説明

ガス水和物を含む堆積物のINSITU機械特性の推定

【課題】多成分粒子系の弾塑性特性相関をとる方法を提供する。
【解決手段】堆積物の水和物系の地球物理学的データから、shydおよびpを有するパラメータを取得する工程を含み、ここで、shydは水和物飽和度で、pは封圧である。さらに、前記パラメータおよび相関を使って前記堆積物の水和物系のヤング率(E)を決定する工程を含み、ここで、前記相関は


であり、α=p/cで、cは圧力の次元を伴ったスケール変数である。当該方法は、さらに、前記堆積物の水和物系のヤング率に基づいて現場作業を調整する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年6月2日付けで出願された米国仮特許出願第61/058,155号「Method and System for Estimating In Situ Mechanical Properties of Sediments Containing Gas Hydrates」(堆積物を含むガス水和物のIn Situ機械特性を推定する方法およびシステム)に基づく利益を主張するものである(参照により本明細書に組み込むものとする)。
【0002】
さらに、本願は、2008年12月30日付けで交付された米国特許第7,472,022号「Method and System for Managing a Drilling Operation in a Multicomponent Particulate System」(多成分粒子系における掘削作業を管理する方法およびシステム)に関連する(参照により本明細書に組み込むものとする)。
【背景技術】
【0003】
図1は掘削現場作業を示した図であり、掘削リグ(100)を使って、ボアホール(ボーリング孔)(145)内のドリルパイプ(140)遠端に連結されたドリルビット(150)を回転させている。この現場作業により、石油、天然ガス、水、または掘削で取得可能なまたは取得される他の任意タイプの物質を取得することができる。図1に示した現場作業は地表から地層を直接掘削していくものであるが、当業者であれば、湖底の掘削、深海底の掘削、探鉱作業、開発作業、仕上げ作業、生産作業、処理作業など、他タイプの現場作業が存在することも理解されるであろう。
【0004】
図1に示すように、ロータリーテーブル(125)で生成される回転力は、前記掘削リグ(100)から前記ドリルパイプ(140)を介して前記ドリルビット(150)へ伝達される。さらに、掘削流体(「マッド(mud)」とも呼ばれる)が前記ドリルパイプ(140)の中空コアを通じて前記ドリルビット(150)へ送られる。具体的には、マッドポンプ(180)を使い、スタンドパイプ(160)とホース(155)とケリー(120)とを通じて、前記ドリルパイプ(140)へマッドを送る。暴噴の危険性を軽減するには、防噴装置(130)を使って、前記ボアホール(145)内の流体圧力を制御する。さらに、ケーシング(135)を使って前記ボアホール(145)を強化することにより、暴噴、または当該ボアホール(145)に作用する他の力による倒壊を防ぐことができる。当該掘削リグ(100)には、クラウンブロック(105)、トラベリングブロック(110)、スイベル(115)、および他の構成要素(図示せず)を含めることもできる。
【0005】
前記ボアホール(145)から地表へ返ってくるマッドは、マッド戻り配管(165)を通じてマッド処理用の機器へ送られる。例えば、マッドは、掘削された固体を取り除くよう構成されたシェーカー(170)へ送られる。除去された固体はリザーブ(貯留)ピット(175)へ移動され、マッドはマッドピット(190)に堆積する。前記マッドポンプ(180)は、ろ過されたマッドを前記マッドピット(190)からマッド吸引管(185)で吸引し、前記掘削リグ(100)内へ再注入する。当業者であれば、デガッサー、デサンダー、デシルター、遠心分離機、混合ホッパーなど他のマッド処理装置も使用できることが理解されるであろう。さらに、掘削作業には、流体技術実施、掘削シミュレーション、圧力制御、抗井からの不要物除去、および廃棄物管理などの作業に使用される他のタイプの掘削構成要素が含まれることがある。
【0006】
所与の現場作業では(図1に示した掘削作業など)、地層の地質力学特性に関する知識を使って、現場に関連した種々の問題を軽減することができる。例えば、一部の地層では、岩石が変形し若しくは破壊されるおそれがある。塑性パラメータは、通常、コアに機械的試験を行って直接測定されるが、数学的に相関を構築する(相関をとる)と脆性−弾性特性を予測することができる。
【0007】
例えば、静的ヤング率を推定する方法は、Eissa,E.A.& Kazi,A.らの「Relation between static and dynamic Young’s moduli for rocks」(岩石に関する静的ヤング率および動的ヤング率の関係)(Int.J.Rock Mech.Min.Sci.&Geomech.Abstr.25(1988年)、ページ479−482)、Montmayour,H.& Graves,R.M.らの「Prediction of Static Elastic/Mechanical Properties of Consolidated and Unconsolidated Sands From Acoustic Measurements: Correlations」(音響測定による固結砂および未固結砂の静的な弾性特性/機械特性の予測:相関)(61st Annual Technical Conference and Exhibition of the Society of Petroleum Engineers、New Orleans、LA.(1986年)SPE 15644)、Morales,R.H.& Marcinew,R.P.らの「Fracturing of high−permeability formations: Mechanical properties correlations」(浸透率の高い地層の破砕:機械特性の相関)(SPE 26561(1993年))、Yale,D.P.& Jamieson,W.H.らの「Static and Dynamic Rock Mechanical Properties in the Hugoton and Panoma Fields, Kansas」(米国カンザス州Hugoton FieldおよびPanoma Fieldにおける静的および動的な岩石機械特性)(SPE Mid−Continent Gas Symposium,Amarillo,TX.、SPE 27939(1994年))、およびTutuncu,A.N.& Sharma,M.M.らの「Relating Static and Ultrasonic Laboratory Measurements to Acoustic Log Measurements in Tight Gas Sands」(タイトな(硬質)ガス砂における静的実験および超音波実験の測定値の音響検層測定値との関係付け)(67th Annual Technical Conference and Exhibition of the Society of Petroleum Engineers,Washington, DC、SPE 24689(1992年))の諸論文に説明されている。
【0008】
さらに、動的ポアソン比から静的ポアソン比を推定する方法は、Tutuncu&Sharma(1992)(上記で参照)およびYale&Jamieson(1994)(上記で参照)で説明されている。ビオ数を評価するための経験的相関については、Krief,M.、Garat,J.、Stellingwerff,J.、Ventre,J.らの論文「A petrophysical interpretation using the velocities of P and S waves (full−waveform sonic)」(P波およびS波(完全波形の音波)(The Log Analyst 31、1990年11月、ページ355−369)の速度を使った解釈)に説明されている。
【0009】
さらに、岩石の一軸圧縮強度を推定するための相関をとる方法が複数の著者により考案されており、Chang,C.らの論文「Empirical Rock Strength Logging in Boreholes Penetrating Sedimentary Formations」(堆積岩層を貫通したボアホールに関する経験的岩石強度の孔内検層)(MULLI−TAMSA(Geophysical Exploration)7、2004年、ページ174−183)でレビューされている。この目的での付加的な相関については、Plumb,R.A.、Herron S.L.&Olsen,M.P.「Influence of Composition and Texture on Compressive Strength Variations in the Travis Peak Formation」(組成およびテクスチャーがTravis Peak地層の圧縮強度変動に及ぼす影響)(67th Annual Technical Conference and Exhibition of the Society of Petroleum Engineers,Washington,D.C.(1992年)SPE 24758)およびQiu,K.、Marsden,J.R.、Solovyov,Y.、Safdar,M.& Chardac,O.「Downscaling Geomechanics Data for Thin Bed Using Petrophysical Techniques」(石油物理学的技術を使った薄層理に関する地質力学データのダウンスケーリング)(14th SPE Middle East Oil and Gas Show and Conference, Bahrain(2005年)SPE 93605)の論文で説明されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
多成分粒子系の弾塑性特性相関をとる方法。当該方法は、堆積物の水和物系の地球物理学的データから、shydおよびpを有するパラメータを取得する工程を含み、ここで、shydは水和物飽和度で、pは封圧である。当該方法は、さらに、前記パラメータおよび相関を使って前記堆積物の水和物系のヤング率(E)を決定する工程を含み、ここで、前記相関は
【数1】

【0011】
であり、α=p/cで、cは圧力の次元を伴ったスケール変数である。当該方法は、さらに、前記堆積物の水和物系のヤング率に基づいて現場作業を調整する工程を含む。
【0012】
ガス水和物を含む堆積物のin situ(測定対象を動かさず、原位置で)機械特性を推定する工程の他の態様は、以下の説明および添付の請求項から明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、現場作業の図を示したものである。
【図2】図2は、1若しくはそれ以上の実施形態に係るシステムを示した図である。
【図3】図3は、1若しくはそれ以上の実施形態に従って現場作業を管理する方法のフローチャートを示したものである。
【図4】図4は、1若しくはそれ以上の実施形態に係る相関図を示したものである。
【図5】図5は、1若しくはそれ以上の実施形態に係るコンピュータシステムを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、ガス水和物を含む堆積物のin situ(測定対象を動かさず、原位置で)機械特性を推定する具体的な実施形態を詳しく説明する。種々の図にわたる同様な要素は、一貫性のため同様な参照番号で示している。
【0015】
以下の詳細な説明では、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する実施形態について、それらの実施形態がより完全に理解されるよう具体的な詳細事項を多数記載する。ただし当業者であれば、それらの具体的な詳細事項がなくとも前記実施形態が実施可能であることは明確に理解されるであろう。他の場合、周知の特徴(機能)については、説明を不要に複雑化しないよう詳しい説明を省いている。
【0016】
一般に、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する実施形態は、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を地震観測データまたは検層データから推定する方法およびシステムに関し、掘削作業中、仕上げ作業中、および生産作業中の機械的破壊の危険性を評価する上で極めて重要である。より具体的には、1若しくはそれ以上の実施形態は、ガス水和物含有堆積物の機械特性と地球物理学的データとの相関をとる方法に関する。
【0017】
一般に、前記方法の実施形態では、マイクロメカニクスモデルを使った技術を適用して堆積物の物理的挙動を決定するパラメータの選択を誘導する。上述の選択に基づき、弾塑性特性(従属変数)と、検層データまたは地震観測データから推定できる特性(独立変数)との無次元化した関係のセットが導出される。前記方法では、これらの関係を使って、従属変数に関する弾塑性特性の代数展開を提案し、多種多様な情報源のデータを使って、メタンを含む砂質土のヤング率(E)と、THF(テトラヒドロフラン)水和物との相関を導出する。当業者であれば、上記の相関を導出する技術は、メタンを伴った砂質土およびTHF水和物だけに限定されず、粒子状物質全般に拡張できることが理解されるであろう。当業者であれば、前記技術を使用すると、機械強度、摩擦角、ダイレーション角(ダイレイタンシー角)に関する相関など、粒子状物質に関する他種の弾塑性特性相関を導出できることも理解されるであろう。
【0018】
本発明の実施形態は、全般的に、多成分粒子系(2種若しくはそれ以上の粒子を含んだ地層)における現場作業(掘削作業、測量作業、仕上げ作業、生産作業など)を管理する方法およびシステムを提供する。ただし、本願で説明する方法は、単一成分系に適用することもできる。粒子系の地球物理学的特性、応力特性、および石油物理学的特性は、in situ(測定対象を動かさず、原位置で)または実験室での測定値から得られる。適切な特性の選択は、マイクロメカニクスにより推定される。本明細書において、地球物理学的特性および石油物理学的特性とは、一般に岩石フレーム(構造)に関するものであるが、個々の粒子タイプの特性を含めていう場合もある。これらの特性は、適切なスケーリングにより無次元数で表せる。また、粒子系の排水条件での静的弾塑性変形を特徴付ける特性も同様に得られ、無次元形態に変換できる。弾塑性特性は、1若しくはそれ以上の経験的相関を介して地球物理学的特性、応力特性、および石油物理学的特性に関係している。前記経験的相関は、堆積系のin situ弾塑性特性を推定するため使用される。これらの特性は、岩石の変形および破壊モデルにおいて、堆積系で掘削されたボアホール周辺の岩石の機械的完全性を評価するため使用され、この評価に基づき現場作業が調整される。
【0019】
マイクロメカニクスは複合系に関する学問であり、そのような系の機械的挙動を、構造部分の挙動により説明することを狙いとしている。複合系とは、2若しくはそれ以上の部分から成るものをいう。
【0020】
フレーム特性は、多孔質集合体に関連するもので、その多孔質集合体内に常駐する流体(間隙流体)は除く。フレーム特性を測定する際は、試験前に間隙流体が除去され、または間隙流体の影響を最小限に抑えるような態様で試験が行われる。
【0021】
静的特性は、一定の荷重または緩慢に変化する荷重を物質に与えた場合の変形を特徴付けるため使用される。これと対照的に、動的特性は、急速に変化する荷重を物質が受けた場合の変形を特徴付けるものである。
【0022】
排水特性(排水条件下の特性)は、物質の変形を特徴付けるもので、その場合、当該変形は十分緩慢であるため、当該変形に影響を及ぼすことなく間隙流体が試料から流出できる。
【0023】
弾塑性特性は、弾塑性物質の応力−ひずみ挙動をモデル化するため使用される特性である。弾塑性物質は、ひずみが小さいと弾性応答を呈し、ひずみが大きいと塑性応答を呈する。弾性変形中、当該物質に永続的な損傷は生じない。これは、当該物質への荷重が取り除かれると、荷重をかける元の状態に戻ることを意味している。ただし、荷重が十分大きくなると当該物質は塑性を呈し、永続的な損傷が生じて、荷重を取り除いても元の状態には戻らなくなる。弾塑性特性は、弾性変形および塑性変形の双方の体系において物質の応力−ひずみ応答をモデル化する構成則(構成式)に使用される。
【0024】
ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する実施形態は、種々の多成分粒子系について実施できる。例えば、現場作業では、クラスレート(包接化合物)水和物(ハイドレート)(当該技術分野では、ガスクラスレート水和物、ガス水和物、またはクラスレートとも呼ばれる)を含んだ地層を標的にすることがある。クラスレート水和物は、水分子の格子から構成された氷状の結晶性固体である。この格子にガスまたは液体の分子が取り込まれて、この水和物構造を安定なものにしている。メタンガス水和物(メタンハイドレート)は、クラスレート水和物として自然発生する最も一般的な種である。ただし、プロパンやエタンなど他の炭化水素を含んだクラスレート水和物も存在する。さらに、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、略称THF)、二酸化炭素(CO)、および硫化水素(HS)などの非炭化水素物質が水和物構造に組み込まれることもある。クラスレート水和物は、永久凍土地域および大陸縁辺の深海環境に広く存在してる。
【0025】
クラスレート水和物ゾーンの掘削に対する関心は増している。例えば、クラスレート水和物は、エネルギー源として使用することができる。しかし、クラスレート水和物ゾーンでの掘削および生産には種々の課題が存在する。掘削工程に起因した温度および圧力の外乱によりクラスレート水和物中のガスが解離し、抗井中への放出が制御できず、火災または暴噴が起こるおそれがある。さらに、解放されたガスが掘削用マッドをガス化させるおそれもある。場合により、解離中のクラスレート水和物を含んだ堆積層部分の崩壊で抗井が不安定になり、結果的に穴または枝掘り部が失われてしまうおそれもある。例えば、Collett,T.S.& Dallimore,S.R.(2002年)「Detailed analysis of gas hydrate induced drilling and production hazards」(ガス水和物により誘発される掘削および生産時の危険に関する詳細解析)(4th International Conference on Gas Hydrates(ICGH−4)、Yokohama、2002年5月)を参照。その影響が壊滅的でない場合でさえ、穴の状態が良好でなければクラスレート水和物ゾーンの孔内検層結果の質が落ちるおそれがある。
【0026】
クラスレート水和物ゾーンにおける坑井の完成およびそこでの生産にも課題が存在する。穴の状態が良好でないとセメントが効果的に結合(ボンディング)せず、ケーシング外部にガスが漏れてしまう。さらに、クラスレート水和物を除去したことにより地層の維持能力が失われると、砂質土が生じ、地層が地盤沈下を起こし、またはケーシングが破壊されるおそれがある。また、クラスレート水和物ゾーンで完成した坑井内では、高温の炭化水素により抗井ケーシングの周囲で水和物の解離が生じ、地層への圧力が高まるおそれがある。これについては、Franklin,L.J.(1981年)「Hydrates in Artic Islands」(北極諸島における水和物)(A.L. Browser(ed.)Proceedings of a Workshop on Clathrates(gas hydrates)in the National Petroleum Reserve in Alaska.USGS Open−File Report 81−1259、18−21)を参照。
【0027】
当業者であれば、上記で具体的に説明した課題が単なる例であり、クラスレート水和物ゾーンでの掘削には他の課題が多種存在することが理解されるであろう。さらに、本明細書の例ではクラスレート水和物ゾーンでの現場作業について強調したが、他種の多成分粒子系でも同様な課題が存在する。また、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する実施形態は、単一成分系にも適用でき、2より多くの成分を含む多成分粒子系に拡張することもできる。
【0028】
図2は、1若しくはそれ以上の実施形態に係るシステム(200)の図を示したものである。このシステム(200)には、掘削対象である多成分粒子系(220)の特性を測定するよう構成された1若しくはそれ以上の測定機構(測定機構A(210)、測定機構N(215)など)が含まれる。測定は、実験室試料に対し、またはin situで(測定対象を動かさず、原位置で)行うことができる。あるいは、前記多成分粒子系(220)のシミュレーションから、または類似組成を有する実際の地層若しくはシミュレートした地層から測定値を得ることもできる。前記多成分粒子系(220)は2若しくはそれ以上のタイプの粒子を含むため、1若しくはそれ以上の異種の粒子について別個の測定を行う場合もある。
【0029】
当業者であれば、多成分粒子系には異なる多数の測定可能な特性と、それらの測定値を得る上で種々の物理機構および論理機序とが存在することが理解されるであろう。その一例として、前記多成分粒子系(220)について、三軸荷重試験または他の同様な機械的試験で、排水条件下の弾塑性特性を測定するよう測定機構を構成することができる。別の例としては、表面形状を取得する方法または孔内検層ツールを使って、前記多成分粒子系(220)の地球物理学的特性(音波速度またはかさ密度など)を測定するよう測定機構を構成することができる。
【0030】
1若しくはそれ以上の実施形態では、測定機構がデータ解析システム(205)に通信可能に連結される。このデータ解析システム(205)は、測定された特性を処理することにより、前記多成分粒子系(220)の弾塑性変形に伴う巨視的特性を計算するよう構成されている。これらの特性としては、弾塑性物質パラメータ自体、またはそれに関する特性、例えば地球物理学的属性、応力属性、または石油物理学的属性などがある。巨視的特性とは、多数の粒子の総体的な挙動を特徴付けるものをいう。粒子の数が十分大きいため、堆積系は(離散粒子(不連続粒子)のセットではなく)連続的な物質として扱うことができ、連続的な系と同様に総体的な特性を伴ったものと仮定される。これらの特性は、当該系の構成要素全体の「平均」を表す。さらに、前記データ解析システム(205)は、当該系について、弾塑性特性と、地球物理学的属性、応力属性、または石油物理学的属性との相関をとる(または数学的関係を構築する)よう構成されている。巨視的特性の計算および弾塑性特性相関の構築については、以下で詳しく説明する。
【0031】
1若しくはそれ以上の実施形態では、前記データ解析システム(205)により構築された弾塑性特性相関を使って、ボアホール周囲の堆積物の機械的完全性を維持するため、現場作業における1若しくはそれ以上の現場作業構成要素(202)を調整をする。1若しくはそれ以上の実施形態では、ドリルビット、マッド処理構成要素、ケーシングなど上述した構成要素が、前記現場作業構成要素(202)に1若しくはそれ以上含まれる。まず、弾塑性特性相関を使って、掘削を計画している地層の弾塑性特性を推定する。これらの特性は、ボアホール周囲の岩石の機械的完全性を評価するよう設計された抗井安定度モデルへの入力として使う。そのようなモデルの結果に基づき、1若しくはそれ以上の現場作業が調整される。そのような調整の例としては、ボアホール掘削に使用するマッドの密度または粘度の変更、ボアホールへのマッド循環率の変更、ボアホールの掘削率の変更、坑井軌跡の変更などがある。
【0032】
引き続き図2を説明すると、前記データ解析システム(205)は、前記現場作業構成要素(202)に通信可能に連結できる。そのような場合、当該データ解析システム(205)は、電気的切り替え信号または遠隔手続き呼び出しなどの自動工程で前記現場作業構成要素(202)を調整するよう構成することができる。あるいは、前記データ解析システム(205)は、プリントアウトやコンピュータ表示など人間が読んで理解できる形態で計算結果を提示するよう構成でき、人間である作業者は、それらの結果に基づいて前記現場作業構成要素(202)を手動で調整することができる。
【0033】
図3は、1若しくはそれ以上の実施形態に従って現場作業を管理する方法のフローチャートを示したものである。1若しくはそれ以上の実施形態では、図3に示す1若しくはそれ以上のブロックを省略し、反復し、または異なる順序で実施することができる。そのため、図3に示した方法の具体的な構成は、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する工程の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0034】
ブロック300では、多成分系の地球物理学的特性、応力特性、石油物理学的特性(すなわちパラメータ)を取得する。そのような特性は、フレームまたは個々の粒子タイプの各特性に対応し、上記の測定機構により測定できる。特に、地球物理学的または石油物理学的なデータは、多成分粒子系における2若しくはそれ以上のタイプの粒子の特性を含むことがあり、多成分粒子系で測定される剪断(せん断)音波をさらに含むこともある。ブロック305では、多成分系の排水条件下の静的弾塑性特性を取得する。そのような特性は、上記の測定機構で測定できる。
【0035】
上記のとおり、地球物理学的特性、応力特性、および石油物理学的特性の選択は、マイクロメカニカルな(マイクロメカニクスによる)原則により決定される。ブロック310では、それらの特性を無次元形態に変換するか、元の次元付き形態のまま残すことができる。同様に、静的弾塑性特性も、無次元形態に変換するか、元の次元付き形態のまま残すことができる。ブロック315では、この弾塑性特性を、1若しくはそれ以上の数学的相関を介して地球物理学的特性、応力特性、および石油物理学的特性に関係付ける。
【0036】
1若しくはそれ以上の実施形態では、特定形態の相関が多成分粒子系の水和物飽和レベルに依存することがある。例えば、堆積物の水和物系では、水和物飽和度が低い場合および水和物飽和度が高い場合に、異なる形態を使用できる。そのため1若しくはそれ以上の実施形態では、ブロック315で、多成分粒子系での水和物飽和レベルに基づき、弾塑性相関の形態を選択する。異なる水和物飽和レベルに適用できる各種形態例については、以下で詳しく説明する。
【0037】
ブロック320では、ブロック315で導出された相関の1つを使って、1若しくはそれ以上の弾塑性特性を推定する。ブロック315で飽和度固有の相関が選択された場合はその相関を使い、ブロック320で、1若しくはそれ以上の弾塑性特性を多成分系について推定することができる。ブロック325では、ブロック320で推定された1若しくはそれ以上の弾塑性特性を使って、抗井の機械的完全性をモデル化する。ブロック330では、そのようなモデル化の結果に基づき、現場作業が調整される。
【0038】
以下の説明では、例えばブロック315で行われる弾塑性特性相関の構築例を挙げる。当業者であれば、本開示に基づき、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する工程を全体として逸脱しない範囲で以下の説明と異なる本発明の実施形態を想定できることが理解されるであろう。
【0039】
1若しくはそれ以上の実施形態において、弾塑性特性相関は、粒状物質の変形を決定するマイクロメカニカルなモデルに基づいている。以下の例では、乾燥した同位体の堆積物−水和物集合体を仮定しており、クラスレート水和物は自然状態で粒子状であると見なされる。この仮定は、THF水和物を含んだガラスビーズについて行われた実験によると、低〜中程度の水和物飽和度について妥当といえることが示唆されている。これについては、Yang,J.、Tohidi,B.、Clennell,B.M.(2004年)「Micro and macro−scale investigation of cementing characteristics of gas hydrates」(ガス水和物のセメンチング特性に関するマイクロスケールおよびマクロスケールの研究)(AAPG Hedburg Research Conference、Vancouver、2004年9月12〜16日)を参照。
【0040】
水和物の飽和度が高い場合、クラスレート水和物は連続的なマトリックス(基質)を形成する。したがって、そのような場合、後述する理論分析の態様は厳密に該当しない場合がある。ただし、水和物飽和度が高い場合であっても、本明細書で説明する理論に基づき考案される相関が有効な場合はある。
【0041】
以下の説明において、別段の断りがない限り、用語「粒」(grain)は鉱物粒をいい、用語「粒子」(particle)は多成分粒子系の任意の成分(水和物や粒など)をいう。さらに、以下の説明では単純化した球形粒子の2成分(二元)モデルを仮定し、各タイプの粒子(水和物や粒など)は均一な直径および同一の物理特性を有する。当業者であれば、粒子が非球形またはマルチサイズで、あるいは他の物理特性が可変である、より複雑な粒子系モデルを使用できることが理解されるであろう。さらに上記のとおり、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する実施形態は、2種より多くのタイプの粒子を含む多成分粒子系へと拡張できる。
【0042】
マイクロメカニカルモデルの態様については、Darve,F.& Nicot,F.(2005年)「On incremental non−linearity in granular media: phenomenological and multi−scale views (Part I)」(粒状媒質における増分非線形について:現象論的およびマルチスケールの見解(パートI))(International Journal for Numerical and Analytical Methods in Geomechanics、29、1387−1409)、Emeriault,F.& Claquin,C.(2004年)「Statistical homogenization for assemblies of elliptical grains: effect of the aspect ratio and particle orientation」(楕円形粒の集合体の統計的均質化:アスペクト比および粒子配向の効果)(International Journal of Solids and Structures、41、5837−5849)、Gardiner,B.S.& Tordesillas,A.(2004年)「Micromechanics of shear bands」(剪断帯のマイクロメカニクス)(International Journal of Solids and Structures、41、5885−5901)、Sayers,C.M.(2002年)「Stress−dependent elastic anisotropy of sandstones」(応力に依存する砂岩の弾性異方性)(Geophysical Prospecting,50,85−95)、およびTordesillas,A.& Walsh,S.(2002年)「Incorporating rolling resistance and contact anisotropy in micromechanical models of granular media」(粒状媒質のマイクロメカニカルモデルへの転がり抵抗および接触異方性の導入)(Powder Technology、124、106−111)の論文に説明されている。
【0043】
マイクロメカニカルモデルに関する上記文献の調査および論理的分析によれば、排水条件下の動的および静的な変形を考慮することができ、その場合以下の物理属性が必要になることが示唆されている。以下に記載したこれらの物理属性の番号は、単に読者の便宜を考慮したもので、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する工程の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0044】
1)粒の直径(d)および水和物の粒径(d)。
【0045】
2)粒の密度(ρ)、水和物の密度(ρ)、および乾燥した集合体の密度(ρ)。乾燥した集合体は、クラスレート水和物および鉱物粒から成るが、間隙流体は含まない。
【0046】
3)粒−粒接触で摩擦を決定する粒界滑り摩擦係数(μgg)、水和物−水和物接触での粒界滑り摩擦係数(μhh)、および粒−水和物接触での粒界滑り摩擦係数(μgh)。1若しくはそれ以上の実施形態において、これらの摩擦係数は、堆積物および水和物の所与の組み合わせについて各々一定と見なされる。あるいは、より複雑な摩擦モデルも使用できる。
【0047】
4)水和物−水和物接触における凝集力(chh)および粒−水和物接触における凝集力(cgh)。1若しくはそれ以上の実施形態において、これら凝集力値は、堆積物および水和物の所与の組み合わせについて各々一定と見なされる。さらに、未固結堆積物について一般に仮定されるように、粒−粒接触における凝集力は無視できるか存在しないものとして扱うことができる。あるいは、より複雑な凝集モデルも使用できる。
【0048】
5)所与の方向で接点が見つかる期待値を記述する接触密度分布関数。この例では、このような分布が粒−粒、粒−水和物、水和物−粒、および水和物−水和物の接触について4つ使用される。等方性物質についての三軸試験では、接触密度分布関数は、軸方向に圧縮がかかる前の、初期等方性応力状態の配向とは無関係である。軸圧縮が起こると、接触密度分布関数は一般に変化(進化)し、角度方向に依存するようになる。これについては、Darve,F.& Nicot,F.(2005年)「On incremental non−linearity in granular media: phenomenological and multi−scale views (Part I)」(粒状媒質における増分非線形について:現象論的およびマルチスケールの見解(パートI))(International Journal for Numerical and Analytical Methods in Geomechanics、29、1387−1409)を参照。ただし上記の変化(進化)は、初期接触密度分布関数と、与えられる応力と、本明細書で定義する特性とにより完全に決定される。このため、初期等方性応力状態の接触密度分布関数を指定するだけでよい。
【0049】
そのような状態では、平均部分配位数および種々の粒子の数量が接触密度分布関数について置換可能になる。そのため、変形過程は、単位体積あたりの粒の数(n)と、単位体積あたりの水和物粒子の数(n)と、平均部分配位数(Ngg、Ngh、Nhg、およびNhh)とに依存すると仮定することができ、ここで、上記の下付き文字は接触の性質を表す。ngh=nhgであるため、1若しくはそれ以上の一実施形態では、Nhgの指定が不要になる。あるいは、別の変数を指定から省略することができる。
【0050】
6)各種の粒子接触(粒−粒、粒−水和物、水和物−粒、および水和物−水和物)の配位数に関する分布関数。本明細書を執筆している時点で、多成分粒子系の配位数分布について構築された理論はなく、この分布を測定するための実験もほとんど行われていない。これについては、Pinson,D.、Zou,R.P.、Yu,A.B.、Zulli,P.& McCarthy,M.J.(1998年)「Coordination number of binary mixtures of spheres」(球体の2成分混合物(二元混合物)の配位数)(J.Phys.D、31、457−462)などを参照。このため、各粒子接触の分布の平均値(Ngg、Ngh、およびNhh)だけが指定可能である。言い換えると、より高次のモーメントの役割は無視できる。ただし、多成分粒子系の配位数分布について理論が考案された場合は、その理論を使って、配位数分布を得ることができる。
【0051】
7)粒子接触の法線方向および剪断方向の弾性剛性(弾性スティフネス)。一般に、これらの弾性スティフネスは接触ごとに異なり、与えられる応力と、接触しあう粒子の物質特性とに依存する。ただし、これらの弾性スティフネスは、粒の弾性特性がわかっており、各接触における応力を計算する上で十分な情報がある場合、既知のものと仮定できる。例えば、この仮定が可能になるのは、多成分粒子系の幾何学的構造および封圧が定義済みの場合である。1若しくはそれ以上の実施形態では、多成分粒子系の幾何学的構造を定義するには、上記の変数(Ngg、Ngh、Nhh、n、n、d、およびd)だけで十分と見なせる。これにより、粒子接触の法線方向および剪断方向の弾性スティフネスを指定する上で必要な追加変数は、粒および水和物のヤング率(E、E)と、粒および水和物のポアソン比(v、v)と、封圧(p)とになる。
【0052】
この議論では、考慮する物理属性のリストからクラスレート水和物の含有量を除外する。クラスレート水和物の含有量は、すでに前記リストに含まれている物理特性に作用する範囲で変形に影響を及ぼす。
【0053】
1若しくはそれ以上の実施形態では、多成分粒子系が、粒接触によるスライドで可塑的に変形すると仮定できる。そのため、変形に対する粒子回転の寄与は無視できる。剪断帯の最終段階は、滑り接触ではなく転がり接触により決定されると期待される。これについては、Bardet,J.P.& Proubet,J.(1991年)「A numerical investigation of the structure of persistent shear bands in granular media」(粒状媒質において持続する剪断帯構造の数値解析)(Geotechnique、41、599−613)およびTordesillas,A.& Walsh,S.(2002年)「Incorporating rolling resistance and contact anisotropy in micromechanical models of granular media」(粒状媒質のマイクロメカニカルモデルにおける転がり抵抗および接触異方性の導入)(Powder Technology、124、106−111)などを参照。あるいは、接点での転がり抵抗および回転剛性を記述する付加的なパラメータを指定することにより、粒子回転を解析に組み込むこともできる。
【0054】
上記の議論に基づくと、弾塑性変形を決定する巨視的特性ηは、以下のパラメータに依存すると見なすことができる。
【数2】

【0055】
さらに、式(1)は以下の関係に基づいて修正でき、ここで、φは多孔率、shydは水和物の飽和度である。
【数3】

【0056】
これにより、式(2)、(3)、および(4)を使って式(1)からn、d、およびρを排除すると、次式が得られる。
【数4】

【0057】
式(5)でどの変数を排除するかは、上記だけに限定されるものではない。式(5)は、次のように表現できる音速も含め、多成分粒子系の弾塑性特性を決定する変数を定義する。
【数5】

【0058】
ここで、Vは疎密波(圧縮波)の速度、Vは剪断波の速度である。
【0059】
この例では、どちらの音速もフレーム速度である。さらに、必要な場合は、流体が飽和した堆積物中で測定された音速をガスマンの関係または他の任意の同様な方法を使って補正できる。これについては、Mavko,G.、Mukerji,T.,& Dvorkin,J.(1998年)「The Rock Physics Handbook」(岩石物理学ハンドブック)(Cambridge University Press、p.329)などを参照。式(6)および(7)では、音波が誘発するひずみにより接点で生じる滑りは、ひずみが十分小さいため無視できると仮定している。したがって、VおよびVは、接点における凝集特性および摩擦特性とは無関係であると見なせる。
【0060】
引き続き上記の例を議論すると、式(6)はNggについての式に逆変換できると仮定できる。具体的には、式(6)の他のすべての変数を固定すると、VとNggとに1対1の関係を仮定することができる。この仮定は、Nggの増加ともにVが単調に増加すると期待されるため、物理的に妥当である。したがって、式(5)のNggをVで置き換えて、次式のようにできる。
【数6】

【0061】
1若しくはそれ以上の実施形態では、VをVで置き換えることができる。さらに、水和物飽和度が低い場合は、機械特性が水和物の特性と無関係であると見なせる。この仮定は、核形成後、水和物が粒同士の接触領域ではなく微細孔の空間に成長する場合に適用できると期待される。したがって、式(8)は、次のように単純化できる。
【数7】

【0062】
ただし、中程度〜高い水和物飽和度の場合は、水和物粒子に荷重がかかり、水和物粒子の幾何学的特性および物理特性が重要になる。そのような場合、Vの感度は、これらの特性に対し高まりうる。
【0063】
さらに、式(7)はNhhについての式に逆変換できると仮定できる。すなわち、式(7)の他のすべての変数を固定すると、VSとNhhとに1対1の関係を仮定することができる。この1対1の関係は、隣接しあう水和物粒子の接点数が増加するともにVSが単調に増加すると期待されるため、ここでも物理的に妥当である。したがって、式(8)のNhhをVで置き換えて、次式のようにできる。
【数8】

【0064】
式(9)および(10)は、弾塑性特性相関をとる際、使用できる一般的な関係である。ただし、これらの式は、一部の場合に適用するには扱いにくいことがある。その場合は、上記の式を単純化して、適用を容易にできる。以下では、そのような単純化セットの1つについて説明する。以下の単純化は、単なる例示目的で提供するものであり、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する工程の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0065】
一例として、式(9)および(10)は、所与の堆積物−水和物2成分(二元)系に適用して単純化できる(あるいは、式(9)および(10)を使用すると、複数の異なる2成分(二元)系のデータを重ね合わせたものの相関をとることができる)。上記の仮定により、堆積物−水和物の所与の組み合わせについて、d、r、E、E、v、v、μgg、μgh、μhh、cgh、およびchhを、固定値と仮定することができる。
【0066】
式(10)からNghおよびnを排除できれば望ましい。本明細書を執筆している時点で、3つの平均部分配位数(Ngg、Ngh、およびNhh)に関する厳密な理論的表現は存在しない。ただし、多成分(多元)粒子系の平均部分配位数に関するおおよその理論的関係は、Dodds,J.A.(1980年)「The porosity and contact points in multicomponent random sphere packings calculated by a simple statistical geometric model」(多成分ランダム球体充填における多孔率および接点の、単純な統計幾何学的モデルによる計算)(J. Colloid Interface Sci 77、317-327)、Ouchiyama,N.& Tanaka,T.(1980年)「Estimation of the average number of contacts between randomly mixed solid particles」(無作為に混合した固体粒子間の平均接点数の推定)(Ind.Eng.Chem.Fundam.19、338−340)、およびSuzuki,M.& Oshima,T.(1985年)「Co−ordination number of a multicomponent randomly packed bed of spheres with size distribution」(サイズ分布を伴った多成分球体を無作為に充填した層の配位数)(Powder Technol.44、213)の論文に説明されている。
【0067】
Ouchiyama & Tanaka(1980年)(上記参照)により開発された式の検査法を使うと、Ngg、Ngh、およびNhhは、次のように近似的にモデル化できることが明らかになる。
【数9】

【0068】
さらに、式(2)および(3)を使うと、上記のようにnおよびdを排除することができる。したがって、式(11)は、次のように単純化できる。
【数10】

【0069】
さらに、Ouchiyama & Tanaka(1980年)(上記参照)関係の簡潔性により、式(12)を逆変換してNhhからnを得ることができる。
【数11】

【0070】
式(13)を式(12)に代入するとNghについて、次式が得られる。
【数12】

【0071】
この例では、最後に式(13)および(14)を式(10)に代入し、式(7)の逆変換によりNhhをVで表せることを利用して、次式が得られる。
【数13】

【0072】
次元解析を行うと、式(9)および(15)における独立変数の数を減らすことができる。一般に、前記巨視的特性ηは、無次元のもの(ポアソン比やダイレーション角(ダイレイタンシー角)など)としても、圧力次元を有するもの(ヤング率、一軸圧縮強度(unconfined compression strength、略称UCS)、凝集硬化パラメータなど)としても考慮できる。無次元化を目的とした場合、d、ρ、およびVをスケール変数として選択できる。ただし、他のスケール変数の組み合わせも使用できる({p、d、ρ}、{p、d、V}など)。さらに、結果的に得られる関係は、排他的にも他の関係と組み合わせて使用することもできる。
【0073】
上記のスケール変数を選択すると、E、E、cgh、およびchhの項(圧力次元を有する)を
【数14】

【0074】
の値でスケーリングして4つの無次元変数を
【数15】

【0075】
の形で得ることができる。ここで、cは固定された堆積物−水和物組み合わせに関する定数である。ただし、4つの変数は、すべて一般性を失うことなく単一の変数
【数16】

【0076】
で置換することができる。ここで、cは圧力次元を有した任意のスケール変数である。
【0077】
したがって、無次元化を行うと、無次元量間に以下の関係が得られる。
【数17】

【0078】
ここで、ηが圧力次元を有する場合は
【数18】

【0079】
ηが無次元の場合はη*=η、また
【数19】

【0080】
である。
【0081】
式(16)および(17)により、2成分(二元)堆積物の水和物系における機械特性および地球物理学的データの相関を考慮する基礎が得られる。一定の堆積物−水和物組み合わせについては、ν、ν、μgg、μgh、およびμhhも固定されるため、残りの変数についてのみ相関を求めればよい。独立変数、
【数20】

【0082】
は、すべて地球物理学的データから測定または推定することができる。
【0083】
図4は、1若しくはそれ以上の実施形態に係る相関図を示したものである。具体的にいうと、図4は、ダイレーション角(ダイレイタンシー角)と無次元かさ密度ρとの例示的な相関(一点鎖線)の図であり、これは上記の例示的な方程式に基づく仮想データを使って構成したものである。ダイレーション角は、剪断力を受けた固体が体積を増す傾向を示す尺度である。図4において、水和物飽和度は、凡例に示したデータ点に対応している。実際には、以下の手順で図4のデータを得ることができる。水和物を含んだ堆積物の試料は、対象となる地層をコアリングすることにより、または実験室で合成代用物質を製造することにより得られる。試料の特性ρおよびρは実験室で測定され、ρが計算される。次に、試料を、種々の荷重体系下で三軸圧縮試験装置にかける。そして、その試料について応力−ひずみ曲線をプロットする。ダイレーション角(ダイレイタンシー角)は、これらの応力−ひずみ曲線から推定する。これによりダイレーション角とρのプロットを作成し、そのプロットの点に対し曲線フィッティングを行う。この曲線を記述する数学関数が、ダイレーション角およびρの相関関数である。この例ではダイレーション角およびρに良好な相関があると仮定したが、実際には一般に調査を行って、最良の相関が得られる式(16)および(17)の変数の組み合わせを見つける。例えば、ダイレーション角は、最終的に積ργ、または3つの変数shyd、ρ、およびφに最もよく相関する可能性がある。当業者であれば、多種の相関が存在することが理解されるであろう。図4に示した相関は、単に例示目的で提供するものであり、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する工程の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0084】
ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する実施形態では、多成分粒子系(例えば、クラスレート水和物を含んだ堆積物など)の機械特性を正確に予測することができる。1若しくはそれ以上の実施形態では、そのような系における機械的な作用を説明することにより、過度に保守的な機械的破壊モデルおよび弾性−脆性モデルに伴う非効率な作業手順を避けることができる。例えば、それらの実施形態を使用すると、岩石の変形または破壊を予測でき、その予測に基づいて現場作業を調整できる。より一般には、前記実施形態により現場作業を調整して、多成分粒子系の掘削に伴う問題を軽減することができる。
【0085】
1若しくはそれ以上の実施形態では、上記の式(1)〜(17)を参照して説明し米国特許第7,472,022号で説明された方法を使って、次式が導出される。
【数21】

【0086】
ここで、式(18)および(19)でアスタリスクが付いている項は、すべて無次元である。具体的にいうと、
【数22】

【0087】
は、ガス水和物飽和度がそれぞれ低い場合および高い場合の無次元の機械特性であり、
【数23】

【0088】
は、それぞれ無次元の封圧、疎密波(圧縮波)速度、および剪断波速度であり、shydは水和物飽和度であり、φは多孔率であり、左辺の機械特性は、圧力単位の値を封圧pでスケーリングしたものである。無次元化した上記の各項は、
【数24】

【0089】
で定義され、ここで、cは圧力の次元を伴った任意のスケール変数、VおよびVは、それぞれ疎密波および剪断波の速度、そしてρは密度である。1若しくはそれ以上の実施形態では、これら独立変数の一部が利用できない。この場合、相関は、変数の全補集合サブセットにわたり探索を行うことにより導出できる。例えば、音速VおよびVがわからない場合は、式(18)および(19)を使って、無次元の静的排水ヤング率(E/p)と独立変数shyd、α、およびφとの相関を導出することができる。一実施形態では、これらの独立変数shyd、α、およびφを、地球物理学的データおよびスケーリング定数pから測定または推定することができる。便宜上、無次元変数の上付き位置に付けるアスタリスクは、次式には含めていない。
【0090】
本発明の1若しくはそれ以上の一実施形態において、式(19)は次のように展開される。
【数25】

【0091】
この例では、音速V、Vが利用できない場合に式(20)が使用される。式(19)の展開形態を使うと、独立変数(shyd、α、φ)間の2次結合が可能になる。当業者であれば、それに代わる展開が可能であり、例えばより高次の代数項、または非代数項を使用できることが理解されるであろう。さらに、展開には、音速に関する有次元の変数や項、または式(8)、(9)、および/または(16)の右辺に見られる項の種々の組み合わせを含めることもできる。次いで、現場から得られるデータ(または試料データ)とともに数値探索スキームを使用すると、展開式から冗長項を排除し、残りの係数について最適な値を決定することができる。この場合、冗長項は、検査値に感度のない項(相関能力の改善による検査値へのフィッティングに効果を示さない項)に対応したものであってよい。1若しくはそれ以上の実施形態では、ベイズ法に基づく逆解析(インバージョン解析)が反復されて、検査値との最適マッチをもたらす係数の値が得られる。不確定性が最も大きい(データへの感度が最も小さい)係数は展開から排除され、逆解析の別の反復が行われる。この工程は、さらに排除できる項がなくなるまで反復できる。
【0092】
1若しくはそれ以上の実施形態では、上述のベイズ法に基づいた探索スキームを使って以下の相関が決定される。
【数26】

【0093】
ここで、A=90.58、B=78.90、C=0.5831、D=800.4、E=1.371、およびF=1.022である。この例では、上記の相関が、αおよびshydの2次結合を説明する。一般化した展開手法を使うと、そのような結合が発見可能になる。さらに、一般化した展開を使うと、相関の所定形態を強制することに伴うバイアスなしで、相関を生成することができる。
【0094】
前記一般化した展開手法とその結果(式(21)など)には、水和物を含有する堆積物の機械特性に関する比較的最近の実験測定値が利用されることが、当業者であれば理解されるであろう。さらに、ベイズ法に基づく逆解析による展開式からの項の逐次排除には、著しい計算資源が必要とされる。
【0095】
1若しくはそれ以上の実施形態では、式(21)の相関を適用して得られた結果により、クラスレート水和物の飽和度が高い場合のヤング率は、実際の値より低く予測される可能性があると示されている。この場合、以下の条件が満たされれば上述の相関(式(21))を使用することができる。(i)クラスレート水和物の飽和度が50%を実質的に超えず、(ii)封圧が
【数27】

【0096】
の範囲内である。当業者であれば、これらの条件が満たされなくとも、前記相関を使用できることが理解されるであろう。さらに当業者であれば、砂質土に存在するガス水和物および/または数値探索スキームのデータ源である砂質土若しくは環境の他の物理特性に応じて、上記の相関における定数または当該相関の形態が異なる可能性のあることが理解されるであろう。
【0097】
実施形態は、使用するプラットフォームにかかわらず、ほぼ全タイプのコンピュータで実施できる。例えば図5に示すように、コンピュータシステム(500)には、プロセッサ(502)と、それに伴うメモリ(504)と、記憶装置(506)と、今日のコンピュータに一般に備えられた他の多くの要素および機能(図示せず)とが含まれる。前記コンピュータ(500)には、キーボード(508)およびマウス(510)などの入力手段と、モニター装置(512)などの出力手段とが含まれることもある。前記コンピュータシステム(500)は、ネットワーク(514)(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットなどの広域ネットワーク(WAN)、または他の任意の類似タイプのネットワーク)に、ネットワークインターフェース接続(図示せず)を通じて接続できる。当業者であれば、これらの入出力手段が他の形態を取ることも可能なことが理解されるであろう。
【0098】
さらに、当業者であれば、上述のコンピュータシステム(500)の1若しくはそれ以上の要素を遠隔位置に配置することも、またネットワーク経由で他の要素に接続することも可能なことが理解されるであろう。さらに、1若しくはそれ以上の実施形態は、複数のノードを有した分散システムで実施でき、その場合、本システムの各部分(現場作業構成要素、データ解析システム、測定機構など)を前記分散システム内の異なるノードに配置することができる。1若しくはそれ以上の実施形態において、前記ノードはコンピュータシステムに対応する。あるいは、前記ノードは、物理メモリを伴ったプロセッサに対応する。あるいは、前記ノードは、共有メモリまたは共有資源(リソース)を伴ったプロセッサに対応する。さらに、前記方法の実施形態を実行するソフトウェア命令は、コンパクトディスク(CD)、ディスケット、テープ、または他の任意のコンピュータ可読記憶装置といったコンピュータ可読媒体に格納できる。
【0099】
以上、限定された数の実施形態を参照して、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する工程を説明したが、当業者であれば、本明細書に開示した、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する工程の範囲を逸脱しない範囲で、本開示に基づき他の実施形態も考案できることが理解されるであろう。そのため、ガス水和物を含む堆積物のin situ機械特性を推定する当該工程の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分粒子系の弾塑性特性相関をとる方法であって、
堆積物の水和物系の地球物理学的データから、shydおよびpを有するパラメータを取得する工程であって、shydは水和物飽和度で、pは封圧である、前記取得する工程と、
前記パラメータおよび相関を使って前記堆積物の水和物系のヤング率(E)を決定する工程であって、前記相関は
【数28】

であり、α=p/cで、cは圧力の次元を伴ったスケール変数である、前記決定する工程と、
前記堆積物の水和物系のヤング率に基づいて現場作業を調整する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記堆積物の水和物系におけるクラスレート(包接化合物)水和物の飽和度は、50%を実質的に超えないものである。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、pは、
【数29】

の範囲内である。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記堆積物の水和物系は、メタン水和物を含むものである。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記堆積物の水和物系は、THF(テトラヒドロフラン)水和物を含むものである。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、cは1MPaに設定されるものである。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記現場作業は、坑井の完成に関連するものである。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記現場作業は、坑井での生産に関連するものである。
【請求項9】
多成分粒子系における現場作業を管理する方法であって、
前記多成分粒子系に関連付けられた複数の地球物理学的パラメータおよび石油物理学的パラメータのうち少なくとも1つを取得する工程と、
前記複数の地球物理学的パラメータおよび石油物理学的パラメータに対応する少なくとも1つの特性を計算する工程と、
前記多成分粒子系の弾塑性特性の少なくとも1つの測定値を取得する工程と、
前記多成分粒子系の弾塑性特性の前記少なくとも1つの測定値と前記少なくとも1つの特性とを使って、前記多成分粒子系の少なくとも1つの弾塑性特性を予測する工程と、
前記少なくとも1つの弾塑性特性を前記少なくとも1つの特性に関係付ける一般展開式に基づいて、前記少なくとも1つの弾塑性特性について相関をとる工程と、
数値探索スキームを使って、前記一般展開式から冗長項を排除する工程と、
前記相関を使って、対象となる地層に含まれる堆積物の少なくとも1つの弾塑性特性を推定する工程と、
前記堆積物の前記少なくとも1つの弾塑性特性を使って、前記対象となる地層の機械的完全性を評価する工程と、
前記評価に基づいて前記現場作業を調整する工程と
を有する方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記複数の地球物理学的パラメータおよび石油物理学的パラメータは、前記多成分粒子系の種々の粒子の体積割合と、当該多成分粒子系の多孔率と、当該多成分粒子系において測定された音速と、当該多成分粒子系の有効封圧とからなる群から選択される少なくとも1つを有するものである。
【請求項11】
請求項9記載の方法において、前記少なくとも1つの弾塑性特性はヤング率であり、前記相関は
【数30】

であり、A、B、C、D、E、およびFは定数である。
【請求項12】
請求項9記載の方法において、前記少なくとも1つの弾塑性特性および前記少なくとも1つの特性は、それぞれ無次元である。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、A=90.58、B=78.90、C=0.5831、D=800.4、E=1.371、およびF=1.022である。
【請求項14】
請求項9記載の方法において、前記多成分粒子系は、堆積物の水和物系である。
【請求項15】
多成分粒子系の弾塑性特性相関をとるシステムであって、
堆積物の水和物系の地球物理学的データからパラメータを取得するように構成された少なくとも1つの測定機構であって、前記パラメータはshydおよびpを有し、shydは水和物飽和度で、pは封圧である、前記少なくとも1つの測定機構と、
データ解析システムであって、
ヤング率(E)と、前記地球物理学的データの少なくとも1つの特性との相関をとるように構成され、ここで、当該相関は
【数31】

であり、α=p/cで、cは圧力の次元を伴ったスケール変数であり、
前記パラメータおよび前記相関を使って前記堆積物の水和物系の前記ヤング率を決定するように構成された
前記データ解析システムと、
前記堆積物の水和物系のヤング率に基づいて現場作業を調整するように構成された少なくとも1つの現場作業構成要素と
を有するシステム。
【請求項16】
請求項15記載のシステムにおいて、前記データ解析システムは、前記堆積物の水和物系におけるクラスレート水和物の飽和度が50%を実質的に超えない場合、前記ヤング率を決定するようにさらに構成されており、pは、
【数32】

の範囲内である。
【請求項17】
請求項15記載のシステムにおいて、前記堆積物の水和物系は、メタン水和物を含むものである。
【請求項18】
請求項15記載のシステムにおいて、前記堆積物の水和物系は、THF水和物を含むものである。
【請求項19】
請求項15記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの現場作業構成要素は、坑井の完成に関連するものである。
【請求項20】
請求項15記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの現場作業構成要素は、坑井での生産に関連するものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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