説明

ガラス繊維梱包体およびガラス繊維梱包方法とそれを用いたガラス繊維製品

【課題】長期保管に際しても圧縮梱包に起因した繊維破壊(繊維長低下)や繊維接着が生じにくく、繊維製造直後の前記ガラス繊維本来の性能が保持され易いガラス繊維梱包体およびガラス繊維梱包方法とそれを用いたガラス繊維製品を提供する。
【解決手段】平均繊維径が5μm以下でアルカリ金属酸化物成分を5重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態としたガラス繊維梱包体において、嵩密度を80〜135kg/mの範囲としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉛蓄電池用セパレータや濾紙の主材料として好適に使用される、平均繊維径が5μm以下、特に1μm未満の微細径で、アルカリ金属酸化物成分を5重量%以上、特に10重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態としたガラス繊維梱包体およびガラス繊維梱包方法とそれを用いたガラス繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛蓄電池用セパレータの主材料として、平均繊維径が5μm以下の微細径で、硫酸電解液に耐える耐酸性を有するべくアルカリ金属酸化物成分を5重量%以上、特に10重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維が使用されている。特に、密閉型鉛蓄電池用セパレータは、電解液をセパレータ内に保持する必要があることから、平均繊維径が1μm未満の極細ガラス繊維が使用されている(平均繊維径0.5μm程度のものまでが実用されている)。
【0003】
このような平均繊維径が5μm以下、更には1μm未満の含アルカリウール状ガラス繊維は、例えば、火炎法(溶融炉の底部のノズルから溶融ガラスを糸状に流下させ高速の火炎で吹き飛ばす方法)あるいは遠心法(溶融ガラスを高速回転するスピナーと呼ばれる周壁に多数のオリフィスを穿設した円筒容器へ供給し遠心力によって紡糸し高速気流で吹き飛ばす方法)といった方法によって繊維化、製造されたウール状の短繊維が繊維集合体を形成しており、輸送時の梱包効率(減容率)を考慮し、圧縮状態に梱包されて荷扱いされている。
【0004】
ところが、前記ガラス繊維は、繊維径が細く、弾性が乏しいことから、圧縮状態に梱包されて荷扱いされた場合、繊維が折れるなどの破壊を受けて繊維長が短くなり、前記ガラス繊維製造直後に有していた前記ガラス繊維材料としての本来の性能を発揮できなくなるという問題がしばしばあった。繊維径が細いほどこの影響は顕著である。
【0005】
例えば、前記密閉型鉛蓄電池用セパレータは、通常、平均繊維径が1μm未満の前記ガラス繊維のみを湿式抄造して坪量170g/m程度以下のシートに形成したものであるが、実質的にガラス繊維の絡み合いの作用だけで所定の引張強度を確保する必要があり、ガラス繊維材料の繊維長が短くなっては、シート化自体ができないまたはシート化後の引張強度が不足するという不都合が生じる。また、前記密閉型鉛蓄電池用セパレータは、通常、正負何れかの極板を包むようにセパレータをU字状に折り曲げて正負極板間に介装されて使用されるため、ガラス繊維材料の繊維長が短くなっては、セパレータの折り曲げ部位でひび割れが生じ易くなるという不都合がある。尚、前記ガラス繊維抄造シートにおけるガラス繊維長の変化の度合いを推定する指標としては、該シートの伸びを測定すればよい。因みに、最近では、電気二重層キャパシタ用セパレータとして、平均繊維径が1μm未満の前記ガラス繊維を主材料として湿式抄造して坪量30g/m程度以下のシートに形成したものが使用されつつある。
【0006】
また、ガラス繊維は水との親和性が高いこと(接触角は0度)および微細径繊維は比表面積が大きいことから、前記ガラス繊維材料は、繊維化、製造されてから鉛蓄電池用セパレータ等として使用されるまでの保管時等に、空気中の水分を吸着する。繊維径、梱包状態、保管環境等にもよるが、平均繊維径1μm未満の前記ガラス繊維の場合で通常、0.5〜1.0重量%程度の水分を繊維表面に吸着する。そして、前記ガラス繊維表面に水分が多く吸着していると、前記ガラス繊維中のアルカリ金属酸化物成分(NaO、KO、Liなど)が溶出しガラス繊維同士が接着するという現象が起きる。ガラス繊維同士が接着すると繊維径が太くなり、前記ガラス繊維製造直後に有していた前記ガラス繊維材料としての本来の性能を発揮できない不都合が生じる。前記接着現象は、ガラス繊維径、ガラス繊維のアルカリ金属酸化物量、保管期間、保管環境等の影響のほか、圧縮梱包における梱包密度(圧縮度)にも影響を受けることがわかった。つまり、前記アルカリ金属酸化物成分の溶出現象は、基本的に梱包密度に関係なく生じるが、前記接着現象は、ガラス繊維同士が接触した箇所で前記溶出現象が原因で生じるものであり、梱包密度(圧縮度)が高いほど、ガラス繊維同士の接触箇所数や接触面積が増えるため、前記接着現象が生じ易くなることがわかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前記従来の問題点に鑑み、平均繊維径が5μm以下、特に1μm未満の微細径で、アルカリ金属酸化物成分を5重量%以上、特に10重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態としたガラス繊維梱包体において、長期保管に際しても圧縮梱包に起因した繊維破壊(繊維長低下)や繊維接着が生じにくく、繊維製造直後の前記ガラス繊維本来の性能が保持され易いガラス繊維梱包体およびガラス繊維梱包方法とそれを用いたガラス繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガラス繊維梱包体は、前記目的を達成するべく、請求項1に記載の通り、平均繊維径が5μm以下でアルカリ金属酸化物成分を5重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態としたガラス繊維梱包体において、嵩密度を80〜135kg/mの範囲としたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載のガラス繊維梱包体は、請求項1記載のガラス繊維梱包体において、前記ガラス繊維が、平均繊維径1μm未満であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載のガラス繊維梱包体は、請求項1または2記載のガラス繊維梱包体において、前記ガラス繊維が、アルカリ金属酸化物成分を10重量%以上含有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のガラス繊維梱包方法は、前記目的を達成するべく、請求項4に記載の通り、平均繊維径が5μm以下でアルカリ金属酸化物成分を5重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態とするガラス繊維梱包方法において、前記ガラス繊維集合体に対し、前記ガラス繊維集合体の嵩密度が135kg/m超えとならない条件で加圧して、嵩密度80〜135kg/mの梱包体に形成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5記載のガラス繊維梱包方法は、請求項4記載のガラス繊維梱包方法において、前記ガラス繊維が、平均繊維径1μm未満であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6記載のガラス繊維梱包方法は、請求項4または5記載のガラス繊維梱包方法において、前記ガラス繊維が、アルカリ金属酸化物成分を10重量%以上含有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のガラス繊維製品は、前記目的を達成するべく、請求項7に記載の通り、請求項1乃至3の何れか1項に記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の濾紙は、前記目的を達成するべく、請求項8に記載の通り、請求項1乃至3の何れか1項に記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の蓄電デバイス用セパレータは、前記目的を達成するべく、請求項9に記載の通り、請求項1乃至3の何れか1項に記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、前記目的を達成するべく、請求項10に記載の通り、請求項2または3記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、前記目的を達成するべく、請求項11に記載の通り、請求項2または3記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、平均繊維径が5μm以下、特に1μm未満の微細径で、アルカリ金属酸化物成分を5重量%以上、特に10重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態としたガラス繊維梱包体において、嵩密度が80〜135kg/mの範囲となる圧縮梱包体に構成するようにしたことにより、長期保管に際しても圧縮梱包に起因した繊維破壊(繊維長低下)や繊維接着が生じにくく、繊維製造直後の前記ガラス繊維本来の性能が保持され易いガラス繊維梱包体とすることができる。したがって、このようなガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用してガラス繊維製品、特に密閉型鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイス用セパレータを得るようにした場合は、従来のような繊維破壊(繊維長低下)や繊維接着に伴う性能低下が殆どないガラス繊維製品とすることができる。
【0020】
また、平均繊維径が5μm以下、特に1μm未満の微細径で、アルカリ金属酸化物成分を5重量%以上、特に10重量%以上含んだ含アルカリガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態とするガラス繊維梱包方法において、前記ガラス繊維集合体に対し、前記ガラス繊維集合体の嵩密度が135kg/m超えとならない条件で加圧して、嵩密度80〜135kg/mの梱包体に形成するようにしたので、長期保管に際しても圧縮梱包に起因した繊維破壊(繊維長低下)や繊維接着が生じにくく、繊維製造直後の前記ガラス繊維本来の性能が保持され易いガラス繊維梱包方法とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のガラス繊維梱包体は、例えば前記火炎法や前記遠心法といった方法により製造された平均繊維径が5μm以下でアルカリ金属酸化物成分を5重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包し、荷扱い可能な形態として、梱包密度(圧縮度)の指標として嵩密度80〜135kg/mの圧縮梱包体としたものである。これにより、できる限り前記ガラス繊維集合体の輸送効率(梱包効率)を高めながら、できる限り圧縮梱包によるガラス繊維材料の性能劣化(繊維破壊や繊維接着)を防ぐようにすることができたものである。よって、前記ガラス繊維梱包体の嵩密度が80kg/m未満であると、前記ガラス繊維集合体の輸送効率(梱包効率)を高める効果が低く、前記ガラス繊維梱包体の嵩密度が135kg/mを超えると、圧縮梱包によるガラス繊維材料の性能劣化(繊維破壊や繊維接着)を防ぐ効果が低くなるため不適である。また、前記ガラス繊維梱包体の嵩密度がこの範囲であれば、前記ガラス繊維として、シート化後の強度(ガラス繊維の絡み合い作用)や液保持性は向上するが前記繊維破壊現象や前記繊維接着現象が生じ易くなる平均繊維径が1μm未満で、耐酸性は向上するが前記繊維接着現象が生じ易くなるアルカリ金属酸化物成分含有量が10重量%以上のガラス繊維である場合にも、できる限り圧縮梱包によるガラス繊維材料の性能劣化(繊維破壊や繊維接着)を防ぐようにすることができるので、特に密閉型鉛蓄電池用セパレータや電気二重層キャパシタ用セパレータの材料として好適に用いることができる。
【0022】
本発明のガラス繊維梱包方法は、例えば前記火炎法や前記遠心法といった方法により製造された平均繊維径が5μm以下、特に1μm未満の微細径で、アルカリ金属酸化物成分を5重量%以上、特に10重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態とするガラス繊維梱包方法において、前記ガラス繊維集合体の嵩密度が一時的にでも135kg/mを超えないように前記ガラス繊維集合体に対し加圧するようにして梱包するようにしたものである。これにより、できる限り前記ガラス繊維集合体の輸送効率(梱包効率)を高めながら、できる限り圧縮梱包によるガラス繊維材料の性能劣化(繊維破壊や繊維接着)を防ぐようにすることができる。
【0023】
前記ガラス繊維集合体とは、例えば前記火炎法や前記遠心法といった方法により製造され未加工の状態のガラス繊維原綿のほか、前記ガラス繊維原綿を加工した状態のもの(例えば、湿式抄造したシート)も含むものとする。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例について比較例とともに詳細に説明する。
(実施例1〜3)
ガラス組成中のSiO成分が63〜70重量%、Al成分が2〜5重量%、CaO成分が4〜8重量%、MgO成分が2〜4重量%、アルカリ金属酸化物成分(NaO+KO+Li)が14〜18重量%、B成分が3〜8重量%、その他成分が1重量%以下を含み、火炎法により繊維化、製造された平均繊維径0.8μmの含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体25kgを略均一に加圧して、外周を拘束帯で3箇所仮固定した後、袋詰めし、前記仮固定用拘束帯を外し、袋の外側から外周を拘束帯で3箇所固定して、梱包密度(ガラス繊維集合体全体の嵩密度)が111kg/m、118kg/m、126kg/mとなるガラス繊維梱包体を得た。それぞれ実施例1、実施例2、実施例3のガラス繊維梱包体とした。尚、前記梱包作業中、実施例1〜3の何れの場合も、前記ガラス繊維集合体の嵩密度が一時的にでも135kg/mを超えるようなことはなかった。
【0025】
(比較例1〜2)
実施例と同様に製造された平均繊維径0.8μmの含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体25kgを略均一に加圧して、外周を拘束帯で3箇所仮固定した後、袋詰めし、前記仮固定用拘束帯を外し、袋の外側から外周を拘束帯で3箇所固定して、梱包密度(ガラス繊維集合体全体の嵩密度)が145kg/m、154kg/mとなるガラス繊維梱包体を得た。それぞれ比較例1、比較例2のガラス繊維梱包体とした。
【0026】
次に、上記にて得られた実施例1〜3、比較例1〜2のガラス繊維梱包体を0ヶ月間保管後(最大1日、以下同じ)に開梱した各ガラス繊維材料について、以下の方法により、ショッパ濾水度(見掛け繊維径の指標)を測定した。また、前記実施例1〜3、前記比較例1〜2のガラス繊維梱包体を0ヶ月間保管後に開梱した各ガラス繊維材料を使用して、以下の方法により、ガラス繊維抄造シートを作製し、引張強度、伸び、タフネス、繊維強度、シート折り曲げ時の割れの有無を測定した。結果を表1に示す。
〈ショッパ濾水度(SR)〉
(1)乾燥後の前記ガラス繊維を2g採取し、水0.8リットルを加えてミキサで100秒離解する。
(2)離解後、メスシリンダに移し、水を加えて1リットルとする。
(3)ショッパ型叩解度試験機(JIS P 8121に準拠)に試料水を投入した後、円錐弁を開けて、試料水を流下させる。
(4)側管からの排水が停止した後、排水量(X)を読み取る。
(5)ショッパ濾水度(SR)を次式により求める。
SR(度)=(1000−X)/10
〈ガラス繊維抄造シートの作製〉
前記ガラス繊維梱包体を0ヶ月間保管後に開梱したガラス繊維材料100重量%を、pH3の硫酸水溶液中に分散し、傾斜式抄紙機を用いて湿式抄造し、加熱乾燥して、坪量約170g/mの密閉型鉛蓄電池用セパレータ用ガラス繊維抄造シートを得た。
〈引張強度〉
SBA S 0406に準じた方法にて、引張強度(N/25mm幅)を測定した。
〈伸び〉
前記引張強度試験において、試料が破断した時のチャック間距離(C)を測定し、初期のチャック間距離(C)から、次式により伸びを算出した。
伸び(%)=(C−C)÷C×100
〈タフネス〉
タフネス(N%/25mm幅)=引張強度(N/25mm幅)×伸び(%)
〈繊維強度〉
繊維強度(N%/25mm幅度)=タフネス(N%/25mm幅)÷ショッパ濾水度SR(度)
〈シート折り曲げ試験〉
前記ガラス繊維抄造シートをU字状に折り曲げ、折り曲げ部のひび割れの有無を観察し、ひび割れが確認されなかったものを○、小さなひび割れが確認されたものを△、シート幅方向の半分以上にひび割れが確認されたものを×とした。
【0027】
【表1】



【0028】
(実施例4〜5,比較例3)
次に、前記実施例1〜3、前記比較例1〜2の方法に倣い、梱包密度(ガラス繊維集合体全体の嵩密度)が110kg/m、130kg/m、150kg/mとなるガラス繊維梱包体を作製し(それぞれ実施例4、実施例5、比較例3のガラス繊維梱包体とした)、これを倉庫内に保管して、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の各時点でのショッパ濾水度、繊維強度を、前記実施例1〜3、前記比較例1〜2で行った方法に倣い測定した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表1および2の結果から以下のことが分かった。
(1)梱包密度を111〜126kg/mとし梱包作業中も一度もガラス繊維集合体全体の嵩密度が135kg/mを超えることがないように梱包した実施例1〜3のガラス繊維梱包体では、それを用いたガラス繊維抄造シートのタフネスが41.9〜92.1N%/25mmと高く、密閉型鉛蓄電池用セパレータとして十分な強度を有しており、圧縮梱包に起因する繊維破壊現象(繊維長の低下)が低く抑えられていることが確認できた。また、ガラス繊維抄造シートの折り曲げ試験では、U字状に折り曲げた部位にひび割れが発生せず、密閉型鉛蓄電池用セパレータとしてU字状に折り曲げて使用する用途においても良好に使用できることが確認できた。これに対し、梱包密度を145〜154kg/mとして梱包した比較例1〜2のガラス繊維梱包体では、ガラス繊維抄造シートのタフネスが3.8〜37.7N%/25mmと低く圧縮梱包に起因する繊維破壊現象(繊維長の低下)が顕著となり、また前記ガラス繊維抄造シートの折り曲げ試験ではU字状に折り曲げた部位にひび割れが発生する状況となり、密閉型鉛蓄電池用セパレータとして使用するには強度および折り曲げ加工性が足りない。
(2)また、梱包体の嵩密度を110、130kg/mとして実施例1〜3と同様に作製した実施例4、5のガラス繊維梱包体について、0〜12ヶ月間保管後のガラス繊維材料を使って、繊維接着現象の度合いを推定する見掛け繊維径の指標として測定したショッパ濾水度では、12ヶ月保管後においても0〜6%の低下にとどまっており、長期保管においても繊維接着現象(繊維径の増大)が低く抑えられていることが確認できた。また、0〜12ヶ月間保管後のガラス繊維材料を使って測定した繊維強度では、12ヶ月保管後においても16〜17%の低下にとどまっており長期保管においても繊維強度の低下が低く抑えられていることが確認できた。これに対し、梱包体の嵩密度を150kg/mとした比較例3のガラス繊維梱包体では、12ヶ月保管後のショッパ濾水度が15%低下し、また12ヶ月保管後の繊維強度が63%低下しており、長期保管における繊維接着現象(繊維径の増大)や繊維強度の低下の度合いが大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が5μm以下でアルカリ金属酸化物成分を5重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態としたガラス繊維梱包体において、嵩密度を80〜135kg/mの範囲としたことを特徴とするガラス繊維梱包体。
【請求項2】
前記ガラス繊維が、平均繊維径1μm未満であることを特徴とする請求項1記載のガラス繊維梱包体。
【請求項3】
前記ガラス繊維が、アルカリ金属酸化物成分を10重量%以上含有することを特徴とする請求項1または2記載のガラス繊維梱包体。
【請求項4】
平均繊維径が5μm以下でアルカリ金属酸化物成分を5重量%以上含んだ含アルカリウール状ガラス繊維からなるガラス繊維集合体を圧縮状態に梱包して荷扱い可能な形態とするガラス繊維梱包方法において、前記ガラス繊維集合体に対し、前記ガラス繊維集合体の嵩密度が135kg/m超えとならない条件で加圧して、嵩密度80〜135kg/mの梱包体に形成することを特徴とするガラス繊維梱包方法。
【請求項5】
前記ガラス繊維が、平均繊維径1μm未満であることを特徴とする請求項4記載のガラス繊維梱包方法。
【請求項6】
前記ガラス繊維が、アルカリ金属酸化物成分を10重量%以上含有することを特徴とする請求項4または5記載のガラス繊維梱包方法。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とするガラス繊維製品。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする濾紙。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項10】
請求項2または3記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項11】
請求項2または3記載のガラス繊維梱包体を開梱したガラス繊維材料を使用したことを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータ。

【公開番号】特開2008−265874(P2008−265874A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72957(P2008−72957)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】