説明

ガラス除去装置及びガラス除去作業車

【課題】ガラス部材を再使用できるように、不純物が混入することなく被解体物からガラス部材を取り除き回収でき、また、ガラス部材の除去及び回収作業に要する時間を短かくできるガラス除去装置及びガラス除去作業車を提供する。
【解決手段】 解体される被解体物の固定領域に固定されているガラス部材を除去するためのガラス除去装置であって、前記ガラス部材を吸引力により保持するガラス吸着手段と、前記被解体物の固定領域を切断する切断手段と、前記被解体物の固定領域への前記ガラス部材の固定を解除する解除手段と、を備え、前記ガラス吸着手段により前記ガラスが保持された状態で、前記解除手段により前記ガラス部材の前記固定領域への固定を解除するガラス除去装置及び、当該ガラス除去装置を備えるガラス回収用スクラップ作業車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、客車、電車、ディーゼル動車等の旅客車やバスといった車両を廃棄するために用いるガラス除去装置及びガラス除去作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両を廃棄する際、資源再利用及び再使用の観点から同種類の材料毎に分別収集することが行われている。例えば、自動車を廃棄する際には、車体から車輪、ドアガラス等のガラス部材、及び内装部材が取り除かれる。その後、車体は、圧潰や、切断され所定寸法の破砕魂とされ、さらに細かい破砕片へと破砕され分別される。一般的には、自動車のガラス部材は、ハンマー等の破砕工具を用いて車体から取り外された後、回収されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−40232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のようにガラス部材を破砕し、回収するという方法では、自動車の車体内外にガラス部材が散乱してしまい、ガラス部材を回収する際に不純物が混入する恐れがある。また、ガラス部材を被解体物から除去する際、ガラス部材を破砕するため、取り外したガラス部材をそのまま再使用することができない。また、ガラス部材の除去作業は、作業員による手作業であるため、比較的大きい旅客車やバスといった被解体物を解体するには、作業員6人で1週間を要し、更なる解体作業の短縮化が困難である。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、ガラス部材を再使用できるように、不純物が混入することなく被解体物からガラス部材を回収でき、また、ガラス部材の除去及び回収作業に要する時間を短くできるガラス除去装置及びガラス除去作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、解体される被解体物の固定領域に固定されているガラス部材を除去するためのガラス除去装置であって、前記ガラス部材を吸引力により保持するガラス吸着手段と、前記被解体物の固定領域を切断する切断手段と、前記被解体物の固定領域への前記ガラス部材の固定を解除する解除手段と、を備え、前記ガラス吸着手段により前記ガラスが保持された状態で、前記解除手段により前記ガラス部材の前記固定領域への固定を解除するガラス除去装置である。
【0007】
さらに、本発明のガラス除去装置によれば、前記解除手段は、前記ガラス部材の周縁部を挟むことで固定する前記固定領域の挟持部に引っ掛ける引っ掛け部であり、前記引っ掛け部により前記挟持部が前記ガラス部材から離れるように折り曲げられる。
【0008】
本発明のガラス除去装置によれば、前記切断手段は、モータにより回転する回転刃を有し、前記ガラス部材の周縁部に対して交差する方向に前記被解体物の固定領域に前記回転刃により刻み目を入れる。
【0009】
さらに、本発明のガラス除去装置によれば、ガラス吸着手段により保持されるガラス部材の一面に対向する他面を押圧可能な押圧手段を備え、前記当接手段が前記ガラス部材に押圧した状態で前記吸着手段により前記ガラス部材を吸着する。
【0010】
本発明のガラス除去装置は、前記被解体物は、旅客車である。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のガラス回収用スクラップ作業車は、上記いずれかのガラス除去装置と、前記ガラス除去装置の左右両側に回転可能に支持される車輪又は前記ガラス除去装置の左右両側に沿って転動可能な履帯と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る解体用回転装置によれば、被解体物からガラス部材を取り外す構成であるので、ガラス部材を再使用できるとともに、不純物が混入することなくガラス部材を回収できる。さらに、ガラス部材を破砕する必要がないので、ガラス部材の除去及び回収作業に要する時間を短くできる。結果として、被解体物の解体作業に要する時間を短縮できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るガラス回収作業車を模式的に示す斜視図である。
【図2】ガラス回収作業車により窓ガラスが取り除かれる車体を模式的に示す側面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】押圧手段を用いて解体作業を行っている状態を示す、図2のIII−III矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のガラス除去装置を、長尺状の旅客車から窓ガラスを取り除くためのガラス回収用スクラップ作業車に適用した実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス回収用スクラップ作業車10を模式的に示す斜視図であり、図2は、ガラス回収用スクラップ作業車10により窓ガラス43が取り除かれる車両を模式的に示す側面図であり、図3は、図2のIII−III矢視断面図である。
である。
【0016】
図1及び図2に示す通り、ガラス回収用スクラップ作業車(以下、作業車と称す。)10は、主として、ガラス吸着手段を構成するバキュームカップ101と、窓ガラス43が固定されている旅客車の車体42の固定領域103を切断する切断手段を構成する回転刃105と、車体42の固定領域103における車体42への窓ガラス43の固定を解除する解除手段を構成するペンチ部29の引っ掛け部129と、を備える。上記構成の作業車10は、バキュームカップ101により窓ガラス43を吸着保持した状態で、引っ掛け部129により窓ガラス43の固定領域103を屈曲させ固定を解除した後、バキュームカップ101で窓ガラス43を車体42から取り除く。
【0017】
以下に、作業車10の構成について詳細に説明する。作業車10は、車体フレーム106の左右両側で転動可能に支持されている無限軌道を有する走行部11と、車体フレーム106に対して回転可能(水平面において旋回可能(矢印201))に装着される旋回ステージ12と、作業車10を操縦する操縦者が乗る操縦キャビン13と、ペンチ部29及び引っ掛け部129とを有する第1作動アーム20と、バキュームカップ101を有する第2作動アーム120と、を備える。
【0018】
操縦キャビン13は、旋回ステージ12上の前部左側に設けられ、操縦席を内部に備えている。また、旋回ステージ12の後方中央には油圧で作動する第1油圧作動ブーム20が設けられ、前方中央には、油圧で作動する第2油圧作動ブーム120が設けられている。さらに、旋回ステージ12の右側には、第1油圧作動ブーム20及び第2油圧作動ブーム120等への油圧動力源である油圧発生装置14が搭載されている。
【0019】
第1油圧作動ブーム20は、起伏シリンダ21で矢印203方向に伏仰可能に旋回ステージ12に装着された第1ロアブーム22と、この第1ロアブーム22の先端に枢支され第1揺動シリンダ23で、第1ロアブーム22の長手方向に対して略垂直面内で矢印205方向に揺動可能な第1アッパーブーム24と、この第1アッパーブーム24の先端に枢支され、第2揺動シリンダ25で第1アッパーブーム24に離接する方向(矢印207方向)に揺動可能な第2アッパーブーム26と、この第2アッパーブーム26の先端に枢支され第3揺動シリンダ27で第2アッパーブーム26に離接する方向(矢印209方向)に揺動可能な治具アームホルダ28と、この治具アームホルダ28の先端に図示しない電動モータで矢印211方向に回動可能に取付けられたペンチ部29とを有している。
【0020】
ペンチ部29は、固定部29aと、固定部29aに軸部材31で枢支される可動部29bとを有し、固定部29aに対して可動部29bが揺動し、開閉する構成である。固定部29aと可動部29bとの対面する縁部には、ペンチ部29を閉じると、固定部29aと可動部29bとの間に載置される部材が切断できる刃部33と、部材を挟持するための刻み目部36と、が設けられている。また、可動部29bの先端部には、固定部29a側に突出する引っ掛け部129が設けられている。
【0021】
さらに、固定部29aの刃部33に対向する縁部には、回転刃105を有する回転刃ユニット35が装着されている。回転刃ユニット35は、油圧シリンダ37と、油圧シリンダ37内に一端部が収容され、油圧作動により固定部29bの長手方向(矢印41方向)に摺動可能な油圧ロッド39と、油圧ロッド39の他端部に装着され、不図示の電動モータにより回転する回転刃105と、を有する。油圧ロッド39の伸縮や、回転刃105の駆動は、操縦キャビン13内で制御できるように構成されている。
【0022】
第2油圧作動ブーム120は、不図示の起伏シリンダで矢印203方向に伏仰可能に旋回ステージ12に装着された第2ロアブーム122と、第2ロアブーム122内に収容され、第2ロアブーム122の先端から油圧等により第2ロアブーム122の長手方向に伸縮する第1ブーム124と、第1ブーム124内に収容され、油圧等により第2ロアブーム122の長手方向に伸縮する第2ブーム126と、第2ブーム126の先端部にジョイント128を介して装着されるバキュームカップ101と、を有する。ジョイント128は、基部に交差する方向に延びる一対の第1垂直部と、対向する第1垂直部間に延在し第2ブーム126の先端部に揺動可能に枢着する第1ピン130と、基部に交差する方向であって第1垂直部に対向する方向に延びる一対の第2垂直部と、対向する第2垂直部間に延在しバキュームカップ101の基部101aに揺動可能に枢着する第2ピン131と、を有する。上記構成により、バキュームカップ101は、第2ロアブーム122に固定された第1ピン130の回り(矢印125方向)と第2ピン131の回り(矢印127方向)に揺動可能である。
【0023】
また、バキュームカップ101のパッド部101bは、椀形状であり、パッド部101bの開口部を被吸着部材に当接し、不図示の吸引源から供給される吸引力により窓ガラス43を吸引保持する。
【0024】
尚、第1油圧作動ブーム20及び第2油圧作動ブーム120は、不図示の制御機構により同期して作動できるように構成されている。例えば、窓ガラス43を車体42から取り外す際、第1油圧作動ブームの引っ掛け部129を使用しながら、第2油圧作動ブーム120のバキュームカップ101を作動させ窓ガラス43を保持することが可能である。
【0025】
次に作業車10を用いて窓ガラス43を車体42から取り外し回収する作業の手順を説明する。図2に示される車体42の側壁には、複数の窓ガラス43が配されている。車体42の固定領域103は、窓ガラス43が装着される開口を規定する車体42の窓縁部を含む領域であり、図3に示すように、固定領域103には、窓ガラス43の周縁部を収容する溝42aが設けられている。車体42の側壁の溝42aは、側壁の厚さ方向に離間する挟持部42b、42cにより形成させている。
【0026】
車体42の外側において、取り外す対象である一の窓ガラス43の固定領域103に向けて第1油圧作動ブーム20のペンチ部29を移動させ、回転刃ユニット35の固定領域103に対する位置決めを行う。次に、油圧ロッド39を伸ばし、回転刃105で固定領域103に刻み目42eを入れていく。
【0027】
刻み目42eは、回転刃105により、窓ガラス43を切断することなく、固定領域103に縁部42dが延びる方向に対して直交する方向に複数入れられる。また、刻み目42eの長さは、固定領域103をほぼ横断する長さか、固定領域103を若干越えるような長さとし、外側の挟持部42bがほぼ切断されることが好ましい。所定数の刻み目42eを固定領域103に入れた後、油圧ロッド39を油圧シリンダ31内に収容し、回転刃105を固定領域103から離間させる。なお、本実施形態では、刻み目42eを等間隔で、固定領域103の縁部42dに設けられているが、刻み目42eの間隔や数等は、適宜変更できる。
【0028】
次に、ペンチ部29の可動部29aの先端に設けられている引っ掛け部129を挟持部42bの内面42fに引っ掛け、外側の挟持部42bを窓ガラス43から離れる方向に動かし、挟持部42bを屈曲させ、挟持部42bによる窓ガラス43の固定を解除する。
【0029】
このように、刻み目42eで挟まれた領域を順次屈曲させていき、窓ガラス43の固定領域103への固定を解除する。この挟持部42bを屈曲させる際には、第2油圧作動アーム120を作動させて、バキュームカップ101で窓ガラス43の外面43aを保持しておく。このようにすることにより、挟持部42bを屈曲する作業中に、窓ガラス43が意図せずに車体42から外れて、落下してしまうことを防止できる。
【0030】
なお、本実施形態では、固定領域103に、縁部42dに対してほぼ直交する方向に刻み目42eを入れる構成としたが、外側の挟持部42bを完全に切り落すように、窓ガラス43の外縁部に沿って切断することも可能である。この場合には、切断されたリング状の挟持部42bを、ベンチ部29により挟持しつつ、バキュームカップ101で吸着保持された窓ガラス43を取り除く。
【0031】
一の窓ガラス43を外し所定の回収場所は載置した後、その他の窓ガラスについても同様の工程を繰り返して、車体42の片側の全ての窓ガラスを取り除き、反対側の窓ガラスも同様に行う。このように、窓ガラスを有する大型バス・旅客車等の車両に装着されたガラス部材は、破砕することなく回収される。
【0032】
(変形例)
次に、ガラス部材を被解体物から取り除き回収する作業の変形例について説明する。図4は、当接手段を用いて解体作業を行っている状態を示す、図2のIII−III矢視断面図である。図4に示すように、バキュームカップ101のパッド部101bを窓ガラス43の外面43aに当接し吸着する際には、窓ガラス43の内面43bをゴムや樹脂等の材料からなる押え部材151により外面43a方向に押圧した状態で、バキュームカップ101を窓ガラス43に当接し吸着する。このような構成にすることにより、バキュームカップ101を窓ガラス43に密着させる際、意図せずに窓ガラス43の一方向へ過荷重が掛かり、窓ガラス43が破砕してしまうことを防止できる。
【0033】
なお、押え部材151を有する装置又は作業車は、窓ガラス43を除去する工程を行う前に、車体42内へ導入してもよいし、一枚目の窓ガラス43を除去した後に、その車体42の開口部を介して、第1油圧作動ブーム20のような屈曲できるブーム部材の先端に押え部材151を有する作業車を用いてもよい。
【0034】
なお、本実施形態の作業車10は、装軌車両としたが、タイヤを装着した装輪車両としても良い。さらに、本実施形態の被解体物のガラス部材は、車体の側壁の固定領域の挟持部により固定される構成とした。しかし、窓ガラスが、窓枠を介して車体に装着される構成、すなわち、固定領域に挟持部及び窓枠を有する構成あっても、本発明のガラス除去装置及びガラス除去作業車を利用して、窓枠及び挟持部を切断し屈曲させることにより、窓ガラスを破砕することなしに取り外し、回収することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…ガラス回収用スクラップ作業車
11…走行部
12…旋回ステージ
13…操縦キャビン
14…油圧発生装置
20…第1油圧作動ブーム
21…起伏シリンダ
22…第1ロアブーム
23…第1揺動シリンダ
24…第1アッパーブーム
25…第2揺動シリンダ、
26…第2アッパーブーム
27…第3揺動シリンダ
28…治具アームホルダ
29…ペンチ部
29a…可動部
29a…固定部
31…油圧シリンダ
33…刃部
35…回転刃ユニット
36…刻み目部
37…油圧シリンダ
39…油圧ロッド
40…プラットホーム
42…車体
42a…溝
42b、42c…挟持部
42d…縁部
42e…刻み目
43…窓ガラス
43a…内面
43b…外面
101…バキュームカップ
101a…基部
101b…パッド部
103…固定領域
105…回転刃
106…車体フレーム
120…第2油圧作動ブーム
122…第2ロアブーム
124…第1ブーム
126…第2ブーム
128…ジョイント
129…引っ掛け部
130…第1ピン
131…第2ピン
151…押え部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体される被解体物の固定領域に固定されているガラス部材を除去するためのガラス除去装置であって、
前記ガラス部材を吸引力により保持するガラス吸着手段と、
前記被解体物の固定領域を切断する切断手段と、
前記被解体物の固定領域への前記ガラス部材の固定を解除する解除手段と、を備え、
前記ガラス吸着手段により前記ガラスが保持された状態で、前記解除手段により前記ガラス部材の前記固定領域への固定を解除することを特徴とするガラス除去装置。
【請求項2】
前記解除手段は、前記ガラス部材の周縁部を挟むことで固定する前記固定領域の挟持部に引っ掛ける引っ掛け部であり、前記引っ掛け部により前記挟持部が前記ガラス部材から離れるように折り曲げられることを特徴とする請求項1に記載のガラス除去装置。
【請求項3】
前記切断手段は、モータにより回転する回転刃を有し、前記ガラス部材の周縁部に対して交差する方向に前記被解体物の固定領域に前記回転刃により刻み目を入れることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラス除去装置。
【請求項4】
さらに、ガラス吸着手段により保持されるガラス部材の一面に対向する他面を押圧可能な押圧手段を備え、前記当接手段が前記ガラス部材に押圧した状態で前記吸着手段により前記ガラス部材を吸着することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス除去装置。
【請求項5】
前記被解体物は、旅客車であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス除去装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス除去装置と、
前記ガラス除去装置の左右両側に回転可能に支持される車輪又は前記ガラス除去装置の左右両側に沿って転動可能な履帯と、を備えるガラス回収用スクラップ作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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