しようとする場合、他の臭気ガス成分も同時に検知してしまい、実際のトリメチルアミンの量よりも多量に発生していると判定し、鮮度の低下を正確に測定できない問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の問題に鑑み成されたものであり、冷蔵庫の食物保存室内に保存している食物から発生する臭気ガスの量が微量であり、且つその臭気ガスが複数の種類であったとしても、そのガスの中のアミン類を精度よく検知することができるガス検知装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、腐敗時に食物から発生される臭気ガスの中からアミン類を分離するアミンガス分離手段と、上記アミン類を貯める密閉可能なガス溜と、該ガス溜をガス導入側気室、吸着気室及びガス検知気室に夫々分室する開閉自在な仕切手段と、該吸着気室内に設けられたアミン類を吸着するガス吸着手段と、上記ガス検知気室内に設けられ、上記ガス吸着手段から脱着したアミン類を測定する検知手段と、からなることを特徴とする。
【0008】
【作用】冷蔵庫の食物保存室内にて食物の腐敗時に発生した臭気ガスをガス導入側気室内に導入する際に、アミン類を上記臭気ガスの中から分離し、上記アミン類をガス導入側気室内に導入させた後、仕切手段の開閉に伴ってアミン類を、順次ガス導入側気室、吸着気室と移動させてガス吸着手段に吸着させる。この後、アミン類をガス吸着手段から脱着させて、そのアミン類をガス検知気室内に移動させて、そのアミン類を検知手段にて検知する。
【0009】
【実施例】本発明の実施例を図1及び図2に基づいて説明する。
【0010】図1において、1は本発明のガス検知装置、2は冷蔵庫の食物保存室に通じ、該食物保存室で食物の腐敗に伴って発生した臭気ガスを導入するガス導入管、2aはガス検知に寄与しないガスを冷蔵庫外に導出するガス抜き管、3は上記ガス導入管2に接続され、オゾンを発生するオゾン発生器であり、このオゾンの発生に伴って、ガス導入管2によって導入されたH2S(硫化水素)、CH3SH(メチルメルカプタン)は以下の反応式(1)、(2)に従って、SO2(酸化硫黄)、H2O、CH3OH(メチルアルコール)に変化する。
【0011】
2S + O3 = SO2 + H2・・・(1)
CH3SH + O3 = SO2 + CH3OH ・・・(2)
4はガス導入管2の下流側に設けられたシリカゲルからなるアミンガス分離手段であり、このアミンガス分離手段4は上述のSO2(酸化硫黄)、H2O、CH3OH(メチルアルコール)及びアンモニアガス等の極性の強い物質を吸着することができる。
【0012】5はガス導入管2から導入されたガスを溜めておくガス溜、6はガス溜5の下流側に設けられたSiO2、Al23からなる合成沸石の一種であるモレキュラーシーブからなるガス吸着手段、7、7はガス導入管2のアミンガス分離手段4、及びガス溜5のガス吸着手段6の周囲に配され、昇温することによってアミンガス分離手段4及びガス吸着手段6に吸着した物質を脱着する加熱手段、8はガス溜5の下流側内壁面に取り付けられたトリメチルアミン(TMA)を検知するガスセンサからなる検知手段である。この検知手段8は、Ruを0.5wt%TiO2に添加したTMAセンサから構成されており、この検知手段8の使用に際してはTMAセンサを500℃前後に加熱することによって測定感度が良くなる。そのセンサは図示しない抵抗値の変化を測定する測定手段に電気的に接続されており、そのセンサの検知限界は50ppmである。
【0013】9は測定済みのガスをガス検知装置の外部に排出するガス排出管であり、このガス排出管9はガス溜5の下流側壁面に取り付けられる。10aはガス導入管2のアミンガス分離手段4の下流側に、また10bはガス溜5の下流側壁面に夫々取り付けられ、ガス溜5を閉空間にするシヤッターであり、10c、10dはガス吸着手段6の上流及び下流側から夫々挟み込むように配されたシヤッターである。従って、シャッター10a及び10cを閉状態にすることによってガス導入側気室5aを、またシャッター10c及び10dを閉状態にすることによって吸着気室5bを、更にシャッター10d及びシャッター10bを閉状態にすることによってガス検知気室5cを夫々形成することができる。このとき、ガス導入側気室5aの容積は300ccに、またガス検知気室5cの容量は1ccに設定している。
【0014】斯る構成において、図2に示すシャッター10a乃至10dの開閉状態に関するタイムチャートを参照しながら、本発明のガス検知装置の検知動作の説明を行なう。
【0015】まず、シャッター10a乃至10dを全て閉じた状態で、腐敗によって冷蔵庫内の食物保存室内で発生したH2S、CH3SH、アンモニアから成る臭気ガスをガス導入管2を通じて導入する。ガス導入管2を通過する上述の臭気ガスのうちH2S、CH3SHはオゾン発生器3にて発生されるオゾンによって、反応式(1)、(2)に従って、SO2、H2O、CH3OHに変化し、これらのガスと共にアンモニアガスはアミンガス分離手段4に吸着されることによって、アミン類は臭気ガスから分離される。
【0016】次に、測定開始と同時にシャッター10aを開状態とする。このときより好ましいのは、ガス導入管2から導入された臭気ガスのうち、アミン類を効率よくガス導入側気室5aに導入させるには、予めシャッター10a、10cを閉状態にしておき、ガス導入側気室5a内を低圧設定すればよい。
【0017】シャッター10aを3分間開状態とした後、次にそのシャッター10aを閉状態とすると同時にシャッター10cを開状態とし、この状態を5分間保持する。これによって、ガス導入側気室5aに貯められたアミン類はガス吸着手段6に吸着される。
【0018】次に、シャッター10cを閉状態とすると共に、シャッター10dを開状態にし、ガス吸着手段6を300℃前後に加熱手段7にて4分間加熱する。これによって、ガス吸着手段6に吸着したアミン類は脱着され、ガス検知気室5cに貯められる。この結果、最初ガス溜5に貯められたアミン類は、最終的にガス検知気室5cに貯められるので、約300倍の濃縮を行ったことになる。従って、アミン類の濃度が濃縮前に170ppbという低い場合であっても、濃縮によって300倍になるので、検知手段8の検知限界が50ppmであっても十分アミン類を検知することができる。
【0019】ガス検知気室5cに貯められたアミン類は、500℃前後に加熱された検知手段8にて1分間検知されることによって鮮度の低下をランプの点滅等によって知らせることができる。
【0020】この測定の後、シャッター10dを閉状態にすると共に、シャッター10bを開状態にしてガスをガス排出管9を介して冷蔵庫外に排出させる。
【0021】このように、冷蔵庫の食物保存室内で発生した複数の種類の臭気ガスをガス溜5に導入する前に、アミン類以外の臭気ガスを除去するので、そのアミン類の濃度を濃くすることができる。
【0022】上述の方法をサイクリック的に繰り返すことによって、冷蔵庫の食物保存室内の鮮度を測定することができる。
【0023】本発明では、鮮度の測定を開始してから終了するまで15分間を要するので、リアルタイム的な測定は不可能であるが、鮮度の測定は家庭等にある冷蔵庫では数時間のオーダで行えばよく、サイクリック的に繰り返すことによって本発明でも十分対応することができる。
【0024】また、アミンガス分離手段4がアミン類以外の物質を吸着する能力が低下すると、加熱手段7にてアミンガス分離手段4を200℃前後に加熱して吸着された物質を脱着することによって、アミンガス分離手段4の活性化を行うことができる。このとき、シャッター10aを閉状態にすることによって、脱着された物質はガス抜き管2aから冷蔵庫の外部に導出される。
【0025】更に、上述の実施例では、ガス吸着手段6としてモレキュラーシーブを使用したが、これには限られず、アミン類を吸着することができるものであれば構わない。
【0026】また、上述の実施例では、ガス検知気室5cとガス導入側気室5aとの容積比を300に設定したが、これには限られず、検知手段8の検知能力が良いほどその容積比を小さくすることができる。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、冷蔵庫の食物保存室内に保存している食物から腐敗時に発生する臭気ガスの量が微量であり、且つその臭気ガスが複数の種類であったとしても、その臭気ガス中のアミン類以外の臭気ガスを大容量のガス導入側気室内への導入直前にアミンガス分離手段で除去すると共に、吸着気室内のガス吸着手段によって吸着されたガスを脱着した後、小容量のガス検知気室内に収集することにより、アミン類の濃度が濃縮され、アミン類のみの検知を精度よく行うことができると共に、測定に関する信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガス検知装置の概略図
【図2】本発明のガス検知装置を用いて鮮度を検知する際のシャッターの開閉に関するタイムチャート
【符号の説明】
1 ガス検知装置
2 ガス導入管
3 オゾン発生器
4 アミンガス分離手段
5 ガス溜
5a ガス導入側気室
5b 吸着気室
5c ガス検知気室
6 ガス吸着手段
7 加熱手段
8 検知手段
9 ガス排出管
10a、10b、10c、10d シャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 腐敗時に食物から発生される臭気ガスの中からアミン類を分離するアミンガス分離手段と、この分離手段に分離されたアミン類を貯める密閉可能なガス溜と、該ガス溜をガス導入側気室、吸着気室及びガス検知気室に夫々分室する開閉自在な仕切手段と、該吸着気室内に設けられたアミン類を吸着するガス吸着手段と、上記ガス検知気室内に設けられ、上記ガス吸着手段から脱着したアミン類を測定する検知手段と、からなることを特徴とするガス検知装置。
【請求項2】 上記ガス検知気室の容積はガス導入側気室の容積より小さいことを特徴とする請求項1記載のガス検知装置。

【図1】
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【図2】
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