説明

ガス流路形成体および燃料電池セル

【課題】冷却効率と発電領域の利用効率の双方を両立可能に、冷媒流路およびガス流路が表裏一体的に形成された構造を提供する。
【解決手段】第1の冷媒マニホールド孔と第2のトンネル構造部と第4の端辺に最も近い第3のガス流路とで囲まれた第1の領域の部分に対応する冷媒流路形成面の第1の部分に、第1の冷媒マニホールド孔からの冷媒の流れが冷媒流路方向に向くように規制する第1の冷媒流路壁が形成され、第2の冷媒マニホールド孔と第1のトンネル構造部と第3の端辺に最も近い第3のガス流路とで囲まれた第1の領域の部分に対応する冷媒流路形成面の第2の部分に、冷媒流路からの冷媒の流れが第2の冷媒マニホールド孔の方向に向くように規制する第2の冷媒流路壁が形成され、第1の冷媒流路壁と第2の冷媒流路壁により形成されるガス流路形成面側の凹凸は、第1ないし第3のガス流路のいずれかに繋げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池セルの発電領域に沿って流すガスおよび冷媒の流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガスとしての水素と酸化ガスとしての酸素(O)との電気化学反応によって発電する装置である。なお、以下では、燃料ガスや酸化ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。この燃料電池は、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly )をセパレータにより挟持した燃料電池セル(単に「セル」とも呼ぶ)により構成される。MEAは、プロトン(H)伝導性を有する固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」とも呼ぶ)の両面に、それぞれ触媒電極層を接合し、さらに、それぞれガス拡散層を配置した構成を有している。
【0003】
カソード側の触媒電極層へ酸化ガス(「カソードガス」とも呼ぶ)を供給するためのガス流路やアノード側の触媒電極層へ燃料ガス(「アノードガス」とも呼ぶ)を供給するためのガス流路は、セパレータのガス拡散層側の面に形成された溝や、ガス拡散層とセパレータとの間に別途設けられたガス流路部材により構成される。
【0004】
図16は、溝状のガス流路を有するアノード側のセパレータの一例を示す概略構成図である。このセパレータSPAaは、導電性の金属板をプレス成型することにより、一方の面に冷媒の流路を形成し、他方の面にガス流路を形成したものである。図は、冷媒の流路が形成された面を示している。なお、冷媒の流路が形成された面を「冷媒流路形成面」と呼び、ガスの流路が形成された面を「ガス流路形成面」と呼ぶ。なお、以下の説明では、概略矩形形状の長辺に沿った方向を横方向あるいは左右方向とし、短辺に沿った方向を縦方向あるいは上下方向として説明する。
【0005】
図に示すように、矩形状のセパレータSPAaの上側および下側の端辺に、酸化ガスとしての酸素を含む空気(Air)のマニホールド(「酸化ガスマニホールド」と呼ぶ)を構成する酸化ガスマニホールド孔AMOが配置されている。下側の酸化ガスマニホールド孔が入口側の酸化ガスマニホールド(「入口側酸化ガスマニホールド」とも呼ぶ)を構成するマニホールド孔AMOi(「入口側酸化ガスマニホールド孔」とも呼ぶ)であり、上側の酸化ガスマニホールド孔が出口側の酸化ガスマニホールド(「出口側酸化ガスマニホールド」とも呼ぶ)を構成するマニホールド孔AMOo(「出口側酸化ガスマニホールド孔」とも呼ぶ)である。そして、各入口側酸化ガスマニホールド孔AMOiの周囲を覆うようにシールラインSOiが形成されており、各出口側酸化ガスマニホールドAMOoの周囲を覆うようにシールラインSOoが形成されている。これらシールラインSOi,SOoの内側の領域は、このアノード側のセパレータSPAaの上面に積層される隣の燃料電池セルのカソード側のセパレータ(不図示)に形成された連通孔および多孔体部材とともに、隣の燃料電池セルのカソード側の触媒電極層に供給する酸化ガスの流路の領域として機能する。
【0006】
また、セパレータの左側の端辺の上端部(「左端上端部」と略す)および右側の端辺の下端部(「右端下端部」と略す)に、燃料ガスとしての水素のマニホールド(「燃料ガスマニホールド」と呼ぶ)を構成する燃料ガスマニホールド孔AMHが配置され、左端上端部の燃料ガスマニホールド孔が入口側の燃料ガスマニホールド(「入口側燃料ガスマニホールド」とも呼ぶ)を構成するマニホールド孔AMHi(「入口側燃料ガスマニホールド孔」とも呼ぶ)であり、右端下端部の燃料ガスマニホールド孔が出口側の燃料ガスマニホールド(「出口側燃料ガスマニホールド」とも呼ぶ)を構成するマニホールド孔AMHo(「出口側燃料ガスマニホールド孔」とも呼ぶ)である。そして、入口側燃料ガスマニホールド孔AMHiを覆うようにシールラインSHiが形成されており、出口側燃料ガスマニホールド孔AMHoを覆うようにシールラインSHoが形成されている。これらシールラインSHiおよびSHoの内側は、反対側の面に形成された燃料ガスの流路とともに、燃料ガスの流路の領域として機能する。そして、これらシールラインSHi,SHoの内側には、反対側の面に形成されている燃料ガス流路と、を繋ぐ連通孔HHi,HHoが形成されている。
【0007】
また、出口側燃料ガスマニホールド孔AMHoの上側および入口側燃料ガスマニホールド孔AMHiの下側には、冷媒のマニホールド(「冷媒マニホールド」と呼ぶ)を構成する冷媒マニホールド孔AMWが配置されている。出口側燃料ガスマニホールド孔AMHoの上側の冷媒マニホールド孔は、入口側の冷媒マニホールド(「入口側冷媒マニホールド」とも呼ぶ)を構成するマニホールド孔AMWi(「入口側冷媒マニホールド孔」とも呼ぶ)であり、入口側燃料ガスマニホールド孔の下側の冷媒マニホールド孔は、出口側の冷媒マニホールド(「出口側冷媒マニホールド(「出口側冷媒マニホールド」とも呼ぶ)を構成するマニホールド孔AMWo(「出口側冷媒マニホールド孔」とも呼ぶ)である。そして、入口側冷媒マニホールド孔AMWiから出口側冷媒マニホールド孔AMWoまでの領域で、シールラインSOi,SOo,SHi,SHoを除く領域を囲むように、シールラインSWが形成されている。このシールラインSWの内側の領域が冷媒の流路の領域として機能する。
【0008】
ここで、図中ハッチングで示した部分はプレス成型により形成された凸部であり、これらの凸部は反対側の面では凹部となる。なお、ハッチング間隔の違いは段差を示している。冷媒流路形成面ではハッチングの間隔の狭い凸部は広い凸部よりも高さが高い構造となっており、反対側のガス流路形成面ではハッチン部の間隔の狭い部分は広い部分よりも深い凹部構造となる。
【0009】
シールラインSWの内側の領域の上下端部には、左右方向に沿って延びる凸部WHcmi,WHcmoが形成されている。上側の凸部WHcmiと下側の凸部WHcmoとの間には、上下方向に沿って延びる複数の凸部WHが形成されている。凸部WHは、高さが異なる2つの凸部WH1,WH2が、各凸部WHの第1の凸部WH1同士および第2の凸部同士が左右方向に沿って配列されるように、上下方向に沿って交互に形成されている。これにより、左右方向に沿って並ぶ比較的高い第2の凸部WH2が冷媒の流路壁として機能し、左右方向に沿って並ぶ比較的低い第1の凸部WH1および凸部WHの間の基板部WBが、冷媒の流路として機能する。また、基板部WBは、冷媒を上下方向にも流して拡散させる冷媒の流路として機能する。
【0010】
なお、複数の凸部WHは反対側の面において凹部となり、これら凹部は、膜電極接合体により発電が実行される発電領域に燃料ガスを供給する溝状の複数の流路(以下、「枝流路」とも呼ぶ)として機能する。そして、上下に設けられた凸部WHcmi,WHcmoも反対側の面において凹部となり、これら凹部は複数の枝流路に燃料ガスを供給し、複数の枝流路から流れ出る燃料ガスを集める流路(以下、「共通流路」とも呼ぶ)として機能する。
【0011】
そして、反対側の凹部が共通流路となる凸部WHcmi,WHcmoは、シールラインSHi,SHoをまたいで連通孔HHi,HHoに繋げられ、シールラインSHi,SHoで囲まれた燃料ガスの流路の領域に繋がるように、トンネル構造部TWi,TWoに繋げられている。これらトンネル構造部TWi,TWoは、反対側の面の凹部が、シールラインSHi,SHoをまたぐ燃料ガスの流路として機能する複数の凸部で構成されている。
【0012】
ここで、左右端の凸部WHの外側でトンネル構造部TWoの上側およびトンネル構造部TWiの下側の発電領域に対応する領域GA(図中、一点鎖線で示す)は、シールラインSWに囲まれた冷媒流路の領域内にあり、入口側冷媒マニホールド孔AMiからの冷媒の流れを規制する流路壁となる凸部WHcci、および、出口側冷媒マニホールド孔AMoへの冷媒の流れを規制する流路壁となる凸部WHccoが形成されている。上記したように、これら凸部WHcci,WHccoはプレス成型されているので、この領域GAの反対側の面に、燃料ガスの流路を形成することが困難となる。このため、この領域に対応する発電領域に供給される燃料ガスはガス拡散層中を拡散するガスに依存するのみとなり、この領域での発電性能は他の領域の発電性能に比べて著しく低くなり、ほとんど利用不可な領域となる。従って、このような構造のセパレータを用いた場合には、発電領域の利用効率の点て不十分となる。すなわち、従来の構造では、発電領域の利用効率と冷却効率の双方の両立の点で不十分である、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−141979号公報
【特許文献2】特開2005−166545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、冷却効率と発電領域の利用効率の双方を両立可能に、冷媒流路およびガス流路が表裏一体的に形成された構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0016】
[適用例1]
燃料電池セルに用いられ、ガス流路形成面の溝状のガス流路と冷媒流路形成面の冷媒流路とが表裏一体的に形成された構造を有するガス流路形成体であって、
前記燃料電池セルの略矩形状の発電領域に対応する前記ガス流路形成面の第1の領域の内側には、
第1の端辺に沿って形成された第1のガス流路と、
前記第1の端辺に対向する第2の端辺に沿って形成された第2のガス流路と、
前記第1のガス流路と前記第2のガス流路との間を繋ぐように形成された複数の第3のガス流路と、
前記第1の領域の外側で前記第1の端辺に直交する第3の端辺側に形成された第1のガスマニホールド孔と、
前記第1の領域の外側で前記第3の端辺に対向する第4の端辺側に形成された第2のガスマニホールド孔と、
前記第1の領域の外側で前記第4の端辺に沿って前記第2のガスマニホールド孔と並んで形成された第1の冷媒マニホールド孔と
前記第1の領域の外側で前記第3の端辺側に前記第1のガスマニホールド孔と並んで形成された第2の冷媒マニホールド孔と、
前記冷媒流路形成面において前記第1のガスマニホールド孔を覆う第1のシールラインと、
前記冷媒流路形成面において前記第2のガスマニホールド孔を覆う第2のシールラインと、
前記第1のガスマニホールド孔に前記第1のガス流路を繋げるために、前記冷媒流路形成面において前記第1のシールラインをまたぐように形成された第1のトンネル構造部と、
前記第2のガスマニホールド孔に前記第2のガス流路を繋げるために、前記冷媒流路形成面において前記第2のシールラインをまたぐように形成された第2のトンネル構造部と、
を備えており、
前記第1ないし前記第3のガス流路により、前記冷媒流路形成面側に形成される凹凸は、前記冷媒流路を形成しており、
前記第1の冷媒マニホールド孔と、前記第2のトンネル構造部と、前記第4の端辺に最も近い前記第3のガス流路と、で囲まれた第1の領域の部分に対応する前記冷媒流路形成面の第1の部分には、前記第1の冷媒マニホールド孔からの冷媒の流れが前記冷媒流路方向に向くように規制する第1の冷媒流路壁が形成されており、
前記第2の冷媒マニホールド孔と、前記第1のトンネル構造部と、前記第3の端辺に最も近い前記第3のガス流路と、で囲まれた前記第1の領域の部分に対応する前記冷媒流路形成面の第2の部分には、前記冷媒流路からの冷媒の流れが前記第2の冷媒マニホールド孔の方向に向くように規制する第2の冷媒流路壁が形成されており、
前記第1の冷媒流路壁および前記第2の冷媒流路壁により形成される前記ガス流路形成面側の凹凸は、前記第1ないし第3のガス流路のいずれかに繋げられている、
ことを特徴とするガス流路形成体。
このガス流路形成体では、第1の冷媒流路壁および第2の冷媒流路壁をガス流路として利用して、第1の冷媒流路壁および第2の冷媒流路壁が形成されている領域に対応する発電領域の部分に、ガスを供給することができるので、冷媒による冷却効率を維持しつつ、発電領域の利用効率を向上させることが可能となる。
【0017】
[適用例2]
適用例1記載のガス流路形成体であって、
前記第1および第2のトンネル構造部の少なくとも一方は、液水とガスを分離する分離構造を有することを特徴とするガス流路形成体。
このガス流路形成体では、液体の水とガスを分離することができるので、液体の水がトンネル構造部内に滞留してガスの流れを阻害することを防止することが可能である。
【0018】
[適用例3]
前記ガス流路形成体は、前記燃料電池セルに用いられるセパレータであることを特徴とする適用例1または適用例2記載のガス流路形成体。
セパレータをガス流路形成体とすれば、燃料電池セルの構成を簡素化することが可能である。
【0019】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一項に記載のガス流路形成体を備える燃料電池セル。
この燃料電池セルによれば、冷媒による冷却効率を維持しつつ、発電領域の利用効率を向上させることが可能となる。
【0020】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、冷媒流路形成体、セパレータ、燃料電池セル、燃料電池等の種々の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施例における燃料電池セルFUCの概略平面図である。
【図2】アノードセパレータSPAの冷媒流路形成面WPとは反対側の燃料ガスのガス流路形成面FPを冷媒流路形成面WP側から見た概略平面図である。
【図3】発電体部PBをアノードセパレータSPA側から見た概略平面図である。
【図4】カソードセパレータSPCを発電体部PB側から見た概略平面図である。
【図5】図1のA1−A1断面およびA2−A2断面を示す説明図である。
【図6】図1のE1−E1断面およびE2−E2断面を示す説明図である。
【図7】図1のF1−F1断面およびF2−F2断面を示す説明図である。
【図8】図1のD1−D1断面を示す説明図である。
【図9】図2の領域GA1に形成される冷媒流路壁WW2に対応する凹部FF2を利用した燃料ガス流路を拡大して示す説明図である。
【図10】図9に示した燃料ガス流路の第1の変形例を示す説明図である。
【図11】図9に示した燃料ガス流路の第2の変形例を示す説明図である。
【図12】図9に示した燃料ガス流路の第3の変形例を示す説明図である。
【図13】第2実施例における出口側トンネル構造部を示す説明図である。
【図14】第2実施例の出口側トンネル構造部の第1の変形例を示す説明図である。
【図15】第2実施例の出口側トンネル構造部の第2の変形例を示す説明図である。
【図16】溝状のガス流路を有するアノード側のセパレータの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0023】
A.第1実施例:
A1.燃料電池セルの構成:
図1は、第1実施例における燃料電池セルFUCの概略平面図である。この燃料電池セルFUCは、図1に示すように、発電体部PBを発電体部PBのアノード側のセパレータSPA(以下、「アノードセパレータ」とも呼ぶ)およびカソード側のセパレータSPC(以下、「カソードセパレータ」とも呼ぶ)で挟持した、平面形状が概略矩形形状の発電モジュールである。なお、図1は、燃料電池セルFUCをアノードセパレータSPAの冷媒流路形成面WP側から見た状態を示している。図2は、アノードセパレータSPAの冷媒流路形成面WPとは反対側の燃料ガスのガス流路形成面FPを冷媒流路形成面WP側から見た概略平面図である。図3は、発電体部PBをアノードセパレータSPA側から見た概略平面図である。図4は、カソードセパレータSPCを発電体部PB側から見た概略平面図である。なお、以下の説明では、概略矩形形状の長辺に沿った方向を横方向あるいは左右方向とし、短辺に沿った方向を縦方向あるいは上下方向として説明する。
【0024】
燃料電池セルFUCには、図1に示すように、図の上側および下側の端辺に沿って、酸化ガスマニホールドMOが配置されている。下側の酸化ガスマニホールドMOが入口側酸化ガスマニホールドMOiであり、上側の酸化ガスマニホールドMOが出口側酸化ガスマニホールドMOoである。そして、入口側酸化ガスマニホールドMOiは、図1〜図4に示すように、アノードセパレータSPAの入口側酸化ガスマニホールド孔AMOi、発電体部PBの入口側酸化ガスマニホールド孔PMOi、および、カソードセパレータSPCの入口側酸化ガスマニホールド孔CMOiによって構成されている。同様に、出口側酸化ガスマニホールドMOoは、アノードセパレータSPAの出口側酸化ガスマニホールド孔AMOo、発電体部PBの出口側酸化ガスマニホールド孔PMOo、および、カソードセパレータSPCの出口側酸化ガスマニホールド孔CMOoによって構成されている。
【0025】
また、燃料電池セルFUCには、図1に示すように、左側上端部および右側下端部に燃料ガスマニホールドMHが配置されている。左端上端部の燃料ガスマニホールドMHが入口側燃料ガスマニホールドMHiであり、右側下端部の燃料ガスマニホールドMHが出口側燃料ガスマニホールドMHoである。そして、入口側燃料ガスマニホールドMHiは、図1〜図4に示すように、アノードセパレータSPAの入口側燃料ガスマニホールド孔AMHi、発電体部PBの入口側燃料ガスマニホールド孔PMHi、および、カソードセパレータSPCの入口側燃料ガスマニホールド孔CMHiによって構成されている。同様に、出口側燃料ガスマニホールドMHoは、アノードセパレータSPAの出口側燃料ガスマニホールド孔AMHo、発電体部PBの出口側燃料ガスマニホールド孔PMHo、および、カソードセパレータSPCの出口側酸化ガスマニホールド孔CMHoによって構成されている。
【0026】
また、燃料電池セルFUCには、図1に示すように、左側および右側の端辺に沿って、冷媒マニホールドMWが配置されている。右側の出口側燃料ガスマニホールドMHoの上に並ぶ冷媒マニホールドMWが入口側冷媒マニホールドMWiであり、左側の入口側燃料ガスマニホールドMHiの下に並ぶ冷媒マニホールドMWが出口側冷媒マニホールドMWoである。そして、入口側冷媒マニホールドMWiは、図1〜図4に示すように、アノードセパレータSPAの入口側冷媒マニホールド孔AMWi、発電体部PBの入口側冷媒マニホールド孔PMWi、および、カソードセパレータSPCの入口側冷媒マニホールド孔CMWiによって構成されている。同様に、出口側冷媒マニホールドMWoは、アノードセパレータSPAの出口側冷媒マニホールド孔AMWo、発電体部PBの出口側冷媒マニホールド孔PMWo、および、カソードセパレータSPCの出口側冷媒マニホールド孔CMWoによって構成されている。
【0027】
そして、図1に示すように、アノードセパレータSPAの冷媒流路形成面WPには、入口側酸化ガスマニホールド孔AMOiの周囲を全体として覆うようにシールラインSOiが形成されており、出口側酸化ガスマニホールド孔AMOoの周囲を全体として覆うようにシールラインSOoが形成されている。また、入口側燃料ガスマニホールド孔AMHiを覆うようにシールラインSHiが形成されており、出口側燃料ガスマニホールド孔AMHoを覆うようにシールラインSHoが形成されている。また、入口側冷媒マニホールド孔AMWiから出口側冷媒マニホールド孔AMWoまでの領域で、シールラインSOi,SOo,SHi,SHoで囲まれた領域を除く領域を囲むように、シールラインSWが形成されている。これらシールラインSOi,SOo,SHi,SHo,SWは、後述するように、上面に積層される他の燃料電池セルのカソードセパレータSPCに接触して、各シールラインで囲まれた領域内をシールし、各マニホールドを流れる流体の流路の領域の一部として機能する。ただし、シールラインSOi,SOoで囲まれた領域は、自身の燃料電池セルではなく、上層の燃料電池セルFUCの酸化ガス流路の一部となる。
【0028】
アノードセパレータSPAは、導電性の金属板をプレス成型することにより、図1に示すように、冷媒流路形成面WPに形成された凸部(図中ハッチングで示した部分)が、冷媒の流路壁となって、冷媒流路が構成される。また、図2に示すように、表裏一体的にガス流路形成面FPに形成された凹部(図中ハッチングで示した部分)が、燃料ガス流路となる。なお、このアノードセパレータSPAは、カーボン等の導電性材料を用いて成型するようにしてもよい。
【0029】
発電体部PBは、図3に示すように、膜電極接合体(MEA)PB1のアノード側およびカソード側の面にガス拡散層(GDL)PB2,PB3を配置し、さらに、カソード側のガス拡散層PB3の面に多孔体流路部PB4を配置して構成される発電体を、シール部PB5で覆った構造を有している。なお、ガス拡散層PB2,PB3内の領域が有効な発電領域PAとして機能する。そして、図1ないし図4には、この発電領域PAに対応する領域の外形が略矩形形状の破線で示されている。なお、各マニホールド孔PMOi,PMOo,PMHi,PMHo,PMWi,PMWoはシール部PB5内、すなわち、発電領域PAの端辺の外側に形成されている。
【0030】
カソードセパレータSPCは、図4に示すように、連通孔HOi,HOoを有する導電性のフラットな金属板である。これら連通孔HOi,HOoは、下層の燃料電池セルFUCのアノードセパレータSPAに形成されたシールラインSOi,SOoで囲まれた領域に対応する領域(図中一点鎖線の枠で示す)内、かつ、発電領域PAに対応する領域(破線の枠で示す)内で、発電領域PAに対応する領域の上下方向の端辺に沿って形成されている。なお、カソードセパレータSPCは、カーボン等の導電性材料を用いて成型するようにしてもよい。
【0031】
図1に示すように、冷媒流路形成面WPにおいて、入口側燃料ガスマニホールド孔AMHiおよび出口側燃料ガスマニホールド孔AMHoの横側には、横方向に沿って延びる凸部WHcmi,WHcmoが形成されている。そして、これら凸部WHcmi,WHcmoは、図2のガス流路形成面FPにおいて凹部FHcmi,FHcmoとなり、共通流路として機能する燃料ガス流路を構成する。
【0032】
そして、入口側燃料ガスマニホールド孔AMHiと第1の凸部WHcmiとの間には、シールラインSHiの内側に連通孔HHiが形成されており、この連通孔HHiと第1の凸部WHcmiに対応する第1の凹部FHcmiを繋ぐように入口側トンネル構造部TWiが形成されている。同様に、出口側燃料ガスマニホールド孔AMHoと第2の凸部WHcmoとの間には、シールラインSHoの内側に連通孔HHoが形成されており、この連通孔HHoと第2の凸部WHcmoに対応する第2の凹部FHcmoを繋ぐように出口側トンネル構造部TWoが形成されている。これらトンネル構造部TWi,TWoには、冷媒流路形成面WPにおいて、それぞれ複数のトンネル凸部TWi1,TWo1がシールラインSHi,SHoをまたぐように形成されており、図2のガス流路形成面FPにおいて燃料ガス流路として機能する複数のトンネル凹部TFi1,TFo1となる。
【0033】
図5は、図1のA1−A1断面およびA2−A2断面を示す説明図である。この図は、説明を容易にするため、1つの燃料電池セルFUCのアノードセパレータSPAに接する上層の燃料電池セルFUCのカソードセパレータSPCおよびカソードセパレータSPCに接する下層の燃料電池セルFUCのアノードセパレータSPAを含めて示している。なお、以下に示す断面図においても同様である。
【0034】
図に示すように、入口側燃料ガスマニホールドMHiを流れる燃料ガス(H)は、シールラインSHiで囲まれた領域の連通孔HHiから入口側トンネル構造部TWiの複数の入口側トンネル凹部TFi1を介して、共通流路としての第1の凹部FHcmiに供給される。
【0035】
図示は省略するが、図1のB1−B1断面およびB2−B2断面も、A1−A1断面およびA2−A2断面と同様の構造を有している。そして、共通流路としての第2の凹部FHcmoを流れる燃料ガスは、出口側トンネル構造部TWoの複数の出口側トンネル凹部TFo1から連通孔HHoを介してシールラインSHoで囲まれた領域へ排出され、出口側燃料ガスマニホールドMHoへ排出される。
【0036】
また、図1に示すように、上側の第1の凸部WHcmiと下側の第2の凸部WHcmoとの間には、縦方向に沿って延びる複数の第3の凸部WHが第1の凸部WHcmiと第2の凸部WHcmoに繋がるように形成されている。これら複数の第3の凸部WHは、図2のガス流路形成面FPにおいて第3の凹部FHとなり、枝流路として機能する燃料ガス流路を構成する。
【0037】
図6は、図1のE1−E1断面およびE2−E2断面を示す説明図である。共通流路として機能する第1の凹部FHcmiを流れる燃料ガスは、枝流路として機能する第3の凹部FHを介して、共通流路として機能する第2の凹部FHcmoへ流れる。なお、枝流路として機能する第3の凹部FHを流れる燃料ガスは、ガス拡散層PB2中を拡散して膜電極接合体PB1のアノード側の触媒電極層(不図示)に供給される。
【0038】
なお、第3の凹部FHは、図2および図6に示すように、比較的浅い第1の部分凹部FH1(図2において狭い間隔のハッチングで示す)および比較的深い第2の部分凹部FH2(図2において広い間隔のハッチングで示す)が交互に配列された構成となっている。なお、第3の凹部FHの深さの違いは、燃料ガス流路としては特に意味がなく、以下で説明するように、冷媒流路形成面WPにおいて、縦方向に燃料ガスを流す枝流路としての第3の凹部FHの構造と、横方向に冷媒を流すための冷媒流路壁の構造と、を表裏一体的に実現するためのものである。
【0039】
図7は、図1のF1−F1断面およびF2−F2断面を示す説明図である。第1の部分凹部FH1および第2の部分凹部FH2は、図1に示す冷媒流路形成面WPにおいて、第3の凸部WHを構成する比較的低い第1の部分凸部WH1(図1において広い間隔のハッチングで示す)および比較的高い第2の部分凸部WH2(図1において狭い間隔のハッチングで示す)となる。そして、図1および図7に示すように、各第3の凸部WHには、それぞれの第1の部分凸部WH1同士および第2の部分凸部同士が横方向に沿って配列されるように、第1の部分凸部WH1および第2の部分凸部WH2が縦方向に沿って交互に配列されている。これにより、横方向に沿って並ぶ比較的高い第2の部分凸部WH2は、上層のカソードセパレータSPCに接することになり、冷媒を横方向に流すための冷媒流路壁を構成する。また、横方向に沿って並ぶ比較的低い第1の部分凸部WH1および第3の凸部WHの間の基板部WBが、冷媒を横方向に流す冷媒流路を構成する。また、基板部WBは、冷媒を縦方向に流して拡散させる冷媒流路を構成する。
【0040】
図8は、図1のD1−D1断面を示す説明図である。図8に示すように、入口側酸化ガスマニホールドMOiを流れる酸化ガス(Air、厳密にはO)は、アノードセパレータSPAに形成されたシールラインSOiで囲まれた入口側の酸化ガス流路の領域を介して、上層の燃料電池セルFUCのカソードセパレータSPCの下側の連通孔HOiへ導かれる。下側の連通孔HOiは、酸化ガスを多孔体流路部PB4に供給するための酸化ガス供給側連通路として機能する。多孔体流路部PB4に供給された酸化ガスは、出口側酸化ガスマニホールドMOoの方向へ向かって、多孔体流路部PB4中を拡散しつつ流れ、ガス拡散層PB3中を拡散して膜電極接合体PB1のカソード側の触媒電極層(不図示)に供給される。
【0041】
図示は省略するが、図1のC1−C1断面もD1−D1断面と同様の構造を有している。そして、多孔体流路部PB4およびガス拡散層PB3を流れた酸化ガスは、カソードセパレータSPCの上側の連通孔HOoへ導かれる。上側の連通孔HOoは、酸化ガスを多孔体流路部PB4から、シールラインSOoで囲まれた出口側の酸化ガス流路の領域の酸化ガス流路壁WOoで挟まれた酸化ガス流路を介して出口側酸化ガスマニホールドMOoへ排出する機能を有している。
【0042】
図1に示すように、冷媒流路形成面WPにおいて、シールラインSWに囲まれた冷媒流路の領域内で、入口側冷媒マニホールド孔AMWiと右端の第3の凸部WHとの間の発電領域PAに対応する領域には、入口側冷媒マニホールド孔AMWiから冷媒流路領域としてのシールラインSWに囲まれた領域内に流れ出る冷媒を、第3の凸部WHの第1の部分凸部WH1および基板部WBによって構成される冷媒流路の方向へ向くように、斜め方向に沿った凸状の冷媒流路壁WW1(発明の第1の冷媒流路壁に相当する)が形成されている。同様に、出口側冷媒マニホールド孔AMWoと、左端の第3の凸部WHとの間の発電領域PAに対応する領域にも、第3の凸部WHの第1の部分凸部WH1および基板部WBによって構成される冷媒流路を流れた冷媒が、出口側冷媒マニホールド孔AMWoの方向へ向くように、斜め方向に沿った冷媒流路壁WW2が形成されている。また、これら冷媒流路壁WW1,WW2は、図2に示すように、ガス流路形成面FPにおいて対応する凹部FF1,FF2が凹部FHに繋がるように形成されている。
【0043】
本実施例の特徴は、以下で説明するように、冷媒流路形成面WPの冷媒流路壁WW1,WW2およびこれら冷媒流路壁WW1,WW2によって構成されたガス流路形成面FPのガス流路として機能する凹部FF1,FF2の構造にある。
【0044】
図9は、図2の領域GA1に形成される冷媒流路壁WW2に対応する凹部FF2を利用した燃料ガス流路を拡大して示す説明図である。なお、枝流路として機能する第3の凹部FHは、図2に示すように、厳密には第1の部分凹部FH1と第2の部分凹部FH2で構成されるが、説明上特に区分する必要がないので、省略して示されている。領域GA1は、出口側冷媒マニホールド孔AMWoと、入口側トンネル構造部TWiと、左端の第3の凸部WHに対応する第3の凹部FHと、に囲まれた領域である。
【0045】
図9に示すように、冷媒流路壁WW2に対応する凹部FF2は、枝流路として機能する第3の凹部FHに繋げられている。これにより、第3の凹部を流れる燃料ガスは、凹部FF2に流れ込み、領域GA1に対応する発電領域PAの領域に燃料ガスを供給することができ、発電領域の利用効率を向上させることができる。また、この凹部FF2は、冷媒流路壁WW2をそのまま利用しているので、効率的な冷却のための冷媒の流れを維持することができる。従って、冷媒による冷却効率を維持しつつ、発電領域の利用効率を向上させることが可能である。
【0046】
また、図示は省略するが、領域GA2の冷媒流路壁WW1に対応する凹部FF1も、領域GA1の冷媒流路壁WW2に対応する凹部FF2と同様であり、冷媒による冷却効率を維持しつつ、発電領域の利用効率を向上させることが可能である。なお、領域GA2は、入口側冷媒マニホールド孔AMWiと、出口側トンネル構造部TWoと、右端の第3の凸部WHに対応する第3の凹部FHと、に囲まれた領域である。
【0047】
以上説明したように、本実施例では、冷媒による冷却効率を維持しつつ、発電領域の利用効率を向上させることが可能であり、従来技術において課題とされていた、冷却効率と発電領域の利用効率の双方を両立可能に、冷媒流路およびガス流路が表裏一体的に形成された構造を実現することが可能である。
【0048】
なお、本実施例において、領域GA1が発明の第1の部分に対応し、領域GA2が発明の第2の部分に対応する。また、領域GA1に形成された冷媒流路壁WW1が第1の冷媒流路壁に対応し、領域GA2に形成された冷媒流路壁WW2が第2の冷媒流路壁に対応する。また、第1の凹部FHcmi、第2の凹部FHcmo、および、第3の凹部FHが、第1ないし第3のガス流路に対応する。また、シールラインSOiが第1のシールラインに対応し、シールラインSOoが第2のシールラインに対応する。また、入口側トンネル構造部TWiが第1のトンネル構造部に対応し、出口側トンネル構造部TWoが第2のトンネル構造部に対応する。
【0049】
A2.変形例:
図10は、図9に示した燃料ガス流路の第1の変形例を示す説明図である。図9に示した領域GA1に対応する発電領域PAの領域に燃料ガスを供給する燃料ガス流路は、一方の端部が枝流路として機能する第3の凹部FHに繋げられ、他方の端部が閉塞された複数の凹部FF2で構成されている。しかしながら、これに限定されるものではなく、図10に示すように、領域GA1に対応する発電領域PAの領域を蛇行して形成され、両端が第3の凹部FHに繋げられた凹部FF2aで構成するようにしてもよい。なお、この構成の場合には、図中クロスハッチングで示した部分の深さは他の部分の深さよりも浅い構造、すなわち、冷媒流路形成面WPにおいて、他の部分よりも壁面の高さが低い構造として、冷媒の流れる流路を確保する必要がある。
【0050】
この構成においても、冷媒による冷却効率を維持しつつ、発電領域の利用効率を向上させることが可能であり、従来技術において課題とされていた、冷却効率と発電領域の利用効率の双方を両立可能に、冷媒流路およびガス流路が表裏一体的に形成された構造を実現することが可能である。
【0051】
なお、図示は省略するが、領域GA2においても第1の変形例と同様の構成とすることが可能である。
【0052】
図11は、図9に示した燃料ガス流路の第2の変形例を示す説明図である。この変形例は、第3の凹部FHに沿って領域GA1に凹部FHbを形成し、この凹部FHbに冷媒流路壁WW2に対応する複数の凹部FF2を繋ぐ構造を示している。凹部FHbは、入口側トンネル凹部TFi1と共通流路として機能する第2の凹部FHcmiに繋げられている。なお、凹部FHbの接続先は、共通流路として機能する凹部でもよいしトンネル凹部でもよく、両方にまたがって繋げられていてもよい。また、凹部FHbも第3の凹部と同様に、深さの異なる部分凹部で構成し、冷媒の流れる流路を確保する必要がある。
【0053】
この構成においても、冷媒による冷却効率を維持しつつ、発電領域の利用効率を向上させることが可能であり、従来技術において課題とされていた、冷却効率と発電領域の利用効率の双方を両立可能に、冷媒流路およびガス流路が表裏一体的に形成された構造を実現することが可能である。
【0054】
なお、図示は省略するが、領域GA2においても第2の変形例と同様の構成とすることが可能である。
【0055】
図12は、図9に示した燃料ガス流路の第3の変形例を示す説明図である。この変形例は、第1の変形例の凹部FF2aと同様の凹部FF2cを、第3の凹部FHではなく、入口側トンネル凹部TFi1および共通流路としての第2の凹部FHcmoに繋げた構造を示している。なお、入口側トンネル凹部TFi1へ繋げている端部は、共通流路としての第1の凹部FHcmiに繋げてもよいし、入口側トンネル凹部TFi1および第1の凹部FHcmiの両方にまたがって繋げてもよい。
【0056】
この構成においても、冷媒による冷却効率を維持しつつ、発電領域の利用効率を向上させることが可能であり、従来技術において課題とされていた、冷却効率と発電領域の利用効率の双方を両立可能に、冷媒流路およびガス流路が表裏一体的に形成された構造を実現することが可能である。
【0057】
なお、図示は省略するが、領域GA2においても第3の変形例と同様の構成とすることが可能である。
【0058】
以上説明したように、領域GA1,GA2に対応する発電領域PAの領域に燃料ガスを供給するための冷媒流路壁を利用した燃料ガス流路の構造は、図9に示した構造に限定されるものではなく、例えば、図10〜図12に示した種々の構造とすることが可能である。すなわち、冷媒流路壁を利用した燃料ガス流路の構造は、冷却効率を考慮して形成された冷媒流路壁を利用して、領域GA1,2に対応する発電領域PAの領域に燃料ガスを供給することが可能な構造であればよい。
【0059】
B.第2実施例:
B1.トンネル構造部の構造:
図13は、第2実施例における出口側トンネル構造部を示す説明図である。図13(A)は第2実施例の出口側トンネル構造部TWoaを拡大して示しており、図13(B)は第1実施例の出口側トンネル構造部TWoを拡大して示している。
【0060】
図13(B)に示すように、第1実施例の出口側トンネル構造部TWoには、複数の出口側トンネル凹部TFo1が凹状の燃料ガス流路として形成されている。これら出口側トンネル凹部TFo1は、上述したように、共通流路としての第2の凹部FHcmoを流れる燃料ガスを出口側燃料ガスマニホールドMHoへ排出する機能を有している。なお、第1実施例の入口側トンネル構造部TWiも、拡大図示は省略するが、同様に、入口側燃料ガスマニホールドMHiから共通流路としての第1の凹部FHcmiへ燃料ガスを供給する機能を有する複数の入口側トンネル凹部TFi1を有している。
【0061】
トンネル凹部TFo1,TFi1を流れる燃料ガスは、あらかじめ加湿されることや発電により水(HO)が含まれている。この水が液体の水(以下、「液水」と呼ぶ)としてトンネル凹部TFo1,TFi1に滞留すると、トンネル凹部TFo1,THi1を閉塞し、燃料ガスの流れを阻害してしまうことになる。これにより、燃料電池の発電性能の低下を招くことになる。また、燃料電池の運転停止時に、トンネル凹部TFo1,TFi1に滞留した液水が、氷点下環境において凍結すると、トンネル凹部TFo1を閉塞し、燃料ガスの流れを阻害してしまうことになる。通常、運転停止時において、燃料電池セル内に滞留する液水を除去するためにパージを行うが、パージガスの流速が小さい場合や、時間が短い場合等液水を除く力が弱いもしくは不十分な場合には液水が滞留することになる。これにより、その後の運転始動時の始動性の低下や始動ができない、等の影響を招くことになる。上記問題は、液水と燃料ガスの流れる通路が同一であることに起因する。
【0062】
一方、図13(A)に示すように、本実施例の出口側トンネル構造部TWoaは、出口側トンネル凹部TFo1を流れる燃料ガスの流れ方向に対して垂直な方向(図の上下方向)が鉛直方向となるように燃料電池セルを配置するものとする。そして、出口側トンネル凹部TFo1の隔壁に空隙TMaを設けるとともに、鉛直方向最下端の隔壁の側面に溝TMbを設けて、燃料ガス流路を略網目状の構造としている。なお、本実施例の入口側トンネル構造部TWiaも、拡大図示は省略するが、同様に、入口側トンネル凹部TFi1の隔壁に空隙TMaを設けるとともに、鉛直方向最下端の隔壁の側面に溝TMbを設けて、燃料ガス流路を略網目状の構造としている。
【0063】
本実施例の構造では、トンネル凹部TFo1,TFi1を流れる液水を、重力によって、空隙TMaを介して下端へ移動させ、溝TMbに集めることができる。これにより、燃料ガスを流すトンネル凹部TFo1,TFi1に滞留する液水を分離し、燃料ガスの通路を確保することが可能であり、燃料ガスの流れを阻害してしまうことを抑制することができる。
【0064】
B2.変形例:
図14は、第2実施例の出口側トンネル構造部の第1の変形例を示す説明図である。図に示すように、第1の変形例のトンネル構造部TWobは、1つの出口側トンネル凹部TFo1中に、毛細管現象を発生する毛細管構造TCを有している。これにより、出口側トンネル凹部TFoのうち、毛細管構造TCを挟んで一方の凹部を燃料ガスの通路として確保し、他方の凹部を液水の通路として確保して、液水と燃料ガスとを分離することが可能であり、燃料ガスの流れを阻害してしまうことを抑制することができる。
【0065】
なお、第2実施例の入口側トンネル構造部TWiaも、上記第1の変形例の構造と同様に、1つの入口側トンネル凹部TFi1中に、毛細管構造TCを有する構造としてもよい。
【0066】
図15は、第2実施例の出口側トンネル構造部の第2の変形例を示す説明図である。図に示すように、第2の変形例のトンネル構造部TWocは、1つの出口側トンネル凹部TFo1中に、比較的孔径の大きい多孔体TPaと比較的孔径の小さい多孔体TPbとが交互に配列された多孔体部TPが設けられた構造を有している。水は比較的小さい孔を通り、ガスは比較的大きい孔を通る性質を有しているので、上記構造とすれば、比較的孔径の大きい多孔体TPaを燃料ガスの通路として確保し、比較的孔径の小さい多孔体TPbを液水の通路として確保して、液水と燃料ガスとを分離することが可能であり、燃料ガスの流れを阻害してしまうことを抑制することができる。
【0067】
なお、第2実施例の入口側トンネル構造部TWiaも、上記第2の変形例の構造と同様に、1つの入口側トンネル凹部TFi1中に、比較的孔径の大きい多孔体TPaと比較的孔径の小さい多孔体TPbとが交互に配列された多孔体部TPが設けられた構造としてもよい。
【0068】
以上説明したように、トンネル構造部の構造は、図13に示した構造に限定されるものではなく、例えば、図14および図15に示した種々の構造とすることが可能である。すなわち、トンネル構造部の構造は、燃料ガスと液水とを分離して、燃料ガスの通路を確保することが可能な構造であればよい。
【0069】
C.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0070】
(1)変形例1:
上記実施例では、アノードセパレータの一方の面を燃料ガス流路形成面とし他方の面を冷媒流路形成面とする構造を例に説明したが、アノードセパレータもフラットセパレータとし、アノードセパレータと発電体部との間に、一方の面を燃料ガス流路形成面とし他方の面を冷媒流路形成面として、燃料ガス流路と冷媒流路壁とを表裏一体的に形成したガス流路形成体を配置し、本発明を適用するようにしてもよい。
【0071】
(2)変形例2:
また、上記実施例および変形例1では、燃料ガス流路形成面の燃料ガス流路と冷媒流路形成面の冷媒流路壁とを表裏一体的に形成した構造を例に示しているが、酸化ガス流路形成面の酸化ガス流路と冷媒流路形成面の冷媒流路壁とを表裏一体的に形成した構造に本発明を適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
FUC…燃料電池セル
SPA…アノードセパレータ
SPC…カソードセパレータ
PB…発電体部
PA…発電領域
MH…燃料ガスマニホールド
MO…酸化ガスマニホールド
MW…冷媒マニホールド
MHi…入口側燃料ガスマニホールド
MHo…出口側燃料ガスマニホールド
MOi…入口側酸化ガスマニホールド
MOo…出口側酸化ガスマニホールド
MWi…入口側冷媒マニホールド
MWo…出口側冷媒マニホールド
AMOi…入口側酸化ガスマニホールド孔
PMOi…入口側酸化ガスマニホールド孔
CMOi…入口側酸化ガスマニホールド孔
AMOo…出口側酸化ガスマニホールド孔
PMOo…出口側酸化ガスマニホールド孔
CMOo…出口側酸化ガスマニホールド孔
AMHi…入口側燃料ガスマニホールド孔
PMHi…入口側燃料ガスマニホールド孔
CMHi…入口側燃料ガスマニホールド孔
AMHo…出口側燃料ガスマニホールド孔
PMHo…出口側燃料ガスマニホールド孔
CMHo…出口側酸化ガスマニホールド孔
AMWi…入口側冷媒マニホールド孔
PMWi…入口側冷媒マニホールド孔
CMWi…入口側冷媒マニホールド孔
AMWo…出口側冷媒マニホールド孔
PMWo…出口側冷媒マニホールド孔
CMWo…出口側冷媒マニホールド孔
WP…冷媒流路形成面
FP…ガス流路形成面
WHcmi…第1の凸部
FHcmi…第1の凹部
WHcmo…第2の凸部
FHcmo…第2の凹部
WH…第3の凸部
FH…第3の凹部
WH1…第1の部分凸部
WH2…第2の部分凸部
FH1…第1の部分凹部
FH2…第2の部分凹部
WB…基板部
TWi…入口側トンネル構造部
TWo…出口側トンネル構造部
GA1…領域
GA2…領域
PB1…膜電極接合体
PB2…ガス拡散層
PB3…ガス拡散層
PB4…多孔体流路部
PB5…シール部
SW…シールライン
SHi…シールライン
SOi…シールライン
SOo…シールライン
SHo…シールライン
HHi…連通孔
HHo…連通孔
HOi…連通孔
HOo…連通孔
WOi…酸化ガス流路壁
WOo…酸化ガス流路壁
WWi…冷媒流路壁
WWo…冷媒流路壁
WW1…冷媒流路壁
WW2…冷媒流路壁
TWia…入口側トンネル構造部
TWoa…出口側トンネル構造部
TWob…出口側トンネル構造部
TWoc…出口側トンネル構造部
TWi1…入口側トンネル凸部
TFi1…入口側トンネル凹部
TWo1…出口側トンネル凸部
TFo1…出口側トンネル凹部
FF1…凹部
FF2…凹部
FF2a…凹部
FF2c…凹部
TC…毛細管構造
TP…多孔体部
FHb…凹部
TMa…空隙
TMb…溝
TP…多孔体部
TPa…多孔体
TPb…多孔体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルに用いられ、ガス流路形成面の溝状のガス流路と冷媒流路形成面の冷媒流路とが表裏一体的に形成された構造を有するガス流路形成体であって、
前記燃料電池セルの略矩形状の発電領域に対応する前記ガス流路形成面の第1の領域の内側には、
第1の端辺に沿って形成された第1のガス流路と、
前記第1の端辺に対向する第2の端辺に沿って形成された第2のガス流路と、
前記第1のガス流路と前記第2のガス流路との間を繋ぐように形成された複数の第3のガス流路と、
前記第1の領域の外側で前記第1の端辺に直交する第3の端辺側に形成された第1のガスマニホールド孔と、
前記第1の領域の外側で前記第3の端辺に対向する第4の端辺側に形成された第2のガスマニホールド孔と、
前記第1の領域の外側で前記第4の端辺に沿って前記第2のガスマニホールド孔と並んで形成された第1の冷媒マニホールド孔と
前記第1の領域の外側で前記第3の端辺側に前記第1のガスマニホールド孔と並んで形成された第2の冷媒マニホールド孔と、
前記冷媒流路形成面において前記第1のガスマニホールド孔を覆う第1のシールラインと、
前記冷媒流路形成面において前記第2のガスマニホールド孔を覆う第2のシールラインと、
前記第1のガスマニホールド孔に前記第1のガス流路を繋げるために、前記冷媒流路形成面において前記第1のシールラインをまたぐように形成された第1のトンネル構造部と、
前記第2のガスマニホールド孔に前記第2のガス流路を繋げるために、前記冷媒流路形成面において前記第2のシールラインをまたぐように形成された第2のトンネル構造部と、
を備えており、
前記第1ないし前記第3のガス流路により、前記冷媒流路形成面側に形成される凹凸は、前記冷媒流路を形成しており、
前記第1の冷媒マニホールド孔と、前記第2のトンネル構造部と、前記第4の端辺に最も近い前記第3のガス流路と、で囲まれた第1の領域の部分に対応する前記冷媒流路形成面の第1の部分には、前記第1の冷媒マニホールド孔からの冷媒の流れが前記冷媒流路方向に向くように規制する第1の冷媒流路壁が形成されており、
前記第2の冷媒マニホールド孔と、前記第1のトンネル構造部と、前記第3の端辺に最も近い前記第3のガス流路と、で囲まれた前記第1の領域の部分に対応する前記冷媒流路形成面の第2の部分には、前記冷媒流路からの冷媒の流れが前記第2の冷媒マニホールド孔の方向に向くように規制する第2の冷媒流路壁が形成されており、
前記第1の冷媒流路壁および前記第2の冷媒流路壁により形成される前記ガス流路形成面側の凹凸は、前記第1ないし第3のガス流路のいずれかに繋げられている、
ことを特徴とするガス流路形成体。
【請求項2】
請求項1記載のガス流路形成体であって、
前記第1および第2のトンネル構造部の少なくとも一方は、液水とガスを分離する分離構造を有することを特徴とするガス流路形成体。
【請求項3】
前記ガス流路形成体は、前記燃料電池セルに用いられるセパレータであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のガス流路形成体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のガス流路形成体を備える燃料電池セル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−169110(P2012−169110A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28414(P2011−28414)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】