説明

ガラスブロックパネル用補強力骨

【課題】 パネル工法において各ガラスブロックの間に目地充填材を容易に供給することができ、しかもガラスブロックパネルの耐圧強度の向上を図ることが可能なガラスブロックパネル用補強力骨を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 図1、2の補強力骨10は、平行に位置する2本の補強筋10a、10bと、これらの補強筋10a、10bを連結するための丸棒状のつなぎ筋10c(径6mm)からなる。各補強筋10a、10bは、平板形状を有し、その横断面の縦寸法は、12mm、横寸法は25mmであり、各補強筋10a、10bとつなぎ筋10cは、SUS304から形成され、溶接によって接合されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガラスブロックパネル用補強力骨に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より複数個のガラスブロックからなるガラスブロックパネルは、建築物の壁部材として広く用いられている。
【0003】通常、ガラスブロックパネルを施工する場合、作業者が躯体とガラスブロックパネルとの取付部に用いる金属枠に緩衝材等を取り付け、縦力骨を金属枠等に支持させるためのアンカーピース等を配筋固定した後、ガラスブロック単体を1個ずつ積み上げた後、横力骨及びアンカーピースを配筋している。
【0004】かかる施工方法を採用した場合、ガラスブロックを1個づつ積み上げていくので、多大の時間と労力を要し、作業性が悪く、また作業者の技能の違いにより均一に仕上がらない場合がある。更に目地充填材としてモルタル等を充填するための水の使用を伴う湿式作業の大部分が施工現場で行われるため汚染等の問題も発生する。
【0005】そこで、かかる問題に対処するため、躯体の開口部の寸法に適応した形状のガラスブロックパネルを前もって作製しておき、施工現場においては、ガラスブロックパネルの取付作業のみを行うパネル工法が提案されている。
【0006】かかるパネル工法では、水平定盤上において、壁の開口部の寸法に適応したパネルフレーム内に補強力骨を縦横方向に配設し、補強力骨で仕切られたパネルフレーム内にガラスブロックを整列配置して嵌装し、各ガラスブロック間及びガラスブロックとパネルフレームとの間にモルタル等の目地充填材を充填することによってガラスブロックパネルが作製される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記補強力骨は、風圧や地震によってガラスブロックパネルが受ける力を金属枠や躯体に伝える働きを有するものであり、通常は丸状の断面形状を有している。
【0008】しかしながらパネル工法において、このような丸棒状の補強力骨を使用すると、ガラスブロック間に目地充填材を充填する際、補強力骨が充填の妨げとなり、目地充填材を上方から供給するだけでは、水平状態にある補強力骨の裏側(補強力骨から見て目地充填材が供給される側とは反対側)にまで目地充填材が周り込まず、空隙が生じるため、不完全な充填状態となり、その結果、ガラスブロックパネルに所定の強度を付与できなくなることがあった。
【0009】そのため目地充填材の充填時に、上記のように空隙部を発生させないように、作業者が各補強力骨の裏側を棒材等で突きながら充填作業を行う必要があるが、このような作業は、手間がかかるばかりでなく、充填箇所を棒材等で突く際にガラスブロックを傷付けたりするという問題を引き起こす。
【0010】また近年、大面積のガラスブロックパネルの開発が行われ、パネルの厚み方向に対する耐圧強度を向上することが要求されている。このようなパネルの耐圧強度を向上するためには、補強力骨の径を大きくすれば良いが、この径を大きくすると、ますます充填材が充填し難くなる。しかも補強力骨の径を大きくすると、パネルの目地幅も大きくしなければならないが、目地幅を大きくするほど、目地充填材が固化した後にクラックが入りやすくなるため好ましくない。
【0011】このような事情から本出願人は、特開平9−4128号において、帯状の補強力骨を提案している。
【0012】この帯状の補強力骨を使用すると、補強力骨の幅面が、ガラスブロックの厚み方向と平行に配設されることになるため、ガラスブロックパネルの作製時、モルタル等の目地充填材を充填する際、充填方向に対する補強力骨の厚みが薄いため、目地充填材が流れ易く、補強力骨の周囲に空隙を生じさせることなく充填することが可能である。
【0013】しかしながら、このような帯状の補強力骨は肉厚が極端に薄いため、従来の丸棒状の補強力骨を用いた場合に比べて、パネルの耐圧強度を大幅に向上することは困難であり、大面積のパネルには適用できない。
【0014】本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、パネル工法において各ガラスブロックの間に目地充填材を容易に供給することができ、しかもガラスブロックパネルの耐圧強度の向上を図ることが可能なガラスブロックパネル用補強力骨を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明のガラスブロックパネル用補強力骨は、平行に位置する2本の補強筋と、これらの補強筋を連結するためのつなぎ筋からなる梯子状の補強力骨であって、前記補強筋は、平板形状を有し、その横断面の縦横比が、1対1.5〜3であることを特徴とする。
【0016】
【作用】本発明のガラスブロックパネル用補強力骨は、平行に位置する2本の補強筋と、これらの補強筋を連結するためのつなぎ筋からなる梯子状の補強力骨であるため、1本の補強筋を使用する場合に比べて、目地充填材に定着しやすく、風圧や地震によってガラスブロックパネルに力を受けても、補強力骨がモルタル中で動くことはない。
【0017】しかも補強力骨を構成する2本の補強筋は、平板形状を有し、その横断面の縦横比が1対1.5〜3であるため、ガラスブロックパネルの耐圧強度を低下させることなく、目地充填材を容易に充填することが可能となる。
【0018】すなわち本発明者の知見によると、補強力骨の強度は、主に断面積によって決定されるが、本発明における補強筋の断面積を、丸棒筋と同じ断面積としても厚みが薄くなるため、強度を低下させることなく、目地充填材の充填性を向上することが可能となる。
【0019】本発明における補強筋の横断面の縦横比が1対1.5以下になると、丸棒筋を使用した場合に比べて、目地充填材の充填性や強度の著しい向上が図れず、逆に1対3以上になると、ガラスブロックパネルに収まらず、梯子状の補強力骨としては使用できなくなる。
【0020】補強筋の具体的な横断面の寸法としては、縦5〜16mm、横12〜30mmが適当である。
【0021】
【実施例】以下、本発明のガラスブロックパネル用補強力骨を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0022】図1は、本発明の補強力骨を示す平面図、図2は、図1の補強力骨の側面図、図3は、本発明の補強力骨を縦力骨として使用したガラスブロックパネルを示す正面図、図4は、図3のA−A線に沿うガラスブロックパネルの縦断面図である。
【0023】図1、2の補強力骨10は、平行に位置する2本の補強筋10a、10bと、これらの補強筋10a、10bを連結するための丸棒状のつなぎ筋10c(径6mm)からなる。各補強筋10a、10bは、平板形状を有し、その横断面の縦寸法は、12mm、横寸法は25mmであり、各補強筋10a、10bとつなぎ筋10cは、SUS304から形成され、溶接によって接合されている。
【0024】また図3、4のガラスブロックパネルには、縦力骨として図1、2の補強力骨10が使用され、横力骨として丸棒状の補強力骨11(径9mm)が使用され、これらの補強力骨10、11によって仕切られたパネルフレーム12の内側に、横方向に7個、縦方向に21個、合計147個のガラスブロック13が整列配置されている。各ガラスブロック13の間及びガラスブロック13とパネルフレーム12の間には、モルタルからなる目地充填材14が充填され、各ガラスブロック13の間の目地部には、防水剤含有の化粧目地15が充填されている。
【0025】このようなガラスブロックパネルを作製する場合、まず図示しない化粧目地成形用の定形ゴムを、各ガラスブロック13の配置寸法に適合した所定の間隔で配置固定してなる水平定盤を準備し、その上に、補強力骨10、11が配設されたパネルフレーム12を積み重ねる。
【0026】次に補強力骨10、11によって仕切られたパネルフレーム12の内側にガラスブロック13を整列配置状態で嵌装し、各ガラスブロック13の間に目地充填材14を充填する。この場合、各ガラスブロック13の縦力骨として使用されている補強力骨10の補強筋10a、10bは、横断面の縦寸法が12mm、横寸法が25mmの平板形状を有し、その幅面がガラスブロック13の厚み方向と平行に配設されていることにより、同等の強度を有する丸棒の補強力骨に比べて目地充填材14の充填方向に対する補強力骨10の厚みを薄くすることができるため、目地充填材14が流れ易く、目地充填材14を各ガラスブロック13の間に供給するだけで、特別な作業を要せずして補強力骨14の周囲に空隙を生じさせない良好な充填状態が得られる。このように目地充填材14を充填し、固化した後、水平定盤から脱型し、化粧目地15を充填することにより、ガラスブロックパネルが作製される。
【0027】こうして作製されたガラスブロックパネルを、木造建築物の開口部に取り付ける際には、下記の順序に従って組み立て作業を実行する。
【0028】まずガラスブロックパネルを取り付ける躯体の開口部の上下に、パネル受け金物を固定する。ガラスブロックパネルの上下に取り付け金物を固定して開口部へ運び、パネル受け金物と取り付け金物をボルト留めして両者を締結することにより、ガラスブロックパネルを躯体の開口部に固着する。
【0029】その後、ガラスブロックパネルと躯体の開口部との隙間に不定形シール材からなる化粧目地を充填することによって、躯体の開口部へのガラスブロックパネルの取り付け作業を終了する。
【0030】
【発明の効果】以上のように本発明のガラスブロックパネル用補強力骨を使用すると、パネル工法において各ガラスブロックの間に目地充填材を容易に充填でき、しかもガラスブロックパネルの耐圧強度の向上を図ることが可能であるため、特に大型のガラスブロックパネルの補強力骨として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガラスブロックパネル用補強力骨を示す平面図である。
【図2】図1の補強力骨の側面図である。
【図3】本発明の補強力骨を使用したガラスブロックパネルを示す正面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う拡大縦断面図である。
【符号の説明】
10 補強力骨
10a、10b 補強筋
10c つなぎ筋
11 丸棒状の補強力骨
12 パネルフレーム
13 ガラスブロック
14 目地充填材
15 化粧目地

【特許請求の範囲】
【請求項1】 平行に位置する2本の補強筋と、これらの補強筋を連結するためのつなぎ筋からなる梯子状の補強力骨であって、前記補強筋は、平板形状を有し、その横断面の縦横比が、1対1.5〜3であることを特徴とするガラスブロックパネル用補強力骨。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平11−181956
【公開日】平成11年(1999)7月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−365579
【出願日】平成9年(1997)12月22日
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)