説明

ガス絶縁機器のガス簡易回収方法

【課題】ガス絶縁機器の運搬に手間がかからず、短時間でガスを回収するガス絶縁機器のガス簡易回収方法を提供することにある。
【解決手段】
ガス用ホース12の一方を、ガス絶縁機器1の補給口3に接続し、他方をSF6ガス20を回収するガス採集袋10に接続した後、ガス絶縁機器1内部の圧力が、大気圧と同じ圧力となるように補給口3を開弁することで、SF6ガス20の一部をガス採集袋10へ回収する第1のステップと、圧力計4を、ガス絶縁機器1から取り外した後、ガス採集袋10を接続したガス用ホース12を補給口3から外して圧力計4の接続口に接続する一方、補給口3から注水を行うことにより、残りのSF6ガス20をガス用ホース12を経由してガス採集袋10へ回収する第2のステップと、からなることにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LDS(ループ電流開閉用断路器)遮断部内のSF6ガスを効率的に回収するためのガス絶縁機器のガス簡易回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SF6(六フッ化硫黄)ガスは、高電圧電力用トランスや、電力回路の遮断器に充填し、その熱的安定性、電気的安定性、高絶縁耐圧性を生かして装置の小型化を可能としているが、値段が高価であることや、COに比べ温室効果が大きいことから、排出量を抑制するために、当該ガスのリサイクル及び回収率の向上を図る必要があった。
そのため、従来からSF6ガスの回収方法として、真空回収装置を用いてガスを回収する方法や、ガス置換装置を用いて、容器内の圧力を常圧に保ちながら、流通法により空気等とともに排出されるガスを、液化分離して回収する方法も知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−78718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなガス回収装置を用いる場合、装置自体が大型であるため、装置の運搬に手間がかかるうえ、回収に時間がかかる。また、真空度をゼロにすることができず、SF6ガスを全て回収することができなかった。
さらに、ガス絶縁機器を回収装置常置場所に運搬して回収する場合であっても、運搬に手間がかかるといった問題が発生していた。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解消し、ガス絶縁機器の運搬に手間がかからず、短時間でガスを回収するガス絶縁機器のガス簡易回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、置換ガスを内部に充填するLDS遮断部と、前記LDS遮断部に前記置換ガスの注入/吸引を行う開閉可能な補給口と、前記LDS遮断部の内圧を表示する着脱可能な圧力計と、を備えたガス絶縁機器において、ガス絶縁機器内に充填された前記置換ガスを回収するガス簡易回収方法であって、
ホースの一方を、前記ガス絶縁機器の前記補給口に接続し、他方を前記置換ガスを回収するガス採集袋に接続した後、前記ガス絶縁機器内部の圧力が、大気圧と同じ圧力となるように補給口を開弁することで、前記置換ガスの一部を前記ガス採集袋へ回収する第1のステップと、
前記圧力計を、前記ガス絶縁機器から取り外した後、前記ガス採集袋を接続した前記ホースを前記補給口から外して前記圧力計の接続口に接続する一方、前記補給口から注水を行うことにより、残りの置換ガスを前記ホースを経由して前記ガス採集袋へ回収する第2のステップと、からなることにある。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加え、前記第1のステップにおいて、前記ガス採集袋を、収縮状態にして前記補給口に接続することにある。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明に加え、前記ホース及び/又は前記ガス採集袋を透明としたことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガス絶縁機器の運搬をする必要がなく、回収した置換ガスのみを運搬すれば良いため、置換ガスの運搬が短時間で済み、置換ガスの回収費用を安価に抑えることもできる。他にも、置換ガスを大気に放出することなく、全て回収することが可能となる。
また、水を使用することは、手配が容易で大量に使用しても安価であり、使用後はそのまま廃棄が可能である。加えて、水道から接続すれば、圧力調整が容易である。更に、置換ガスは、水への溶解度が低いため不溶性ともいえ、水への溶け込みを考慮することなく全て回収することが可能となる。他にも、ホースを使用するため、たとえ置換ガスがホースに残ったとしても、その残留量を最小限に抑えることができる。
【0010】
特に、請求項2に記載の発明によれば、第1のステップにおいて、置換ガスを大気に放出することなく、短時間で回収することが可能となる。
【0011】
他にも、請求項3に記載の発明によれば、ガス採集袋内に置換ガスが溜まるタイミングは、注水した水が透明なホース及び/又はガス採集袋へと溢れ出る状態を視認すれば良く、確認が容易である。そのため、置換ガスの回収の確認に特別な装置を準備したり、置換ガスの量を計測するといったことが不要である。加えて、水の供給スピードを緩める等した慎重な対応も可能となり、ガス採集袋に水が大量に流れ込むおそれがない。
また、透明のホースやテトラーバッグは、一般に市販されている物であるため、容易に入手することが可能である。このうち、テトラーバッグは、軽度の衝撃に耐えうる構造であるため、輸送時の衝撃を考慮する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガス絶縁機器の全体構成を示す説明図である。
【図2】SF6ガスの回収方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、ガス絶縁機器1は、SF6ガス20を内部に充填するLDS遮断部2と、このLDS遮断部2にSF6ガス20の注入/吸引を行う開閉可能な補給口3と、LDS遮断部2の内圧を表示する着脱可能な圧力計4と、を備えている。このSF6ガスが、本発明の置換ガスである。
【0015】
このうち、LDS遮断部2は、内部には、SF6ガス20を、内圧が約0.15Mpa、充填量を約5.5Lで封入する構造である。
【0016】
そして、SF6ガス20の回収にあっては、図2にも示すように、補給口3に接続される透明なガス用ホース12と、ガス用ホース12の他端に接続されてSF6ガス20を回収する透明なガス採集袋10と、一方を圧力計4の接続口に装着可能で、他方をガス用ホース12に接続可能なアダプタ15と、水21をLDS遮断部2に送り込む水用ホース13とを用いる。このガス用ホースが、本発明のホースである。
【0017】
また、ガス採集袋10は、市販されている透明のテトラーバッグ(容量約10L)で、ガス用ホース12や水用ホース13を接続する接続口11を備えている。この接続口11にキャップをすることで密閉可能とする構造である。
【0018】
次に、アダプタ15は、流れを規制する開閉レバー16を備え、LDS遮断部2に設けられた圧力計4の接続口から取り外し、交換可能な構造である。
【0019】
以上の用具を用いて、ガス絶縁機器1内部に充填したSF6ガス20を、ガス採集袋10へ回収するガス簡易回収方法は、以下のように行われる。
【0020】
まず初めに、図1及び図2(a)に示すように、LDS遮断部2を、圧力計4が上を向くように地上に載置する。そして、このLDS遮断部2の補給口3にガス用ホース12を接続する。
【0021】
次に、図2(b)に示すように、収縮状態にあるガス採集袋10の接続口11にガス用ホース12の他端を接続する。
ここで、収縮状態にあるガス採集袋10は、ガス採集袋10内部が真空の状態または空気が殆ど残っていない状態となっている。
そして、補給口3を開弁すると、LDS遮断部2内部が大気圧と同じ圧力となるまでSF6ガス20が吹き出すため、補給口3に接続したガス用ホース12を経由してガス採集袋10へと回収される(この時のSF6ガス20の回収量は約3.3Lである)。
その後、LDS遮断部2内部が大気圧と同じ圧力となり、SF6ガス20が吹き出さなくなったところで補給口3を閉弁する。そして、この補給口3に接続していたガス用ホース12端部を取り外す。
【0022】
次に、図2(c)に示すように、補給口3に水用ホース13の一方を接続する。そして、圧力計4を、ガス絶縁機器1から取り外した後、アダプタ15の一方を、この圧力計4の接続口に取り替え、他方をガス用ホース12に接続する。この時、開閉レバー16が閉の位置にあるか確認し、閉の位置にない場合は、閉の位置まで回転させる。
ここで、SF6ガス20は、空気に比べ比重が5倍以上あることと、圧力計4を取り外しても、上述のように一部を回収したことにより、空気とLDS遮断部2とが同じ圧力であることとから、LDS遮断部2外部へと漏れることはない。
【0023】
そして、図2(d)に示すように、水用ホース13から水21を供給し、開閉レバー16を開の位置まで回転させる。これにより、補給口3からLDS遮断部2に水21が注水され、内部に残っているSF6ガス20が押し上げられ、アダプタ15からガス用ホース12を経由し、ガス採集袋10へと回収される(この時のSF6ガス回収量は約2.2Lである)。
【0024】
その後、さらに注水を行い、図2(e)に示すように、SF6ガス20が全て押し上げられた後は、アダプタ15からガス用ホース12を経由して、ガス採集袋10へと水21が流れ込む。この流れ込みを視認すると、注水を中止するとともに、レバー16を閉の位置まで回転させる。そして、接続口11にキャップをすることでSF6ガス20を密閉する。
【0025】
以上のように、本発明のガス簡易回収方法は、ガス用ホース12の一方を、ガス絶縁機器1の補給口3に接続し、他方をSF6ガス20を回収するガス採集袋10に接続した後、ガス絶縁機器1内部の圧力が、大気圧と同じ圧力となるように補給口3を開弁することで、SF6ガス20の一部をガス採集袋10へ回収する第1のステップと、圧力計4を、ガス絶縁機器1から取り外した後、ガス採集袋10を接続したガス用ホース12を補給口3から外して圧力計4の接続口に接続する一方、補給口3から注水を行うことにより、残りのSF6ガス20をガス用ホース12を経由してガス採集袋10へ回収する第2のステップと、からなることにある。
その結果、ガス絶縁機器1の運搬をする必要がなく、回収したSF6ガス20のみを運搬すれば良いため、SF6ガス20の運搬が短時間で済み、SF6ガス20の回収費用を安価に抑えることもできる。他にも、SF6ガス20を大気に放出することなく、全て回収することが可能となる。
また、水21を使用することは、手配が容易で大量に使用しても安価であり、使用後はそのまま廃棄が可能である。加えて、水道から接続すれば、圧力調整が容易である。更に、SF6ガス20は、水21への溶解度が低いため不溶性ともいえ、水21への溶け込みを考慮することなく全て回収することが可能となる。他にも、ガス用ホース12を使用するため、たとえSF6ガス20がガス用ホース12に残ったとしても、その残留量を最小限に抑えることができる。
【0026】
また、第1のステップにおいて、ガス採集袋10を、収縮状態にして補給口3に接続することにある。
その結果、SF6ガス20を大気に放出することなく、短時間で回収することが可能となる。
【0027】
他にも、ガス用ホース12及び/又はガス採集袋10を透明としたことにある。
その結果、ガス採集袋10内にSF6ガス20が溜まるタイミングは、注水した水21がガス用ホース12及び/又はガス採集袋10へと溢れ出る状態を視認すれば良く、確認が容易である。そのため、SF6ガス20の回収の確認に特別な装置を準備したり、SF6ガス20の量を計測するといったことが不要である。加えて、水21の供給スピードを緩める等した慎重な対応も可能となり、ガス採集袋10に水21が大量に流れ込むおそれがない。
また、透明のガス用ホース12やテトラーバッグは、一般に市販されている物であるため、容易に入手することが可能である。このうち、テトラーバッグは、軽度の衝撃に耐えうる構造であるため、輸送時の衝撃を考慮する必要がない。
【0028】
なお、本発明のガス簡易回収方法は、上記実施形態の態様に何ら制限されるものではなく、ガス絶縁機器1における構造や構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。
【0029】
例えば、本発明のガス簡易回収方法は、ガス用ホース12とガス採集袋10との何れか一方が透明であっても良く、LDS遮断部2内部に充填したSF6ガス20をガス採集袋10に回収するものであれば適宜変更可能である。
また、アダプタ15を、省略しても良く、同様に、SF6ガス20をガス採集袋10に回収するものであれば適宜変更可能である。
【0030】
他にも、LDS遮断部2を、圧力計4が必ず上を向くように地上に載置する必要はなく、注水を行うことにより、LDS遮断部2内部に残ったSF6ガス20が、水21によって押し上げられ、ガス用ホース12を経由してガス採集袋10へと回収されるものであれば、ガス絶縁機器1を立てて圧力計4が横を向いた状態でSF6ガス20の回収を行ったり、ガス採集袋10を補給口3から圧力計4の接続口に繋ぎ替えずに、圧力計4を取り外して、その圧力計4の接続口から注水する方法に変更する等、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0031】
1・・ガス絶縁機器、2・・LDS遮断部、3・・補給口、4・・圧力計、10・・ガス採集袋、11・・接続口、12・・ガス用ホース、13・・水用ホース、15・・アダプタ、16・・開閉レバー、20・・SF6ガス、21・・水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換ガスを内部に充填するLDS遮断部と、前記LDS遮断部に前記置換ガスの注入/吸引を行う開閉可能な補給口と、前記LDS遮断部の内圧を表示する着脱可能な圧力計と、を備えたガス絶縁機器において、ガス絶縁機器内に充填された前記置換ガスを回収するガス簡易回収方法であって、
ホースの一方を、前記ガス絶縁機器の前記補給口に接続し、他方を前記置換ガスを回収するガス採集袋に接続した後、前記ガス絶縁機器内部の圧力が、大気圧と同じ圧力となるように補給口を開弁することで、前記置換ガスの一部を前記ガス採集袋へ回収する第1のステップと、
前記圧力計を、前記ガス絶縁機器から取り外した後、前記ガス採集袋を接続した前記ホースを前記補給口から外して前記圧力計の接続口に接続する一方、前記補給口から注水を行うことにより、残りの置換ガスを前記ホースを経由して前記ガス採集袋へ回収する第2のステップと、からなることを特徴とするガス絶縁機器のガス簡易回収方法。
【請求項2】
前記第1のステップにおいて、前記ガス採集袋を、収縮状態にして前記補給口に接続することを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁機器のガス簡易回収方法。
【請求項3】
前記ホース及び/又は前記ガス採集袋を透明としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス絶縁機器のガス簡易回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−60725(P2011−60725A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212282(P2009−212282)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】