説明

ガス混合用撹拌羽根

【課題】2種以上のガスが導入される排ガスダクト内のガスを、素早く撹拌混合することができ、しかも簡単な構造で製作も容易なガス混合用撹拌羽根を提供する。
【解決手段】2種以上のガスが導入される排ガスダクト内に設置して前記ガスを混合するガス混合用撹拌羽根であって、ダクト10の中心で長手方向に直交するよう架設した軸12上に取り付けられる2枚1組の長方形板体2、2からなり、これら2枚の長方形板体2、2がダクトの側面視で軸を中心にして互いにクロスした状態で、かつダクトの平面視で長手方向に対し同方向に斜めにひねった状態で取り付けた構造とした。前記クロスした2枚の長方形板体2、2のダクト断面方向への投影面積は、ダクト10の断面積に対して15〜30%の範囲にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上のガスが導入される排ガスダクト内のガスを、素早く撹拌混合することができ、しかも簡単な構造で製作も容易なガス混合用撹拌羽根に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窯の周辺部には、直径が2m前後の大口径の排ガスダクト等が設置されているが、これらの排ガスダクトはコスト面から鉄製の鋼管が用いられているのが普通である。しかしながら、鉄製の鋼管は350℃以上になると酸化反応が活発になって腐食や剥離を発生しダクトの寿命が短くなってしまうため、ダクト内には冷却用のエア(約30℃)を同時に供給し、約1200℃の高温ガスを冷却するようにしている。
【0003】
一方、窯全体の温度管理やエネルギーロスの熱収支計算等を行う場合は、前記排ガスダクト内を流れるガス全体の平均的な温度を把握することが前提となる。しかしながら、前記のように高温ガスと低温ガスを混合させた直後の大口径ダクト内における流体の温度分布および速度分布は、高温ガスが上部を流れやすく、一方、低温ガスが下部を流れやすくて不均一となっている。このため、熱電対により温度測定をした場合は、不均一な流速の一部分を測定することになり、流速全体の温度を把握することはできなかった。
【0004】
なお、管径が2mのダクト内を流れるガスの流速(5〜20m/sの範囲)に対する温度偏差値を測定した結果は、図7のグラフに示すように、流速が5m/sの場合600℃で、その後、流速と逆比例して温度偏差値が小さくなるものの、流速が20m/sと高速になっても温度偏差値は400℃と依然として高く、ガス流の均一な撹拌混合が十分になされていないことが確認されている。
【0005】
そこで、ガス全体を撹拌混合する方法として、ダクト内にオリフィスを設置してガスを混合させる方法が一般的であったが、例えば、流速が20m/sの場合で500Paから1000Paと圧力損失が非常に大きく、非効率的である。また、配管中にダンパを設置し、このダンパの開度を制御しつつ排ガスと冷却用空気を混合する方法(例えば、特許文献1を参照)や、更には、ダクト内にスクリュー形状の撹拌羽根を設置することも考えられるが、ダンパや大口径のスクリューの製作はコストが膨大となり、また製作日数が長期間必要であり、全ての排ガスダクトに装着することは現実には難しいという問題点があった。
【特許文献1】特開2006−52920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、2種以上のガスが導入される排ガスダクト内のガスを素早く撹拌混合することができ、しかも簡単な構造で製作およびダクトへの取り付けも容易であり、更には製造コストも廉価なものとできるガス混合用撹拌羽根を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明のガス混合用撹拌羽根は、2種以上のガスが導入される排ガスダクト内に設置して前記ガスを混合するガス混合用撹拌羽根であって、ダクトの中心で長手方向に直交するよう架設した軸上に取り付けられる2枚1組の長方形板体からなり、これら2枚の長方形板体がダクトの側面視で軸を中心にして互いにクロスした状態で、かつダクトの平面視で長手方向に対し同方向に斜めにひねった状態で取り付けてあることを特徴とするものである。
【0008】
また、クロスした2枚の長方形板体のダクト断面方向への投影面積が、ダクトの断面積に対して15〜30%の範囲にあることが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
更には、平面視で2枚の長方形板体の傾斜角度が、ダクトの長手方向に対して30〜60°の範囲にあることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガス混合用撹拌羽根は、ダクトの中心で長手方向に直交するよう架設した軸上に取り付けられる2枚1組の長方形板体からなり、これら2枚の長方形板体がダクトの側面視で軸を中心にして互いにクロスした状態で、かつダクトの平面視で長手方向に対し同方向に斜めにひねった状態で取り付けてあるので、ダクト内の上部を流れるガスは下向きで、かつ斜めにひねられつつ下方へ方向変換し、ダクト内壁にぶつかった後は再び中央に向けて流れることとなる。一方、ダクト内の下部を流れるガスは上向きで、かつ斜めにひねられつつ上方へ方向変換し、ダクト内壁にぶつかった後は再び中央に向けて流れることとなり、前記のガス流と短時間で均一に撹拌混合されることとなる。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、クロスした2枚の長方形板体のダクト断面方向への投影面積が、ダクトの断面積に対して15〜30%の範囲にあるので、ガス流を均一に撹拌混合することができ、またガス流に圧力損失を発生させることもない。
【0011】
更に、請求項3に係る発明は、平面視で2枚の長方形板体の傾斜角度が、ダクトの長手方向に対して30〜60°の範囲にあるので、ガス流がこの長方形板に沿って体長手方向に対し斜め方向に流れを変更し、均一な撹拌混合を実現することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図面は、本発明のガス混合用撹拌羽根を排ガスダクト内に設置した一例を示すものであり、図1は概略を示す側面図、図2は概略を示す平面図、図3は概略を示す正面図である。図において、10は排ガス用のダクトであり、このダクト10内には高温(約1200℃)の排ガスと冷却用エア(約30℃)の2つのガスが導入されている。また、これら2つのガスが合流する場所から、おおよそダクト管径に相当する距離だけ下流側には、ガス混合用の撹拌羽根1が設置されている。
【0013】
前記撹拌羽根1は、2枚1組の長方形板体2、2から構成されている。この長方形板体2は、例えばSUS304のような耐熱性鋼で形成されている。また、この長方形板体2は、ダクト10の中心でブラケット11を介して、長手方向に直交するよう架設した軸12上に取り付けられており、更に、長方形板体2は、ダクトの側面視で軸を中心にして互いにクロスした状態(図1を参照)で、かつダクトの平面視で長手方向に対し同方向に斜めにひねった状態(図2を参照)で取り付けられている。
【0014】
即ち、ダクト10の側面視で軸12を中心にして互いにクロスした状態にある2枚1組の長方形板体2、2のうち、一方は上部を流れる高温ガスを下部側へ方向変更させるものであり、他方は逆に下部を流れる低温ガスを上部側へ方向変更させるものである。また、このように単純にガス流を上下に変更するのみでは均一な撹拌混合ができないため、本発明では、更にダクト10の平面視で長手方向に対し同方向に斜めにひねった状態としてある。
これにより、ダクト内の上部を流れる高温ガスは下向きで、かつ斜めにひねられつつ下方へ方向変換し、ダクト内壁にぶつかった後は反射して再び中央に向けて流れることとなる。一方、ダクト内の下部を流れる低温ガスは上向きで、かつ斜めにひねられつつ上方へ方向変換し、ダクト内壁にぶつかった後は反射して再び中央に向けて流れることとなる。
【0015】
この結果、2種のガス流はダクト内の撹拌羽根1の下流において自動的に旋回されつつ撹拌されることにより、極めて短時間で均一に混合され、ガス流の温度偏差がほとんど解消されることとなる。このため、前記撹拌羽根1の下流側であれば何処で測定しても均一化された流速全体の温度を把握することが可能となる。
【0016】
このように、2種のガス流を均一に撹拌混合するには、クロスした2枚の長方形板体2、2のダクト断面方向への投影面積が、ダクトの断面積に対して15〜30%の範囲にあるように設計することが好ましい。
これは、2枚の長方形板体2、2をガス流に対して障害となるように垂直方向に立てていけば撹拌力は増加するものの、抵抗が大きくなり、逆に水平に寝かしていけば抵抗は小さくなるものの、撹拌力が低下するので、経験上の設計値からダクト断面方向への投影面積が、ダクトの断面積に対して15〜30%の範囲とする。なお、現場作業的には長方形板体2の角度を、45°を基準として±25°前後の範囲で調整すればよい。なお、図示の実施例においては45°に傾斜したものとしてある。
【0017】
また、平面視で2枚の長方形板体2、2の傾斜角度が、ダクトの長手方向に対して15〜60°の範囲にあるように設計することが好ましい。
これは、2枚の長方形板体2、2を単純に互いに上下方向にクロスさせるのみでは、均一な撹拌混合ができないからである。傾斜角度が15°未満ではガス流に斜め方向への十分なひねりを付与することが難しく、60°より大きいと長方形板体2がダクト10の管壁に当たるおそれがあるので、15〜60°の範囲とする。なお、現場作業的には45°に傾斜したものが簡単で設定しやすい。
【0018】
また実施例においては、長方形板体2は、図4に示されるように、板体部3と補強部4とが断面T字型に接合されたものとなっており、更に補強部4の中央には楕円状の切り欠き部5が形成された構造となっている。
このような長方形板体2は、金属板片さえあれば短時間で正確に製作できるものであり、しかも図5に示されるように、軸12への取り付けは楕円状の切り欠き部5と係合させて所定の角度に調節したうえ溶接するのみであるので、熟練工でなくても容易に装着することが可能である。
【0019】
以上に説明した撹拌羽根を用いて、管径が2mのダクト内を流れるガスの流速(5〜25m/sの範囲)に対する温度偏差値を測定した。この結果、図6のグラフに示されるように、50〜75℃であり、熱電対によってガス流速全体の温度を正確に測定できることが確認できた。また、流速が20m/sの場合の圧力損失は50〜100Paと少ないことも確認されており、効率的な温度測定ができた。
【0020】
以上の説明からも明らかなように、本発明のガス混合用撹拌羽根は、ダクトの中心で長手方向に直交するよう架設した軸上に取り付けられる2枚1組の長方形板体からなり、これら2枚の長方形板体がダクトの側面視で軸を中心にして互いにクロスした状態で、かつダクトの平面視で長手方向に対し同方向に斜めにひねった状態で取り付けた構造としたので、2種以上のガスが導入される排ガスダクト内のガスを素早く均一に撹拌混合することができ、また簡単な構造で製作およびダクトへの取り付けも容易に行えることとなる。しかも、前記の撹拌混合は短時間で行われるため、短いダクトでよく装置のコンパクト化を図ることができ、また耐熱性をもたせるためにステンレス鋼による内張りを施す個所も少なくて済み低コスト化できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す正面図である。
【図4】本発明の長方形板体を示す斜視図である。
【図5】本発明の撹拌羽根を示す斜視図である。
【図6】本発明におけるガス流速とダクト内の温度偏差の関係を示すグラフである。
【図7】従来例におけるガス流速とダクト内の温度偏差の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 撹拌羽根
2 長方形板体
3 板体部
4 補強部
5 切り欠き部
10 ダクト
11 ブラケット
12 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のガスが導入される排ガスダクト内に設置して前記ガスを混合するガス混合用撹拌羽根であって、ダクトの中心で長手方向に直交するよう架設した軸上に取り付けられる2枚1組の長方形板体からなり、これら2枚の長方形板体がダクトの側面視で軸を中心にして互いにクロスした状態で、かつダクトの平面視で長手方向に対し同方向に斜めにひねった状態で取り付けてあることを特徴とするガス混合用撹拌羽根。
【請求項2】
クロスした2枚の長方形板体のダクト断面方向への投影面積が、ダクトの断面積に対して15〜30%の範囲にある請求項1に記載のガス混合用撹拌羽根。
【請求項3】
平面視で2枚の長方形板体の傾斜角度が、ダクトの長手方向に対して30〜60°の範囲にある請求項1に記載のガス混合用撹拌羽根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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