説明

ガス管およびガス管の配管方法

【課題】 高純度の原料ガスを供給することができるとともに工期を短縮することができるガス管およびそのガス管を用いたガス管の配管方法を提供する。
【解決手段】 中空部を有する本体部を含み、本体部の両端部にはそれぞれ本体部の両端の開口部を閉塞する閉塞手段が設置されており、本体部は予めベーキングされており、ベーキング後に開口部が閉塞手段により閉塞されてなるガス管とそのガス管を用いたガス管の配管方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス管およびガス管の配管方法に関し、特に高純度の原料ガスを供給することができるとともに工期を短縮することができるガス管およびそのガス管を用いたガス管の配管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクスの分野においては、デバイスの信頼性および歩留りの向上などのために、高純度の原料ガスを供給することが要求されている。たとえば、エレクトロニクスの分野における半導体デバイスの製造において、高純度の原料ガスはガス管が連結されたガス配管を通って成膜装置に供給され、成膜装置内で基板上に様々な種類の半導体膜が形成されることに利用される。したがって、成膜装置に高純度の原料ガスを供給するためには、ガス管の処理およびガス管の配管方法が非常に重要となってくる。
【0003】
高純度の原料ガスを供給するため、ガス管は一般にベーキング処理される。従来、ガス管をベーキング処理する方法としては、ガス管を配管するごとにガス管をベーキングする方法またはガス管をすべて配管してからガス配管全体をベーキングする方法が知られている。
【0004】
しかしながら、ガス管を配管するごとにガス管をベーキングする方法を用いた場合には、ガス管を配管するごとに数本ずつ小刻みにガス管をベーキングしなければならないため、工期が長期化する傾向にあった。さらに、この方法においては、ガス配管現場においてガス管のベーキングをするため、ガス管の開口部から埃や塵などの不純物が入り込み、高純度の原料ガスの供給の妨げになることがあった。また、ガス管をすべて配管してからガス配管全体をベーキングする方法を用いた場合には、ガス管の接続部に耐熱温度が約60℃程度と低いPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)樹脂からなる弁が用いられるためベーキング時の加熱温度を上昇させることができないことからベーキングが不十分になりやすく、所定の期日までに高純度の原料ガスを供給することができないという問題があった。
【特許文献1】特開平6−109200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高純度の原料ガスを供給することができるとともに工期を短縮することができるガス管およびそのガス管を用いたガス管の配管方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中空部を有する本体部を含み、本体部の両端部にはそれぞれ本体部の両端の開口部を閉塞する閉塞手段が設置されており、本体部は予めベーキングされており、ベーキング後に開口部が閉塞手段により閉塞されてなるガス管であることを特徴とする。
【0007】
ここで、本発明のガス管は、高純度ガス輸送用のガス配管に用いることができる。
また、本発明のガス管において、本体部は金属からなっていてもよい。
【0008】
また、本発明のガス管において、閉塞手段は金属製蓋体からなり、金属製蓋体は本体部の端部に連結されていてもよい。
【0009】
また、本発明のガス管において、閉塞手段は金属製板状体と被覆体とを含み、金属製板状体は開口部を閉塞する位置に設置されており、被覆体は本体部の端部に嵌め込まれて金属製板状体を押さえ付けていてもよい。
【0010】
また、本発明のガス管においては、中空部の圧力がガス管の外部の圧力よりも高いことが好ましい。
【0011】
また、本発明のガス管においては、ベーキング後に中空部に高純度不活性ガスが封入されてなることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、上記のいずれかのガス管を用いるガス管の配管方法であることを特徴とする。
【0013】
ここで、本発明のガス管の配管方法においては、ガス管の本体部の両端部に設置されている閉塞手段のうちいずれか一方を取り除くことによって本体部の一方の端部を開放する工程と、開放された端部から中空部に高純度不活性ガスを導入しながら残りの閉塞手段を取り除くことによって本体部の他方の端部を開放する工程と、中空部に高純度不活性ガスを導入しながら本体部の上流側の端部を被連結体に連結する工程と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高純度の原料ガスを供給することができるとともに工期を短縮することができるガス管およびそのガス管を用いたガス管の配管方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0016】
(ガス管)
本発明のガス管は、中空部を有する本体部を含み、本体部の両端部にはそれぞれ本体部の両端の開口部を閉塞する閉塞手段が設置されており、本体部は予めベーキングされており、ベーキング後に開口部が閉塞手段により閉塞されてなることを特徴としている。
【0017】
このように、ガス管の中空部を有する本体部を予めベーキングして、本体部からアウトガスを放出した後に本体部の両端の開口部を閉塞手段により閉塞することによって、ガス管の本体部の不純物量を減少した状態にすることができる。そして、この状態で、本発明のガス管をガス配管現場に持ち込み、配管することによって、従来のようにガス配管現場においてベーキングをする必要がなくなる。したがって、本発明によれば、ベーキングされて不純物量が減少した本体部を有するガス管を予め用意することができ、そのガス管をガス配管現場において連結するのみでよいため、ガス配管の工期を大幅に短縮することができる。また、埃や塵が舞っているガス配管現場においてベーキングをする必要がないため、より高純度の原料ガスを安定して供給することが可能になる。さらに、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)樹脂からなる弁を加熱することなくガス管のみをベーキングすることができるため、高温でのベーキングが可能となる。
【0018】
図1に、本発明のガス管の好ましい一例の模式的な断面図を示す。図1において、ガス管1の本体部2は中空部3と両端の開口部4とを有しており、ステンレスから形成されている。ここで、本体部2は予めベーキングされている。そして、ガス管1には、本体部2の両端の開口部4を閉塞するステンレス製の蓋体からなる閉塞手段5が設置されている。閉塞手段5にはそれぞれ、本体部2の外部から内部へのガスの導入および本体部2の内部から外部へのガスの排出を可能とするガス流路管11と、ガス流路管11に設置されておりガス流路管11におけるガスの導入および排出の実行および停止を制御可能な弁12とが備えられている。また、本体部2の両端部と閉塞手段5とは溶接によって連結されている。さらに、中空部3には、高純度不活性ガスが封入されている。
【0019】
なお、本発明において、高純度不活性ガスの材質としては窒素、アルゴンおよびヘリウムからなる群から選択された少なくとも1種が用いられる。また、本発明において、高純度不活性ガスの純度(体積%)は99.9999体積%以上100体積%以下である。
【0020】
以下、図1に示す本発明のガス管1の製造方法について説明する。まず、たとえば図2の模式的側面透視図に示すように、本体部2のベーキングが行なわれる。ここで、ベーキングは、本体部2の一方の端部にステンレス製のキャップ6を嵌め込み、アルミテープ7によってステンレス製のキャップ6を本体部2の端部に留めた状態で、ステンレス製のキャップ6に設置されているガス導入口8から、たとえば120℃以上150℃以下に加熱された高純度不活性ガスを本体部2の中空部3に流すことによって行なわれる。ここで、高純度不活性ガスとしては、たとえば、それぞれ120℃以上150℃以下に加熱された、窒素、アルゴンおよびヘリウムをこの順序で流すことができる。なお、本発明において、本体部2のベーキング方法はこの方法に限定されないことは言うまでもない。
【0021】
次に、中空部3に上記の高純度のアルゴンを流しながらアルゴンの温度を低下することなどによって、中空部3に不純物が入り込まない雰囲気下において本体部2を冷却する。
【0022】
次いで、中空部3に不純物が入り込まない雰囲気下において、アルミテープ7を外し、続いてガス導入口8が設置されているキャップ6を外した後に、本体部2の両端部にそれぞれ図1に示すステンレス製の蓋体からなる閉塞手段5を溶接により連結する。
【0023】
その後、閉塞手段5に設けられたいずれか一方の弁12のみを開いて、ガス流路管11から中空部3に高純度不活性ガスを導入し、中空部3の圧力をガス管1の外部の圧力よりも高い圧力にする。ここで、他方の弁12は閉じられたままである。最後に、この開かれた弁12を閉じることによって中空部3に高純度不活性ガスを封入し、図1に示す本発明のガス管1が作製される。ここで、中空部3に封入された高純度不活性ガスの圧力をガス管1の外部の圧力よりも高い圧力にすることが好ましい。この場合には、中空部3におけるアウトガスの発生およびガス管1の外部からの不純物の混入を抑止した状態での保管が可能になる。中空部3における高純度不活性ガスの圧力は、たとえばガス管1の外部から中空部3に空気が入り込まないようにするため、少なくとも0.1Pa以上であることが好ましい。
【0024】
図3に、本発明のガス管の他の好ましい一例の模式的な断面図を示す。図3において、ガス管1の本体部2は、上記と同様にステンレスから形成されており、予めベーキングされている。ここで、本体部2は中空部3と両端の開口部4とを有しており、本体部2の両端部には、開口部4を閉塞するステンレス製の板状体5aと本体部2の端部に嵌め込まれ板状体5aを被覆して押さえ付けているゴムキャップまたは樹脂キャップなどからなる被覆体5bとからなる閉塞手段5が設置されている。そして、中空部3には、上記と同様に高純度不活性ガスが封入されている。
【0025】
以下、図3に示す本発明のガス管1の製造方法について説明する。まず、上記と同様に、本体部2のベーキングを行なった後、本体部2を冷却する。次に、中空部3に不純物が入り込まない雰囲気下で、本体部2の両端部にそれぞれ図3に示す板状体5aを設置し、さらに被覆体5bを本体部2の両端部にそれぞれ嵌め込んで固定する。その後、上記と同様にして、被覆体5bに備えられたガス流路管(図示せず)などから中空部3に高純度不活性ガスを導入し、中空部3の圧力をガス管1の外部の圧力よりも高い圧力にする。最後に、このガス流路管に備えられた弁を閉じることによって中空部3に高純度不活性ガスを封入する。このようにして、図3に示す本発明のガス管1が作製される。
【0026】
なお、上記において、本体部2、ステンレス製の蓋体からなる閉塞手段5、キャップ6および板状体5aを形成するステンレスとしては、たとえばSUS316、SUS316L、SUS304またはSUS304Lなどを用いることができる。
【0027】
(ガス管の配管方法)
本発明のガス管の配管方法は、上記の本発明のガス管を用いることを特徴としている。図4(A)〜図4(H)の模式的側面図を参照して、本発明のガス管の配管方法の好ましい一例について説明する。
【0028】
まず、図4(A)に示すように、本発明のガス管1の上流側にある被連結体9から図4(A)に示す矢印の方向に高純度不活性ガス(たとえばアルゴン)が流れてくるのを確認する。ここで、高純度不活性ガスとしては、上記のガス管1の中空部に封入されている高純度不活性ガスと同一の材質および純度のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。すなわち、ここで用いられる高純度不活性ガスの材質は窒素、アルゴンおよびヘリウムからなる群から選択された少なくとも1種であり、高純度不活性ガスの純度は上記と同様に99.9999体積%以上100体積%以下である。
【0029】
次に、図4(B)に示すように、ガス管1の下流側の端部に設置されている閉塞手段5のガス流路管(図示せず)に備えられている弁を開いて、ガス管1の中空部に封入されている高純度不活性ガスを抜き、ガス管1の中空部の圧力をガス管1の外部の圧力と同一にする。そして、すぐに弁を閉じる。
【0030】
続いて、図4(C)に示すように、ガス管1の上流側の端部に設置されている閉塞手段5を取り除いて、ガス管1の本体部2の上流側の端部を開放する。このとき、ガス管1の下流側の端部に設置されている閉塞手段5は取り除かれない。
【0031】
次いで、図4(D)に示すように、ガス管1の上流側の端部と被連結体9の下流側の端部とを位置ズレがないように接触させる。そして、図4(E)に示すように、ガス管1の下流側の端部に設置されている閉塞手段5を取り除いて、ガス管1の本体部2の下流側の端部を開放する。
【0032】
その後、図4(F)に示すように、ガス管1の下流側の端部に圧力計10を接続して、ガス管1の中空部の圧力を測定する。これにより、上流側からガス管1の中空部に高純度不活性ガスが十分に流れていることを確認することができる。
【0033】
次いで、図4(G)に示すように、ガス管1の上流側の端部と被連結体9の下流側の端部とを点状に溶接する。最後に、図4(H)に示すように、ガス管1の上流側の端部と被連結体9の下流側の端部とを完全に溶接して、ガス管が配管される。
【0034】
このように順次ガス管が配管されていき、複数の本発明のガス管が連結されたガス配管が形成される。このようなガス配管は、たとえば窒素、酸素、アルゴン、ヘリウムまたは水素などの高純度の原料ガスの輸送用として用いられ、たとえば半導体デバイスの製造装置中の成膜装置などに高純度の原料ガスを供給することができる。
【0035】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のガス管およびガス管の配管方法によれば、高純度の原料ガスを供給することができるとともに工期を短縮することができるので、本発明はエレクトロニクスの分野における半導体デバイスの製造などに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のガス管の好ましい一例の模式的な断面図である。
【図2】本発明において、図1に示すガス管の本体部をベーキングする方法の好ましい一例を図解する模式的な側面透視図である。
【図3】本発明のガス管の他の好ましい一例の模式的な断面図である。
【図4】本発明のガス管の配管方法の好ましい一例を図解する模式的な側面図であり、(A)はガス管の上流側の被連結体から不活性ガスが流れてくるのを確認する工程を図解する模式的な側面図であり、(B)はガス管の下流側の端部からガス管の中空部に封入されている高純度不活性ガスを抜く工程を図解する模式的な側面図であり、(C)はガス管の本体部の上流側の開口部を開放する工程を図解する模式的な側面図であり、(D)はガス管の上流側の端部と被連結体の下流側の端部とを位置ズレがないように接触させる工程を図解する模式的な側面図であり、(E)はガス管の本体部の下流側の開口部を開放する工程を図解する模式的な側面図であり、(F)はガス管の中空部の圧力を測定する工程を図解する模式的な側面図であり、(G)はガス管の上流側の端部と被連結体の下流側の端部とを点状に溶接する工程を図解する模式的な側面図であり、(H)はガス管の上流側の端部と被連結体の下流側の端部とを完全に溶接してガス管が配管される工程を図解する模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ガス管、2 本体部、3 中空部、4 開口部、5 閉塞手段、5a 板状体、5b 被覆体、6 キャップ、7 アルミテープ、8 ガス導入口、9 被連結体、10 圧力計、11 ガス流路管、12 弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する本体部を含み、
前記本体部の両端部にはそれぞれ前記本体部の両端の開口部を閉塞する閉塞手段が設置されており、
前記本体部は予めベーキングされており、前記ベーキング後に前記開口部が前記閉塞手段により閉塞されてなることを特徴とする、ガス管。
【請求項2】
高純度ガス輸送用のガス配管に用いられることを特徴とする、請求項1に記載のガス管。
【請求項3】
前記本体部は金属からなることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス管。
【請求項4】
前記閉塞手段は金属製蓋体からなり、前記金属製蓋体は前記本体部の端部に連結されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のガス管。
【請求項5】
前記閉塞手段は金属製板状体と被覆体とを含み、前記金属製板状体は前記開口部を閉塞する位置に設置されており、前記被覆体は前記本体部の端部に嵌め込まれて前記金属製板状体を押さえ付けていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のガス管。
【請求項6】
前記中空部の圧力が前記ガス管の外部の圧力よりも高いことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のガス管。
【請求項7】
前記ベーキング後に前記中空部に高純度不活性ガスが封入されてなることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のガス管。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のガス管を用いることを特徴とする、ガス管の配管方法。
【請求項9】
前記ガス管の本体部の両端部に設置されている閉塞手段のうちいずれか一方を取り除くことによって前記本体部の一方の端部を開放する工程と、
前記開放された端部から前記中空部に高純度不活性ガスを導入しながら残りの閉塞手段を取り除くことによって前記本体部の他方の端部を開放する工程と、
前記中空部に高純度不活性ガスを導入しながら前記本体部の上流側の端部を被連結体に連結する工程と、を含む、請求項8に記載のガス管の配管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−322540(P2006−322540A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146545(P2005−146545)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】