説明

ガラスブロック

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、断熱性、遮音性、透光性に優れ、透光性壁材や内装の壁材として広く利用されているガラスブロックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガラスブロックとは、中空部を有し、内部が減圧された箱型形状のガラスからなる建築材料であり、それを製造するには一対の有底無蓋の凹部を有する箱型形状のガラス成形体の各開放端縁を、空気または酸素ガスと、都市ガスまたはLPGとの混合ガスを用いてバーナー加熱した後、融着一体化させる方法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】ところでバーナー加熱すると、燃焼の過程でH2 O、SO2 、CO2 等のガス成分が生じるため、これらのガス成分がガラスブロックの中空部に不純物として封入されてしまうことになる。これらのガス成分のうち、H2 Oは、微細な水滴となってガラスブロック内壁に付着するが、外気温の変動によってこの水滴が結露と消失を繰り返し、やがてガラス中のアルカリイオンがその内表面に滲み出してくる。アルカリイオンが溶出すると、これがガラスブロック内部に封入されている前記ガス成分と反応し、結晶が析出し易くなるため、ガラスブロック内表面が白濁し、不透明になるという問題を生じる。
【0004】この白濁現象は、ソーダライムガラス系では一般的にアルカリ吹きと呼ばれているが、ガラスブロックの場合には一旦製造すると内面側を洗浄して白濁を清浄化させることが不可能であり、特に透光性の高いことをセールスポイントとするガラスブロック製品に於いては致命的な欠陥となり問題は深刻である。
【0005】本発明の目的は、アルカリ吹きの現象が起こり難く、長期間に亙って高い透光性を維持することが可能なガラスブロックを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は種々の実験を行った結果、ガラスブロックの内部に析出する結晶群がNaHCO3 、NaCO3 ・xH2 O等であること、及びガラスブロック内部に存在するCO2 ガスの濃度が一定値以下であれば、これらの結晶が析出し難くなることを見いだし、本発明として提案するものである。
【0007】即ち、本発明のガラスブロックは、一対の、有底無蓋で凹部を有するガラス成形体が、互いの開放端縁で融着一体化されてなるガラスブロックにおいて、内部のCO2 ガス濃度が800ppm以下であることを特徴とする。
【0008】
【作用】本発明のガラスブロックは、その内部のCO2 ガス濃度が低いために、アルカリ吹きの原因となるNaHCO3 やNaCO3 ・xH2 O等の結晶が析出し難い。
【0009】本発明において、ガラスブロック中のCO2 ガス濃度を800ppm以下に限定したのは、この値よりCO2 濃度が高いと、長期間に亙る使用や保管によって上記のような結晶が析出成長し、白濁が生じ易くなるためである。
【0010】次に、本発明のガラスブロックを製造する方法としては、一対の有底無蓋で凹部を有する箱型形状のガラス成形体の各開放端縁を加熱し、次いでその凹部内に乾燥空気や不活性ガスを供給することによって凹部内のCO2 ガスを追い出した後、ガラス成形体同士を融着一体化させる方法や、ガラス成形体の開放端縁を加熱した後、凹部内のCO2 ガスと大気が置換するのに十分な時間をおいてから、成形体同士を融着一体化する方法等がある。なお凹部内に供給する乾燥空気や不活性ガスとしては特に限定はないが、工業的な規模で供給可能な除湿装置を通過させた相対湿度15%以下、露点が−15℃以下の乾燥空気や、不活性ガスの中でも比較的安価なN2 ガスが好適である。
【0011】なお、ガラスブロック中のCO2 ガス濃度とアルカリ吹きとは、先記したように密接な関係があるため、製品中のガスを採取してCO2 ガス濃度を測定することにより、在庫保管中あるいは施工後にアルカリ吹きが起こり易いかどうかを察知することができる。
【0012】
【実施例】次に本発明のガラスブロックを実施例及び比較例に基づいて詳細に説明する。
【0013】(実施例1)高温で型押し成形され、195mm×195mm×95mmの寸法を有し、平均肉厚が8mmの有底無蓋の箱型形状の2つのガラス成形体10a、10bを、図1に示すように、それらの各凹部11a、11bが向かい合い、且つ一定の間隔をとるようにして配置させた。次に、2つのガラス成形体の開放端縁12a、12bに対して図示しないLPGと酸素ガスの混合ガスを用いてバーナー加熱し、開放端縁を軟化させた。その後、図2に示すように各ガラス成形体10a、10bの間隔を狭めてから、各凹部11a、11bに対して角度自在の2本のステンレス製パイプA1 、A2 の先端部を配置し、2.5〜3.5kg/cm2 の高圧乾燥空気(湿度5%以下、露点−19℃以下)を噴出させた後、ガラス成形体10a、10bを加圧して融着一体化させた。さらに徐冷炉を通過させることによって、図3に示すような、内部11に乾燥空気が封入されたガラスブロック10を作製した。
【0014】(実施例2)実施例1と同様の方法により、一対のガラス成形体の開放端縁を加熱軟化させ、両ガラス成形体の間隔を狭めた。その後、凹部内に2.5〜3.5kg/cm2 のN2 ガスを噴射させてから両ガラス成形体を加圧して融着一体化させ、次いで徐冷炉を通過させることによって、内部にN2 ガスが封入されたガラスブロックを作製した。
【0015】(実施例3)実施例1と同様の方法により、一対のガラス成形体の開放端縁を加熱軟化させ、次いで両ガラス成形体の間隔を、実施例1の場合の約3倍の時間をかけて狭め、凹部内に残留するガス成分を大気と置換させた。その後、両ガラス成形体を加圧して融着一体化させ、次いで徐冷炉を通過させることによって、内部に通常の空気が封入されたガラスブロックを作製した。
【0016】(比較例1)ガラス成形体内に高圧乾燥空気、あるいはN2 ガスを供給せず、他の条件は実施例1と同様にしてガラスブロックを作製した。
【0017】(比較例2)LPGと酸素ガスの混合ガスの代わりに空気と都市ガスの混合ガスを用い、また高圧乾燥空気、あるいはN2 ガスを供給せず、他の条件は実施例1と同様にしてガラスブロックを作製した。
【0018】このようにして作製した実施例及び比較例のガラスブロックを用いて耐候性サイクル試験を行い、アルカリ吹きによる白濁の有無を観察した。また各ガラスブロックの内部のCO2 ガス濃度をガスクロマトグラフィー分析した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】


【0020】表1から明らかなように、実施例1〜3の各ガラスブロックのCO2 濃度は425〜645ppmであり、また全てのガラスブロックにおいて白濁は認められず、透明であった。これに対して比較例1及び2は、CO2 濃度がそれぞれ1800ppm及び3900ppmであった。これらのガラスブロックは何れも白濁が生じており、商品価値の全くないものであった。
【0021】尚、上記の耐候性サイクル試験は大型恒温恒湿槽を用いて、各ガラスブロックの雰囲気温度を2時間毎に0〜40℃の範囲で25サイクル繰り返して変化させることにより行い、アルカリ吹きの状態を蛍光燈を用いて目視で評価した。またCO2 ガスの濃度はガスクロマトグラフィー分析によるガスピーク面積率(%)から求めた。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のガラスブロックは、内部に封入されたCO2 ガスの濃度が800ppm以下であるため、アルカリ吹きが起こり難く、長期間にわたって高い透光性を維持することができる。それゆえ透光性をセールスポイントとするガラスブロックとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一対のガラス成形体を、その凹部同士が向かい合うように配置させた状態を示す説明図である。
【図2】一対のガラス成形体の各凹部に対して乾燥空気を供給している状態を示す説明図である。
【図3】本発明のガラスブロックの正面図である。
【符号の説明】
10 ガラスブロック
10a、10b ガラス成形体
11a、11b 凹部
12a、12b 開放端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の、有底無蓋で凹部を有するガラス成形体が、互いの開放端縁で融着一体化されてなるガラスブロックにおいて、内部のCO2 ガス濃度が800ppm以下であることを特徴とするガラスブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3264380号(P3264380)
【登録日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【発行日】平成14年3月11日(2002.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−69524
【出願日】平成4年2月19日(1992.2.19)
【公開番号】特開平5−229856
【公開日】平成5年9月7日(1993.9.7)
【審査請求日】平成11年1月29日(1999.1.29)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【参考文献】
【文献】特開 平4−175237(JP,A)
【文献】特開 平4−175236(JP,A)