説明

ガス精製方法及びガス精製装置

【課題】CH4発酵槽から発生したガス(原ガス)に含まれるCO2を分離し、CH4 を高濃度化した精製ガスを低コストで得る方法及び装置を提供する。
【解決手段】ガス精製方法は、CH4及びCO2 を含有する原ガスと水を常圧下で接触させることによりCO2を水に溶解させて原ガスから分離し、CH4を高濃度化した精製ガスを得るものである。ガス精製装置は、CH4及びCO2 を含有する原ガスと水を塔内で常圧下に接触させ、CO2を水に溶解させて原ガスから分離する吸収塔1と、CO2を溶解させた水を吸収塔1から導入して塔内で減圧下にCO2を放散させる放散塔2とを備えたものである。常圧下に原ガスと水を接触させるので、吸収塔1を圧力容器とする必要がなく、原ガス及び水の昇圧操作や冷却操作が不要となり、設備費や運転費を抑えて低コストでメタンを高濃度化した精製ガスを得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵ガスのようにメタン及び二酸化炭素を含有する原ガスから二酸化炭素を分離し、メタンを高濃度化した精製ガスを得ることができるようにしたガス精製方法とガス精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン(CH4)発酵法とは、嫌気性微生物によって有機物をCH4に転換する技術で、有機物からのエネルギー回収法として注目されており、家畜糞尿や下水汚泥など有機性廃棄物の減量化・安定化処理法として全国で導入されている。しかし、CH4発酵ガス中には、主成分のCH4が60〜70容量%含まれているものの、残りの30〜40容量%は、同時に発生する二酸化炭素(CO2)であるため、ガス貯蔵設備の小型化及びガスの高カロリー化を目的として脱CO2処理によりCH4 を高濃度化するガス精製システムの必要性が高まっている。
【0003】
現在までに、下水汚泥消化ガス中に含まれるCO2とシロキサン化合物を同時に除去してCH4を高濃度化した精製ガスを得る方法として、CH4、CO2 およびシロキサン化合物を含有する原ガスと水とを0.55〜2.0MPaの範囲を満たす高圧状態で接触させることにより、CO2を高圧水に溶解させて原ガスから分離するとともに、シロキサン化合物を凝縮させて原ガスから分離して、CH4を高濃度化した精製ガスを得る、いわゆる高圧水吸収法が既に提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この高圧水吸収法は、ガス圧縮機、冷却器、高圧吸収塔などを備えたガス精製装置を用いて、次のように実施される。即ち、原ガスをガス圧縮機で所定の圧力まで昇圧し、冷却器で圧縮熱を除去して、高圧吸収塔に下部から送り込む一方、給水ポンプで昇圧した水を高圧吸収塔に上部から送り込み、0.55〜2.0MPaの高圧状態に保持された高圧吸水塔内で原ガスと水を接触させることにより、原ガス中のCO2を高圧の水に溶解させて分離すると共に、原ガス中のシロキサンを凝縮させて高圧吸水塔の底に沈降させる。このようにCO2とシロキサンを分離してCH4を高濃度化した精製ガスは、高圧吸水塔の上部から取り出されて次の除湿工程に供給され、また、高圧吸水塔の底に沈降したシロキサンと水は、次のCH4回収工程に供給される。
【特許文献1】特開2006−83156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の高圧水吸収法を、同文献1に記載されたガス精製装置によって上記のように実施する場合は、次のような問題がある。
第一に、高圧吸水塔は少なくとも2.0MPaの高圧に充分耐える圧力容器でなければならないため、その建設費及び維持管理費が高くなる。
第二に、ガス圧縮機によって原ガスを昇圧し、給水ポンプによって水を昇圧するため、ガス圧縮機及び給水ポンプの運転費が高くなる。
第三に、昇圧した原ガスや水はジュール熱によって昇温するため、冷却器による冷却操作が必要となる。
第四に、特許文献1には記載されていないが、原ガス生成量(発酵ガス量)の変動に対して発酵槽及び高圧吸収塔の圧力を一定に維持するため、実際には一時貯溜タンクの設置と流量の制御が必要になるので、運転システムが複雑になる。
【0006】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、その解決しようとする課題は、原ガスから二酸化炭素を分離してメタンを高濃度化した精製ガスを低コストで得ることが可能なガス精製方法とガス精製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るガス精製方法は、CH4及びCO2 を含有する原ガスと水を常圧下で接触させることによりCO2を水に溶解させて原ガスから分離し、CH4 を高濃度化した精製ガスを得ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のガス精製方法においては、水に溶解させたCO2を減圧下に放散させることが望ましく、その場合、段階的に2.0kPa以下まで減圧して、水に溶解させたCO2を放散させることが更に望ましい。また、CO2を放散させた水を、原ガスに接触させる水として使用することも望ましい。
【0009】
そして、本発明に係るガス精製装置は、CH4及びCO2 を含有する原ガスと水を塔内で常圧下に接触させ、CO2を水に溶解させて原ガスから分離する吸収塔と、CO2を溶解させた水を吸収塔から導入して塔内で減圧下にCO2を放散させる放散塔とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明のガス精製装置においては、放散塔は、CO2を溶解させた水を順次導入する複数の減圧放散室を備えたもので、該水を最初に導入する減圧放散室の圧力が最も高く、該水を最後に導入する減圧放散室の圧力が最も低くて2.0kPa以下となるように、複数の減圧放散室の圧力が段階的に順次減圧されることが望ましい。また、放散塔内でCO2を放散した水を吸収塔に循環させる水循環管路を設けることが望ましく、更に、水循環管路の途中に水温計とpH計を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス精製方法のように、CH4及びCO2 を含有する原ガスと水を常圧下で接触させることにより、CO2を水に溶解させて原ガスから分離すると、後述の計算システムによる検討結果に示すように、CH4を95容量%以上の高濃度で含む精製ガスを得ることができる。このように常圧下に原ガスと水を接触させると、前記特許文献1の高圧水吸収法のようにガス圧縮機によって原ガスを昇圧したり、給水ポンプによって水を昇圧することが不要となり、原ガスや水を冷却器によって冷却することも不要となるので、ガス圧縮機や給水ポンプや冷却器の設置費及び運転費を削減することができる。また、原ガスと水を常圧下に接触させてCO2を水に溶解させる本発明のガス精製装置の吸収塔は、前記特許文献1の高圧吸水塔のように高圧に耐える圧力容器とする必要がないため、吸収塔の建設費及び維持管理費を低減することができ、しかも、この常圧の吸収塔には、発酵槽で生成する原ガスを直接導入できるので、前記特許文献1の一時貯溜タンクのようなバッファタンクを発酵槽と吸収塔との間に設置することも不要になる。
上記のように、本発明のガス精製方法は、昇圧設備、冷却設備、バッファタンク等を必要としない常圧の吸収塔を備えた本発明の簡易なガス精製装置を用いて、CH4を高濃度化した精製ガスを低コストで得ることができる。
【0012】
また、本発明において、水に溶解させたCO2を放散塔内で減圧下に放散させ、このCO2を放散させた水を吸収塔に循環させる水循環管路を設けたものは、該水を原ガスに接触させる水として繰返し使用することができる。その場合、放散塔として、CO2を溶解させた水を順次導入する複数の減圧放散室を備え、該水を最初に導入する減圧放散室の圧力が最も高く、該水を最後に導入する減圧放散室の圧力が最も低くて2.0kPa以下となるように、複数の減圧放散室の圧力を段階的に順次減圧できる放散塔を設置し、CO2を溶解させた水を放散塔内で段階的に2.0kPa以下まで減圧してCO2を放散させると、放散塔の運転コストを節約しながら効率良くCO2を放散させることが可能となり、しかも、蒸気圧の低下によりCO2を放散した水の温度が下がって、この水を循環使用する吸収塔の内部温度が7〜10℃程度になり、吸収塔の低温運転が可能となるため、CO2の溶解量(吸収量)の増加を図ることもできる。更に、水循環管路に水温計やpH計を設けてあると、放散塔から吸収塔へ戻される水の温度やpHが分かるので、水温の上昇やpHの低下によって吸収塔内でのCO2の溶解性が低下すると予測される場合には、直ちに新しい水を補充、交換して、精製ガスのメタン濃度の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係るガス精製装置の説明図である。
【0015】
このガス精製装置は、吸収塔1と放散塔2と除湿塔3を備えたもので、吸収塔1の底部に溜まった水(CO2を溶解した水)を放散塔2の上部に送る送水管路4と、放散塔2の底部に溜まった水(CO2を放散した水)を吸収塔1の上部に循環させる水循環管路5が設けられている。そして、送水管路4には送水ポンプ6aが設置され、水循環管路5には送水ポンプ6bと水温計7とpH計8が取付けられている。また、放散塔2の底部には給水管路9が設けられており、送水管路4の送水ポンプ6aより下流側には排水管路9が分岐して設けられている。
【0016】
吸収塔1は、原ガスと水を塔内で常圧下に接触させ、CO2を水に溶解させて原ガスから分離する塔であり、その内部には、原ガスと水を充分に接触させるために磁製ラシヒリング等の充填材11が充填されている。この吸収塔1は、底部に設けたガス導入管路12から原ガスを導入して塔内を上昇させる一方、上部に設けた散水ノズル13aから水を撒布して塔内を下降させながら原ガスと水を接触させる、いわゆる向流式吸収塔に構成されており、CO2を分離した精製ガスは、吸収塔1の上部に設けたガス排出管路14を通じて除湿塔3に送られるようになっている。
【0017】
このような常圧の向流式吸収塔1は、高圧に耐える圧力容器とする必要がないので、建設費及び維持管理費を低減することができる。さらに、この常圧の吸収塔1において、発酵槽で生成する原ガス(CH4発酵ガス)はガス導入管路12を通じて直接導入できるので、圧力調整用のバッファタンクを途中に設置することが不要となり、また、常圧の吸収塔1であるから、ガス圧縮機によって原ガスを昇圧したり、給水ポンプによって水を昇圧したり、冷却器によって原ガスや水を冷却することも不要になるので、これらの設置費及び運転費を削減することもできる。
【0018】
一方、放散塔2は、吸収塔1でCO2を溶解させた水を導入し、減圧下にCO2を放散させる塔であって、その内部の圧力が段階的に2.0kPa以下、好ましくは1.0kPa程度まで減圧されるように構成されている。即ち、この実施形態の放散塔2は、中間の仕切盤15によって上下二つの減圧放散室16,17に仕切られており、それぞれの減圧放散室16,17に排気管路18a,18bが設けられている。そして、これらの排気管路18a,18bに設置された真空ポンプ19a,19bによって、上段の減圧放散室16の圧力が例えば20.0kPa以下(但し、2.0kPa以下を除く)となり、下段の減圧放散室17の圧力が上段の減圧放散室16の圧力よりも低くて2.0kPa以下、好ましくは1.0kPa程度となるように、二段階に減圧できる放散塔2となっている。
【0019】
この放散塔2の減圧放散室16,17には、磁製ラシヒリング等の充填材11が充填されており、上段の減圧放散室16の上部には、吸収塔1から送水管路4を通じて導入された水(CO2を溶解した水)を撒布する散水ノズル13bが取付けられている。また、中間の仕切盤15には、バルブの付いた通水口20が複数設けられており、この仕切盤15の下側には、多数の孔を有するパンチングメタルなどの有孔板21が取付けられている。従って、通水口20のバルブを開くと、上段の減圧放散室16の底部に溜まった水が下段の減圧放散室17に吸い込まれて有孔板21の上に落ち、有孔板21の各孔から散水されるようになっている。
【0020】
尚、この実施形態の放散塔2は二段階に減圧されるようになっているが、放散塔2を、CO2を溶解させた水が順次導入される三つ以上の減圧放散室に仕切り、該水を最初に導入する最上段の減圧放散室の圧力が最も高く、該水を最後に導入する最下段の減圧放散室の圧力が最も低くて2.0kPa以下となるように、三つ以上の減圧放散室を段階的に順次減圧する構成としても勿論よい。
【0021】
本発明の一実施形態に係るガス精製方法は、以上のような構成のガス精製装置を用いて、次のように実施される。
【0022】
まず、略60容量%のCH4と略40容量%のCO2を含んだCH4発酵ガスを原ガスとし、発酵槽から原ガスをガス導入管路12を通じて常圧の向流式吸収塔1の底部に導入して塔内を上昇させる一方、放散塔2の下段の減圧放散室17の底部に溜まった水(CO2を放散した水)を、水循環管路5を通じて吸収塔1の上部に循環させて散水ノズル13aから撒布し、原ガスと水を塔内で常圧下に接触させることによって、原ガスに含まれるCO2を水に溶解させて分離する。
【0023】
放散塔2から吸収塔1に循環される水は、後述するように、放散塔2の下段の減圧放散室17において2.0kPa以下に減圧されてCO2を放散した水であるから、水温が7〜10℃と低くなっている。そのため、吸収塔1内の温度が10℃以下の低温に維持され、CO2の溶解量が増加して除去率が高くなるので、後述する表1、表2に示すように、CH4の濃度が95容量%以上と高い精製ガスを得ることができる。
【0024】
上記のように吸収塔1内でCO2を分離してCH4を高濃度化した精製ガスは、吸収塔1の上端からガス排出管路14を通じて除湿塔3に送られ、精製ガスを高圧ボンベに充填する際に結露水が生じない含水率となるまで水分が除去されて、次工程へ送られる。
【0025】
原ガスに含まれるCO2を溶解して吸収塔1の底部に溜まった水は、送水ポンプ6aによって送水管路4を通じて放散塔2の上段の減圧放散室16に送水され、散水ノズル13から撒布される。このようにCO2を溶解した水が撒布されると、既述したように上段の減圧放散室16は20.0kPa以下(但し、2.0kPa以下を除く)に減圧されているので、溶解しているCO2の一部が放散され、放散されたCO2は、真空ポンプ19aによって排気管路18aから排気される。
【0026】
CO2の一部が放散された水は、バルブが開いた通水口20から下段の減圧放散室17に吸い込まれて有孔板21の上に落ち、有孔板21の各孔から撒布される。このように撒布されると、既述したように、下段の減圧放散室16は2.0kPa以下、好ましくは1.0kPa程度まで減圧されているので、溶解しているCO2の大部分が放散され、放散されたCO2は、真空ポンプ19bによって排気管路18bから排気される。
【0027】
尚、上下の減圧放散室16,17から排気管路18a,18bを通じて排気されるガスには、CO2の他に多量の水蒸気が含まれるため、排出ガスをミストキャッチャー(不図示)に供給して水分を回収し、放散塔2の上部に戻すことが望ましい。
【0028】
CO2の大部分を放散して下段の減圧放散室17の底部に溜まった水は、送水ポンプ6bによって水循環管路5を通じて吸収塔1の上部に循環され、原ガスと接触させる水として散水ノズル13aから撒布される。その場合、水循環管路5に設けられた水温計7やpH計8をチェックし、循環させる水の温度上昇やpHの低下によって吸収塔1内でのCO2の溶解性が低下すると予測されるときには、新しい水を給水管路9から放散塔2の底部に供給すると共に、吸収塔1の底部に溜まった水を排水管路10から排水することによって、循環させる水を新しい水に交換し、精製ガスのCH4濃度の低下を防止することが望ましい。
【0029】
上記のように、吸収塔1の内部でCO2を溶解させた水を放散塔2に導入して二段階に減圧し、最終的には2.0kPa以下、好ましくは1.0kPa程度まで減圧してCO2を放散させると、放散塔2の運転コストを節約しながら効率良くCO2を除去することが可能となり、CO2を除去した水を吸収塔1内で原ガスと接触させる水として循環使用できるので無駄がなくなる。しかも、2.0kPa以下に減圧された水は、既述したように水温が7〜10℃と低いため、吸収塔1を10℃以下の低温で運転してCO2の溶解量(吸収量)を増加させ、精製ガスのCH4濃度を95容量%以上に高めることができる。
【0030】
尚、放散塔2の減圧は、この実施形態のように二段階の減圧に限定されるものではなく、既述したように、三段階以上に亘って段階的に2.0kPa以下に減圧してもよいが、二段階に減圧する場合も、三段階以上に亘って減圧する場合も、最終的に2.0kPa以下、好ましくは1.0kPa程度まで減圧することが重要であり、最終的な減圧が2.0kPaを越える場合は水温が上昇して(例えば5.0kPaでは略30℃になる)、吸収塔1内でのCO2の溶解量が大幅に減少するので不適当である。
【0031】
図1に示す構成のガス精製装置を基に、吸収−放散操作を表現する計算システムを作成し、下記の計算条件(初期条件)の下に本発明の実施可能性を具体的に検討した。その結果を下記の表1、表2に示す。
[計算条件(初期条件)]
吸収方式: 向流式充填塔(吸収塔)
吸収液: 水
充填材: 磁製ラシヒリング
処理量: 4000m3 /day
投入ガスCH4 濃度: 60容量%
投入ガスCO2 濃度: 40容量%
水温: 10℃
吸収塔圧力: 101kPa
放散塔の上段の減圧放散室の圧力: 10.0kPa
放散塔の下段の減圧放散室の圧力: 2.0kPa又は1.0kPa
【0032】
尚、計算システムは、以下の代表的な式(1)〜(5)を用いて作成した。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

即ち、式(1)は図2に示す向流式充填塔(吸収塔)の物質収支の式であり、
式(2)は塔出口におけるガス組成に対する平衡値を求める式(Henryの法則を用いた式)であり、
式(3)はフラッディング速度GF を求めるSawistowskiの式であり、
式(4)は塔高Zを求める式であり、
式(5)は平衡関係が直線で表されるときにHO L と液相移動単位高さHL 、気相移動単位高さHG との間に成立する式であり、HO L の値は平衡曲線と操作線から図積分法によって求めた。
なお、上記の式(1)〜(5)において、
a: 装置内の気液有効接触面積[m2/m3]
P : 充填物因子[m-1]
G: 供給ガスの空塔質量速度[kg/m2・h]
F : 充填塔のフラッディング速度[kg/m2・h]
M : 同伴ガスの空塔モル速度[kmol/m2・h]
g: 重力加速度[m/hr2]
OL: 液相基準の総括移動単位高さ[m]
L : 液相移動単位高さ[m]
G : 気相移動単位高さ[m]
x : 液相基準の総括物質移動係数[kmol/m2・h]
L: 液の空塔質量速度[kg/m2・h]
M : 液の空塔モル速度[kmol/m2・h]
m: Henry 定数
OL: 液相基準の総括移動単位数
x: 液相中の溶質ガスのモル分率
B : 塔底での液相中の溶質ガスのモル分率
T : 塔頂での液相中の溶質ガスのモル分率
x* : 平衡時の液相中の溶質ガスのモル分率
y: 気相中の溶質ガスのモル分率
B : 塔底での気相中の溶質ガスのモル分率
T : 塔頂での気相中の溶質ガスのモル分率
ρL : 液の密度[kg/m3]
ρG : ガスの密度[kg/m3]
μL : 液の粘度[cP]
μW : 水の粘度[cP]
である。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
上記の表1、表2より、向流式吸収塔及び減圧式放散塔を備えたガス精製装置を用いて、60容量%のCH4と40容量%のCO2を含む4000m3 /dayのCH4醗酵ガス(原ガス)からCO2を水で分離し、CH4を95容量%以上の高濃度で含む精製ガスを得ることが可能であることが判る。
【0036】
以上、代表的な実施形態を挙げて本発明のガス精製方法及びガス精製装置を説明したが、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではなく、例えば、吸収塔と放散塔を上下に重ねて設置することによって、吸収塔内でCO2を溶解した水が自重で放散塔に導入されるように構成したり、二つ以上の放散塔を上下に連結して、各放散塔を段階的に減圧するように構成するなど、種々の設計的な変更を許容し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス精製装置の説明図である。
【図2】向流式充填塔(吸収塔)の物質収支を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 吸収塔
2 放散塔
5 水循環管路
7 水温計
8 pH計
11 充填材
16 上段の減圧放散室
17 下段の減圧放散室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン及び二酸化炭素を含有する原ガスと水を常圧下で接触させることにより二酸化炭素を水に溶解させて原ガスから分離し、メタンを高濃度化した精製ガスを得ることを特徴とするガス精製方法。
【請求項2】
水に溶解させた二酸化炭素を減圧下に放散させることを特徴とする請求項1に記載のガス精製方法。
【請求項3】
段階的に2.0kPa以下まで減圧して、水に溶解させた二酸化炭素を放散させることを特徴とする請求項2に記載のガス精製方法。
【請求項4】
二酸化炭素を放散させた水を、原ガスに接触させる水として使用することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のガス精製方法。
【請求項5】
メタン及び二酸化炭素を含有する原ガスと水を塔内で常圧下に接触させ、二酸化炭素を水に溶解させて原ガスから分離する吸収塔と、二酸化炭素を溶解させた水を吸収塔から導入して塔内で減圧下に二酸化炭素を放散させる放散塔とを備えたことを特徴とするガス精製装置。
【請求項6】
放散塔は、二酸化炭素を溶解させた水を順次導入する複数の減圧放散室を備えたもので、該水を最初に導入する減圧放散室の圧力が最も高く、該水を最後に導入する減圧放散室の圧力が最も低くて2.0kPa以下となるように、複数の減圧放散室の圧力が段階的に順次減圧されることを特徴とする請求項5に記載のガス精製装置。
【請求項7】
放散塔内で二酸化炭素を放散した水を吸収塔に循環させる水循環管路を設けたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガス精製装置。
【請求項8】
水循環管路の途中に水温計とpH計を設けたことを特徴とする請求項7に記載のガス精製装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−106098(P2010−106098A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277793(P2008−277793)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000247535)株式会社モリプラント (8)