説明

ガス組成物検出用蛍光センサー

キャリア基板(1)と、キャリア基板(1)上に配置される蛍光層(10)と、を有するガス組成物検出用蛍光センサーであって、蛍光層(10)が、基本的に、蛍光染料(3)が組み込まれたガス−透過性ポリマーマトリックス(2)から構成され、この場合において、ガス−透過性セラミック及び/又はポリマーの拡散層(4)が、蛍光層(10)の上方に配置され、拡散層(4)が、検出される環境(5)から蛍光層(10)への、及びその逆方向のガス拡散の時間遅延を引き起こすように適応される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア基板及び蛍光層をそれ上に有するガス組成物検出用蛍光センサーに係り、基本的に、蛍光染料がその中に組み込まれたガス透過性ポリマーマトリックスから構成される。
【背景技術】
【0002】
上記タイプの周知の蛍光センサーは、好ましくは、それらが、それぞれの環境において検出される標的ガスと反応するように構成され、標的ガスが、酸素又はNO−化合物又はそれらの混合物を含む。結果として、例えば、爆発物もまた検出されることが出来る。センサーの蛍光性は、一般に、蛍光センサーから適切な距離において備え付けられる測定デバイスによって検出され、適切な信号発生器において、電気的または電子的に所望の信号に転換される。
【0003】
蛍光センサーによって生成される信号が、時間又は場所に関して検出部位とは異なって再生される限りにおいては、信号に対して、対応するストレージ媒体、又は少なくとも対応する切り替え装置が供給されなければならず、一般に、これは、構造上の費用と関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の目的は、ガス組成物の検出の結果から生じるその蛍光性が、所望の時間の間維持される蛍光センサーを製造することであり、読み出し測定デバイスが、検出されるガス組成物の部位に直接配置される必要はないが、異なる部位に移動された後、又は所望の時間の後、蛍光センサーが、検出されたガス組成物を、その部位又はその時間に存在する読み出し測定デバイスに送信することが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明に従って、その目的が、請求項1の前文に従う蛍光センサーの場合において達成され、ガス透過性セラミック及び/又はポリマーの拡散層が、蛍光層上に配置され、検出される環境から蛍光層への、又はその逆方向のガス拡散の時間遅延が生じるように、この拡散層が適応される。
【0006】
この点において、測定される環境のガスが、その結果、蛍光層にさらにゆっくりと進み、同様にして、そこから離れてさらにゆっくりと拡散する。直接的に蛍光層上のガス組成物が、その結果、しばらくの間保持され、それぞれの発光された蛍光性が、時間遅延を伴って環境のガス組成物を示す。この方法において、検出される環境の外部に蛍光センサーが移動することが可能となり、及び適切な読み出しレンズシステムを用いてそこで検出される環境のガス組成物を得ることが可能となる。この時間遅延は、使用者が、特定の蛍光性を測定することが出来、又は手動の測定機器を用い維持された条件に応じた特定のガス濃度を決定することが出来るという重要な利点を有する。
【0007】
拡散層の選択されたパラメータによって、保存しようとする蛍光性に対する継続時間が、調整されることが出来る。例えば、ガスの保管が、数時間の範囲内において発生するように拡散層が設計される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明に従う蛍光センサーの実施形態の概略図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明に従う蛍光センサーの構造を用いて、例えば、RFIDタグ(radio frequency identification tag)の使用、又は物体、パッケージング構造、若しくは輸送構造上におけるそのようなRFIDタグの方法の使用が提供されることが出来る。この場合において、ガスの保管が、直接的に蛍光層にわたって数時間の間発生するように、拡散層に対するパラメータが、容易に設計されることが出来る。
【0010】
蛍光センサーが、例えば1つ又はいくつかのRFIDタグ上に組み込まれる。外部読み出しレンズシステムを用いて、例えば、数センチメートルを隔てて、RFIDタグが読み出される。
【0011】
本願発明に従う蛍光センサーの好ましい実施形態の場合、拡散層の厚さが、数μmから数百μmの間であり、拡散層の厚さが、ガス拡散の所望の時間遅延に応じて選択される。
【0012】
本願発明のさらなる展開として、拡散層の透過性が、好ましくは、酸素及び/又はNO化合物又はそれらの混合物に関して調整され、爆発性化合物の検出を目的として、実用的用途に対する特別な利点となりうる。
【0013】
本願発明のさらなる展開において、拡散層に対して三元酸化物がセラミックとして提供され、及びSU−8がポリマーとして提供されることが提案される。
【0014】
最後に、本願発明のさらなる展開が、いくつかの異なる反応蛍光層を並んで配置すること、及びそれらを拡散層によって覆うことを含む。この方法において、ガス組成物が、所望の時間遅延を伴う同一の蛍光センサーを用いて、多くの多様なガス構成要素に従って検出されることが出来る。
【0015】
最後に、本願発明のさらなる展開において、ポリマーが、キャリア基板として使用されることが出来、カプトン、ポリウレタン又はポリエチレンが特に適している。しかしながら、セラミック及びシリコン基板もまた考えられる。
【0016】
添付する図面は、本願発明に従う蛍光センサーの実施形態の概略図を表す。蛍光層10が、基本的に、立方形プレート又はストリップまたはバンド形状を有するキャリア基板1上に配置され、蛍光層10が、基本的に、ガス−透過性ポリマーマトリックス2から構成され、その中に蛍光染料3を含む。厚さdのガス−透過性拡散層4が、蛍光層10上に直接的に配置され、それらの拡散が拡散層4を通して距離dを越えた後、遅延型の方法のみにおいて、蛍光層10に作用する環境5からのガスが、蛍光層10に達することが出来る。遅延型の方法においては、拡散層4を通して環境5内に戻る外向きの拡散も発生するため、蛍光層10の領域においてガス雰囲気が、長時間維持される。この点で、拡散層4が、その効果に対応して保持又は保管層と呼ばれることも出来る。
【符号の説明】
【0017】
1 キャリア基板
2 ポリマーマトリックス
3 蛍光染料
4 拡散層
5 環境
10 蛍光層
d 厚さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア基板(1)と、
前記キャリア基板(1)上に配置される蛍光層(10)と、
を有するガス組成物検出用蛍光センサーであって、
前記蛍光層(10)が、基本的に、蛍光染料(3)が組み込まれたガス−透過性ポリマーマトリックス(2)から構成され、
ガス−透過性セラミック及び/又はポリマーの拡散層(4)が、前記蛍光層(10)の上方に配置され、
前記拡散層(4)が、検出される環境(5)から前記蛍光層(10)への、及びその逆方向のガス拡散の時間遅延を引き起こすように適応されることを特徴とする蛍光センサー。
【請求項2】
前記拡散層(4)の厚さ(d)が、数μmから数百μmの間であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光センサー。
【請求項3】
前記拡散層(4)の厚さが、前記ガス拡散の所望の時間遅延に応じて選択されることを特徴とする請求項2に記載の蛍光センサー。
【請求項4】
前記拡散層(4)の透過性が、好ましくは、酸素及び/又はNO化合物又はそれらの混合物に関して調整されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蛍光センサー。
【請求項5】
前記拡散層(4)に対して三元酸化物がセラミックとして提供され、及びSU−8がポリマーとして提供されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の蛍光センサー。
【請求項6】
いくつかの異なる反応蛍光層(10)が、並んで配置され、拡散層(4)によって覆われることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の蛍光センサー。
【請求項7】
ポリマーが、前記キャリア基板(1)として使用されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の蛍光センサー。
【請求項8】
前記キャリア基板(1)に対して、カプトン、PUR又はPETが選択されることを特徴とする請求項7に記載の蛍光センサー。
【請求項9】
前記キャリア基板(1)が、シリコン及び/又はセラミックから形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の蛍光センサー。

【公表番号】特表2009−539070(P2009−539070A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512406(P2009−512406)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000820
【国際公開番号】WO2007/137550
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(503195311)エーアーデーエス・ドイッチュラント・ゲーエムベーハー (11)
【Fターム(参考)】