説明

ガラスフィルムの回収装置及び回収方法

【課題】ガラスフィルムの回収作業を安定的に継続可能なガラスフィルム回収装置および回収方法を提供する。
【解決手段】破砕通路10の一端側に存する導入口10aからその通路10内に、不要となったガラスフィルムGbを導入する。そのガラスフィルムGbを破砕通路10内に気流を形成して振動させることにより破砕通路10の内壁に衝突させてガラス片に破砕する。そして、破砕したガラス片を破砕通路10の他端側に存する回収口10bから回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要となったガラスフィルムをガラス片に破砕して回収するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年における映像表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどに代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)が主流となっている。これらのFPDは、軽量化が推進されていることから、当該FPDに使用されるガラス基板は、薄板化の一途を辿っているのが現状である。
【0003】
また、有機ELは、ディスプレイのように微細な三原色をTFTにより明滅させずに、単色(例えば白色)のみで発光させて屋内照明の光源などの平面光源として利用されつつある。この有機ELの照明装置は、ガラス基板が可撓性を有すれば、自由に発光面を変形させることが可能であるから、この照明装置に使用されるガラス基板も十分な可撓性確保の観点から大幅な薄板化が推進されている。
【0004】
更に、ガラス板の薄板化に伴ってこれまで以上にガラス板の利用分野が拡大しており、例えば、太陽電池、Eペーパー、電気部品、医療用器具などの分野においても利用されつつあり、当該分野においても更なるガラス板の薄板化が要請されているのが実情である。
【0005】
そこで、このように薄板化が推進された結果、例えば、特許文献1に開示されているように、200μmまで薄板化が進められたフィルム状の薄板ガラス(以下、フィルム状の薄板ガラスをガラスフィルムという。)が開発されるに至っている。
【0006】
この種のガラスフィルムは、ダウンドロー法やフロート法によって成形されるのが通例とされている。これら2つの成形方法は、溶融ガラスを薄く引き延ばして板状に連続的に成形するものであり、その成形過程で溶融ガラスが所定幅よりも縮まらないように、溶融ガラスの幅方向両端部にローラ(ダウンドロー法ではエッジロールまたはナールホイール、フロート法ではトップロールと称される。)が押し当てられる点で共通している。そのため、これら2つの成形方法によって成形されたガラスフィルムの幅方向両端部には、ローラの接触によって幅方向中央部に比して相対的に厚肉となった耳部と称される部分が形成されてしまう。
【0007】
そこで、例えば、特許文献2には、帯状の板状ガラスの幅方向の端縁部(耳部)を、レーザーによる局部加熱及び冷却装置による冷却に伴って発生する熱応力により連続的に切断して、製品となる製品ガラス部から分割することが開示されている。
【0008】
ところで、上述の耳部などの不要ガラス部は、細かなガラス片に破砕された後に回収される。この際、ガラスフィルムの破砕は、例えば、特許文献3に開示されている破砕装置のように、ガラスフィルムを可動機構(周囲に放射状に粉砕刃を有する粉砕ロール)によって機械的に破砕するのが通例とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−133174号公報
【特許文献2】特開2000−335928号公報
【特許文献3】特開2006−000689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3に開示されているように、可動機構によってガラスフィルムを破砕するようにした場合、可動機構の装置構成が複雑になるため、故障が生じ易い。しかも、仮に、可動機構に故障が生じた場合には、可動機構の修理が完了するまでの間、ガラスフィルムの破砕作業を一時的に停止する必要が生じ、ガラスフィルムの回収処理能力も低下してしまう。
【0011】
以上の実情に鑑み、本発明は、ガラスフィルムの回収作業を安定的に継続可能なガラスフィルム回収装置および回収方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、ガラスフィルムをガラス片に破砕して回収するガラスフィルム回収装置であって、一端側に前記ガラスフィルムを内部に導入するための導入口を有し且つ他端側に前記ガラス片を回収するための回収口を有する破砕通路と、該破砕通路の内壁に前記ガラスフィルムを衝突させて前記ガラス片に破砕するために、前記破砕通路内に気流を形成して前記ガラスフィルムを振動させる気流発生手段とを備えていることに特徴づけられる。
【0013】
このような構成によれば、破砕通路内に導入されたガラスフィルムは、破砕通路内に形成される気流によって強制的に振動(バタツキ)が付与されることで、破砕通路の内壁に繰り返し衝突して、ガラス片に破砕されることになる。したがって、破砕通路内に別途ガラスフィルムを破砕するために機械的な可動機構を配置する必要がなくなるので、装置構成が簡素化され、故障が生じ難くなる。なお、気流発生手段は、例えば、破砕通路内の気体を回収口から吸引する吸引手段、又は破砕通路の導入口から破砕通路内に気体を圧送する送風手段、もしくはこれらを併用することで構成することができる。
【0014】
上記の構成において、前記気流発生手段は、前記破砕通路の導入口から回収口に向かって前記気流を形成するように構成されていることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、破砕通路内でガラスフィルムを破砕する際に生じるガラス粉やガラス片が、導入口から外部空間に飛散する事態をより確実に防止することが可能となる。ここで、破砕通路内の気流は、破砕通路内でガラスフィルムを破砕した際に生じるガラス粉のうち、回収口から導入口へと向かう脱出方向に運動量を持ったガラス粉でも確実に捕捉して回収口へと誘導できる程度の十分な流速であることが好ましい。
【0016】
上記の構成において、前記破砕通路の導入口は、矩形状をなし、且つ、前記ガラスフィルムの表面との間の隙間が、該ガラスフィルムの幅方向端面との間の隙間よりも大きいことが好ましい。
【0017】
このようにすれば、破砕通路の導入口から通路内に流入する気体が、ガラスフィルムの幅方向端面との間の隙間よりも圧力損失の小さいガラスフィルムの表面との間の隙間に優先的に流入する。そのため、ガラスフィルムは、その表面に沿って流入する気体の影響を受けて、破砕通路内で表裏(厚み)方向に振動しながらバタツキ易くなり、破砕通路の内壁への衝突回数が大幅に増大する。したがって、ガラスフィルムが、破砕通路内で効率よく破砕されることになる。
【0018】
上記の構成において、前記破砕通路の内壁に複数の突起が形成されていてもよい。
【0019】
このようにすれば、ガラスフィルムを破砕通路の内壁に衝突させた際に、ガラスフィルムが内壁に形成された複数の突起に衝突し、効率よく破砕される。そして、突起の大きさや数によって、破砕したガラスフィルムのガラス片の大きさをある程度小さく揃えることができるので、過度に大きなガラス片によって破砕通路が途中で閉鎖されるという事態も生じ難く、ガラスフィルムの回収作業を円滑に行うことができる。
【0020】
上記の構成において、前記破砕通路が、導入口と回収口との間で折曲していてもよい。
【0021】
このようにすれば、破砕通路の構成が複雑になるため、導入口からガラスフィルムのガラス片やガラス粉が外部空間に飛散し難くなる。また、破砕通路全体が直線状をなす場合よりも破砕通路内に形成される気流が複雑になるため、気流によるガラスフィルムの振動(バタツキ)がより大きくなる。そのため、ガラスフィルムが破砕通路の内壁に衝突する頻度が増加し、結果としてガラスフィルムの破砕が効率よく行われるようになる。
【0022】
上記の構成において、前記破砕通路は、通路断面積が導入口側から回収口側に向かって漸次縮小する縮径部を有するようにしてもよい。
【0023】
このようにすれば、破砕通路の縮径部において、導入口側から回収口側に近づくに連れて、破砕通路内の気体の流通断面積が減少するため、回収通路内に形成される気流の流速が増加する。そのため、ガラスフィルムが、回収通路の内壁に衝突する頻度が増加するとともに、その衝突の際に生じる衝撃も大きくなる。したがって、ガラスフィルムをより確実に破砕して回収することが可能となる。
【0024】
上記の構成において、前記破砕通路が、導入口から回収口に向かって下方に傾斜していてもよい。
【0025】
このようにすれば、回収通路内で不要ガラス部を破砕する際に生じるガラス片やガラス粉を、回収通路の傾斜に伴って、重力によって吸引口に向けて自動的に移動させることができるため、回収通路内にガラス片等が残存し難くなるという利点を享受できる。
【0026】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、不要となったガラスフィルムをガラス片に破砕して回収するガラスフィルム回収方法であって、破砕通路の一端側に存する導入口からその通路内に前記ガラスフィルムを導入するとともに、該ガラスフィルムを前記破砕通路内に気流を形成して振動させることにより、前記破砕通路の内壁に衝突させて前記ガラス片に破砕し、該ガラス片を前記破砕通路の他端側に存する回収口から回収することに特徴づけられる。
【0027】
このような方法によれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受することができる。
【0028】
上記の方法において、前記気流は、前記破砕通路の導入口から回収口に向かって形成されていてもよい。
【0029】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受し得る。
【発明の効果】
【0030】
以上のように本発明によれば、破砕通路内に導入されたガラスフィルムは、破砕通路内に形成される気流によって強制的に振動(バタツキ)が付与されることで、破砕通路の内壁に繰り返し衝突してガラス片に破砕される。したがって、破砕通路内に別途ガラスフィルムを破砕するために機械的な可動機構を配置する必要がなくなるため、装置構成が簡素化されて故障が生じ難くなる。よって、ガラスフィルムの回収作業を安定的に継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回収装置が組み込まれたガラスフィルムの製造装置及びその製造方法の実施状況を示す概略側面図である。
【図2】図1の切断手段による切断工程の実施状況を示す斜視図である。
【図3】図1の回収装置の破砕通路の縦断面図である。
【図4】図1の回収装置の破砕通路の導入口を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る回収装置の破砕通路の縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る回収装置が組み込まれたガラスフィルムの製造装置及びその製造方法の実施状況を示す概略側面図である。
【図7】図6の切断手段による切断工程の実施状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態においては、FPDや有機EL照明装置或いは太陽電池に使用される厚みが200μm以下のガラスフィルムの製造を対象とする。
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態に係る回収装置が組み込まれたガラスフィルムの製造装置及びその製造方法の実施状況を示す概略側面図である。この製造装置1は、ロール・トゥー・ロール(Roll to Roll)方式で、長尺で且つ幅広のガラスフィルムGを長手方向に連続的に切断して、要求寸法に対応した幅狭のガラスフィルム(製品ガラス部)Gaを製作するものである。
【0034】
詳細には、幅広のガラスフィルムGが巻芯2aの回りにロール状に巻回してなる元ガラスロール2が搬送方向上流端に配置されており、この元ガラスロール2から巻き出された幅広のガラスフィルムGが横姿勢(例えば、水平姿勢)で搬送されながら、その搬送経路上の定位置に配置された切断手段3によって要求寸法に対応した所定幅に連続的に切断される。なお、この実施形態では、元ガラスロール2に含まれるガラスフィルムGの表面側(又は裏面側)には保護シートPが予め重ねられており、元ガラスロール2からガラスフィルムGを巻き出す際に、この保護シートPが保護ロール4として巻き取られながらガラスフィルムGの表面(又は裏面)から引き剥がされる。
【0035】
切断手段3は、図2に示すように、ガラスフィルムGの表面側からレーザービームLを照射して局部加熱を施す局部加熱手段3aと、この局部加熱手段3aにより加熱された加熱領域Hに表面側から冷却水Wを噴射する冷却手段3bとを備えており、次のようにしてガラスフィルムGを切断するようになっている。すなわち、ガラスフィルムGを下流側に搬送することにより、局部加熱手段3aによる加熱領域Hが、冷却手段3bによる冷却領域Cに先立ってガラスフィルムGの切断予定線5上を一端部側から走査されていく。この場合、ガラスフィルムGの長手方向の一端部における切断予定線5上には、図示しない初期亀裂を予め形成しておき、上述の加熱領域Hと冷却領域Cとの走査時に発生する熱応力によって当該初期亀裂を進展させる。これにより、切断予定線5上に表面から裏面に貫通する割断面6が形成され、ガラスフィルムGが切断予定線5に沿って連続的にフルボディ割断される。なお、この実施形態では、局部加熱手段3aとして、レーザーが使用されているが、電熱線や熱風噴射などの他の局部加熱を行い得る手段であってもよい。また、冷却手段3bは、エアー圧等により冷却水Wを冷媒として噴射するものであるが、この冷媒は、冷却水以外の冷却液、またはエアーや不活性ガス等の気体、若しくは気体と液体を混同したもの、さらにはドライアイスや氷などの固体と液体や気体の流体とを混合したもの等であってもよい。
【0036】
このように構成された切断手段3によって幅広のガラスフィルムGを切断することで、要求寸法に対応した所定幅の製品ガラス部Gaが採取されるとともに、当該製品ガラス部Gaを採取した後に残る不要ガラス部Gbが廃棄処分される。なお、この実施形態では、切断手段3が、幅広のガラスフィルムGの幅方向に間隔を置いて2つ配置されており、幅広のガラスフィルムGが、2つの製品ガラス部Gaと、1つの不要ガラス部Gbとに分割されるが、切断手段3の数や配置間隔は適宜変更することができる。例えば、幅広のガラスフィルムGの幅方向両端面には、その幅広のガラスフィルムGの巻き取り作業時、保管時、巻き出し作業時等において他部材と接触して破損原因となり得る微小傷が生じているおそれがある。そのため、幅広のガラスフィルムGの幅方向端面を含む幅方向両端部を切断手段3でそれぞれ切断し、幅広のガラスフィルムGの幅方向両端部を不要ガラス部Gbとして回収するようにしてもよい。
【0037】
そして、製品ガラス部Gaは、図1に示すように、幅広のガラスフィルムGと同様の横姿勢のまま搬送された後、それぞれの製品ガラス部Ga毎に軌道を僅かに離間させた状態で、搬送方向の下流端に配置された巻芯7aの回りにロール状に巻回され、ガラスロール7の状態で再び収容される。なお、この実施形態では、ガラスロール7の近傍に配置された保護ロール8から引き出された保護シートPが、それぞれの製品ガラス部Gaの表面側(又は裏面側)に重ねられた状態で巻芯7aの回りにロール状に巻き取られる。
【0038】
一方、不要ガラス部Gbは、製品ガラス部Gaの搬送軌道から下方に離間するように折曲された後、回収装置9へと供給される。この回収装置9は、不要ガラス部Gbを破砕するための空間を構成する破砕通路10と、破砕通路10内で破砕された不要ガラス部Gbを吸引する吸引手段11とを備えている。
【0039】
詳細には、破砕通路10は、図3に示すように、不要ガラス部Gbを導入するための導入口10aを一端側に有するとともに、吸引手段11に接続された回収口10bを他端側に有し、これら導入口10aから回収口10bに至るまでの通路構成壁が閉塞されている。そのため、破砕通路10の内部空間が、通路構成壁を介して、製品ガラス部Gaが存在する外部空間と遮断又は略遮断されている。
【0040】
また、吸引手段11は、回収口10bから破砕通路10内の気体(空気)を吸引するようになっている。そして、この吸引手段11による気体の吸引に伴って、破砕通路10内の気圧が負圧となって、外部空間の気体が導入口10aから破砕通路10内へと引き込まれ、導入口10aから回収口10bに向かって破砕通路10内を流れる気流が形成される。その結果、破砕通路10内に導入された不要ガラス部Gbは、破砕通路10の中程において、前記気流の影響を受けて厚み方向に振動(バタツキ)し、破砕通路10の内壁に衝突する。この衝突によって、連続する不要ガラス部Gbが破砕され、ガラス粉を伴いながら相対的に大きなガラス片に分割される。すなわち、前記気流が、破砕通路10内で不要ガラス部Gbを破砕する破砕手段として機能する。なお、破砕通路10の導入口10aにおける気体の平均流速は10m/s以上であることが好ましい。
【0041】
ここで、破砕通路10の導入口10aは、図4に示すように、矩形状を呈しており、導入口10aから破砕通路10内に導入された不要ガラス部Gbとの間に隙間が形成されるようになっている。具体的には、破砕通路10の導入口10aと不要ガラス部Gbの表面との間の隙間の寸法aが、破砕通路10の導入口10aと不要ガラス部Gbの幅方向端面との間の隙間の寸法bよりも大きくなっている。これにより、導入口10aから破砕通路10内に流入する外部空間の気体が、不要ガラス部Gbの幅方向端面との間の隙間よりも圧力損失の小さい不要ガラス部Gbの表面との間の隙間に優先的に流入する。そのため、不要ガラス部Gbの表面に沿って流入する気体の影響を受けて、不要ガラス部Gbに振動が生じ易くなり、不要ガラスGbが破砕通路10の内壁に衝突して破砕される頻度が増加する。
【0042】
そして、このように発生したガラス粉とガラス片は、吸引手段11による吸引に伴って発生する気流によって、破砕通路10の回収口10b側へと順次移送される。この際、相対的に大きなガラス片は、破砕通路10の内壁との衝突を繰り返して、相対的に小さなガラス片に更に細分化される。
【0043】
また、この実施形態では、斜め下方に傾斜した状態で直線状に延びる破砕通路10が、回収口10bの直前において下方に略直角に折曲されている。そのため、破砕通路10内の気体は、破砕通路10の折曲部において流路を略直角に変更するが、破砕通路10内に形成される気流によって、破砕通路10の直線部を移動するガラス片は、慣性のためにそのまま直進し、破砕通路10の折曲部奥の内壁に衝突し、より小さなガラス片に粉砕される。
【0044】
更に、破砕通路10は、回収口10bの直前において、導入口10a側から回収口10bに向かって流路断面積が漸次縮径している。そのため、破砕通路10の当該縮径部において、回収口10bに近づくに連れて気流の流速が増す結果、ガラス片が破砕通路10の内壁に衝突した際に生じる衝突エネルギーも大きくなってガラス片が更に細かく粉砕されるとともに、その粉砕されたガラス片が回収口10bへと効率よく吸引される。
【0045】
このように不要ガラス部Gbを破砕及び粉砕して得られる小さなガラス片は、厚み200μm以下のガラスフィルムGに由来するものであるので、破砕通路10内の流路が多少複雑であっても、確実に気流とともに回収口10bまで移送され、気体中に浮遊するガラス粉と一緒に吸引手段11に吸引される。
【0046】
以上のようにすれば、ガラスフィルムGの不要ガラス部Gbは、破砕通路10内に形成される気流によって強制的に振動(バタツキ)が付与されることで、破砕通路10の内壁に繰り返し衝突してガラス片に破砕される。したがって、破砕通路10内に不要ガラス部Gbを破砕するために機械的な可動機構を配置する必要がなくなるため、装置構成が簡素化されて故障が生じ難くなる。よって、不要ガラス部Gbの回収作業を安定的に継続することが可能となる。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態に係るガラスフィルムの製造装置及びその製造方法の実施状況の要部を示す概略側面図である。この第2実施形態が、上述の第1実施形態と相違するところは、回収装置9の破砕通路10内に複数の突起12を設けた点にある。ここで、突起12は、この実施形態では尖塔状の円錐をなすが、その形状は特に限定されるものではない。例えば、突起12は、四角柱や円柱などであってもよいし、三角錘や四角錘などの多角錘などであってもよい。
【0048】
このようにすれば、不要ガラス部Gbを破砕通路10の内壁に衝突させた際に、不要ガラス部Gbが内壁に形成された複数の突起12に衝突し、効率よく破砕される。しかも、突起12の形状・大きさ・数などによって、破砕した不要ガラス部Gbのガラス片の大きさをある程度小さく揃えることができるので、過度に大きなガラス片によって破砕通路10が途中で閉鎖されるという事態も生じ難く、不要ガラス部Gbの回収作業を円滑に行うことができる。
【0049】
なお、不要ガラス部Gbの振動は、気流の流速や不要ガラス部Gbの厚みなどにより変化するが、例えば、気流の平均流速が約10m/sで、厚みが100μmの不要ガラス部Gbであれば、導入口10aから100mmの位置付近で振動が始まるので、突起12はこの振動開始位置付近、一般化すれば、導入口10aから不要ガラス部Gbの厚みの1000倍以上離間した位置に配置されていることが好ましい。
【0050】
図6は、本発明の第3実施形態に係るガラスフィルムの製造装置及びその製造方法の実施状況を示す概略側面図である。この第3実施形態が、上述の第1〜2実施形態と相違するところは、切断手段3によって切断分離する対象のガラスフィルムGが、オーバーフローダウンドロー法を実施するための成形体13に連続している点にある。
【0051】
詳細には、成形体13に溶融ガラスGmを供給すると共に、その溶融ガラスGmを成形体13から溢流させながら流下させつつ、溶融ガラスGmを引き伸ばしてガラスフィルムGを製造する。このガラスフィルムGは、複数本のローラ14にガイドされながら、垂直姿勢から水平姿勢に姿勢を変更された後、切断手段3によって製品ガラス部Gaと、不要ガラス部Gbとに切断分離される。
【0052】
ここで、成形体13の直下に配置された最上部のローラ14は、エッジロールと称されるローラであって、成形体13から流下させたガラスフィルムGの幅方向両端部を表裏両側から挟持して、ガラスフィルムGの幅方向に張力を付与して幅方向の収縮を防止する役割を果たしている。その結果、ガラスフィルムの幅方向両端部には、ローラの接触によって幅方向中央部に比して相対的に厚肉となった耳部と称される部分が形成されるため、図7に示すように、ガラスフィルムGの幅方向両端部に形成される耳部を不要ガラス部Gbとして切断手段3によって切断すると共に、回収装置9によって耳部を含む不要ガラス部Gbを回収して廃棄処分するようになっている。
【0053】
一方、この実施形態では、耳部を除外したガラスフィルムGの幅方向中央部を製品ガラス部Gaとして、保護ロール8から引き出した保護シートPと重ねた状態で巻芯7aの回りにロール状に巻回することにより、ガラスロール7の状態で回収される。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態において実施することができる。例えば、上記の実施形態では、不要となったガラスフィルムGbを、製品となるガラスフィルムGaの製造工程においてオンラインで破砕して回収する場合を説明したが、不要となったガラスフィルムGbを所定の場所に集めておき、オフラインで破砕して回収するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ガラスフィルム製造装置
2 元ガラスロール
2a 巻芯
3 切断手段
3a 局部加熱手段
3b 冷却手段
7 ガラスロール
8 保護ロール
9 回収装置
10 破砕通路
10a 導入口
10b 回収口
10c 進入口
11 吸引手段
12 突起
13 成形体
14 ローラ
G ガラスフィルム
Ga 製品ガラス部
Gb 不要ガラス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムをガラス片に破砕して回収するガラスフィルム回収装置であって、
一端側に前記ガラスフィルムを内部に導入するための導入口を有し且つ他端側に前記ガラス片を回収するための回収口を有する破砕通路と、該破砕通路の内壁に前記ガラスフィルムを衝突させて前記ガラス片に破砕するために、前記破砕通路内に気流を形成して前記ガラスフィルムを振動させる気流発生手段とを備えていることを特徴とするガラスフィルム回収装置。
【請求項2】
前記気流発生手段は、前記破砕通路の導入口から回収口に向かって前記気流を形成することを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルム回収装置。
【請求項3】
前記破砕通路の導入口は、矩形状をなし、且つ、前記ガラスフィルムの表面との間の隙間が、該ガラスフィルムの幅方向端面との間の隙間よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のガラスフィルム回収装置。
【請求項4】
前記破砕通路の内壁に複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスフィルム回収装置。
【請求項5】
前記破砕通路が、導入口と回収口との間で折曲していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラスフィルム回収装置。
【請求項6】
前記破砕通路は、通路断面積が導入口側から回収口側に向かって漸次縮小する縮径部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラスフィルム回収装置。
【請求項7】
前記破砕通路が、導入口から回収口に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラスフィルム回収装置。
【請求項8】
ガラスフィルムをガラス片に破砕して回収するガラスフィルム回収方法であって、
破砕通路の一端側に存する導入口からその通路内に前記ガラスフィルムを導入するとともに、該ガラスフィルムを前記破砕通路内に気流を形成して振動させることにより、前記破砕通路の内壁に衝突させて前記ガラス片に破砕し、該ガラス片を前記破砕通路の他端側に存する回収口から回収することを特徴とするガラスフィルム回収方法。
【請求項9】
前記気流は、前記破砕通路の導入口から回収口に向かって形成されることを特徴とする請求項8に記載のガラスフィルム回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−240291(P2011−240291A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116449(P2010−116449)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】