説明

ガラス上の薄膜部品、その製造方法、およびその使用

本発明は、薄膜部品(I)、その製造方法、およびその使用に関する。薄膜部品(I)では、膜構造(2)および導電保護デバイス(3)が、ガラス板(1)に付着され、少なくとも1つの誘電体保護膜(4)が、膜構造(2)および導電保護デバイス(3)に付着され、導電保護デバイス(3)とガラス板(1)の外縁(5)との間の距離が、膜構造(2)とガラス板(1)の外縁(5)との間の距離より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分および高電界強度から恒久的に保護された、ガラス上の薄膜部品、その製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜部品は、例えば、最大で1000Vの高電圧を有する野外または屋根システムの太陽電池モジュールとして、厳しい気象条件にさらされる。薄膜太陽電池モジュールは、通常、モノリシックに集積した薄膜太陽電池セルを有する。薄膜太陽電池セルは、太陽電池モジュールの中に水分がある場合に腐食する。また、次のことが知られている。電気系統の高い電圧に起因して、電気的な過渡現象が、太陽電池セルの間、および接地電位およびその結果としての高い電界強度に生じることがある。または、イオンが、ガラスから太陽電池セルの薄膜の中にドリフトすることがある。太陽電池セルの腐食または層間剥離は、太陽電池モジュールの恒久的な性能の低下または完全な故障を引き起こす。
【0003】
公共の送電網に電気エネルギーを供給する太陽光発電システムは、太陽電池モジュールの回路およびDC電圧をAC電圧に変換するインバータを備える。
【0004】
長期使用の際の性能の低下を抑えるためには、電位を高くした太陽光発電システムが、独国特許出願公開第102007050554号明細書から知られている。太陽電池モジュールの回路の陽極の電位は、制御されずに太陽電池モジュールからグランドに放電しないように、インバータで接地電位からシフトされる。
【0005】
また、次のような太陽光発電システム用インバータが知られている。このようなインバータは、絶縁トランスを介して、太陽電池モジュールを接地電位から直流的に分離して、制御されずに太陽光発電システムからグランドに放電するのを防ぐ。
【0006】
しかしながら、このためには、太陽電池モジュールに適合させるのが高価で、電気効率が低いインバータを使用しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007050554号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改善された、ガラス上の薄膜部品を提供することである。この薄膜部品は、インバータと無関係に、高電界強度とともに気象条件に対して長期間にわたる高い安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、請求項1、13、および17に記載の特徴によって達成される。
【0010】
本発明による薄膜部品では、膜構造および導電保護デバイスが、ガラス板に付着され、少なくとも1つの誘電体保護膜が、膜構造および導電保護デバイスに付着され、そして、導電保護デバイスとガラス板の外縁との間の距離が、膜構造とガラス板の外縁との間の距離より小さい。
【0011】
本発明による薄膜部品は、その機能に応じて従来の外形を有することができる。膜構造は、特に、光起電力機能、エレクトロクロミック機能、発光機能、または加熱機能を有することができる。好ましくは、薄膜部品は、シート形状を有する。シート面積は、100cm2から18m2であることが可能だが、好ましくは、0.5m2から3m2である。薄膜部品は、平面状または湾曲状で実施され得る。
【0012】
膜構造は、通常、表面電極層および裏面電極層を有する。光起電力機能、エレクトロクロミック機能、発光機能、または加熱機能を有する膜システムは、電極層の間に付着される。電極層は、好ましくは、銀、金、銅、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウム、インジウム酸化スズ、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ならびに/または化合物および混合物を含有する。膜構造は、特に好ましくは、モノリシックに集積した直列電気回路である。
【0013】
膜構造は、好ましくは、ガラス板の縁上の被膜が周囲にわたって取り除かれる。取り除かれるのは、好ましくは、幅5mmから20mmの被膜である。この結果、膜構造は、水分の浸入または取り付け要素による遮蔽から、縁で保護される。
【0014】
薄膜部品のすぐ近傍の接地電位と膜構造との間の電位差により、電界が生じる。この接地電位の近傍は、例えば、薄膜部品の接地された取り付け手段、または、薄膜部品上でグランドに短絡されている、水の導電膜であってもよい。
【0015】
好ましくは、DC電圧が、電極の間に生じる。しかしながら、電気的なAC電圧が、または、電気的な過渡現象さえもが生じ得る。
【0016】
本発明によると、導電保護デバイスは、好ましくは、膜構造とガラスの縁の外縁との間に配置される。その結果、電界強度が、導電保護デバイスの領域で最大になり、機能膜構造の領域ではなく、導電保護デバイスの領域で最大になる。電界または放電が引き起こすガラス板のイオンのドリフトが、膜構造から導電保護デバイスにシフトする。
【0017】
従来の光起電性の、エレクトロクロミックな、発光性の、および/または加熱可能な膜構造は、少なくとも2つの電極を有する。1つの電極は、好ましくは、接地電位である。第2の電極は、第1の電極に対してアノードとしてプラスであっても、または、カソードとしてマイナスとなり得る。
【0018】
別の有利な実施形態では、導電保護デバイスが、少なくとも1つのコンタクト領域を介して、膜構造の1つの電極に電気的に接続される。この直流接続を介して、導電保護デバイスは、膜構造の1つの電極の電位になる。導電保護デバイスは、好ましくは、太陽電池モジュールに関しては、周囲の接地電位に対する負の電位差が最大の電極に接続される。
【0019】
しかしながら、導電保護デバイスは、追加の外部電圧源と接続することもできる。この外部電圧源は、膜構造の最大の負の電位よりも大きいか、または、これと等しい電位を供給する。
【0020】
特に好ましくは、導電保護デバイスは、電極で膜構造の表面電極層に電気的に接続される。
【0021】
あるいは、導電保護デバイスは、電極で膜構造の裏面電極層に電気的に接続される。
【0022】
本発明の別の有利な実施形態では、膜構造が、導電保護デバイスによって完全に囲まれる。このようにして、膜構造を周囲にわたってシールドする。導電保護デバイスは、取り付け手段および/または不透明スクリーン印刷によって、完全にまたは部分的に覆うことができる。
【0023】
導電保護デバイスの線幅は、好ましくは、0.5mmから5mmの幅である。
【0024】
導電保護デバイスは、膜構造と比べて導電保護デバイスの電界強度をより高くするすべての形状を有することができる。導電保護デバイスは、好ましくは、線状、蛇行状、櫛状、または長方形をつないだ形に形成される。また、導電保護デバイスは、好ましくは、全体として枠形状を構成する。好ましくは、導電保護デバイスは、膜構造の周りに周囲を取り囲む枠として構成される。
【0025】
本発明の有利な実施形態では、導電性取り付け手段が、薄膜部品に付着され、好ましくは、ガラス板の外縁に付着される。
【0026】
本発明の別の有利な実施形態では、ガラス板の外縁の導電性取り付け手段が、少なくとも部分的に薄膜部品を囲む。好ましくは、導電性取り付け手段が、薄膜部品の外縁に沿って周囲を取り囲む枠として構成される。
【0027】
しかしながら、導電性取り付け手段はまた、好ましくは、断続的な枠、周囲を取り囲む枠、または取り付け具として実施され得る。この部品の、例えば、架台への取り付けは、ねじによる取り付け、クランピング、および/または取り付け要素の接着剤による接合によって、達成される。取り付け手段の電位は、通常、基準システムの接地電位に、好ましくは、アース電位または自動車の車体の接地電位に対応する。
【0028】
導電保護デバイスは、複数の入れ子状の枠を有することができる。これらの枠は、複数のコンタクト領域を介して互いに電気的に接続される。
【0029】
本発明の別の有利な実施形態では、導電保護デバイスが、銀、金、銅、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウム、インジウム酸化スズ、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ならびに/またはこれらの化合物および混合物を含有する。
【0030】
導電保護デバイスは、被膜または配線もしくは配線のネットワークとして付着され得る。
【0031】
導電保護デバイスおよび取り付け手段が、膜構造の表面電極層または裏面電極層と同じ材料を有している場合が特に有利である。
【0032】
しかしながら、導電性の保護デバイスはまた、水分、高電界強度、ガラスからの不純物、および層間剥離に対して長期間にわたる高い安定性を達成するために、膜構造と異なる材料を含有することができる。
【0033】
導電保護デバイスはまた、化学的に変化し、または、薄膜部品の耐用年数の期間にわたって層間剥離を起こす犠牲層として、設計され得る。膜構造の機能は、このことによって影響されない。
【0034】
ガラス板が、0.1重量%から20重量%の、好ましくは、10重量%から16重量%のアルカリ元素、好ましくは、Na
を含有する場合に、本発明は特に有利になる。
【0035】
本発明の別の有利な実施形態では、誘電体保護膜が、ケイ酸塩ガラス板、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリアセテート樹脂、注型用樹脂、アクリレート、エチレン酢酸ビニル(EVA)、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニル、4フッ化エチレン−エチレン、共重合体、および/またはこれらの混合物を含有する。
【0036】
好ましくは、誘電体保護膜が、粘着力を強くしたエチレン酢酸ビニルおよびポリフッ化ビニルの組成物、または付加的なケイ酸塩ガラス板と併せて粘着力を強くしたポリビニルブチラールを含む。
【0037】
特に有利な実施形態では、膜構造が、ケイ素、黄銅鉱、および/またはテルル化カドミウムを含有する薄膜太陽電池セルを有する。
【0038】
膜構造および導電保護デバイスを有するガラス板は、薄膜太陽電池モジュールのガラス板を形成することができる。このようなガラス板は、入射光の方を向いていても、入射光から離れた方を向いていてもよい。
【0039】
本発明の目的は、さらに、薄膜部品の製造方法によって達成される。この製造方法では、膜構造が、ガラス板に付着され、導電保護デバイスが、ガラス板に付着され、少なくとも1つの誘電体保護膜が、膜構造および導電保護デバイスに付着され、そして、ガラス板、膜構造、導電保護デバイス、および誘電体保護膜が、薄膜部品を形成するように接続される。
【0040】
本発明による方法の有利な実施形態では、導電保護デバイスが、レーザ切断アブレーションまたは機械的研磨により、絶縁ラインをともなう膜構造のサブエリアから形成される。
【0041】
別の実施形態では、導電保護デバイスが、スクリーン印刷、彫版シリンダ印刷、インクジェット印刷、エアロゾルジェット印刷、フレキソ印刷、パルスジェット印刷、および/またはこれらの組み合わせ等の印刷方式によって付着される。
【0042】
導電保護デバイスは、レーザ切断アブレーション、機械的研磨、または印刷方式の組み合わせによって製造され得る。
【0043】
本発明による方法の有利な実施形態では、取り付け部品が、ガラス板の外縁の少なくともサブエリアに、ねじで取り付けられ、クランピングされ、接着剤で接合される。
【0044】
本発明は、さらに、薄膜部品の太陽電池モジュールとしての使用、およびグランドに対して少なくとも−100V、好ましくは、少なくとも−600Vの負の電位を有する太陽電池モジュールの直列回路としての薄膜部品の使用に関する。
【0045】
本発明の典型的な実施形態が、図1から図6に概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による薄膜部品(I)の典型的な実施形態の断面図である。この断面図は、図2の切断線A−A’に沿ったものである。
【図2】本発明による薄膜部品(I)の典型的な実施形態の平面図である。
【図3】本発明による薄膜部品(I)の別の典型的な実施形態の平面図である。
【図4】本発明による薄膜部品(I)のさらに別の典型的な実施形態の平面図である。
【図5】本発明による、薄膜部品(I)の製造方法の典型的な実施形態のフローチャートである。
【図6】本発明による、薄膜部品(I)の製造方法の別の典型的な実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、構造および、適切な場合には、本発明の動作方法にもとづいて、図面を参照しながら、本発明について説明する。
【0048】
図1および図2は、本発明による薄膜太陽電池モジュール(I)を示している。12重量%の酸化ナトリウムを含有するガラス板(1)に接して、多くのアモルファスシリコン薄膜太陽電池セルを有する膜構造(2)があった。膜構造(2)における帯状の太陽電池セルのそれぞれは、モノリシックに集積されていた。また、これらは直列に接続されていた。膜構造(2)は、機能層として、積層構造の2つのアモルファスシリコン半導体転移を有していた。機能層とガラス板(1)との間には、フッ素をドープした酸化スズを含有する表面電極層があった。膜構造(2)の裏面電極層は、ガラス板(1)から離れた方を向いており、銀を含有していた。
【0049】
膜構造(2)は、縁領域の被膜が機械的に研磨されて取り除かれた。取り除かれたのは、ガラス板(1)の1つの縁(5)上の幅15mmの被膜だった。被膜が取り除かれた縁の内側に、幅4mmの導電保護デバイス(3)が、スクリーン印刷用の銀含有ペーストを用いてガラス板(1)に印刷された。導電保護デバイス(3)は、膜構造(2)との間に5mmの距離を空けて、膜構造(2)を完全に囲むものとした。導電性の保護デバイス(3)および薄膜太陽電池セルの表面電極は、シルバースクリーン印刷を用いて、コンタクト領域(7)を介して、薄膜太陽電池モジュールの最も高い電位に電極(2a)で電気的に接続された。
【0050】
コンタクト領域(7)を介して、導電保護デバイス(3)は、膜構造(2)の領域(2a)と同じ電位を有した。膜構造(2)および導電保護デバイス(3)は、ポリビニルブチラールを有する2つの誘電体保護デバイス(4)および裏面ガラス板との複合体で、環境の影響から、特に、水分から保護された。薄膜太陽電池モジュール(I)の外縁(5)は、アルミフレームによって囲まれた。アルミフレームは、導電性取り付け具(8)だった。取り付け枠(8)のクランピングは、ガラス板(1、4)の表面に5mmの深さで実施された。
【0051】
薄膜太陽電池モジュール(I)の開路電圧は、接地電位に対して−600Vだった。陽極は、絶縁トランスなしのインバータ(図示せず)を介して、接地電位に電気的に接続された。取り付け枠(8)も同様に接地電位だった。領域(2a)は、薄膜太陽電池モジュール(I)の陰極だった。領域(2a)および導電性の保護デバイス(3)は、接地電位に対して最大の負の電位差を有していた。取り付け枠(8)と導電保護デバイス(3)との間の距離は、取り付け枠(8)と膜構造(2)との間の距離より小さかった。導電保護デバイス(3)の領域の電界強度がより高かったため、イオン、特に、プラスに帯電したナトリウムイオンのドリフトが、次第に導電保護デバイス(3)に向かうようになった。膜構造(2)の領域への不純物の蓄積は、観察されなかった。水分が、縁(8)を介して薄膜太陽電池モジュール(I)の縁領域に侵入し、かつ、電界強度が高くても、膜構造(2)の腐食または層間剥離は、観察されなかった。長期間の耐候試験の後に、導電保護デバイス(3)の初期段階の層間剥離および腐食が、観察された。膜構造(2)の機能は、損なわれなかった。次のことは、目覚しく、かつ明らかなことだった。同時に高電界強度をともなう耐候試験で、膜構造(2)への不純物のドリフト、およびこれに付随する、薄膜太陽電池モジュール(I)の恒久的な性能の低下が、本発明による導電性の保護デバイス(3)により防止され得た。
【0052】
図2は、図1の本発明による典型的な実施形態を平面図で示している。薄膜太陽電池モジュール(I)の面積は、1.2m×0.6mだった。薄膜太陽電池モジュール(I)は、アルミニウムを含有するフレームによって周辺を完全に囲まれた。このフレームは、導電性取り付け具(8)だった。取り付け枠(8)は、接地電位を有していた。透明ガラス板(1)(図示せず)を通して、同様に枠状の導電保護デバイス(3)が示されている。この導電保護デバイス(3)は、コンタクト領域(7)を介して、電極(2a)に電気的に接続されていた。導電保護デバイス(3)は、膜構造(2)を完全に囲んでいた。次のことが、この平面図からはっきりと読み取れる。取り付け枠(8)と導電保護デバイス(3)との間の距離は、取り付け枠(8)と膜構造(2)との間の距離より小さかった。
【0053】
図3は、本発明による薄膜太陽電池モジュール(1)の別の実施形態の平面図を示している。導電保護デバイス(3)は、透明導電性の酸化物を含有していた。また、導電保護デバイス(3)は、膜構造(2)の表面電極層の追加の開発により形成された。7mmの被膜が取り除かれた縁、周囲を囲む絶縁ライン(9)によって、枠状の領域が、透明導電保護デバイス(3)として、形成された。この絶縁ライン(9)は、100μmの幅を有し、コンタクト領域(7)で途切れるものとした。コンタクト領域(7)で、枠状の導電保護デバイス(3)が、電極(2a)に電気的に接続されていた。本発明のこの実施形態では、導電性の保護デバイス(3)が、膜構造(2)の電極層の連続部分から単純な方法で設けられた。次のことは、目覚しく、かつ明らかなことだった。膜構造(2)への不純物のドリフト、およびこれに付随する、薄膜太陽電池モジュール(I)の恒久的な性能の低下が、本発明による導電性のかつ透明な保護デバイス(3)によって、防止され得た。
【0054】
図4は、本発明による薄膜太陽電池モジュール(1)のさらに別の実施形態の平面図を示している。導電保護デバイス(3)は、透明導電性の酸化物を含有し、また、膜構造(2)の電極層の連続部から形成された。7mmの被膜が取り除かれた縁、および2つの周囲を囲む幅100μmの絶縁ライン(9)によって、2つの枠状の領域が、透明導電保護デバイス(3)として、形成された。これらの絶縁ライン(9)は、コンタクト領域(7)で途切れるものとした。コンタクト領域(7)で、枠状の透明導電膜デバイス(3)は、複数のコンタクト領域(7)を介して、電極(2a)に電気的に接続された。本発明のこの実施形態では、導電保護デバイス(3)が、膜構造(2)の電極層の追加の開発による単純な方法で得られた。導電保護デバイス(3)を2重の枠にすることによって、膜構造(2)の保護機能がさらに向上した。長期試験後の層間剥離によって外枠の導電保護デバイス(3)が劣化した状態で、内枠の導電保護デバイス(3)および膜構造(2)は、機能し続けた。次のことは、目覚しく、かつ明らかなことだった。膜構造(2)への不純物のドリフト、およびこれに付随する、薄膜太陽電池モジュール(I)の恒久的な性能の低下が、本発明による導電性でかつ透明な保護デバイス(3)の実施形態によって、防止され得た。
【0055】
図5は、本発明による、薄膜部品(I)の製造方法の典型的な実施形態をフローチャートで詳細に示している。
【0056】
図6は、本発明による、薄膜部品(I)の製造方法の別の典型的な実施形態をフローチャートで詳細に示している。
【符号の説明】
【0057】
I 薄膜部品
1 ガラス板
2 膜構造
2a 膜構造の電極
3 導電保護デバイス
4 誘電体保護デバイス
5 ガラス板の外縁
7 コンタクト領域
8 取り付け手段
9 絶縁ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜部品(I)であって、膜構造(2)および導電保護デバイス(3)が、ガラス板(1)に付着され、少なくとも1つの誘電体保護膜(4)が、膜構造(2)および導電保護デバイス(3)に付着され、導電保護デバイス(3)とガラス板(1)の外縁(5)との間の距離が、膜構造(2)とガラス板(1)の外縁(5)との間の距離より小さい、薄膜部品(I)。
【請求項2】
導電保護デバイス(3)が、少なくとも1つのコンタクト領域(7)を介して、膜構造(2)の1つの電極(2a)に電気的に接続される、請求項1に記載の薄膜部品(I)。
【請求項3】
導電性の保護デバイス(3)が、電極(2a)で膜構造(2)の表面電極に電気的に接続される、請求項2に記載の薄膜部品(I)。
【請求項4】
導電保護デバイス(3)が、電極(2a)で膜構造(2)の裏面電極に電気的に接続される、請求項2に記載の薄膜部品(I)。
【請求項5】
導電保護デバイス(3)の幅が、0.5mmから5mmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の薄膜部品(I)。
【請求項6】
導電保護デバイス(3)が、少なくとも部分的に膜構造(2)を囲む、請求項1から5のいずれか一項に記載の薄膜部品(I)。
【請求項7】
導電性取り付け手段(8)が、薄膜部品(I)の外縁(5)、好ましくは、ガラス板(1)に付着される、請求項1から6のいずれか一項に記載の薄膜部品(I)。
【請求項8】
導電性取り付け手段(8)が、少なくとも部分的に薄膜部品(I)を囲む、請求項7に記載の薄膜部品(I)。
【請求項9】
導電保護デバイス(3)が、銀、金、銅、タングステン、ニッケル、クロム、モリブデン、酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、インジウム酸化スズ、ならびに/またはこれらの化合物および混合物を含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の薄膜部品(I)。
【請求項10】
ガラス板(1)が、0.1重量%から20重量%の、好ましくは、10重量%から16重量%のアルカリ元素を含有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の薄膜部品(I)。
【請求項11】
誘電体保護膜(4)が、ケイ酸塩ガラス、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリアセテート樹脂、注型用樹脂、アクリレートエチレン酢酸ビニル(EVA)、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニル、4フッ化エチレン−エチレン、共重合体、および/またはこれらの混合物を含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の薄膜部品(I)。
【請求項12】
膜構造(2)が、ケイ素、黄銅鉱、またはテルル化カドミウムを含有する薄膜太陽電池セルを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の薄膜部品(I)。
【請求項13】
薄膜部品(I)の製造方法であって、
a.膜構造(2)が、ガラス板(1)に付着され、
b.導電保護デバイス(3)が、ガラス板(1)に付着され、
c.少なくとも1つの誘電体保護膜(4)が、膜構造(2)および導電保護デバイス(3)に付着され、および
d.ガラス板(1)、膜構造(2)、導電保護デバイス(3)、および誘電体保護膜(4)が、薄膜部品(I)を形成するように接続される、方法。
【請求項14】
導電保護デバイス(3)が、レーザ切断アブレーションまたは機械的研磨により、絶縁ライン(9)をともなう膜構造(2)のサブエリアから形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
導電保護デバイス(3)が、スクリーン印刷、彫版シリンダ印刷、インクジェット印刷、エアロゾルジェット印刷、フレキソ印刷、パルスジェット印刷、および/またはこれらの組み合わせ等の印刷方式によって付着される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
取り付け手段(8)が、ガラス板(1)の外縁(5)の少なくともサブエリアに、ねじで取り付けられ、クランピングされ、接着剤で接合される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の薄膜部品(I)の薄膜太陽電池モジュールとしての使用。
【請求項18】
グランドに対して少なくとも−100V、好ましくは、少なくとも−600Vの負の電位を有する請求項16に記載の薄膜部品の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−506975(P2013−506975A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531303(P2012−531303)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062295
【国際公開番号】WO2011/039000
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】