説明

ガス溶解水の製造装置及び製造方法

【課題】長期間にわたって連続的かつ安定的に運転することが可能なガス溶解水の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】原水が気体溶解膜モジュール11の液相室11bに供給され、ガスが気相室11c内に供給される。このガスが、気体透過膜11aを透過し、液相室11b内の原水に溶解することで、ガス溶解水となり、ガス溶解水配管23を経由してユースポイントに供給される。凝縮水検出手段13によって測定された凝縮水量が所定値を超えると、第1の開閉弁24aが閉、第2の開閉弁24bが開となり、ガス吸引ポンプ14が始動する。これにより、開閉弁24a,24bの間に貯留されていた凝縮水が凝縮水気化用膜モジュール12で気化して水蒸気となり、吸引ポンプ14を通って排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス溶解水の製造装置及び製造方法に係り、詳しくは、気体透過膜によって内部が液相室と気相室に区画された気体透過膜モジュールを有しており、該液相室に水を供給し、該気相室にガスを供給し、該気体透過膜を経由して該気相室内のガスを該液相室内の水に溶解させることにより、ガス溶解水を製造するガス溶解水の製造装置及びこの製造装置を用いたガス溶解水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板などの洗浄は、主として、過酸化水素水と硫酸の混合液、過酸化水素水と塩酸と水の混合液、過酸化水素水とアンモニア水と水の混合液など、過酸化水素をベースとする濃厚な薬液を用いて高温で洗浄した後に超純水で濯ぐ、いわゆるRCA洗浄法によって行われている。しかし、このRCA洗浄法では、過酸化水素水、高濃度の酸、アルカリなどを多量に使用するために薬液コストが高く、さらにリンス用の超純水のコスト、廃液処理コスト、薬品蒸気を排気し新たに清浄空気を調製する空調コストなど、多大なコストを要する。
【0003】
これに対し、洗浄工程におけるコストの低減や、環境への負荷の低減を目的とした様々な取り組みがなされ、成果を挙げている。その代表が、水素ガスなどの特定のガスを溶解したガス溶解水を用い、超音波洗浄等によって被処理物を洗浄する技術である。
【0004】
このようなガス溶解水を製造する方法として、気体透過膜を内蔵した膜モジュールを用いる方法が知られている。この方法では、気体透過膜の液相側に水を供給すると共に気相側にガスを供給し、この気体透過膜を介して気相側のガスを液相側の水に溶解させることにより、ガス溶解水を製造する。
【0005】
例えば、特開平11−077023号には、超純水を脱気して溶存気体の飽和度を低下させたのち、この超純水に水素ガスを溶解させることが記載されている。
【0006】
第2図は、同号公報の工程系統図である。超純水は、流量計1を経由して脱気膜モジュール2に送られる。脱気膜モジュール2は、ガス透過膜を介して超純水と接する気相側が真空ポンプ3により減圧状態に保たれ、超純水中に溶存している気体が脱気される。溶存気体が脱気された超純水は、次いで水素ガス溶解膜モジュール4に送られる。水素ガス溶解膜モジュール4においては、水素ガス供給器5から供給される水素ガスが気相側に送られ、ガス透過膜を介して超純水に供給される。溶存水素ガス濃度が所定の値に達した超純水には、薬液貯槽6から薬注ポンプ7によりアンモニア水などの薬液を供給し、所定のpH値に調整することができる。水素ガスを溶解し、アルカリ性となった水素含有超純水は、最後に精密ろ過装置8に送られ、MFフィルターなどにより微粒子を除去することができる。
【0007】
脱気膜モジュール2の入口及び出口に、溶存気体測定センサ9を設置し、超純水中の気体量を測定して飽和度を求め、信号を真空ポンプに送って超純水の飽和度と所望飽和度とを対比し、脱気量を調整する。脱気量の調整は、例えば、真空ポンプによる真空度を真空度調節弁の開度を調整して行う。水素ガスの供給量は、脱気後の超純水の気体飽和度を溶存気体測定センサ9により測定し、水素ガス溶解膜モジュールから流出する水素含有超純水中の水素ガス濃度を溶存水素測定センサ9Aにより測定し、それぞれ信号を水素ガス供給器に送り、例えば、水素ガス供給路に設けた弁の開度などを調整することにより制御することができる。
【特許文献1】特開平11−077023号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特開平11−077023号において、水素ガス溶解膜モジュール4のガス透過膜は、気体のみを透過し、液体を透過しない特性を有するが、水蒸気は透過する。このため、ガス透過膜を透過して液相室から気相室へ水蒸気が拡散してくる。そして、液相室からこのガス透過膜を透過した水蒸気は、気相室で結露して凝縮水となり、気相室内に溜まる。この凝縮水が少量である場合には、この水素ガス溶解膜モジュール4の性能に及ぼす影響は軽微であるが、凝縮水が多量になると、この凝縮水で被われるガス透過膜の気相室側の膜面積が大きくなり、ガス透過膜のうちガスの透過に寄与する有効面積が減少する。これにより、水素ガス溶解膜モジュール4の性能が低下し、超純水に水素ガスを十分に溶解させることができなくなる。このため、水素ガス溶解膜モジュール4の気相室内に凝縮水が溜まったときに、運転を停止してこの凝縮水を気相室から排出する必要がある。
【0009】
なお、水素ガス溶解膜モジュールの気相室に溜まった凝縮水を運転中に排出する方法として、この気相室に真空ポンプを接続し、気相室に凝縮水が溜まった時に、この凝縮水をこの真空ポンプで吸引して排出することが考えられる。しかしながら、真空ポンプに液状の水が吸い込まれると、ポンプ駆動部が著しく劣化し、吸引性能の低下、故障の増加などの問題が生じる。その結果、運転を停止し、ポンプのメンテナンスや交換等を行う必要が生じる。
【0010】
本発明は、長期間にわたって連続的かつ安定的に運転することが可能なガス溶解水の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)のガス溶解水の製造装置は、気体透過膜によって内部が液相室と気相室に区画された気体溶解用の気体透過膜モジュールを有しており、該液相室に水を供給し、該気相室にガスを供給し、該気体透過膜を経由して該気相室内のガスを該液相室内の水に溶解させることにより、ガス溶解水を製造するガス溶解水の製造装置において、該気相室に生じた凝縮水を該気相室から排出する排出手段を備えており、該排出手段は、該気相室内から水を受け入れ、この水を気化させるための気化装置と、該気化装置で気化した水蒸気を吸引するポンプとを有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2のガス溶解水の製造装置は、請求項1において、前記気化装置は、第2の気体透過膜によって内部が第2の液相室と第2の気相室に区画された第2の気体透過膜モジュールであり、該第2の液相室が前記気体溶解用気体透過膜モジュールの気相室と接続され、該第2の気相室が前記吸引ポンプと接続されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3のガス溶解水の製造装置は、請求項1において、前記気化装置は、前記気相室と前記ポンプとの間に設けられた吸水性及び通気性を有した多孔体であることを特徴とする。
【0014】
請求項4のガス溶解水の製造装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記気化装置内を昇温させる昇温手段を有することを特徴とする。
【0015】
請求項5のガス溶解水の製造装置は、請求項4において、前記昇温手段は前記ポンプで発生した排熱を熱源とするものであることを特徴とする。
【0016】
請求項6のガス溶解水の製造装置は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記気相室と気化装置との間に、該気相室に第1の開閉弁を介して接続され、該気化装置に第2の開閉弁を介して接続された、水の貯留部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明(請求項7)のガス溶解水の製造方法は、請求項1ないし5のいずれか1項のガス溶解水の製造装置を用いてガス溶解水を製造することを特徴とするものである。
【0018】
請求項8のガス溶解水の製造方法は、請求項7において、前記ガス溶解水の製造装置は請求項6のガス溶解水の製造装置であり、前記第2の開閉弁を閉めて前記第1の開閉弁を開け、水を貯留部に受け入れる工程と、該第1の開閉弁を閉めて該第2の開閉弁を開け、該貯留部内の水を気化装置へ送る工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス溶解水の製造装置(請求項1〜6)及び製造方法(請求項7,8)にあっては、気体透過膜モジュールの気相室に生じた凝縮水を該気相室から排出する排出手段は、該気相室内から水を受け入れ、この水を気化させるための気化装置と、該気化装置で気化した水蒸気を吸引するポンプとを有する。この気相室内の凝縮水は、気化装置で気化して水蒸気となってポンプを通ることになる。このため、液状の水がポンプに吸い込まれることはなく、ポンプの吸引性能の低下や故障などが防止され、ガス溶解水を長期間にわたって連続的かつ安定的に製造することができる。
【0020】
請求項2の通り、気化装置は、第2の気体透過膜によって内部が第2の液相室と第2の気相室に区画された第2の気体透過膜モジュールであり、該第2の液相室が気体溶解膜モジュールの気相室と接続され、該第2の気相室が吸引ポンプと接続されていてもよい。この場合、ポンプで第2の気相室内のガスを吸引して該第2の気相室内を減圧することにより、第2の液相室内の凝縮水が気化して水蒸気となる。この水蒸気が、第2の気体透過膜を透過し、ポンプを通って排出される。
【0021】
請求項3の通り、気化装置は、気体溶解膜モジュールの気相室とポンプとの間に設けられた、吸水性及び通気性を有した多孔体であってもよい。この場合、凝縮水が多孔体に吸水されることにより、凝縮水の気液接触面積が増加し、凝縮水が容易に気化するようになる。
【0022】
請求項4の通り、気化装置内を昇温させる昇温手段を設けることにより、迅速に凝縮水を水蒸気に気化させることができる。
【0023】
請求項5の通り、この昇温手段の熱源を前記ポンプで発生した排熱とすることにより、排熱の有効利用を図ることができる。
【0024】
請求項6の通り、気体溶解膜モジュールの気相室と気化装置との間に、該気相室に第1の開閉弁を介して接続され、該気化装置に第2の開閉弁を介して接続された、水の貯留部が設けられていてもよい。この場合、請求項8の通り、第2の開閉弁を閉めて第1の開閉弁を開け、水を貯留部に受け入れる工程と、該第1の開閉弁を閉めて該第2の開閉弁を開け、該貯留部内の水を気化装置へ送る工程とを実施してもよい。この場合、貯留部に溜まった凝縮水を気化装置に容易に供給することができる。また、気体溶解膜モジュールと気化装置とが直接に連通することがなく、気体溶解膜モジュール内が減圧されて溶解水の製造に悪影響が生じることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。第1図は実施の形態に係るガス溶解水の製造装置を説明する系統図である。
【0026】
この実施の形態は、気体透過膜モジュール11によってガス溶解水を生成させると共に、気体透過膜モジュール11の気相室11c内の凝縮水を凝縮水気化用膜モジュール12で気化させ、ポンプ14で吸引排出するよう構成したものである。
【0027】
気体溶解膜モジュール11内は、気体透過膜11aによって液相室11bと気相室11cに区画されている。同様に、凝縮水気化用膜モジュール12内も、気体透過膜12aによって液相室12bと気相室12cに区画されている。
【0028】
これら気体透過膜11a,12aとしては、水を透過させず、かつ水に溶解しているガスを透過させるものであれば特に制限はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体、ポリビニルフェノール−ポリジメチルシロキサン−ポリスルホンブロック共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)、ポリテトラフルオロエチレンなどの高分子膜などを挙げることができる。
【0029】
開閉弁21aを備えた原水配管21が、気体溶解膜モジュール11の液相室11bに接続されている。また、この液相室11bに、ガス溶解水取出用の配管23が接続されている。
【0030】
この原水配管21に供給する原水としては、ユースポイントで使用する用途を満足する清浄度があり、気体透過膜を極度に劣化ないし変質させる物質が含まれていないものであれば特に制限はなく、上水、純水、超純水等が用いられる。また、前記第2図の脱気膜モジュール2などで脱気した脱気水を用いてもよい。
【0031】
この気体溶解膜モジュール11の気相室11cに、流量調節弁22aを備えたガス供給配管22が接続されている。また、この気相室11cと、凝縮水用膜モジュール12の液相室12bとが、凝縮水抜出配管24で接続されている。
【0032】
このガス供給配管22に供給するガスとしては、例えば、水素、酸素、炭酸ガス、オゾン、アルゴンやヘリウムなどの希ガス、窒素などの不活性ガス、これらのガスの2種以上の混合ガスなどが用いられる。
【0033】
この凝縮水抜出配管24に、凝縮水検出手段13が設けられている。この凝縮水抜出配管24のうち凝縮水検出手段13よりも下流側に、第1の開閉弁24a及び第2の開閉弁24bがこの順に設けられている。配管24のうち該第2の開閉弁24bよりも気相室11c側が水の貯留部24cとなっている。
【0034】
凝縮水検出手段13からの信号は制御器27に入力され、この制御器27からの信号によって第1の開閉弁24a及び第2の開閉弁24bが開閉制御されるように構成されている。
【0035】
凝縮水検出手段13としては、例えば、この凝縮水抜出配管24に溜まった凝縮水の液面を検知する液面計や、溜まった凝縮水の重量を測定する重量測定計などが用いられる。このうち、構造が簡易であり、かつ正確な検知が可能であるため、液面計を用いるのが好ましい。液面計としては、光、超音波、静電容量などを利用する液面計等を用いることができる。
【0036】
この凝縮水気化用膜モジュール12の気相室12cが、排気配管25を介して吸引ポンプ14の吸込口に接続されている。この吸引ポンプ14は、制御器27からの信号によって作動するよう構成されている。
【0037】
吸引ポンプ14としては、例えば、水封式真空ポンプや水蒸気除去機能を備えたスクロールポンプなどのように、水蒸気を吸気できるものが好ましい。
【0038】
次に、このように構成されたガス溶解水の製造装置を用いてガス溶解水を製造する方法の一例を説明する。
【0039】
[通常運転工程]
第1図の通り、開閉弁21aを開、流量調節弁22aを開、第1の開閉弁24aを開、第2の開閉弁24bを閉とする。
【0040】
これにより、原水が、原水配管21を経由して気体溶解膜モジュール11の液相室11bに供給される。また、ガスが、ガス供給配管22を経由して気相室11c内に供給される。この気相室11c内に供給されたガスが、気体透過膜11aを透過し、液相室11b内の原水に溶解する。このようにして得られたガス溶解水は、ガス溶解水配管23を経由してユースポイントに供給される。
【0041】
このようにしてガス溶解水を製造する過程において、水蒸気が液相室11bから気体透過膜11aを透過して気相室11cに徐々に拡散し、気相室11cで結露して凝縮水となる。この気相室11c内の凝縮水は、凝縮水抜出配管24を通り、この配管24の途中部分である貯留部24cに貯留される。この貯留部24cに貯留された凝縮水の量は、凝縮水検出手段13によって測定される。
【0042】
[凝縮水排出工程]
凝縮水検出手段13によって測定された凝縮水量が所定値を超えた場合、制御器27から第1,第2の開閉弁24a,24bに信号が送信され、第1の開閉弁24aが閉、第2の開閉弁24bが開となる。また、制御器27から吸引ポンプ14に信号が送信され、吸引ポンプ14が作動する。
【0043】
このように、第1の開閉弁24aが閉、第2の開閉弁24bが開となると、これら開閉弁24a,24bの間に貯留されていた凝縮水が、凝縮水抜出配管24を経由して凝縮水気化用膜モジュール12の液相室12bに供給される。また、吸引ポンプ14が作動することにより、気相室12c内が減圧される。これにより、液相室12b内の凝縮水が気化して水蒸気となり、気体透過膜12aを透過して気相室12cに流入し、排気配管25及び吸引ポンプ14を通って排出される。このように水が気化してから吸引ポンプ14に吸い込まれるため、ポンプ14の故障が防止される。
【0044】
なお、気相室12c内は、10kPa以下、例えば1〜5kPaに減圧されることが好ましい。
【0045】
なお、この凝縮水排出工程において、開閉弁21a及び流量調節弁22aは開の状態のままとされ、継続してガス溶解水の製造が行われる。
【0046】
[通常運転工程への復帰工程]
このようにして、開閉弁24a,24b間の凝縮水を排出させた後、第1の開閉弁24aを開、第2の開閉弁24bを閉とし、吸引ポンプ14を停止して、上記の通常運転工程に復帰する。
【0047】
なお、この凝縮水排出工程を開始してから所定時間経過後に、通常運転工程に復帰するようにしてもよい。また、液相室12bに凝縮水検出手段を設置し、液相室12b内の凝縮水が無くなったことを検知してから、通常運転工程に復帰するようにしてもよい。
【0048】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0049】
例えば、凝縮水気化用膜モジュール12や排気配管25に、ヒータ等の昇温手段が設けられていてもよい。この場合、凝縮水気化用膜モジュール12の液相室12b内の凝縮水を迅速に気化させ、気体透過膜12a、気相室12c、排気配管25及びポンプ14を経由して系外に排出することができる。また、水蒸気がこれら気相室12c又は排気配管25を通る間に結露して凝縮水に戻ることが防止される。
【0050】
この昇温手段は、ポンプ14で発生した排熱を熱源とするものであってもよい。例えば、吸引ポンプの放熱部を気相室12c又は排気配管25に近接配置したり、伝熱材料を介在させたりすることにより、ポンプ排熱による昇温が可能である。
【0051】
凝縮水気化用膜モジュール12ないし排気配管25を昇温手段で加熱する場合の加熱温度は、吸引ポンプ14による気相室12c内の減圧の程度等によって適宜決定されるが、例えば、気相室12c内を15kPa程度に減圧する場合、35℃以上、特に40℃以上例えば40〜60℃に加熱するのが好ましい。気相室12c内を減圧するほど、加熱温度は低くても足りる。
【0052】
本発明では、凝縮水検出手段13を省略し、上記の通常運転工程を所定時間実施した後に、凝縮水排出工程を所定時間実施するようにしてもよい。
【0053】
上記実施の形態において、気化装置として、凝縮水用膜モジュール12に代えて、容器内に吸水性及び通気性を有した多孔体を内蔵したものを用いてもよい。この場合、凝縮水抜出配管24から供給される凝縮水が多孔体に吸水されることにより、凝縮水の気液接触面積が増加し、凝縮水が水蒸気に気化し易くなる。
【0054】
この多孔体としては、合成樹脂製スポンジなどのような合成樹脂製多孔体、セラミックス製の多孔体、金属製の多孔体、炭素繊維、不織布、紙、木片等を用いることができる。この多孔体をヒータ等の加熱手段で加熱してもよい。加熱手段の熱源の少なくとも一部として吸引ポンプの排熱を利用してもよい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0056】
[実施例1]
第1図の装置を用いて、水素溶解水を製造した。装置及び測定条件の詳細は以下の通りである。
【0057】
気体溶解膜モジュールの気体透過膜:セルガード(株)製「リキセル G284」
凝縮水気化用膜モジュールの気体透過膜:セルガード(株)製「リキセル G284」
原水:脱気した超純水
原水送水量:1m/hr
原水の水温:25℃
水素ガス供給量:1.2g/hr
凝縮水気化用膜モジュールの気相室の圧力:5kPa(絶対圧)
凝縮水気化用膜モジュールの液相室の水温:40℃
凝縮水の排出頻度:1回/hr
【0058】
上記運転を3ヶ月間実施した結果、3ヶ月の間、水素ガス濃度1.2mg/Lの水素ガス溶解水を製造量1m/hrにて安定して製造することができた。また、1回/hrの頻度で凝縮水気化用膜モジュールの液相室に供給された凝縮水は、水蒸気として系外に排出された。
【0059】
[比較例1]
凝縮水気化用膜モジュール12を省略したこと以外は実施例1と同様にして、実験を行った。
【0060】
その結果、運転開始から2ヶ月経過後までは、水素ガス濃度1.2mg/Lの水素ガス溶解水を製造量1m/hrにて製造することができた。しかしながら、2ヶ月経過後から吸引ポンプの吸引能力が低下し、凝縮水の吸引を行わなくなった。運転を継続したところ、水素ガス溶解水の溶存水素ガス濃度が徐々に低下し、運転開始から3ヵ月後には、水素ガス濃度が0.9mg/Lにまで低下した。運転開始から3ヵ月後に運転を停止し、気体溶解膜モジュールを開放したところ、気相室の約3/4が凝縮水で浸水していた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態に係るガス溶解水の製造装置及び製造方法を説明する系統図である。
【図2】従来例に係る水素溶解水の製造工程系統図である。
【符号の説明】
【0062】
11 気体溶解膜モジュール
12 凝縮水気化用膜モジュール
11a,12a 気体透過膜
11b,12b 液相室
11c,12c 気相室
13 凝縮水検出手段
14 吸引ポンプ
21 原水配管
22 ガス供給配管
23 ガス溶解水配管
24 凝縮水抜出配管
25 排気配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体透過膜によって内部が液相室と気相室に区画された気体溶解用の気体透過膜モジュールを有しており、
該液相室に水を供給し、該気相室にガスを供給し、該気体透過膜を経由して該気相室内のガスを該液相室内の水に溶解させることにより、ガス溶解水を製造するガス溶解水の製造装置において、
該気相室に生じた凝縮水を該気相室から排出する排出手段を備えており、
該排出手段は、該気相室内から水を受け入れ、この水を気化させるための気化装置と、該気化装置で気化した水蒸気を吸引するポンプとを有することを特徴とするガス溶解水の製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記気化装置は、第2の気体透過膜によって内部が第2の液相室と第2の気相室に区画された第2の気体透過膜モジュールであり、
該第2の液相室が前記気体溶解用気体透過膜モジュールの気相室と接続され、該第2の気相室が前記吸引ポンプと接続されていることを特徴とするガス溶解水の製造装置。
【請求項3】
請求項1において、前記気化装置は、前記気相室と前記ポンプとの間に設けられた吸水性及び通気性を有した多孔体であることを特徴とするガス溶解水の製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記気化装置内を昇温させる昇温手段を有することを特徴とするガス溶解水の製造装置。
【請求項5】
請求項4において、前記昇温手段は前記ポンプで発生した排熱を熱源とするものであることを特徴とするガス溶解水の製造装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記気相室と気化装置との間に、該気相室に第1の開閉弁を介して接続され、該気化装置に第2の開閉弁を介して接続された、水の貯留部が設けられていることを特徴とするガス溶解水の製造装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項のガス溶解水の製造装置を用いてガス溶解水を製造することを特徴とするガス溶解水の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、前記ガス溶解水の製造装置は請求項6のガス溶解水の製造装置であり、
前記第2の開閉弁を閉めて前記第1の開閉弁を開け、水を貯留部に受け入れる工程と、
該第1の開閉弁を閉めて該第2の開閉弁を開け、該貯留部内の水を気化装置へ送る工程とを有することを特徴とするガス溶解水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−113013(P2009−113013A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292247(P2007−292247)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】