ガラス化生物試薬の調製
本発明は、乾燥試薬標品の製造方法に関するものであり、この方法は、1種以上の緩衝生物試薬の水溶液を調製し、(b)ガラス形成性フィラー材料を、緩衝生物試薬溶液と混合して、多孔質ガラス状組成物の形成を促進するのに十分な濃度のフィラー材料を含む混合物を調製し、上記混合物を実質的に均一な液滴の形態でマルチウェル容器の各ウェルに1滴ずつ分注し、上記容器中で液滴を乾燥して試薬標品を形成する工程を含んでいる。試薬標品は水溶性で、試薬標品のTgは、室温で安定に存在し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体材料及び試薬の多孔質ガラス状態での長期保存に関する。特に、本発明は、かかる材料及び試薬のマルチウェルプレートを用いた製造法並びに保存に関する。
【背景技術】
【0002】
室温の溶液中で単離、精製、保存できるほど十分に安定な生体活性材料は少ない。生物試薬は、通常4℃、−20℃又は−70℃の温度に保たれたグリセロール溶液中で保存される。これらはまとめて保存され、使用時に他の試薬と混合される。
【0003】
生体試料の簡単で効率的な検査のための試薬を調製する際には、別々の一様な量の乾燥化学試薬製剤を得ることが重要となることが多い。生物試薬の安定化に従前使用されてきた担体又はフィラーの1種は、ガラス形成性フィラー材料である。生物試薬の溶液がガラス形成性フィラー材料(水溶性又は水膨潤性物質)に導入される。これを乾燥すると、生物試薬が固定化され安定化されたガラス状組成物が得られる。生物試薬の安定化に用いるガラス形成性フィラー材料の例については、米国特許第5098893号、同第5200399号、同第5240843号を参照されたい。
【0004】
グルコース、スクロース、マルトース、マルトトリオースのような炭水化物は、ガラス形成性物質の重要な群をなす。その他のポリヒドロキシ化合物、例えばソルビトールのような炭水化物誘導体及び化学修飾炭水化物も使用できる。ガラス形成性物質のもう一つの重要な群は、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド又はポリエチレンイミンのような合成ポリマーである。
【0005】
ガラス形成性物質のさらに別の例として、GE Healthcare社からFICOLL(商標)という商標で市販されているもののような糖共重合体がある。FICOLL(商標)は分子量5000〜1000000であり、スクロース残基がエーテルを介して二官能性基に結合している(米国特許第3300474号)。二官能性基は炭素原子数2又は3以上のアルキレンとし得るが、通常は炭素原子数は10以下である。二官能性基は、糖残基同士を結合する役割を果たす。かかるポリマーは、例えば、糖とハロヒドリン又はビスエポキシ化合物との反応によって製造できる。
【0006】
炭水化物ポリマーのガラス状マトリックス中で安定化させた生体材料は、凍結乾燥(米国特許第5593824号(Treml他)、同第5098893号(Franks及びHatley))又は真空乾燥(米国特許第5565318号(Walker他))のいずれかによって製造できる。かかる水溶性試薬は、複雑な分子生物学用途での使用に適している。このアプローチは、1回分の使用量の酵素、ヌクレオチド又は他の成分からなる試薬系に特に有用である。ガラス状マトリックスを再構成すると、DNA増幅、DNA配列決定を始めとする各種用途に使用できる緩衝酵素が得られる。
【0007】
現在、数多くの乾燥分子生物学用製品が市販されている。しかし、これらの製品には、煩雑な多大な手作業を要するプロセスで製造されるものもある。乾燥時に冷蔵を要する製品もある。室温乾燥試薬の改良製造方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5098893号明細書
【特許文献2】米国特許第5200399号明細書
【特許文献3】米国特許第5240843号明細書
【特許文献4】米国特許第3300474号明細書
【特許文献5】米国特許第5593824号明細書
【特許文献6】米国特許第5565318号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様では、乾燥試薬の製造方法を提供する。本方法は、1種以上の緩衝生物試薬の水溶液を調製する工程と、ガラス形成性フィラー材料を緩衝生物試薬溶液と混合して、多孔質ガラス状組成物の形成を促進するのに十分な濃度のフィラー材料を含む混合物を調製する工程と、混合物をマルチウェル容器のウェルに所定量分注する工程と、上記容器中で混合物を乾燥して乾燥試薬標品を形成する工程を含んでおり、試薬標品は水溶性であり、室温安定性に十分なTgを有する。混合物は、好ましくは均質溶液である。
【0010】
本発明の一実施形態では、乾燥試薬標品は、長期室温保存のため試薬瓶に回収する。
【0011】
本発明の別の実施形態では、乾燥試薬はマルチウェル容器に保存され、容器の上部は長期保存のためシールテープで封止される。シールテープは、適宜、熱活性化される。
【0012】
本発明のマルチウェル容器は、シリカモールド又はポリスチレンプレートとすることができる。マルチウェル容器がポリスチレンプレートである場合、本発明は、凍結乾燥前に、ポリスチレンプレートを金属モールドに載せて、効率的な熱伝達のためポリスチレンプレートの各ウェルの外壁を金属モールドのウェルと密着させる工程をさらに含む。本発明者らは、これによって、乾燥プロセスが改善され、健全性の向上した乾燥試薬が得られることを見出した。
【0013】
別の態様では、本発明は、上述の方法で製造した乾燥生物試薬組成物を提供する。
【0014】
本発明の方法で製造した生物試薬組成物は、水溶性であり、室温安定性を担保するTgを有する。好ましくは、生物試薬組成物は構造的健全性を有する。
【0015】
生物試薬組成物は、25μlの水溶液に1分未満、好ましくは30秒未満で完全に溶解する。生物試薬組成物は好ましくは10%未満の水分含量を有する。
【0016】
生物試薬組成物は、単独では室温の水溶液中で不安定な1種以上の試薬を含んでいてもよい。生物試薬組成物は複数の試薬を含んでいてもよく、それらは室温の水溶液中で互いに反応するものであっても、反応しないものであってもよい。
【0017】
したがって、本発明の目的及び利点は、乾燥生物試薬組成物並びにその製造方法を提供することである。
【0018】
本発明の上記その他の目的や利点は、以下の記載から明らかとなろう。ただし、以下の記載は、好ましい実施形態について記載したものにすぎず、本発明の範囲を把握するには特許請求の範囲を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る乾燥試薬標品の製造方法の作業の流れを示す図である。
【図2】図2 の左上は、本発明の一実施形態に係る乾燥試薬標品の製造方法に使用される384ウェルのポリスチレンプレートを示す。右上は、鋳型を含まない対照を含め、鋳型として出発濃度1000万〜1000コピーの様々な量のλDNAを用いた標準曲線を示す。左下は、384ウェルポリスチレンプレートから製造し、プラスチックボトル中で保存した乾燥試薬標品のケーク/キューブを示す。右下は、乾燥試薬標品がλDNAリアルタイムqPCR増幅反応にうまく使用できたことを示す増幅プロットを示す。
【図3】図3の左上は、本発明の一実施形態に係る乾燥試薬標品の製造方法に使用される96ウェルのシリカモールドを示す。右上は、鋳型を含まない対照を含め、鋳型として出発濃度1000万〜1000コピーの様々な量のλDNAを用いた標準曲線を示す。左下は、96ウェルシリカモールドから製造し、プラスチックボトル中で保存した乾燥試薬錠剤を示す。右下は、乾燥試薬標品がλDNAリアルタイムqPCR増幅反応にうまく使用できたことを示す増幅プロットを示す。
【図4】図4は、凍結乾燥前に、PCR製剤の入った96ウェルPCRプレートを金属ホルダーに嵌め込むところを示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にしたがって製造した様々なフォーマットの室温安定性PCR試薬を示す。左上は瓶中の乾燥PCRミックスであり、右上は96ウェルプレート中の乾燥PCRミックスであり、左下は384ウェルプレート中の乾燥PCRミックスであり、右下は96ウェル多孔プレート中の乾燥PCRミックスである。
【図6】図6は、本発明の実施形態にしたがって製造した乾燥PCR試薬の安定性を示す。乾燥PCRミックスをλDNAのqPCRに使用した。(1)「湿潤」ビーズミックス(左上)、(2)本発明のプロトコルで製造した乾燥ケーク(右上)、(3)GE HealthcareのpuRe taq Ready−To−Go(商標)(RTG)PCRビーズ(左下)で同様の性能が認められた。右下は、上述の3つの反応を3回繰り返したときのCt値及びPCR効率。新規フォーマット及びpuRe TaqビーズのCt値及びPCR効率は同等であった。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にしたがって製造した乾燥PCR試薬の安定性を示す。乾燥PCRミックスを40℃及び室温で8日間保存した。乾燥試薬をλDNAのqPCRに使用したところ、同様の性能が認められた。左上は乾燥PCR試薬ケークを室温で保存したものであり、右上は乾燥PCR試薬ケークを40℃で保存したものである。左下はpuRe Taqビーズ(GE Healthcare)を室温で保存したものであり、右下はpuRe Taqビーズを40℃で保存したものである。
【図8】図8は、上述の4種の反応を2回繰り返したときのCt値及びPCR効率を示す。本発明のフォーマット及びpuRe TaqビーズのCt値及びPCR効率は40℃及び室温で同等であった。
【図9】図9は、本発明の一実施例でのリアルタイムPCR反応の結果を示す。左上はTaqManプライマーとプローブを含む凍結乾燥試薬を用いたリアルタイムPCRである。左下は凍結乾燥試薬対照(TaqManプライマー及びプローブは凍結乾燥せず、他の試薬は実施例1と同様に凍結乾燥した)である。右上は市販puRe Taq RTGビーズ対照(他の試薬は凍結乾燥せず)である。puRe Taq RTG反応を用いて標準曲線を作成して、他の反応を未知として処理したところ、同量の鋳型DNAを用いた反応は標準曲線と合致した(右下、「X」は「未知」を示す)。
【図10】図10は、φ29DNAポリメラーゼが凍結乾燥形態で安定であることを示す。凍結乾燥試薬又は「湿潤」混合物を用いた全ゲノム増幅アッセイを実施した。40℃で35日間保存した凍結乾燥試薬でも強い増幅が検出された。
【図11】図11は、凍結乾燥IVT試薬(A、B、C)を使用したときに、従来の「湿潤」キット(Roche社製IVT)と比較して、DNA鋳型がうまく転写されることを示す。ntcは鋳型なしの対照を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
生物試薬
本発明の方法による保存には数多くの生物試薬が適している。本発明の生物試薬組成物は、血漿又は希釈血漿での実施が好適又は必要とされる多種多様な分析法の実施に特に適している。分析法では、血漿の特定の成分又は特性と関連付けることのできる検出可能な変化を血漿に生じさせるため、血漿を1種以上の球状試薬と組合せることが一般に必要とされる。好ましくは、従来の分光光度計、蛍光光度計、光検出器などで測定できる変色、蛍光及び発光を生じる反応その他の変化を血漿に起こさせる。場合によっては、イムノアッセイその他の特異的結合アッセイを実施してもよい。
【0021】
本発明を適用し得る生物試薬の別のカテゴリーは、タンパク質及びペプチド、並びに糖タンパク質のようなそれらの誘導体である。かかるタンパク質及びペプチドは、酵素、輸送タンパク質(例えばヘモグロビン、免疫グロブリン、ホルモン、血液凝固因子、薬理活性タンパク質又はペプチド)のいずれであってもよい。
【0022】
本発明を適用し得る他のカテゴリーとしては、ヌクレオシド、ヌクレオチド(例えばデオキシヌクレオチド、リボニクレオチド及びジデオキシヌクレオチド)、ジヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、並びに酵素補因子(それらがヌクレオチドであるか否かを問わない)などがある。酵素の基質も全般に本発明を適用し得る生物試薬である。
【0023】
保存安定化のための生物試薬は、天然源、動物、植物、菌類、細菌などから単離したものでも、発酵や人工培養で増殖させた細胞から製造又は単離した試薬であってもよい。かかる細胞は形質転換細胞であってもなくてもよい。
【0024】
本発明で開発したもう一つの点は、同一反応系の2種以上の試薬を試薬ガラス球中で保存することである。これは、アッセイ又は診断キットなどで一緒に使用する必要のある複数の材料に有用である。
【0025】
複数の試薬を単一のガラス状標品で保存すると、最終用途に好都合な形態となる。例えば、あるアッセイで基質又は補因子と酵素との組合せが必要とされる場合、アッセイですぐに使用できるように2種又は3種の試薬すべてを試薬ガラス球に所要の濃度比で保存しておくことができる。
【0026】
複数の試薬を保存する場合、それらを水性エマルジョン中で混合してからガラスに導入してもよい。或いは、各々別のガラスに導入してから混合してもよい。
【0027】
複数の試薬を単一の組成物(2種のガラスを混合したものでもよい)中で保存する場合には、試薬の1種以上はタンパク質、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド又は酵素補因子とすることができる。試薬はもっと簡単な化学種であってもよい。例えば、標準的なアッセイ方法では、ピルビン酸塩とNADHが共存していることが必要とされることがある。いずれも単独では十分な安定性をもって保存できる。しかし、水溶液中で共存させると、反応し始める。試薬ガラス球に所定の割合で導入すれば、反応を起こさずに、ガラスを保存できる。「反応」という用語は、任意の生化学反応を意味する。
【0028】
本発明の好ましい生物試薬は、核酸の検出、増幅、修飾又は配列決定のための試薬系を与える酵素及び補因子である。かかる酵素としては、特に限定されないが、DNAポリメラーゼ(例えばクレノウ)、T7 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼのような各種の耐熱性DNAポリメラーゼ、AMV又はマウス逆転写酵素、T4 DNAリガーゼ、T7、T3、SP6 RNAポリメラーゼ、ファージφ29DNAポリメラーゼ及び制限酵素が挙げられる。補因子としては、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、酵素活性に必要な塩(例えば、マグネシウム、カリウム、ナトリウム)、緩衝作用に必要な塩などが挙げられる。緩衝剤の塩は、適切なpH範囲を与え、安定性に資する。使用できる緩衝剤としては、Tris(pH7.6〜8.3)が挙げられる。
【0029】
生物試薬の候補は、実施例1のプロトコルを用いて評価できる。例えば、適当な生物試薬を球状試薬で安定化させ、実施例1で用いたような機能性試験で測定される。
【0030】
ガラス形成性フィラー材料
本発明で使用できるガラス形成性フィラー材料の例としては、FICOLL(商標)、スクロース、グルコース、トレハロース、メレチトース、デキストラン(商標)及びマンニトールのような炭水化物、BSA、ゼラチン及びコラーゲンのようなタンパク質、並びにPEG及びポリビニルピロリドン(PVP)のようなポリマーが挙げられる。ガラス形成性フィラー材料は、好ましくは、FICOLL(商標)ポリマー、BSA、スクロース、デキストラン(商標)又はそれらの組合せである。本発明での使用に特に好ましいガラス形成性フィラー材料は、FICOLL(商標)ポリマーである。
【0031】
処方
生物試薬とガラス形成性フィラー材料と水との高粘度混合物の処方は、反復法で決定される。まず、その系の望ましい最終使用濃度を決定する。この濃度は通常モル濃度で表される。生物試薬毎に処方が異なることがある。次いで、かかる濃度を固体では重量/用量基準、液体では体積/用量基準に換算する。
【0032】
第3工程として、高粘度混合物の固形分(%)と所望の混合物体積の初期値を選択する。55%の固形分濃度でうまくいくことが判明した。固形分濃度が62%を超えると、混合物は、粘稠すぎて分注が難しくなる。エマルジョンが望まれる場合には、混合物の固形分濃度を52%未満とすると、混合物が薄くなりすぎて、乾燥すると透明で硬くなる。セミエマルジョンが望まれる場合、10%の下限が容認される。固形分(%)という用語は、{(固形分重量×100)/(液体重量+固形分重量)}を意味する。
【0033】
ガラス形成性材料を溶液に加えると、混合物を乾燥したときに硬いガラス状となる。したがって、望ましい混合物は溶液ではなくエマルジョンである。「エマルジョン」という用語は、固相と液相の2相が存在する飽和混合物を意味する。例えば、本発明では、生物試薬/緩衝液中のガラス形成性フィラー材料のセミエマルジョンでもよい。固形分が存在すると、エマルジョンは不透明乃至白色となる。高粘度エマルジョンも乾燥時にガラス状となるが、表面に細孔が存在し、水が入り混んで乾燥試薬標品が迅速に溶解される。エマルジョンは白色であるべきである。エマルジョンが透明であると、乾燥時に硬いガラス状となり、非多孔質となる。「多孔度」という用語は、乾燥試薬標品がその溶解を促進する気泡のポケットを複数有することを意味する。好ましい多孔度では、標品は約2分以下で溶解する。
【0034】
別の態様では、本発明は、ガラス形成性フィラー材料と生物試薬/緩衝液の混合物であって、セミエマルジョンであることを特徴とする混合物を提供する。「セミエマルジョン」とは、少なくともある程度エマルジョンの性質を有する混合物を意味する。本発明のセミエマルジョンは、固形分濃度が約10%〜約50%となるように、上述の反復法を用いることによって製造できる。セミエマルジョンを分注・乾燥すると、乾燥試薬標品を形成することができる。
【0035】
第4工程では、第2工程の1用量当たりのガラス形成性材料のグラム数を用いて、用量を計算する。
【0036】
第5工程では、用量数及び第2工程の重量/用量比を用いて、他の成分の体積中の重量を決定する。最後に、第5工程で測定した重量及び体積を用いて、最終混合物中の固形分(%)を計算する。混合物の最終固形分が所望範囲外である場合、最終的な値が正しい範囲内となるまで、別の初期値を用いて第3〜第6工程を繰り返す。
【0037】
上述の反復法によるプロトコルを用いて、任意のガラス形成性材料候補を評価できる。こうして、適当なガラス形成性材料を用いて、許容範囲内の硬さ、寸法、形状、Tg、多孔度、溶解度及び安定性を有する試薬標品を得ることができる。
【0038】
マルチウェル容器
乾燥試薬標品の製造に用いられるマルチウェル容器の例としては、ポリスチレンプレート、シリカモールドなどが挙げられる。好ましくは、マルチウェルプレートは、PCRのような用途のため標準的なサーマルサイクラーを利用できる標準的な寸法及びレイアウトのものである。
【0039】
一般に、マルチウェル容器は、ウェル領域と境界領域との2つの領域を備える。境界領域はどのような寸法、形状、厚さでもよいが、好ましくは、標準的な96又は384ウェルの市販マイクロタイタープレート(幅約85.5mm×長さ約127.75mm)の外寸と類似の外寸を有するマルチウェルプラットフォームを形成するものである。
【0040】
通例、プレートは、格子状に配置された複数の穴を備える。これらの穴はウェルと呼ばれ、個々の反応のための反応容器或いは個々の試料の保管容器として機能する。ウェルは、マルチウェルプラットフォームに二次元線形アレイとして配置される。ただし、ウェルは、幾何学的又は非幾何学的なアレイのように、任意のタイプのアレイとして設けることができる。ウェルの数は96の倍数であり、かかる範囲で好ましくは整数の二乗に96を乗じた数である。
【0041】
市販プレートのウェルは通例標準的な間隔で設計されている。96ウェルプレートは12列×8行であり、隣り合うウェルの中心間の間隔は9mmである。384ウェルプレートは24列×16行であり、隣り合うウェルの中心間の間隔は4.5mmである。1536ウェルプレートは48列×32行であり、隣り合うウェルの中心間の間隔は2.25mmである。上記フォーマットの2分の1のマイクロタイタープレートも用いられている。隣り合うウェルの中心間の間隔が同様のウェルストリップも利用できる。かかる寸法のマルチウェル容器は、当技術分野で公知のマルチウェルフォーマットトランスロケータ及びリーダーのようなロボット装置及び器具類と適合できる。
【0042】
マルチウェルプラットフォームの製造用材料は通例ポリマーである。これはポリマーが大量生産に適しているからである。好ましくは、ポリマーは、蛍光性その他の特性の低いことが知られているものから選択される。選択したポリマーが所望の特性を有していることは様々な方法で確認できる。ポリマー材料は、インサート成形又は射出成形のような当技術分野で公知の成形法又は将来開発される方法によるプレートの製造に特に適している。
【0043】
ポリマープレートに代わるものは、96ウェル及び384ウェルフォーマットのシリカモールドである。実施例に示すように、96ウェル多孔シリカモールドプレートは、試薬の分注、凍結乾燥に使用できる。その利点は、凍結乾燥後にモールドから乾燥試薬を容易に取り出せることである。
【0044】
混合及び分注
典型的な製剤(一例としてDNA標識用製剤)は以下の通り作られる。
【0045】
通例、用いられる試薬はすべて使用前にオートクレーブ又は濾過滅菌(好ましくは0.25μmフィルター)される。製剤は氷上で製造、保存され、次いで分注される。200mlのDNA標識用製剤(20000回分の用量の標品)では、Ficoll 400及びFicoll 70各15gと、20gのメレチトースを約90mlの滅菌水に加え、撹拌プレート上で溶解するまで混合する。
【0046】
20倍濃度のDNA標識用緩衝液(200mMのTris(pH7.5)、200mMのMgCl2、1MのNaCl)50mlを、10mg/mlのBSA溶液10mlと共に加える。各1mlの100mMのATP、GTP及びTTPを加える。すべての試薬を溶液に加えたら、分注に用いるまで、製剤を氷上で又は冷蔵保存する。使用直前に、400Kuのクレノウ断片DNAポリメラーゼを加える(最終標品中のグリセロール濃度を1%未満に保つため、原液の最低濃度は100Ku/mlとすべきである。)。また、使用直前に、1200A260単位のd(N)9プライマーを加える。製剤に添加する前に、プライマーを65℃で7分間加熱し、氷上で急冷しておくべきである。酵素及びプライマーの添加後、滅菌水を用いて最終体積を200mlとすべきである。最終溶液の密度は、1.14g/mlとなる。
【0047】
試薬標品を希釈溶液に溶解したときの体積が10〜100μlとなるように、均質試薬溶液の分注量当たりの最終体積は、5〜30μlのように少量であることが多く、好ましくは10μlである。
【0048】
所定量の均質溶液を典型的には液体分注ロボット(96ウェル/384ウェルピン)を用いてマルチウェル容器の各ウェルに分注する。溶液は、4μl〜20μl、好ましくは10μlの体積で分注される。
【0049】
乾燥プロセス
分注試料は凍結乾燥で乾燥させることができる。適当な乾燥法によって、許容できる硬さ、寸法、形状、Tg、多孔度、可溶性及び安定性の試薬標品を製造することができる。
【0050】
適切な凍結乾燥プロフィールの典型例を表1に示す。
【0051】
【表1】
好ましい乾燥法は凍結乾燥によるものである。分注した試薬を、96又は384ウェルのポリスチレンプレートでうまく乾燥することができる。驚くべきことに、薄肉ポリスチレンプレートを金属板ホルダーに直接接触するように載せると、金属ホルダーを用いずに乾燥させたプレートに比べ、乾燥プロセスがうまくいき、乾燥試薬の発泡及びフレークが認められない(図1及び4)。ポリスチレンウェル(管)の外壁を金属板ホルダーの金属ウェルと直接接触させると、金属棚接触面積が間接的に増大し、ひいては試料への熱伝達が改善される。一方、シリカモールドは各ウェルで厚い壁と平らな底を有しており、金属ホルダーを使用しなくても、シリカモールドでの凍結乾燥プロセスはうまくいく。これは多分モールドと凍結乾燥装置の棚との接触が良好であること、シリカの熱伝達特性によるためである。好ましい凍結乾燥プロファイルを以下の表2に示す。なお、試料は、以下のプログラムを行う前に、凍結乾燥装置で−46℃で1時間凍結させておいた。
【0052】
【表2】
保存
出願人は、ポリスチレン及びシリカ系プレート又はモールドで、錠剤、円柱及び立方形の安定な生物試薬標品をうまく製造することができた。本発明の技術によって、温度感受性のタンパク質及び核酸分子を室温で安定な単回用量標品として安定化することができる。単回用量標品(ビーズ又はケーク)は、その分子が用いられる特定のアッセイに必要な所定量の緩衝剤、塩、界面活性剤、ヌクレオチドなどを含むことができる。これらの酵素及びその組合せは、特に限定されないが、PCR、RT−PCR、リアルタイムPCR、全ゲノム増幅、インビトロ転写、cDNA合成を始めとする様々な分子生物学用途に使用できる。
【0053】
本発明の方法では、試薬混合物を液体窒素又は冷却表面で液滴を凍結する必要はないが、乾燥試薬の良好な構造的健全性は保たれる。また、本発明の方法では、製造プロセスの工程数が少ない。乾燥試薬標品は適切に封止すればプレート又はモールドで直接保存することができ、製造及び包装コストを大幅に減らすことができる。また、乾燥試薬をシリカモールドから錠剤として及びPolyfiltronics社製96ウェルプレートからキューブとして取り出して、密閉容器(蓋付き瓶)で保存してもよい。
【0054】
プレート又はモールドの封止は、蓋、テープ、熱活性化テープなどを用いて実施できる。本発明の一実施形態では、プレートの封止は、AbGene社製のThermo−Seal及びEasy−Peelシートを用いた熱活性化シールで行われる。
【0055】
本発明の試薬標品は室温安定性である。「室温安定性」とは、標品を22℃で6ヶ月以上、試薬乾燥時の活性と比べて20%未満の酵素活性の損失で保存できることを意味する。
【0056】
本発明の試薬標品は10℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。試薬標品の典型的なTgは40℃である。40℃以上のTgで室温(22℃)での安定性が担保される。好ましいTgは45℃である。ガラス転移温度は、それ以上の温度でガラス質材料の粘度が急激に低下してゴム状、次いで変形可能な可塑体となり、さらに温度を高めると液体となる温度をいう。
【0057】
ガラス転移温度は、標品の安定性の重要な指標として用いられる。Tg未満又はその近傍では、試料は安定なガラス状態のままとどまる。温度がTgを超えて上昇すると、試料はゴム状となり、安定性が減る。Tgは示差走査熱量測定で求められる。2〜5mgの試料(1〜2個の球剤を破砕したもの)をアルミニウム製パンに入れる。試料のTgは、昇温速度10℃/分で0℃から100℃に昇温させる温度制御プログラムで測定される。試料の熱の出入りは、ベースラインのシフトとして測定、表示される。Tgは、ベースラインのシフトの中点の温度として表れる。
【0058】
典型的な多孔度では、球剤は20μlの水に1分以内に溶解する。好ましい多孔度では30秒以内に溶解する。
【0059】
本発明のガラス化生物試薬標品の製造方法には、幾つかの利点がある。まず、製造プロセスが大幅に簡略化される。試薬混合物を市販マイクロタイタープレートのような標準的フォーマットのマルチウェルプレートのウェルに直接分注する。そのため、試薬の液滴を液体窒素中又は冷却表面上で凍結する必要がない。分注混合物を次いでウェル中で凍結、乾燥し、ウェル中で保存することができる。そのため、乾燥パンからビーズやケークを保存容器に移動させる必要がない。乾燥組成物はマルチウェルプレートで保存できるので、組成物を、後段の自動化されたワークフローに使用できる。プレートの処理には、ロボット装置を使用できる。
【0060】
さらに、組成物は室温で安定である。そのため、輸送コストが削減でき(ドライアイス輸送は不要となる)、冷凍保存の必要がなく、試薬の調製時間が短縮できる(解凍不要)。ユーザーにも好都合である。アッセイ成分の大半を予め分注して単回用量フォーマットで安定に保存しておくことができる。そのため、ユーザーは時間を節約でき、試薬の原液の調製のためのプラスチック消耗品のコストも節約できる。汚染及び誤差のリスクが減るため、再現性及び信頼性も増す。組成物は予め分注した形態で調製する。そのため、試料の取扱い及びピペット処理工程が減り、ユーザーによる汚染及びピペット作業の誤差の危険性が低減する。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明を例示するものにすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって規定される。本明細書の他の以下その他の箇所で引用した文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0062】
実施例1:384ウェルポリスチレンプレートでの乾燥PCR混合物の調製
生物試薬製剤(本例ではPCR用試薬混合物)を、標準的プロトコルにしたがって調製する。略述すると、10μlの球状製剤は、25mMのTris−HCl(室温でpH9.0)、125mMのKCl、3.75mMのMgCl2、0.5mMのdNTP、0.6mg/mlのBSA、3.5単位のrTaq DNAポリメラーゼ、並びに合成ポリマーFicoll 400(6.25%)、Ficoll 70(6.25%)及び二次炭水化物メレチトース(10%)からなるガラス形成性フィラー材料を含む。通例、試薬はすべて使用前にオートクレーブ又は濾過滅菌される。製剤は、ポリスチレンプレート又はシリカモールドで混合・分注されるまで、氷上で製造・保存される。最終製剤は、上述のガラス形成性フィラー材料、BSA、dNTP、rTaq DNAポリメラーゼ及び塩からなる。
【0063】
均質試薬溶液1用量当たりの最終体積は10μlであった。こうして、PCRの作業体積を25μlとすることができる。試薬は、自動ピペットを用いて384ウェルポリスチレンプレートに分注した。
【0064】
384ウェルプレートを予冷(−46℃)Vertis凍結乾燥機の棚に約60分間おいて試薬を凍結させた。凍結試薬を次いで表2に記載のプロセスによる一次乾燥及び二次乾燥に付した。
【0065】
乾燥試薬を含むプレートを、単に接着性カバー又は蓋又はヒートシールで覆うことによって、再封止可能な乾燥剤入りパウチに一体パッケージとして保存した。別法では、乾燥試薬をプレートから取り出し、乾燥試薬錠剤又はキューブとして瓶中で保存し、瓶を、再封止可能な乾燥剤入りパウチに保存した。
【0066】
乾燥試薬組成物の安定性を、λDNAのリアルタイムPCR増幅で試験し、その増幅プロファイルを市販品(GE Healthcare社製puRe Taq RTGビーズ)と比較した。試験に使用したプライマーは、配列番号1(5’−GGT TAT CGA AAT CAG CCA CAG CGC C−3’)及び配列番号2(5’−GAT GAG TTC GTG TCC GTA CAA CTG G−3’)であった。リアルタイムPCR増幅の結果を図2に示す。
【0067】
図2の左上に、乾燥試薬組成物の製造に用いた384ウェルポリスチレンプレートを示す。乾燥試薬錠剤をプラスチック瓶に入れ(左下)、再封止可能な乾燥剤入りパウチ中で室温で約1週間保存した。乾燥試薬を含む384ウェルプレートを左上に示すが、プレートは接着性シールで覆われている。様々な希釈度のλDNA鋳型の標準曲線を右上に示す。様々な希釈度のλDNAのリアルタイム増幅曲線を右下に示す。結論として、リアルタイムPCR増幅反応の成功は乾燥試薬組成物が安定であることを立証している。
【0068】
実施例2:96ウェルシリカモールドでの乾燥PCR混合物の調製
生物試薬製剤及びガラス形成性フィラー材料を実施例1に準拠して調製及び混合した。約20μlの試薬混合物を、自動ピペットを用いて96ウェルシリカモールドに分注した(図3、左上)。シリカモールドを、予冷(−46℃)Vertis凍結乾燥機に約60分間載せて試薬を凍結させた。凍結試薬を次いで表2に記載のプロセスによる一次乾燥及び二次乾燥に付した。
【0069】
乾燥試薬は、単にモールドを接着性シールで覆い、プレートを乾燥剤入りアルミニウムパウチ中に入れることによってモールド中で保存することができた。別法として、乾燥試薬をモールドから乾燥試薬ケークとして取り出し、乾燥剤入り瓶で保存した。
【0070】
乾燥試薬組成物の安定性を、実施例1に記載のλDNAのリアルタイムPCR増幅で試験し、その増幅プロファイルを市販品(GE Healthcare社製puRe Taq RTGビーズ)と比較した。結果を図3に示す。
【0071】
図3の左上に、乾燥試薬組成物の製造に用いた96ウェルシリカモールドを示す。乾燥試薬のキューブをプラスチック瓶に入れ(左下)、再封止可能な乾燥剤入りパウチ中で室温で約1週間保存してから、λDNA機能試験を実施した。様々な希釈度のλDNA鋳型の標準曲線を右上に示す。様々な希釈度のλDNAのリアルタイム増幅プロットを右下に示す。結論として、リアルタイムPCR増幅反応の成功は乾燥試薬組成物が安定であったことを立証している。
【0072】
実施例3:96ウェルポリスチレンプレートでの乾燥PCR混合物の調製
生物試薬製剤及びガラス形成性フィラー材料を実施例1に準拠して調製及び混合した。約10μlの試薬混合物を、液体分注ロボットを用いて分注した(図1、左下)。96ウェルプレートを96ウェル金属ホルダーに載せた(図4)。96ウェルプレートを金属ホルダーと共に予冷(−46℃)Vertis凍結乾燥機に約60分間載せて、試薬を凍結させた。凍結試薬を次いで表2に記載のプロセスによる一次乾燥及び二次乾燥に付した。
【0073】
乾燥試薬は、ヒートシーラーを用いて単に接着性カバー又は蓋又はヒートシールで96ウェルプレートを覆うことによって一体パッケージとして保存することができた。調製したての「湿潤」製剤及び乾燥試薬、並びにpuRe Taq RTGビーズで、λDNAリアルタイムPCR機能試験を行った。封止プレートは、室温又は40℃のインキュベーター内で8日間、乾燥剤入りのパウチ中で保存した。乾燥試薬組成物の安定性は、λDNAのリアルタイムPCR増幅反応(実施例1参照)で試験し、その増幅プロファイルを市販品(GE Healthcare社製puRe Taq RTGビーズ)と比較した。結果を、図6、図7及び図8に示す。
【0074】
図6は、96ウェル乾燥PCRケークでのλqPCR並びに「湿潤」製剤及びpure Taq RTGビーズと比較した結果を示す。この図は、本発明の一実施形態にしたがって製造した乾燥PCR試薬の安定性を示す。鋳型を含まない対照と併せて、鋳型として出発濃度1000万〜10コピーの様々な濃度のλDNAでリアルタイムPCRを実施した。Ct値及びPCR効率に関して、本発明の実施形態(右上)とpuRe Taq RTGビーズ(左下)と「湿潤」製剤(左上)とで同様の性能が認められた(左下の表)。
【0075】
図7は、本発明の一実施形態にしたがって製造した乾燥PCR試薬の安定性を示す。乾燥PCRミックスを40℃又は室温(RT)で8日間保存してから、λDNAのqPCRに使用した。本発明の方法で製造した試薬は、市販のpuRe Taq RTGビーズと同様の性能を示した。左上は、室温で保存した乾燥PCR試薬ケークである。右上は、40℃で保存した乾燥PCR試薬ケークである。左下は、室温で保存したpuRe Taq RTGビーズである。右下は、40℃で保存したpuRe Taq RTGビーズである。図8は、室温及び40℃で保存した本発明の実施形態の試薬及びpureTaq RTGビーズでのCt値及びPCR効率を示す。
【0076】
実施例4:リアルタイムPCRアッセイ用の乾燥試薬の調製
リアルタイムPCRは、遺伝子発現解析のアッセイプラットフォームとして普及しつつある。リアルタイムPCRにおける増幅産物を検出する方法の一つでは、鋳型の特異的部分に相同な二重標識一本鎖(ss)DNAプローブを使用する。このプローブの蛍光修飾部は、レポーター(FAM)及びクエンチャー(TAMRA)として役立つ。一本鎖鋳型の存在下で、プローブは鋳型にアニールするが、レポーター色素とクエンチャー色素が近接しているので蛍光信号は発しない。Taq DNAポリメラーゼで鋳型からDNAが増幅されると、鋳型にアニールした標識プローブが酵素の5’−3’エキソヌクレアーゼ活性によって開裂し、クエンチャー色素が放出されるので、レポーターは蛍光を発するようになる。すると、蛍光信号がリアルタイム機器で記録される。
【0077】
本例では、賦形剤の存在下でPCRプライマーをTaqManプローブと共に凍結乾燥することができて、プライマー及びプローブを凍結乾燥しなかった反応に比べて、機能を損なわずにリアルタイムPCRに使用できることを実証する。β−アクチンのアッセイ用2.5倍濃縮製剤は、25mMのTris(pH9)、125mMのKCl、3.75mMのMgCl2、0.6mg/mlのBSA、0.5mMのdNTP、0.25U/μlのrTaq、0.05%のTween 20、0.05%のNP−40、1.5μMのβ−アクチンFwdプライマー(配列番号3:5’−TCA CCC ACA CTG TGC CCA TCT ACG A−3’)、1.5μMのβ−アクチンRevプライマー(配列番号4:5’−CAG CGG AAC CGC TCA TTG CCA ATG G−3’)、1μMのβ−アクチンプローブ(配列番号5:5’−FAM−ATG CCC−N(TAMRA)CCC CCA TGC CAT C CTG CGT p−3’)、6.25%のFicoll 70、6.25%のFicoll 400及び10%メレチトースを含む。
【0078】
製剤10μlを、96ウェルプレートにピペットで分注し、凍結乾燥した。1個の乾燥ケークを様々な量のヒトゲノムDNA鋳型と共に25μlの最終体積に再水和した。リアルタイムPCR反応はABI 7900 Fast Real Time装置で実施した。この反応を、プライマー及びプローブを含まない同様の製剤と比較した。後者の反応では、PCR反応のセットアップ中に、プライマーとプローブを加えた。さらに別の対照として、市販のpuRe Taq RTGビーズを用いた。
【0079】
図9は、これらの反応の結果を示す。左上はTaqManプライマー及びプローブを含む凍結乾燥試薬を用いたリアルタイムPCRである。左下は対照凍結乾燥試薬(プライマー及びプローブは凍結乾燥製剤に配合せず、リアルタイムPCR反応の前に加えた)。右上は市販のpuRe Taq RTGビーズの対照(他の試薬はいずれも凍結乾燥せず)である。すべての反応で、増幅プロファイルR2値及び傾きは同等であった。puRe Taq RTG反応を用いて標準曲線の作成し、他のすべての反応を未知として処理したところ、同量の鋳型DNAでの反応は標準曲線と合致した(右下)。こうした結果は、TaqManプライマー及びプローブがRTGの導入に順応できることを示している。
【0080】
実施例5:φ29DNAポリメラーゼを含有する乾燥試薬の調製
φ29DNAポリメラーゼは、全ゲノム増幅並びにローリングサークル増幅に広く使用されている。出願人は、この酵素を、全ゲノム増幅の可能な製剤として乾燥凍結した。その分析結果は、凍結乾燥製剤が全ゲノム増幅の実施に際して「湿潤」製剤と同じ活性を有していることを示している。
【0081】
GenomiPhi HY(高収率)DNA増幅キット(GE Healthcare社)は、等温鎖置換増幅による全ゲノム増幅に必要なすべての成分を含んでいる。GenomiPhi反応の出発材料は、精製DNAでも、非精製細胞溶解物でもよい。数ngの量の出発材料からμgオーダーのDNAをわずか数時間で生成させることができる。GenomiPhiHY反応での典型的なDNA収率は、50μl反応当たり40〜50μgであり、平均的な生成物の鎖長は10kbを超える。DNA複製は酵素の校正3’−5’エキソヌクレアーゼ活性のため極めて正確である。
【0082】
φ29DNAポリメラーゼ、ランダムヘキサマー、dNTP及びGenomiPhi HY反応緩衝液を、安定剤のFicoll 70、Ficoll 400、メレチトース及びBSAと共に含むGenomiPhi反応混合物を2倍混合物として調製した。混合物の10μl量を12ウェルPCRストリップチューブに分注した。分注生成物をVirTis凍結乾燥機を用いてケークとして凍結乾燥した。乾燥生成物を室温又は40℃で35日間保存した。これらの生成物で、10ngの少量のヒトゲノムDNAでも全ゲノム増幅をうまく実施できた。これを、調製したての混合物を使用した全ゲノム増幅と、時間0及び室温又は40℃で35日間保存後に比較した。
【0083】
図10は、凍結乾燥試薬又は「湿潤」混合物を用いた全ゲノム増幅アッセイの結果を示す。10ngのヒトゲノムDNAを鋳型材料として使用し、30℃で90分間増幅反応を行った。90分で4μg超のDNAが生成するものと予測された。PicoGreenアッセイで、40℃で35日間保存しておいた凍結乾燥試薬でも強い増幅が検出された。φ29DNAポリメラーゼは凍結乾燥フォーマットでうまく安定化された。
【0084】
実施例6:インビトロ転写用の乾燥試薬の製造
転写は、すべての種類の細胞で定期的に行われる生命維持に必須な生物学的プロセスであり、T7 RNAポリメラーゼのようなDNA依存性RNAポリメラーゼによってDNA鋳型を用いてRNAが作られる。インビトロ転写(IVT)では、エンドユーザーが選択した転写物を生成するため、これと同じプロセスを細胞外の試験管内で行う。得られたRNA分子は、タンパク質のインビトロ翻訳或いはハイブリダイゼーション反応、例えばノーザンブロット、サザンブロット、マイクロアレイ分析及びマイクロインジェクションなどに使用できる。
【0085】
本発明者らは、RNAの生成に必要な、鋳型を除くすべての成分を賦形剤の存在下で凍結乾燥した室温安定性凍結乾燥IVT試薬を成功裡に得ることができた。これによってIVT反応は大幅に簡略化され、エンドユーザーは鋳型DNAと水を加えるだけで反応を開始させることができる。
【0086】
凍結乾燥試薬の製造に用いられるIVT製剤は、40mMのTris(pH8.0)、10mMのMgCl2、4mMのスペルミジン、10mMのDTT、50μg/mlのBSA、10mMのNaCl、0.5mMのATP、0.5mMのCTP、0.5mMのGTP、0.5mMのUTP、2UのRNAGuard、10UのT7RNAポリメラーゼ(GE Healthcare)、6.25%のFicoll 400、6.25%のFicoll 70、10%のメレチトースを含んでいた。調製した製剤を8ウェルのストリップチューブに25μlずつ分注し、実施例1及び表2にしたがって凍結乾燥した。乾燥試薬ケークを、Roche社製SP6/T7 IVTキットの対照DNAを用いて試験した。並行して、Roche社製SP6/T7 IVTキットを用いたIVT反応を実施した。
【0087】
予想通り、Roche社製キットだけでなく、凍結乾燥試薬を用いても、約1000塩基対の転写物が生成した(図11)。したがって、転写に必要な試薬を賦形剤の存在下で成功裡に凍結乾燥させ、DNA鋳型の存在下で適量の反応体積に再水和すれば、RNA転写物を生成させることができる。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の教示内容から逸脱せずに様々な変更及び修正をなすことができることは自明であろう。以上の明細書及び添付の図面に記載された事項は例示を目的としたものにすぎず、限定的なものではない。本発明の技術的範囲は、従来技術に照らして特許請求の範囲を解釈することによって規定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体材料及び試薬の多孔質ガラス状態での長期保存に関する。特に、本発明は、かかる材料及び試薬のマルチウェルプレートを用いた製造法並びに保存に関する。
【背景技術】
【0002】
室温の溶液中で単離、精製、保存できるほど十分に安定な生体活性材料は少ない。生物試薬は、通常4℃、−20℃又は−70℃の温度に保たれたグリセロール溶液中で保存される。これらはまとめて保存され、使用時に他の試薬と混合される。
【0003】
生体試料の簡単で効率的な検査のための試薬を調製する際には、別々の一様な量の乾燥化学試薬製剤を得ることが重要となることが多い。生物試薬の安定化に従前使用されてきた担体又はフィラーの1種は、ガラス形成性フィラー材料である。生物試薬の溶液がガラス形成性フィラー材料(水溶性又は水膨潤性物質)に導入される。これを乾燥すると、生物試薬が固定化され安定化されたガラス状組成物が得られる。生物試薬の安定化に用いるガラス形成性フィラー材料の例については、米国特許第5098893号、同第5200399号、同第5240843号を参照されたい。
【0004】
グルコース、スクロース、マルトース、マルトトリオースのような炭水化物は、ガラス形成性物質の重要な群をなす。その他のポリヒドロキシ化合物、例えばソルビトールのような炭水化物誘導体及び化学修飾炭水化物も使用できる。ガラス形成性物質のもう一つの重要な群は、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド又はポリエチレンイミンのような合成ポリマーである。
【0005】
ガラス形成性物質のさらに別の例として、GE Healthcare社からFICOLL(商標)という商標で市販されているもののような糖共重合体がある。FICOLL(商標)は分子量5000〜1000000であり、スクロース残基がエーテルを介して二官能性基に結合している(米国特許第3300474号)。二官能性基は炭素原子数2又は3以上のアルキレンとし得るが、通常は炭素原子数は10以下である。二官能性基は、糖残基同士を結合する役割を果たす。かかるポリマーは、例えば、糖とハロヒドリン又はビスエポキシ化合物との反応によって製造できる。
【0006】
炭水化物ポリマーのガラス状マトリックス中で安定化させた生体材料は、凍結乾燥(米国特許第5593824号(Treml他)、同第5098893号(Franks及びHatley))又は真空乾燥(米国特許第5565318号(Walker他))のいずれかによって製造できる。かかる水溶性試薬は、複雑な分子生物学用途での使用に適している。このアプローチは、1回分の使用量の酵素、ヌクレオチド又は他の成分からなる試薬系に特に有用である。ガラス状マトリックスを再構成すると、DNA増幅、DNA配列決定を始めとする各種用途に使用できる緩衝酵素が得られる。
【0007】
現在、数多くの乾燥分子生物学用製品が市販されている。しかし、これらの製品には、煩雑な多大な手作業を要するプロセスで製造されるものもある。乾燥時に冷蔵を要する製品もある。室温乾燥試薬の改良製造方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5098893号明細書
【特許文献2】米国特許第5200399号明細書
【特許文献3】米国特許第5240843号明細書
【特許文献4】米国特許第3300474号明細書
【特許文献5】米国特許第5593824号明細書
【特許文献6】米国特許第5565318号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様では、乾燥試薬の製造方法を提供する。本方法は、1種以上の緩衝生物試薬の水溶液を調製する工程と、ガラス形成性フィラー材料を緩衝生物試薬溶液と混合して、多孔質ガラス状組成物の形成を促進するのに十分な濃度のフィラー材料を含む混合物を調製する工程と、混合物をマルチウェル容器のウェルに所定量分注する工程と、上記容器中で混合物を乾燥して乾燥試薬標品を形成する工程を含んでおり、試薬標品は水溶性であり、室温安定性に十分なTgを有する。混合物は、好ましくは均質溶液である。
【0010】
本発明の一実施形態では、乾燥試薬標品は、長期室温保存のため試薬瓶に回収する。
【0011】
本発明の別の実施形態では、乾燥試薬はマルチウェル容器に保存され、容器の上部は長期保存のためシールテープで封止される。シールテープは、適宜、熱活性化される。
【0012】
本発明のマルチウェル容器は、シリカモールド又はポリスチレンプレートとすることができる。マルチウェル容器がポリスチレンプレートである場合、本発明は、凍結乾燥前に、ポリスチレンプレートを金属モールドに載せて、効率的な熱伝達のためポリスチレンプレートの各ウェルの外壁を金属モールドのウェルと密着させる工程をさらに含む。本発明者らは、これによって、乾燥プロセスが改善され、健全性の向上した乾燥試薬が得られることを見出した。
【0013】
別の態様では、本発明は、上述の方法で製造した乾燥生物試薬組成物を提供する。
【0014】
本発明の方法で製造した生物試薬組成物は、水溶性であり、室温安定性を担保するTgを有する。好ましくは、生物試薬組成物は構造的健全性を有する。
【0015】
生物試薬組成物は、25μlの水溶液に1分未満、好ましくは30秒未満で完全に溶解する。生物試薬組成物は好ましくは10%未満の水分含量を有する。
【0016】
生物試薬組成物は、単独では室温の水溶液中で不安定な1種以上の試薬を含んでいてもよい。生物試薬組成物は複数の試薬を含んでいてもよく、それらは室温の水溶液中で互いに反応するものであっても、反応しないものであってもよい。
【0017】
したがって、本発明の目的及び利点は、乾燥生物試薬組成物並びにその製造方法を提供することである。
【0018】
本発明の上記その他の目的や利点は、以下の記載から明らかとなろう。ただし、以下の記載は、好ましい実施形態について記載したものにすぎず、本発明の範囲を把握するには特許請求の範囲を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る乾燥試薬標品の製造方法の作業の流れを示す図である。
【図2】図2 の左上は、本発明の一実施形態に係る乾燥試薬標品の製造方法に使用される384ウェルのポリスチレンプレートを示す。右上は、鋳型を含まない対照を含め、鋳型として出発濃度1000万〜1000コピーの様々な量のλDNAを用いた標準曲線を示す。左下は、384ウェルポリスチレンプレートから製造し、プラスチックボトル中で保存した乾燥試薬標品のケーク/キューブを示す。右下は、乾燥試薬標品がλDNAリアルタイムqPCR増幅反応にうまく使用できたことを示す増幅プロットを示す。
【図3】図3の左上は、本発明の一実施形態に係る乾燥試薬標品の製造方法に使用される96ウェルのシリカモールドを示す。右上は、鋳型を含まない対照を含め、鋳型として出発濃度1000万〜1000コピーの様々な量のλDNAを用いた標準曲線を示す。左下は、96ウェルシリカモールドから製造し、プラスチックボトル中で保存した乾燥試薬錠剤を示す。右下は、乾燥試薬標品がλDNAリアルタイムqPCR増幅反応にうまく使用できたことを示す増幅プロットを示す。
【図4】図4は、凍結乾燥前に、PCR製剤の入った96ウェルPCRプレートを金属ホルダーに嵌め込むところを示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にしたがって製造した様々なフォーマットの室温安定性PCR試薬を示す。左上は瓶中の乾燥PCRミックスであり、右上は96ウェルプレート中の乾燥PCRミックスであり、左下は384ウェルプレート中の乾燥PCRミックスであり、右下は96ウェル多孔プレート中の乾燥PCRミックスである。
【図6】図6は、本発明の実施形態にしたがって製造した乾燥PCR試薬の安定性を示す。乾燥PCRミックスをλDNAのqPCRに使用した。(1)「湿潤」ビーズミックス(左上)、(2)本発明のプロトコルで製造した乾燥ケーク(右上)、(3)GE HealthcareのpuRe taq Ready−To−Go(商標)(RTG)PCRビーズ(左下)で同様の性能が認められた。右下は、上述の3つの反応を3回繰り返したときのCt値及びPCR効率。新規フォーマット及びpuRe TaqビーズのCt値及びPCR効率は同等であった。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にしたがって製造した乾燥PCR試薬の安定性を示す。乾燥PCRミックスを40℃及び室温で8日間保存した。乾燥試薬をλDNAのqPCRに使用したところ、同様の性能が認められた。左上は乾燥PCR試薬ケークを室温で保存したものであり、右上は乾燥PCR試薬ケークを40℃で保存したものである。左下はpuRe Taqビーズ(GE Healthcare)を室温で保存したものであり、右下はpuRe Taqビーズを40℃で保存したものである。
【図8】図8は、上述の4種の反応を2回繰り返したときのCt値及びPCR効率を示す。本発明のフォーマット及びpuRe TaqビーズのCt値及びPCR効率は40℃及び室温で同等であった。
【図9】図9は、本発明の一実施例でのリアルタイムPCR反応の結果を示す。左上はTaqManプライマーとプローブを含む凍結乾燥試薬を用いたリアルタイムPCRである。左下は凍結乾燥試薬対照(TaqManプライマー及びプローブは凍結乾燥せず、他の試薬は実施例1と同様に凍結乾燥した)である。右上は市販puRe Taq RTGビーズ対照(他の試薬は凍結乾燥せず)である。puRe Taq RTG反応を用いて標準曲線を作成して、他の反応を未知として処理したところ、同量の鋳型DNAを用いた反応は標準曲線と合致した(右下、「X」は「未知」を示す)。
【図10】図10は、φ29DNAポリメラーゼが凍結乾燥形態で安定であることを示す。凍結乾燥試薬又は「湿潤」混合物を用いた全ゲノム増幅アッセイを実施した。40℃で35日間保存した凍結乾燥試薬でも強い増幅が検出された。
【図11】図11は、凍結乾燥IVT試薬(A、B、C)を使用したときに、従来の「湿潤」キット(Roche社製IVT)と比較して、DNA鋳型がうまく転写されることを示す。ntcは鋳型なしの対照を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
生物試薬
本発明の方法による保存には数多くの生物試薬が適している。本発明の生物試薬組成物は、血漿又は希釈血漿での実施が好適又は必要とされる多種多様な分析法の実施に特に適している。分析法では、血漿の特定の成分又は特性と関連付けることのできる検出可能な変化を血漿に生じさせるため、血漿を1種以上の球状試薬と組合せることが一般に必要とされる。好ましくは、従来の分光光度計、蛍光光度計、光検出器などで測定できる変色、蛍光及び発光を生じる反応その他の変化を血漿に起こさせる。場合によっては、イムノアッセイその他の特異的結合アッセイを実施してもよい。
【0021】
本発明を適用し得る生物試薬の別のカテゴリーは、タンパク質及びペプチド、並びに糖タンパク質のようなそれらの誘導体である。かかるタンパク質及びペプチドは、酵素、輸送タンパク質(例えばヘモグロビン、免疫グロブリン、ホルモン、血液凝固因子、薬理活性タンパク質又はペプチド)のいずれであってもよい。
【0022】
本発明を適用し得る他のカテゴリーとしては、ヌクレオシド、ヌクレオチド(例えばデオキシヌクレオチド、リボニクレオチド及びジデオキシヌクレオチド)、ジヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、並びに酵素補因子(それらがヌクレオチドであるか否かを問わない)などがある。酵素の基質も全般に本発明を適用し得る生物試薬である。
【0023】
保存安定化のための生物試薬は、天然源、動物、植物、菌類、細菌などから単離したものでも、発酵や人工培養で増殖させた細胞から製造又は単離した試薬であってもよい。かかる細胞は形質転換細胞であってもなくてもよい。
【0024】
本発明で開発したもう一つの点は、同一反応系の2種以上の試薬を試薬ガラス球中で保存することである。これは、アッセイ又は診断キットなどで一緒に使用する必要のある複数の材料に有用である。
【0025】
複数の試薬を単一のガラス状標品で保存すると、最終用途に好都合な形態となる。例えば、あるアッセイで基質又は補因子と酵素との組合せが必要とされる場合、アッセイですぐに使用できるように2種又は3種の試薬すべてを試薬ガラス球に所要の濃度比で保存しておくことができる。
【0026】
複数の試薬を保存する場合、それらを水性エマルジョン中で混合してからガラスに導入してもよい。或いは、各々別のガラスに導入してから混合してもよい。
【0027】
複数の試薬を単一の組成物(2種のガラスを混合したものでもよい)中で保存する場合には、試薬の1種以上はタンパク質、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド又は酵素補因子とすることができる。試薬はもっと簡単な化学種であってもよい。例えば、標準的なアッセイ方法では、ピルビン酸塩とNADHが共存していることが必要とされることがある。いずれも単独では十分な安定性をもって保存できる。しかし、水溶液中で共存させると、反応し始める。試薬ガラス球に所定の割合で導入すれば、反応を起こさずに、ガラスを保存できる。「反応」という用語は、任意の生化学反応を意味する。
【0028】
本発明の好ましい生物試薬は、核酸の検出、増幅、修飾又は配列決定のための試薬系を与える酵素及び補因子である。かかる酵素としては、特に限定されないが、DNAポリメラーゼ(例えばクレノウ)、T7 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼのような各種の耐熱性DNAポリメラーゼ、AMV又はマウス逆転写酵素、T4 DNAリガーゼ、T7、T3、SP6 RNAポリメラーゼ、ファージφ29DNAポリメラーゼ及び制限酵素が挙げられる。補因子としては、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、酵素活性に必要な塩(例えば、マグネシウム、カリウム、ナトリウム)、緩衝作用に必要な塩などが挙げられる。緩衝剤の塩は、適切なpH範囲を与え、安定性に資する。使用できる緩衝剤としては、Tris(pH7.6〜8.3)が挙げられる。
【0029】
生物試薬の候補は、実施例1のプロトコルを用いて評価できる。例えば、適当な生物試薬を球状試薬で安定化させ、実施例1で用いたような機能性試験で測定される。
【0030】
ガラス形成性フィラー材料
本発明で使用できるガラス形成性フィラー材料の例としては、FICOLL(商標)、スクロース、グルコース、トレハロース、メレチトース、デキストラン(商標)及びマンニトールのような炭水化物、BSA、ゼラチン及びコラーゲンのようなタンパク質、並びにPEG及びポリビニルピロリドン(PVP)のようなポリマーが挙げられる。ガラス形成性フィラー材料は、好ましくは、FICOLL(商標)ポリマー、BSA、スクロース、デキストラン(商標)又はそれらの組合せである。本発明での使用に特に好ましいガラス形成性フィラー材料は、FICOLL(商標)ポリマーである。
【0031】
処方
生物試薬とガラス形成性フィラー材料と水との高粘度混合物の処方は、反復法で決定される。まず、その系の望ましい最終使用濃度を決定する。この濃度は通常モル濃度で表される。生物試薬毎に処方が異なることがある。次いで、かかる濃度を固体では重量/用量基準、液体では体積/用量基準に換算する。
【0032】
第3工程として、高粘度混合物の固形分(%)と所望の混合物体積の初期値を選択する。55%の固形分濃度でうまくいくことが判明した。固形分濃度が62%を超えると、混合物は、粘稠すぎて分注が難しくなる。エマルジョンが望まれる場合には、混合物の固形分濃度を52%未満とすると、混合物が薄くなりすぎて、乾燥すると透明で硬くなる。セミエマルジョンが望まれる場合、10%の下限が容認される。固形分(%)という用語は、{(固形分重量×100)/(液体重量+固形分重量)}を意味する。
【0033】
ガラス形成性材料を溶液に加えると、混合物を乾燥したときに硬いガラス状となる。したがって、望ましい混合物は溶液ではなくエマルジョンである。「エマルジョン」という用語は、固相と液相の2相が存在する飽和混合物を意味する。例えば、本発明では、生物試薬/緩衝液中のガラス形成性フィラー材料のセミエマルジョンでもよい。固形分が存在すると、エマルジョンは不透明乃至白色となる。高粘度エマルジョンも乾燥時にガラス状となるが、表面に細孔が存在し、水が入り混んで乾燥試薬標品が迅速に溶解される。エマルジョンは白色であるべきである。エマルジョンが透明であると、乾燥時に硬いガラス状となり、非多孔質となる。「多孔度」という用語は、乾燥試薬標品がその溶解を促進する気泡のポケットを複数有することを意味する。好ましい多孔度では、標品は約2分以下で溶解する。
【0034】
別の態様では、本発明は、ガラス形成性フィラー材料と生物試薬/緩衝液の混合物であって、セミエマルジョンであることを特徴とする混合物を提供する。「セミエマルジョン」とは、少なくともある程度エマルジョンの性質を有する混合物を意味する。本発明のセミエマルジョンは、固形分濃度が約10%〜約50%となるように、上述の反復法を用いることによって製造できる。セミエマルジョンを分注・乾燥すると、乾燥試薬標品を形成することができる。
【0035】
第4工程では、第2工程の1用量当たりのガラス形成性材料のグラム数を用いて、用量を計算する。
【0036】
第5工程では、用量数及び第2工程の重量/用量比を用いて、他の成分の体積中の重量を決定する。最後に、第5工程で測定した重量及び体積を用いて、最終混合物中の固形分(%)を計算する。混合物の最終固形分が所望範囲外である場合、最終的な値が正しい範囲内となるまで、別の初期値を用いて第3〜第6工程を繰り返す。
【0037】
上述の反復法によるプロトコルを用いて、任意のガラス形成性材料候補を評価できる。こうして、適当なガラス形成性材料を用いて、許容範囲内の硬さ、寸法、形状、Tg、多孔度、溶解度及び安定性を有する試薬標品を得ることができる。
【0038】
マルチウェル容器
乾燥試薬標品の製造に用いられるマルチウェル容器の例としては、ポリスチレンプレート、シリカモールドなどが挙げられる。好ましくは、マルチウェルプレートは、PCRのような用途のため標準的なサーマルサイクラーを利用できる標準的な寸法及びレイアウトのものである。
【0039】
一般に、マルチウェル容器は、ウェル領域と境界領域との2つの領域を備える。境界領域はどのような寸法、形状、厚さでもよいが、好ましくは、標準的な96又は384ウェルの市販マイクロタイタープレート(幅約85.5mm×長さ約127.75mm)の外寸と類似の外寸を有するマルチウェルプラットフォームを形成するものである。
【0040】
通例、プレートは、格子状に配置された複数の穴を備える。これらの穴はウェルと呼ばれ、個々の反応のための反応容器或いは個々の試料の保管容器として機能する。ウェルは、マルチウェルプラットフォームに二次元線形アレイとして配置される。ただし、ウェルは、幾何学的又は非幾何学的なアレイのように、任意のタイプのアレイとして設けることができる。ウェルの数は96の倍数であり、かかる範囲で好ましくは整数の二乗に96を乗じた数である。
【0041】
市販プレートのウェルは通例標準的な間隔で設計されている。96ウェルプレートは12列×8行であり、隣り合うウェルの中心間の間隔は9mmである。384ウェルプレートは24列×16行であり、隣り合うウェルの中心間の間隔は4.5mmである。1536ウェルプレートは48列×32行であり、隣り合うウェルの中心間の間隔は2.25mmである。上記フォーマットの2分の1のマイクロタイタープレートも用いられている。隣り合うウェルの中心間の間隔が同様のウェルストリップも利用できる。かかる寸法のマルチウェル容器は、当技術分野で公知のマルチウェルフォーマットトランスロケータ及びリーダーのようなロボット装置及び器具類と適合できる。
【0042】
マルチウェルプラットフォームの製造用材料は通例ポリマーである。これはポリマーが大量生産に適しているからである。好ましくは、ポリマーは、蛍光性その他の特性の低いことが知られているものから選択される。選択したポリマーが所望の特性を有していることは様々な方法で確認できる。ポリマー材料は、インサート成形又は射出成形のような当技術分野で公知の成形法又は将来開発される方法によるプレートの製造に特に適している。
【0043】
ポリマープレートに代わるものは、96ウェル及び384ウェルフォーマットのシリカモールドである。実施例に示すように、96ウェル多孔シリカモールドプレートは、試薬の分注、凍結乾燥に使用できる。その利点は、凍結乾燥後にモールドから乾燥試薬を容易に取り出せることである。
【0044】
混合及び分注
典型的な製剤(一例としてDNA標識用製剤)は以下の通り作られる。
【0045】
通例、用いられる試薬はすべて使用前にオートクレーブ又は濾過滅菌(好ましくは0.25μmフィルター)される。製剤は氷上で製造、保存され、次いで分注される。200mlのDNA標識用製剤(20000回分の用量の標品)では、Ficoll 400及びFicoll 70各15gと、20gのメレチトースを約90mlの滅菌水に加え、撹拌プレート上で溶解するまで混合する。
【0046】
20倍濃度のDNA標識用緩衝液(200mMのTris(pH7.5)、200mMのMgCl2、1MのNaCl)50mlを、10mg/mlのBSA溶液10mlと共に加える。各1mlの100mMのATP、GTP及びTTPを加える。すべての試薬を溶液に加えたら、分注に用いるまで、製剤を氷上で又は冷蔵保存する。使用直前に、400Kuのクレノウ断片DNAポリメラーゼを加える(最終標品中のグリセロール濃度を1%未満に保つため、原液の最低濃度は100Ku/mlとすべきである。)。また、使用直前に、1200A260単位のd(N)9プライマーを加える。製剤に添加する前に、プライマーを65℃で7分間加熱し、氷上で急冷しておくべきである。酵素及びプライマーの添加後、滅菌水を用いて最終体積を200mlとすべきである。最終溶液の密度は、1.14g/mlとなる。
【0047】
試薬標品を希釈溶液に溶解したときの体積が10〜100μlとなるように、均質試薬溶液の分注量当たりの最終体積は、5〜30μlのように少量であることが多く、好ましくは10μlである。
【0048】
所定量の均質溶液を典型的には液体分注ロボット(96ウェル/384ウェルピン)を用いてマルチウェル容器の各ウェルに分注する。溶液は、4μl〜20μl、好ましくは10μlの体積で分注される。
【0049】
乾燥プロセス
分注試料は凍結乾燥で乾燥させることができる。適当な乾燥法によって、許容できる硬さ、寸法、形状、Tg、多孔度、可溶性及び安定性の試薬標品を製造することができる。
【0050】
適切な凍結乾燥プロフィールの典型例を表1に示す。
【0051】
【表1】
好ましい乾燥法は凍結乾燥によるものである。分注した試薬を、96又は384ウェルのポリスチレンプレートでうまく乾燥することができる。驚くべきことに、薄肉ポリスチレンプレートを金属板ホルダーに直接接触するように載せると、金属ホルダーを用いずに乾燥させたプレートに比べ、乾燥プロセスがうまくいき、乾燥試薬の発泡及びフレークが認められない(図1及び4)。ポリスチレンウェル(管)の外壁を金属板ホルダーの金属ウェルと直接接触させると、金属棚接触面積が間接的に増大し、ひいては試料への熱伝達が改善される。一方、シリカモールドは各ウェルで厚い壁と平らな底を有しており、金属ホルダーを使用しなくても、シリカモールドでの凍結乾燥プロセスはうまくいく。これは多分モールドと凍結乾燥装置の棚との接触が良好であること、シリカの熱伝達特性によるためである。好ましい凍結乾燥プロファイルを以下の表2に示す。なお、試料は、以下のプログラムを行う前に、凍結乾燥装置で−46℃で1時間凍結させておいた。
【0052】
【表2】
保存
出願人は、ポリスチレン及びシリカ系プレート又はモールドで、錠剤、円柱及び立方形の安定な生物試薬標品をうまく製造することができた。本発明の技術によって、温度感受性のタンパク質及び核酸分子を室温で安定な単回用量標品として安定化することができる。単回用量標品(ビーズ又はケーク)は、その分子が用いられる特定のアッセイに必要な所定量の緩衝剤、塩、界面活性剤、ヌクレオチドなどを含むことができる。これらの酵素及びその組合せは、特に限定されないが、PCR、RT−PCR、リアルタイムPCR、全ゲノム増幅、インビトロ転写、cDNA合成を始めとする様々な分子生物学用途に使用できる。
【0053】
本発明の方法では、試薬混合物を液体窒素又は冷却表面で液滴を凍結する必要はないが、乾燥試薬の良好な構造的健全性は保たれる。また、本発明の方法では、製造プロセスの工程数が少ない。乾燥試薬標品は適切に封止すればプレート又はモールドで直接保存することができ、製造及び包装コストを大幅に減らすことができる。また、乾燥試薬をシリカモールドから錠剤として及びPolyfiltronics社製96ウェルプレートからキューブとして取り出して、密閉容器(蓋付き瓶)で保存してもよい。
【0054】
プレート又はモールドの封止は、蓋、テープ、熱活性化テープなどを用いて実施できる。本発明の一実施形態では、プレートの封止は、AbGene社製のThermo−Seal及びEasy−Peelシートを用いた熱活性化シールで行われる。
【0055】
本発明の試薬標品は室温安定性である。「室温安定性」とは、標品を22℃で6ヶ月以上、試薬乾燥時の活性と比べて20%未満の酵素活性の損失で保存できることを意味する。
【0056】
本発明の試薬標品は10℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。試薬標品の典型的なTgは40℃である。40℃以上のTgで室温(22℃)での安定性が担保される。好ましいTgは45℃である。ガラス転移温度は、それ以上の温度でガラス質材料の粘度が急激に低下してゴム状、次いで変形可能な可塑体となり、さらに温度を高めると液体となる温度をいう。
【0057】
ガラス転移温度は、標品の安定性の重要な指標として用いられる。Tg未満又はその近傍では、試料は安定なガラス状態のままとどまる。温度がTgを超えて上昇すると、試料はゴム状となり、安定性が減る。Tgは示差走査熱量測定で求められる。2〜5mgの試料(1〜2個の球剤を破砕したもの)をアルミニウム製パンに入れる。試料のTgは、昇温速度10℃/分で0℃から100℃に昇温させる温度制御プログラムで測定される。試料の熱の出入りは、ベースラインのシフトとして測定、表示される。Tgは、ベースラインのシフトの中点の温度として表れる。
【0058】
典型的な多孔度では、球剤は20μlの水に1分以内に溶解する。好ましい多孔度では30秒以内に溶解する。
【0059】
本発明のガラス化生物試薬標品の製造方法には、幾つかの利点がある。まず、製造プロセスが大幅に簡略化される。試薬混合物を市販マイクロタイタープレートのような標準的フォーマットのマルチウェルプレートのウェルに直接分注する。そのため、試薬の液滴を液体窒素中又は冷却表面上で凍結する必要がない。分注混合物を次いでウェル中で凍結、乾燥し、ウェル中で保存することができる。そのため、乾燥パンからビーズやケークを保存容器に移動させる必要がない。乾燥組成物はマルチウェルプレートで保存できるので、組成物を、後段の自動化されたワークフローに使用できる。プレートの処理には、ロボット装置を使用できる。
【0060】
さらに、組成物は室温で安定である。そのため、輸送コストが削減でき(ドライアイス輸送は不要となる)、冷凍保存の必要がなく、試薬の調製時間が短縮できる(解凍不要)。ユーザーにも好都合である。アッセイ成分の大半を予め分注して単回用量フォーマットで安定に保存しておくことができる。そのため、ユーザーは時間を節約でき、試薬の原液の調製のためのプラスチック消耗品のコストも節約できる。汚染及び誤差のリスクが減るため、再現性及び信頼性も増す。組成物は予め分注した形態で調製する。そのため、試料の取扱い及びピペット処理工程が減り、ユーザーによる汚染及びピペット作業の誤差の危険性が低減する。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明を例示するものにすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって規定される。本明細書の他の以下その他の箇所で引用した文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0062】
実施例1:384ウェルポリスチレンプレートでの乾燥PCR混合物の調製
生物試薬製剤(本例ではPCR用試薬混合物)を、標準的プロトコルにしたがって調製する。略述すると、10μlの球状製剤は、25mMのTris−HCl(室温でpH9.0)、125mMのKCl、3.75mMのMgCl2、0.5mMのdNTP、0.6mg/mlのBSA、3.5単位のrTaq DNAポリメラーゼ、並びに合成ポリマーFicoll 400(6.25%)、Ficoll 70(6.25%)及び二次炭水化物メレチトース(10%)からなるガラス形成性フィラー材料を含む。通例、試薬はすべて使用前にオートクレーブ又は濾過滅菌される。製剤は、ポリスチレンプレート又はシリカモールドで混合・分注されるまで、氷上で製造・保存される。最終製剤は、上述のガラス形成性フィラー材料、BSA、dNTP、rTaq DNAポリメラーゼ及び塩からなる。
【0063】
均質試薬溶液1用量当たりの最終体積は10μlであった。こうして、PCRの作業体積を25μlとすることができる。試薬は、自動ピペットを用いて384ウェルポリスチレンプレートに分注した。
【0064】
384ウェルプレートを予冷(−46℃)Vertis凍結乾燥機の棚に約60分間おいて試薬を凍結させた。凍結試薬を次いで表2に記載のプロセスによる一次乾燥及び二次乾燥に付した。
【0065】
乾燥試薬を含むプレートを、単に接着性カバー又は蓋又はヒートシールで覆うことによって、再封止可能な乾燥剤入りパウチに一体パッケージとして保存した。別法では、乾燥試薬をプレートから取り出し、乾燥試薬錠剤又はキューブとして瓶中で保存し、瓶を、再封止可能な乾燥剤入りパウチに保存した。
【0066】
乾燥試薬組成物の安定性を、λDNAのリアルタイムPCR増幅で試験し、その増幅プロファイルを市販品(GE Healthcare社製puRe Taq RTGビーズ)と比較した。試験に使用したプライマーは、配列番号1(5’−GGT TAT CGA AAT CAG CCA CAG CGC C−3’)及び配列番号2(5’−GAT GAG TTC GTG TCC GTA CAA CTG G−3’)であった。リアルタイムPCR増幅の結果を図2に示す。
【0067】
図2の左上に、乾燥試薬組成物の製造に用いた384ウェルポリスチレンプレートを示す。乾燥試薬錠剤をプラスチック瓶に入れ(左下)、再封止可能な乾燥剤入りパウチ中で室温で約1週間保存した。乾燥試薬を含む384ウェルプレートを左上に示すが、プレートは接着性シールで覆われている。様々な希釈度のλDNA鋳型の標準曲線を右上に示す。様々な希釈度のλDNAのリアルタイム増幅曲線を右下に示す。結論として、リアルタイムPCR増幅反応の成功は乾燥試薬組成物が安定であることを立証している。
【0068】
実施例2:96ウェルシリカモールドでの乾燥PCR混合物の調製
生物試薬製剤及びガラス形成性フィラー材料を実施例1に準拠して調製及び混合した。約20μlの試薬混合物を、自動ピペットを用いて96ウェルシリカモールドに分注した(図3、左上)。シリカモールドを、予冷(−46℃)Vertis凍結乾燥機に約60分間載せて試薬を凍結させた。凍結試薬を次いで表2に記載のプロセスによる一次乾燥及び二次乾燥に付した。
【0069】
乾燥試薬は、単にモールドを接着性シールで覆い、プレートを乾燥剤入りアルミニウムパウチ中に入れることによってモールド中で保存することができた。別法として、乾燥試薬をモールドから乾燥試薬ケークとして取り出し、乾燥剤入り瓶で保存した。
【0070】
乾燥試薬組成物の安定性を、実施例1に記載のλDNAのリアルタイムPCR増幅で試験し、その増幅プロファイルを市販品(GE Healthcare社製puRe Taq RTGビーズ)と比較した。結果を図3に示す。
【0071】
図3の左上に、乾燥試薬組成物の製造に用いた96ウェルシリカモールドを示す。乾燥試薬のキューブをプラスチック瓶に入れ(左下)、再封止可能な乾燥剤入りパウチ中で室温で約1週間保存してから、λDNA機能試験を実施した。様々な希釈度のλDNA鋳型の標準曲線を右上に示す。様々な希釈度のλDNAのリアルタイム増幅プロットを右下に示す。結論として、リアルタイムPCR増幅反応の成功は乾燥試薬組成物が安定であったことを立証している。
【0072】
実施例3:96ウェルポリスチレンプレートでの乾燥PCR混合物の調製
生物試薬製剤及びガラス形成性フィラー材料を実施例1に準拠して調製及び混合した。約10μlの試薬混合物を、液体分注ロボットを用いて分注した(図1、左下)。96ウェルプレートを96ウェル金属ホルダーに載せた(図4)。96ウェルプレートを金属ホルダーと共に予冷(−46℃)Vertis凍結乾燥機に約60分間載せて、試薬を凍結させた。凍結試薬を次いで表2に記載のプロセスによる一次乾燥及び二次乾燥に付した。
【0073】
乾燥試薬は、ヒートシーラーを用いて単に接着性カバー又は蓋又はヒートシールで96ウェルプレートを覆うことによって一体パッケージとして保存することができた。調製したての「湿潤」製剤及び乾燥試薬、並びにpuRe Taq RTGビーズで、λDNAリアルタイムPCR機能試験を行った。封止プレートは、室温又は40℃のインキュベーター内で8日間、乾燥剤入りのパウチ中で保存した。乾燥試薬組成物の安定性は、λDNAのリアルタイムPCR増幅反応(実施例1参照)で試験し、その増幅プロファイルを市販品(GE Healthcare社製puRe Taq RTGビーズ)と比較した。結果を、図6、図7及び図8に示す。
【0074】
図6は、96ウェル乾燥PCRケークでのλqPCR並びに「湿潤」製剤及びpure Taq RTGビーズと比較した結果を示す。この図は、本発明の一実施形態にしたがって製造した乾燥PCR試薬の安定性を示す。鋳型を含まない対照と併せて、鋳型として出発濃度1000万〜10コピーの様々な濃度のλDNAでリアルタイムPCRを実施した。Ct値及びPCR効率に関して、本発明の実施形態(右上)とpuRe Taq RTGビーズ(左下)と「湿潤」製剤(左上)とで同様の性能が認められた(左下の表)。
【0075】
図7は、本発明の一実施形態にしたがって製造した乾燥PCR試薬の安定性を示す。乾燥PCRミックスを40℃又は室温(RT)で8日間保存してから、λDNAのqPCRに使用した。本発明の方法で製造した試薬は、市販のpuRe Taq RTGビーズと同様の性能を示した。左上は、室温で保存した乾燥PCR試薬ケークである。右上は、40℃で保存した乾燥PCR試薬ケークである。左下は、室温で保存したpuRe Taq RTGビーズである。右下は、40℃で保存したpuRe Taq RTGビーズである。図8は、室温及び40℃で保存した本発明の実施形態の試薬及びpureTaq RTGビーズでのCt値及びPCR効率を示す。
【0076】
実施例4:リアルタイムPCRアッセイ用の乾燥試薬の調製
リアルタイムPCRは、遺伝子発現解析のアッセイプラットフォームとして普及しつつある。リアルタイムPCRにおける増幅産物を検出する方法の一つでは、鋳型の特異的部分に相同な二重標識一本鎖(ss)DNAプローブを使用する。このプローブの蛍光修飾部は、レポーター(FAM)及びクエンチャー(TAMRA)として役立つ。一本鎖鋳型の存在下で、プローブは鋳型にアニールするが、レポーター色素とクエンチャー色素が近接しているので蛍光信号は発しない。Taq DNAポリメラーゼで鋳型からDNAが増幅されると、鋳型にアニールした標識プローブが酵素の5’−3’エキソヌクレアーゼ活性によって開裂し、クエンチャー色素が放出されるので、レポーターは蛍光を発するようになる。すると、蛍光信号がリアルタイム機器で記録される。
【0077】
本例では、賦形剤の存在下でPCRプライマーをTaqManプローブと共に凍結乾燥することができて、プライマー及びプローブを凍結乾燥しなかった反応に比べて、機能を損なわずにリアルタイムPCRに使用できることを実証する。β−アクチンのアッセイ用2.5倍濃縮製剤は、25mMのTris(pH9)、125mMのKCl、3.75mMのMgCl2、0.6mg/mlのBSA、0.5mMのdNTP、0.25U/μlのrTaq、0.05%のTween 20、0.05%のNP−40、1.5μMのβ−アクチンFwdプライマー(配列番号3:5’−TCA CCC ACA CTG TGC CCA TCT ACG A−3’)、1.5μMのβ−アクチンRevプライマー(配列番号4:5’−CAG CGG AAC CGC TCA TTG CCA ATG G−3’)、1μMのβ−アクチンプローブ(配列番号5:5’−FAM−ATG CCC−N(TAMRA)CCC CCA TGC CAT C CTG CGT p−3’)、6.25%のFicoll 70、6.25%のFicoll 400及び10%メレチトースを含む。
【0078】
製剤10μlを、96ウェルプレートにピペットで分注し、凍結乾燥した。1個の乾燥ケークを様々な量のヒトゲノムDNA鋳型と共に25μlの最終体積に再水和した。リアルタイムPCR反応はABI 7900 Fast Real Time装置で実施した。この反応を、プライマー及びプローブを含まない同様の製剤と比較した。後者の反応では、PCR反応のセットアップ中に、プライマーとプローブを加えた。さらに別の対照として、市販のpuRe Taq RTGビーズを用いた。
【0079】
図9は、これらの反応の結果を示す。左上はTaqManプライマー及びプローブを含む凍結乾燥試薬を用いたリアルタイムPCRである。左下は対照凍結乾燥試薬(プライマー及びプローブは凍結乾燥製剤に配合せず、リアルタイムPCR反応の前に加えた)。右上は市販のpuRe Taq RTGビーズの対照(他の試薬はいずれも凍結乾燥せず)である。すべての反応で、増幅プロファイルR2値及び傾きは同等であった。puRe Taq RTG反応を用いて標準曲線の作成し、他のすべての反応を未知として処理したところ、同量の鋳型DNAでの反応は標準曲線と合致した(右下)。こうした結果は、TaqManプライマー及びプローブがRTGの導入に順応できることを示している。
【0080】
実施例5:φ29DNAポリメラーゼを含有する乾燥試薬の調製
φ29DNAポリメラーゼは、全ゲノム増幅並びにローリングサークル増幅に広く使用されている。出願人は、この酵素を、全ゲノム増幅の可能な製剤として乾燥凍結した。その分析結果は、凍結乾燥製剤が全ゲノム増幅の実施に際して「湿潤」製剤と同じ活性を有していることを示している。
【0081】
GenomiPhi HY(高収率)DNA増幅キット(GE Healthcare社)は、等温鎖置換増幅による全ゲノム増幅に必要なすべての成分を含んでいる。GenomiPhi反応の出発材料は、精製DNAでも、非精製細胞溶解物でもよい。数ngの量の出発材料からμgオーダーのDNAをわずか数時間で生成させることができる。GenomiPhiHY反応での典型的なDNA収率は、50μl反応当たり40〜50μgであり、平均的な生成物の鎖長は10kbを超える。DNA複製は酵素の校正3’−5’エキソヌクレアーゼ活性のため極めて正確である。
【0082】
φ29DNAポリメラーゼ、ランダムヘキサマー、dNTP及びGenomiPhi HY反応緩衝液を、安定剤のFicoll 70、Ficoll 400、メレチトース及びBSAと共に含むGenomiPhi反応混合物を2倍混合物として調製した。混合物の10μl量を12ウェルPCRストリップチューブに分注した。分注生成物をVirTis凍結乾燥機を用いてケークとして凍結乾燥した。乾燥生成物を室温又は40℃で35日間保存した。これらの生成物で、10ngの少量のヒトゲノムDNAでも全ゲノム増幅をうまく実施できた。これを、調製したての混合物を使用した全ゲノム増幅と、時間0及び室温又は40℃で35日間保存後に比較した。
【0083】
図10は、凍結乾燥試薬又は「湿潤」混合物を用いた全ゲノム増幅アッセイの結果を示す。10ngのヒトゲノムDNAを鋳型材料として使用し、30℃で90分間増幅反応を行った。90分で4μg超のDNAが生成するものと予測された。PicoGreenアッセイで、40℃で35日間保存しておいた凍結乾燥試薬でも強い増幅が検出された。φ29DNAポリメラーゼは凍結乾燥フォーマットでうまく安定化された。
【0084】
実施例6:インビトロ転写用の乾燥試薬の製造
転写は、すべての種類の細胞で定期的に行われる生命維持に必須な生物学的プロセスであり、T7 RNAポリメラーゼのようなDNA依存性RNAポリメラーゼによってDNA鋳型を用いてRNAが作られる。インビトロ転写(IVT)では、エンドユーザーが選択した転写物を生成するため、これと同じプロセスを細胞外の試験管内で行う。得られたRNA分子は、タンパク質のインビトロ翻訳或いはハイブリダイゼーション反応、例えばノーザンブロット、サザンブロット、マイクロアレイ分析及びマイクロインジェクションなどに使用できる。
【0085】
本発明者らは、RNAの生成に必要な、鋳型を除くすべての成分を賦形剤の存在下で凍結乾燥した室温安定性凍結乾燥IVT試薬を成功裡に得ることができた。これによってIVT反応は大幅に簡略化され、エンドユーザーは鋳型DNAと水を加えるだけで反応を開始させることができる。
【0086】
凍結乾燥試薬の製造に用いられるIVT製剤は、40mMのTris(pH8.0)、10mMのMgCl2、4mMのスペルミジン、10mMのDTT、50μg/mlのBSA、10mMのNaCl、0.5mMのATP、0.5mMのCTP、0.5mMのGTP、0.5mMのUTP、2UのRNAGuard、10UのT7RNAポリメラーゼ(GE Healthcare)、6.25%のFicoll 400、6.25%のFicoll 70、10%のメレチトースを含んでいた。調製した製剤を8ウェルのストリップチューブに25μlずつ分注し、実施例1及び表2にしたがって凍結乾燥した。乾燥試薬ケークを、Roche社製SP6/T7 IVTキットの対照DNAを用いて試験した。並行して、Roche社製SP6/T7 IVTキットを用いたIVT反応を実施した。
【0087】
予想通り、Roche社製キットだけでなく、凍結乾燥試薬を用いても、約1000塩基対の転写物が生成した(図11)。したがって、転写に必要な試薬を賦形剤の存在下で成功裡に凍結乾燥させ、DNA鋳型の存在下で適量の反応体積に再水和すれば、RNA転写物を生成させることができる。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の教示内容から逸脱せずに様々な変更及び修正をなすことができることは自明であろう。以上の明細書及び添付の図面に記載された事項は例示を目的としたものにすぎず、限定的なものではない。本発明の技術的範囲は、従来技術に照らして特許請求の範囲を解釈することによって規定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥試薬標品の製造方法であって、当該方法が、
(a)1種以上の緩衝生物試薬の水溶液を調製する工程と、
(b)ガラス形成性フィラー材料を、緩衝生物試薬溶液と混合して、多孔質ガラス状組成物の形成を促進するのに十分な濃度のフィラー材料を含む混合物を調製する工程と、
(c)上記混合物を実質的に均一な液滴の形態でマルチウェル容器の各ウェルに1滴ずつ分注する工程と、
(d)上記容器中で液滴を乾燥して試薬標品を形成する工程と
を含んでおり、上記試薬標品が水溶性であり室温安定性に十分なTgを有する、方法。
【請求項2】
乾燥試薬の長期保存のため乾燥液滴を試薬瓶に回収する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記マルチウェル容器を、乾燥試薬の長期保存のためシールテープ又はヒートシールで封止する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記シールテープが熱活性化される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記マルチウェル容器がシリカモールドである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記マルチウェル容器がポリスチレンプレートである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ポリスチレンプレートが96ウェルプレートである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ポリスチレンプレートが384ウェルプレートである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥工程の前に、前記ポリスチレンプレートを金属モールド上に載せてポリスチレンマルチウェルプレートの各ウェルの外壁を金属モールドのウェルと密着させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥工程が凍結乾燥で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記1種以上の緩衝生物試薬が、生物アッセイ用のアッセイ混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥工程の前に、分注した混合物を凍結させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法で製造した乾燥試薬標品を含む試薬組成物。
【請求項14】
乾燥試薬標品が、1回のアッセイに十分な量の乾燥試薬を含む、請求項13記載の試薬組成物。
【請求項15】
前記アッセイ混合物が、増幅用の鋳型とプライマーを除く、PCRに必要なすべての試薬を含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記アッセイ混合物が、鋳型を除く、インビトロ転写に必要なすべての試薬を含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記アッセイ混合物が、鋳型を除く、全ゲノム増幅に必要なすべての試薬を含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記アッセイ混合物が、鋳型を除く、リアルタイムPCRに必要なすべての試薬を含む、請求項11記載の方法。
【請求項1】
乾燥試薬標品の製造方法であって、当該方法が、
(a)1種以上の緩衝生物試薬の水溶液を調製する工程と、
(b)ガラス形成性フィラー材料を、緩衝生物試薬溶液と混合して、多孔質ガラス状組成物の形成を促進するのに十分な濃度のフィラー材料を含む混合物を調製する工程と、
(c)上記混合物を実質的に均一な液滴の形態でマルチウェル容器の各ウェルに1滴ずつ分注する工程と、
(d)上記容器中で液滴を乾燥して試薬標品を形成する工程と
を含んでおり、上記試薬標品が水溶性であり室温安定性に十分なTgを有する、方法。
【請求項2】
乾燥試薬の長期保存のため乾燥液滴を試薬瓶に回収する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記マルチウェル容器を、乾燥試薬の長期保存のためシールテープ又はヒートシールで封止する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記シールテープが熱活性化される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記マルチウェル容器がシリカモールドである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記マルチウェル容器がポリスチレンプレートである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ポリスチレンプレートが96ウェルプレートである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ポリスチレンプレートが384ウェルプレートである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥工程の前に、前記ポリスチレンプレートを金属モールド上に載せてポリスチレンマルチウェルプレートの各ウェルの外壁を金属モールドのウェルと密着させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥工程が凍結乾燥で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記1種以上の緩衝生物試薬が、生物アッセイ用のアッセイ混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥工程の前に、分注した混合物を凍結させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法で製造した乾燥試薬標品を含む試薬組成物。
【請求項14】
乾燥試薬標品が、1回のアッセイに十分な量の乾燥試薬を含む、請求項13記載の試薬組成物。
【請求項15】
前記アッセイ混合物が、増幅用の鋳型とプライマーを除く、PCRに必要なすべての試薬を含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記アッセイ混合物が、鋳型を除く、インビトロ転写に必要なすべての試薬を含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記アッセイ混合物が、鋳型を除く、全ゲノム増幅に必要なすべての試薬を含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記アッセイ混合物が、鋳型を除く、リアルタイムPCRに必要なすべての試薬を含む、請求項11記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−503410(P2010−503410A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528470(P2009−528470)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/078376
【国際公開番号】WO2008/036544
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/078376
【国際公開番号】WO2008/036544
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】
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