説明

ガラスブロック集合体、ガラスブロック集合体の施工方法、及びガラスブロック集合体の補修方法

【課題】建築物の躯体に用いられるガラスブロック集合体の利用範囲の自由度を制限することなく、十分な強度を備えるガラスブロック集合体、当該ガラスブロック集合体の施工方法、及び当該ガラスブロック集合体の補修方法を提供する。
【解決手段】複数のガラスブロック1を積層してなるガラスブロック集合体10であって、複数のガラスブロック1はモルタル15を介して接合されており、モルタル15に接着剤を浸透させてある。また、モルタル15が露出する領域であるガラスブロック1間の目地部14に接着剤を浸透させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のガラスブロックを積層してなるガラスブロック集合体、ガラスブロック集合体の施工方法、及びガラスブロック集合体の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のガラスブロックを積層したガラスブロック集合体は、商業施設、公共施設、大型オフィスビル、あるいは住宅建物等の採光性や意匠性を高めるため、外壁や内壁、又は屋内の間仕切り等に広く使用されている。
【0003】
一般的な塀や建物壁面の構築には、コンクリートブロックが用いられており、そのコンクリートブロックの内部には、上下に貫通する縦孔が形成されている。コンクリートブロックを用いた施工法としては、コンクリートブロックの縦孔に力骨を挿入した後、その縦孔にモルタルを充填して、コンクリートブロックを積層している。これにより、コンクリートブロック、力骨、及びモルタルが一体化し、コンクリートブロック壁面は、建築物としての強度を維持している。
【0004】
これに対して、ガラスブロックは、一対の有底無蓋の箱型形状を備えるガラス成形体を、互いの開放端縁で熔着一体化して作製されている。従って、ガラスブロックは、表裏面の双方に透光面を備える中空の建築材料となる。つまり、ガラスブロックには、コンクリートブロックと異なり、力骨を挿入するための縦孔が存在しない。従って、ガラスブロックの施工では、コンクリートブロックのように、力骨及びモルタルを用いてガラスブロック同士を一体化することはできない。このようなガラスブロックをモルタルを介して積層したガラスブロック集合体は、風圧、地震等により面外力を受けた場合、外部からの圧縮力に耐えることはできるが、引張力に対して構造体を維持することができるほどの強度を有していない。
【0005】
そこで、ガラスブロックを積層する際に、ガラスブロック集合体の横方向及び縦方向の目地部となる部分に、力骨を配筋した後、そのガラスブロック間の目地部にモルタルを充填している。これにより、ガラスブロック、力骨、及びモルタルが一体化し、ガラスブロック集合体は所定の強度を備えることになる。しかし、ガラスブロック集合体の目地幅は、その意匠性もあり、通常10mm幅と非常に狭いものとなっている。この様なガラスブロック集合体を建築現場で施工する場合、この目地部内に、力骨を配筋してからモルタルを充填する必要があり、モルタルの充填作業は非常に難しいものとなる。従って、施工者の熟練の度合いによっては、モルタルの充填が不十分となる場合がある。この場合、施工された力骨、モルタル及びガラスブロックが一体となっていないため、ガラスブロック集合体が地震や台風等により面外力を受けると、ガラスブロックの破損、目地クラックの発生、漏水等の不具合が生じるおそれがある。
【0006】
このような問題に対して、特許文献1及び2では、所定強度を備えるガラスブロック集合体を確実に施工するために、施工場所に適応した形状のガラスブロック集合体を予め作製している。そして、施工場所においては、ガラスブロック集合体の取り付け作業のみを行うことにより、確実にガラスブロック集合体の所定強度を得るとともに、施工作業が容易なガラスブロック集合体を実現している。
また、特許文献3では、ガラスブロック壁、ガラスブロック壁の施工方法、及びガラスブロック壁の補修方法が開示されている。同文献によれば、モルタルに埋設された力骨の代わりに、モルタルの目地部表面に引張抵抗材を配設したガラスブロック壁面構造、引張抵抗剤を採用したガラスブロック壁の施工方法、及び引張抵抗剤を採用したガラスブロック壁の補修方法を開示しており、施工場所においてガラスブロック壁を作製する場合でも、モルタルを容易に充填することができるガラスブロック壁、並びにその施工方法及びその補修方法を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−230899号公報
【特許文献2】特開平9−004128号公報
【特許文献3】特開2010−216227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載されるように、予め作製したガラスブロック集合体を施工現場で用いる場合には、ガラスブロック集合体を支えるための枠体が必要となる。しかしながら、この枠体を用いることにより、ガラスブロック集合体の形状の自由度が限定されることとなる。従って、特許文献1及び2に記載されるガラスブロック集合体は、建築物の躯体の様々な開口部の形状に対応することが困難となり、その用途や適用範囲が制約される。また、その用途や適用範囲を広げるために建築物の躯体の開口部の形状に合わせた枠体を個別に作製すると、ガラス集合体の作製工程を増加させることとなり、ひいては製造コストの上昇につながる。
【0009】
特許文献3に記載されるように、ガラスブロック壁のモルタル中に埋設された力骨に代わって、モルタルの目地部表面に引張抵抗材を配設した場合、目地部の表面部分は、引張抵抗材により補強することができる。しかしながら、引張抵抗材は、目地部を構成するモルタルと、ガラスブロックとを一体化させているわけではないため、地震や台風等により面外力を受けた場合、目地の内部にクラックや、破損が発生するおそれがある。
また、引張抵抗材を用いたガラスブロック壁の補修法では、生じた破損を補修する際に、引張抵抗材を剥がし、充填材等で補強後、再度引張抵抗材でモルタル表面を被覆する作業が必要となり、補修作業の工程が複雑なものとなる。さらに、補修作業に引張抵抗材を用いた場合、引張抵抗材を設置した目地部表面を補強することはできるが、目地部内部に生じた破損や、クラックを完全に補強することはできない。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、建築物の躯体に用いられるガラスブロック集合体の利用範囲の自由度を制限することなく、十分な強度を備えたガラスブロック集合体を提供することを目的とするとともに、建築現場で容易に施工可能なガラスブロック集合体の施工方法を提供することを目的とする。さらに、ガラスブロック集合体に十分な強度を容易に与えることができるガラスブロック集合体の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係るガラスブロック集合体の特徴構成は、
複数のガラスブロックを積層してなるガラスブロック集合体であって、
前記複数のガラスブロックはモルタルを介して接合されており、前記モルタルに接着剤を浸透させることにある。
【0012】
上記課題で説明したように、従来のガラスブロック集合体は、地震や台風等によって受ける面外力に対して十分な強度を備えていなかった。この点、本構成のガラスブロック集合体は、ガラスブロックを接合するモルタルに接着剤を浸透させてあるため、面外力に対して十分な強度を発現させることができる。また、モルタルの充填が十分でなかったとしても、モルタルの空隙を接着剤で満たすことができるので、モルタルとガラスブロックとを一体化することが可能となる。ガラスブロック集合体を建築現場で施工する場合には、既製の枠体を必要としないため、用途や適用範囲が限定されることもない。さらに、本構成のガラスブロック集合体は、施工が容易なため、施工場所及び施工者の熟練度に左右されることなく、所定の強度を容易に得ることができる。
【0013】
本発明に係るガラスブロック集合体において、
前記モルタルが露出する領域であるガラスブロック間の目地部に前記接着剤を浸透させてあることが好ましい。
【0014】
本構成のガラスブロック集合体は、モルタルが露出する領域であるガラスブロック間の目地部に接着剤を浸透させることにより、ガラスブロックの積層後であってもガラスブロック同士をより強固に一体化させることができる。なお、目地部に化粧目地モルタル等の化粧目地材を用いることにより、外観上の美観を容易に整えることができる。
【0015】
本発明に係るガラスブロック集合体において、
前記接着剤は、200〜1000Pa・sの粘度を有することが好ましい。
【0016】
ガラスブロック集合体に用いられる接着剤としては、目地部を構成するモルタル全体に容易に浸透可能な接着剤を選択する必要がある。
この点、本発明に用いられる接着剤は、その粘度が200〜1000Pa・sであることから、多孔質であるモルタルの内部全体に容易に浸透することが可能である。これにより、モルタルとガラスブロックとを強固に一体化させることが可能となる。従って、本構成のガラスブロック集合体は、地震や風圧力等の面外力を受けた場合でも、その圧縮力と引張力に対して、さらに高い抵抗性を備える。
【0017】
本発明に係るガラスブロック集合体において、
前記接着剤は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含有する合成樹脂系接着剤であることが好ましい。
【0018】
ガラスブロック集合体に用いられる接着剤としては、ガラスブロックとモルタルとの接着力を強化して、ガラスブロック集合体が地震や風圧力等の面外力を受けた場合にも圧縮力及び引張力に耐えることが可能となる接着剤を選択する必要がある。
この点、本発明に用いられる接着剤は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含有する合成樹脂系接着剤であることから、ガラスブロックとモルタルとを強固に接着することができ、ガラスブロック集合体が面外力を受けた場合の圧縮力及び引張力に耐えることを可能にする。これにより、本構成のガラスブロック集合体は、風圧力等の面外力を受けた時の圧縮力と引張力に対して、さらに高い抵抗性を備える。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係るガラスブロック集合体の施工方法の特徴構成は、
複数のガラスブロックを積層してなるガラスブロック集合体の施工方法であって、
複数のガラスブロックを、モルタルを介して積層する積層工程と、
前記モルタルが露出する領域であるガラスブロック間の目地部に接着剤を注入する注入工程と、
を包含することにある。
【0020】
本構成のガラスブロック集合体の施工方法であれば、複数のガラスブロックがモルタルを介して積層され、目地部を構成するモルタルに接着剤が注入されることから、ガラスブロックの積層後であってもガラスブロック同士をより強固に一体化させることができる。また、施工者の熟練度が低く、モルタルが十分に充填されていない場合でも、モルタルの空隙に接着剤を注入することができるため、モルタルとガラスブロックとを一体化することが可能となる。また、本構成のガラスブロック集合体の施工方法は、施工が容易なため、施工場所及び施工者の熟練度に左右されることなく、所定の強度を容易に得ることができる。さらに、施工の作業性が改善されるため、工期の短縮につながり、ひいては施工コストを下げることができる。
【0021】
本発明に係るガラスブロック集合体の施工方法において、
前記注入工程は、最上段に位置するガラスブロック間の目地部に対して実行されることが好ましい。
【0022】
本構成のガラスブロック集合体の施工方法では、接着剤が、最上段に位置するガラスブロック間の目地部から注入される。注入された接着剤は、重力及び浸透によって徐々にモルタル全体に行き渡る。従って、施工場所及び施工者の熟練度に左右されることなく、接着剤を容易且つ確実にモルタル全体に浸透させることが可能となる。さらに、本構成のガラスブロック集合体の施工方法は、施工場所及び施工者の熟練度に左右されることがないので、大幅な工期の短縮につながり、ひいては施工コストをさらに下げることが可能となる。
【0023】
本発明に係るガラスブロック集合体の補修方法の特徴構成は、
複数のガラスブロックを積層してなるガラスブロック集合体の補修方法であって、
モルタルが露出する領域であるガラスブロック間の目地部、又は当該目地部を被覆する化粧目地材に対して接着剤を注入する注入工程を包含することにある。
【0024】
本構成のガラスブロック集合体の補修方法であれば、モルタルが露出する領域であるガラスブロック間の目地部、又は当該目地部を被覆する化粧目地材に対して接着剤を注入することから、従来のガラスブロック集合体を容易に補修することができ、さらにガラスブロック集合体の強度も高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明に用いるガラスブロックを示し、(A)はガラスブロックの斜視図であり、(B)はガラスブロックの側面断面図である。
【図2】図2は、本発明に係るガラスブロック集合体の壁面構造を示し、(A)はガラスブロック集合体の壁面構造の正面図であり、(B)は(A)の要部を拡大した部分切欠斜視図である。
【図3】図3は、本発明に係るガラスブロック集合体の補修方法に用いられるガラスブロック集合体の部分切欠斜視図である。
【図4】図4は、ガラスブロック集合体の破損部分の要部拡大断面図であり、(A)は化粧目地及びモルタルの破損部分を示した断面図であり、(B)は化粧目地を剥離後のモルタルの破損部分を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るガラスブロック集合体、ガラスブロック集合体の施工方法及びガラスブロック集合体の補修方法に関する実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0027】
<ガラスブロック集合体>
図1は、本発明に用いるガラスブロック1を示す説明図である。(A)はガラスブロック1の斜視図であり、(B)はガラスブロック1の側面断面図である。ガラスブロック集合体は、建築用のガラスブロック1を複数個用いて構成される。ガラスブロック1は、一対の有底無蓋の箱型形状のガラス成形体2で構成されている。ガラス成形体2は、底部に透光面3と、透光面3を囲む額縁4と、開放端縁5とを備えている。ガラスブロック1は、互いのガラス成形体2の開放端縁5を、熔着により一体化して作製されている。従って、ガラスブロック1は、表裏面の双方に、額縁4に囲まれた透光面3a、3bを備えており、その内部は中空構造となっている。ガラスブロック1は、その高さ方向又は幅方向において、ガラス成形体2の壁面を構成する透光面3から額縁4に到る部分が最も厚く、額縁4から開放端縁5の熔着部6に向かって薄くなっている。
【0028】
ガラスブロック1の大きさは、145mm×145mm×95mm、又は190mm×190mm×95mm(高さ×幅×厚み)等が一般的であるが、様々な大きさ及び形状のガラスブロック1が販売されている。
【0029】
図2は、本発明に係るガラスブロック集合体10の壁面構造の説明図である。(A)はガラスブロック集合体10の壁面構造の正面図である。(B)は(A)の要部を拡大した部分切欠斜視図であり、最下層部分を示してある。詳細は後述の「ガラスブロック集合体の施工方法」で説明するが、ガラスブロック集合体10は、複数のガラスブロック1をモルタル15を介して接合したものである。本発明は、モルタル15に接着剤を浸透させたことに特徴がある。接着剤は、モルタルに染み込んだ状態で存在するため、図には表れていない。ガラスブロック集合体10は、ガラスブロック1を設置場所にそのまま積層するか、あるいはガラスブロック1を枠体11に組み込んで積層することができる。ガラスブロック集合体10の壁面構造において、枠体11は必須ではないが、本実施形態では、枠体11に組み込んで構成したガラスブロック集合体10を示してある。図2は、アルミニウム製の枠体11の内側領域である開口部(寸法 幅:2020mm×高さ:3020mm)に、高さ190mm×幅190mm×厚み95mmのガラスブロック1を、10列×15段に積層したものである。図2(A)においては、縦方向のガラスブロック1の一部の図示を省略してある。図2(B)に示すように、枠体11は、開口部に向かってコの字型の溝部30が形成されており、下枠11aの溝部30の底部に、侵入した雨水等を外部に抜くための水抜きプレート11bが配置され、縦枠11c及び上枠11dの溝部の底部には、外部応力を緩衝するための厚み10mmのポリエチレンフォームからなるエキスパンション材12が取り付けられている。さらに、枠体11の溝部の底部からの立ち上がり部分11eには、厚み1mmのブチルゴムテープからなるすべり材13が貼り付けられている。これにより、ガラスブロック1と枠体11との間を絶縁し、地震や温度膨張時においてもガラスブロック1に過剰な応力が加わらないようにしている。
【0030】
<ガラスブロック集合体の施工方法>
ガラスブロック1の施工方法としては、まず、枠体11の下部からガラスブロック1を積層し、隣接するガラスブロック1の間、及びガラスブロック1と枠体11との間にモルタル15を充填し、隣接するガラスブロック1同士、及びガラスブロック1と枠体11とを接合する。隣接するガラスブロック1の間、及びガラスブロック1と枠体11との間にはモルタル15が露出し、目地部14が形成される。ガラスブロック1の積層、及びモルタル15の充填は、枠体11の開口部が埋まるまで続けられる。従来の施工方法では、ガラスブロック1を積層する横方向及び縦方向の目地部14となる部分に、力骨を配筋してガラスブロック集合体10の強度を高めていた。一方、本発明に係る施工方法では、ガラスブロック1同士、又はガラスブロック1と枠体11とを接合するモルタル15に接着剤を浸透させている。接着剤によりモルタル15とガラスブロック1とが一体化してガラスブロック集合体10を形成し、さらには当該ガラスブロック集合体10が枠体に強固に接合されるため、ガラスブロック集合体10の強度が確保される。このため、従来行っていた力骨の施工を省くことができる。従って、隣接するガラスブロック1の間、及びガラスブロック1と枠体11との間にモルタル15を充填する際に、力骨が邪魔とならないので、簡単且つ正確に目地部14を形成することが可能となる。枠体11とガラスブロック1との間の目地幅は15mmとし、ガラスブロック1間の目地幅は10mmとして、ガラスブロック集合体10の意匠性を高めている。10列×15段のガラスブロック1を積層した後、モルタル15が完全に硬化する前に、ガラスブロック集合体10の室内面及び室外面の両面の目地部14の表面に化粧目地材として化粧目地モルタル16を充填する。次いで、上枠11dとガラスブロック1との間を構成する横目地と、縦目地の最上部とが交差する部分(例えば、図2(A)に示す点線丸Xで囲った部分)から接着剤を注入する。接着剤の注入は、化粧目地モルタル16の充填前に、モルタル15が露出した目地部14に対して直接行っても構わない。また、接着剤の注入は、下枠11dとガラスブロック1との間の横目地(最下部の横目地)に接着剤のにじみが確認できるまで行う。その後、アルミニウム製の枠体11とガラスブロック1との間にポリエチレン製のバックアップ材(図示せず)を充填し、次いで、シリコーン系シーリング材17を充填して施工を終了する。注入する接着剤の詳細については、下記に説明する。
【0031】
本発明に用いられる接着剤としては、モルタル15とガラスブロック1又は枠体11とを強固に接着し、さらにモルタル15に容易に浸透可能なものであれば何れの接着剤を選択してもよいが、多孔質であるモルタル15の内部全体に容易に浸透することを可能とするため、好ましくは、200〜1000Pa・sの粘度を備える接着剤を使用する。これにより、当該接着剤は、目地部14を構成するモルタル15に確実に浸透し、ガラスブロック1とモルタル15とを強固に一体化することができる。
【0032】
本発明に用いられる接着剤は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又はアクリル樹脂を含有する合成樹脂系接着剤を用いることができる。接着剤の硬化タイプとしては、一液硬化型又は二液硬化型の何れでも構わない。これらの接着剤は、ガラスブロック1とモルタル15とを強固に接着することができるため、本構成のガラスブロック集合体10は、地震や、風圧力等の面外力を受けた際に生じる圧縮力や引張力に耐えることが可能となる。接着剤は、単一種類で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。モルタル15に注入する接着剤の例としては、商品名「セメダイン(登録商標)EP−20(セメダイン株式会社製:二液常温湿潤面硬化形エポキシ樹脂系接着剤)」や、商品名「ジョリシール(登録商標)JB−23S(アイカ工業株式会社製:弾性エポキシコーキング材)」が挙げられ、上記の施工方法に従って、ガラスブロック集合体10を施工することができる。力骨の代わりに当該接着剤を使用することにより、所定の強度を維持しながら、短い期間でガラスブロック集合体10を施工することが可能となる。本実施形態では、力骨の代わりに接着剤のみを使っているが、ガラスブロック集合体10の使用する場所、及びその大きさによっては、所定の強度を維持するために力骨を配筋したガラスブロック集合体10を作製してもよい。これにより、更に高い強度のガラスブロック集合体10を構築することができるため、ガラスブロック集合体10の適用範囲もより一層広がる。
【0033】
<ガラスブロック集合体の補修方法>
図3は、本発明に係るガラスブロック集合体の補修方法に用いられるガラスブロック集合体40の部分断面図を示している。ガラスブロック集合体40は、図3に示すように、躯体20に取り付けられた金属製の枠体11内に、外部応力を緩衝するためのエキスパンション材12と、ガラスブロック1と枠体11との間を絶縁するすべり材13と、力骨を配筋するためのアンカーピース21とをセットし、下枠11a側のアンカーピース21に形成した穴に、50mm幅で二本の縦力骨22を挿入し固定する。次いで、ガラスブロック1を積層し、隣接するガラスブロック1の間、及びガラスブロック1と枠体11との間にモルタル15を充填して目地部14を形成しながら、縦枠11c側のアンカーピース21に形成した穴に、35mm幅で二本の横力骨23を二本の縦力骨22の間に挿入する。この作業を繰り返してガラスブロック集合体40を構成していく。このガラスブロック積みの作業が終了した後、目地部14に化粧目地材として化粧目地モルタル16を充填し、次いで、枠体11とガラスブロック1との間の目地部14にシリコーン系シーリング材17を充填して施工を終了する。
【0034】
本発明のガラスブロック集合体の補修方法は、図3に示す既存のガラスブロック集合体40を補修し、その強度を高めることを可能とする。既存のガラスブロック集合体40は、図3に示すように、縦力骨22と横力骨23とを配筋することにより強度を高めている。背景技術でも述べたが、従来のガラスブロック集合体の場合、これら力骨が配筋されているため、隣接するガラスブロック1の間、及びガラスブロック1と枠体11との間にモルタル15を充填する際の障害となり、モルタル15の充填量が不十分となることがある。モルタル15の充填が不十分な目地部14においては、縦力骨22、横力骨23、モルタル15、及びガラスブロック1の一体化が不十分となる。従って、ガラスブロック集合体40が、地震や風圧により面外力を受けると、目地部14の内部に破損が生じ易くなる。
【0035】
図4は、ガラスブロック集合体40の破損部分の要部拡大断面図である。ここで、(A)は化粧目地14及びモルタル15の破損部分を示した断面図である。ガラスブロック集合体40を構成する各ガラスブロック1の表面及び裏面は、光が通過可能な採光面を表している。(B)は化粧目地14を剥離した後のモルタル15の破損部分を示した断面図である。図4(A)に示すように、ガラスブロック集合体40の目地部14においては、化粧目地モルタル16から、モルタル15に向かって亀裂Kが生じ、その亀裂Kは縦力骨22にまで及んでいる。このような破損状況の場合、縦力骨22と、モルタル15と、ガラスブロック1との一体化が不十分であるため、所定の強度を備えることは困難となる。従って、従来の補修方法では、亀裂Kを含む複数のガラスブロック1を解体して、再度、新品のガラスブロック1を積層し直す必要があった。しかし、本発明に係るガラスブロック集合体の補修方法では、所望の強度を維持しながら簡便に補修することができる。以下にガラスブロック集合体の補修方法について詳細に説明する。
【0036】
図4に示されているガラスブロック集合体40が変形、一部損傷している場合、先ず、補強作業を行う前に、油圧ジャッキ等を用いてその変形を矯正する。次いで、損傷部である亀裂Kを補修するために、ディスクサンダ、チス等の剥離工具を使用してガラスブロック1間の化粧目地モルタル16を剥離し、モルタル15の表面部15aを露出させる。図4(B)に示すように、モルタル15に生じた亀裂Kに、モルタル15に対して親和性のある樹脂モルタル、又はセメントペースト等の充填材Jを充填し、損傷部分を補修する。亀裂Kへの充填剤Jの充填が完了すると、ガラスブロック集合体10の室内面及び室外面の両面の目地部14の表面に新たな化粧目地モルタル16を再充填する。次いで、上述の「ガラスブロック集合体の施工方法」と同様の手法で、ガラスブロック集合体40の上枠11dとガラスブロック1との間を構成する横目地と、縦目地の最上部との交差部分から接着剤を注入する。接着剤の注入は、枠体11の下枠11aとガラスブロック1との間の横目地(最下部の横目地)に接着剤のにじみが確認できるまで行う。接着剤の注入により、ガラスブロック1と、モルタル15と、縦力骨22と、充填剤Jとを強固に一体化することができる。従って、補修後のガラスブロック集合体40は、図2に示す本発明のガラスブロック集合体10とほぼ同等な状態にまで修復され、強固な構造を有する。なお、ガラスブロック集合体40の破損がモルタル15の内部まで及んでいない場合には、モルタル15の表面を被覆する化粧目地材である化粧目地モルタル16の上から接着剤を注入することにより、ガラスブロック集合体40の補修を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るガラスブロック集合体、ガラスブロック集合体の施工方法、及びガラスブロック集合体の補修方法は、商業施設、公共施設、大型オフィスビル、あるいは住宅建物等において利用することができ、さらに既存のガラスブロック集合体の補修方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ガラスブロック
10 ガラスブロック集合体
11 枠体
12 エキスパンション材
13 すべり材
14 目地部
15 モルタル
16 化粧目地モルタル
17 シリコーン系シーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラスブロックを積層してなるガラスブロック集合体であって、
前記複数のガラスブロックはモルタルを介して接合されており、前記モルタルに接着剤を浸透させてあるガラスブロック集合体。
【請求項2】
前記モルタルが露出する領域であるガラスブロック間の目地部に前記接着剤を浸透させてある請求項1に記載のガラスブロック集合体。
【請求項3】
前記接着剤は、200〜1000Pa・sの粘度を有する請求項1又は2に記載のガラスブロック集合体。
【請求項4】
前記接着剤は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含有する合成樹脂系接着剤である請求項1〜3の何れか一項に記載のガラスブロック集合体。
【請求項5】
複数のガラスブロックを積層してなるガラスブロック集合体の施工方法であって、
複数のガラスブロックを、モルタルを介して積層する積層工程と、
前記モルタルが露出する領域であるガラスブロック間の目地部に接着剤を注入する注入工程と、
を包含するガラスブロック集合体の施工方法。
【請求項6】
前記注入工程は、最上段に位置するガラスブロック間の目地部に対して実行される請求項5に記載のガラスブロック集合体の施工方法。
【請求項7】
複数のガラスブロックを積層してなるガラスブロック集合体の補修方法であって、
モルタルが露出する領域であるガラスブロック間の目地部、又は当該目地部を被覆する化粧目地材に対して接着剤を注入する注入工程を包含するガラスブロック集合体の補修方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−91977(P2013−91977A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234692(P2011−234692)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)