説明

ガス絶縁電気装置

【課題】様々な挙動を示す金属異物を確実に捕獲するとともに、製造コストを低減でき、更に絶縁信頼性の高いガス絶縁電気装置を提供する。
【解決手段】絶縁ガスが充填された接地タンク2内に絶縁スペーサ3を介して導体1を設置し、金属板16に回転運動する金属異物を捕獲するための孔13と起立状態で鉛直方向に運動する金属異物を捕獲するための孔14を設けるとともに、孔13、14から接地タンク2に向かう方向に側壁15を設け、更に金属板16を接地タンク2に対して平行に、かつ電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁ガスを充填した接地タンク内に通電導体を収容したガス絶縁電気装置に関するものであり、特に接地タンク内における金属粉末などの金属異物を集積し、捕捉するためのトラップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁電気装置は、高電圧が印加される通電導体が金属容器内で覆われているものであり、通電導体が金属容器によって外界の影響から保護されているので、信頼性、安全性が高く、環境にもやさしいものである。
【0003】
ところで以上のようなガス絶縁電気装置の組み立ての過程においては、接地タンク内に金属粉等の金属異物が侵入する可能性がある。このように接地タンク内に金属異物が入った状態で通電導体に高電圧が印加されると、接地タンク内の金属異物は接地タンクと通電導体との間を数Hzの周期で上下運動をする。このような金属異物を収集し、捕獲するための従来技術として以下のようなものがある。
【0004】
絶縁ガスが充填されたパイプ状の金属製密閉容器である接地タンクの中心部に高電圧の電流が流れる導体が絶縁スペーサーによって保持され、接地タンクの内面の下部にはプラスチック等により構成された絶縁板が設けられており、絶縁板の上面には所定の間隔で凹部が設けられている。又絶縁板の表面には比較的高い抵抗率を有する半導体層が設けられており、この半導体層は接地タンクの内面に電気的に接続されるようになされている。
【0005】
ガス絶縁電気装置を設置した後、通常の使用状態において導体と接地タンク間に高電圧が印加されているので、このとき半導体層の上にのった金属異物は帯電するものの、半導体層の抵抗率は金属よりははるかに高いため、その帯電量は金属異物が接地タンク内面上にある場合に較べて比較的少ない。従って金属異物に作用する浮力も比較的小さく跳躍の高さも低い。
【0006】
それ故金属異物は高電圧の電流が流れている導体に衝突したりその近傍に沢山集まったりすることはなく絶縁板上を小幅に跳躍して動き、金属異物は絶縁板上を跳躍しているうちに凹部の位置に達するとその中に落下し、一旦凹部の中に落下した金属異物は、凹部の底面及び側面には半導体層が設けられていないため再び帯電することはなく、浮力も生じず、従って再び凹部から外に飛び出すことはなく、金属異物を捕獲することができるものである(特許文献1参照)。
【0007】
又別のガス絶縁電気装置においては、金属容器としてアルミ等により製造された接地タンクが用いられており、接地タンクは密閉された筒状の容器であり、その内部には、絶縁性ガスが充填されている。接地タンクの内部には高電圧の電流が印加される導体が設けられており、そして、接地タンクの底面に、金属異物を捕獲するためのトラップ装置が設置されている。
【0008】
以上のようなガス絶縁電気装置においては導体に対して高電圧が印加されるが、導体は絶縁スペーサーによって接地タンク内壁から所定の距離を保って絶縁支持されているので、高い安全性を維持しながら作動させることができ、又導体に所定の電圧が印加されると接地タンクの内表面に存在する金属異物が導体と接地タンクの間を往復運動する。
【0009】
そしてこの場合、トラップ装置の領域に到達した金属異物は孔に入り、そこに形成された低電界部に落下する。そして孔に入った金属異物は、孔を通り過ぎて、その下に形成された低電界領域に落下し、浮上する力を得ることができずその低電界領域に留まることにより金属異物を捕獲するというものである(非特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平5−260631号公報
【非特許文献1】GIS絶縁に及ぼす金属異物の影響調査専門委員会、「GIS絶縁に及ぼす金属異物の影響」、電気学会技術報告 第561号、p60、1995.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のガス絶縁電気装置は以上のように構成されているので、以下のような問題点があった。即ち上記特許文献1においては、孔を構成しているのは絶縁板と半導体であり、孔の底面、すなわち絶縁板では金属異物は電荷の授受ができないので、特に起立状態で鉛直に運動している金属異物が孔の底面で機械的に反発した場合に、浮上力を得て再び孔の外に出やすくなる。その可能性を少なくするには孔を深くしなければならないが、そのためには絶縁板、もしくは半導体の板厚を厚くする必要があり、広範囲で金属異物を捕獲しようとする場合トラップ装置を設置することが困難となる。
【0012】
又上記非特許文献1においては、板に孔だけを開けた状態では、孔に鋭いエッジができてしまいこの部分に電界が集中するので、電気力線に沿って運動する金属異物はエッジに当たってしまい、捕獲し難くなる。さらにトラップ装置は接地タンクに沿って配置されるので、トラップ装置の端部では孔と接地タンクとの距離が近くなり、低い電界領域を作ることが困難であり、特に起立状態で鉛直に運動している金属異物は接地タンクに対して機械的に反発して再び孔を通り過ぎて、トラップ装置から出ていってしまう可能性が高くなる。その結果、トラップ装置の端部においては、トラップ装置の中心領域に比べて金属異物を捕獲しにくくなるという問題点があった。
【0013】
更に上記特許文献1および非特許文献1においては、金属異物の挙動を考慮した設計になっていないという問題点があった。すなわち金属異物の挙動は、主に起立してそのまま鉛直方向に上下運動するものと、金属異物の長手方向の長さを最大の径とする回転運動を伴いながら、鉛直方向に上下運動するものとが存在する。起立してそのまま上下に運動する金属異物は接地タンクに接触した時の反発係数が大きいので、孔の径を小さくして孔内の電界を極めて小さくしてやらなければ、捕獲することが困難である。
【0014】
一方、回転しながら上下運動する金属異物に対しては金属異物の長さ以上の径を持つ孔にしなければならない。起立した金属異物に対して、金属異物の長さ以上の径を持つ大きな孔を設けた場合は、反発力を考慮して捕獲するための低電界領域を作るには、深い孔にしなければならずトラップ装置自体が大きなものとなってしまう。
【0015】
一方回転する金属異物に対して小さな孔を設けた場合、金属異物は孔の中に物理的に入ることができず、従って起立状態に運動が変化するまで待つ必要が生じるので、時間がかかってしまうこととなり、導体と接地タンクの間に浮遊する時間が長くなり、閃落する確率が高くなってしまう。即ち1種類の孔を設けただけでは、起立して鉛直方向に上下する金属異物と、回転しながら上下運動する金属異物の両者を有効に捕獲することができないという問題点があった。
【0016】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、様々な挙動を示す金属異物に対してそれぞれに最適な捕獲孔を設けるとともに、絶縁耐力を維持させながら単純な構造とすることにより、製造コストを低減でき、更に絶縁信頼性の高いコンパクトなガス絶縁電気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係るガス絶縁電気装置は、絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサーを介して設置された導体とからなるものであって、金属異物を捕獲するための大きさの異なった孔が形成されるとともに孔から接地タンクに向かう方向に側壁が形成された金属板を設け、更に金属板を接地タンクに対して平行に、かつ電気的に接続したものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るガス絶縁電気装置によれば、絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサーを介して設置された導体とからなるものであって、金属異物を捕獲するための大きさの異なった孔が形成されるとともに孔から接地タンクに向かう方向に側壁が形成された金属板を設け、更に金属板を接地タンクに対して平行に、かつ電気的に接続したので、挙動の異なる金属異物を確実に捕獲することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1.
以下この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1によるガス絶縁電気装置の内部を示す斜視図、図2は同じく正面断面図、図3は同じく側面断面図、図4はトラップ装置を示す斜視図、図5は図4のA部における断面図である。図において、接地タンク2の中心軸上に導体1が絶縁スペーサー3によって保持されている。この絶縁スペーサー3は絶縁性の部材で構成されるとともに、その中心に導体1が挿通されたラッパ状の形態をしており、接地タンク2の内壁に支持されている。
【0020】
そして接地タンク2の内壁の下部にはトラップ装置12が配置されている。本実施形態においては、トラップ装置12は接地タンク2の長手方向に対して導体1及び接地タンク2の内面と平行になるように延長して配置されており、更に接地タンク2に向かうよう設置された側壁15を有する2種類の大きさの孔13,14を多数設けた金属板16から構成されている。このトラップ装置12は所定の箇所がねじ止めや溶接により固定されることで接地タンク2と電気的に接続されている。図においては、孔13の径が孔14の径より大きく形成されており、実際には孔13の面積は孔14の面積の10倍程度に形成される。又上記においては2種類の大きさを有する孔を設けた場合について説明したが、3種類以上の大きさを有する孔を設けるようにしても良い。
【0021】
次に金属異物の挙動について説明する。導体1に高電圧が印加されると接地タンク2内壁に接触している金属異物が帯電する。この時接地タンク2内には強い電界が存在しているので帯電した金属異物には静電気力が働き、金属異物は接地タンク2内の空間に浮上する。直流電圧と違い交流電圧の場合、金属異物は商用電源の周波数に同期した振動をしながら導体1に向かって浮上する。
【0022】
導体1との距離がある程度近づくと、金属異物は自ら放電して保有する電荷を失い、浮上の時と同様商用電源の周波数に同期した振動をしながら接地タンク2に向かって落下する。落下した金属異物は接地タンク2の内壁に触れて再び帯電して空間に浮上する。このような挙動を繰り返し、金属異物が接地タンク2と導体1の空間に存在する確率が高くなると、その空間で閃落し、ガス絶縁電気装置の事故につながる可能性がある。
【0023】
そしてガス絶縁電気装置の絶縁耐力に影響を与える金属異物のうちで、形状が針状のものが最も重大な影響を及ぼすことが判明している。この針状の金属異物は電圧が印加されて電界強度が特定の値を超えるとわずかな擾乱によって電界の方向に起立し、浮上する。更には金属異物は中心導体に向かって起立した状態で鉛直方向に運動する場合と、金属異物の長手方向の長さを最大の径とする回転運動を伴いながら鉛直方向に運動する場合があり、このような異なった金属異物の挙動が捕獲を困難なものとしている。同様に接地タンク2の内壁に対して機械的に反発することも捕獲を困難なものとしている大きな要因となっている。
【0024】
そこで本発明においては、側壁15を持った2種類の大きさの径を有する孔13,14を多数設けることにより、トラップ装置12は接地タンク2の内部において、図6(a)に示すような起立した状態で鉛直方向23に運動する金属異物21、及び図6(b)に示すような回転しながら(回転方向24)鉛直方向23に運動する金属異物22を容易に効率的に捕えることができるようになるものである。即ち金属異物22に対しては径の大きな孔13により捕獲するとともに、金属異物21に対しては径の小さな孔14により捕獲することができるようになる。
【0025】
更に側壁15によるシールド効果によってできた極端に低い電界により金属異物21,22の挙動を抑えることができる。尚孔13、14それぞれの設置数は両者の面積比が同等になるように設定することにより、鉛直方向に運動する金属異物21及び回転する金属異物22を同程度の捕獲効率により捕獲することができるようになる。図4においては、孔13,14の数が同程度になるように図示されているが、図4は発明を判りやすくするために描かれたものであり、実際には孔14の数は孔13の数の100倍程度となる。
【0026】
図7は接地タンク2内に存在する回転金属異物の存在比率と金属異物の捕獲効率(縦軸の左)及び金属異物存在度数(縦軸の右)の関係を示している。縦軸の右に示す金属異物存在度数とは、接地タンク2内に存在する金属異物の全体存在度数を1とした時の起立及び回転している金属異物の存在度数(確率密度)である。
【0027】
縦軸の左にはトラップ装置12による金属異物捕獲効率が示されており、横軸は回転している金属異物の存在比率を示している(回転金属異物の存在比が0%の時は起立金属異物の存在が100%)。図中の直線Rは回転金属異物の捕獲を考慮して設置されたトラップ装置12の捕獲効率を示している。これは起立金属異物しか接地タンク2内に存在しない時、回転金属異物のみを考慮したトラップ装置12においては、捕獲孔が金属異物の直径よりも大きいので捕えることが可能である。
【0028】
しかし、孔が大きいのでその中心軸位置の電界は鉛直に運動している起立金属異物を確実に捕えるほど低くはなく、約50%の起立金属異物が捕えられると考える。また、図中の直線Sは起立金属異物の捕獲のみを考慮したトラップ装置12を設置した場合の捕獲効率を示しており、起立金属異物しか存在しない場合(回転金属異物の存在比率が0%のとき)は全てを捕獲可能であるが、回転金属異物が増すに連れて捕獲孔には入ることができない金属異物が増し、捕獲効率は0%にまで低下する。
【0029】
実際の接地タンク2内では金属異物の挙動はほんのわずかな擾乱で変化するので、回転及び起立の挙動を示す金属異物の存在個数はカーブTに示すように正規分布を示すと考えられる(この場合Tの縦軸スケールは右の金属異物存在度数である)。カーブTにより回転金属異物の存在比率が50%の状態が一番確率的に起こりやすいので、回転金属異物、起立金属異物の存在比は実際両者50%ほどと考えられる。図7においては、直線R、直線Sとして説明したが、実際にはRとSは曲線状になる場合も考えられるので、その結果金属異物捕獲効率は図7の領域Uに示すように約50%から70%の値をとることとなる。
【0030】
このように、接地タンク2内には少なくとも2種類の挙動を示す金属異物が存在し、本発明のようにその挙動に合わせ、2種類の孔13、14をもつトラップ装置12を設置することで、図7の直線Xのように、常に捕獲効率が100%となるように金属異物の捕獲を確実なものとして閃落事故をなくすことが可能となる。
【0031】
実施の形態2.
本実施形態においては、トラップ装置12の製造方法として一枚の金属板に対してプレス加工を施すようにしたものである。即ちプレス加工によるせん断、曲げ加工を採用することによって、形成される孔の種類が2種類以上ある場合においても、一つ一つの孔の大きさに合わせてドリルの歯を交換する必要がなく、工程時間を短縮させるとともに、低コストで製作することができる。又寸法の長いトラップ装置を製作しやすくなり、接地タンク2の広範囲に亘って設置することが可能となるため、金属異物の捕獲率を高めることができる。
【0032】
更に薄い金属板をプレス加工することにより製作できるので、重量が軽く取り扱い易くなる。そして寸法の長い接地タンク2に設置する場合にも重量が軽いので人手を要せず、既存の接地タンク2にも容易に取り付けることができるようになる。更に金属異物による閃落事故を減らすことができ、又取り外しが容易であるので捕獲した金属異物を容易に採取できるようになり、その後のガス絶縁電気装置の検査もし易くなる。
【0033】
また、プレス加工によれば、プレス加工によるせん断、曲げ加工を採用することにより孔と側壁を同時に形成することができる。更に金属板に孔を設けただけの場合と比べると、側壁を設けた場合、そのシールド効果によって極端に低い電界を形成することができ、孔底面の電界を低くすることができるので、捕獲効率を高めることが容易である。図8は孔に側壁を持たせた場合の孔の底面の電界を、側壁がない場合と比較したものである。縦軸は側壁を設けない先行技術における孔底面の電界と側壁を設けた場合の孔底面の電界との比で、横軸は金属異物の長さに対する孔の深さhの比である。図5において孔の深さhを示している。
【0034】
そして、それぞれの孔の深さに対して、左側の棒グラフJは孔の底まで側壁を設けた場合であり、右側の棒グラフKは孔の深さの1/3の長さの側壁を設けた場合の値である。棒グラフJで示すように、孔の深さと同程度の側壁を持たせた場合は先行技術と比べて、孔が深くなるほど電界抑制効果が顕著である。また棒グラフKで示すように、穴の深さの1/3の長さの側壁を設けただけでも先行技術と比較して孔底面の電界を低くすることが可能である。尚図8においては、孔の径は捕獲する金属異物の長さと同じ場合を想定している。
【0035】
金属異物の接地タンク2から受ける反発力により捕獲が困難になる場合があり、従来では孔の深さを捕獲される金属異物の長さと同程度にすると捕獲することは難しく、金属異物の長さ以上の深さにする必要がある。これに対して本発明では、図8に示すように孔の深さをそれほど深くしなくても側壁を設けることにより孔底面の電界を小さくすることができるので、先行技術と比較すると孔の深さが同じであると仮定すると、捕獲効率を5倍以上向上させることが可能となる。
【0036】
尚側壁の長さは上記公知のプレス加工技術により孔の径によらずある程度自由に制御できる。孔の側壁はプレス加工のせん断、曲げ加工により容易であり、図8のKに示すように孔の深さの1/3程度あれば側壁を設けることによる効果は大きい。よって、孔14の側壁の長さは孔13と同等にする必要はない。孔13の側壁の長さは図5に示す通り、接地タンク2との距離を一定とするために、また図8で示したように孔の底面の電界をより低くするために金属異物の長さ以上にする必要がある。図5において、孔13における側壁の長さと孔14における側壁の長さが違っているのは、プレス加工を施した場合、孔13の方が径が大きいのでその分側壁の長さも大きくなるものであり、上述の通り側壁の長さを揃えることも可能である。側壁15の長さは深さhの1/3以上あればよい。
【0037】
実施の形態3.
本実施形態においては、トラップ装置12が内面に絶縁塗装を施された接地タンク2に設置されるようにしたものである。本来絶縁塗装された接地タンク2の内面において挙動している金属異物は、接地タンク2との間で電荷の授受が困難であるのでなかなか挙動が収まることがないといえる。
【0038】
しかし本実施形態においては上記のように構成することにより接地タンク2と電気的に接続されているトラップ装置12において金属異物は電荷を失い、孔13,14に入った金属異物は孔13,14を貫通して絶縁塗装された接地タンク2の内面にたどり着く。そしてこの内面はトラップ装置12により電界は遮断されており金属異物が浮上力を得るような電界は形成されていない。さらには内面は絶縁塗装されているので、接地タンク2からも電荷を供給されることはなく、金属異物は二度と浮上することができない。
【0039】
実施の形態4.
本実施形態においては、金属異物22を捕獲するための孔13の径及び金属異物21を捕獲するための孔14の径をそれぞれ具体的にどのような値に設定するかを規定するものである。金属異物の形状を回転楕円体とした場合、トラップ装置12に設けられた孔14の直径をD1、孔13の直径をD2、金属異物の半径をR、最大長さをLpとした時
2R<D1<Lp、Lp<D2
となるよう孔13,14の大きさを設定する。このように設定することにより、起立した状態で鉛直方向に運動する金属異物21及び回転しながら運動する金属異物22それぞれを捕獲するのに適した孔径とすることで捕獲効率を高めることができる。
【0040】
更にトラップ装置12の接地タンク2内面からの設置高さをhとした場合、
2・Lp<h
になるよう設定するものである。このように設定することにより、金属異物21,22の挙動を抑制するのに充分な低い電界を各孔13,14の中に形成することが可能となるとともに、鉛直方向に運動する金属異物が孔13,14に入った後に接地タンク2の内面に衝突して跳ね返っても確実に捕獲することができる。
【0041】
また、高さhを金属異物の長さLpの2倍以上になるように設定することにより、金属異物が孔13,14の中に入って起立した状態となっても、低い電界中に存在することになり浮上するだけの静電気力を得ることができず確実に捕獲できる。又孔13,14の大きさを上記のような寸法に設定することにより、金属異物を確実に捕獲し、事故が発生しにくいガス絶縁電気装置を提供することができる。
【0042】
実施の形態5.
本実施形態によれば、トラップ装置12の各孔13,14の底であって、接地タンク2の内面に粘着材を塗布したものである。鉛直方向に運動している金属異物は孔13,14の中に入ったとしても、接地タンク2の内面において機械的に反発して孔13,14の外に出て行ってしまうことがあり、トラップ装置12の捕獲性能を低下させている要因となっている。
【0043】
しかし本実施形態においては、孔13,14の中に入ってきた金属異物は底に設けられた粘着材に接触して捕らえられ、反発することがなくなるので、捕獲性能が大幅に向上する。又反発力による跳ね返りをなくすことができるので、トラップ装置12の高さhを小さく構成することができ、導体1と接地タンク2との距離が小さいガス絶縁開閉装置(GIS)に本発明によるトラップ装置12を設置することができる。更に例え粘着材が長年の経年劣化によりその効果を失ったとしても、側壁面で囲まれた電界が低い孔13,14の中に金属異物が存在するので、再び孔13,14の外へ浮上するような力を得ることができない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施の形態1によるガス絶縁電気装置の内部を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるガス絶縁電気装置を示す正面断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるガス絶縁電気装置を示す側面断面図である。
【図4】トラップ装置を示す斜視図である。
【図5】図4のA部における断面図である。
【図6】金属異物の挙動を示すための側面図(a)(b)である。
【図7】金属異物の捕獲効率と金属異物の存在比率との関係を示したグラフである。
【図8】側壁を設けたことによる孔底面の電界抑制効果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1 導体、2 接地タンク、3 絶縁スペーサー、13,14 孔、15 側壁、
16 金属板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが充填された接地タンクと、この接地タンク内に絶縁スペーサーを介して設置された導体とからなるガス絶縁電気装置において、金属異物を捕獲するための大きさの異なった孔が形成されるとともに上記孔から上記接地タンクに向かう方向に側壁が形成された金属板を設け、更に上記金属板を上記接地タンクに対して平行に、かつ電気的に接続したことを特徴とするガス絶縁電気装置。
【請求項2】
上記金属板に対してプレス加工を施すことにより上記孔及び上記側壁を同時に形成したことを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電気装置。
【請求項3】
大きな上記孔に対して設けられた上記側壁の長さは、小さな上記孔に対して設けられた上記側壁の長さよりも大きく構成したことを特徴とする請求項2記載のガス絶縁電気装置。
【請求項4】
内面が絶縁塗装をされた上記接地タンクに対して上記金属板を設置したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項5】
2種類の互いに大きさの異なった上記孔を設けるとともに、小さな上記孔の直径をD1、大きな上記孔の直径をD2、上記接地タンク内に存在する線状の金属異物の最大長さをLp、その半径をRとした場合、2R<D1<Lp<D2となるように設定したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス絶縁電気装置。
【請求項6】
上記金属板の上記接地タンク内面からの高さが上記金属異物の最大長さの2倍以上になるように設定したことを特徴とする請求項5記載のガス絶縁電気装置。
【請求項7】
上記孔の底部であって、上記接地タンクの内面に粘着材を塗布したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガス絶縁電気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−268294(P2009−268294A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116853(P2008−116853)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】