説明

ガラス物品のプレス成型装置及びプレス成型方法

【課題】高精度の陰極線管用パネル等をプレス成型する際に、プランジャーのガイドバーとガイド部のウェアプレ一卜とが擦れて生じる金属粉の雌金型内への侵入を防止可能なガラス物品のプレス成型装置及び成型方法を提供する。
【解決手段】ボトム2の上面にシェルリング3を載置し、係止させて雌金型4とし、ゴブを供給し、シェルリング3に設けたガイド部6でガイドバー7aを案内しつつプランジャー7でゴブを押圧してガラスパネルに成型した後、雌金型4のシェルリング3を取り外してボトム2からガラスパネルを取り出す一連の動作を反復するプレス成型装置及び成型方法であって、成型後、プランジャー7が上昇する際に、ガイドバー7aがガイド部6のウェアプレ一卜16aから離れる解離位置16cが、シェルリング3の上面から10mm以上のδだけ下がった位置になっているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品のプレス成型装置及びプレス成型方法に関し、特に、雌金型に溶融ガラス塊を供給し雄金型で押圧して成型する際に、雌金型に雄金型を案内するガイド部が設けられた陰極線管用ガラス等の製造に適するプレス成型装置及びプレス成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス物品には、ガラス生地をプレスして製作されるものが多数存在する。この種のプレス成型工程においては、例えば、雌金型に溶融ガラス塊(以後ゴブと称す)を供給し、この雌金型内に雄金型を侵入させてゴブを押圧することにより所定形状のガラス物品を成型することが行われる。このようなプレス成型工程を経て製作されるガラス物品としては、陰極線管に用いられるガラスパネルやガラスファンネル、食器類、灰皿、電子レンジ用トレー等が挙げられる。
【0003】
陰極線管(以後CRTと称す)用のガラスパネルやガラスファンネルをプレス成型する場合、回転テーブルと呼ばれる軸を中心に水平方向に回転するテーブルの周辺に沿って底型(以後ボトムと称す)を等間隔に配置し、回転駆動装置により回転テーブルを間欠回転させることによりボトムを所定の作業工程位置(以後ステーションと称す)に順次移動させている。
【0004】
図2はCRT用のガラスパネルPの概略図であり、画像を表示する内面にはスクリーン成膜により近年の映像の高精細化に対応する微細なパターンで3原色の蛍光体膜が形成される。図3はガラスパネルPを成型するためのプレス成型装置を構成する回転テーブルとそのステーションの説明図である。図3において、ガラスパネルPのプレス成型装置は、回転テーブル1の上面に外周方向に等間隔に11個の底金型であるボトムが配置されており、回転テーブル1は、回転駆動手段(図示省略)によって2/11回転ずつ間欠的に回転駆動される。回転テーブル1のステーションは下記の11個の作業工程からなり、回転テーブル1の回転によって順次移動する。すなわち、2ステーション分ずつ間欠的に移動し、回転テーブル1が2回転することで1サイクルのプレス成型工程が完了する。
【0005】
プレス成型は以下の順序で行われる。すなわち、ステーションAでは、側金型であるシェルリング及び底金型であるボトムからなる雌金型に溶融ガラスのゴブが供給される。ステーションCでは、雄金型であるプランジャーが下降し、ボトム内のゴブをプレスしてガラスパネルPに成型する。ステーションE、G、Iでは、成型されたガラスパネルPが冷却される。ステーションKでは、待機していたシェルトランスファーによってシェルリングがボトムから分離される。ステーションB、D、Fでは、成型されたガラスパネルPが冷却される。ステーションHでは、ガラスパネルPがボトムから取り出される。ステーションJでは、ステーションKでボトムから分離されたシェルリングを、シェルトランスファーによって次のゴブ供給のためにステーションJで待機中のボトムの上面に移載される。最後に、ステーションAに戻り、この間に回転テーブル1が2回転して1サイクルのプレス成型工程が完了する。
【0006】
図4(A)は、ステーションCでボトム2にゴブGが供給されている状態を示す説明図、図4(B)は、プランジャー7が下降してゴブGを押圧しガラスパネルPに成型している状態を示す説明図、図4(C)は、図4(B)のX−X断面図である。図4(A)に示すように、ボトム2と、その上部載置されたシェルリング3とは、ボトム2の側面の4箇所に付設されたボトムガイドバー2aに対応してシェルリング3の4箇所に設けられたガイド部6と嵌合し位置決めされた状態で雌金型4を形成している。雌金型4の上方には、雌金型4内に供給されたゴブGを押圧するプランジャー7が雌金型4に対向して昇降可能に配置されている。プランジャー7は、雌金型4の中心軸に向かって昇降するように規制するためのボルスタ8に取付けられている。ボルスタ8は、支持フレーム9から垂設された複数のガイドシャフト10に昇降可能に装着されている。
【0007】
プランジャー7の上端には、図示されない油圧ユニットによって推力が与えられるプレスシリンダー11が支持フレーム9に固定され、ピストンロッド12の下端がボルスタ8に連結されている。プランジャー7はプレスシリンダー11によってボルスタ8を介してガイドシャフト10に案内されて下降し、ボトム2内に供給されたゴブGを押圧してガラスパネルPに成型するが、図4(B)、図4(C)に示すように、シェルリング3とプランジャー7とは、シェルリング3の外周の4箇所に設けられたガイド部6に、プランジャー7の外周の4箇所に設けられたガイドバー7aが嵌合することによって位置決めされる構造になっている。
【0008】
プランジャー7の下降にともなってガイドバー7aとガイド部6内のウェアプレート6aとは互いに擦られながら、所定の位置に組み合わされるが、特に、陰極線管用のガラスパネルやガラスファンネルなどの大型のゴブGをプレスする際には、プランジャー7の強力な推力で、プランジャーガイドバー7aとガイド部6とはより強く擦られるために金属粉Sが発生する。
【0009】
また、上記のようなプレス成型装置では、成型されるガラスパネルPの高精度化に伴い、プランジャー7と雌金型4とが所定の位置で正確に合致するように、これらガイドの嵌合部位は可能な限り遊びが小さくしてあり、プランジャー7、シェルリング3及びボトム2の芯ずれを防止するようになっている。そのため、図5に示すように、ガイド部6内のウェアプレート6aとガイドバー7aは互いに擦られながら、所定の位置に組み合わされるが、これらの部材にはステンレス鋼などの金属が使用されており、拡大して示すように、金属同士の擦れにより金属粉Sが発生する。
【0010】
通常、擦れにより発生した金属粉Sは、プランジャー7の上昇時にガイドバー7aがウェアプレート6aから引き抜かれる時に飛散する。そして、ガイド部6やガイドバー7aに付着するか、ガイド部6の上面もしくはボトムガイドバー2aの取付け部等に堆積する。これらの部位に付着や堆積した金属粉Sは、シェルリング3がボトム2に組み合わされる際に、振動や衝撃によりボトム2に落下し、次のプレス成型でボトム2にゴブGが供給される際に、ゴブGの落下時の風圧などで金属粉Sが舞い上がりゴブGの表面にも付着する。次いでプランジャー7が下降して、表面に金属粉Sが付着したゴブGをプレスすると、プランジャー7の表面にも金属粉Sが付着する。特に、ゴブGをプレスした後、プランジャー7が上昇する際に、プランジャー7の上昇軌道空間が負圧となるため内方向に向かう気流が発生し、飛散した金属粉Sがプレス後のガラスパネルP内に引き込まれてガラスパネルPの内表面に付着する。付着した金属粉Sは、プレス直後のガラスパネルPの内表面が高温であるためガラスパネルPの内表面で焼付きや溶融を起こし、その結果、ガラスパネルPの内表面にピットと呼ばれる微小の凹凸欠陥が発生する。ピットが生じたガラスパネルPの内表面はスクリーン成膜による蛍光体膜の形成が適正に行えなくなり、近年のスクリーン膜の高精細化に的確に対処することが不可能となる。また、ゴブGの表面に付着した金属粉Sがプランジャー7の表面に焼付くことがあり、プレスされたガラスパネルPの内表面には付着痕が転写される。この場合はプランジャー7の交換が必要となり長時間の生産ロスの原因となる。
【0011】
ガイドの擦れによる金属粉Sの発生を防ぐ一般的な方法として、ガイド部6のウェアプレート6aに潤滑剤を手作業で塗布することがなされるが、上記のようなプレス成型装置では、通常、サイクルタイムが数秒から数十秒であり、小型のガラスパネルPではサイクルタイムが短いため手作業による塗布は難しい。また、大型のガラスパネルPでは、ガイドの配置間隔が大きくガラスパネルP冷却用のウインドヘッダーなどの存在が邪魔になり正確な潤滑剤の塗布が困難である。また、塗布する潤滑剤の量が多すぎるとガイドから垂れてガラスパネルPに落下するなど不良原因となる。プレス成型装置の稼動中に少量の潤滑剤を高頻度で正確にガイドに塗布するのは、オペレーターに大きな負担となる上に高温環境下での厳しい作業でもある。
【0012】
このような金属粉対策の事例として、例えば、特許文献1には、プランジャーを案内するキー(プランジャーガイドバーと同じ)にサーメットと金属の複合材、あるいは金属と黒鉛の複合材を使用することで潤滑性を持たせるものが開示されている。また、特許文献2には、金属同士の擦れによって発生した金属粉を非磨耗部に装着した磁石で捕集する方法が開示されている。さらに、特許文献3には、エアー吹付けによりガイド部の金属粉を除去する方法が開示されており、特許文献4には、シェルガイドのウェアプレートに潤滑剤を自動で塗布する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平7−206459号
【特許文献2】特開2002−348135号
【特許文献3】特開2004−18306号公報
【特許文献4】特開2005−67992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記4件の特許文献で示されている方法では、何れもまとまった装置または部品が、従来の金型またはプレス成形設備に追加されることになり、コスト、メンテナンス等が増加してしまうものである。具体的には、特許文献1は、プランジャーを案内するキーの材質を選択することによって潤滑性を持たせるものであるが、高価な部品を使用しても、以前として金属同士の擦れそのものは存在し、金属粉の発生による問題は残る。
【0014】
また、特許文献2の磁石を使用する方法では、ガイド部の磨耗によって生じる以外の金属粉をも捕集してしまう。また、磁石の交換時に、生産のロスが生じる。さらに、周辺金属部が磁石によって磁性を帯び、余計な金属粉までも捕集してしまうなど、セッティングが僅かに違うだけでデメリットが大きくなる等の問題が多い。
【0015】
さらに、特許文献3のエアー吹付けによる方法では、ガイド部に付着した金属粉は除去されるが、擦れによって発生した金属粉がエアーにより周辺に拡散することを招き、プレス成型装置の周辺に飛散し、それらが間接的に吹き上げられた場合には、ガラスパネルの内面欠陥を生じる原因となりうる。
【0016】
また、特許文献4に記載の装置による潤滑剤塗布では、作業者の作業が自動化されただけのもので、装置の取付け・取外し、メンテナンス等が新たに必要とされる。例えば金型寸法の変更時には、各ノズルのエアー圧および潤滑剤の量の調整作業が必要である。また、ノズル穴の詰まりやセッティングズレが起こると潤滑効果が減少するので、その都度復旧メンテナンス作業が必要になるという問題がある。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑み、プレス成型されるガラス物品に金属粉などの異物付着による欠陥の発生を回避し、高品質なガラス物品を得ることができるガラス物品のプレス成型装置及びその装置を使用したプレス成型方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るガラス物品のプレス成型装置は、底金型の上面に側金型を載置し、係止させて雌金型とし、該雌金型に溶融ガラス塊を供給し、該雌金型の側金型の外周に対向配置したウェアプレ一卜を具備するガイド部で雄金型に設けたガイドバーを案内しつつ雄金型によって雌金型に供給された溶融ガラス塊を押圧してガラス成型体に成型した後、該ガラス成型体を冷却手段で冷却し、雌金型の側金型を取り外して底金型からガラス成型体を取り出す一連の動作を反復するプレス成型装置であって、ガラス成型体を成型した後に前記雄金型が上昇する際に、ガイドバーが前記ガイド部のウェアプレ一卜から離れる位置が、側金型の上面から10mm以上下がった位置になるようにウェアプレ一卜を配置したことを特徴とする。
【0019】
ガイドバーがガイド部のウェアプレ一卜から離れる位置を雌金型内部及び雄金型表面から遠ざける方向が水平方向の場合は、直接雌金型内部に落下する金属粉、直接プランジャーに付着する金属粉への効果はあると思われるが、側金型の上面に乗り稼動中に落下する金属粉の付着防止にはならず、結局効果が認められない。そこで、垂直方向に側金型の上面とウェアプレート上端部付近にあるガイドバーが離れる位置との間に十分な距離をとリ、金属粉の拡散による侵入を防止する。具体的には、ウェアプレートの側金型上面側を短くするか、または下方に移動させ、必要に応じてプランジャーガイドバーを長くする。それにより、ウェアプレート上端と側金型の上面に段差が形成され、金属粉の発生部の周りに壁が形成される形となリ、金属粉の侵入を防ぐことが可能となる。
【0020】
この段差が、側金型の上面から10mm未満の場合、金属粉の侵入を十分に防ぐことができなくなることが実証されている。本発明では、側金型の外周に対向配置したウェアプレ一卜の上方で、雄金型が上昇する際に、ガイドバーが前記ガイド部のウェアプレ一卜から離れる位置、すなわち、雄金型が降下する際に、ガイドバーが最初に接触するガイド部のウェアプレ一卜の位置が、側金型の上面から10mm以上離れていることが、ウェアプレートとガイドバーが擦られて生じる金属粉の雌金型内への侵入及び雄金型への付着を防止する上で重要である。
【0021】
また、本発明では、ガイドバーの先端部及びウェアプレ一卜の上端部に面取り部が設けられており、ウェアプレートと雄金型ガイドバーが互いに嵌合される面に対するそれぞれの面取り部のテーパー面の角度を10°〜15°の範囲とし、かつ互いのテーパー面の角度をほぼ一致させることが、ウェアプレートとガイドバーが擦られる際に生じる金属粉を減らし、かつ、雄金型が上昇してガイドバーがガイド部のウェアプレ一卜から離れる際に、ガイドバーが摺動しながら円滑に離れるので、ガイドバーの振動発生を抑制して金属粉の飛散を抑制する上で好ましい。また、プレス成型装置やガラス物品の要求精度にもよるが、ガイドバー及びウェアプレートの面取り部に設けるテーパー面の垂直方向長さは、それぞれ少なくとも3mm以上が好ましく、より好ましくは5mm以上である。
【0022】
なお、本発明の面取り部に設けるテーパー面とは、ガイドバーやウェアプレ一卜の互いに嵌合される面の端部を一定の角度でテーパー加工したものであり、一般的なC面取りやR面取りとは異なる。従って、面取り部に設けるテーパー面にさらに一般的なC面取りやR面取りを施すことができるが、面取り部に設けるテーパー面の10°〜15°の範囲で選択された一定の角度を有するテーパー面の面沿い長さは先記した寸法を確保する必要がある。
【0023】
本発明に係るガラス物品のプレス成型方法は、底金型の上面に側金型を載置し、係止させて雌金型とし、該雌金型に溶融ガラス塊を供給し、該雌金型の側金型の外周に対向配置したウェアプレ一卜を具備するガイド部で雄金型に設けたガイドバーを案内しつつ雄金型によって雌金型に供給された溶融ガラス塊を押圧してガラス成型体に成型した後、該ガラス成型体を冷却手段で冷却し、雌金型の側金型を取り外して底金型からガラス成型体を取り出す一連の動作を反復するプレス成型方法であって、ガラス成型体を成型した後に前記雄金型を上昇させて前記側金型の上面から10mm以上下がった位置でガイド部のウェアプレ一卜間からガイドバーを離脱させることを特徴とする。
【0024】
本発明では、上記本発明のプレス成型装置を使用することにより、ガラス成型体を成型した後に、雄金型を上昇させて側金型の上面から10mm以上下がった位置でガイド部のウェアプレ一卜間からガイドバーを離脱させることが、ウェアプレートとプランジャーのガイドバーが擦られて生じる金属粉の雌金型内への侵入及び雄金型への付着を防止する上で重要である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガラス物品のプレス成型装置は、底金型の上面に側金型を載置し、係止させて雌金型とし、該雌金型に溶融ガラス塊を供給し、該雌金型の側金型の外周に対向配置したウェアプレ一卜を具備するガイド部で雄金型に設けたガイドバーを案内しつつ雄金型によって雌金型に供給された溶融ガラス塊を押圧してガラス成型体に成型した後、該ガラス成型体を冷却手段で冷却し、雌金型の側金型を取り外して底金型からガラス成型体を取り出す一連の動作を反復するプレス成型装置であって、ガラス成型体を成型した後に前記雄金型が上昇する際に、ガイドバーが前記ガイド部のウェアプレ一卜から離れる位置が、側金型の上面から10mm以上下がった位置になるようにウェアプレ一卜を配置したので、ウェアプレートとガイドバーが擦られて生じる金属粉の雌金型内への侵入及び雄金型への付着を防止することができ、金属粉の付着による欠陥の発生を回避し、高品質なガラス物品を得ることができる。
【0026】
本発明に係るガラス物品のプレス成型方法は、ガラス成型体を成型した後に前記雄金型を上昇させて前記側金型の上面から10mm以上下がった位置でガイド部のウェアプレ一卜間からガイドバーを離脱させるので、上記本発明のプレス成型装置を使用して、ウェアプレートとガイドバーが擦られて生じる金属粉の雌金型内への侵入及び雄金型への付着を防止することができ、金属粉の付着による欠陥の発生を回避し、高品質なガラス物品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。図1は本実施形態のプレス成型装置の説明図であって、16a、26aはウェアプレ一卜、26bはテーパー面、16c、26cはウェアプレ一卜16a、26aのガイドバーの解離位置、7a、17aはプランジャーのガイドバー、17bはガイドバー17aのテーパー面、αはガイドバー17aのテーパー面17bの角度、βはウェアプレ一卜26aのテーパー面26bの角度をそれぞれ示している。
【実施例1】
【0028】
本実施形態のプレス成型装置は、図1に示すように、ボトム2と、その上部に載置されたシェルリング3とは、ボトム2の側面の4箇所に付設されたボトムガイドバー2aに対応してシェルリング3の4箇所に設けられたガイド部6と嵌合し位置決めされた状態で雌金型4を形成している。雌金型4の上方には、雌金型4内に供給されたゴブGを押圧するプランジャー7が雌金型4に対向して昇降可能に配置されている。シェルリング3とプランジャー7とは、シェルリング3の外周の4箇所に設けられたガイド部6内に交換可能に設置された合金工具鋼SKD11製の寸法15mm×60mm×40mmの対向するウェアプレ一卜16aの間に、プランジャー7の外周の4箇所に設けられた合金工具鋼SKD11製の寸法35mm×120mm×15mmのガイドバー7aが嵌合することによって位置決めされる構造になっている。また、成型されるガラスパネルPの高精度化に伴い、プランジャー7とシェルリング3とが所定の位置で正確に合致するように、ウェアプレ一卜16aとガイドバー7aの嵌合部位は可能な限り遊びが小さくしてある。
【0029】
図1(A)の場合、ウェアプレ一卜16aのガイドバー7aの解離位置16cは、シェルリング3の上面からδだけ下方に離れており、この例のウェアプレ一卜16aでは、δは15mmである。
【0030】
シェルガイド6のウェアプレ一卜16aとガイドバー7aは互いに擦られ、その金属同士の擦れにより金属粉を発生させながら所定の位置に組み合わされ、成型後に引き離されるが、拡大して示すように、高さδの段差を超えてシェルリング3の内面に侵入した金属粉Sは殆ど観察されなかった。
【実施例2】
【0031】
次に、図1(B)に示すように、プランジャー7のガイドバー17aと、ガイド部6に取付けられたウェアプレート26aとが互いに嵌合する面に対する面取りテーパー面17b、26bの角度をそれぞれα、βとする。αとβの値を種々変更して金属粉Sの発生量を調査したところ、αとβをそれぞれ10°〜15°の範囲内にして両者をほぼ一致させた場合に、金属粉の発生量が最も少ないことが分かった。図1(B)の場合、α、βともに12°とし、テーパー面17b、26bの垂直方向の寸法はそれぞれ10mmとした。また、ウェアプレート26aのガイドバー17aの解離位置26cは、シェルリング3の上面からδだけ下方に離れており、この例のウェアプレート26aの場合、δは18mmである。
【0032】
上記のようなテーパー面17b、26bをガイドバー17aとウェアプレート26aのそれぞれに設けたことにより、ウェアプレート26aとガイドバー17aが接触した直後に擦られ始める際に生じる金属粉Sを減らし、かつ、ガイドバー17aが接触当初から解離するまでの間ほぼ面接触しており、摺動しながら円滑に離れるので、衝撃が和らげられることにより、金属粉Sの発生自体が抑制され、さらに、プランジャー7が上昇してガイドバー17aがガイド部6のウェアプレ一卜26aから離れる際に、ガイドバー17aの振動発生も抑制されたことにより金属粉Sの飛散も大幅に抑制された。
【0033】
このような結果として、金属粉Sなどの異物付着による欠陥の発生が半減され、高品質なガラス物品を得ることができ、プランジャーの交換回数も抑制することができた。さらに、ガイドバーやガイドプレートの磨耗量も少なくなり交換頻度が低減し、雌金型とプランジャーの位置決め精度が長期間に亘って高精度に維持され、成型されるガラス物品の寸法精度も安定した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、陰極線管用ガラスパネル以外にもガイドバー及びウェアプレ一卜を使用する粘土その他の材質の成型にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のガラス物品のプレス成型装置の説明図であって、(A)はウェアプレ一卜の上端を下げた実施形態の説明図、(B)はガイドバーの先端部及びウェアプレ一卜の上端部に互いのテーパー面の角度がほぼ一致した面取り部を設けた実施形態の説明図。
【図2】CRT用ガラスパネルの概略図。
【図3】プレス成型装置を構成する回転テーブル及びプレス成型工程における各ステーションを模式的に示す説明図。
【図4】プレス成形装置のステーションCの状態を示し、(A)はボトムにゴブが供給されている状態を示す説明図、(B)はプランジャーが下降しゴブを押圧してガラスパネルに成型している状態を示す説明図、(C)は(B)のX−X断面図で、シェルガイド、ボトムガイドバー及びプランジャーのガイドバーを組み合わせた状態を示す説明図。
【図5】シェルガイドとプランジャーガイドバーとが擦れて金属粉を発生させている状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0036】
1 回転テーブル
2 ボトム(底金型)
2a ボトムガイドバー
3 シェルリング(側金型)
4 雌金型
6 シェルガイド(ガイド部)
6a、16a、26a ウェアプレ一卜
26b ウェアプレ一卜のテーパー面
16c、26c 解離位置
7 プランジャー(雄金型)
7a、17a プランジャーのガイドバー
17b プランジャーガイドバーのテーパー面
G ゴブ
P ガラスパネル
α ガイドバーのテーパー面の角度
β ウェアプレ一卜のテーパー面の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底金型の上面に側金型を載置し、係止させて雌金型とし、該雌金型に溶融ガラス塊を供給し、該雌金型の側金型の外周に対向配置したウェアプレ一卜を具備するガイド部で雄金型に設けたガイドバーを案内しつつ雄金型によって雌金型に供給された溶融ガラス塊を押圧してガラス成型体に成型した後、該ガラス成型体を冷却手段で冷却し、雌金型の側金型を取り外して底金型からガラス成型体を取り出す一連の動作を反復するプレス成型装置であって、ガラス成型体を成型した後に前記雄金型が上昇する際に、ガイドバーが前記ガイド部のウェアプレ一卜から離れる位置が、側金型の上面から10mm以上下がった位置になるようにウェアプレ一卜を配置したことを特徴とするガラス物品のプレス成型装置。
【請求項2】
ガイドバーの先端部及びウェアプレ一卜の上端部に面取り部が設けられており、ウェアプレートと雄金型ガイドバーが互いに嵌合される面に対するそれぞれの面取り部のテーパー面の角度を10°〜15°の範囲とし、かつ互いのテーパー面の角度をほぼ一致させることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品のプレス成型装置。
【請求項3】
底金型の上面に側金型を載置し、係止させて雌金型とし、該雌金型に溶融ガラス塊を供給し、該雌金型の側金型の外周に対向配置したウェアプレ一卜を具備するガイド部で雄金型に設けたガイドバーを案内しつつ雄金型によって雌金型に供給された溶融ガラス塊を押圧してガラス成型体に成型した後、該ガラス成型体を冷却手段で冷却し、雌金型の側金型を取り外して底金型からガラス成型体を取り出す一連の動作を反復するプレス成型方法であって、ガラス成型体を成型した後に前記雄金型を上昇させて前記側金型の上面から10mm以上下がった位置でガイド部のウェアプレ一卜間からガイドバーを離脱させることを特徴とするガラス物品のプレス成型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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